IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-作業機械および作業機械の制御システム 図1
  • 特許-作業機械および作業機械の制御システム 図2
  • 特許-作業機械および作業機械の制御システム 図3
  • 特許-作業機械および作業機械の制御システム 図4
  • 特許-作業機械および作業機械の制御システム 図5
  • 特許-作業機械および作業機械の制御システム 図6
  • 特許-作業機械および作業機械の制御システム 図7
  • 特許-作業機械および作業機械の制御システム 図8
  • 特許-作業機械および作業機械の制御システム 図9
  • 特許-作業機械および作業機械の制御システム 図10
  • 特許-作業機械および作業機械の制御システム 図11
  • 特許-作業機械および作業機械の制御システム 図12
  • 特許-作業機械および作業機械の制御システム 図13
  • 特許-作業機械および作業機械の制御システム 図14
  • 特許-作業機械および作業機械の制御システム 図15
  • 特許-作業機械および作業機械の制御システム 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】作業機械および作業機械の制御システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20230331BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
E02F9/24 B
E02F9/20 Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022550139
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2021013842
(87)【国際公開番号】W WO2022208725
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩飽 晃司
(72)【発明者】
【氏名】井村 進也
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/181874(WO,A1)
【文献】特開平8-27841(JP,A)
【文献】特開平9-71965(JP,A)
【文献】特開2008-286300(JP,A)
【文献】特許第6687993(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/42-3/43
E02F 3/84-3/85
E02F 9/00-9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の動作制限制御を行う作業領域を設定する作業領域設定装置と、
前記作業機械の位置または姿勢の少なくとも一つを取得する取得装置と、
前記作業領域内での前記作業機械の動作制限制御を有効にする有効状態と前記作業領域内での前記作業機械の動作制限制御を無効にする無効状態とを切り替え、前記動作制限制御が有効に切り替えられたときに前記作業機械の前記作業領域内での動作制限制御を行うコントローラと、
作業現場内の任意の指定領域、および、前記指定領域による前記作業領域での前記動作制限制御の有効または無効を設定する指定領域設定装置と、を備え、
前記コントローラは、前記作業機械が前記指定領域内に含まれたときに、前記指定領域設定装置で設定された前記指定領域による前記動作制限制御の有効または無効の設定に従い、前記作業領域での動作制限制御を有効状態または無効状態にすることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記指定領域を前記作業領域の形状に応じて設定する指定領域半自動設定装置を備えることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業装置において、
前記指定領域を、前記作業領域と一致するように、または、前記作業領域の外側に設定する指定領域半自動設定装置を備えることを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において、
前記指定領域を前記作業領域内の動作制御内容に応じて設定する指定領域半自動設定装置を備えることを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1に記載の作業機械において、
前記指定領域と前記作業領域と前記作業領域での動作制限制御の有効状態または無効状態を同時に表示する表示装置を備えることを特徴とする作業機械。
【請求項6】
