(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】信号伝送機器用ケーブル及び信号伝送機器用ケーブル製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 11/00 20060101AFI20230403BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20230403BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20230403BHJP
H01B 13/12 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
H01B11/00 Z
H01B7/18 D
H01B13/00 551Z
H01B13/12
(21)【出願番号】P 2019087919
(22)【出願日】2019-05-07
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】315013777
【氏名又は名称】サエクコマース株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501127279
【氏名又は名称】岡谷市
(74)【代理人】
【識別番号】100154276
【氏名又は名称】乾 利之
(72)【発明者】
【氏名】高林 千幸
(72)【発明者】
【氏名】北澤 慶太
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-119602(JP,A)
【文献】実開昭48-067289(JP,U)
【文献】特開2007-005154(JP,A)
【文献】特開2017-214473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 11/00
H01B 7/18
H01B 13/00
H01B 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って配置されると共に前記長手方向に直交する断面方向における中心に配置される導電線と、
前記導電線の前記断面方向における外周側に配置されると共に前記長手方向両端から前記導電線を露出させるように配置され、複数の絹糸が互いに交錯配置されてなる円筒状の編組部と、を備え、
前記編組部は、
前記長手方向における中央部に配置されるシールド編組部と、
前記長手方向における一端側に配置される第1解れ防止編組部と、
前記長手方向における他端側に配置される第2解れ防止編組部と、を有する
信号伝送機器用ケーブルの製造方法であって、
所定の送り方向に導電線を送り出しながら該導電線の外周側に複数の絹糸を交錯させて円筒状の
前記編組部を形成させる編組工程を含
み、
前記編組工程は、
前記長手方向における一端側に配置される前記第1解れ防止編組部を形成する第1高編組工程と、
前記シールド編組部を形成する中編組工程と、
前記長手方向における他端側に配置される前記第2解れ防止編組部を形成する第2高編組工程と、を含み、
前記第1高編組工程および前記第2高編組工程において、
前記長手方向における編密度が前記シールド編組部の編密度よりも高密度、および/または、前記断面方向における編層数が前記シールド編組部の編層数よりも多くなるよう前記複数の絹糸を編組して前記第1解れ防止編組部および/または前記第2解れ防止編組部が形成される
信号伝送機器用ケーブル製造方法。
【請求項2】
前記編組工程は、
前記第1高編組工程の前工程であり、前記編組部の前記長手方向一端側から露出するように配置される導電線に対応する第1除去編組部を形成する第1低編組工程と、
前記第2高編組工程の後工程であり、前記編組部の前記長手方向他端側から露出するように配置される導電線に対応する第2除去編組部を形成する第2低編組工程と、を含み、
前記第1低編組工程および前記第2低編組工程において、
前記長手方向における編密度が前記シールド編組部の編密度よりも低編密度となるよう前記複数の絹糸を編組して、前記第1除去編組部および前記第2除去編組部が形成される
請求項
1に記載の信号伝送機器用ケーブル製造方法。
【請求項3】
前記第1低編組工程および前記第2低編組工程において、
前記複数の絹糸を交錯配置させないように編組して、前記第1除去編組部および前記第2除去編組部が形成される
請求項
2に記載の信号伝送機器用ケーブル製造方法。
【請求項4】
前記編組工程おいて、前記導電線の送り速度を調整することで編組の状態が調整され、
前記第1高編組工程および前記第2高編組工程における前記送り速度は、前記中編組工程における前記送り速度よりも遅く、
前記第1低編組工程および前記第2低編組工程における前記送り速度は、前記中編組工程における前記送り速度よりも速い
請求項
2または3に記載の信号伝送機器用ケーブル製造方法。
【請求項5】
前記第1除去編組部および/または前記第2除去編組部と、前記第1除去編組部および/または前記第2除去編組部に対応する前記導電線とを所定箇所で切断する切断工程と、
前記切断工程において切断された前記第1除去編組部および/または前記第2除去編組部を構成する前記複数の絹糸を除去する除去工程と、を含む
請求項
2から4のいずれかに記載の信号伝送機器用ケーブル製造方法。
【請求項6】
前記第1高編組工程および前記第2高編組工程において、
前記第1解れ防止編組部および/または前記第2解れ防止編組部における前記送り方向の送り元側に配置される規制部により、前記第1解れ防止編組部および/または前記第2解れ防止編組部の前記長手方向における編密度および/または前記断面方向における編層数が調整される
請求項
