(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】体位変化判定システム、体位変化判定方法及び体位変化判定プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/107 20060101AFI20230403BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20230403BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20230403BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20230403BHJP
A61G 7/057 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
A61B5/107 300
A61B5/11 100
A61B5/113
A61B5/00 101R
A61G7/057
(21)【出願番号】P 2019031949
(22)【出願日】2019-02-25
【審査請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】515225415
【氏名又は名称】株式会社Z-Works
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小川 誠
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 健一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲崎▼ 浩気
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 僚介
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-144042(JP,A)
【文献】特開平06-327653(JP,A)
【文献】特表2013-526900(JP,A)
【文献】特開2002-102187(JP,A)
【文献】特開2009-297474(JP,A)
【文献】特開2017-127521(JP,A)
【文献】特開2004-201758(JP,A)
【文献】特開2019-000673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/107
A61B 5/11
A61B 5/113
A61B 5/00
A61G 7/057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
寝具と、前記寝具に横たわる臥床者の体位変化を管理する管理装置と、を備える体位変化判定システムであって、
前記寝具は、前記臥床者の前記体位変化による振動を検知するセンサを備え、
前記管理装置は、
前記センサからの検知信号を受信する信号受信部と、
受信した前記検知信号に基づき、前記臥床者の生体情報を取得する生体情報取得部と、
受信した前記検知信号の信号レベルが所定の閾値以上変化し、前記検知信号の変化が所定の時間以上継続した場合、前記臥床者が体位交換を行ったと判定する体位交換判定部と、
前記臥床者の前記生体情報に基づき、前記臥床者の睡眠状態を取得する睡眠状態取得部と、
前記検知信号を、前記臥床者の前記体位交換に関連付けて記憶する体位交換記憶部と、
前記臥床者が体位交換を行った体位交換時刻から所定時間経過した場合、所定の通知を出力する通知部と、を備
え、
前記通知部は、記憶されている体位交換時刻から所定時間経過した場合、前記生体情報と、前記生体情報から取得された前記睡眠状態とに基づいて、前記臥床者にとって最適な時刻に所定の通知を出力する、体位変化判定システム。
【請求項2】
前記寝具は、前記センサを複数備え、
前記体位交換判定部は、複数の前記センサからの前記検知信号から、1の前記センサにかかる振動が、他の前記センサにかかる振動へと変化し、前記他のセンサにかかる振動が所定の閾値以上であると判定される場合、前記臥床者が体位交換を行ったと判定する、請求項1に記載の体位変化判定システム。
【請求項3】
前記体位交換判定部は、前記センサからの前記検知信号から、前記臥床者の身体の向きを判定する、請求項1または請求項2に記載の体位変化判定システム。
【請求項4】
前記体位交換記憶部は、前記検知信号を、前記体位交換時刻の記録と共に記憶する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の体位変化判定システム。
【請求項5】
前記生体情報取得部は、受信した前記検知信号の所定の周波数の変化に基づき、前記臥床者の呼吸及び/または心拍の情報を取得する、
請求項4に記載の体位変化判定システム。
【請求項6】
前記臥床者の体位交換を行う予定を示す体位交換予定時刻を記憶する介護計画記憶部を備え、
前記通知部は、記憶されている体位交換予定時刻から所定時間経過した場合、前記睡眠状態に基づいて最適な時刻に所定の通知を出力する、
請求項4に記載の体位変化判定システム。
【請求項7】
前記信号受信部は、受信した前記検知信号から所定の周期信号を抽出するフーリエ変換を行う、請求項1から
請求項6のいずれか1項に記載の体位変化判定システム。
【請求項8】
寝具に横たわる臥床者の体位変化を管理する体位変化判定方法であって、
信号受信部が行う、前記寝具に設けられた、前記臥床者の前記体位変化による振動を検知するセンサからの検知信号を受信する信号受信ステップと、
生体情報取得部が行う、受信した前記検知信号に基づき、前記臥床者の生体情報を取得する生体情報取得ステップと、
体位交換判定部が行う、受信した前記検知信号の信号レベルが所定の閾値以上変化し、前記検知信号の変化が所定の時間以上継続した場合、前記臥床者が体位交換を行ったと判定する体位交換判定ステップと、
睡眠状態取得部が行う、前記臥床者の前記生体情報に基づき、前記臥床者の睡眠状態を取得する睡眠状態取得ステップと、
体位交換記憶部が行う、前記検知信号を、前記臥床者の前記体位交換に関連付けて記憶する体位交換記憶ステップと、
通知部が行う、前記臥床者が体位交換を行った体位交換時刻から所定時間経過した場合、所定の通知を出力する通知ステップと、を備
