(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】レンズシステムおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20230403BHJP
【FI】
G02B13/00
(21)【出願番号】P 2019562099
(86)(22)【出願日】2018-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2018047819
(87)【国際公開番号】W WO2019131751
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2017254496
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017254497
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017254498
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227364
【氏名又は名称】株式会社nittoh
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 卓也
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-204621(JP,A)
【文献】特開2017-146478(JP,A)
【文献】特開2014-052412(JP,A)
【文献】特開2013-114133(JP,A)
【文献】特開2013-109025(JP,A)
【文献】特開平07-152001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像用のレンズシステムであって、
物体側から順に配置され、フォーカシングの際に移動する正の屈折力の第1のレンズ群と、
絞りを挟んで配置され、フォーカシングの際に移動する正の屈折力の第2のレンズ群と、
最も像面側に配置され、固定された正の屈折力の第3のレンズ群と
から構成され、
前記第3のレンズ群は、物体側から順に正の屈折力のレンズと負の屈折力のレンズとからなる接合レンズを含み、前記第3のレンズ群の合成焦点距離f3と、前記第1のレンズ群および前記第2のレンズ群の合成焦点距離f12と
、前記接合レンズの正の屈折力のレンズおよび負の屈折力のレンズの少なくとも一方のレンズの屈折率nB31abと、前記第3のレンズ群の最も物体側の面から最も像面側の面の光軸上の距離G3Lと、前記接合レンズの光軸上の距離B31Lと、が以下の条件を満たす、レンズシステム。
2≦f3/f12≦200
0.6≦B31L/G3L≦1
1.8≦nB31ab≦2.0
【請求項2】
請求項1において、
前記接合レンズの正の屈折力のレンズの屈折率nB31aが以下の条件を満たす、レンズシステム。
1.65≦nB31a≦2.0
【請求項3】
請求項
1において、
前記接合レンズの正の屈折力のレンズの屈折率nB31aと、前記接合レンズの距離B31Lとは以下の条件を満たす、レンズシステム。
0.65≦B31L/G3L≦0.80
1.8≦nB31a≦2.0
【請求項4】
請求項1ないし
3のいずれかにおいて、
前記接合レンズの負の屈折力のレンズの屈折率nB31bが以下の条件を満たす、レンズシステム。
1.60≦nB31b<1.87
【請求項5】
撮像用のレンズシステムであって、
物体側から順に配置され、フォーカシングの際に移動する正の屈折力の第1のレンズ群と、
絞りを挟んで配置され、フォーカシングの際に移動する正の屈折力の第2のレンズ群と、
最も像面側に配置され、固定された正の屈折力の第3のレンズ群とから構成され、
前記第3のレンズ群は、物体側から順に正の屈折力のレンズと負の屈折力のレンズとからなる接合レンズを含み、前記第3のレンズ群の合成焦点距離f3と、前記第1のレンズ群および前記第2のレンズ群の合成焦点距離f12と、前記接合レンズの正の屈折力のレンズの屈折率nB31aが以下の条件を満たす、レンズシステム。
2≦f3/f12≦200
1.85≦nB31a≦2.0