1から5のいずれかに記載の信号伝送機器用ケーブル製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーティオ機器等を含む各種信号伝送機器用ケーブル及び信号伝送機器用ケーブル製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、信号伝送機器用の信号伝送機器用ケーブル、例えば、オーディオ機器に使用されれるオーディオ機器用ケーブルは、音声信号に対して伝送速度を良くする働きがあるものの、周波数に対する伝送特性の違いによって、スピーカから出力される音声の周波数成分に微妙な影響を与えることが知られている。
【0003】
従来より、オーディオ機器用ケーブルにおける工夫は提案されているが、多くは導電体の材質や構成に関するものである(例えば、特許文献1参照)。周波数に対する伝送特性等については、導電体に関する工夫に加え、他の構成要素についての工夫も必要である。
これに対し、絶縁体に関する工夫が提案されている(例えば、特許文献2参照)。例えば、特許文献2に開示された技術は、プラスチック絶縁層に関するものである。
【0004】
しかし、プラスチック絶縁層を使用したオーディオ機器用ケーブルについても中低音域から高音域までの全音域にわたる伝送特性の改善が期待されていた。
これに対し、絶縁紙を絶縁層に用い、空気含有率がよく伝送特性上好ましいとされる絹糸や綿糸を横巻きしたものを保護層に用いたオーディオ機器用ケーブルが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭63-236215
【文献】実公昭61-14095
【文献】特開平9-63362
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献3に開示されたオーディオ機器用ケーブルでは、絶縁紙を絶縁層に用い、かつ、空気含有率がよく伝送特性上好ましいとされる絹糸や綿糸を横巻きしたものを保護層に用いているため、製造工程が煩雑になる場合があった。また、絶縁層と保護層との組み合わせによる伝送特性の調整・安定性が課題になる場合があった。
【0007】
また、保護層を絹糸や綿糸を横巻きして形成しているため、隣接する糸同士が離間した場合、伝送特性等が維持できなない場合があった。
ここで、隣接する糸同士が離間しないような構成とする場合、例えば、複数の糸同士を編み込んだ構成とする場合、オーディオ機器用ケーブルが非常に細いため、編み込まれた糸を切断除去して導電線を露出させる作業が非常に困難になるという課題が生じる。
また更には、編み込まれた糸を除去して導電線を露出させた場合、時間の経過とともに編み込まれた糸が切断端部側から解れてしまうという課題が生じる。
【0008】
本発明は、導電線の外周に配置される絶縁層および保護層として複数の絹糸を交錯させてなる円筒状の編組部を有すると共に、編組部の両端における絹糸の解れが防止されたオーディオ機器を含む各種信号伝送機器用ケーブルおよび該信号伝送機器用ケーブルの製造方法を提供することを一の目的とする。
また、本発明は、導電線の外周に配置される絶縁層および保護層として複数の絹糸を交錯させてなる円筒状の編組部を有すると共に、編組部の両端から導電線を露出させる作業負担が軽減されたオーディオ機器を含む各種信号伝送機器用ケーブルおよび該信号伝送機器用ケーブルの製造方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、長手方向に沿って配置されると共に前記長手方向に直交する断面方向における中心に配置される導電線と、前記導電線の前記断面方向における外周側に配置されると共に前記長手方向両端から前記導電線を露出させるように配置され、複数の絹糸が互いに交錯配置されてなる円筒状の編組部と、を備え、前記編組部は、前記長手方向における中央部に配置されるシールド編組部と、前記長手方向における一端側に配置される第1解れ防止編組部と、前記長手方向における他端側に配置される第2解れ防止編組部と、を有する信号伝送機器用ケーブルに関する。
【0010】
また、信号伝送機器用ケーブルにおいて、前記第1解れ防止編組部および/または前記第2解れ防止編組部は、前記長手方向における編密度が前記シールド編組部の編密度よりも高密度、および/または、前記断面方向における編層数が前記シールド編組部の編層数よりも多いことが好ましい。
【0011】
また、信号伝送機器用ケーブルにおいて、前記第1解れ防止編組部および/または前記第2解れ防止編組部は、互いに交錯配置された複数の絹糸同士が所定の固着剤により固着されていることが好ましい。
【0012】
また、信号伝送機器用ケーブルにおいて、前記第1解れ防止編組部および/または前記第2解れ防止編組部は、互いに交錯配置された複数の絹糸同士がセリシンにより固着されていることが好ましい。
【0013】
また、信号伝送機器用ケーブルにおいて、前記第1解れ防止編組部および/または前記第2解れ防止編組部には、前記長手方向において前記シールド編組部と反対側の外端側に前記複数の絹糸それぞれの端部が配置されることが好ましい。
【0014】
本発明は、上記信号伝送機器用ケーブルを有する信号伝送機器に関する。
【0015】
本発明は、所定の送り方向に導電線を送り出しながら該導電線の外周側に複数の絹糸を交錯させて円筒状の編組部を形成させる編組工程を含む、上記のいずれかに記載の信号伝送機器用ケーブルを製造する信号伝送機器用ケーブル製造方法であって、前記編組工程は、前記長手方向における一端側に配置される前記第1解れ防止編組部を形成する第1高編組工程と、前記シールド編組部を形成する中編組工程と、前記長手方向における他端側に配置される前記第2解れ防止編組部を形成する第2高編組工程と、を含み、前記第1高編組工程および前記第2高編組工程において、前記長手方向における編密度が前記シールド編組部の編密度よりも高密度、および/または、前記断面方向における編層数が前記シールド編組部の編層数よりも多くなるよう前記複数の絹糸を編組して前記第1解れ防止編組部および/または前記第2解れ防止編組部が形成される信号伝送機器用ケーブル製造方法に関する。