え、
前記通知ステップにおいて、記憶されている体位交換時刻から所定時間経過した場合、前記生体情報と、前記生体情報から取得された前記睡眠状態とに基づいて、前記臥床者にとって最適な時刻に所定の通知を出力する、体位変化判定方法。
【請求項9】
寝具に横たわる臥床者の体位変化を管理する体位変化判定プログラムであって、
前記寝具に設けられた、前記臥床者の前記体位変化による振動を検知するセンサからの検知信号を受信する信号受信ステップと、
受信した前記検知信号に基づき、前記臥床者の生体情報を取得する生体情報取得ステップと、
受信した前記検知信号の信号レベルが所定の閾値以上変化し、前記検知信号の変化が所定の時間以上継続した場合、前記臥床者が体位交換を行ったと判定する体位交換判定ステップと、
前記臥床者の前記生体情報に基づき、前記臥床者の睡眠状態を取得する睡眠状態取得ステップと、
前記検知信号を、前記臥床者の前記体位交換に関連付けて記憶する体位交換時刻記憶ステップと、
前記臥床者が体位交換を行った体位交換時刻から所定時間経過した場合、所定の通知を出力する通知ステップと、を電子計算機に実行さ
せるための体位変化判定プログラムであり、
前記通知ステップにおいて、記憶されている体位交換時刻から所定時間経過した場合、前記生体情報と、前記生体情報から取得された前記睡眠状態とに基づいて、前記臥床者にとって最適な時刻に所定の通知を出力する、体位変化判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、寝具に横たわる臥床者の体位変化がなされた時刻を管理するための体位変化判定システム、体位変化判定方法及び体位変化判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関や介護施設等における入院患者や入所者のうち、自力での活動が困難であり、要介護度の高い入院患者や入所者、特にほぼ寝たきり状態の者(以下、「長期臥床者」という。)は、自力で寝返りをすることが出来ない。このような長期臥床者が同じ姿勢のまま寝たきり状態でいると、身体の一部に常に圧力がかかる状態になり、血流が悪くなる。これにより、褥瘡と呼ばれる、いわゆる床ずれが発生することが知られている。
【0003】
医療機関や介護施設等では、長期臥床者の褥瘡を防止するため、所定時間間隔で長期臥床者の身体の向きを変えさせる、体位交換と呼ばれる処置が行われている。また、医療機関や介護施設等では、この体位交換を確実に行うようにするため、例えば、1日のスケジュールを示す介護計画の中に、体位交換を行う時刻を設定している。しかしながら、医療機関や介護施設等における、体位交換を行う作業者は多忙であり、介護計画通りに体位交換の作業が行われないことも多い。褥瘡は、長期臥床者に深刻なダメージを与えることがあるため介護計画通りに体位交換が行われる必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、人の肺の呼吸活動及び心臓の拍動による振動等を振動センサで検出することで、人の健康状態を24時間検出することが可能な健康状態検出装置が開示されている。特許文献1に記載の健康状態検出装置は、ベッド上に振動センサを配置することで、寝返り等による体位の変化も検出することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載された健康状態検出装置は、寝返り等による体位の変化を検出することが可能であるが、長期臥床者の場合、そもそも自力で寝返りをすることが出来ないため、医療機関や介護施設等において、長期臥床者の体位交換を確実に行うことに資するものではない。そのため、体位交換を確実に行うことを支援する装置やシステムが望まれていた。
【0007】
そこで、本開示では、臥床者の体位変化を記憶すると共に、長期臥床者のように、自力で寝返りをすることが出来ない者に対する体位交換を確実に行うことを支援するため、寝具に横たわる臥床者の体位交換を管理する体位変化判定システム、体位変化判定方法及び体位変化判定プログラムについて説明する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様における体位変化判定システムは、寝具と、寝具に横たわる臥床者の体位変化を管理する管理装置と、を備える体位変化判定システムであって、寝具は、臥床者の体位変化による振動を検知するセンサを備え、管理装置は、センサからの検知信号を受信する信号受信部と、受信した検知信号の信号レベルが所定の閾値以上変化し、検知信号の変化が所定の時間以上継続した場合、臥床者が体位交換を行ったと判定する体位交換判定部と、検知信号を、臥床者の体位交換に関連付けて記憶する体位交換記憶部と、を備える。
【0009】
本開示の一態様における体位変化判定方法は、寝具に横たわる臥床者の体位変化を管理する体位変化判定方法であって、信号受信部が行う、寝具に設けられた、臥床者の体位変化による振動を検知するセンサからの検知信号を受信する信号受信ステップと、体位交換判定部が行う、受信した検知信号の信号レベルが所定の閾値以上変化し、検知信号の変化が所定の時間以上継続した場合、臥床者が体位交換を行ったと判定する体位交換判定ステップと、体位交換記憶部が行う、検知信号を、臥床者の体位交換に関連付けて記憶する体位交換記憶ステップと、を備える。
【0010】
また、本開示の一態様における体位変化判定プログラムは、寝具に横たわる臥床者の体位変化を管理する体位変化判定プログラムであって、寝具に設けられた、臥床者の体位変化による振動を検知するセンサからの検知信号を受信する信号受信ステップと、受信した検知信号の信号レベルが所定の閾値以上変化し、前記検知信号の変化が所定の時間以上継続した場合、前記臥床者が体位交換を行ったと判定する体位交換判定ステップと、検知信号を、臥床者の体位交換に関連付けて記憶する体位交換記憶ステップと、を電子計算機に実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、寝具に臥床者の振動を検知するセンサを備え、管理装置でセンサからの検知信号を受信して臥床者が体位交換を行ったか否かを判定するので、体位交換の作業漏れを防止することが可能である。これにより、長期臥床者の褥瘡を防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態に係る体位変化判定システムを示す機能ブロック構成図である。
