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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】矯正装具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/042 20060101AFI20230403BHJP
   A61F 5/02 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
A61F5/042 E
A61F5/02 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019035790
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020137826
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】503102663
【氏名又は名称】株式会社トップラン
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】平田 末喜
(72)【発明者】
【氏名】因 孝之
(72)【発明者】
【氏名】山田 晃久
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-160557(JP,A)
【文献】特開昭60-044662(JP,A)
【文献】特開2001-090811(JP,A)
【文献】特開平06-270687(JP,A)
【文献】特開2002-053288(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0118655(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/042
A61F 5/01
A61F 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の身体に巻かれる第1ベルトおよび第2ベルトと、前記第1ベルトと前記第2ベ
ルトとの基端部同士の間隔を接近させ、身体を締め付ける締め付け部とを備え、
前記締め付け部は、前記第1ベルトと第2ベルトのそれぞれの基端部に並ぶ複数の取り付け位置にそれぞれ取り付けられる複数の滑車と、複数の前記滑車の間を交互に順次掛け回されたワイヤと、軸部が形成されたベース板であり、前記滑車の半径方向の外側に第1円弧状壁部が形成されたベース板とを備え、
前記滑車は、前記軸部に取り付けられるベアリングと、前記ベアリングが嵌め込まれる樹脂製で円盤状のベアリング枠とを備え
複数の前記取り付け位置のうち、少なくとも1箇所以上には前記滑車が取り付けられていると共に、少なくとも1箇所以上には前記滑車が取り付けられておらず、かつ、当該滑車が取り付けられていない取り付け位置において、前記ワイヤは、前記第1円弧状壁部の半径方向の外側に配線される
矯正装具。
【請求項2】
前記ベアリング枠の外周面には、前記ワイヤが巻かれる環状溝が形成された請求項1記
載の矯正装具。
【請求項3】
前記締め付け部は、前記ベース板に被さるカバー部を備え、
前記カバー部は、前記第1円弧状壁部の半径方向の外側となる位置に円弧状突起部を備
えた請求項記載の矯正装具。
【請求項4】
前記ベース板には、前記軸部を中心に半径方向における前記第1円弧状壁部の外側に第
2円弧状壁部が形成された請求項記載の矯正装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着者の身体に巻き付けて身体の歪みを矯正する矯正装具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