【0016】
また、信号伝送機器用ケーブル製造方法において、前記編組工程は、前記第1高編組工程の前工程であり、前記編組部の前記長手方向一端側から露出するように配置される導電線に対応する第1除去編組部を形成する第1低編組工程と、前記第2高編組工程の後工程であり、前記編組部の前記長手方向他端側から露出するように配置される導電線に対応する第2除去編組部を形成する第2低編組工程と、を含み、第1低編組工程および前記第2低編組工程において、前記長手方向における編密度が前記シールド編組部の編密度よりも低編密度となるよう前記複数の絹糸を編組して、前記第1除去編組部および前記第2除去編組部が形成されることが好ましい。
【0017】
また、信号伝送機器用ケーブル製造方法において、第1低編組工程および前記第2低編組工程において、前記複数の絹糸を交錯配置させないように編組して、前記第1除去編組部および前記第2除去編組部が形成されることが好ましい。
【0018】
また、信号伝送機器用ケーブル製造方法において、前記編組工程おいて、前記導電線の送り速度を調整することで編組の状態が調整され、前記第1高編組工程および前記第2高編組工程における前記送り速度は、前記中編組工程における前記送り速度よりも遅く、前記第1低編組工程および前記第2低編組工程における前記送り速度は、前記中編組工程における前記送り速度よりも速いことが好ましい。
【0019】
また、信号伝送機器用ケーブル製造方法において、前記第1除去編組部および/または前記第2除去編組部と、前記第1除去編組部および/または前記第2除去編組部に対応する前記導電線とを所定箇所で切断する切断工程と、前記切断工程において切断された前記第1除去編組部および/または前記第2除去編組部を構成する前記複数の絹糸を除去する除去工程と、を含むことが好ましい。
【0020】
また、信号伝送機器用ケーブル製造方法において、前記第1高編組工程および前記第2高編組工程において、前記第1解れ防止編組部および/または前記第2解れ防止編組部における前記送り方向の送り元側に配置される規制部により、前記第1解れ防止編組部および/または前記第2解れ防止編組部の前記長手方向における編密度および/または前記断面方向における編層数が調整されることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、導電線の外周に配置される絶縁層および保護層として複数の絹糸を交錯させてなる円筒状の編組部を有すると共に、編組部の両端における絹糸の解れが防止されたオーディオ機器を含む各種信号伝送機器用ケーブルおよび該信号伝送機器用ケーブルの製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、導電線の外周に配置される絶縁層および保護層として複数の絹糸を交錯させてなる円筒状の編組部を有すると共に、編組部の両端から導電線を露出させる作業負担が軽減されたオーディオ機器を含む各種信号伝送機器用ケーブルおよび該信号伝送機器用ケーブルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態のオーディオ機器用ケーブルが搭載されたトーンアームの平面図である。
【
図2】
図1における領域Aの底面図であって、本実施形態のオーディオ機器用ケーブルが搭載された状態を示す図である。
【
図3】
図1における領域Bの底面図であって、本実施形態のオーディオ機器用ケーブルが搭載された状態を示す図である。
【
図4】本実施形態のオーディオ機器用ケーブルを説明する平面図である。
【
図5】本実施形態のオーディオ機器用ケーブルの構造を説明する断面図(模式図)であって、
図4における(a)C1-C1断面図、(b)C2-C2断面図、(c)C3-C3断面図である。
【
図6】本実施形態のオーディオ機器用ケーブルを製造する工程を説明するフロー図である。
【
図7】本実施形態のオーディオ機器用ケーブルにおける編組部を形成する編組機の構成を説明する概略図である。
【
図8】本実施形態のオーディオ機器用ケーブルの製造工程および各工程における編組部の編組状態を説明する模式図である。
【
図9】本実施形態のオーディオ機器用ケーブルの中間品を説明する平面図である。
【
図10】本実施形態のオーディオ機器用ケーブルの中間品における構造を説明する断面図(模式図)であって、
図9における(a)D1-D1断面図、(b)D2-D2断面図、(c)D3-D3断面図である。
【
図11】本実施形態のオーディオ機器用ケーブルの製造方法を説明する図であり、(a)オーディオ機器用ケーブルの中間品を示す模式図、(b)除去編組部が切断された状態を示す模式図、(c)切断された除去編組部を構成する複数の絹糸が除去(切断)された状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係るオーディオ機器用ケーブル(信号伝送機器用ケーブル)および、該オーディオ機器用ケーブル製造方法(信号伝送機器用ケーブル製造方法)について説明する。
図1から
図5により、本実施形態における信号伝送機器用ケーブルであるオーディオ機器用ケーブルについて説明する。
図1は、本実施形態のオーディオ機器用ケーブルが搭載されたトーンアームの平面図である。
図2は、
図1における領域Aの底面図であって、本実施形態のオーディオ機器用ケーブルが搭載された状態を示す図である。
図3は、
