(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】圧電式バルブ及び該圧電式バルブの製造方法
(51)【国際特許分類】
F16K 31/02 20060101AFI20230403BHJP
【FI】
F16K31/02 A
(21)【出願番号】P 2019082292
(22)【出願日】2019-04-23
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(73)【特許権者】
【識別番号】502254796
【氏名又は名称】有限会社メカノトランスフォーマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100158702
【氏名又は名称】岡野 卓也
(73)【特許権者】
【識別番号】000204240
【氏名又は名称】株式会社TAIYO
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100158702
【氏名又は名称】岡野 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆文
(72)【発明者】
【氏名】松下 忠史
(72)【発明者】
【氏名】樋口 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】徐 世傑
(72)【発明者】
【氏名】水野 義宣
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-061412(JP,A)
【文献】国際公開第2009/152409(WO,A1)
【文献】特開平11-074576(JP,A)
【文献】特開2000-252534(JP,A)
【文献】特開平11-075382(JP,A)
【文献】特表2013-520157(JP,A)
【文献】特開昭63-026476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/053
H01L 41/09
H02N 2/04
F16K 31/02
F16K 31/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層型圧電素子の変位を利用してバルブの開閉を行う圧電式バルブであって、
外部から供給される圧縮気体を受け入れる気体圧力室を有するバルブ本体と、
弁体、前記弁体の動作に必要な駆動力を変位として発生する積層型圧電素子、前記積層型圧電素子の変位を拡大して前記弁体に作用させる変位拡大機構を有し、前記バルブ本体の内部に配設されるアクチュエータと、を備える圧電式バルブにおいて、
前記積層型圧電素子は、前記アクチュエータに一体化された状態で
前記積層型圧電素子の長手方向両側に前記積層型圧電素子との間に隙間を空けて位置する一対の突条片の間に充填されたシリコーンにより表面を被覆されていることを特徴とする圧電式バルブ。
【請求項2】
前記バルブ本体の内部に配設されるプレートをさらに備え、前記アクチュエータは前記プレートに固定され、該プレートとともに前記バルブ本体の内部に配設されるものであって、
前記プレートの表面には、前記アクチュエータが前記プレートに固定された際、前記積層型圧電素子の長手方向両側に前記隙間を空けて位置する前記一対の突条片が設けられており、
前記積層型圧電素子は、前記アクチュエータが前記プレートに固定された状態で前記一対の突条片の間に充填されたシリコーンにより表面を被覆されている請求項1記載の圧電式バルブ。
【請求項3】
前記変位拡大機構は金属材料により形成される一方で、前記プレートには前記積層型圧電素子に給電するための配線がモールドされてなり、
前記プレートから露出する前記配線の電極が、前記積層型圧電素子のリード線と接続された状態で絶縁性材料により被覆されている請求項2記載の圧電式バルブ。
【請求項4】
前記変位拡大機構は金属材料により形成されてなり、
前記積層型圧電素子のリード線は、前記変位拡大機構の表面に貼着される絶縁用フィルム上に配置される請求項1乃至3のいずれかに記載の圧電式バルブ。
【請求項5】
積層型圧電素子の変位を利用してバルブの開閉を行う圧電式バルブであって、
外部から供給される圧縮気体を受け入れる気体圧力室を有するバルブ本体と、