【
図2】
図1の振動センサ230をベッドBのマットレスMに配置した一例を示す平面図である。
【
図3】
図1の体位変化判定システム1の動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図2のベッドBに臥床者Hが仰向けに横たわる状態の一例を示す模式図である。
【
図5】
図4の臥床者Hが向かって左向きに体位交換した状態の一例を示す模式図である。
【
図6】
図4の臥床者Hが向かって左向きに体位交換した状態の他の一例を示す模式図である。
【
図7】
図1のアラート出力部154におけるアラート出力時刻の決定の例を示すタイムチャートである。
【
図8】本開示の一実施形態に係る体位変化判定システムの管理装置100Aを示す機能ブロック構成図である。
【
図9】
図8の管理装置100Aに係る体位変化判定システム1の動作を示すフローチャートである。
【
図10】
図8のアラート出力部154におけるアラート出力時刻の決定の例を示すタイムチャートである。
【
図11】本開示の一実施形態に係る体位変化判定システムの管理装置100Bを示す機能ブロック構成図である。
【
図12】
図11の介護計画DB142の格納例を示す模式図である。
【
図13】
図11のアラート出力部154におけるアラート出力時刻の決定の例を示すタイムチャートである。
【
図14】本開示の一実施形態に係る体位変化判定システムを示すブロック構成図である。
【
図15】本開示の一実施形態に係るコンピュータ700を示す機能ブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本開示の内容を不当に限定するものではない。また、実施形態に示される構成要素のすべてが、本開示の必須の構成要素であるとは限らない。
【0014】
(実施形態1)
<構成>
図1は、本開示の実施形態1に係る体位変化判定システム1を示す機能ブロック構成図である。この体位変化判定システム1は、主に医療機関や介護施設等において、体位変化を記憶し、自力で寝返りをすることが困難な長期臥床者(以下、「臥床者」という。)に対して体位交換を行う時間を管理するシステムである。体位交換とは、臥床者の身体の向きを変えさせることや、その支援をすることであり、所定時間(例えば、2時間)間隔で定期的に行う必要がある。また、体位変化とは、前述の体位交換に加えて、自力で寝返りを打つことで体の向き(体向)を変化させることを含む概念である。一般的には、体位交換を行う対象者は自力で寝返りをすることが困難な臥床者であるため、その他の身体の動き(腕を動かす等の身体の一部の動き)と体位交換とを区別することは可能である。この体位変化判定システム1は、体位交換を行ってから次の体位交換を行うまでの時間を管理し、経過した場合には通知を出力するシステムである。
【0015】
体位変化判定システム1は、管理装置100と、検出装置200と、ネットワークNWとを有している。管理装置100と、検出装置200とは、ネットワークNWを介して相互に接続される。ネットワークNWは、通信を行うための通信網であり、限定ではなく例として、インターネット、イントラネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、ワイヤレスLAN(Wireless LAN:WLAN)、ワイヤレスWAN(Wireless WAN:WWAN)、仮想プライベートネットワーク(Virtual Private Network:VPN)等を含む通信網により構成されている。また、管理装置100と検出装置200とは、限定ではなく例として、USB(Universal Serial Bus)ケーブル等により直接接続しても良い。
【0016】
管理装置100は、検出装置200から臥床者による振動の信号を受信して体位変化を記憶し、体位交換が行われたか否かを判定し、その時刻を記憶して所定時間経過した場合に通知を出力する装置であり、限定ではなく例として、各種Webサービスを提供するコンピュータ(デスクトップ、ラップトップ、タブレットなど)や、サーバ装置を含む装置等により構成されている。なお、サーバ装置は単体で動作するサーバ装置に限られず、ネットワークNWを介して通信を行うことで協調動作する分散型サーバシステムや、クラウドサーバでも良い。
【0017】
検出装置200は、臥床者の体位交換を行った場合や、起き上がった場合等の振動を検知する装置であり、限定ではなく例として、センサ等により構成されている。この検出装置200は、臥床者が横たわるベッド等の寝具に取り付けられる。
【0018】
管理装置100は、通信部110と、表示部120と、操作部130と、記憶部140と、制御部150とを備える。
【0019】
通信部110は、ネットワークNWを介して検出装置200と有線または無線で通信を行うための通信インタフェースであり、互いの通信が実行できるのであればどのような通信プロトコルを用いても良い。この通信部110は、限定ではなく例として、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)等の通信プロトコルにより通信が行われる。
【0020】
表示部120は、管理装置100を操作するユーザ、例えば医療機関や介護施設等の職員から入力された操作内容や、検出装置200からの送信内容を表示するために用いられるユーザインタフェースであり、限定ではなく例として、液晶ディスプレイ、タッチパネル、タッチディスプレイを含む装置等から構成される。
【0021】
操作部130は、管理装置100を操作するユーザが操作指示を入力するために用いられるユーザインタフェースであり、限定ではなく例として、キーボード、マウス、タッチパネル、タッチディスプレイを含む装置等から構成される。
【0022】
記憶部140は、各種制御処理や制御部150内の各機能を実行するためのプログラム、入力データ等を記憶するものであり、限定ではなく例として、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含むメモリや、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等を含むストレージから構成される。また、記憶部140は、体位交換時刻DB141を記憶する。さらに、記憶部140は、検出装置200と通信を行ったデータや、後述する各処理にて生成されたデータを一時的に記憶する。