図1における領域Bの底面図であって、本実施形態のオーディオ機器用ケーブルが搭載された状態を示す図である。
図4は、本実施形態のオーディオ機器用ケーブルを説明する平面図である。
図5は、本実施形態のオーディオ機器用ケーブルの構造を説明する断面図(模式図)であって、
図4における(a)C1-C1断面図、(b)C2-C2断面図、(c)C3-C3断面図である。
【0024】
まず、
図1から
図3により、オーディオ機器用ケーブルが搭載されたトーンアームついて説明する。本実施形態においては、オーディオ機器用ケーブルが搭載されたオーディオ機器としてトーンアームについて説明するが、これに限定されない。オーディオ機器用ケーブル(信号伝送機器用ケーブル)は、例えば、スピーカ、イヤホン、オーディオ機器本体(内部配線)に使用されてもよく、また、携帯電話や医療用のマイクロ機器用等の信号伝送機器にも使用されてもよい。本発明の信号伝送機器用ケーブルは、オーディオ機器を含む各種信号伝送機器に使用される。
【0025】
図1および
図2に示すように、オーディオ機器用ケーブル10Aは、一部がトーンアーム100におけるアーム部120の内部に挿通配置されると共に、一部がコード引出部110から引き出されて配置されている。オーディオ機器用ケーブル10Aは、コード引出部110から引き出された一部が不図示のオーディオ機器本体側(フォノイコライザー、アンプ等)と接続される。
【0026】
また、
図1および
図3に示すように、オーディオ機器用ケーブル10Bは、トーンアーム100におけるアーム部120の先端部に配置される。オーディオ機器用ケーブル10Bは、ヘッド部130に接続されるリードワイヤーとして使用されている。本実施形態においては、4本のオーディオ機器用ケーブル10Bがリードワイヤーとして使用されているが、これに限定されず、複数のリードワイヤーのうち一部のリードワイヤーに使用されていてもよい。
【0027】
次に、
図4および
図5により、本実施形態のオーディオ機器用ケーブル10の構造について説明する。
図4および
図5に示すように、オーディオ機器用ケーブル10は、導電線20と、編組部30と、を備える。オーディオ機器用ケーブル10は、断面方向における中心に配置される導電線20と、導電線20の外周に配置される円筒状の編組部30とを有して構成される。
【0028】
図4および
図5に示すように、導電線20は、微弱な電気信号を伝送可能であり、オーディオ機器用ケーブル10における長手方向Xに沿って配置されると共に長手方向Xに直交する断面方向における中心に配置される。
導電線20は、編組部30の両端から外部に露出配置される第1端子部20aおよび第2端子部20bを有する。第1端子部20aおよび第2端子部20bは、導電線20の外周に配置される絹糸31(後述する除去編組部を構成する絹糸)を除去して露出された部分である。
【0029】
本実施形態において、導電線20は、7本の太さ0.05mmの銅線25(例えば、
図5参照)により構成され、1本の銅線25を中心にして他の6本の銅線25を捩じって形成される。ここで、導電線20の材質および構造は、これらに限定されず、用途や適性に応じて適宜選択される。材質としては、例えば、単結晶状高純度無酸素銅、タフピッチ銅、無酸素銅、線形結晶無酸素銅、連続結晶高純度無酸素銅、銀や合金等を使用することができる。また、導電線20を構成する金属線の本数や形状等は特に限定されない。
【0030】
図4および
図5に示すように、編組部30は、導電線20の断面方向における外周側に配置されると共に長手方向X両端から導電線20の一部を露出させるように配置される。編組部30は、複数の絹糸31が互いに交錯配置されてなる円筒状の編組部材である。編組部30は、絶縁層および保護層として機能する。
【0031】
本実施形態において、編組部30は、16本の絹糸31が交錯配置されて形成される。ここで、絹糸31の本数は、特に限定されず、例えば、12本でもよく、24本でもよい。絹糸31の本数は、導電線20の太さや絹糸の太さ等により好適な本数に設定される。
また、本実施形態において、絹糸31の太さは 21デニールであるが、特に限定されない。絹糸31の太さは、例えば、14から28であればよい。絹糸31は、例えば、生糸(セルシン等の糊成分が含まれたもの)を7~8本撚ったもので構成されている。ここで、本実施形態において、絹糸は、繭糸や生糸を含むものである。
【0032】
図4および
図5に示すように、編組部30は、長手方向Xにおける中央部に配置されるシールド編組部33と、長手方向Xにおける一端側に配置される第1解れ防止編組部35aと、長手方向Xにおける他端側に配置される第2解れ防止編組部35bと、を有する。
【0033】
シールド編組部33は、複数の絹糸31が交錯配置されるよう編組されて形成された円筒状の編組部であり、絶縁層および保護層として機能する部分である。シールド編組部33は、絹糸31が互いに隙間なく交錯配置されて形成されている。
シールド編組部33における編密度(編段/cm)は、例えば、25~40編段/cm、好ましくは30~40編段/cm、更に好ましくは30~35編段/cmである。ここで、シールド編組部33における編密度は、絶縁機能および保護機能を阻害しない範囲において、絹糸の本数・太さやデザイン性等により自由に設定される。
【0034】
シールド編組部33は、編組部30における長手方向Xにおける中央部に配置される円筒状の部分であって、長手方向Xにおいて第1解れ防止編組部35aおよび第2解れ防止編組部35bに挟まれて配置される。シールド編組部33は、両端を第1解れ防止編組部35aおよび第2解れ防止編組部35bに挟まれているので、絹糸31の解れが生じない部分である。そのため、シールド編組部33は、安定した絶縁性や保護性に加え、伝送特性を維持可能に構成されている。