【請求項6】
請求項1ないし
5のいずれかにおいて、
前記第3のレンズ群は、物体側から前記接合レンズと、物体側に凹の負の屈折力の後方のレンズとを含む、レンズシステム。
【請求項7】
請求項
6において、
前記接合レンズの正の屈折力のレンズおよび負の屈折力のレンズの合成焦点距離f31abと、前記後方のレンズの焦点距離f3GLとが以下の条件を満たす、レンズシステム。
0.5≦|f31ab/f3GL|≦1.1
【請求項8】
請求項
6または7において、
前記接合レンズの正の屈折力のレンズおよび負の屈折力のレンズの合成焦点距離f31abと、前記後方のレンズの焦点距離f3GLと、前記第3のレンズ群の合成焦点距離f3とが以下の条件を満たす、レンズシステム。
0<(|f31ab|+|f3GL|)/|f3|≦1.3
【請求項9】
請求項
6ないし8のいずれかにおいて、
前記接合レンズの負の屈折力のレンズの屈折率nB31bと前記後方のレンズの屈折率n3GLとが以下の条件を満たす、レンズシステム。
0.5<n3GL/nB31b<1
【請求項10】
請求項1ないし
9のいずれかにおいて、
前記第1のレンズ群は、物体側から順に、負の屈折力のレンズと正の屈折力のレンズとからなる第1の接合レンズと、正の屈折力のレンズと負の屈折力のレンズとからなる第2の接合レンズとを含み、
前記第2のレンズ群は、物体側から順に、負の屈折力のレンズと正の屈折力のレンズとからなる第3の接合レンズと、後方の正の屈折力のレンズとを含み、
前記第3のレンズ群は、前記接合レンズを第4の接合レンズとして含み、
前記第1の接合レンズの正の屈折力のレンズの屈折率nB11bと、前記第4の接合レンズの正の屈折力のレンズの屈折率nB31aとが以下の条件を満たす、レンズシステム。
1.75≦nB11b≦2.0
1.75≦nB31a≦2.0
【請求項11】
撮像用のレンズシステムであって、
物体側から順に配置され、フォーカシングの際に移動する正の屈折力の第1のレンズ群と、
絞りを挟んで配置され、フォーカシングの際に移動する正の屈折力の第2のレンズ群と、
最も像面側に配置され、固定された正の屈折力の第3のレンズ群とから構成され、
前記第1のレンズ群は、物体側から順に、負の屈折力のレンズと正の屈折力のレンズとからなる第1の接合レンズと、正の屈折力のレンズと負の屈折力のレンズとからなる第2の接合レンズとを含み、
前記第2のレンズ群は、物体側から順に、負の屈折力のレンズと正の屈折力のレンズとからなる第3の接合レンズと、後方の正の屈折力のレンズとを含み、
前記第3のレンズ群は、物体側から順に、正の屈折力のレンズと負の屈折力のレンズとからなる第4の接合レンズを含み、
前記第1の接合レンズの正の屈折力のレンズの屈折率nB11bと、前記第4の接合レンズの正の屈折力のレンズの屈折率nB31aと、前記第3のレンズ群の合成焦点距離f3と、前記第1のレンズ群および前記第2のレンズ群の合成焦点距離f12とが以下の条件を満たす、レンズシステム。
1.75≦nB11b≦2.0
1.75≦nB31a≦2.0
2≦f3/f12≦200
【請求項12】
請求項
10または11において、
前記第4の接合レンズの正の屈折力のレンズの屈折率nB31aと、前記第4の接合レンズの負の屈折力のレンズの屈折率nB31bと、前記第1の接合レンズの負の屈折力のレンズのアッベ数νB11aと、前記第1の接合レンズの正の屈折力のレンズのアッベ数νB11bとが以下の条件を満たす、レンズシステム。
0.5<nB31b/nB31a<1
0.5<νB11a/νB11b<1
【請求項13】
請求項
10ないし12のいずれかにおいて、
前記第3の接合レンズの正の屈折力のレンズは、異常低分散ガラスからなる、レンズシステム。
【請求項14】
請求項
10ないし13のいずれかにおいて、
前記第3の接合レンズの前記後方の正の屈折力のレンズは、異常低分散ガラスからなる、レンズシステム。
【請求項15】
撮像用のレンズシステムであって、
物体側から順に配置され、フォーカシングの際に移動する正の屈折力の第1のレンズ群と、
絞りを挟んで配置され、フォーカシングの際に移動する正の屈折力の第2のレンズ群と、
最も像面側に配置され、固定された正の屈折力の第3のレンズ群とから構成され、