弁体、前記弁体の動作に必要な駆動力を変位として発生する積層型圧電素子、前記積層型圧電素子の変位を拡大して前記弁体に作用させる変位拡大機構を有し、前記バルブ本体の内部に配設されるアクチュエータと、を備える圧電式バルブの製造方法において、
前記アクチュエータに一体化された前記積層型圧電素子の表面上にシリコーンを供給し、前記積層型圧電素子の長手方向両側に前記積層型圧電素子との間に隙間を空けて位置する一対の突条片の間に充填される前記シリコーンにより前記積層型圧電素子の表面を被覆することを特徴とする圧電式バルブの製造方法。
【請求項6】
前記バルブ本体の内部に配設されるプレートをさらに備え、前記アクチュエータは前記プレートに固定され、該プレートとともに前記バルブ本体の内部に配設されるものであって、
前記プレートの表面には、前記アクチュエータが前記プレートに固定された際、前記積層型圧電素子の長手方向両側に前記隙間を空けて位置する前記一対の突条片が設けられており、
前記積層型圧電素子を前記アクチュエータに一体化し、前記アクチュエータを前記プレートに固定した後、前記積層型圧電素子の表面上にシリコーンを供給し、前記一対の突条片の間に充填される前記シリコーンにより前記積層型圧電素子の表面を被覆する請求項5記載の圧電式バルブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型圧電素子の変位を利用してバルブの開閉を行う圧電式バルブ、及び該圧電式バルブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層型圧電素子の変位を利用してバルブの開閉を行い、圧縮気体を噴出する圧電式バルブが知られている(特許文献1を参照。)。
【0003】
特許文献1に記載された圧電式バルブは、高速応答性能に優れる積層型圧電素子の特性を利用するものであり、前記積層型圧電素子の小さな変位をテコの原理に基づき拡大する変位拡大機構を備えるものである。
【0004】
前記圧電式バルブは、前記積層型圧電素子に電圧を印加すると、該積層型圧電素子の伸長方向への変位が前記変位拡大機構を介して弁体に伝わり、該弁体を速やかに移動させて開弁する。
また、前記圧電式バルブは、前記積層型圧電素子への電圧印加を解除すると、該積層型圧電素子の原状復帰に伴う復帰力が前記変位拡大機構を介して前記弁体に伝わり、該弁体を速やかに弁座に当接させて閉弁する。
【0005】
ところで、積層型圧電素子は、動作に伴う消費エネルギーが少なく、高速動作に適し、小型である等の優れた特長をもつ。
しかしながら、前記積層型圧電素子は、圧電セラミック層を有するために構造的に脆く、前記圧電式バルブの使用に際し、圧縮気体とともに破損片が噴出するおそれがある。
【0006】
また、前記積層型圧電素子は、高湿環境に弱いため、前記圧電式バルブを高湿環境下で使用する場合には、前記積層型圧電素子に湿気が侵入して該圧電式バルブの寿命が短くなるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明者らは、積層型圧電素子の表面をポリオレフィン系樹脂により被覆することを提案した(特許文献2を参照。)。
【0008】
特許文献2に記載された圧電式バルブは、ヤング率が小さく柔軟性に優れる特性を有し、かつ、透湿度が小さく耐水性に優れる特性を有するポリオレフィン系樹脂により覆われる積層型圧電素子を利用するので、当該圧電式バルブの使用に際し圧縮気体とともに前記積層型圧電素子の破損片が噴出することがなく、高湿環境下で使用した場合でも前記積層型圧電素子に湿気が侵入して寿命が短くなるおそれがない。
【0009】
ところが、前記積層型圧電素子の破損片の噴出は、前記積層型圧電素子の表面を前記ポリオレフィン系樹脂により薄く被覆することで防げるが、前記積層型圧電素子の高温・高湿環境下での絶縁抵抗の低下を防ぐためには、前記積層型圧電素子の表面を前記ポリオレフィン系樹脂によりある程度厚く被覆する必要があり、その場合、前記積層型圧電素子の動きが妨げられてストロークが小さくなったり、正確な動作をしなくなったりするおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2013-124695号公報