シールド編組部33における長さ(長手方向Xにおける長さ)および太さ(断面方向における直径)は特に制限されないが、長さは、例えば、25~40mm、好ましくは28~38mm、更に好ましくは30~35mmであり、太さは、例えば、80~160μm、好ましくは80~130μm、更に好ましくは80~100μmである。
【0035】
続けて、
図4および
図5に示すように、第1解れ防止編組部35aおよび/または第2解れ防止編組部35bは、長手方向Xにおける編密度がシールド編組部33の編密度よりも高密度、および/または、断面方向における編層数がシールド編組部33の編層数よりも多くなるよう形成されている。第1解れ防止編組部35aおよび/または第2解れ防止編組部35bは、編組部30の両端に配置され、絹糸31が解れ難いように交錯条件(編組条件)が調整された部分である。
【0036】
第1解れ防止編組部35aおよび/または第2解れ防止編組部35bは、例えば、長手方向Xにおける編密度がシールド編組部33の編密度よりも高密度になるよう構成される。第1解れ防止編組部35aおよび/または第2解れ防止編組部35bは、例えば、長手方向Xにおける編密度がシールド編組部33の編密度に対して1.1~5、好ましくは1.3~3、更に好ましくは1.5~2となるように構成される。ここで、第1解れ防止編組部35aおよび/または第2解れ防止編組部35bにおける断面方向の編組数がシールド編組部33よりも多くなるよう調整されている場合、長手方向Xにおける編密度は上述の数値範囲外でもよく、更にはシールド編組部33の編密度よりも小さくてもよい。
【0037】
また、第1解れ防止編組部35aおよび/または第2解れ防止編組部35bは、例えば、断面方向における編層数がシールド編組部33の編層数よりも多くなるよう形成されている。第1解れ防止編組部35aおよび/または第2解れ防止編組部35bは、例えば、断面方向における編層数がシールド編組部33の編層数に対して2~10、好ましくは2~6、更に好ましくは3~5となるように構成される。
【0038】
編層数は、編組された円筒の数であり、断面方向における絹糸の数である。編組層数は、断面方向における総絹糸(本実施形態では16本)セットの数である。外周外側に向かうにしたがって各編組層において隣接する絹糸31同士の距離が広がるため、断面方向において各編組層の絹糸31はきれいに重ならず、内側層の絹糸31同士の間に外側層の絹糸31が入り込むようにして配置される場合がある。この場合においても、当然に編層数は加算される。本実施形態においては、シールド編組部33の編層数は1であり、第1解れ防止編組部35aおよび第2解れ防止編組部35bの編層数は4である。
【0039】
ここで、第1解れ防止編組部35aおよび/または第2解れ防止編組部35bにおける長手方向Xにおける編密度がシールド編組部33よりも高くなるよう調整されている場合、断面方向における編層数は上述の数値範囲外でもよく、更にはシールド断面方向における編層数と同じであってもよい。
【0040】
また、
図4に示すように、第1解れ防止編組部35aおよび/または第2解れ防止編組部35bには、長手方向Xにおいてシールド編組部33と反対側の外端側に複数の絹糸31それぞれの端部32が配置される。第1解れ防止編組部35aまたは第2解れ防止編組部35bの外端部には、第1端子部20aまたは第2端子部20bを露出させるために切断除去された複数の絹糸31それぞれの端部32が配置されている。通常、第1端子部20aまたは第2端子部20bを露出させるために絹糸31を切断除去した場合、端部32側から絹糸31が解れるが、本実施形態においては、第1解れ防止編組部35aおよび/または第2解れ防止編組部35bが高編密度および/または多編層になるよう形成されているので、絹糸31の解れが防止される。
【0041】
また、第1解れ防止編組部35aおよび/または第2解れ防止編組部35bは、例えば、互いに交錯配置された複数の絹糸31同士が所定の固着剤により固着されていてもよい。これにより、第1解れ防止編組部35aおよび/または第2解れ防止編組部35bにおける絹糸31の解れがより防止される。ここで、第1解れ防止編組部35aおよび/または第2解れ防止編組部35bは、上述のように長手方向Xの編密度が高密度および/または断面方向における編層数が複数層になるよう調整された状態で固着剤により固着されることが好ましい。
【0042】
所定の固着剤としては、例えば、一般的な糊成分を含む固着剤を使用することができるが、特には、繭糸や生糸から抽出されたセリシンが好ましい。例えば、繭層或いは生糸を沸騰水中に入れてセリシンを溶解し、ジェル状セリシンを第1及び第2解れ防止編組部35a,35bに塗布・浸透させて固着することが好ましい。第1解れ防止編組部35aおよび/または第2解れ防止編組部35bが絹から抽出されたセリシンで固着された場合、伝送特性に悪影響を与えないため好ましい。
【0043】
また、編密度等を調整した第1解れ防止編組部35aおよび/または第2解れ防止編組部35bを設けることなく、シールド編組部33の両端部を解れ防止のためにセリシン等の固着剤で固着させることもできる。この場合、固着剤により固着された部分は、第1解れ防止編組部および第2解れ防止編組部として機能する。
【0044】
第1解れ防止編組部35aおよび/または第2解れ防止編組部35bにおける長さ(長手方向Xにおける長さ)および太さ(断面方向における直径)は特に制限されないが、長さは、例えば、1~4mm 好ましくは1~3mm、更に好ましくは1~2mmであり、太さは、例えば、10~40mm、好ましくは10~30mm、更に好ましくは10~20mmである。
【0045】
続けて、
図6から
