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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】コンクリート養生方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20230403BHJP
   E02D 31/00 20060101ALI20230403BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
E04G21/02 104
E04G21/02 103A
E02D31/00 B
B28B11/24
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022054102
(22)【出願日】2022-03-29
【審査請求日】2022-03-30
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591000506
【氏名又は名称】早川ゴム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599145395
【氏名又は名称】高田機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大友 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】有村 健
(72)【発明者】
【氏名】岡本 光弘
(72)【発明者】
【氏名】一反田 康啓
(72)【発明者】
【氏名】壽系 亘平
(72)【発明者】
【氏名】塚本 和志
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-174262(JP,U)
【文献】特開2004-300849(JP,A)
【文献】特開2004-300850(JP,A)
【文献】特開2018-145680(JP,A)
【文献】特開2014-214551(JP,A)
【文献】特開2010-196396(JP,A)
【文献】特開平06-285832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/02-21/10
E02D 31/00-31/14
B28B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のコンクリート養生シートを用いたコンクリートの養生方法であって、
前記コンクリート養生シートに、当該コンクリート養生シートの幅方向に長い複数の切れ目を、当該コンクリート養生シートの長手方向に間隔をあけて設けておき、
前記コンクリート養生シートをコンクリート打継部に敷設する敷設工程を行い、
前記敷設工程では、前記コンクリート養生シートの前記切れ目に前記コンクリート打継部から上方へ突出する鉄筋を入れる作業と並行して前記切れ目の縁部を前記鉄筋の外面に接触させて変形させてから、前記コンクリート養生シートにおける隣合う前記切れ目の間の部分で前記コンクリート打継部を覆う、コンクリートの養生方法。
【請求項2】
請求項1に記載のコンクリートの養生方法において、
前記敷設工程では、前記コンクリート養生シートが有する保水材に吸水させてから、当該コンクリート養生シートをコンクリート打継部に敷設する、コンクリートの養生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、現場で打設されたコンクリートを養生するコンクリート養生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンクリート工事においては、コンクリートの強度、耐久性、水密性等の所要の品質を確保するため、コンクリートの打設後、一定期間を硬化に必要な温度及び湿度に保つ、いわゆる養生が必要である。
【0003】
養生方法としては様々あり、特許文献1~3にも開示されているように、コンクリート養生シートを用いてコンクリートを養生する方法が知られている。特許文献1のコンクリート養生シートは、基材シートにおけるコンクリート表面に敷設される側に複数の突出体を有している。各突出体は水を吸収することによって膨潤する湿潤材で構成されている。また、特許文献2のコンクリート養生シートは、膨潤材を含む保湿シートと、断熱部材からなる保温シートとが積層状態で一体化されたものである。さらに、特許文献3のコンクリート養生シートは、膨潤材を含む保水層と、放熱層とが積層状態で一体化されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-81210号公報