【文献】特開2016-61412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、使用に際し圧縮気体とともに積層型圧電素子の破損片が噴出したり、高湿環境下で使用した場合でも前記積層型圧電素子に湿気が侵入して寿命が短くなることを防止でき、また、前記積層型圧電素子の動きが妨げられてストロークが小さくなったり、正確な動作をしなくなったりすることを防止できる圧電式バルブ、及び該圧電式バルブの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、
積層型圧電素子の変位を利用してバルブの開閉を行う圧電式バルブであって、
外部から供給される圧縮気体を受け入れる気体圧力室を有するバルブ本体と、
弁体、前記弁体の動作に必要な駆動力を変位として発生する積層型圧電素子、前記積層型圧電素子の変位を拡大して前記弁体に作用させる変位拡大機構を有し、前記バルブ本体の内部に配設されるアクチュエータと、を備える圧電式バルブにおいて、
前記積層型圧電素子が、前記アクチュエータに一体化された状態でシリコーンにより表面を被覆されていることを特徴とする。
【0013】
本発明は、
前記積層型圧電素子が、前記積層型圧電素子の長手方向両側に前記積層型圧電素子との間に隙間を空けて位置する一対の突条片の間に充填されたシリコーンにより表面を被覆されている。
【0014】
本発明は、
前記バルブ本体の内部に配設されるプレートをさらに備え、前記アクチュエータは前記プレートに固定され、該プレートとともに前記バルブ本体の内部に配設されるものであって、
前記プレートの表面には、前記アクチュエータが前記プレートに固定された際、前記積層型圧電素子の長手方向両側に前記隙間を空けて位置する前記一対の突条片が設けられており、
前記積層型圧電素子が、前記アクチュエータが前記プレートに固定された状態で前記一対の突条片の間に充填されたシリコーンにより表面を被覆されていることが好ましい。
【0015】
ここで、本発明において、前記シリコーンとは低粘度のシリコーンゴムを意味し、好ましくは粘度0.01Pa・s以上、10.0Pa・s以下のシリコーンゴム、より好ましくは粘度2.5Pa・sのシリコーンゴムを用いることができる。
また、作業性を考慮して、一液型の常温硬化タイプのシリコーンゴムを用いることが好ましく、例えば、信越化学工業株式会社製の低粘度シリコーンゴム「KE-3475(品名)」等を用いることが好ましい。
【0016】
本発明は、
前記変位拡大機構は金属材料により形成される一方で、樹脂材料により形成される前記プレートには前記積層型圧電素子に給電するための配線がモールドされてなり、
前記プレートから露出する前記配線の電極が、前記積層型圧電素子のリード線と接続された状態で絶縁性材料により被覆されていることが好ましい。
【0017】
本発明は、
前記変位拡大機構が金属材料により形成されてなり、
前記積層型圧電素子のリード線が、前記変位拡大機構の表面に貼着される絶縁用フィルム上に配置されることが好ましい。
【0018】
また、上記目的を達成するため、本発明は、
積層型圧電素子の変位を利用してバルブの開閉を行う圧電式バルブであって、
外部から供給される圧縮気体を受け入れる気体圧力室を有するバルブ本体と、
弁体、前記弁体の動作に必要な駆動力を変位として発生する積層型圧電素子、前記積層型圧電素子の変位を拡大して前記弁体に作用させる変位拡大機構を有し、前記バルブ本体の内部に配設されるアクチュエータと、を備える圧電式バルブの製造方法において、
前記アクチュエータに一体化された前記積層型圧電素子の表面上にシリコーンを供給し、前記シリコーンにより前記積層型圧電素子の表面を被覆することを特徴とする。
【0019】
本発明は、
前記アクチュエータに一体化された前記積層型圧電素子の表面上にシリコーンを供給し、前記積層型圧電素子の長手方向両側に前記積層型圧電素子との間に隙間を空けて位置する一対の突条片の間に充填される前記シリコーンにより前記積層型圧電素子の表面を被覆する。
【0020】
本発明は、
前記バルブ本体の内部に配設されるプレートをさらに備え、前記アクチュエータは前記プレートに固定され、該プレートとともに前記バルブ本体の内部に配設されるものであって、
前記プレートの表面には、前記アクチュエータが前記プレートに固定された際、前記積層型圧電素子の長手方向両側に前記隙間を空けて位置する前記一対の突条片が設けられており、
