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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】超高強度鉄筋およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20230331BHJP
   C22C 38/58 20060101ALI20230331BHJP
   C21D 8/06 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
C22C38/00 301Y
C22C38/58
C21D8/06 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021564667
(86)(22)【出願日】2020-10-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 KR2020013596
(87)【国際公開番号】W WO2022034964
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2021-10-29
(31)【優先権主張番号】10-2020-0101127
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510307299
【氏名又は名称】ヒュンダイ スチール カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【弁理士】
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ジュンホ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジュサン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ロクソク
(72)【発明者】
【氏名】リー、チョンヨプ
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-232091(JP,A)
【文献】特開平05-209223(JP,A)
【文献】特開2016-074936(JP,A)
【文献】特開2012-067363(JP,A)
【文献】特表2019-535892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 8/06
C21D 8/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素(C):0.10~0.45重量%、シリコン(Si):0.5~1.0重量%、マンガン(Mn):0.40~1.80重量%、クロム(Cr):0.10~1.0重量%、バナジウム(V):0超過0.2重量%以下、銅(Cu):0超過0.4重量%以下、モリブデン(Mo):0超過0.5重量%以下、アルミニウム(Al):0.015~0.070重量%、ニッケル(Ni):0超過0.25重量%以下、スズ(Sn):0超過0.1重量%以下、リン(P):0超過0.05重量%以下、硫黄(S):0超過0.03重量%以下、窒素(N):0.005~0.02重量%、残部の鉄(Fe)およびその他の不可避不純物を含み、下記式1による炭素当量(Ceq):0.7以上である超高強度鉄筋であり、
前記超高強度鉄筋は、中心部と、前記中心部の外周面に形成される表層部と、を含み、
前記表層部は、テンパードマルテンサイトを含み、前記中心部は、フェライト、パーライトおよびベイナイトを含む微細組織からなり、
前記フェライトは、多角形フェライトおよび針状型フェライトのうちの1つ以上を含み、
降伏強度(YS):700MPa以上および引張強度/降伏強度(TS/YS):1.25以上であることを特徴とする超高強度鉄筋:
【数1】
(上記式1中、前記[C]、[Mn]、[Cr]、[V]、[Mo]、[Cu]および[Ni]は、前記鉄筋に含まれる炭素(C)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)およびニッケル(Ni)の含有量(重量%)である)。
【請求項2】
降伏強度(YS)700~850MPa、引張強度/降伏強度(TS/YS)1.25~1.35および延伸率(El)10%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の超高強度鉄筋。
【請求項3】
前記中心部は、フェライト30~45体積%、パーライト30~45体積%およびベイナイト15~25体積%を含む微細組織からなることを特徴とする、請求項1に記載の超高強度鉄筋。
【請求項4】
前記鉄筋は、横断面を基準として、表層部5~15面積%および中心部85~95面積%を含むことを特徴とする、請求項1に記載の超高強度鉄筋。
【請求項5】
前記中心部は、硬度350Hv以上のコア硬化層を含むことを特徴とする、請求項1に記載の超高強度鉄筋。
【請求項6】
前記コア硬化層は、下部ベイナイト(lower bainite)および平均大きさ5~10μmの微細フェライトを含む微細組織からなることを特徴とする、請求項5に記載の超高強度鉄筋。
【請求項7】
前記コア硬化層は、硬度350~400Hvであり、
前記コア硬化層を除いた中心部は、硬度240~280Hvであり、
表層部は、硬度330~360Hvであることを特徴とする、請求項5に記載の超高強度鉄筋。
【請求項8】
前記鉄筋は、横断面を基準として、前記コア硬化層を15~30面積%含むことを特徴とする、請求項5に記載の超高強度鉄筋。
【請求項9】