【0023】
体位交換時刻DB141には、図示は省略するが、臥床者の体位交換を行ったと判定された時刻が、臥床者ごとに格納されている。体位交換を行ってから次の体位交換を行うまでの時間を管理するためには、前回体位交換を行った時刻が記憶されている必要があるからである。体位交換時刻DB141に記憶される体位交換を行った時刻は、直前の時刻だけでも良く、過去の体位交換を行った時刻全てを記憶しても良い。
【0024】
制御部150は、記憶部140に記憶されているプログラムを実行することにより、管理装置100の全体の動作を制御するものであり、限定ではなく例として、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、マイクロプロセッサ(Microprocessor)、プロセッサコア(Processor core)、マルチプロセッサ(Multiprocessor)、ASIC(Application-Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)を含む装置等から構成される。制御部150の機能として、信号受信部151と、体位交換判定部152と、体位交換時刻記憶部(体位交換記憶部)153と、アラート出力部(通知部)154とを備えている。この信号受信部151、体位交換判定部152、体位交換時刻記憶部153、及びアラート出力部154は、記憶部140に記憶されているプログラムにより起動されて管理装置100にて実行される。
【0025】
信号受信部151は、検出装置200が備えるセンサからの検知信号を、検出装置200から通信部110を介して受信する。この検知信号は、限定ではなく例として、電圧や電流の変化を示す時系列の波形信号を含む。
【0026】
また、信号受信部151は、検知信号に対して、様々な周期信号に分解して所定の周期信号を抽出するフーリエ変換を行う。波形信号である検知信号は、ノイズか含まれるため、後続処理で正しい判定を行うためである。そのため、必要な信号の判定が可能な程度にノイズが少ない場合には、フーリエ変換を行わなくても良い。
【0027】
体位交換判定部152は、信号受信部151で受信し、フーリエ変換を行った検知信号から、臥床者が体位交換を行ったか否かの判定を行う。例えば、体位交換による振動をセンサで検知した信号は、その他の振動をセンサで検知した信号に比べて大きいため、体位交換判定部152では、体位交換を行ったことを検知することが可能である。ここで、センサで検知した信号が大きい場合とは、振動による寝具の上下方向の揺れ(変位)が大きい場合であり、これは概ね振動の原因となる荷重の大きさに応じて変化するものである。そのため、体位交換を行うと略全身を動かすのに対し、腕等の身体の一部を動かす場合とは振動の大きさが異なるので、体位交換を行った場合を判定することが可能である。
【0028】
具体的には、例えば、臥床者が安定して就寝している状態のとき、センサが検知する信号は、臥床者の脈動と呼吸に伴う横隔膜の動きによる振動によるものであり、臥床者の脈動による振動は、例えば1Hz程度であり、臥床者の呼吸による振動は、例えば0.1~0.4Hz程度である。臥床者が寝返りを含む体位変化を行うと、脈動と呼吸による振動とは異なる周波数特性の信号レベルを一定時間以上検知する。臥床者が咳をしたり、意識的または無意識による身体の一部を振動させる行為、いわゆる貧乏ゆすりをしたりすると、大きな体動、すなわち体位変化よりも低い信号レベルを示すデータが検知される。このように安定している状態のデータと、大きな体動のデータとを記憶し、限定ではなく例として、センサが検知した信号レベルを判別する機械学習モデルを構築する。」大きな体動と判別できない信号レベルの低いデータを、小さな体動と判定する。これに対して、臥床者の体位変化や介護者により体位交換を行った結果による振動は、小さな体動の信号レベルの2倍~8倍と強く、2秒~3分程度継続する。体位交換判定部152では、この信号を大きな体動と判定し、体位交換が行われた場合の信号は、大きな体動の場合と判定する。
【0029】
また、体位交換判定部152は、臥床者の身体の向き(体向)を判定しても良い。例えば、臥床者の体位交換による振動をセンサで検知した信号を分析すると、その臥床者がそのときに身体をどのような向きにしていたか判定することが可能である。この情報に基づいて、体位交換を行う場合に、例えば現在臥床者が右方向を向いている場合に、左方向に向きを変えるように体位交換を行うように、後述するアラート出力部154にて通知しても良い。一般的に、体位交換とは、臥床者の体向が右向きの場合に左向きに変更し、左向きの場合に右向きに変更することであり、このように通知することで、体位交換を間違いなく行うことを可能にする。
【0030】
体位交換時刻記憶部153は、体位交換判定部152が体位交換を行ったと判定した検知信号について、臥床者の体位交換に関連付けて記憶する。例えば、体位交換を行った時刻を、体位交換を行った時刻として体位交換時刻DB141に記憶する。体位交換時刻DB141に記憶される時刻が直前の時刻だけの場合、最新の時間に更新し、過去の体位交換を行った時刻全てを記憶する場合、新たに体位交換を行った時刻を記憶する。
【0031】
アラート出力部154は、体位交換時刻記憶部153が体位交換を行った時刻を記憶してから、所定時間(例えば、2時間)経過した場合に、通知の一種として、例えばアラートを出力する。ここで、限定ではなく例として、アラート出力部154が出力するアラートは通知の一種であり、作業者に対して体位交換を行う時間が到来したことを単に通知しても良い。例えば、アラート出力部154は、表示部120に該当の臥床者の情報(氏名等)やその臥床者が横たわるベッドの情報(部屋番号、ベッド番号等)と共に、表示部120上で赤色に表示させるような警告表示を行う。また、アラート出力部154は、音声によるアラートを出力しても良く、管理装置100は、そのための音声出力装置、例えばスピーカ等を備えても良い。
【0032】