前記積層型圧電素子を前記アクチュエータに一体化し、前記アクチュエータを前記プレートに固定した後、前記積層型圧電素子の表面上にシリコーンを供給し、前記一対の突条片の間に充填される前記シリコーンにより前記積層型圧電素子の表面を被覆することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の圧電式バルブは、積層型圧電素子が、耐水性・防水性に優れる特性を有するシリコーンにより表面を被覆されているので、使用に際し圧縮気体とともに前記積層型圧電素子の破損片が噴出したり、高湿環境下で使用した場合でも前記積層型圧電素子に湿気が侵入して寿命が短くなることを防止できる。
【0022】
また、本発明の圧電式バルブは、積層型圧電素子が、従来のポリオレフィン系樹脂と比べ弾性に富み、圧縮性が大きい特性を有するシリコーンにより表面を被覆されているので、前記積層型圧電素子の高温・高湿環境下での絶縁抵抗の低下を防ぐために、前記積層型圧電素子の表面を前記シリコーンによりある程度厚く被覆する場合でも、前記積層型圧電素子の動きが妨げられてストロークが小さくなったり、正確な動作をしなくなったりすることを防止できる。
【0023】
本発明の圧電式バルブは、前記積層型圧電素子が、前記積層型圧電素子の長手方向両側に前記積層型圧電素子との間に隙間を空けて位置する一対の突条片の間に充填されたシリコーンにより表面を被覆されているので、前記シリコーンにより前記積層型圧電素子の全周面を簡単に被覆することができる。
【0024】
本発明の圧電式バルブは、前記バルブ本体の内部に配設されるプレートをさらに備え、前記アクチュエータは前記プレートに固定され、該プレートとともに前記バルブ本体の内部に配設されるものであって、前記プレートの表面には、前記アクチュエータが前記プレートに固定された際、前記積層型圧電素子の長手方向両側に前記隙間を空けて位置する前記一対の突条片が設けられており、前記積層型圧電素子が、前記アクチュエータが前記プレートに固定された状態で前記一対の突条片の間に充填されたシリコーンにより表面を被覆されているものであれば、前記シリコーンにより前記積層型圧電素子の全周面を簡単に被覆することができる。
【0025】
本発明の圧電式バルブの製造方法は、前記アクチュエータに一体化された前記積層型圧電素子の表面上にシリコーンを供給し、前記シリコーンにより前記積層型圧電素子の表面を被覆するので、前記積層型圧電素子の表面以外に前記シリコーンがはみ出して付着する場合でも、前記積層型圧電素子を前記アクチュエータに一体化する際の組付不良が起こらない。
【0026】
本発明の圧電式バルブの製造方法は、前記アクチュエータに一体化された前記積層型圧電素子の表面上にシリコーンを供給し、前記積層型圧電素子の長手方向両側に前記積層型圧電素子との間に隙間を空けて位置する一対の突条片の間に充填される前記シリコーンにより前記積層型圧電素子の表面を被覆するので、前記シリコーンにより前記積層型圧電素子の全周面を簡単に被覆することができる。
【0027】
本発明の圧電式バルブの製造方法は、前記バルブ本体の内部に配設されるプレートをさらに備え、前記アクチュエータは前記プレートに固定され、該プレートとともに前記バルブ本体の内部に配設されるものであって、前記プレートの表面には、前記アクチュエータが前記プレートに固定された際、前記積層型圧電素子の長手方向両側に前記隙間を空けて位置する前記一対の突条片が設けられており、前記積層型圧電素子を前記アクチュエータに一体化し、前記アクチュエータを前記プレートに固定した後、前記積層型圧電素子の表面上にシリコーンを供給し、前記一対の突条片の間に充填される前記シリコーンにより前記積層型圧電素子の表面を被覆することとすれば、前記積層型圧電素子の表面以外に前記シリコーンがはみ出して付着する場合でも、前記積層型圧電素子を一体化したアクチュエータを前記プレートに固定する際の組付不良が起こらない。
【0028】
また、本発明の圧電式バルブの製造方法は、前記プレートの表面に、前記アクチュエータが前記プレートに固定された際、前記積層型圧電素子の長手方向両側に前記隙間を空けて位置する前記一対の突条片が設けられているので、前記一対の突条片の間に充填される前記シリコーンにより前記積層型圧電素子の全周面を簡単に被覆することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図5】弁座プレートにアクチュエータを固定した状態の説明図。
【
図6】圧電式バルブの断面図であって、弁座プレートをバルブ本体内部に配設した状態の説明図。
【
図7】本発明の実施の形態における圧電式バルブが備えるアクチュエータの平面図。
【