炭素(C):0.10~0.45重量%、シリコン(Si):0.5~1.0重量%、マンガン(Mn):0.40~1.80重量%、クロム(Cr):0.10~1.0重量%、バナジウム(V):0超過0.2重量%以下、銅(Cu):0超過0.4重量%以下、モリブデン(Mo):0超過0.5重量%以下、アルミニウム(Al):0.015~0.070重量%、ニッケル(Ni):0超過0.25重量%以下、スズ(Sn):0超過0.1重量%以下、リン(P):0超過0.05重量%以下、硫黄(S):0超過0.03重量%以下、窒素(N):0.005~0.02重量%、残部の鉄(Fe)およびその他の不可避不純物を含み、下記式1による炭素当量(Ceq):0.7以上である半製品を再加熱するステップと、
前記再加熱された半製品を仕上げ圧延温度:850~1000℃の条件で熱間圧延して圧延材を製造するステップと、
前記圧延材をMs温度以下まで冷却するステップと、を含み、
前記冷却は、前記圧延材を500~700℃まで復熱するステップ、を含んでなる超高強度鉄筋の製造方法であり、
前記超高強度鉄筋は、中心部と、前記中心部の外周面に形成される表層部と、を含み、
前記表層部は、テンパードマルテンサイトを含み、前記中心部は、フェライト、パーライトおよびベイナイトを含む微細組織からなり、
前記フェライトは、多角形フェライトおよび針状型フェライトのうちの1つ以上を含み、
降伏強度(YS):700MPa以上および引張強度/降伏強度(TS/YS):1.25以上であることを特徴とする超高強度鉄筋の製造方法:
【数2】
【請求項10】
前記冷却時、前記圧延材の線速6.7~7.2m/sおよび比水量3.7~3.9l/kgの条件で実施することを特徴とする、請求項9に記載の超高強度鉄筋の製造方法。
【請求項11】
前記再加熱は、1050~1250℃で実施することを特徴とする、請求項9に記載の超高強度鉄筋の製造方法。
【請求項12】
前記中心部は、硬度350Hv以上のコア硬化層を含むことを特徴とする、請求項9に記載の超高強度鉄筋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高強度鉄筋およびその製造方法に関する。より詳しくは、耐震性能に優れた建築構造物用超高強度鉄筋およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、空間の活用度を高めるために、設置される構造物は大型化しつつある。これによって、より高い強度を有する鉄筋が必要である。以前は降伏強度を基準として500MPaの鉄筋が求められていたが、最近は降伏強度が600~700MPaの鉄筋が求められているのが現状であり、今後は1.0GPa級以上の鉄筋に対する需要も予想される。
【0003】
一方、最近、韓国国内外にて発生している地震、火災、強風、豪雪、地盤沈下およびシンクホールなどの自然災害、または人為的災難などに備えた建築構造物の安定性の確保が国民のインフラ安全を確保するのに必須として作用している。このために構造物の安全設計は必須であり、これによって耐震鋼材の開発が切実な状況である。耐震特性を付与するために、炭素(C)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)およびニオブ(Nb)などの様々な種類の合金成分の添加による塑性変形能の増大が必要であるが、過剰の合金鉄の投入は生産コストの上昇をもたらす問題がある。
【0004】
本発明に関する背景技術は、特許文献1(2011.12.19公告、発明の名称:耐震用鉄筋の製造方法およびこれにより製造される耐震用鉄筋)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】大韓民国登録特許公報第10-1095486号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一実施例によれば、高強度および耐震特性に優れた超高強度鉄筋およびその製造方法を提供する。
【0007】
本発明の一実施例によれば、合金元素添加量の低減および工程の単純化により生産性およびコスト節減効果に優れた超高強度鉄筋およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの観点は、超高強度鉄筋に関する。一具体例において、前記超高強度鉄筋は、炭素(C):0.10~0.45重量%、シリコン(Si):0.5~1.0重量%、マンガン(Mn):0.40~1.80重量%、クロム(Cr):0.10~1.0重量%、バナジウム(V):0超過0.2重量%以下、銅(Cu):0超過0.4重量%以下、モリブデン(Mo):0超過0.5重量%以下、アルミニウム(Al):0.015~0.070重量%、ニッケル(Ni):0超過0.25重量%以下、スズ(Sn):0超過0.1重量%以下、リン(P):0超過0.05重量%以下、硫黄(S):0超過0.03重量%以下、窒素(N):0.005~0.02重量%、残部の鉄(Fe)およびその他の不可避不純物を含み、下記式1による炭素当量(Ceq):0.7以上であり、前記超高強度鉄筋は、中心部と、前記中心部の外周面に形成される表層部と、を含み、前記表層部は、テンパードマルテンサイトを含み、前記中心部は、フェライト、パーライトおよびベイナイトを含む微細組織からなり、前記フェライトは、多角形フェライトおよび針状型フェライトのうちの1つ以上を含み、降伏強度(YS):700MPa以上および引張強度/降伏強度(TS/YS):1.25以上である:
【数1】
(上記式1中、前記[C]、[Mn]、[Cr]、[V]、[Mo]、[Cu]および[Ni]は、前記鉄筋に含まれる炭素(C)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)およびニッケル(Ni)の含有量(重量%)である)。
【0009】