作業機械の動作制御を行う作業領域を設定する作業領域設定装置と、
前記作業機械の位置または姿勢の少なくとも一つを取得する取得装置と、を備え、
前記作業領域内での前記作業機械の動作制限制御を有効にする有効状態と前記作業領域内での前記作業機械の動作制限制御を無効にする無効状態とを切り替え、前記動作制限制御が有効に切り替えられたときに前記作業機械の前記作業領域内での動作制限制御を行う作業機械の制御システムであって、
作業現場内の任意の指定領域、および、前記指定領域による前記作業領域での前記動作制限制御の有効または無効を設定する指定領域設定装置を備え、
前記作業機械が前記指定領域内に含まれたときに、前記指定領域設定装置で設定された前記指定領域による前記動作制限制御の有効または無効の設定に従い、前記作業領域での動作制限制御を有効状態または無効状態にすることを特徴とする作業機械の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械および作業機械の制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの作業機械において、施工効率の改善または安全性向上のために、作業現場内の指定空間(以下、作業領域と呼称)でアクチュエータ動作に制限を設ける作業機械が提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1、2に記載の旋回可能な作業機械では、作業機械の現在姿勢を演算し、あらかじめ設定された任意の範囲外に作業装置、たとえばブーム、アーム、バケットの構造体のいずれかが侵入する可能性がある場合、旋回運動を停止するように制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-52383号公報
【文献】特開2013-159421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1、2のいずれの場合でも、単純な面や作業機械の動作範囲のみを想定しており、複雑な作業領域が要求される作業現場では、作業領域の設定および作業領域の有効化/無効化を行う際に施工効率の低下が発生する。具体的には、作業領域内での長時間の作業領域入力や作業領域内での有効・無効設定などに伴う、別の作業機械の進路妨害、作業妨害などが発生し得る。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、複雑な作業領域入力に伴う施工効率の低下を防止することのできる作業機械および作業機械の制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の作業機械は、作業機械の動作制限制御を行う作業領域を設定する作業領域設定装置と、前記作業機械の位置または姿勢の少なくとも一つを取得する取得装置と、前記作業領域内での前記作業機械の動作制限制御を有効にする有効状態と前記作業領域内での前記作業機械の動作制限制御を無効にする無効状態とを切り替え、前記動作制限制御が有効に切り替えられたときに前記作業機械の前記作業領域内での動作制限制御を行うコントローラと、作業現場内の任意の指定領域、および、前記指定領域による前記作業領域での前記動作制限制御の有効または無効を設定する指定領域設定装置と、を備え、前記コントローラは、前記作業機械が前記指定領域内に含まれたときに、前記指定領域設定装置で設定された前記指定領域による前記動作制限制御の有効または無効の設定に従い、前記作業領域での動作制限制御を有効状態または無効状態にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業領域の設定を作業領域の内外にかかわらず行うことができ、作業領域内での作業機械の停止状態を防止することができ、施工効率の改善を図ることができる。
【0009】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例1に係る作業機械の一例を示す斜視図。
図2】本発明の実施例1に係る作業機械の油圧回路の一例を示す回路図。
図3】本発明の実施例1に係る作業領域、指定領域、作業機械の一例を示す上面図。
図4】本発明の実施例1に係るシステム構成図。
図5】本発明の実施例1に係る作業領域有効無効判定のフローチャート。
図6】本発明の実施例1に係る作業領域動作制御のフローチャート。
図7】本発明の実施例2に係るシステム構成図。
図8】本発明の実施例2に係る作業領域有効無効判定のフローチャート。
図9】本発明の実施例2に係る作業領域、指定領域、作業機械の一例を示す上面図。
図10】本発明の実施例3に係る作業領域有効無効判定のフローチャート。
図11】本発明の実施例3に係る作業領域、指定領域、作業機械の一例を示す上面図。