【文献】特開2010-196396号公報
【文献】特開2014-152559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した各養生方法にはそれぞれ課題がある。例えば、床と壁の取合い部などのコンクリート打継部には床から壁に繋がる鉄筋が当該床から上方へ突出するように露出しており、前記取合い部を養生シートで養生する場合は敷設時に鉄筋を避けるため、養生シートにおける鉄筋に対応する部分に切れ込みを入れてから、その切れ込みに鉄筋を入れつつ、養生シートを敷設する必要がある。
【0006】
また、例えば橋梁の壁高欄の地覆部分では、コンクリート打設延長が長い場合、鉄筋の数が膨大なものになる。このような場合、現地で鉄筋の数に合わせてコンクリート養生シートに切れ込みを入れる作業を行うと、コンクリートの打設後、その表面仕上げ終了後、速やかな養生が実施できず、コンクリートの品質を確保することが困難になる。
【0007】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、鉄筋が露出するコンクリート構造物の養生の際に速やかに敷設可能にして高品質なコンクリート構造物を得ることができるコンクリート養生シート及びそのシートを用いたコンクリート養生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、帯状のコンクリート養生シートを用いたコンクリートの養生方法であって、前記コンクリート養生シートに、当該コンクリート養生シートの幅方向に長い複数の切れ目を、当該コンクリート養生シートの長手方向に間隔をあけて設けておき、前記コンクリート養生シートをコンクリート打継部に敷設する敷設工程を行い、前記敷設工程では、前記コンクリート養生シートの前記切れ目に前記コンクリート打継部から上方へ突出する鉄筋を入れる作業と並行して前記切れ目の縁部を前記鉄筋の外面に接触させて変形させてから、前記コンクリート養生シートにおける隣合う前記切れ目の間の部分で前記コンクリート打継部を覆うことを特徴とする。
【0009】
また、コンクリート養生シートが有する保水材に吸水させてから、敷設工程を行うこともできる。
【0010】
この構成によれば、鉄筋が上方へ突出するように露出したコンクリート表面にコンクリート養生シートを敷設する際には、当該コンクリート養生シートに、幅方向に長い切れ目が予め設けられているので、その切れ目に鉄筋を入れるようにすることで、鉄筋との干渉を回避しながら、コンクリート養生シートを速やかに敷設できる。例えば橋梁の壁高欄の地覆部分のようにコンクリート打設延長が長い場合には、多数の鉄筋が壁高欄の長手方向に間隔をあけて露出することになるが、本構成では、複数の切れ目がコンクリート養生シートの長手方向に間隔をあけて予め設けられているので、鉄筋の数が多くても、現場で多数の切れ込みを入れる作業は不要であり、敷設時の作業が迅速にかつ容易に行える。尚、現場で追加の切れ目を入れてもよい。
【0011】
また、複数の切れ目は、コンクリート養生シートの幅方向に間隔をあけて設けられていてもよい。この場合、複数の切れ目がコンクリート養生シートの幅方向に並ぶことになり、この幅方向に並ぶ切れ目の間は、コンクリート養生シートが切れていない部分、即ち繋がった部分となる。つまり、幅方向に長い切れ目を入れる際にコンクリート養生シートの一部を切らないで残しておくことで、例えばコンクリート養生シートの運搬時等にめくれにくくなり、取り扱いが容易になる。敷設時には、コンクリート養生シートにおける切れ目間の繋がった部分を現場で切断することで、十分な長さの切れ目となるので、その切れ目に鉄筋を入れればよい。尚、幅方向に長い切れ目が予め設けられているので、繋がった部分を現場で切断すること自体は素早く行うことができ、敷設作業の迅速性を阻害することは殆どない。
【0012】
また、コンクリート養生シートにおける切れ目間に繋がった部分があることで、切れ目が不要な敷設箇所では繋がったままにしておくことで、コンクリート養生シートが風等でめくれにくくなり、養生不良になる可能性が、繋がった部分のない場合に比べて低くなる。
【0013】
また、切れ目は、コンクリート養生シートにおける幅方向一端から他端側に離れた部分、かつ、幅方向他端から一端側に離れた部分に設けられていてもよい。この構成によれば、切れ目がコンクリート養生シートの一端及び他端に達していないので、コンクリート養生シートがその一端及び他端では長手方向に繋がった状態になる。これにより、切れ目が不要な敷設箇所では、コンクリート養生シートの一端及び他端が風等でめくれにくくなる。尚、切れ目が必要な敷設箇所では、コンクリート養生シートの一端または他端を現場で切断することで、十分な長さの切れ目が得られるので、その切れ目に鉄筋を入れればよい。