一具体例において、前記超高強度鉄筋は、降伏強度(YS)700~850MPa、引張強度/降伏強度(TS/YS)1.25~1.35および延伸率(El)10%以上であってもよい。
【0010】
一具体例において、前記中心部は、フェライト30~45体積%、パーライト30~45体積%およびベイナイト15~25体積%を含む微細組織からなってもよい。
【0011】
一具体例において、前記鉄筋は、横断面を基準として、表層部5~15面積%および中心部85~95面積%を含むことができる。
【0012】
一具体例において、前記中心部は、硬度350Hv以上のコア硬化層を含むことができる。
【0013】
一具体例において、前記コア硬化層は、下部ベイナイト(lower bainite)および平均大きさ5~10μmの微細フェライトを含む微細組織からなってもよい。
【0014】
一具体例において、前記コア硬化層は、硬度350~400Hvであり、前記コア硬化層を除いた中心部は、硬度240~280Hvであり、表層部は、硬度330~360Hvであってもよい。
【0015】
一具体例において、前記鉄筋は、横断面を基準として、前記コア硬化層を15~30面積%含むことができる。
【0016】
本発明の他の観点は、前記超高強度鉄筋の製造方法に関する。一具体例において、前記超高強度鉄筋の製造方法は、炭素(C):0.10~0.45重量%、シリコン(Si):0.5~1.0重量%、マンガン(Mn):0.40~1.80重量%、クロム(Cr):0.10~1.0重量%、バナジウム(V):0超過0.2重量%以下、銅(Cu):0超過0.4重量%以下、モリブデン(Mo):0超過0.5重量%以下、アルミニウム(Al):0.015~0.070重量%、ニッケル(Ni):0超過0.25重量%以下、スズ(Sn):0超過0.1重量%以下、リン(P):0超過0.05重量%以下、硫黄(S):0超過0.03重量%以下、窒素(N):0.005~0.02重量%、残部の鉄(Fe)およびその他の不可避不純物を含み、下記式1による炭素当量(Ceq):0.7以上である半製品を再加熱するステップと、前記再加熱された半製品を仕上げ圧延温度:850~1000℃の条件で熱間圧延して圧延材を製造するステップと、前記圧延材をMs温度以下まで冷却するステップと、を含み、前記冷却は、前記圧延材を500~700℃まで復熱するステップ、を含んでなる超高強度鉄筋の製造方法であり、前記超高強度鉄筋は、中心部と、前記中心部の外周面に形成される表層部と、を含み、前記表層部は、テンパードマルテンサイトを含み、前記中心部は、フェライト、パーライトおよびベイナイトを含む微細組織からなり、前記フェライトは、多角形フェライトおよび針状型フェライトのうちの1つ以上を含み、降伏強度(YS):700MPa以上および引張強度/降伏強度(TS/YS):1.25以上である:
【数2】
(上記式1中、前記[C]、[Mn]、[Cr]、[V]、[Mo]、[Cu]および[Ni]は、前記半製品に含まれる炭素(C)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)およびニッケル(Ni)の含有量(重量%)である)。
【0017】
一具体例において、前記冷却は、前記圧延材の線速6.7~7.2m/sおよび比水量3.7~3.9l/kgの条件で実施することができる。
【0018】
一具体例において、前記再加熱は、1050~1250℃で実施することができる。
【0019】
一具体例において、前記中心部は、硬度350Hv以上のコア硬化層を含むことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の超高強度鉄筋は、高強度および耐震特性に優れ、合金元素添加量の低減および工程の単純化により生産性およびコスト節減効果に優れ、建築構造物への適用時、地震が発生する場合、一般の鉄筋に比べて崩壊時点を遅延させ、建設工期の短縮効果および工事のコスト節減効果に優れることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一具体例による超高強度鉄筋の製造方法を示す図である。
図2】本発明の一具体例による超高強度鉄筋の横断面図である。
図3】比較例1の鉄筋の横断面図である。
図4】(a)は、実施例の鉄筋の表層部の微細組織であり、(b)は、実施例の鉄筋の中心部の微細組織であり、(c)は、実施例の鉄筋の中心部のコア硬化層の微細組織の写真である。
図5】(a)は、比較例1の鉄筋の表層部の微細組織であり、(b)は、比較例1の鉄筋の中心部の微細組織であり、(c)は、比較例1の鉄筋の中心部の微細組織の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。この時、本発明を説明するにあたり、かかる公知の技術または構成に関する具体的な説明が本発明の要旨を不必要にあいまいにしうると判断された場合、その詳細な説明は省略する。
【0023】
そして、後述する用語は本発明における機能を考慮して定義された用語であって、これは、使用者、運用者の意図または慣例などによって異なるので、その定義は本発明を説明する本明細書全般にわたる内容に基づいて行われなければならない。
【0024】
超高強度鉄筋
本発明の一つの観点は、超高強度鉄筋に関する。一具体例において、前記超高強度鉄筋は、炭素(C):0.10~0.45重量%、シリコン(Si):0.5~1.0重量%、マンガン(Mn):0.40~1.80重量%、クロム(Cr):0.10~1.0重量%、バナジウム(V):0超過0.2重量%以下、銅(Cu):0超過0.4重量%以下、モリブデン(Mo):0超過0.5重量%以下、アルミニウム(Al):0.015~0.070重量%、ニッケル(Ni):0超過0.25重量%以下、スズ(Sn):0超過0.1重量%以下、リン(P):0超過0.05重量%以下、硫黄(S):0超過0.03重量%以下、窒素(N):0.005~0.02重量%、残部の鉄(Fe)およびその他の不可避不純物を含む。