前記第3のレンズ群は、物体側から順に正の屈折力のレンズと負の屈折力のレンズとからなる接合レンズを含み、前記第3のレンズ群の合成焦点距離f3と、前記第1のレンズ群および前記第2のレンズ群の合成焦点距離f12とが以下の条件を満たす、レンズシステム。
100≦f3/f12≦170
【請求項16】
請求項1ないし14のいずれかにおいて、
前記第3のレンズ群の合成焦点距離f3と、前記第1のレンズ群および前記第2のレンズ群の合成焦点距離f12とが以下の条件を満たす、レンズシステム。
2≦f3/f12≦10
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれかにおいて、
前記第2のレンズ群は、少なくとも1枚の異常低分散ガラスからなるレンズを含む、レンズシステム。
【請求項18】
請求項1ないし17のいずれかにおいて、
前記第2のレンズ群は、少なくとも2枚の異常低分散ガラスからなるレンズを含む、レンズシステム。
【請求項19】
請求項1ないし18のいずれかにおいて、
前記第1のレンズ群、前記絞りおよび前記第2のレンズ群がフォーカシングの際に一体となって移動する、レンズシステム。
【請求項20】
請求項1ないし19のいずれかに記載のレンズシステムと、
前記レンズシステムの像面側に配置された撮像素子とを有する撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズシステムおよび撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本国特許公開公報2014-126652号には、物体側より順に、開口絞りを含み、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群より構成され、無限遠から近距離へのフォーカシングに伴って第1レンズ群が物体側へ移動し、第1レンズ群は、開口絞りより物体側の正の屈折力を有する第1レンズ群前群と、開口絞りより像側の正の屈折力を有する第1レンズ群後群より構成され、第1レンズ群前群は、正レンズを有し、正レンズより像側に、物体側に凸面を向けた正レンズと像側に凹面を向けた負レンズとの接合レンズを有することが記載されている。
【発明の開示】
【0003】
中望遠または標準タイプのレンズにおいて、高性能なレンズシステムが求められている。
【0004】
本発明の一態様は、物体側から順に配置され、フォーカシングの際に移動する正の屈折力の第1のレンズ群と、絞りを挟んで配置され、フォーカシングの際に移動する正の屈折力の第2のレンズ群と、最も像面側に配置され、固定された正の屈折力の第3のレンズ群とを有する撮像用のレンズシステムある。第3のレンズ群は、物体側から順に正の屈折力のレンズと負の屈折力のレンズとからなる接合レンズを含み、第3のレンズ群の合成焦点距離f3と、第1のレンズ群および第2のレンズ群の合成焦点距離f12とが以下の条件を満たす。
2≦f3/f12≦200
【0005】
このレンズシステムは、正-正-正の3群構成である。正のパワーを物体側に配置したタイプでは、負のパワーの像面側に配置するテレフォトタイプ(望遠型)が一般的であり、標準タイプから望遠タイプでコンパクトなタイプのレンズシステムを提供することができる。一方、物体側の正のパワーのレンズで絞った光束を、後方の負のパワーで拡散させて像面に到達させるために各レンズにおける光線の屈折量が大きく、特に正のパワーが集中する物体側のレンズでの屈折量が大きくなり収差補正が難しくなる。収差補正を良好に行うためには数多くの面が必要となり、レンズ枚数が増える傾向になりやすく、レンズ枚数が多くなると個体差や公差による影響が大きくなる。また、レンズ枚数が多くなるとMTFが低下しやすく、設計上でMTFを向上しても、それら数多くのレンズを所定の位置に所定の精度で配置しないとMTFが低下する可能性も高い。
【0006】
本例のレンズシステムにおいては、テレフォトタイプの正-負というパワー配置を、正-正-正という正のパワーの3群構成とし、正のパワーを3つのレンズ群に分散するようにしている。これにより、正のパワーがいずれかのレンズ群、特に物体側のレンズ群に集中することを避けて、収差の発生を抑制し、収差補正を少ない枚数のレンズで可能としている。さらに、最も像面側の第3のレンズ群の正のパワーを物体側の他のレンズ群に対して低くすることにより、中望遠に適した構成としている。このため、第3のレンズ群の合成焦点距離f3と、第1のレンズ群および第2のレンズ群の合成焦点距離f12とが上記条件を満たす。