図8】本発明の実施の形態における圧電式バルブが備える弁座プレートにアクチュエータを固定した状態の平面図。
【
図10】本発明の実施の形態における圧電式バルブから噴出するエアの噴出圧特性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、積層型圧電素子(以下、「圧電素子」という)の代表例であって断面図を示す。
図1に示す圧電素子1は、圧電セラミック層2と内部電極層3を交互に積層した積層体4を有する。前記積層体4は、対向する側面に前記内部電極層3が露出し、前記各側面のそれぞれにおいて前記露出した内部電極層3が一層おきに絶縁層5で被覆され、さらに、前記絶縁層5を覆いかつ前記絶縁層5によって被覆されていない前記内部電極層3と導通する外部電極6を有する。
【0031】
図2は圧電式バルブの一例であって斜視図を示す。
図3は
図2の圧電式バルブの組立分解図を示す。
図4はアクチュエータの説明図を示す。
図5は弁座プレートにアクチュエータを固定した状態の説明図を示す。
図6は圧電式バルブの断面図であって、弁座プレートをバルブ本体内部に配設した状態の説明図を示す。
図2乃至
図6に示す圧電式バルブ10は、バルブ本体20、前記バルブ本体20の内部に配設されるとともに該バルブ本体20に固定される弁座プレート25、前記弁座プレート25の両面にネジで固定されるアクチュエータ30を備える。
【0032】
前記バルブ本体20は、前面が開口するケースであって、内部には外部の圧縮気体供給源(図示せず)から圧縮気体の供給を受ける気体圧力室を備える。
また、前記バルブ本体20の前面には、コネクタ部50が設けられる。前記コネクタ部50の前面には、該バルブ本体20内に圧縮気体を吸入する気体吸入口51及び前記圧縮気体を排出する気体排出口52が開口する。
【0033】
前記バルブ本体20と前記コネクタ部50の間には、圧電素子32に給電するための配線基板55が配設され、前記コネクタ部50の一側端であって前記バルブ本体20の側方位置に、前記配線基板55を介して前記圧電素子32に給電するための配線コネクタ29が配設される。
【0034】
前記弁座プレート25は、前記アクチュエータ30の取り付け部を両面に備えるとともに、前記アクチュエータ30の後述する弁体31が当接する弁座26を有する。また、前記弁座プレート25の前面には、前記ケースの開口を閉鎖する蓋材28が取り付けられる。当該蓋材28には、前記弁座26の弁座面から前記コネクタ部50の前面に開口する前記排出口52へ連通する気体排出路が形成される。さらに、前記蓋材28には、前記コネクタ部50の前面に開口する吸入口51から前記バルブ本体20内に連通する気体吸入路が形成される。
前記弁座プレート25は、例えば合成樹脂材料により成形され、前記配線基板55から前記圧電素子32への配線がモールドされる。
また、前記弁座プレート25の後方位置には、
図8に後述するように前記圧電素子32のリード線57と接続される前記配線の電極58が露出する。
【0035】
前記アクチュエータ30は、
図4に示すように、ゴム製好ましくは滑性ゴムの弁体31、該弁体31の動作に必要な駆動力を変位として発生する圧電素子32、前記圧電素子32の変位を拡大して前記弁体31に作用させる変位拡大機構33を備える。
前記圧電素子32には、
図1に示す圧電素子を用いることができる。また、前記圧電素子32には、内部電極層3が露出する側面を含む全周面がエポキシ樹脂で薄く被覆された樹脂外装型圧電素子を用いることもできる。
【0036】
前記変位拡大機構33は、前記圧電素子32の変位を拡大する変位拡大部34と、前記圧電素子32の変位を前記変位拡大部34に伝達する変位伝達部35を有し、前記弁体31の動作方向の軸線、ここでは、前記弁体31と前記圧電素子32の長手方向軸線を結ぶ直線(以下、「中心線」という。)に対して対称に配置される。
【0037】
前記変位伝達部35は、前記圧電素子32の一端が接合されるU字状のベース基板36と、前記圧電素子32の他端が接合されるキャップ部材37を有する。前記圧電素子32が前記U字状のベース基板36の空間内に配設されることで、前記変位拡大機構33は前記圧電素子32の長手方向軸線を中心として対称な配置とされる。
【0038】
ここで、前記圧電素子32は、前記U字状のベース基板36の空間内であって該ベース基板36のU字状底部と前記キャップ部材37との間に組み込まれ、前記ベース基板36のU字状底部を塑性変形させることで、前記一端が前記ベース基板36のU字状底部に接合され、前記他端が前記キャップ部材37に接合される。
