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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】ガスケットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/00 20060101AFI20230331BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20230331BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20230331BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20230331BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20230331BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20230331BHJP
   H01M 8/0286 20160101ALI20230331BHJP
   F16J 15/14 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
F16J15/00 B
B05C5/00 101
B05D1/26 Z
B05D7/24 302Q
B05D3/00 B
B05D7/24 301R
B05D3/02 Z
H01M8/0286
F16J15/14 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021543635
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(86)【国際出願番号】 JP2020026357
(87)【国際公開番号】W WO2021044722
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2019161057
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水澤 誉
(72)【発明者】
【氏名】三浦 正広
(72)【発明者】
【氏名】後藤 教之
(72)【発明者】
【氏名】中畑 雄史
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-090231(JP,A)
【文献】特開2005-011796(JP,A)
【文献】特開2002-350876(JP,A)
【文献】国際公開第2010/001831(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/129409(WO,A1)
【文献】特開2007-292274(JP,A)
【文献】特開2001-225392(JP,A)
【文献】特開平07-008875(JP,A)
【文献】特開2008-059927(JP,A)
【文献】特開2018-026379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
C08J 5/00-5/02
C08J 5/12-5/22
F16J 15/00-15/14
H01M 8/00-8/0297
H01M 8/08-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出装置により、基材上に熱硬化性の液状ゴムを吐出する工程と、
加熱によって、吐出された液状ゴムを硬化させることで、前記基材上にゴム製のガスケットを形成させる工程と、
を有すると共に、
前記吐出装置は、液状ゴムが流れる流路を開閉する弁体と、前記弁体による弁の開閉によって、液滴状の液状ゴムが非連続的に吐出される吐出口と、を備えており、前記吐出口が前記基材に対して非接触の状態で用いられる非接触式吐出装置であることを特徴とするガスケットの製造方法。
【請求項5】
前記液状ゴムは、希釈後の粘度が100mPa・s以上300mPa・s以下にされた材料が用いられることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載のガスケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上にガスケットを形成するガスケットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池におけるセパレータにガスケットを形成する方法として、射出成形による方法、スクリーン印刷による方法、ディスペンサを用いる方法などがある。射出成形の場合には、ガスケットの形状を安定させることができる長所がある一方で、バリ対策が必要で、また、寸法形状が異なる製品毎に金型が必要となるという短所がある。スクリーン印刷の場合には、材料選択の自由度が大きく、メンテナンス性も優れるなどの長所がある一方で、ガスケットの形状が不安定で所望の形状にし難いなどの短所がある。ディスペンサを用いる場合にも、材料選択の自由度が大きいなどの長所がある一方で、基材(セパレータ本体)に接触させながら材料を連続的に塗布する方式のため、基材の反りや位置決め精度等の影響によって、ノズル先端と基材との距離を一定に保つことが困難であり、膜厚がばらついてしまう短所がある。更に、ディスペンサを用いる場合には、環状のガスケットを形成する場合に、始点側と終点側を合流させる部分が2重に重なるため、所望の形状寸法にし難いといった短所がある。