図12】本発明の実施例4に係るシステム構成図。
図13】本発明の実施例4に係る作業領域有効無効判定のフローチャート。
図14】本発明の実施例4に係る作業領域、指定領域、作業機械の一例を示す上面図。
図15】本発明の実施例5に係る作業機械の一例を示す斜視図。
図16】本発明の実施例5に係る表示装置の表示画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。各図において、同一の機能を有する部分には同一の符号を付して繰り返し説明を省略する場合がある。以下では、本発明の実施形態に係る作業機械として、油圧ショベルを例に挙げて説明する。なお、本発明を適用可能な作業機械は、油圧ショベル以外の作業装置と移動装置を有する作業機械、たとえば、ホイールローダやロードローラ、ダンプトラック、ブルドーザなどでもよく、その形態は問わない。
【0012】
[実施例1]
(全体構成)
図1は、本発明の実施例1に係る制御システムを搭載した作業機械の一例である油圧ショベルの斜視図である。
【0013】
油圧ショベル1は、下部走行体1Cと、旋回装置4を介して下部走行体1Cに回動可能なように備え付けられた上部旋回体1Bと、上部旋回体1Bに取り付けられ、掘削作業や積込作業などを行う作業装置1Aを備えている。下部走行体1Cと上部旋回体1Bは、本実施例において走行動作と旋回動作を行う移動装置1D(以下、車体とも呼称する)を構成する。
【0014】
作業装置1Aは、上部旋回体1Bと回動可能に取り付けられたブーム8と、ブーム8と回動可能に取り付けられたアーム9と、アーム9と回動可能に取り付けられたバケット10と、バケット10およびアーム9と回動可能に取り付けられたバケットリンク13と、ブーム8と上部旋回体1Bに接続され、ブーム8と上部旋回体1Bとの回動角度を任意に変更するブームシリンダ5と、ブーム8とアーム9に接続され、ブーム8とアーム9の回動角度を任意に変更するアームシリンダ6と、アーム9とバケットリンク13に接続され、アーム9とバケット10の回動角度を任意に変更するバケットシリンダ7で構成される。
【0015】
下部走行体1Cは、走行モータ3により駆動され、車体を任意位置へ移動可能にする。旋回装置4は、下部走行体1Cと上部旋回体1Bの回動角度(すなわち、旋回角度)を任意に変更する旋回モータ11で構成される。以下では、作業装置1A駆動用のブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7、走行動作用の走行モータ3、旋回動作用の旋回モータ11をそれぞれ、油圧ショベル1のアクチュエータと呼称する場合がある。
【0016】
上部旋回体1Bには、タンク14(図2)、可変ポンプ15、エンジン(原動機)16、流量制御弁(ユニット)17、インターフェース18、コントローラ500などが設置されている。コントローラ500は、図示は省略するが、各種演算を行うCPU(Central Processing Unit)、CPUによる演算を実行するためのプログラムを格納するROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるRAM(Random Access Memory)などを含むコンピュータとして構成されている。コントローラ500の各機能は、CPUが、記憶装置に格納された各種プログラムをRAMにロードして実行することにより、実現される。
【0017】
インターフェース18は、作業領域や指定領域、指定領域による作業領域の有効・無効(後で説明)を入力するためのものである。なお、作業領域、指定領域などの設定はオペレータに限らず周囲作業者などでもよく、入力の形態は問わない。また、本実施例では、上部旋回体1B(たとえば運転室)に設けられたインターフェース18を介して作業領域、指定領域などを入力・設定するが、作業領域、指定領域などは、例えばサーバを介して車体外から入力・設定してもよい。
【0018】
すなわち、インターフェース18は、本制御システムにおいて作業領域を入力・設定する作業領域設定装置501と指定領域および指定領域による作業領域の有効・無効を入力・設定する指定領域設定装置504を構成する(図4)。
【0019】
油圧ショベル1は、センサとして、ブーム8、アーム9、バケット10に備えられ、リンク節の対地角度を計測するIMU51a、51b、51c(以下、IMU51a、51b、51cを纏めて作業機IMU51と呼称)と、上部旋回体1B上に備えられ、上部旋回体1Bの対地角度を計測する上部旋回体IMU53と、上部旋回体1Bのグローバル座標を計測するGNSS52を備える。GNSS52と上部旋回体IMU53の計測結果から、車体の位置および姿勢を演算することができ、作業機IMU51(51a、51b、51c)の計測結果から、作業装置1Aの位置および姿勢を演算することができる。なお、本実施例ではIMUを位置・姿勢の取得例としたが、取得装置による位置・変位の取得方法は、ロータリセンサ、ポテンショメータ、カメラ、GNSS、トータルステーションなど位置・姿勢を検出・演算できればその形態は問わない。また、油圧ショベル1は、位置・姿勢をたとえば車体外に設置された検出装置(カメラなど)からの出力としてサーバを介して取得してもよい。