【0025】
以下、前記超高強度鉄筋の構成成分について詳しく説明する。
【0026】
炭素(C)
前記炭素(C)は、鋼の強度を高めるのに最も効果的であり、特に引張強度を高める重要な元素である。前記炭素は、オーステナイトに固溶して、焼入れ時にマルテンサイト組織を形成させる。炭素量の増加によって焼入れ硬度を向上させるが、焼入れ時に変形の可能性を大きくする。鉄(Fe)、クロム(Cr)、バナジウム(V)およびチタン(Ti)などの元素と化合して炭化物を形成、強度と硬度を向上させる。
【0027】
一具体例において、前記炭素は、前記超高強度鉄筋の全重量に対して0.10~0.45重量%含まれる。前記炭素を0.10重量%未満で含む時、強度および硬度の確保が難しく、0.45重量%超過で含む場合、焼入れ時に変形の可能性が増加し、延伸率および低温靭性を確保しにくいことがある。好ましくは、0.35~0.40重量%含まれる。
【0028】
シリコン(Si)
前記シリコン(Si)は、モリブデンおよびクロムなどと同様に、硬化能を増加させる元素であり、脱酸剤として使用される。前記シリコンは、強力な脱酸剤であって、2重量%以上添加時には、靭性が低下し、塑性加工性を阻害するため、添加量に限界がある。また、前記シリコンは、テンパリング(焼戻し)時に軟化抵抗性を増大させる効果もある。さらに、硬化能元素として特定の制御冷却範囲で硬化相を形成することができる。
【0029】
一具体例において、前記シリコンは、前記超高強度鉄筋の全重量に対して0.5~1.0重量%含まれる。前記含有量のシリコンを含む時、オーステナイト(γ)→フェライト(α)の相変態温度の変化とフェライト中の炭素の固溶度の変化により、粒界移動を妨げ、粒子の粗大化を防止し、複合フェライト(多角形および針状型)とベイナイトが形成される温度区間で残留バナジウム(V)と炭素および窒素(C、N)の欠陥を誘導してVCN析出物をフェライトの内部に形成して、材質特性と機械的物性に優れることができる。前記シリコンを0.5重量%未満で含む時、その添加効果がわずかであり、1.0重量%超過で含む時、鋼の表面に酸化物を形成して鋼の延性および加工性を低下させることがある。好ましくは、0.50~0.65重量%含まれる。
【0030】
マンガン(Mn)
前記マンガン(Mn)は、鋼のオーステナイト安定化元素で、硬化能を向上させるのに効果的である。マンガンの一部は鋼中に固溶し、一部は鋼中に含有された硫黄と結合して非金属介在物であるMnSを形成するが、前記MnSは延性があり、塑性加工時、加工方向に長く延伸される。しかし、前記MnSの形成により鋼中にある硫黄成分が減少しながら結晶粒が脆弱になり、低融点化合物であるFeSの形成を抑制させることができる。
【0031】
一具体例において、前記マンガンは、前記超高強度鉄筋の全重量に対して0.40~1.80重量%含まれる。前記マンガンを0.40重量%未満で含む時、その添加効果がわずかであり、1.80重量%超過で含む時、MnSなどの非金属介在物の含有量が増加して、溶接時、クラックなどの欠陥が発生しうる。好ましくは、1.2~1.5重量%含まれる。
【0032】
クロム(Cr)
前記クロム(Cr)は、フェライト安定化元素で、本発明の炭素およびマンガン含有鋼に添加する時、溶質妨害効果で炭素の拡散を遅延して粒度の微細化に影響を及ぼし、硬化能を向上させる役割をする。
【0033】
一具体例において、前記クロムは、前記超高強度鉄筋の全重量に対して0.10~1.0重量%含まれる。前記クロムを0.10重量%未満で含む時、その添加効果がわずかであり、1.0重量%超過で含む時、溶接性または熱影響部の靭性が低下することがある。好ましくは、0.2~0.5重量%含まれる。
【0034】
バナジウム(V)
前記バナジウム(V)は、炭化物形成能がクロムより強く、結晶粒を微細化させるため、ステンレス鋼や切削工具鋼の改良にも用いられる。また、他の金属元素とも化合物を形成して析出硬化効果が著しいため、析出硬化形鋼や永久磁石などにも使用される。
【0035】
一具体例において、前記バナジウムは、前記超高強度鉄筋の全重量に対して0超過0.2重量%以下含まれる。前記バナジウムを0.2重量%超過で含む時、生産単価が上昇して経済性が低下し、低温衝撃靭性が低下することがある。好ましくは、0.08~0.15重量%含まれる。
【0036】
銅(Cu)
前記銅(Cu)は、常温でフェライトに約0.35重量%まで固溶し、固溶強化効果を示すので、強度および硬度はやや改善されるものの、延伸率を低下させることがある。銅を含有した鋼は、熱間加工性が問題になり、特に0.5重量%以上含む時、赤熱脆性の原因になる。また、銅が少量含有されていても大気や海水中で耐食性が著しく増加し、0.4%以上添加時、銅の微細析出による析出硬化効果が現れるので、実際のステンレス鋼では約4%程度添加析出させて強力なステンレス鋼を作っている。
【0037】
一具体例において、前記銅は、前記超高強度鉄筋の全重量に対して0超過0.4重量%以下含まれる。前記銅を0.4重量%超過で含む時、熱間加工性、延伸率が低下したり、赤熱脆性が発生しうる。好ましくは、0.1~0.3重量%含まれる。
【0038】
モリブデン(Mo)
前記モリブデン(Mo)は、硬化能を増加させる元素として使用され、本発明において、鋼の強度、靭性および硬化能を向上させることができる。
【0039】
一具体例において、前記モリブデンは、前記超高強度鉄筋の全重量に対して0超過0.5重量%以下含まれる。前記モリブデンを0.5重量%超過で含む時、溶接性が低下することがある。好ましくは、0.001~0.1重量%含まれる。
【0040】