【0003】
また、その他、インクジェット方式の採用も検討されているが、当該方式の場合、材料の粘度が低いことが使用条件となっており、ガスケットの材料として用いられる液状ゴムを適用するのは難しいという問題がある。このように、いずれの方法にも一長一短があり、より適切な製造方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/212775号
【文献】特開2016-186327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、金型を必要とすることなく、ガスケットの寸法形状の安定化を図ることのできるガスケットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0007】
すなわち、本発明のガスケットの製造方法によれば、
吐出装置により、基材上に液状ゴムを吐出する工程と、
吐出された液状ゴムを硬化させることで、前記基材上にゴム製のガスケットを形成させる工程と、
を有すると共に、
前記吐出装置は、液状ゴムが流れる流路を開閉する弁体と、前記弁体による弁の開閉によって、液滴状の液状ゴムが非連続的に吐出される吐出口と、を備えており、前記吐出口が前記基材に対して非接触の状態で用いられる非接触式吐出装置であることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、吐出装置によって、液状ゴムを吐出する構成を採用しているため、射出成形を行う場合のように金型は不要である。また、吐出装置によって、液滴状の液状ゴムを非連続的に吐出する構成を採用しているため、スクリーン印刷を採用した場合に比べて、ガスケットの形状及び寸法を安定させることができる。更に、非接触式吐出装置によって、液滴状の液状ゴムを非連続的に吐出する構成を採用しているため、ディスペンサを用いる場合に比べて、基材上に吐出する材料の膜厚を一定にすることができる。また、環状のガスケットを形成する場合でも、始点側と終点側を合流する部分が2重になってしまうこともない。
【0009】
前記吐出装置は、圧縮エアによって、前記弁体を駆動させるエアパルス式アクチュエータを備えるとよい。
【0010】
また、前記吐出装置は、ピエゾ素子によって、前記弁体を駆動させるピエゾ式アクチュエータを備えることも好適である。
【0011】
前記基材に形成された凸部の表面に、前記吐出装置によって、液状ゴムを吐出することも好適である。
更に、前記液状ゴムは、希釈後の粘度が100mPa・s以上300mPa・s以下にされた材料が用いられるとよい。
【0012】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、金型を必要とすることなく、ガスケットの寸法形状の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は燃料電池におけるセパレータの平面図である。
図2図2は燃料電池におけるセパレータの断面図である。
図3図3は本発明の実施例に係るガスケットの製造工程図である。
図4図4は本発明の実施例に係る吐出装置の主要構成図である。
図5図5はエアパルス式アクチュエータの主要構成図である。
図6図6はピエゾ式アクチュエータの主要構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0016】
(実施例)
図1図6を参照して、本発明の実施例に係るガスケットの製造方法について説明する。なお、本実施例においては、一例として、燃料電池におけるセパレータ本体にガスケットを形成する場合を説明する。ただし、本発明におけるガスケットの製造方法は、セパレータの場合に限らず、例えば、金属ガスケットにゴム製のガスケットを一体的に設ける場合にも適用可能である。
【0017】
図1は燃料電池におけるセパレータの平面図である。図2は燃料電池におけるセパレータの断面図であり、図1中のAA断面図である。図3は本発明の実施例に係るガスケットの製造工程図であり、各工程に用いられる装置を概略的に示している。図4は本発明の実施例に係る吐出装置の主要構成図であり、吐出装置の主要的な構成のみを概略的に示している。図5はエアパルス式アクチュエータの主要構成図であり、エアパルス式アクチュエータの主要構成を概略的に示している。図6はピエゾ式アクチュエータの主要構成図であり、ピエゾ式アクチュエータの主要構成を概略的に示している。
【0018】
<セパレータ>