装着者の身体に巻かれる一方のベルトと他方のベルトのそれぞれの基端部に、縦列に並べられた滑車が配置され、この一方のベルトの滑車と他方のベルトの滑車とに、ワイヤを交互に順次掛け回し、ワイヤを引くことで身体への圧迫を高める矯正装具が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載のウエストベルト用リンクしたウエストサポートは、締付紐で連結された2本の帯状の織物で形成され、両端に第1リンク部と第2リンク部とを有し、連結ウエスト支持部は、第1の端部リンクユニットと第2の端部リンクユニットとの間に配置され、それらによって部分的に重なり合うように形成され、連結ウエストサポートは、ベースプレートと、ベースプレート上に配置され第1連結ケーブルを介して第1エンドリンクユニットに対応して連結された第1サイドリンクユニットと、第1サイドリンクユニットに隣接して配置された第2サイドリンクユニットとを含み、ベースプレートは、第2連結ケーブルを介して第2端部連結ユニットに対応して連結されている、というものである。
【0004】
このウエストサポートでは、締付紐が巻き回される滑車として、ベアリングが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2014/0123370号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のウエストサポートでは、滑車としてベアリングを使用しているため、回転により引っ張られるワイヤへの負荷が小さく、軸部への摩耗が少ないという利点があるものの、大径の滑車を使用するときにはベアリングも大径となるため、ベアリングの重量が重くなり、高価であることから部材費用が嵩んでしまう。
【0007】
そこで本発明は、操作されるワイヤへの負荷が軽減でき、軸部への摩耗を抑えつつ、軽量で安価な矯正装具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の矯正装具は、装着者の身体に巻かれる第1ベルトおよび第2ベルトと、前記第1ベルトと前記第2ベルトとの基端部同士の間隔を接近させ、身体を締め付ける締め付け部とを備え、前記締め付け部は、前記第1ベルトと第2ベルトのそれぞれの基端部に並ぶ滑車と、前記滑車の間を交互に順次掛け回されたワイヤとを備え、前記滑車は、軸部に取り付けられるベアリングと、前記ベアリングが嵌め込まれる樹脂製で円盤状のベアリング枠とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の矯正装具によれば、ワイヤが引かれることで、第1ベルトと第2ベルトとの基端部に配置された締め付け部の滑車が回転して、基端部同士の間隔を接近させる。滑車は、軸部に取り付けられるベアリングと、ベアリングが嵌め込まれる樹脂製で円盤状のベアリング枠とを備えている。そのため、ベアリングがスムーズに回転するので、滑車を小さい抵抗で回転させることができ、軸部の摩耗を抑えることができる。
また、ベアリングが、ベアリング枠に嵌め込まれて、直径が大きい滑車に形成されているため、直径の大きなベアリングを滑車とするより、軽量で廉価な滑車とすることができる。
【0010】
前記ベアリング枠の外周面に、前記ワイヤが巻かれる環状溝を形成することができる。ベアリング枠の外周面に形成された溝にワイヤが巻き回されているため、ワイヤがベアリング枠から外れ難くすることができる。
【0011】
前記締め付け部は、前記軸部が形成されたベース板を備え、前記ベース板には、前記滑車の半径方向の外側に第1円弧状壁部が形成されたものとすることができる。第1円弧状壁部が、滑車のワイヤが掛けられる側に形成されているため、更に、ワイヤをベアリング枠から外れ難くすることができる。
【0012】
前記締め付け部は、前記ベース板に被さるカバー部を備え、前記カバー部に、前記第1円弧状壁部の半径方向の外側となる位置に円弧状突起部が形成されたものとすることができる。
ベース板にカバー部を被せたときに、第1円弧状壁部と、円弧状突起部により、滑車の半径方向の外側におけるベース板とカバー部との間を閉鎖することができる。そのため、滑車に巻かれたワイヤを緩めたときに膨らみ、滑車からワイヤが脱落することを防止することができる。
【0013】
前記滑車が取り外された場合に、前記ワイヤが、前記第1円弧状壁部の半径方向の外側に配線されたものとすることができる。滑車を取り外して、ワイヤを第1円弧状壁部の半径方向の外側に配線すると、滑車を装着したときと同じルートで配線することができる。従って、滑車を使用した矯正装具と滑車を使用しない廉価な矯正装具とを同じ金型で成形することができる。
【0014】