また、アラート出力部154は、例えば複数段階のアラートを出力しても良く、例えば体位交換を行った時刻を記憶してから1時間半経過した場合に、表示部120上で黄色に表示させるような注意表示を行い、2時間経過した場合に、表示部120上で赤色に表示させるような警告表示を行っても良い。音声出力によるアラート出力の場合は、時間が経過するにつれて音声の音量を大きくしても良い。
【0033】
検出装置200は、通信部210と、動作制御部220と、振動センサ230とを備える。
【0034】
通信部210は、ネットワークNWを介して管理装置100と有線または無線で通信を行うための通信インタフェースであり、互いの通信が実行できるのであればどのような通信プロトコルを用いても良い。この通信部210は、限定ではなく例として、TCP/IP等の通信プロトコルにより通信が行われる。
【0035】
動作制御部220は、振動センサ230の動作制御を行い、検知信号を、通信部210を介して管理装置100に送信する機能を備えており、限定ではなく例として、CPU、MPU、GPU等から構成される。
【0036】
振動センサ(センサ)230は、臥床者の体位交換を行った場合や、自力での寝返り、臥床者が起き上がった場合等の振動を検知するセンサであり、限定ではなく例として、外部から加えられた振動を圧電効果により電気信号に変換する圧電素子等により構成されている。この振動センサ230は、臥床者が横たわるベッドのマットレス等の寝具に、臥床者が臥床する箇所に配置される。なお、振動センサ230は臥床者の振動を検知するセンサであれば良く、ドップラーセンサやマットセンサ等で構成しても良い。
【0037】
図2は、
図1の振動センサ230をベッドBのマットレスMに配置した一例を示す平面図である。
図2に示すベッドBのマットレス(寝具)Mには、例えば、複数の振動センサ230が配置されている。振動センサ230は、細長のシート状に構成され、マットレスMの上面側に配置され、臥床者に直接触れないようにシーツやクッション材等により覆われて埋設されている。このように、臥床者に直接触れないように配置するのは、臥床者に触れることにより感電等のおそれがあることや、臥床者が不快に感じるおそれがあるからである。
【0038】
振動センサ230のマットレスM上における配置は、
図2に示すように、臥床者がマットレスMに横たわる際に上半身が載置される箇所に、振動センサ230の長手方向が臥床者の身体の上下方向に沿うように、臥床者の身体の幅方向に5本並列に配置され(左から順に、振動センサ230a,230b,230c,230d,230e)、臥床者の下半身が載置される箇所に、振動センサ230の長手方向が臥床者の身体の幅方向に沿うように、臥床者の身体の上下方向に2本並列に配置され(上から順に、振動センサ230f,230g)ている。なお、
図2に示すベッドBは、上方向が臥床者の頭側であり、下方向が臥床者の足側である。
【0039】
このように配置するのは、臥床者の上半身側の5本の振動センサ230により、臥床者のマットレスM上における幅方向の位置を検知することで、体位交換が行われたことを判定するためである。また、臥床者がマットレスM上における幅方向の位置を変更せずに体位交換することも考えられるため、臥床者の下半身の2本の振動センサ230により、所定以上の大きな振動を検知することで体位交換が行われたことを判定出来るようにしている。
【0040】
<処理の流れ>
図3を参照しながら、体位変化判定システム1が実行する体位交換時刻管理方法の一例の処理の流れについて説明する。
図3は、
図1の体位変化判定システム1の動作を示すフローチャートである。
【0041】
ステップS101の処理として、検出装置200の振動センサ230が検知した検知信号は、動作制御部220によって通信部210を介して管理装置100に送信されるので、管理装置100の信号受信部151では、通信部110を介して受信される。また、信号受信部151では、受信された検知信号に対してフーリエ変換が行われる。
【0042】
ステップS102の処理として、体位交換判定部152では、ステップS101で受信されてフーリエ変換が行われた検知信号から、臥床者が体位交換を行ったか否かが判定される。
【0043】
図4は、
図2のベッドBに臥床者Hが仰向けに横たわる状態の一例を示す模式図である。
図4に示すマットレスM上の臥床者Hは、例えば、臥床者Hの身体の幅方向略中央に仰向けに横たわっている。このとき、振動センサ230b,230c,230d,230f,230gの上に臥床者Hの身体は載置されているため、これらの振動センサが臥床者Hの振動、具体的には臥床者Hの脈動と呼吸による振動を検知している。このときの振動センサによる検知信号の信号レベルは、例えば、臥床者Hの重心近傍が載置されている振動センサ230c,230fは、強い信号レベルを検知し、臥床者Hの重心から離れた振動センサ230b,230d,230gは、弱い信号レベルを検知する。
【0044】
図5は、
図4の臥床者Hが向かって左向きに体位交換した状態の一例を示す模式図である。
図4に示す臥床者Hが、向かって左方向(臥床者Hから見て右方向)に、身体を転がすように体位交換すると、例えば、
図5に示すように、マットレスM上において、臥床者Hの身体の幅方向左側に左方向を向いて横たわる状態になる。このとき、振動センサ230a,230b,230f,230gの上に臥床者Hの身体は載置されているため、これらの振動センサが臥床者Hの振動を検知することになる。このときの振動センサによる検知信号の信号レベルは、例えば、臥床者Hの重心近傍が載置されている振動センサ230a,230b,230fは、強い信号レベルを検知する。
【0045】
この体位交換の際、振動センサ230aは振動を検知していなかったが、強い信号レベルを検知することで新たに振動を検知するようになる。また、振動センサ230cは振動を検知していたが、新たに振動を検知しない状態になる。さらに、振動センサ230b,230f,230gは体位交換の前後両方において振動を検知する状態であるが、振動センサ230bは強い信号レベルを検知する。このような信号レベルの変化を検知することで、臥床者Hの身体が動くことによる大きな振動を検知する。このような検知信号の変化により、体位交換判定部152では、臥床者Hの体位交換が判定される。
【0046】
図6は、
図4の臥床者Hが向かって左向きに体位交換した状態の他の一例を示す模式図である。
図4に示す臥床者Hが、向かって左方向(臥床者Hから見て右方向)に、身体をその場で転回させるように体位交換すると、例えば、