図11により、本実施形態のオーディオ機器用ケーブル10の製造方法について説明する。
図6は、本実施形態のオーディオ機器用ケーブルを製造する工程を説明するフロー図である。
図7は、本実施形態のオーディオ機器用ケーブルにおける編組部を形成する編組機の構成を説明する概略図である。
図8は、本実施形態のオーディオ機器用ケーブルの製造工程および各工程における編組部の編組状態を説明する模式図である。
図9は、本実施形態のオーディオ機器用ケーブルの中間品を説明する平面図である。
図10は、本実施形態のオーディオ機器用ケーブルの中間品における構造を説明する断面図(模式図)であって、
図9における(a)D1-D1断面図、(b)D2-D2断面図、(c)D3-D3断面図である。
図11は、本実施形態のオーディオ機器用ケーブルの製造方法を説明する図であり、(a)オーディオ機器用ケーブルの中間品を示す模式図、(b)除去編組部が切断された状態を示す模式図、(c)切断された除去編組部を構成する複数の絹糸が除去(切断)された状態を示す模式図である。
【0046】
図6に示すように、本実施形態のオーディオ機器用ケーブル10を製造するオーディオ機器用ケーブル製造方法は、編組工程ST10と、切断工程ST20と、除去工程ST30とを含む。
【0047】
編組工程ST10は、所定の送り方向に導電線20を送り出しながら該導電線20の外周側に複数の絹糸31を交錯させて円筒状の編組部30を形成させる工程である。
編組工程ST10は、第1低編組工程ST11と、第1高編組工程ST12と、中編組工程ST13と、第2高編組工程ST14と、第2低編組工程ST15と、を含む。
中編組工程ST13は、複数の絹糸13を標準の編密度等に編組する工程であり、第1高編組工程ST12および第2高編組工程ST14は、複数の絹糸31における解れを防止するよう高編密度や多編層に編組する工程であり、第1低編組工程ST11および第2低編組工程ST15は、絹糸31が交錯配置されないよう編組する工程である。
【0048】
編組工程ST10の各工程において、複数の絹糸31の編組は、例えば、所定の編組機200(
図7参照)により実施される。
図7に示すように、例えば、編組機200は、円盤状の走行ベース210と、走行ベース210上を走行可能な複数(本実施形態においては16個)の走行部220と、走行部220それぞれに回転可能に配置されるボビン230と、上方に配置される編組ダイス240と、編組ダイス240の下方(導電線20の送り元側)に配置される規制部250と、を備える。複数の走行部220が走行ベース210上に形成された2つの走行路(周方向に波状の走行路であり互いの凹凸が周方向においてずれている2つの走行路)を走行することで、複数のボビン230から繰り出された複数の絹糸31同士が編組ダイス240において交錯配置され、円筒状の編組部30が形成される。ここで、編組工程ST10において使用される装置は、
図7に示す編組機に限定されず、方式、タイプ等、特に限定されない。また、編組ダイス240の内径を可変にすることで、解れ防止編組部の挿通をスムースにすることができると共に、編み込み糸の均一化が図れる。
【0049】
本実施形態では、編組工程ST10において、導電線20の送り速度を調整することで編組の状態が調整される。
図8に示すように、第1高編組工程ST12および第2高編組工程ST14における送り速度は、中編組工程ST13における送り速度よりも遅くなるように調整される。これにより、第1高編組工程ST12および第2高編組工程ST14において、複数の絹糸31を高編密度および/または多編層に編組して、第1解れ防止編組部35aおよび/または第2解れ防止編組部35bを形成することができる。
【0050】
また、第1低編組工程ST11および第2低編組工程ST15における送り速度は、中編組工程ST13における送り速度よりも速くなりよう調整される。これにより、第1低編組工程ST11および第2低編組工程ST15において、複数の絹糸31を交錯配置させないように編組して、第1除去編組部37aおよび第2除去編組部37bを形成することができる。
【0051】
中編組工程ST13において、例えば、7本の太さ0.05mmの銅線25を捩って形成された撚り線である導電線20が所定の送り速度で移動され、16本の太さ21デニールの絹糸31(生糸7、8本が捩られて一本の絹糸とされている)が導電線20の外周に円筒状のシールド編組部33を形成していくが、導電線20の送り速度は特に制限されず、編組密度、編組パタンや絹糸の本数により自由に設定される。
そして、本実施形態において、(導電線20の)送り速度は、シールド編組部33を形成する中編組工程ST13における送り速度を基準(標準速度)とし、第1解れ防止編組部35aおよび/または第2解れ防止編組部35bを形成する工程では低速に設定され、第1端子部20aおよび第1端子部20を形成する工程では高速に設定される。
【0052】
ここで、オーディオ機器用ケーブル10を連続して製造する場合、第1低編組工程ST11は、直前に製造したオーディオ機器用ケーブル10の製造工程における第2低編組工程ST15と共通の工程となり、第2低編組工程ST15は、直後のオーディオ機器用ケーブル10の製造工程における第1低編組工程ST11と共通する工程となる。
【0053】
続けて、編組工程ST10における各工程について説明する。
図6から
図10に示すように、第1低編組工程ST11は、第1高編組工程ST12の前工程であり、編組部30の長手方向Xの一端側から露出するように配置される第1端子部20a(導電線20)に対応する第1除去編組部37aを形成する工程である。