アルミニウム(Al)
前記アルミニウム(Al)は、脱酸剤として機能することができる。一具体例において、前記アルミニウムは、前記超高強度鉄筋の全重量に対して0.015~0.070重量%含まれる。前記アルミニウムを0.015重量%未満で含む時、その添加効果がわずかであり、0.070重量%超過で含む時、酸化アルミニウム(Al)などの非金属介在物の生成量が増加することがある。好ましくは、0.015~0.025重量%含まれる。
【0041】
ニッケル(Ni)
前記ニッケル(Ni)は、鋼の強度を増加させ、低温衝撃値を確保できるようにする。一具体例において、前記ニッケルは、前記超高強度鉄筋の全重量に対して0超過0.25重量%以下含まれる。前記ニッケルを0.25重量%超過で含む時、常温強度が過剰に高くなって溶接性および靭性が劣化することがある。好ましくは、0.0001~0.005重量%含まれる。
【0042】
スズ(Sn)
前記スズ(Sn)は、耐食性を確保するために添加できる。一具体例において、前記スズは、前記超高強度鉄筋の全重量に対して0超過0.1重量%以下含まれる。前記スズを0.1重量%超過で含む時、延伸率が著しく低下することがある。好ましくは、0.0001~0.005重量%含まれる。
【0043】
リン(P)
前記リン(P)は、鋼中に均一に分布していれば大して問題にならないが、通常FePを形成する。前記FePは極めて脆弱で偏析していて、焼鈍処理をしても均質化されず、鍛造、圧延などの加工時に長く伸びる。前記リンは、衝撃抵抗を低下させ、焼戻し脆性を促進し、快削鋼では被削性を改善させるが、一般的に鋼に有害な元素として取扱いされる。
【0044】
一具体例において、前記リンは、前記超高強度鉄筋の全重量に対して0超過0.05重量%以下含まれる。前記リンを0.05重量%超過で含む時、中心偏析および微細偏析を形成して材質に良くない影響を与え、延性を悪化させることがある。好ましくは、0超過0.03重量%以下含まれる。
【0045】
硫黄(S)
前記硫黄(S)は、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)およびモリブデン(Mo)などと結合して鋼の被削性を改善させ、マンガンと結合してMnS介在物を形成する。鋼中に前記マンガン含有量が十分でない場合、鉄と結合してFeSを形成する。このFeSは、非常に脆弱で溶融点が低いため、熱間および冷間加工時に亀裂を起こす。したがって、このようなFeS介在物の形成を避けるために、マンガンと硫黄との比は約5:1で含むことができる。
【0046】
一具体例において、前記硫黄は、前記超高強度鉄筋の全重量に対して0超過0.03重量%以下含まれる。前記硫黄を0.03重量%超過で含む時、延性が大きく低下し、MnSなどの非金属介在物の発生量が著しく増加することがある。好ましくは、0超過0.025重量%以下含まれる。
【0047】
窒素(N)
前記窒素(N)は、極めて微量でも鋼の機械的性質に大きな影響を及ぼし、引張強度、降伏強度を増加させるのに対し、延伸率を低下させる。特に衝撃値の減少および遷移温度の上昇が著しい。前記窒素は、侵入型元素であって、拡散速度が速く、フェライトに対して0.1重量%から0.003重量%まで連続的に溶解度の変化を示す。また、前記窒素は、チタン、ジルコニウム、バナジウムおよびニオブなどと窒化物を形成して結晶粒を微細化させる。
【0048】
一具体例において、前記窒素は、前記超高強度鉄筋の全重量に対して0.005~0.02重量%含まれる。前記窒素を0.005重量%未満で含む時、その添加効果がわずかであり、0.02重量%超過で含む時、鋼の延伸率および成形性が低下することがある。好ましくは、0超過0.01重量%以下含まれる。
【0049】
一具体例において、前記超高強度鉄筋は、下記式1で表される炭素当量(Ceq)が0.7以上である:
【数3】
(上記式1中、前記[C]、[Mn]、[Cr]、[V]、[Mo]、[Cu]および[Ni]は、前記鉄筋に含まれる炭素(C)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)およびニッケル(Ni)の含有量(重量%)である)。
【0050】
前記炭素当量が0.7以上の場合、本発明の鉄筋に求められる耐震性能と降伏強度を達成することができる。前記炭素当量が0.7未満の場合、本発明の鉄筋の耐震性能と強度が低下することがある。例えば、前記炭素当量は0.7~0.8であってもよい。
【0051】
図2は、本発明の一具体例による超高強度鉄筋の横断面図である。前記図2を参照すれば、前記超高強度鉄筋は、中心部20と、中心部20の外周面に形成される表層部10と、を含む。
【0052】
前記表層部は、テンパードマルテンサイト(tempered martensite)を含む。
【0053】
前記中心部は、フェライト(ferrite)、パーライト(pearlite)およびベイナイト(bainite)を含む微細組織からなる。例えば、前記中心部は、フェライト30~45体積%、パーライト30~45体積%およびベイナイト15~25体積%を含む微細組織からなってもよい。前記微細組織の体積分率の条件で中心部を形成する時、強度および耐震性能がすべて優れることができる。
【0054】
前記フェライトは、多角形フェライト(polygonal ferrite)および針状型フェライト(acicular ferrite)のうちの1つ以上を含む。
【0055】
一具体例において、前記超高強度鉄筋は、横断面を基準として、表層部5~15面積%および中心部85~95面積%を含むことができる。前記条件で強度および耐震性能に優れることができる。例えば、表層部5~10面積%および中心部90~95面積%を含むことができる。
【0056】