【0020】
すなわち、GNSS52と上部旋回体IMU53は、本制御システムにおいて車体の位置および姿勢を取得する作業機械位置・姿勢取得装置502を構成し、作業機IMU51は、本制御システムにおいて作業装置1Aの位置および姿勢を取得する作業装置位置・姿勢取得装置503を構成する(図4)。
【0021】
油圧ショベル1を構成する油圧回路について説明する。図2に油圧ショベル1の油圧回路の一例を示す。
【0022】
油圧回路は、動力を発生させるエンジン16と、上部旋回体1B上の任意の位置に置かれたタンク14と、エンジン16と接続され、タンク14内の作動油をエンジン16の動力を以て任意の圧力または流量の圧油に変換する可変ポンプ15と、可変ポンプ15とブームシリンダ5やアームシリンダ6、バケットシリンダ7、旋回モータ11、走行モータ3などのアクチュエータ12とコントローラ500と接続され、可変ポンプ15より吐出された圧油のうち、任意の流量をアクチュエータ12に送ることのできる流量制御弁17と、流量制御弁17の流量を制御するコントローラ500を備えて構成される。コントローラ500が流量制御弁17からアクチュエータ12に送る流量を制御する制御指令を出力することにより、アクチュエータ12の動作速度、ひいては、作業装置1Aおよび移動装置1Dの動作速度を制限(減速ないし停止)することができる。
【0023】
なお、エンジン16は動力発生装置の一例であり、エンジンや電動機など動力が発生可能ならその形態は問わない。また、流量制御弁17は流量が制御できれば、油圧パイロット式の弁のパイロット圧を電磁弁で制御する間接的な制御方法でもよいし、電磁弁で直接的に制御する方法でもよい。
【0024】
図3は、本発明の実施例1に係る作業領域、指定領域、作業機械の一例を示す上面図である。
【0025】
作業領域111は、油圧ショベル1の作業装置1Aおよび移動装置1Dいずれかまたは双方の速度を制限する減速領域111a、作業装置1Aおよび移動装置1Dのいずれかまたは双方の動作を停止させる停止領域111b、作業装置1Aおよび移動装置1Dの速度および動作制限は行わない非制限領域111cを有する。
【0026】
なお、作業領域111は、アクチュエータ動作に任意の規則を与える領域であればその形態は問わず、実施例1の状態に加え、指定アクチュエータの動作禁止や作業機械の特定姿勢への追従制御などでもよい。
【0027】
また、作業領域111の減速領域111a、停止領域111b、非制限領域111cは、作業領域111の内部に含まれていれば、その3次元形状、分割数(個数)は問わない。
【0028】
また、本制御システムでは、作業領域111(111a、111b、111c)内での作業装置1Aおよび移動装置1Dの動作制限制御を有効にする「作業領域111の有効状態」と、作業領域111(111a、111b、111c)内での作業装置1Aおよび移動装置1Dの動作制限制御を無効にする「作業領域111の無効状態」とが切り替え可能となっている(後で説明)。
【0029】
指定領域401は、作業現場内の任意空間であり、作業領域111の有効・無効(すなわち、作業領域111内の動作制限制御の有効・無効)を設定するための領域である。指定領域401は、作業領域111の内側に含まれてもよいし(図3)、作業領域111の外側に含まれてもよい。
【0030】
(システム構成)
図4は、本実施例のシステム構成図である。
【0031】
本実施例の制御システムは、インターフェース18により入力された任意の三次元または二次元形状に作業領域111を設定できる作業領域設定装置501と、GNSS52および上部旋回体IMU53より油圧ショベル(作業機械)1の車体の位置・姿勢を計測・演算する作業機械位置・姿勢取得装置502と、作業機IMU51より作業装置1Aの位置・姿勢を計測・演算する作業装置位置・姿勢取得装置503と、インターフェース18により入力された任意の三次元または二次元形状に指定領域401を設定できる指定領域設定装置504と、演算を行うコントローラ500を備える。
【0032】