図6に示すように、マットレスM上において、臥床者Hの身体の幅方向略中央に左方向を向いて横たわる状態になる。このとき、振動センサ230b,230c,230d,230f,230gの上に臥床者Hの身体は載置されているため、これらの振動センサが臥床者Hの振動を検知することになる。このときの振動センサによる検知信号の信号レベルは、例えば、臥床者Hの重心近傍が載置されている振動センサ230c,230fは、強い信号レベルを検知し、臥床者Hの重心から離れた振動センサ230b,230d,230gは、弱い信号レベルを検知する。
【0047】
この体位交換の際、振動センサ230b,230c,230d,230f,230gは体位交換の前後両方において振動を検知する状態であるが、臥床者Hの身体が動くので、大きな体動による振動を検知する。このように、体位交換の前後において臥床者Hの身体の位置が動かない場合であっても、検知信号の変化により、体位交換判定部152では臥床者Hの体位交換が判定される。
【0048】
ステップS103の処理として、体位交換時刻記憶部153では、ステップS102で体位交換を行ったと判定された検知信号について、その時刻を、体位交換を行った時刻として体位交換時刻DB141に記憶させる。
【0049】
ステップS104の処理として、アラート出力部154では、ステップS103で記憶された体位交換を行った時刻から、所定時間(例えば、2時間)経過しているか否かが判定される。
【0050】
図7は、
図1のアラート出力部154におけるアラート出力時刻の決定の例を示すタイムチャートである。
図7に示すタイムチャートT1は、ステップS103で記憶された体位交換を行った時刻が「14:51」であり、所定時間が2時間の場合を示している。このように、体位交換を行った時刻の2時間後が「16:51」であるため、この時刻が所定時間経過しているか否かの基準時間となる。
【0051】
ステップS105の処理として、アラート出力部154では、アラートが出力される。このときのアラートは、例えば、表示部120上で赤色に表示させるような警告表示であり、または音声によるアラート出力である。これにより、医療機関や介護施設等の職員等の作業者は、体位交換を行ってから所定時間以上経過し、まだ体位交換をしていない臥床者がいることを認識することが出来る。
【0052】
<効果>
以上のように、本実施形態に係る体位変化判定システム及び体位変化判定方法は、ベッドのマットレスに臥床者の振動を検知する振動センサを備える検出装置が取り付けられ、体位交換判定部により、この振動センサの検知信号から臥床者が体位交換を行ったか否かが判定され、体位交換を行った時刻から所定時間経過した場合、アラート出力部により所定のアラートが出力されるため、医療機関や介護施設等の職員等の作業者は、体位交換を行ってから所定時間以上経過し、まだ体位交換をしていない臥床者がいることを認識することが出来る。これにより、体位交換の作業漏れを防止することができるので、臥床者の褥瘡を防止することが出来る。
【0053】
また、臥床者が臥床するベッドのマットレス上における、臥床者の上半身が載置される箇所に、臥床者の身体の幅方向に複数並列に配置され、臥床者の下半身が載置される箇所に、臥床者の身体の上下方向に複数並列に配置されるので、臥床者のマットレス上における幅方向の位置を検知することで、体位交換が行われたことを判定することが可能になり、大きな振動を検知することで、体位交換が行われたことを判定することが可能になる。
【0054】
さらに、信号受信部により、受信した検知信号に対して、様々な周期信号に分解して所定の周期信号を抽出するフーリエ変換が行われるので、波形信号である検知信号から必要な信号を検知することが可能になる。
【0055】
(実施形態2)
図8は、本開示の実施形態2に係る体位変化判定システム1の管理装置100Aを示す機能ブロック構成図である。この管理装置100Aは、検出装置200から臥床者による振動の信号を受信して体位変化を記憶し、体位交換が行われたか否かを判定し、その時刻を記憶して所定時間経過した場合にアラートを出力する点において、実施形態1に係る管理装置100と同様であるが、制御部150の機能として生体情報取得部155と、睡眠状態取得部156とを備えている点において、実施形態1に係る管理装置100と異なる。
【0056】
本実施形態では、振動センサ230から受信した検知信号から臥床者の生体情報を取得し、生体情報に基づいて臥床者の睡眠状態を取得し、体位交換が行われた時刻から所定時間経過した場合、生体情報または睡眠状態、あるいはその両方に基づいて最適な時刻にアラートを出力する。臥床者にとって、例えば、体位交換のために睡眠を妨げられるのは苦痛であり、最適な時刻が把握できればその時刻に体位交換を行うべきであるからである。
【0057】
生体情報取得部155は、信号受信部151で受信し、フーリエ変換を行った検知信号から、臥床者の生体情報を取得する。生体情報取得部155が取得する生体情報は、限定ではなく例として、臥床者の呼吸または心拍、あるいはその両方を含む。人の呼吸や心拍は、通常、一定の周波数を有する周期運動であり、身体の振動を伴うものである。そのため、振動センサ230で検知することが可能であるため、検知信号をフーリエ変換して分解された周期信号から、呼吸や心拍に該当すると考えられる周期信号を抽出することにより、このような生体情報を取得する。
【0058】
睡眠状態取得部156は、生体情報取得部155で取得した生体情報から、臥床者の睡眠状態を取得する。睡眠状態取得部156が取得する睡眠状態は、限定ではなく例として、浅い眠りであるレム睡眠、または深い眠りであるノンレム睡眠を含む。通常、人の睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠とが交互に周期的に発生するようになっている。また、睡眠中の人の呼吸や心拍により、レム睡眠であるかノンレム睡眠であるか判別することが可能である。そのため、呼吸や心拍の情報に基づいて睡眠情報を取得する。このときの睡眠情報の取得は、限定ではなく例として、多数の臥床者の生体情報を機械学習することにより実現しても良い。
【0059】