【0014】
また、切れ目の長手方向一端がコンクリート養生シートにおける幅方向一端に達するように設けられていてもよい。コンクリート養生シートの一端に達する切れ目を予め設けておくことで、現場でコンクリート養生シートの一部を切断する作業が不要になり、敷設作業をより一層迅速に行うことができる。
【0015】
また、コンクリート養生シートは巻いた状態で保管や運搬できる。また、任意の長さに切断された複数枚のコンクリート養生シートを厚み方向に重ねた状態で保管や運搬できる。
【0016】
コンクリート養生シートは、基材と、基材におけるコンクリートに敷設される側に設けられた保水材とを備えていてもよい。この場合、保水材に水を含ませておくことで、コンクリートを長期間に亘って湿潤状態に保つことができ、コンクリート構造物の品質をより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、コンクリート養生シートの幅方向に長い複数の切れ目がコンクリート養生シートの長手方向に間隔をあけて設けられているので、コンクリート養生シートを、鉄筋が露出するコンクリートに速やかに敷設することができ、これにより、高品質なコンクリート構造物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るコンクリート養生シートの平面図である。
図2図1におけるII-II線断面図である。
図3A】巻いた状態のコンクリート養生シートを示す斜視図である。
図3B】重ねた状態のコンクリート養生シートを示す斜視図である。
図4】変形例1に係る図1相当図である。
図5】変形例2に係る図1相当図である。
図6】コンクリート打継部の例を示す斜視図である。
図7】コンクリート養生シート敷設後の図6相当図である。
図8】透気係数による品質評価結果を示すグラフである。
図9】表面給水量による品質評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係るコンクリート養生シート1の平面図である。コンクリート養生シート1は、コンクリート表面に敷設され、コンクリートを湿潤状態に保ち養生する帯状のものである。具体的には、例えば図6に示すような床と壁の取合い部などのコンクリート打継部100にコンクリート養生シート1を敷設することができる。コンクリート打継部100には床から繋がる複数の鉄筋101が上方へ突出するように露出している。この鉄筋101が埋設されるように、壁となるコンクリートが打設されて、床と壁とが一体化したコンクリート構造物が得られる。要するに、コンクリート構造物の一部を構成する床部分がコンクリート打継部100を有している。
【0021】
また、例えばコンクリート構造物として橋梁の壁高欄等がある。壁高欄の地覆部分では、橋梁の長さによってコンクリート打設延長が長い場合がある。この場合、鉄筋101の数が膨大なものになり、多数の鉄筋101が壁高欄の長手方向に互いに間隔をあけて露出することになる。鉄筋101の間隔は、略一定であり、例えば数十cm程度に設定されている場合がある。尚、コンクリート養生シート1はコンクリート打継部100以外のコンクリート表面に敷設してもよい。
【0022】
コンクリート養生シート1は、帯状であることから長手方向と幅方向とを定義することができる。また、図1における下端をコンクリート養生シート1の幅方向一端と定義し、図1における上端をコンクリート養生シート1の幅方向他端と定義する。コンクリート養生シート1の長さは、特に限定されるものではないが、例えば1m以上、または3m以上、5m以上などのように、一般的な間隔で配設されている鉄筋101の間隔よりも十分に長く設定されている。コンクリート養生シート1の幅は、コンクリート打継部100の奥行方向の寸法以上に設定されており、具体的には、数十cm以上である。
【0023】
コンクリート養生シート1は、当該コンクリート養生シート1の幅方向に長い複数の切れ目1aを有しており、図7に示すように、1つの切れ目1aに1本の鉄筋101を入れることができるようになっている。尚、鉄筋101が奥行方向に並んで複数設けられている場合には、奥行方向に並んだ複数の鉄筋101を1つの切れ目1aに入れることもできる。
【0024】