コントローラ500は、作業領域設定装置501で設定した作業領域111を記録する作業領域記録部505と、指定領域設定装置504で設定した指定領域401と指定領域401による作業領域111の有効・無効を記録する指定領域記録部512と、作業機械位置・姿勢取得装置502より得た位置・姿勢データを演算し、作業領域動作制御部511や作業領域有効無効判定部506のデータに適した形、たとえば座標変換等、に演算する作業機械位置・姿勢演算部509と、作業装置位置・姿勢取得装置503より得た位置・姿勢データを演算し、作業領域動作制御部511や作業領域有効無効判定部506のデータに適した形、たとえば座標変換等、に演算する作業装置位置・姿勢演算部510と、作業機械位置・姿勢演算部509と作業装置位置・姿勢演算部510で演算した姿勢および指定領域記録部512に記録した指定領域401の情報から作業領域111の有効・無効を判定する作業領域有効無効判定部506と、作業領域記録部505に記録した作業領域111の情報、作業機械位置・姿勢演算部509で演算した車体の姿勢、作業装置位置・姿勢演算部510で演算した作業装置1Aの姿勢、作業領域有効無効判定部506から出力された有効無効判定値から作業領域111内の油圧ショベル1の作業装置1Aおよび移動装置1Dの動作を決定する作業領域動作制御部511を備える。
【0033】
コントローラ500において、作業領域有効無効判定部506は、油圧ショベル1の位置が指定領域401内に含まれるかどうかの判定を繰り返し行い、油圧ショベル1の位置が指定領域401内に含まれたときに、指定領域記録部512に記録した指定領域401による作業領域111の有効・無効に従い(指定領域401による作業領域111の有効・無効に一致するように)、作業領域111を有効状態または無効状態にする有効無効判定値を作業領域動作制御部511へ出力する。
【0034】
作業領域動作制御部511は、油圧ショベル1の位置が作業領域111(減速領域111a、停止領域111b、非制限領域111c)内に含まれるかどうかの判定を繰り返し行い、油圧ショベル1の位置が作業領域111(減速領域111a、停止領域111b、非制限領域111c)内に含まれたときに、油圧ショベル1の作業装置1Aおよび移動装置1Dの動作制限制御を行う制御指令を出力する。このとき、作業領域動作制御部511は、作業領域有効無効判定部506から出力された有効無効判定値(作業領域111の有効・無効)に応じて作業領域111を有効状態または無効状態にし(切り替え)、作業領域111が有効状態のときに、前述した油圧ショベル1の作業装置1Aおよび移動装置1Dの動作制限制御を行う制御指令を出力する。
【0035】
(動作)
指定領域401による作業領域111内の動作制御の有効無効判定の動作状態のフローを図5に示す。
【0036】
まず、オペレータなどにより、インターフェース18を介し、指定領域設定装置504にて指定領域401の形状(空間情報)と作業領域111の有効・無効が設定される(S001)。指定領域設定装置504にて設定された指定領域401の形状と作業領域111の有効・無効は、指定領域記録部512にて記録される(S002)。作業領域有効無効判定部506にて、指定領域記録部512に記録された指定領域401と作業機械位置・姿勢演算部509により演算した車体の姿勢を用いて、油圧ショベル1が指定領域401内にあるのかの判定を繰り返し行う(S003)。S003にて指定領域401内に油圧ショベル1があれば(S003:Yes)、指定領域記録部512に記録されている作業領域有効・無効設定を判定する(S006)。S006にて作業領域有効・無効設定が有効であれば(S006:Yes)、作業領域111を有効状態にする有効無効判定値を出力し(S004)、S006にて作業領域有効・無効設定が無効であれば(S006:No)、作業領域を無効状態にする有効無効判定値を出力する(S005)。
【0037】
作業領域111内の動作制御のフローを図6に示す。
【0038】
作業領域動作制御部511にて、まず、作業領域有効無効判定部506の有効無効判定値(図5のフロー)により作業領域111の有効か無効かが判定される(S101)。S101にて作業領域111が有効の場合(S101:Yes)、作業装置1Aまたは移動装置1Dが停止領域111b内かどうかを判定する(S102)。S102で停止領域111b内の場合(S102:Yes)、作業装置1Aおよび移動装置1Dを停止する制御指令を出力する(S103)。一方、S102で停止領域111b外の場合(S102:No)、作業装置1Aまたは移動装置1Dが減速領域111a内かどうかを判定する(S104)。S104で減速領域111a内の場合(S104:Yes)、作業装置1Aおよび移動装置1Dを減速制御する制御指令を出力する(S105)。一方、S104にて減速領域111a外の場合(S104:No)、再度S102の判定に戻り、繰り返し処理を行う。
【0039】
なお、作業領域111内の動作制御の一例として、減速停止を示したが、作業領域111内での指定アクチュエータの停止、特定姿勢の制限など、特定の規則に従った動作制御であればその内容は問わない。そのため、一例では固定領域として示した停止領域、減速領域も現在の作業機械の状態に応じて可変することも考えられる。