前記ベース板に、前記軸部を中心に半径方向における前記第1円弧状壁部の外側に第2円弧状壁部が形成されたものとすることができる。滑車を取り外して、ワイヤを第1円弧状壁部の半径方向の外側に配線するときに、第1円弧状壁部の外側に第2円弧状壁部が形成されているため、ワイヤが緩み膨らんでも、第2円弧状壁部がワイヤの膨らみを抑止する。また、ワイヤを円弧状突起部が抑えるため、脱落を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の矯正装具によれば、ベアリングにより軽快に滑車を回転させることができ、樹脂製のベアリング枠により軽量で安価な滑車することができるため、操作されるワイヤへの負荷が軽減でき、軸部への摩耗を抑えつつ、軽量で安価なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態1に係る矯正装具を示す図である。
図2図1に示す矯正装具から締め付け部を取り外した状態の図である。
図3図1に示す矯正装具の第1締め付け部を説明するための図であり、(A)は第1締め付け部からカバー部を外した基盤部の図、(B)は(A)に示す基盤部の裏面の図である。
図4図1に示す矯正装具の第1締め付け部のカバー部の内側面の図である。
図5】滑車を説明するための図であり、(A)はベアリングの図、(B)はベアリングが嵌め込まれる大径のベアリング枠の図、(C)は小径のベアリング枠の図である。
図6図1に示す矯正装具の第2締め付け部を説明するための図であり、(A)は第2締め付け部からカバー部を外した基盤部の図、(B)は(A)に示す基盤部の裏面の図である。
図7図1に示す矯正装具の第2締め付け部のカバー部の内側面の図である。
図8図1に示す締め付け部からカバー部を外した状態の図である。
図9】本発明の実施の形態2に係る矯正装具を示す図であり、締め付け部からカバー部を外した状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る矯正装具を、腰に巻き付ける矯正装具を例に、図面に基づいて説明する。なお、本明細書では、腰に巻かれる第1ベルトおよび第2ベルトのおける締め付け側を基側、反対側を先側として説明する。
図1に示す矯正装具10は、装着者の腰に巻かれる第1ベルト21および第2ベルト22と、第1ベルト21と第2ベルト22との基端部21a,22a同士の間隔を接近させて腰を締め付ける締め付け部30とを備えている。
【0018】
第1ベルト21と第2ベルト22とは、おもて面の幅方向の中央部に、左右方向に沿って、雄型面ファスナーまたは雌型面ファスナーのいずれかの面ファスナー23が形成されている。
また、第2ベルト22との先端部22bの裏面には、面ファスナー23に貼り付けられる面ファスナー24が形成されている。
基端部21a,22aには、締め付け部30を取り付けるための突起部21c,22c(図2参照)が、縦列に4ヵ所形成されている。
【0019】
図1に示す締め付け部30は、第1締め付け部40と、第2締め付け部50と、ワイヤ部60とを備えている。
第1締め付け部40は、図3(A)に示す基盤部41と、図3(B)に示すカバー部42とを備えている。
図3(A)に示す基盤部41は、ベース板411と、滑車P(滑車412a~412g)とを備えている。
【0020】
ベース板411は、ほぼ矩形状に形成された樹脂製のパネルである。ベース板411には、図2に示す第1ベルト21の基端部21aに形成された突起部21cが大径の孔に挿入され、小径の孔へスライドされてベース板411が第1ベルト21に固定される瓢箪型の固定用孔411a(図3(A)参照)が4ヵ所に形成されている。
また、ベース板411には、カバー部42をビス止めにより取り付けるための貫通した円筒状の突起部411bが形成されている。
【0021】
ベース板411には、滑車Pが取り付けされる軸部411cが形成されている。
軸部411cを中心にした円弧状に形成され、滑車P(滑車412a~412e)の直径より大きい直径となる位置であり、滑車412a~412gにワイヤ61が掛けられる側に、第1円弧状壁部411dが形成されている。
つまり、第1円弧状壁部411dは、滑車Pの半径方向の外側に形成されている。
更に、軸部411cを中心に半径方向における第1円弧状壁部411dの外側には、第1円弧状壁部411dに隣接させた第2円弧状壁部411eが形成されている。
【0022】
滑車Pとは反対側の第2円弧状壁部411eの膨らんだ側に、滑車412a~412eが並ぶ方向に沿って、第1直線状壁部411fが形成されている。