【0039】
前記変位拡大部34は、前記中心線に対して対称な配置とされる第1及び第2変位拡大部34a,34bから構成される。
前記第1変位拡大部34aは、第1及び第2ヒンジ39,40、第1アーム41及び第1板バネ42を有する。前記第1ヒンジ39の一端は前記U字状のベース基板36の一方側先端に対し一体とされ、前記第2ヒンジ40の一端は前記キャップ部材37に対し一体とされる。前記第1アーム41の外側先端部には、前記第1板バネ42の一端が接合され、該第1板バネ42の他端には前記弁体31の一方側の側端部が接合される。
【0040】
他方、前記第2変位拡大部34bは、第3及び第4ヒンジ43,44、第2アーム45及び第2板バネ46を有する。前記第3ヒンジ43の一端は前記U字状のベース基板36の他方側先端に対し一体とされ、前記第4ヒンジ44の一端は前記キャップ部材37に対し一体とされる。前記第2アーム45の外側先端部には、前記第2板バネ46の一端が接合され、該第2板バネ46の他端には前記弁体31の他方側の側端部が接合される。
ここで、前記変位拡大機構33は、例えばインバー材を含むステンレス材等の金属材料を打ち抜いて一体に成形することができる。
【0041】
上記アクチュエータ30は、閉弁状態において前記圧電素子32に通電すると、当該圧電素子32が伸長する。当該圧電素子32の伸長に伴う変位は、前記変位拡大機構33において、前記第1及び第3ヒンジ39,43を支点、前記第2及び第4ヒンジ40,44を力点、前記第1及び第2アーム41,45の外側先端部を作用点としてテコの原理により拡大され、前記第1及び第2アーム41,45の外側先端部を大きく変位させる。
【0042】
そして、前記第1及び第2アーム41,45の外側先端部の変位は、前記第1及び第2板バネ42,46を介して前記弁体31を前記弁座26から離間させ、前記気体排出路を開放する。
【0043】
他方、上記アクチュエータ30は、前記圧電素子32への通電が解除されると該圧電素子32が収縮し、当該収縮が前記変位拡大機構33を介して前記弁体31を前記弁座26に着座させ、前記気体排出路を閉鎖する。
【0044】
図7は、本発明の実施の形態における圧電式バルブが備えるアクチュエータの平面図を示す。
図7に示すアクチュエータは、圧電素子32が一体化された状態で、当該圧電素子32の表面、即ち、前記圧電素子32の少なくとも内部電極層が露出する側面がシリコーン8により被覆されている。
【0045】
本発明の実施の形態における圧電式バルブは、例えば、
図1に示すタイプの圧電素子であって、シリコーン8により表面が被覆された圧電素子32をアクチュエータ30に一体に組み付けることができる。
【0046】
また、本発明の実施の形態における圧電式バルブは、アクチュエータ30に一体化された状態の圧電素子32の表面上にディスペンサや刷毛等によりシリコーン8を供給し、前記シリコーン8により前記圧電素子32の表面を被覆することもできる。
【0047】
本発明の実施の形態における圧電式バルブは、アクチュエータ30に一体化された状態の圧電素子32の表面上にシリコーン8を供給し、前記シリコーン8により前記圧電素子32の表面を被覆することとすれば、前記シリコーン8が前記圧電素子32の表面からはみ出して付着する場合でも、前記圧電素子32を前記アクチュエータ30に一体化する際の組付不良が起こる心配がない。
【0048】
本発明の実施の形態における圧電式バルブは、圧電素子32がアクチュエータ30に一体化された状態でシリコーン8により表面を被覆されており、前記アクチュエータ30を弁座プレートに固定することで組み立てることができる。
【0049】
ここで、前記圧電素子32は、少なくとも内部電極層が露出する側面がシリコーン8により被覆されていればよく、好ましくは、前記内部電極層が露出する側面を含むすべての側面(全周面)が、前記シリコーン8により被覆されていればよい。
【0050】
また、前記圧電素子32として、全周面がエポキシ樹脂で薄く被覆されている樹脂外装型圧電素子を用いる場合には、前記シリコーン8により全周面を被覆することが好ましい。
【0051】
図8は、本発明の実施の形態における圧電式バルブが備える弁座プレートにアクチュエータを固定した状態の平面図を示す。
図9は
図8のA-A断面図を示す。