前記図2を参照すれば、中心部20は、コア硬化層22を含むことができる。前記コア硬化層は、応力誘起変態により形成され、耐震特性および強度が同時に優れることができる。
【0057】
前記コア硬化層は、下部ベイナイト(lower bainite)および平均大きさ5~10μmの微細フェライトを含む微細組織からなってもよい。前記コア硬化層が前記微細組織からなる場合、耐震特性および強度が同時に優れることができる。例えば、前記微細フェライトは、平均大きさが6~8μmであってもよい。
【0058】
前記コア硬化層は、硬度が350Hv以上であってもよい。前記条件で本発明の超強度鉄筋の耐震特性と強度が同時に優れることができる。
【0059】
例えば、前記コア硬化層は、硬度350~400Hvであり、前記コア硬化層を除いた中心部は、硬度240~280Hvであり、表層部は、硬度330~360Hvであってもよい。
【0060】
一具体例において、前記超高強度鉄筋は、横断面を基準として、前記コア硬化層を15~30面積%含むことができる。前記条件でコア硬化層を形成する時、耐震特性と強度に優れることができる。例えば、前記コア硬化層を15~25面積%含むことができる。
【0061】
一具体例において、前記超高強度鉄筋は、降伏強度(YS)700MPa以上、引張強度/降伏強度(TS/YS)1.25以上および延伸率(El)10%以上である。前記条件で強度および耐震性能がすべて優れることができる。例えば、前記超高強度鉄筋は、降伏強度(YS)700~850MPa、引張強度/降伏強度(TS/YS)1.25~1.35および延伸率(El)10~20%であってもよい。
【0062】
超高強度鉄筋の製造方法
本発明の他の観点は、超高強度鉄筋の製造方法に関する。図1は、本発明の一具体例による超高強度鉄筋の製造方法を示す図である。前記図1を参照すれば、前記超高強度鉄筋の製造方法は、(S10)半製品再加熱ステップと、(S20)圧延材製造ステップと、(S30)冷却ステップと、を含む。
【0063】
より具体的には、前記超高強度鉄筋の製造方法は、(S10)炭素(C):0.10~0.45重量%、シリコン(Si):0.5~1.0重量%、マンガン(Mn):0.40~1.80重量%、クロム(Cr):0.10~1.0重量%、バナジウム(V):0超過0.2重量%以下、銅(Cu):0超過0.4重量%以下、モリブデン(Mo):0超過0.5重量%以下、アルミニウム(Al):0.015~0.070重量%、ニッケル(Ni):0超過0.25重量%以下、スズ(Sn):0超過0.1重量%以下、リン(P):0超過0.05重量%以下、硫黄(S):0超過0.03重量%以下、窒素(N):0.005~0.02重量%、残部の鉄(Fe)およびその他の不可避不純物を含み、炭素当量(Ceq):0.7以上である半製品を再加熱するステップと、(S20)前記再加熱された半製品を仕上げ圧延温度:850~1000℃の条件で熱間圧延して圧延材を製造するステップと、(S30)前記圧延材をMs温度以下まで冷却するステップと、を含み、前記冷却は、前記圧延材を500~700℃まで復熱するステップ、を含んでなる。
【0064】
前記製造された超高強度鉄筋は、中心部と、前記中心部の外周面に形成される表層部と、を含み、前記表層部は、テンパードマルテンサイトを含み、前記中心部は、フェライト、パーライトおよびベイナイトを含む微細組織からなり、前記フェライトは、多角形フェライトおよび針状型フェライトのうちの1つ以上を含み、降伏強度(YS):700MPa以上および引張強度/降伏強度(TS/YS):1.25以上である。
【0065】
以下、前記超高強度鉄筋の製造方法をステップごとに詳しく説明する。
【0066】
(S10)半製品再加熱ステップ
前記ステップは、炭素(C):0.10~0.45重量%、シリコン(Si):0.5~1.0重量%、マンガン(Mn):0.40~1.80重量%、クロム(Cr):0.10~1.0重量%、バナジウム(V):0超過0.2重量%以下、銅(Cu):0超過0.4重量%以下、モリブデン(Mo):0超過0.5重量%以下、アルミニウム(Al):0.015~0.070重量%、ニッケル(Ni):0超過0.25重量%以下、スズ(Sn):0超過0.1重量%以下、リン(P):0超過0.05重量%以下、硫黄(S):0超過0.03重量%以下、窒素(N):0.005~0.02重量%、残部の鉄(Fe)およびその他の不可避不純物を含む半製品を再加熱するステップである。
【0067】
一具体例において、前記半製品は、前述した合金成分の溶鋼を連続鋳造して製造されたブルームまたはビレットであってもよい。
【0068】
前記半製品に含まれる成分は前述したものと同一であるので、これに関する詳しい説明は省略する。
【0069】
一具体例において、前記半製品は、下記式1で表される炭素当量(Ceq)が0.7以上である:
【数4】
(上記式1中、前記[C]、[Mn]、[Cr]、[V]、[Mo]、[Cu]および[Ni]は、前記半製品に含まれる炭素(C)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)およびニッケル(Ni)の含有量(重量%)である)。
【0070】
前記炭素当量が0.7以上の場合、本発明の鉄筋に求められる耐震性能と降伏強度を達成することができる。前記炭素当量が0.7未満の場合、本発明の鉄筋の耐震性能と強度が低下することがある。例えば、前記炭素当量は0.7~0.8であってもよい。例えば、0.70、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79または0.80であってもよい。
【0071】
一具体例において、前記再加熱は、1050~1250℃で実施できる。前記条件で再加熱する時、偏析成分と析出物が十分に再固溶し、圧延負荷を最小化することができる。例えば、前記再加熱は、1050~1150℃で実施できる。