また、4ヵ所に形成された第1直線状壁部411fのうちの2ヵ所の第1直線状壁部411fであり、締め付け用のワイヤ61を挟んで第1直線状壁部411fの反対側に、第2直線状壁部411gが形成されている。
【0023】
第1締め付け部40の滑車412a~412g(滑車P)は、ベース板411に縦列に並ぶように配置されている。それぞれの滑車Pは、図5(A)に示す軸受となるベアリングP1と、ベアリングP1が嵌め込まれる、図5(B)および同図(C)に示すベアリング枠P2とを備えている。
【0024】
ベアリング枠P2は、樹脂製で、円盤状に形成され、中心位置に形成された孔にベアリングP1が嵌め込まれている。
図3に示すように、中心位置が横一列に並んだ滑車412a~412eのうち、滑車412a~412cのベアリング枠P2が小径に形成され、滑車412d,412eのベアリング枠P2が大径に形成されている。ベアリング枠P2の外周面には、ワイヤ61が巻かれる環状溝が形成されている。
滑車412f,412gは、横一列に並んだ滑車412a~412eから、後方へずれた位置に配置されている。滑車412f,412gのベアリング枠P2は、小径のものが使用されている。
【0025】
図4に示すカバー部42には、図3(A)に示す基盤部41に重ねたときに、滑車412a~412gの中心に位置する突起部421が形成されている。
また、図4に示すカバー部42には、図3(A)に示す円筒状の突起部411bに対向して、突起部411b側から挿入されたビスがねじ止めされる突起部422が形成されている。
【0026】
更に、図4に示すカバー部42には、図3(A)に示す基盤部41(ベース板411)に重ねたときに、基盤部41の第1円弧状壁部411dの半径方向の外側に位置する円弧状突起部423が形成されている。また、円弧状突起部423は、第1円弧状壁部411dと第2円弧状壁部411eとの間に位置する。
円弧状突起部423の厚みは、第1円弧状壁部411dと第2円弧状壁部411eとの間隔より幅狭に形成されている。円弧状突起部423の高さは、第1円弧状壁部411dと第2円弧状壁部411eとの間をワイヤ61が通過可能な高さに形成されている。
【0027】
図1に示す第2締め付け部50は、図6(A)および同図(B)に示す基盤部51と、図7に示すカバー部52とを備えている。
基盤部51は、ベース板511と、滑車P(滑車512a~512e)とを備えている。
ベース板511は、ベース板411と同様に、ほぼ矩形状に形成された樹脂製のパネルである。ベース板511には、第2ベルト22に固定するための瓢箪型の固定用孔511aと、円筒状の突起部511bと、滑車512a~512eが取り付けされる軸部511cとが形成されている。
軸部511cを中心にした円弧状に形成され、第2締め付け部50から反対側で、滑車Pの直径より大きい直径となる位置に、第1円弧状壁部511dおよび第2円弧状壁部511eが形成されている。
【0028】
また、ベース板511には、ベース板511の下側から、カバー部52を被せた状態のベース板511内へワイヤ61を通すための孔511fと、孔511fから基盤部41に向かって延びて、ワイヤ61を案内する溝511gが形成されている。
第2締め付け部50の滑車Pは、滑車512a~512dが小径に形成され、滑車512eが大径に形成されている。
【0029】
図7に示すカバー部52には、図6に示す滑車512a~512eの中心に位置する突起部521と、円筒状の突起部511bに嵌合する突起部522と、基盤部51の第1円弧状壁部511dと第2円弧状壁部511eとの間に位置する円弧状突起部523とが形成されている。
【0030】
図1に示すワイヤ部60は、滑車412a~412gと、滑車512a~512eとの間に巻き回されるワイヤ61と、ワイヤ61の両端部が接続された取っ手62とを備えている。
ワイヤ61は、図1に示す取っ手62から延びて、図8に示すベース板511の裏側から孔511fを通って、第2締め付け部50に入る。第2締め付け部50からのワイヤ61は、第1締め付け部40の滑車412eに巻かれて、第2締め付け部50に戻り、滑車512eに巻かれて、第1締め付け部40へ延びている。
第1締め付け部40では、ワイヤ61は、滑車412gに巻かれて横方向から下方へ向きを変え、次に滑車412fに巻かれて横方向へ向きを変えて第2締め付け部50へ向かう。