図1における切れ目1aの下端を当該切れ目1aの長手方向一端と定義し、図1における切れ目1aの上端を当該切れ目1aの長手方向他端と定義する。切れ目1aは、コンクリート養生シート1の幅方向に沿って直線状に延びており、従って切れ目1aの長手方向とコンクリート養生シート1の長手方向とは直交する関係となる。尚、切れ目1aは、コンクリート養生シート1の幅方向に対して交差する方向に延びていてもよい。また、切れ目1aは、直線状でなくてもよく、例えば屈曲した形状や湾曲した形状であってもよい。
【0025】
切れ目1aは、刃物により切ってできたあとであり、刃物で切れた所と呼ぶこともできる。切れ目1aを設ける際には、刃物をコンクリート養生シート1の表面から裏面まで厚み方向に貫通させればよく、狙いとする位置に所望の長さの切れ目1aを容易に設けることができる。複数の切れ目1aは、コンクリート養生シート1の長手方向に間隔をあけて設けられている。切れ目1aの間隔は、例えば20mm以上100mm以下の範囲で設定すること、また30mm以上60mm以下の範囲で設定することができる。切れ目1aの間隔を狭くすると様々な鉄筋101の位置に容易に対応させることができる一方、コンクリート養生シート1の切れ目1aが形成された部分がばらばらになりやすく、保管や運搬が難しくなる。よって、切れ目1aの間隔を20mm以上としている。
【0026】
また、切れ目1aの間隔を広くするとコンクリート養生シート1の切れ目1aが形成された部分がばらばらになりにくく、保管や運搬が容易になる一方、切れ目1aと切れ目1aとの間に鉄筋101が位置してしまう場合があり、切れ目1aを設けた効果が減少してしまうので、少なくとも一般的な鉄筋101の間隔と対応するように、100mm以下としている。以上を考慮して、本実施形態では、後述するが、切れ目1aの間隔を30mmと50mmとの2種類としている。
【0027】
切れ目1aは、当該切れ目1aの長手方向一端がコンクリート養生シート1における幅方向一端に達するように設けられている。また、切れ目1aの長手方向他端は、コンクリート養生シート1における幅方向他端には達しておらず、コンクリート養生シート1における幅方向他端から一端側に離れた部分に位置している。切れ目1aの長手方向の寸法は、コンクリート養生シート1の幅方向の寸法の1/2以上とされており、例えば2/3以上、4/5以上の長さとすることができる。切れ目1aの長手方向の寸法は、図6に示す鉄筋101の奥行方向の位置に応じて設定すればよく、上述したものに限られない。
【0028】
切れ目1aの長手方向一端がコンクリート養生シート1の幅方向一端に達しているので、コンクリート養生シート1は隣合う切れ目1a、1aの間の部分を作業者が容易にめくることが可能になる。一方、切れ目1aがコンクリート養生シート1の幅方向他端に達していないので、コンクリート養生シート1が切れ目1aの形成によって完全に分離してしまうことはなく、1枚のシートとして取り扱うことができる。
【0029】
図2に示すように、コンクリート養生シート1は複層構造とである。具体的には、コンクリート養生シート1は、基材11と、基材11におけるコンクリートに敷設される側に設けられた保水材12とを備えている。基材11は、非通気性を有するシートであり、特に限定されるものではないが、例えば繊維入りの強化塩化ビニルシートや、ポリエチレンフィルム等で構成されている。基材11は複層構造であってもよく、非通気性を有するシートと不織布とを組み合わせたシートで構成することもできる。
【0030】
保水材12は、水を吸収して保持することが可能な吸水ポリマーや繊維等で構成されている。吸水ポリマーとしては、例えば架橋ポリエチレンオキサイド等のポリエチレンオキサイド系高分子吸収剤を用いることができる。保水材12による保水量は特に限定されるものではないが、コンクリートへの敷設後、材齢を重ねるにつれて表面から奪われる水分を所定期間、継続して補給可能な量である。尚、コンクリート養生シート1は、放熱層や断熱層を有していてもよい。
【0031】
図3Aに示すように、1枚のコンクリート養生シート1を巻いた状態で保管及び運搬することができる。例えば、コンクリート養生シート1を長手方向に巻いていくことで、1本のロール形状にすることができるので、保管や運搬が容易になる。また、後述する図3Bに示す場合に比べて少ない体積で多くのコンクリート養生シート1を運搬できる。
【0032】
また、図3Bに示すように、所定長さに切断した複数枚のコンクリート養生シート1を厚み方向に重ねた状態で保管及び運搬することもできる。この場合、各コンクリート養生シート1の切れ目1aが形成された側を揃えておく。複数枚のコンクリート養生シート1を重ねて袋(図示せず)に入れて梱包することができる。このように梱包しておくことで、コンクリート養生シート1を敷設する前に、袋の中に水を入れて各コンクリート養生シート1の保水材12に一度に吸水させることができ、現場での作業性が良好になる。