第1低編組工程ST11において、導電線20の送り速度を速くすることで、長手方向Xにおける編密度がシールド編組部33の編密度よりも低編密度となるよう複数の絹糸31を編組して、第1除去編組部37aが形成される。また、第1低編組工程ST11において、導電線20の送り速度を速くすることで、複数の絹糸31を交錯配置させないように編組して、第1除去編組部37aが形成されることが好ましい。ここで、「交錯配置させない」とは、編組物とならない状態を示し、全く交錯配置されてない状態、複数の絹糸31が単に交差している状態や、簡易に解れる状態を示す。「交錯配置させない」として、例えば、
図9および
図10(C)の状態を例示できる。
【0054】
続けて、第1高編組工程ST12は、長手方向Xにおける一端側に配置される第1解れ防止編組部35aを形成する工程である。
第1高編組工程ST12において、導電線20の送り速度を遅く、または、停止することで、長手方向Xにおける編密度がシールド編組部33の編密度よりも高密度、および/または、断面方向における編層数がシールド編組部33の編層数よりも多くなるよう複数の絹糸を編組して第1解れ防止編組部35aが形成される。
【0055】
ここで、第1高編組工程ST12において、第1解れ防止編組部35aにおける導電線20の送り方向の送り元側に配置される規制部250により、第1解れ防止編組部35aの長手方向Xにおける編密度および/または断面方向における編層数が調整されるようにしてもよい。
規制部250は、編組ダイス240と該規制部250との間に形成される第1解れ防止編組部35aの形成を下方から規制する部材である。第1高編組工程ST12において、例えば、導電線200の送りを停止して第1解れ防止編組部35aを形成する場合、第1解れ防止編組部35aにおける下方(送り元側)に延びる編組形成を規制しながら規制部250を下方側へ所定速度で移動させることができる。このように規制部250を使用することで、第1解れ防止編組部35aにおける編組条件および形状を容易に調整することができる。
【0056】
続けて、中編組工程ST13は、シールド編組部33を形成する工程である。
中編組工程ST13において、導電線20の送り速度を標準(中)速度とすることで、複数の絹糸31を編組して、シールド編組部33が形成される。中編組工程ST13において、所望の伝送特性と絶縁性・保護性とを達成する編組部となるような条件で、複数の絹糸31が編組される。中編組工程ST13における条件は、他の工程における条件の基準となる。
【0057】
続けて、第2高編組工程ST14は、長手方向Xにおける他端側に配置される第2解れ防止編組部35bを形成する工程である。
第2高編組工程ST14において、導電線20の送り速度を遅く、または、停止することで、長手方向Xにおける編密度がシールド編組部33の編密度よりも高密度、および/または、断面方向における編層数がシールド編組部33の編層数よりも多くなるよう複数の絹糸を編組して第2解れ防止編組部35bが形成される。ここで、規制部250の使用および作用効果については、第1高編組工程ST12と同様である。
【0058】
続けて、第2低編組工程ST15は、第2高編組工程ST14の後工程であり、編組部30の長手方向Xの他端側から露出するように配置される第2端子部20b(導電線20)に対応する第2除去編組部37bを形成する工程である。
第2低編組工程ST15において、導電線20の送り速度を速くすることで、長手方向Xにおける編密度がシールド編組部33の編密度よりも低編密度となるよう複数の絹糸31を編組して、第2除去編組部37bが形成される。また、第2低編組工程ST15において、導電線20の送り速度を速くすることで、複数の絹糸31を交錯配置させないように編組して、第2除去編組部37bが形成されることが好ましい。
【0059】
続けて、
図6および
図11に示すように、切断工程ST20は、第1除去編組部37aおよび/または第2除去編組部37bと、第1除去編組部37aおよび/または第2除去編組部37bに対応する導電線20とを所定箇所で切断する工程である。
図11(a)および(b)に示すように、切断工程ST20において、除去編組部37(第1除去編組部37aおよび他のオーディオ機器用ケーブルの第2除去編組部37bの共通部分)と、除去編組部37の断面方向内側に配置される導電線20を所定位置(長手方向Xの中間)で切断することで、導電線20の一部を露出させると共に絹糸31(39)を解れた状態(除去しやすい状態)にできる。
【0060】
続けて、
図6および
図11に示すように、除去工程ST30は、切断工程ST20において切断された第1除去編組部37aおよび/または第2除去編組部37bを構成する複数の絹糸39(31)を除去する工程である。除去工程ST30において、複数の絹糸39(31)における第1解れ防止編組部35aまたは第2解れ防止編組部35b側の部分(根元部)が切断される。除去工程ST30において、解れた状態の絹糸39が除去されるので、導電線20を被覆することなく容易に除去可能である。また、切断工程ST20および除去工程ST30において、複数の絹糸39(31)が切断・除去されるが、第1解れ防止編組部35aまたは第2解れ防止編組部35bがあるので、複数の絹糸31が端部32側から解れることが防止されている。
【0061】
本実施形態のオーディオ機器用ケーブル10によれば、以下のような効果を奏する。
本実施形態のオーディオ機器用ケーブルは、導電線の断面方向における外周側に配置されると共に長手方向両端から導電線を露出させるように配置され、複数の絹糸が互いに交錯配置されてなる円筒状の編組部を備える。
これにより、複数の絹糸が互いに交錯配置されてそこに空気層形成されることになり導電線の伝送速度が向上し、音質の向上に寄与するオーディオ機器用ケーブルを提供できる。また、これにより、軽量な絶縁層を有するオーディオ機器用ケーブルを提供することができる。また、これにより、引張強度に強い絶縁層を有するオーディオ機器用ケーブルを提供することができる。また、これにより、温度による影響を受けにくい絶縁層を有するオーディオ機器用ケーブルを提供することができる。