本実施例に係るガスケットの製造方法によりガスケットが形成されるセパレータについて、図1及び図2を参照して説明する。セパレータ10は、基材11と、基材11の表面に形成される流路12と、基材11に複数設けられるマニホルド13とを備えている。本実施例においては、基材11は金属により構成される。ただし、基材11の材料として、カーボン材料が用いられる場合もある。また、本発明において用いられる基材の材料は、金属やカーボン材料に限定されることはなく、樹脂材料などでも適用され得る。
【0019】
基材11の表面に形成される流路12は、燃料ガスや酸化剤ガスなどが流れる流路として用いられる。一般的に、燃料電池は、複数の単セルからなるセルスタックとして構成される。基材11に設けられるマニホルドは、燃料ガス,酸化剤ガス、及び冷却液などを各セルに分配するために設けられている。
【0020】
そして、上記の燃料ガスなどが外部などに漏れてしまうことを防止するために、流路12が形成されている領域の周囲、及びマニホルド13の周囲には、それぞれゴム製のガスケット14が一体的に設けられている。なお、図1においては、ガスケット14が設けられている部位を太い点線にて示している。一般的に、密封性を高めるために、基材11に凸部11a(ビード部と呼ばれることもある)が設けられて、この凸部11aの表面にガスケット14が形成されることが多い。ただし、本発明のガスケットの製造方法は、平面上にガスケットを形成する場合にも適用することができる。
【0021】
<製造工程>
特に、図3を参照して、本実施例に係るガスケットの製造方法における製造工程について説明する。本製造工程は、吐出装置100により、基材11上に液状ゴム14aを吐出する第1工程(図3(a)参照)と、吐出された液状ゴム14aを硬化させることで、基材11上にゴム製のガスケット14を形成させる第2工程(図3(b)参照)とを有する。
【0022】
吐出装置100は、装置本体110と、装置本体110に吐出材料(本実施例においては、液状ゴム14a)を供給する供給装置120と、装置本体110に備えられる弁体111(図4参照)を駆動するアクチュエータ130とを備えている。なお、吐出装置100によって、基材11上に吐出材料を吐出する場合には、基材11を固定した状態で、吐出装置100を移動させる構成、吐出装置100を固定した状態で、基材11を移動させる構成、及び、吐出装置100と基材11の双方を移動させる構成のいずれを採用しても構わない。
【0023】
本実施例に係る吐出装置100は、非接触式吐出装置であり、液滴状の吐出材料を、吐出装置100から離れた位置に設けられる基材11に対して、非連続に吐出して塗布する機能を有している。なお、この吐出装置100は、ジェットディスペンサと呼ばれることもある。
【0024】
本実施例に係る吐出材料である液状ゴム14aは、熱硬化性のゴム材料である。そのため、第2工程においては、ヒーター200によって、液状ゴム14aが塗布された基材11を加熱することにより、液状ゴム14aは硬化して、基材11に固定される。すなわち、基材11に、ガスケット14を一体的に形成することができる。
【0025】
<<吐出装置>>
特に、図4を参照して、吐出装置100について、より詳細に説明する。なお、図4においては、吐出装置100の主要部のみを簡略的に示しており、吐出装置100を構成する部材について、適宜、省略している。装置本体110の内部には、上記の通り、弁体111(ニードルと呼ばれることもある)が設けられている。弁体111は、装置本体110に設けられた挿通孔112内で、往復移動(図中、上下移動)可能に構成されており、挿通孔112の先端側(図中、下側)には弁座113が設けられている。また、この弁座113よりも先端側に、吐出材料が吐出される吐出口114が設けられている。そして、供給装置120から供給される吐出材料が流れる流路121は、挿通孔112に接続するように構成されている。供給装置120から供給される吐出材料は、所定の流体圧力がかかるように構成されている。
【0026】
以上のように構成される吐出装置100によれば、アクチュエータ130による弁体111の往復移動により、弁が開閉され、吐出口114から液滴状の吐出材料(液状ゴム14a)が非連続的に吐出される。吐出装置100が用いられる際においては、吐出口114は基材11に対して非接触の状態となっている。
【0027】
アクチュエータ130については、特に限定されるものではなく、弁体111を往復移動させる機能を備えているものであれば、各種の構成を採用し得る。一例として、圧縮エアによって、弁体111を駆動させるエアパルス式アクチュエータの場合と、ピエゾ素子によって、弁体111を駆動させるピエゾ式アクチュエータの場合について、それぞれ説明する。
【0028】
<<エアパルス式アクチュエータ>>
図5を参照して、エアパルス式アクチュエータについて説明する。なお、図5においては、吐出装置100における装置本体110のうち、エアパルス式アクチュエータに関係する主要構成部材を模式的断面図にて示し、装置本体110の外部に設けられるエアパルス式アクチュエータに関係する構成については、回路図にて示している。