【0040】
また、本実施例では、作業領域設定装置501、作業機械位置・姿勢取得装置502、作業装置位置・姿勢取得装置503、指定領域設定装置504から出力された情報に基づいて、油圧ショベル(作業機械)1に搭載されたコントローラ500が作業領域111の有効無効判定および作業装置1Aおよび移動装置1Dの制御指令演算を行うが、サーバ(に設置されたコントローラ)が、有効無効判定および制御指令演算を行って油圧ショベル1に送信してもよい。
【0041】
(実施例1の効果)
以上で説明したように、本実施例1では、油圧ショベル(作業機械)1の動作制限制御を行う作業領域111を設定する作業領域設定装置501と、前記油圧ショベル(作業機械)1の位置または姿勢の少なくとも一つを取得する取得装置(作業機械位置・姿勢取得装置502、作業装置位置・姿勢取得装置503)と、前記作業領域111内での前記油圧ショベル(作業機械)1の動作制限制御を有効にする有効状態と前記作業領域111内での前記油圧ショベル(作業機械)1の動作制限制御を無効にする無効状態とを切り替え、前記動作制限制御が有効に切り替えられたときに前記油圧ショベル(作業機械)1の前記作業領域111内での動作制限制御を行うコントローラ500と、作業現場内の任意の指定領域401、および、前記指定領域401による前記作業領域111での前記動作制限制御の有効または無効を設定する指定領域設定装置504と、を備える。前記コントローラ500は、前記油圧ショベル(作業機械)1が前記指定領域401内に含まれたときに、前記指定領域設定装置504で設定された前記指定領域401による前記動作制限制御の有効または無効の設定に従い、前記作業領域111での動作制限制御を有効状態または無効状態にする。
【0042】
油圧ショベル(作業機械)1の動作の具体例としては、オペレータなどは任意の地点で作業現場の任意空間である「指定領域401」と「指定領域401が作業領域111を有効にするのか無効にするのか」と「作業領域111」を設定する(指定領域設定装置504、作業領域設定装置501)。設定後、しかるべきタイミングでオペレータなどは油圧ショベル1を移動させる。本制御システムは、油圧ショベル1が指定領域401内に入ったとき、事前設定に従い作業領域111を有効化または無効化する(コントローラ500の作業領域有効無効判定部506、作業領域動作制御部511)。
【0043】
本実施例1によれば、作業領域111内の有効・無効を切り替える任意の指定領域401を別途設けて、作業領域111の設定を行う際に作業領域111の内外問わず任意の位置で作業領域111の設定を行うことができ、作業領域111内での油圧ショベル1の停止状態を防止することができ、施工効率が改善する。
【0044】
[実施例2]
(システム構成)
図7に、本実施例のシステム構成図を示す。
【0045】
本実施例の制御システムは、実施例1の構成に加えて、オペレータが指定領域401に作業領域111を用いるか否か(言い換えれば、作業領域111と一致する指定領域401を設定するか否か)を設定する指定領域半自動設定装置601を備える。指定領域半自動設定装置601は、インターフェース18に設けられてもよいし、インターフェース18外に設けられてもよい。なお、ここでの設定はオペレータに限らず周囲作業者などでもよく、入力の形態は問わない。また、ここでの入力・設定は、例えばサーバを介して車体外から行ってもよい。
【0046】
また、コントローラ500は、実施例1の構成に加えて、作業領域設定装置501で設定した作業領域111の空間情報(座標点と形状)と指定領域設定装置504で設定した指定領域401の空間情報(座標点と形状)と指定領域半自動設定装置601で設定した作業領域111を用いるか否かの情報を用いて指定領域401を演算する指定領域半自動演算部602を備える。
【0047】
指定領域半自動演算部602は、主に、指定領域半自動設定装置601で領域設定(作業領域を使用するための指定領域設定)がされているかどうかを判定し、領域設定がされているときには、指定領域401を作業領域設定装置501で設定された作業領域111の形状に応じて(ここでは、作業領域111の形状と一致するように)設定する。また、指定領域半自動演算部602は、領域設定がされていないときには、指定領域401を指定領域設定装置504で設定された指定領域401の形状に基づいて設定する。
【0048】
(動作)
本実施例の指定領域401による作業領域111内の動作制御の有効無効判定の動作状態のフローを図8に示す。
【0049】