【0062】
また、編組部は、長手方向における一端側に配置される第1解れ防止編組部と、長手方向における他端側に配置される第2解れ防止編組部と、を有する。これにより、編組部は、時間の経過にともなって複数の絹糸が解れることを防止できる。また、これにより、シールド編組部における絹糸の編組状態の変化を防止できるので、オーディオ機器用ケーブルにおける音質向上機能や絶縁性を維持することができる。
【0063】
また、第1解れ防止編組部および/または第2解れ防止編組部は、長手方向における編密度がシールド編組部の編密度よりも高密度、および/または、断面方向における編層数が前記シールド編組部の編層数よりも多くなるよう構成されている。これにより、複数の絹糸が解れることを好適に防止できる。
【0064】
また、第1解れ防止編組部および/または第2解れ防止編組部は、互いに交錯配置された複数の絹糸同士が所定の固着剤により固着されている。これにより、複数の絹糸が解れることをより好適に防止できる。
【0065】
また、第1解れ防止編組部および/または第2解れ防止編組部には、長手方向においてシールド編組部と反対側の外端側に複数の絹糸それぞれの(切断)端部が配置される。これにより、複数の絹糸が切断端部側から解れることを好適に防止できる。
【0066】
また、本実施形態のオーディオ機器用ケーブル製造方法は、第1低編組工程および第2低編組工程において、長手方向における編密度がシールド編組部の編密度よりも低編密度となるよう複数の絹糸を編組して、第1除去編組部および第2除去編組部が形成される。これにより、本実施形態のオーディオ機器用ケーブル製造方法によれば、両端部から導電線の一部(端子部)を露出させる作業負担を軽減させることができる。
また、絶縁層が絹糸で形成されているため、ビニール等で形成したものに比べ、ケーブルそのもの軽量化が図れる。
【0067】
また、本実施形態のオーディオ機器用ケーブル製造方法は、第1低編組工程および前記第2低編組工程において、複数の絹糸を交錯配置させないように編組して、第1除去編組部および第2除去編組部が形成される。れにより、本実施形態のオーディオ機器用ケーブル製造方法によれば、両端部から導電線の一部(端子部)を露出させる作業負担をより軽減させることができる。
【0068】
また、本実施形態のオーディオ機器用ケーブル製造方法は、編組工程おいて、前記導電線の送り速度を調整することで編組の状態が調整され、第1高編組工程および第2高編組工程における前記送り速度は、前記中編組工程における前記送り速度よりも遅く、第1低編組工程および第2低編組工程における送り速度は、中編組工程における前記送り速度よりも速くなるよう調整される。これにより、本実施形態のオーディオ機器用ケーブル製造方法によれば、解れ防止編組部および除去編組部を容易に形成することができる。
【0069】
また、本実施形態のオーディオ機器用ケーブル製造方法は、第1除去編組部および/または第2除去編組部と、第1除去編組部および/または第2除去編組部に対応する導電線とを所定箇所で切断する切断工程と、切断工程において切断された第1除去編組部および/または第2除去編組部を構成する複数の絹糸を除去する除去工程と、を含む。これにより、本実施形態のオーディオ機器用ケーブル製造方法によれば、両端部から導電線の一部(端子部)を露出させる作業負担をより軽減させることができる
【0070】
また、本実施形態のオーディオ機器用ケーブル製造方法は、第1解れ防止編組部および/または第2解れ防止編組部における送り方向の送り元側に配置される規制部により、第1解れ防止編組部および/または第2解れ防止編組部の長手方向における編密度および/または断面方向における編層数が調整される。これにより、本実施形態のオーディオ機器用ケーブル製造方法によれば、解れ防止部の編密度および編層数を好適に調整できるので、好適な解れ防止機能を有するオーディオ機器用ケーブルを提供することができる。また、デザインが向上されたオーディオ機器用ケーブルを提供することができる。
【0071】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
上述の実施形態において、編組機により編組部を形成しているが、これに限定されず、また編み方の種類も特に限定されない。
【0072】
また、実施形態においては、同じ太さの絹糸を使用しているが、これに限定されず、異なる太さの絹糸同士を組み合わせて使用してもよい。
【0073】
また、絹糸の色は特に限定されず、白色であってもよく、黒色、カラー各色であってもよい。また、全ての絹糸が同じ色であってもよく、一部の糸が異なる色であってもよい。また、絹糸の色や織り方を調整し、色、模様やデザイン性に優れた編組部を有するオーディオ機器用ケーブルを提供することもできる。
【0074】
また、本実施形態では、オーティオ機器用のケーブルを一例として例示したが、オーティオ機器用に限るものではなく、光信号から電気信号に変換したり、携帯電話や医療用のマイクロ機器用等の信号伝送機器にも使用されてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 オーディオ機器用ケーブル(信号伝送機器用ケーブル)
20 導電線
20a 第1端子部
20b 第2端子部
30 編組部
31 絹糸
32 端部
33 シールド編組部
35a 第1解れ防止編組部
35b 第2解れ防止編組部
37a 第1除去編組部
37b 第2除去編組部
100 トーンアーム
200 編組機
ST10 編組工程
ST20 切断工程
ST30 除去工程