【0072】
(S20)圧延材製造ステップ
前記ステップは、前記再加熱された半製品を仕上げ圧延温度:850~1000℃の条件で熱間圧延して圧延材を製造するステップである。
【0073】
例えば、前記圧延材は、前記再加熱された半製品を1050~1150℃の温度で熱間圧延を開始して、仕上げ圧延温度:850~1000℃の条件で終了して製造できる。一具体例において、前記熱間圧延は、粗圧延(RM)、中間仕上げ圧延(IM)および仕上げ圧延(FM)などを経て実施できる。
【0074】
前記熱間圧延時、仕上げ圧延温度850℃未満で実施する場合、圧延負荷を誘発して生産性を低下させ、熱処理効果を低減させ、前記仕上げ圧延温度が1000℃超過で実施する場合、粗大パーライト組織が形成されて強度が低下することがある。例えば、仕上げ圧延温度940~1000℃の条件で実施することができる。
【0075】
(S30)冷却ステップ
前記ステップは、前記圧延材をテンプコアを経てMs温度以下まで冷却するステップである。例えば、前記圧延材をテンプコア(tempcore)工程を経て前記圧延材の表面温度をマルテンサイトの変態開始温度(Ms温度)以下まで冷却することができる。
【0076】
前記圧延材の表面温度をMs温度を超える温度で冷却終了時、本発明が目標とする鉄筋の複合微細組織を形成しにくく、これによって本発明が目標とする強度確保が難しいことがある。
【0077】
一具体例において、前記テンプコア工程時、前記冷却された圧延材を500~700℃まで復熱するステップを含む。前記復熱温度を確保できない場合、目的とする表層部での硬化層の厚さを確保することができない。例えば、前記冷却された圧延材を630~680℃まで復熱することができる。前記圧延材は、前記復熱後に、空冷できる。
【0078】
前記冷却は、テンプコア工程を経て前記圧延材の表面をMs以下まで冷却して、表層部を形成し、前記表層部を除いた圧延材の中心部は、制御冷却により応力誘起変態を誘発することがある。前記冷却時、前記中心部は、多角形および針状型のうちの1つ以上のフェライト30~45体積%、パーライト30~45体積%およびベイナイト15~25体積%を含む複合微細組織が形成されかつ、前記中心部に下部ベイナイト(応力誘起ベイナイト)および微細フェライトで構成されたコア硬化層が形成される。
【0079】
一具体例において、前記テンプコア工程時、前記圧延材の線速6.7~7.2m/sおよび比水量3.7~3.9l/kg(または3.7~3.9l/圧延材-kg)の条件で実施することができる。前記条件で比水量および線速を制御する時、本発明が目標とする復熱温度を達成することができ、前記超高強度鉄筋の表層部の形成を制御し、誘起応力変態により前記超高強度鉄筋の中心部にベイナイトおよび微細フェライトを含む微細組織からなるコア硬化層の形成を誘導することができる。また、前記圧延材の線速および比水量の条件で冷却が十分に行われて、本発明が目標とする復熱温度範囲を達成することができる。
【0080】
一具体例において、前記超高強度鉄筋は、横断面を基準として、表層部5~15面積%および中心部85~95面積%を含むことができる。前記条件で強度および耐震性能に優れることができる。例えば、表層部5~10面積%および中心部90~95面積%を含むことができる。
【0081】
一具体例において、前記中心部は、コア硬化層を含むことができる。前記コア硬化層は、応力誘起変態により形成され、耐震特性および強度が同時に優れることができる。
【0082】
前記コア硬化層は、下部ベイナイト(lower bainite)および平均大きさ5~10μmの微細フェライトを含む微細組織からなってもよい。本明細書において、前記「大きさ」は、前記微細フェライトの最大長さを意味することができる。前記コア硬化層が前記微細組織からなる場合、耐震特性および強度が同時に優れることができる。例えば、前記微細フェライトは、平均大きさが6~8μmであってもよい。
【0083】
前記コア硬化層は、硬度が350Hv以上であってもよい。前記条件で本発明の超強度鉄筋の耐震特性と強度が同時に優れることができる。
【0084】
例えば、前記コア硬化層は、硬度350~400Hvであり、前記コア硬化層を除いた中心部は、硬度240~280Hvであり、表層部は、硬度330~360Hvであってもよい。
【0085】
一具体例において、前記超高強度鉄筋は、横断面を基準として、前記コア硬化層を15~30面積%含むことができる。前記条件でコア硬化層を形成する時、耐震特性と強度に優れることができる。例えば、前記コア硬化層を15~25面積%含むことができる。
【0086】
一具体例において、前記超高強度鉄筋は、降伏強度(YS)700MPa以上、引張強度/降伏強度(TS/YS)1.25以上および延伸率(El)10%以上であってもよい。前記条件で強度および耐震性能がすべて優れることができる。例えば、前記超高強度鉄筋は、降伏強度(YS)700~850MPa、引張強度/降伏強度(TS/YS)1.25~1.35および延伸率(El)10~20%であってもよい。
【実施例
【0087】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成および作用をより詳細に説明する。ただし、これは、本発明の好ましい例として提示されたものであり、いかなる意味でもこれによって本発明が制限されるとは解釈されない。
【0088】
実施例および比較例1~8
下記表1のような成分および含有量の合金成分と残部の鉄(Fe)およびその他の不可避不純物を含む半製品を製造した。また、前記半製品の炭素当量を下記式1によって計算して、表1に併せて示した。
【数5】