本実施形態に係るアラート出力部154は、体位交換時刻記憶部153が体位交換を行った時刻を記憶してから、所定時間(例えば、2時間)経過した場合、生体情報取得部155で取得した生体情報、または睡眠状態取得部156で取得した睡眠状態、あるいはその両方に基づいて最適な時刻であるか否かを判定し、最適な時刻である場合にアラートを出力する。生体情報に基づく最適な時刻とは、例えば臥床者が活動状態(起きている状態)であるか、または睡眠状態であるかを判定し、活動状態の時を最適な時刻とする。臥床者にとって、例えば、体位交換のために睡眠を妨げられるのは苦痛であり、身体的負担の少ない時刻に体位交換を行うべきであるからである。
【0060】
また、睡眠状態に基づく最適な時刻とは、例えば臥床者がレム睡眠であるか、またはノンレム睡眠であるかを判定し、レム睡眠の時を最適な時刻とする。臥床者にとって、例えば、体位交換のために深い眠りであるノンレム睡眠の時に起こされるのは苦痛であり、身体的負担の少ない時刻に体位交換を行うべきであるからである。その他の構成については、実施形態1と同様である。
【0061】
<処理の流れ>
図9を参照しながら、体位変化判定システム1が実行する体位変化判定方法の一例の処理の流れについて、実施形態1と異なる処理について説明する。
図9は、
図8の管理装置100Aに係る体位変化判定システム1の動作を示すフローチャートである。
【0062】
ステップS103の後続処理であるステップS111の処理として、管理装置100Aの生体情報取得部155では、ステップS101で受信されてフーリエ変換が行われた検知信号から、臥床者の生体情報、例えば臥床者の呼吸または心拍、あるいはその両方を取得する。
【0063】
ステップS112の処理として、睡眠状態取得部156では、ステップS111で取得された生体情報から、臥床者の睡眠状態、例えば浅い眠りであるレム睡眠、または深い眠りであるノンレム睡眠を示す情報が取得される。
【0064】
ステップS112の後続処理であるステップS104の処理として、アラート出力部154では、ステップS103で記憶された体位交換を行った時刻から、所定時間経過しているか否かが判定される。また、生体情報取得部155で取得した生体情報、または睡眠状態取得部156で取得した睡眠状態、あるいはその両方に基づいて最適な時刻であるか否かが判定される。
【0065】
図10は、
図8のアラート出力部154におけるアラート出力時刻の決定の例を示すタイムチャートである。
図10に示すタイムチャートT1は、ステップS103で記憶された体位交換を行った時刻が「21:51」であり、所定時間が2時間の場合を示している。また、タイムチャートT2は、ステップS112で取得された睡眠状態を示しており、レム睡眠になった時刻が最適な時刻であると判定される。このように、体位交換を行った時刻の2時間後が「23:51」であるが、その時刻はノンレム睡眠の時間帯であるため、この時間帯からレム睡眠に変化した時刻が最適な時刻であると判定される。
【0066】
本実施形態によれば、上記実施形態1の効果に加え、生体情報取得部により臥床者の生体情報が取得され、睡眠状態取得部により臥床者の睡眠状態が取得され、生体情報または睡眠状態、あるいはその両方に基づいて最適な時刻であるか否かを判定してアラートが出力される。これにより、臥床者にとって身体的負担の少ない時刻に体位交換を行うことが可能になる。
【0067】
(実施形態3)
図11は、本開示の実施形態3に係る体位変化判定システム1の管理装置100Bを示す機能ブロック構成図である。この管理装置100Bは、検出装置200から臥床者による振動の信号を受信して体位変化を記憶し、体位交換が行われたか否かを判定し、その時刻を記憶して所定時間経過した場合にアラートを出力する点において、実施形態1に係る管理装置100と同様であるが、記憶部140は、実施形態1に係る体位交換時刻DB141に代えて、介護計画DB142を記憶し、制御部150の機能として介護計画記憶部157を備えている点において、実施形態1に係る管理装置100と異なる。
【0068】
本実施形態では、実際に体位交換が行われた時刻から所定の時間経過後にアラートを出力する代わりに、あらかじめ介護計画を策定しておき、その介護計画に定められている体位交換予定時刻から所定時間経過した場合に、アラートを出力する。医療機関や介護施設等では、体位交換予定時刻があらかじめ定められており、生体情報や睡眠状態から最適な時刻に体位交換が行われた場合、体位交換予定時刻との間に乖離が生じるため、予定通りに体位交換が行えないと作業者の負担が大きくなるからである。
【0069】
介護計画DB142は、限定ではなく例として、臥床者ごとに体位交換を行う予定時刻、実績時刻、体位交換時の身体の向きを含む情報からなる、体位交換表の情報が格納されている。また、これらの情報以外に、臥床者の症状に応じて、投薬、検温、採血等の時刻が格納されても良い。
【0070】
図12は、
図11の介護計画DB142の格納例を示す模式図である。介護計画DB142には、
図12に示す入所者IDに紐づいて、
図12に示す介護計画DB142の列名に対応して、入所者氏名、及び体位交換表の情報が含まれる。
【0071】
入所者IDは、医療機関や介護施設等の入所者(臥床者)の情報を一意に特定する識別情報である。入所者氏名は、入所者の属性情報であり、例として氏名を示している。体位交換表には、体位交換を行う予定時刻である体位交換予定時刻、体位交換を行った実績時刻、及び体位交換を行う際の身体の向きの情報が格納されている。体位交換は、この体位交換表に定められている時刻、身体の向きに従って行われる。
【0072】
介護計画記憶部157は、医療機関や介護施設等においてあらかじめ策定された介護計画に定められている、体位交換予定時刻、及び体位交換を行う際の身体の向きの情報を、臥床者ごとに記憶する。その他の構成については、実施形態1と同様である。
【0073】
<処理の流れ>
実施形態3に係る処理の流れは、ステップS104の処理内容以外は
図9に示す実施形態2に係るフローチャートと同様であるため、
図9を参照しながら、体位変化判定システム1が実行する体位変化判定方法の一例の処理の流れについて、実施形態2と異なる処理について説明する。
【0074】
ステップS104の処理として、アラート出力部154では、介護計画DB142に格納されている体位交換予定時刻から、所定時間経過しているか否かが判定される。また、生体情報取得部155で取得した生体情報、または睡眠状態取得部156で取得した睡眠状態、あるいはその両方に基づいて最適な時刻であるか否かが判定される。