【0033】
図4は、実施形態の変形例1に係るコンクリート養生シート1を示すものである。この変形例1では、複数の切れ目1aがコンクリート養生シート1の長手方向に間隔をあけて設けられるとともに、コンクリート養生シート1の幅方向にも間隔をあけて設けられている。コンクリート養生シート1の幅方向に並ぶ切れ目1aの間は、コンクリート養生シート1が切れていない部分、即ち繋がった部分となる。つまり、幅方向に長い切れ目1aを入れる際にコンクリート養生シート1の一部を切らないで残しておくことで、例えばコンクリート養生シート1の運搬時等にめくれにくくなり、取り扱いが容易になる。また、変形例1の場合、図3Aに示すように巻くことや、図3Bに示すように積み重ねることが容易に行える。
【0034】
幅方向に並ぶ切れ目1a、1a間の寸法は、特に限定されるものではないが、切れ目1aの長さよりも短く設定されており、変形例1では切れ目1aの長さの1/5以下、また1/10以下にすることができる。敷設時には、コンクリート養生シート1における幅方向に並ぶ切れ目1a、1a間の繋がった部分を現場で切断することで、十分な長さを有する1つの切れ目1aとなるので、その切れ目1aに鉄筋101を入れればよい。尚、変形例1の場合、コンクリート養生シート1の幅方向に長い切れ目1aが予め設けられているので、幅方向に並ぶ切れ目1a、1a間の繋がった部分を現場で切断すること自体は素早く行うことができ、敷設作業の迅速性を阻害することは殆どない。
【0035】
また、コンクリート養生シート1における切れ目1a、1a間に繋がった部分があることで、切れ目1aが不要な敷設箇所では繋がったままにしておくことができる。これにより、コンクリート養生シート1が風等でめくれにくくなり、養生不良になる可能性が、繋がった部分のない場合(図1に示す)に比べて低くなる。
【0036】
コンクリート養生シート1の幅方向に並ぶ複数の切れ目1aは、コンクリート養生シート1の幅方向に延びる仮想の同一直線上に位置するように設けられている。コンクリート養生シート1の幅方向に並ぶ切れ目1aの長さは全て同じであってもよいし、異なっていてもよい。コンクリート養生シート1の幅方向に並ぶ複数の切れ目1aは、コンクリート養生シート1における幅方向一端から他端側に離れた部分、かつ、幅方向他端から一端側に離れた部分に設けられている。すなわち、切れ目1aがコンクリート養生シート1の幅方向一端及び他端に達していないので、コンクリート養生シート1が幅方向一端及び他端では長手方向に繋がった状態になる。これにより、切れ目1aが不要な敷設箇所では、コンクリート養生シート1の幅方向一端及び他端が風等でめくれにくくなる。
【0037】
コンクリート養生シート1の幅方向に並ぶ切れ目1aの数は2つに限られるものではなく、図5に示す変形例2のように3つ以上であってもよい。この変形例2では、幅方向に並ぶ切れ目1aがミシン目のように設けられている。この変形例2の場合も、必要に応じて、幅方向に並ぶ切れ目1a、1a間の繋がった部分を現場で切断すればよい。また、変形例2の場合も、図3Aに示すように巻くことや、図3Bに示すように積み重ねることが容易に行える。
【0038】
(コンクリート養生方法)
次に、上記コンクリート養生シート1を用いたコンクリート養生方法について説明する。コンクリート養生シート1の切れ目1aが工場出荷時にすでに設けられている。この切れ目1aが予め設けられたコンクリート養生シート1を現場まで運搬した後、保水材12に吸水させる吸水工程を行う。図3Aに示す場合は、コンクリート養生シート1を巻いたままで保水材12に吸水させてもよいし、広げた後に吸水させてもよい。また、図3Bに示す場合は、コンクリート養生シート1を重ねたままで保水材12に吸水させてもよいし、分離した後に吸水させてもよい。
【0039】
その後、図7に示すように、コンクリート養生シート1をコンクリート打継部100に敷設する。これが敷設工程である。このとき、図1に示すコンクリート養生シート1の場合、切れ目1aが設けられているので、切れ目1aを広げるように、または切れ目1a、1a間の部分をめくるようにコンクリート養生シート1を変形させることで、鉄筋101を切れ目1aに容易に入れることができる。鉄筋101の間隔によっては、鉄筋101が入らない切れ目1aが存在することもあるが、図7では鉄筋101の間隔と切れ目1aの間隔とが略一致していて、全ての切れ目1aに鉄筋101が入っている状態を示している。このように敷設することで、コンクリート打継部100の養生が必要な部分の殆どをコンクリート養生シート1で覆うことができる。尚、切れ目1aを設けたことによって生じる隙間は無視できる程度に小さい。