(上記式1中、前記[C]、[Mn]、[Cr]、[V]、[Mo]、[Cu]および[Ni]は、前記半製品に含まれる炭素(C)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)およびニッケル(Ni)の含有量(重量%)である)。
【0089】
その後、実施例および比較例の成分の半製品を下記表2の条件で再加熱した後、熱間圧延を実施して圧延材を製造した。その後、前記圧延材を前記表2の線速と比水量の条件でテンプコア冷却を経てMs温度以下まで冷却した。また、前記テンプコア冷却時、前記圧延材の復熱温度を下記表2に併せて示した。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
前記実施例および比較例1~8で製造された鉄筋に対して、降伏強度(YS)、降伏比(YS/TS)および延伸率(%)と、鉄筋の中心部の微細組織と、鉄筋の横断面を基準とした表層部の断面積を測定して、その結果を下記表3に示した。
【0093】
【表3】
【0094】
前記表3の結果を参照すれば、前記実施例1は、前記比較例1および2に比べてバナジウム(V)含有量を節減したにもかかわらずシリコン(Si)含有量を増加させて、鉄筋の十分な材質確保が可能であることが分かった。前記実施例におけるシリコン(Si)の含有量増加は、オーステナイト(γ)→フェライト(α)の相変態温度の変化とフェライト内の炭素固溶度の変化で粒界移動を妨げて粒子の粗大化を防止し、複合(多角形+針状型)フェライトとベイナイトが形成される温度区間で残留バナジウム(V)と炭素、窒素(C、N)の結合を誘導して、VCN析出物をフェライトの内部に形成して材質の上昇に寄与したと判断される。また、前記実施例は、求められる鉄筋の物性を確保するために、従来の冷却に従うのではなく、テンプコア時、比水量と線速の制御で表層部の制御と、鉄筋の中心部にベイナイトおよび微細フェライトで構成されたコア硬化層の形成を誘導した。
【0095】
下記の図2は、実施例により製造された超高強度鉄筋の横断面図であり、図3は、比較例1の鉄筋の横断面図を示したものである。前記図2を参照すれば、本発明の実施例の鉄筋は、前記中心部は、フェライト42体積%、パーライト34体積%およびベイナイト24体積%を含む微細組織からなる中心部20と、中心部20の外周面に形成され、テンパードマルテンサイトを含む微細組織からなる表層部10とを含み、中心部20には、下部ベイナイトおよび微細フェライトを含む複合微細組織からなるコア硬化層22が形成されたことが分かる。
【0096】
前記図3を参照すれば、前記比較例1の鉄筋は、多角形フェライト35体積%およびパーライト65体積%を含む中心部2と、中心部2の外部面に形成され、テンパードマルテンサイトを含む微細組織からなる表層部1とを含むことが分かる。
【0097】
下記の図4(a)は、実施例の鉄筋の表層部の微細組織であり、図4(b)は、実施例の鉄筋の中心部の微細組織であり、図4(c)は、実施例の鉄筋の中心部のコア硬化層の微細組織の写真である。また、下記の図5(a)は、比較例1の鉄筋の表層部の微細組織であり、図5(b)は、比較例1の鉄筋の中心部の微細組織であり、図5(c)は、比較例1の鉄筋の中心部の微細組織の写真である。
【0098】
前記図4および図5を参照すれば、前記実施例の鉄筋は、マルテンサイトを含む微細組織を有する表層部(硬度370Hv)と、フェライト、パーライトおよびベイナイトを含む中心部(硬度260Hv)とが形成され、前記中心部には、鉄筋横断面を基準として、約15~25面積%のコア硬化層(硬度350Hv)が形成されたことが分かった。また、前記コア硬化層は、下部ベイナイト(lower bainite)および平均大きさ約7~8μmの微細フェライトを含む微細組織が形成されたことが分かった。
【0099】
これに対し、比較例1の鉄筋は、マルテンサイトを含む微細組織を有する表層部(硬度370Hv)と、多角形フェライトを含む中心部(硬度260Hv)とが形成され、前記中心部に前記実施例のようなコア硬化層が形成されていないことが分かった。
【0100】
前記図4および図5を参照すれば、実施例および比較例1の鉄筋は、明確な微細組織の差を確認することができ、微小硬度の測定結果からも、実施例の鉄筋の中心部の硬度値は、比較例1に比べて約100Hv高いことを確認することができた。前記実施例のコア硬化層は、仕上げ熱間圧延時に蓄積された変形エネルギーと、冷却制御による連携効果で応力誘起変態(Stress Induced Transformation、SIT)による相制御により形成されたものであり、本発明の比水量3.7~3.9l/圧延材-kgの条件でコア硬化層の確保が可能であることが分かった。
【0101】
しかし、シリコン(Si)の添加量が過度に高くなると、強度確保には有利であるが、延伸率を低下する影響を及ぼすので、適正なシリコン(Si)添加が重要であることが分かる。
【0102】
また、降伏強度(YS)700MPa以上の超高強度鋼材に耐震性能を同時に確保するためには、一定の炭素当量(Ceq)以上を確保しなければならない。炭素当量(Ceq)が0.64である比較例3の場合、シリコン(Si)添加効果により耐震性能の確保の可能性を示すものの、実施例1に比べて強度が低下することが分かる。さらに、炭素当量(Ceq)が0.67である比較例4の鉄筋も、本発明が目標とする降伏強度と耐震性能に及ばないことを確認することができる。これは、耐震性能と強度の確保が可能なシリコン添加と炭素当量0.7以上をすべて確保しなければならないことが分かる。
【0103】
本発明の単純な変形乃至変更はこの分野における通常の知識を有する者によって容易に実施可能であり、このような変形や変更はすべて本発明の領域に含まれる。
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】