【0075】
図13は、
図11のアラート出力部154におけるアラート出力時刻の決定の例を示すタイムチャートである。
図13に示すタイムチャートT1は、あらかじめ格納されている体位交換予定時刻が「23:00」であり、所定時間が2時間の場合を示している。また、タイムチャートT2は、ステップS112で取得された睡眠状態を示しており、レム睡眠になった時刻が最適な時刻であると判定される。このように、体位交換予定時刻の2時間後が「1:00」であるが、その時刻はノンレム睡眠の時間帯であるため、この時間帯からレム睡眠に変化した時刻が最適な時刻であると判定される。
【0076】
本実施形態によれば、上記実施形態1及び2の効果に加え、介護計画記憶部により体位交換表に定められている、体位交換予定時刻、及び体位交換を行う際の身体の向きの情報が記憶され、アラート出力部により体位交換予定時刻から所定時間経過しているか否かが判定される。これにより、あらかじめ定められた体位交換予定時刻に基づいてアラートが出力されるため、体位交換予定時刻との間に乖離が生じることがなくなるので、作業者の負担を軽減することが出来る。
【0077】
(実施形態4)
図14は、本開示の実施形態4に係る体位変化判定システム1Cを示すブロック構成図である。この体位変化判定システム1Cは、自力で寝返りをすることが困難な臥床者に対して体位交換を行う時間を管理する点において、実施形態1に係る体位変化判定システム1と同様であるが、管理装置100Cと、検出装置200と、ネットワークNWとを有し、さらに携帯端末300を有している点において、実施形態1に係る体位変化判定システム1と異なる。
【0078】
本実施形態では、管理装置のアラート出力部によるアラートの出力先として、携帯端末に出力させる。医療機関や介護施設等における職員等の作業者は多忙であり、管理装置の表示部を見ている時間は限られるため、作業者が所持している携帯端末にアラートを出力させるものである。
【0079】
携帯端末300は、限定ではなく例として、スマートフォン、携帯電話機を含む携帯端末により構成されている。この携帯端末300は、管理装置100Cから送信されたアラートを、例えばポップアップ表示させ、アラートが出力されていることが作業者に認識できるように出力する。また、携帯端末300は、音声によるアラートを出力しても良い。その他の構成及び処理の流れについては、実施形態1と同様である。
【0080】
本実施形態によれば、上記実施形態1ないし3の効果に加え、携帯端末を備え、携帯端末にアラート出力させるため、アラートが出力されていることを確実に認識することが出来る。これにより、体位交換の作業漏れを防止することが可能である。
【0081】
(実施形態5(プログラム))
図15は、コンピュータ(電子計算機)700の構成の例を示す機能ブロック構成図である。コンピュータ700は、CPU701、主記憶装置702、補助記憶装置703、インタフェース704を備える。
【0082】
ここで、実施形態1ないし4に係る信号受信部151、体位交換判定部152、体位交換時刻記憶部153、アラート出力部154、生体情報取得部155、睡眠状態取得部156、及び介護計画記憶部157を構成する各機能を実現するための制御プログラム(体位変化判定プログラム)の詳細について説明する。これらの機能ブロックは、コンピュータ700に実装される。そして、これらの各構成要素の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置703に記憶されている。CPU701は、プログラムを補助記憶装置703から読み出して主記憶装置702に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU701は、プログラムに従って、上述した記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置702に確保する。
【0083】
当該プログラムは、具体的には、コンピュータ700において、寝具に設けられた、臥床者の振動を検知するセンサからの検知信号を受信する信号受信ステップと、受信した検知信号に基づき、臥床者が体位交換を行ったか否かを判定する体位交換判定ステップと、臥床者が体位交換を行った時刻を記憶する体位交換時刻記憶ステップと、記憶されている体位交換時刻から所定時間経過した場合、所定のアラートを出力するアラート出力ステップと、をコンピュータによって実現する制御プログラムである。
【0084】
なお、補助記憶装置703は、一時的でない有形の媒体の一例である。一時的でない有形の媒体の他の例としては、インタフェース704を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等が挙げられる。また、このプログラムがネットワークを介してコンピュータ700に配信される場合、配信を受けたコンピュータ700が当該プログラムを主記憶装置702に展開し、上記処理を実行しても良い。
【0085】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置703に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0086】
以上、開示に係る実施形態について説明したが、これらはその他の様々な形態で実施することが可能であり、種々の省略、置換および変更を行なって実施することが出来る。これらの実施形態および変形例ならびに省略、置換および変更を行なったものは、特許請求の範囲の技術的範囲とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0087】
1,1C 体位変化判定システム、100,100A,100B、100C 管理装置、110 通信部、120 表示部、130 操作部、140 記憶部、141 体位交換時刻DB、142 介護計画DB、150 制御部、151 信号受信部、152 体位交換判定部、153 体位交換時刻記憶部、154 アラート出力部、155 生体情報取得部、156 睡眠状態取得部、157 介護計画記憶部、200 検出装置、210 通信部、220 動作制御部、230 振動センサ、300 携帯端末、NW ネットワーク