指定領域半自動演算部602にて、まず、オペレータなどにより、指定領域半自動設定装置601で領域設定がされているかどうかを判定する(S011)。S011にて指定領域が設定済みの場合(S011:Yes)、作業領域設定装置501で作業領域111が設定済みかどうかの判定を行う(S012)。S012にて作業領域111が設定済みの場合(S012:Yes)、作業領域111を指定領域401として(S013)、指定領域記録部512に記録する(S002)。S011にて指定領域が非設定の場合(S011:No)またはS012にて作業領域111が非設定の場合(S012:No)、指定領域設定装置504で指定領域401が設定済みかどうかの判定を行う(S001)。S001で指定領域401が設定済みの場合(S001:Yes)、指定領域設定装置504で設定した領域を指定領域401として、指定領域記録部512に記録する(S002)。S001にて指定領域401が非設定の場合(S001:No)、再度S011の判定に戻る。S002以降の動作は実施例1と同様である(図5参照)。
【0050】
作業領域111内の動作制御は実施例1と同様である(図6参照)。
【0051】
図9に、図3に本実施例を適用し、指定領域401と作業領域111が同一になった例を示す。
【0052】
(実施例2の効果)
以上で説明したように、本実施例2では、指定領域401を作業領域111の形状に応じて(ここでは、作業領域111の形状と一致するように)設定する指定領域半自動設定装置601を備える。
【0053】
本実施例2によれば、実施例1の効果に加えて、作業領域111と指定領域401が一致する指定領域401を設定する際に指定領域401の設定を容易に行うことができ、オペレータが指定領域401を設定する手間が軽減できる。
【0054】
[実施例3]
(システム構成)
本実施例の制御システムは、実施例2と同様である。ただし、指定領域半自動演算部602は、主に、指定領域半自動設定装置601で領域設定がされているかを判定し、領域設定がされているときには、指定領域401を作業領域設定装置501で設定された作業領域111の形状に応じて(ここでは、作業領域111の形状と排他関係の形状となるように)設定する。なお、排他関係とは、例えば作業領域111内にある油圧ショベル1が、作業領域111内での作業を終えて、作業領域111外に出た場合に、再び作業領域111内に進入することを防止することであり、作業領域111の外側に指定領域401を設けることで作業領域111外にある油圧ショベル1が指定領域401に入ることで動作制限制御を有効にして作業領域111に進入することを防ぐものである。
【0055】
(動作)
本実施例の指定領域401による作業領域111内の動作制御の有効無効判定の動作状態のフローを図10に示す。
【0056】
実施例2のS013に代わり、S012にて作業領域111が設定済みの場合(S012:Yes)、作業領域111と排他関係の領域を指定領域401として(S014)、指定領域記録部512に記録する(S002)。
【0057】
図11に、図3に本実施例を適用し、指定領域401と作業領域111が排他関係になった例(すなわち、指定領域401を作業領域111の外側にした例)を示す。
【0058】
(実施例3の効果)
以上で説明したように、本実施例3では、指定領域401を作業領域111の形状に応じて(ここでは、作業領域111の形状と排他関係の形状となるように)設定する指定領域半自動設定装置601を備える。
【0059】
本実施例3によれば、実施例1の効果に加えて、複雑な形状の作業領域111と排他関係の指定領域401を設定する際に、指定領域401の設定を容易に行うことができ、オペレータが指定領域401を設定する手間が軽減できる。
【0060】
[実施例4]
(システム構成)
図12に、本実施例のシステム構成図を示す。
【0061】
本実施例の制御システムは、実施例1の構成に加えて、オペレータが指定領域401に作業領域動作制御部511内で定められた作業領域111内のアクチュエータ動作を反映させる否か(言い換えれば、作業領域111内の非制限領域111cと一致する指定領域401を設定するか否か)を設定する指定領域半自動設定装置701を備える。指定領域半自動設定装置701は、インターフェース18に設けられてもよいし、インターフェース18外に設けられてもよい。なお、ここでの設定はオペレータに限らず周囲作業者などでもよく、入力の形態は問わない。また、ここでの入力・設定は、例えばサーバを介して車体外から行ってもよい。
【0062】
また、コントローラ500は、実施例1の構成に加えて、作業領域動作制御部511内で定められた作業領域111内のアクチュエータ動作と作業領域設定装置501で設定した作業領域111の空間情報と指定領域設定装置504で設定した指定領域401の空間情報と指定領域半自動設定装置701で設定した作業領域動作制御部511内で定められた作業領域111内のアクチュエータ動作を反映させる否かの情報を用いて指定領域401を演算する指定領域半自動演算部702を備える。