【0040】
また、図4に示す変形例1のコンクリート養生シート1の場合、及び図5に示す変形例2のコンクリート養生シート1の場合、コンクリート養生シート1の幅方向に並ぶ切れ目1a、1aの間を現場で切断する。これが切断工程である。そうすることで、図1に示すコンクリート養生シート1と同様な長い切れ目1aになるので、鉄筋101を切れ目1aに容易に入れることができる。図5に示す変形例2のコンクリート養生シート1の場合、コンクリート養生シート1の幅方向に並ぶ切れ目1a、1aの間の全てを切断しなくてもよく、一部のみ切断してもよい。
【0041】
以上のようにしてコンクリート養生シート1を敷設した後、所定の養生期間が経過するのを待つ。給水は初期のみ行い、途中給水は不要である。その理由は、コンクリート打継部100の養生が必要な部分の殆どをコンクリート養生シート1で覆っていて、コンクリート打継部100からの水分の蒸発をコンクリート養生シート1で抑制しているからである。尚、必要に応じて途中給水を行ってもよい。
【0042】
(試験例と試験結果)
コンクリート養生シート1の作用効果を検証すべく、以下の試験を実施した。実施例1として、図1に示すようなコンクリート養生シート1を用意し、長手方向に並ぶ切れ目1aの間隔を30mmとして、コンクリート打継部100を覆った。実施例2として、図1に示すようなコンクリート養生シート1を用意し、コンクリート養生シート1の長手方向に並ぶ切れ目1aの間隔を50mmとして、コンクリート打継部100を覆った。比較例1として、切れ目が無く、非通気を有するシートでコンクリート打継部100を覆った例(シート養生)を用意した。比較例2として、養生シートを用いていない例(養生対策を行っていない例)を用意した。
【0043】
養生期間は1週間とした。試験時期は真夏であり、コンクリートの養生には過酷な環境下で試験を行った。養生材齢は7日間である。また、後述する品質評価は試験開始から7日間経過した時点、及び28日間経過した時点で行った。尚、給水は初期のみ行い、途中給水は行っていない。
【0044】
図8は、コンクリートの表層部における透気係数の測定結果を示すものである。この透気係数を求める試験としては、例えばトレント法を挙げることができる。図8の上側のグラフは、材齢が7日時点の測定結果であり、下側のグラフは、材齢が28日時点の測定結果である。いずれの測定結果においても、実施例1、2は比較例1、2に比べて大幅に透気係数が低くなっている、即ちコンクリートの品質が高くなっていることが分かる。
【0045】
図9は、コンクリートの表面給水量の測定結果を示すものである。この表面給水量は、例えば市販されている含水計等を用いて測定でき、測定方法は従来から周知である。図9の上側のグラフは、材齢が7日時点の測定結果であり、下側のグラフは、材齢が28日時点の測定結果である。いずれの測定結果においても、実施例1、2は比較例1、2に比べて大幅に表面給水量が少なくなっている、即ちコンクリートの品質が高くなっていることが分かる。
【0046】
(作用効果)
以上説明したように、コンクリート養生シート1に、幅方向に長い複数の切れ目1aを長手方向に間隔をあけて設けたので、鉄筋101が上方へ突出するように露出したコンクリート表面にコンクリート養生シート1を敷設する際に、鉄筋101との干渉を回避しながら速やかに、しかも広範囲に渡って敷設できる。これにより、高品質なコンクリート構造物を得ることができる。
【0047】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように、本発明は、例えば鉄筋が上方へ突出したコンクリート打継部に敷設して使用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 コンクリート養生シート
1a 切れ目
100 コンクリート打継部
101 鉄筋
【要約】
【課題】鉄筋が露出するコンクリート構造物の養生の際に速やかに敷設可能にして高品質なコンクリート構造物を得ることができるコンクリート養生シート及びそのシートを用いたコンクリート養生方法を提供する。
【解決手段】コンクリート表面に敷設され、コンクリートを湿潤状態に保ち養生する帯状のコンクリート養生シート1は、幅方向に長い複数の切れ目1aを有している。複数の切れ目1aは、コンクリート養生シート1の長手方向に間隔をあけて設けられている。
【選択図】図7
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9