本発明の実施の形態における圧電式バルブにおいて、弁座プレート25の表面におけるアクチュエータ30の取り付け部には、前記アクチュエータ30がネジで固定された際、前記圧電素子32と前記変位伝達部35の間であって前記圧電素子32の長手方向(伸縮方向)両側に隙間を空けて位置する一対の突条片27が設けられる。
【0052】
また、
図9に示すように、前記一対の突条片27は、前記弁座プレート25に固定された前記アクチュエータ30の前記圧電素子32の表面の高さよりも高く形成されている。
【0053】
本発明の実施の形態における圧電式バルブは、
図7に示すアクチュエータ30であって、シリコーン8により内部電極層が露出する側面が被覆された圧電素子32を前記弁座プレート25に固定した後、前記圧電素子32の表面上にシリコーン8を供給することで、前記一対の突条片27の間に充填されるシリコーン8により前記圧電素子32の全周面を被覆することができる。
【0054】
また、本発明の実施の形態における圧電式バルブは、シリコーン8により表面を被覆されていない圧電素子32をアクチュエータ30に一体化し、前記アクチュエータ30を前記弁座プレート25に固定した後、前記圧電素子32の表面上にシリコーン8を供給することで、前記一対の突条片27の間に充填されるシリコーン8により前記圧電素子32の全周面を被覆することもできる。
【0055】
本発明の実施の形態における圧電式バルブは、アクチュエータ30が弁座プレート25に固定された際、前記圧電素子32の長手方向両側に隙間を空けて位置する一対の突条片27が弁座プレート25の表面に設けられているので、前記一対の突条片27の間に充填されたシリコーン8により全周面を簡単に被覆することができる。
【0056】
なお、本発明の実施の形態における圧電式バルブは、シリコーン8により表面を被覆されていない圧電素子32を前記アクチュエータ30に一体化し、前記アクチュエータ30を前記弁座プレート25に固定した後、前記圧電素子32の表面上にシリコーン8を供給し、前記一対の突条片27の間に充填される前記シリコーン8により前記圧電素子32の全周面を被覆することとすれば、前記シリコーン8が前記圧電素子32の表面以外にはみ出して付着する場合でも、前記アクチュエータ32を前記弁座プレート25に固定する際の組付不良が起こる心配がない。
【0057】
ここで、本発明において、前記シリコーン8とは低粘度のシリコーンゴムを意味するものであり、好ましくは粘度0.01Pa・s以上、10.0Pa・s以下のシリコーンゴム、より好ましくは粘度2.5Pa・sのシリコーンゴムを用いることができる。
また、作業性を考慮して、一液型の常温硬化タイプのシリコーンゴムを用いることが好ましく、例えば、信越化学工業株式会社製の低粘度シリコーンゴム「KE-3475(品名)」等を用いることが好ましい。
【0058】
図8において、弁座プレート25の後方位置には、前記圧電素子32に給電するためにモールドされた配線の電極58が露出し、前記圧電素子32のリード線57と半田により接続されており、前記配線の電極58が、前記リード線57と接続された状態で図示しない絶縁性材料により被覆されている。前記絶縁性材料には、例えば前記シリコーン等の絶縁性樹脂材料を用いることができる。
【0059】
また、
図8に示すように、前記アクチュエータ30は、変位拡大機構33における変位伝達部35の表面後部位置に絶縁用フィルム62が貼着されている。
【0060】
図8において、前記アクチュエータ30が取り付けられる弁座プレート25には、配線基板55から圧電素子32への配線がモールドされており、前記圧電素子32のリード線57は、前記アクチュエータ30の変位拡大機構33を構成する金属材料と接触することを防ぐよう、前記絶縁用フィルム62上に配置され、前記弁座プレート25の後方位置に露出する前記配線の電極58と半田により接続される。
【0061】
ここで、前記絶縁用フィルム62には、例えば低透湿性フィルムを用いることができる。
本発明において、低透湿性フィルムとは、厚み1mmの材料の温度40℃、相対湿度95%の環境下における透湿度が0.5g/m2・24hr以下の樹脂フィルムをいう。
前記低透湿性フィルムには、低透湿性材料からなる樹脂フィルム、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリオレフィン系樹脂フィルムを用いることができる。また、前記低透湿性フィルムには、フッ素等の低透湿剤をコーティングする等の低透湿加工を施した樹脂フィルムを用いることもできる。