【0031】
そして、ワイヤ61は、第2締め付け部50側の滑車512a~512dと、第1締め付け部40側の滑車412a~412dとの間を交互に順次掛け回して往復させて、最後は孔511fを通って取っ手62に戻る。
【0032】
以上のように構成された本発明の実施の形態1に係る矯正装具10の動作および使用状態を図面に基づいて説明する。
装着者は、図1に示す矯正装具10を装着する。矯正装具10を装着するときには、まず、装着者は、締め付け部30を背部の腰部分に位置させ、第1ベルト21を腰に巻きつけると共に、第2ベルト22を第1ベルト21に重ねて、第2ベルト22の先端部22bの面ファスナー24を第1ベルト21の面ファスナー23に貼り付ける。または、胴部が細いものは、先端部22bの面ファスナー24を、締め付け部30を通過させて、第2ベルト22の面ファスナー23へ貼り付ける。
【0033】
このようにして、しっかりと矯正装具10を腰部に巻き付けた装着者は、取っ手62を持って、第2締め付け部50から引っ張る方向(この場合、左方向。)へ引く。
取っ手62が引かれると、図8に示すワイヤ61が第2締め付け部50から引かれる。
そうすることで、ワイヤ61が、第1締め付け部40の滑車Pと、第2締め付け部50の滑車Pを引き寄せるため、第1締め付け部40と第2締め付け部50との間の隙間が小さくなる。従って、矯正装具10を強く腰に巻き付かせることができる。
【0034】
滑車Pは、ベアリングP1が軸部411c,511cに取り付けられ、ワイヤ61が引かれると、滑車P(滑車412a~412g,512a~512e)が回転する。ベアリングP1の内輪が軸部411c,511cに固定されているが、ベアリングP1のボールの滑りによりスムーズに外輪が回転する。
従って、滑車Pを小さい抵抗で回転させることができ、軸部411c,511cの摩耗を抑えることができる。
【0035】
また、ベアリングP1は、ベアリング枠P2に嵌め込まれて、直径が大きい滑車に形成されているため、直径の大きなベアリングを滑車とするより、軽量で廉価な滑車とすることができる。
よって、矯正装具10は、ベアリングP1により軽快に滑車Pを回転させることができ、樹脂製のベアリング枠P2により軽量で安価な滑車Pとすることができるため、操作されるワイヤ61への負荷が軽減でき、軸部411c,511cへの摩耗を抑えつつ、軽量で安価なものとすることができる。
【0036】
ワイヤ61は、ベアリング枠P2の外周面に形成された溝に巻き回されているため、ワイヤ61をベアリング枠P2から外れ難くすることができる。
更に、第1円弧状壁部411d,511dが、滑車Pのワイヤ61が掛けられる側(半径方向の外側)に形成されているため、よりワイヤ61をベアリング枠P2から外れ難くすることができる。
【0037】
また、第2円弧状壁部411e,511eが、第1円弧状壁部411d,511dの
軸部411c,511cを中心に半径方向における第1円弧状壁部411d,511dの外側に形成されている。そして、カバー部42,52に、第1円弧状壁部411d,511dの半径方向の外側となる位置(第1円弧状壁部411d,511dと第2円弧状壁部411e,511eとの間となる位置)に、円弧状突起部423,523が形成されている。
【0038】
従って、基盤部41,51(ベース板411,511)にカバー部42,52を被せたときに、第1円弧状壁部411d,511dと、円弧状突起部423,523とにより、滑車Pの半径方向の外側におけるベース板411,511とカバー部42,52との間を閉鎖することができる。そのため、滑車Pに巻かれたワイヤ61を緩めたときに膨らみ、滑車Pからワイヤ61が脱落することを防止することができる。
【0039】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る矯正装具を図面に基づいて説明する。本実施の形態2に係る矯正装具では、締め付け部から滑車を取り外し、ワイヤを第1円弧状壁部と第2円弧状壁部との間に配置したものである。
なお、図9においては、図8と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。また、図9には図示されていない、図1に示す第1ベルト21および第2ベルト22、カバー部は、実施の形態1に係る矯正装具と同じであるため、図示せず、省略する。