【0063】
指定領域半自動演算部702は、主に、指定領域半自動設定装置701で領域設定(作業領域111内のアクチュエータ動作を反映させるための指定領域設定)がされているかを判定し、領域設定がされているときには、指定領域401を作業領域111内の動作制御内容に応じて(ここでは、作業領域111内の非制限領域111cの形状と一致するように)設定する。
【0064】
(動作)
実施例4の指定領域401による作業領域111内の動作制御の有効無効判定の動作状態のフローを図13に示す。
【0065】
実施例2のS013に代わり、S012にて作業領域111が設定済みの場合(S012:Yes)、作業領域111内の非制限領域111cを指定領域401として(S015)、指定領域記録部512に記録する(S002)。
【0066】
図14に、図3に本実施例を適用し、指定領域111が作業領域111内の非制限領域111cとなった(一致した)例を示す。
【0067】
(実施例4の効果)
以上で説明したように、本実施例4では、指定領域401を作業領域111内の動作制御内容に応じて(ここでは、作業領域111内の非制限領域111cの形状と一致するように)設定する指定領域半自動設定装置701を備える。
【0068】
本実施例4によれば、実施例1の効果に加えて、複雑な形状の作業領域111内で、油圧ショベル(作業機械)1の動作を制限することのない非制限領域111cと同じ形状の指定領域401を設定する際に、指定領域401の設定を容易に行うことができ、オペレータが指定領域401を設定する手間が軽減できる。
【0069】
[実施例5]
(全体構成)
本実施例を用いた作業機械の一例である油圧ショベルを図15に示す。
【0070】
本実施例では、実施例1の構成に加えて、油圧ショベル1に作業領域111と指定領域401を表示する表示装置20を備える。なお、表示装置20は、油圧ショベル1を管制するサーバに設置されてもよい。
【0071】
(動作)
表示装置20の表示画面の一例を図16に示す。
【0072】
表示装置20には、同一画面上に指定領域401、作業領域111、作業領域111の有効・無効、油圧ショベル(作業機械)1が俯瞰図または三次元図で表記されており、指定領域401、作業領域111、作業領域111の有効・無効が一見して見分けられるように、異なる模様パターンまたは異なる配色で表示されている。
【0073】
(実施例5の効果)
以上で説明したように、本実施例5では、指定領域401と作業領域111と作業領域111での動作制限制御の有効状態または無効状態を同時に表示する表示装置20を備える。
【0074】
本実施例5によれば、実施例1の効果に加えて、オペレータが指定領域401、作業領域111、作業領域111の有効・無効を容易に確認することができ、施工効率を改善することができる。
【0075】
なお、本発明は上記した実施形態に限られるものではなく、様々な変形形態が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0076】
また、上記した実施形態のコントローラの各機能は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計することによりハードウェアで実現してもよい。また、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、コントローラ内の記憶装置の他に、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【符号の説明】
【0077】
1 油圧ショベル(作業機械)
1A 作業装置
1B 上部旋回体
1C 下部走行体
1D 移動装置
18 インターフェース
20 表示装置(実施例5)
51 作業機IMU
52 GNSS
53 上部旋回体IMU
111 作業領域
111a 減速領域
111b 停止領域
111c 非制限領域
401 指定領域
500 コントローラ
501 作業領域設定装置
502 作業機械位置・姿勢取得装置
503 作業装置位置・姿勢取得装置
504 指定領域設定装置
505 作業領域記録部
506 作業領域有効無効判定部
509 作業機械位置・姿勢演算部
510 作業装置位置・姿勢演算部
511 作業領域動作制御部
512 指定領域記録部
601 指定領域半自動設定装置(実施例2)
602 指定領域半自動演算部(実施例2)
701 指定領域半自動設定装置(実施例4)
702 指定領域半自動演算部(実施例4)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16