【0062】
上記本発明の実施の形態における圧電式バルブは、弁座プレート25の表面に一対の突条片27が設けられるものであったが、アクチュエータ20をバルブ本体20に直接取り付ける場合には、前記バルブ本体の内壁面に一対の突条片を設けることもできる。その場合、アクチュエータをバルブ本体に固定した後、圧電素子の表面上にシリコーン8を供給することで、前記一対の突条片27の間に充填されるシリコーン8により前記圧電素子32の全周面を被覆することができる。
【0063】
本発明の圧電式バルブは、圧電素子が、耐水性・防水性に優れる特性を有するシリコーンにより表面を被覆されているので、使用に際し圧縮気体とともに前記圧電素子の破損片が噴出したり、高湿環境下で使用した場合でも前記圧電素子に湿気が侵入して寿命が短くなることを防止できる。
【0064】
また、本発明の圧電式バルブは、圧電素子が、従来のポリオレフィン系樹脂と比べ弾性に富み、圧縮性が大きい特性を有するシリコーンにより表面を被覆されているので、前記圧電素子の高温・高湿環境下での絶縁抵抗の低下を防ぐために、前記圧電素子の表面を前記シリコーンによりある程度厚く被覆する場合でも、前記圧電素子の動きが妨げられてストロークが小さくなったり、正確な動作をしなくなったりすることを防止できる。
【0065】
図10は、圧電式バルブから噴出するエアの噴出圧特性を示すグラフであって、圧電素子の表面がシリコーンにより被覆されている場合と、圧電素子の表面が被シリコーンにより覆されていない場合とを比較するグラフを示す。なお、圧電素子の表面がシリコーンにより被覆されている場合の被覆厚さは約150μmであり、高温・高湿環境下での絶縁抵抗の低下を防ぐことができるものである。
【0066】
実験は、特開2017-160973号公報の[実施例]に記載された方法に基づいて行われた。実験条件は以下のとおりである。
(1)圧縮エア供給圧力:0.15MPa(大気圧下のゲージ圧値)
(2)駆動電圧:72V
(3)圧縮エア設定流量:39L/min
(4)入力信号:第1プレパルス時間 t1=0.098ms
第1休止時間 t2=0.08ms
第2プレパルス時間 t3=0.6ms
第2休止時間 t4=0.03ms
メインパルス時間 t5=0.192ms
(圧電素子の通電時間:1ms)
(5)エア噴出圧検出位置:気体排出路先端より2mm
【0067】
図10において、破線は、シリコーンにより圧電素子の表面が被覆されている圧電式バルブの結果を示す。また、実線は、シリコーンにより圧電素子の表面が被覆されていない圧電式バルブの結果を示す。
両者を比較した場合、エアの噴出圧特性はほぼ一致しており、本発明の実施の形態における圧電式バルブでは、圧電素子の高温・高湿環境下での絶縁抵抗の低下を防ぐために、前記圧電素子の表面を前記シリコーンによりある程度厚く被覆する場合でも、圧電素子の動きが妨げられていないことが確認できた。
【0068】
本発明は、上記実施の形態に限るものでなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいてその構成を適宜変更できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の圧電式バルブは、使用に際し圧縮気体とともに積層型圧電素子の破損片が噴出したり、高湿環境下で使用した場合でも前記積層型圧電素子に湿気が侵入して寿命が短くなることを防止でき、また、前記積層型圧電素子の動きが妨げられてストロークが小さくなったり、正確な動作をしなくなったりすることを防止できるため、極めて有用である。
【符号の説明】
【0070】
1 積層型圧電素子
2 セラミック層
3 内部電極層
4 積層体
5 絶縁層
6 外部電極
7 リード線
8 シリコーン
10 圧電式バルブ
20 バルブ本体
25 弁座プレート
26 弁座
27 突条片
28 蓋材
29 配線コネクタ
30 アクチュエータ
31 弁体
32 積層型圧電素子
33 変位拡大機構
34 変位拡大部
35 変位伝達部
36 ベース基板
37 キャップ部
39 第1ヒンジ
40 第2ヒンジ
41 第1アーム
42 第1板バネ
43 第3ヒンジ
44 第4ヒンジ
45 第2アーム
46 第2板バネ
50 コネクタ部
51 気体吸入口
52 気体排出口
55 配線基板
57 リード線
58 電極
62 絶縁用フィルム