【0029】
エアパルス式アクチュエータの場合、弁体111には、ピストン111aが設けられる。このピストン111aによって、密閉空間115が形成される。また、ピストン111aを介して、密閉空間115とは反対側には、ピストン111aを密閉空間115側に向けて押圧するスプリング116が設けられる。
【0030】
そして、装置本体110の外部には、密閉空間115に、供給通路R1を介して圧縮エアを送り込むためのエアポンプ131と、密閉空間115内のエアを排気するための排気通路R2が設けられている。また、供給通路R1を遮断または開放し、かつ、排気通路R2を遮断または開放するための電磁弁132と、電磁弁132を制御する制御装置133も備えられている。
【0031】
図5においては、電磁弁132によって、供給通路R1が開放され、排気通路R2が遮断された状態を示している。これにより、エアポンプ131から圧縮エアが密閉空間115に送られて、スプリング116の押圧力に抗してピストン111aと共に弁体111が図5中上方に移動し、弁が開いた状態となる。また、特に図示はしないが、制御装置133によって、電磁弁132が切り換えられると、供給通路R1が遮断され、排気通路R2が開放される状態となる。これにより、密閉空間115内のガスが排気されて、スプリング116の押圧力によって、ピストン111aと共に弁体111は、図5中下方に移動する。これにより、弁は閉じた状態となる。このように、制御装置133による電磁弁132の切り換えにより、弁体111を往復移動させることで、弁を開閉させることが可能となる。
【0032】
<<ピエゾ式アクチュエータ>>
図6を参照して、ピエゾ式アクチュエータについて説明する。なお、図6においては、ピエゾ式アクチュエータに関係する主要構成部材を簡略的に示している。ピエゾ式アクチュエータの場合、ピエゾ素子134に弁体111が取り付けられる。この実施例においては、弁体111にフランジ部111bが設けられている。そして、フランジ部111bをピエゾ素子134側に向かって押圧するスプリング117も設けられている。更に、ピエゾ素子134に対して、電圧を印加し、かつ印加する電圧を制御可能な電圧供給装置135も備えられている。以上の構成により、電圧供給装置135によって、ピエゾ素子134に印加する電圧を制御することで、ピエゾ素子134が伸びた場合には、スプリング117の押圧力に抗して、弁体111が図中下方に移動し、弁が閉じた状態となる。また、ピエゾ素子134が縮んだ場合には、スプリング117の押圧力によって、弁体111は図中上方に移動し、弁が開いた状態となる。このように、電圧供給装置135によって、ピエゾ素子134に印加する電圧を制御することで、ピエゾ素子134が伸縮し、弁体111を往復移動させることができる。従って、弁を開閉させることが可能となる。
【0033】
<<吐出材料の各種条件>>
吐出材料としては、上記の通り、液状ゴム14aが用いられる。液状ゴム14aの具体的な例としては、液状フッ素ゴム、EPDM、シリコーンゴムを挙げることができる。液状フッ素ゴムを採用する場合、原液粘度が100Pa・s以上280Pa・s以下の材料を用い、希釈剤(例えば、フッ素剤シンナー)により希釈率(固形分濃度)を40wt%以上60wt%以下とすることで、希釈後の粘度が100mPa・s以上300mPa・s以下になったものを好適に用いることができる。なお、ガスケット14の材料として用いられる液状ゴム14aについて、希釈後の粘度を比較的高くする理由について簡単に説明する。一つ目の理由として、1度の塗布によって、シール性能に必要な膜厚が得られることが挙げられる。材料の粘度が低い場合には、膜厚が薄くなるため、シール性能に必要な膜厚を得るために、上記の第1工程と第2工程を繰り返し行うことで、複数層の膜を形成して、ガスケットを形成する必要が生じてしまう。二つ目の理由として、基材11に設けられた凸部11aの表面に液状ゴム14aを塗布するため、凸部11aから零れ落ちてしまうことを抑制する必要があることが挙げられる。このように、ガスケット14の材料として用いられる液状ゴム14aの場合、希釈後の粘度を比較的高くするのが望ましく、インクジェット方式の採用は困難である。
【0034】
<<エアパルス式アクチュエータを採用した場合の吐出装置の各種条件>>
アクチュエータ130として、エアパルス式アクチュエータを採用した場合の吐出装置100における各種条件について説明する。この場合、エアポンプ131による作動エア圧は、0.1MPa以上0.5MPa以下の範囲で設定するとよい。また、バルブ径(吐出口114の径)は200μm程度に設定するとよい。バルブ温調については、特に設定せずに、室温下で動作させればよい。吐出材料の液圧(シリンジ圧)については、0.11MPa程度に設定するとよい。また、サイクルタイム(電磁弁132による弁の開閉周期)については、15msec以上20msec以下に設定するとよい。
【0035】
<<ピエゾ式アクチュエータを採用した場合の吐出装置の各種条件>>