【0040】
図9に示すように、第1締め付け部40xおよび第2締め付け部50xでは、ベース板411,511が、図8に示す第1締め付け部40およびと第2締め付け部50と共通するものである。しかし、第1締め付け部40xおよび第2締め付け部50xでは、滑車Pが実装されていない。
【0041】
ベース板411,511には、第1円弧状壁部411d,511dだけでなく、第1円弧状壁部411d,511dの半径方向の外側に第2円弧状壁部411e,511eが形成されている。
また、ワイヤ61が、第1円弧状壁部411d,511dの半径方向の外側に配線されている。従って、図9に示すようにワイヤ61を、第1円弧状壁部411d,511dの半径方向の外側に配線することにより、図8に示す滑車Pが実装されていなくても、同じルートで、第1締め付け部40xおよび第2締め付け部50xの間を配線することができる。
【0042】
そのため、実施の形態2に係る矯正装具の締め付け部30xは、図8に示す締め付け部30と同様に、腰を強く締め付けることができる。
このように、実施の形態2に係る矯正装具では、図8に示すベアリングP1を軸受とした滑車を取り外すことで、需要者に安価に提供することができる。
【0043】
また、ワイヤ61を、第1円弧状壁部411d,511dの半径方向の外側に配線したときに、カバー部42,52(図4図7参照)に、第1円弧状壁部411d,511dの半径方向の外側となる位置(第1円弧状壁部411d,511dと第2円弧状壁部411e,511eとの間となる位置)に、円弧状突起部423,523(図4図7参照)が形成されている。
従って、第1円弧状壁部411d,511dと、円弧状突起部423,523とにより、半径方向の内側におけるベース板411,511とカバー部42,52との間を閉鎖することができる。そのため、ワイヤ61を強く締め付けても、第1円弧状壁部411d,511dからワイヤ61が脱落することを防止することができる。
【0044】
また、ベース板411,511に、軸部411c,511cを中心に半径方向における第1円弧状壁部411d,511dの外側に第2円弧状壁部411e,511eが形成されている。
従って、滑車を取り外して、ワイヤ61が第1円弧状壁部411d,511dの半径方向の外側に配線され、第1円弧状壁部411d,511dの外側に第2円弧状壁部411e,511eが形成されているため、ワイヤ61が緩み膨らんでも、第2円弧状壁部411e,511eがワイヤの膨らみを抑止する。
また、円弧状突起部423,523が、ワイヤ61を、第1円弧状壁部411d,511dと第2円弧状壁部411e,511eとの間で抑えるため、ワイヤ61の脱落を防止することができる。
【0045】
なお、本実施の形態1,2に係る矯正装具は、腰に巻き付けるものを例に、説明したが、第1ベルトおよび第2ベルトの長さおよび幅、滑車の数、ワイヤの長さを調整することで、本発明の矯正装具を、装着者の他の箇所に巻き付けるものとしても適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の矯正装具は、一般家庭や医療機関、介護施設での使用に好適である。
【符号の説明】
【0047】
10 矯正装具
21 第1ベルト
22 第2ベルト
21a,22a 基端部
22b 先端部
21c,22c 突起部
23,24 面ファスナー
30,30x 締め付け部
40,40x 第1締め付け部
41 基盤部
411 ベース板
411a 固定用孔
411b 突起部
411c 軸部
411d 第1円弧状壁部
411e 第2円弧状壁部
411f 第1直線状壁部
411g 第2直線状壁部
412a~412g 滑車
42 カバー部
421,422 突起部
423 円弧状突起部
50,50x 第2締め付け部
51 基盤部
511 ベース板
511a 固定用孔
511b 突起部
511c 軸部
511d 第1円弧状壁部
511e 第2円弧状壁部
511f 孔
511g 溝
512a~512e 滑車
52 カバー部
521,522 突起部
523 円弧状突起部
60 ワイヤ部
61 ワイヤ
62 取っ手
P 滑車
P1 ベアリング
P2 ベアリング枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9