アクチュエータ130として、ピエゾ式アクチュエータを採用した場合の吐出装置100における各種条件について説明する。この場合、ピエゾ素子134への印加電圧は80V以上120V以下に設定するとよい。また、バルブ径(吐出口114の径)は200μm以上300μm以下に設定するとよい。バルブ温調については、室温以上50℃以下に設定するとよい。吐出材料の液圧(シリンジ圧)については、0.1MPa以上0.5MPa以下に設定するとよい。また、サイクルタイム(ピエゾ素子134による弁の開閉周期)については、15msec以上30msec以下に設定するとよい。
【0036】
<本実施例に係るガスケットの製造方法の優れた点>
本実施例に係るガスケットの製造方法によれば、吐出装置100によって、液状ゴム14aを吐出する構成を採用しているため、射出成形を行う場合のように金型は不要である。本実施例の場合には、吐出装置100や基材11の移動制御を変更するだけで、寸法形状が異なる各種製品を製造することができる。従って、射出成形を行う場合に比べて、バリ対策が不要となるだけでなく、製品毎に金型が必要になることもないので、コストを削減することができる。
【0037】
また、吐出装置によって、液滴状の液状ゴムを非連続的に吐出する構成を採用しているため、スクリーン印刷を採用した場合に比べて、ガスケットの形状及び寸法を安定させることができる。すなわち、スクリーン印刷は、スキージによって、マスクに設けられたメッシュを介して、基材上に塗布材料を塗布する手法である。この場合、塗布された材料の表面には、メッシュ痕が残るため、表面の粗度が高くなってしまう。これに対して、本実施例の場合には、液滴状の液状ゴムが吐出されることで塗布された材料の表面は滑らかであり、表面の粗度を低くすることができる。また、スクリーン印刷により、凸部(ビード)の表面に材料を塗布する場合、幅方向(短手方向)の両側が中央に比べて高くなる現象(サドル現象と呼ばれる)が発生することが知られている。このような現象が発生すると、ガスケットによる密封性能が低下してしまう。これに対して、本実施例に係る製造方法により得られるガスケット14は、幅方向の中央が、幅方向の両側に比べて高い形状(ドーム形の形状)となるため、安定した密封性能を得ることができる。
【0038】
なお、本実施例に係る製造方法においては、基材表面に設けられた段差を跨ぐようにガスケット14を形成する場合にも対応可能である。これに対して、スクリーン印刷では、基材表面に設けられた段差を跨ぐようにガスケットを形成することはできない。また、スクリーン印刷の場合には、材料が大気に曝されて揮発物質の揮発量が多くなり、材料品質が低下してしまい歩留まりが低いのに対して、本実施例に係る製造方法の場合には、そのような問題がなく、歩留まりを高めることができる。
【0039】
更に、本実施例においては、非接触式吐出装置によって、液滴状の液状ゴムを非連続的に吐出する構成を採用している。そのため、一般的なディスペンサを用いる場合に比べて、基材上に吐出する材料の膜厚を一定にすることができる。また、環状のガスケットを形成する場合でも、始点側と終点側の合流する部分が2重になってしまうこともない。すなわち、一般的なディスペンサの場合には、基材(セパレータ本体)に接触させながら材料を連続的に塗布する方式のため、基材の反りや位置決め精度等の影響によって、ノズル先端と基材との距離を一定に保つことが困難であり、膜厚がばらついてしまう。また、環状のガスケットを形成する場合には、始点側と終点側の合流する部分に対して2重に材料を吐出しなければならない。これにより、膜厚がばらつき易く、特に、始点側と終点側の合流する部分は2重に材料が吐出されるため、所望の形状及び寸法にするのが困難である。なお、本実施例に係る製造方法によれば、吐出する材料の粘度の調整、及び、サイクルタイム(電磁弁132やピエゾ素子134による弁体111の開閉周期)の制御等によって、塗布される材料の膜厚や幅を容易に変更制御することができる。そして、塗布される材料の膜厚を一定にすることができ、かつ、始点側と終点側で合流する部分を2重にする必要もないため、所望の形状及び寸法にすることができる。
【0040】
なお、インクジェット方式の場合には、適用可能な材料の粘度は、2mPa・s~25mPa・s程度のため、液状ゴム14aを採用するのは困難である。
【符号の説明】
【0041】
10 セパレータ
11 基材
11a 凸部
12 流路
13 マニホルド
14 ガスケット
14a 液状ゴム
100 吐出装置
110 装置本体
111 弁体
111a ピストン
111b フランジ部
112 挿通孔
113 弁座
114 吐出口
115 密閉空間
116,117 スプリング
120 供給装置
121 流路
130 アクチュエータ
131 エアポンプ
132 電磁弁
133 制御装置
134 ピエゾ素子
135 電圧供給装置
200 ヒーター
R1 供給通路
R2 排気通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6