【0007】
さらに、第3のレンズ群に、ある程度の曲率の接合面と、接合面との距離が確保された曲率の大きな面との組み合わせを含む接合レンズを採用し、面間隔の調整が不要な接合レンズにより、色収差を含む諸収差の補正を行うようにしている。したがって、第3のレンズ群において、接合レンズの占める割合が非常に大きい。一方、接合レンズの距離(長さ)が大きくなりすぎるとレンズシステムの全長が長くなりすぎるとともに、接合面の曲率も大きくなりすぎて製造コストが増加する。このため、第3のレンズ群の接合レンズを高屈折率のガラスを採用し、所定の収差補正能力を備えた接合レンズをコンパクトに実装している。
【0008】
このため、第3のレンズ群の光軸上の距離(第3のレンズ群の全長)G3Lと、接合レンズの光軸上の距離(接合レンズの長さ)B31Lとが以下の条件を満たし、さらに接合レンズの正の屈折力のレンズおよび負の屈折力のレンズの少なくとも一方のレンズの屈折率nB31abが以下の条件を満たしてもよい。
0.6≦B31L/G3L≦1
1.8≦nB31ab≦2.0
接合レンズの正の屈折力のレンズの屈折率nB31aは以下の条件を満たしてもよい。
1.65≦nB31a≦2.0
【0009】
このレンズシステムにおいては、第3のレンズ群に、ある程度の曲率の接合面を含む接合レンズを採用し、色収差を含む諸収差の補正を行うようにしている。したがって、第3のレンズ群において、接合レンズの占める割合が非常に大きい。一方、接合レンズの距離(長さ)が大きくなりすぎるとレンズシステムの全長が長くなりすぎるとともに、接合面の曲率も大きくなりすぎて製造コストが増加する。このため、上記条件の屈折率nB31aの正の屈折力のレンズを接合レンズに採用し、所定の収差補正能力を備えた接合レンズをコンパクトに実装している。
【0010】
本発明の他の態様の1つは、物体側から順に配置された、正の屈折力の第1のレンズ群と、絞りを挟んで配置された正の屈折力の第2のレンズ群と、正の屈折力の第3のレンズ群とから構成された撮像用のレンズシステムである。第1のレンズ群は、物体側から順に、負の屈折力のレンズと正の屈折力のレンズとからなる第1の接合レンズと、正の屈折力のレンズと負の屈折力のレンズとからなる第2の接合レンズとを含み、第2のレンズ群は、物体側から順に、負の屈折力のレンズと正の屈折力のレンズとからなる第3の接合レンズと、後方の正の屈折力のレンズとを含み、第3のレンズ群は、物体側から順に、正の屈折力のレンズと負の屈折力のレンズとからなる第4の接合レンズを含み、第1の接合レンズの正の屈折力のレンズの屈折率nB11bと、前記第4の接合レンズの正の屈折力のレンズの屈折率nB31aとが以下の条件を満たす。
1.75≦nB11b≦2.0
1.75≦nB31a≦2.0
【0011】
本例のレンズシステムは、テレフォトタイプの正-負というパワー配置を、正-正-正という正のパワーの3群構成とし、正のパワーを3つのレンズ群に分散するようにしている。これにより、正のパワーがいずれかのレンズ群、特に物体側のレンズ群に集中することを避けて、収差の発生を抑制し、収差補正を少ない枚数のレンズで可能としている。
【0012】
また、第1のレンズ群の最も物体側に負のレンズと正のレンズとの組み合わせからなる第1の接合レンズが配置され、この第1の接合レンズと対称的な位置で対称的なパワーの組み合わせとなる第4の接合レンズを配置することによりレンズシステムの対称性を向上でき、ペッツバール和の削減にも効果的である。これらの第1および第4の接合レンズにおいて、光軸に沿った距離(厚み)が大きくなる正のパワーのレンズの屈折率nB11bおよび屈折率nB31aは大きいことが望ましく、上記の条件を満たすことにより対称性もさらに向上し、収差が良好に補正できるレンズシステムを提供できる。
【0013】
本発明の他の態様の1つは、上記に記載のレンズシステムと、レンズシステムの像面側に配置された撮像素子とを有する撮像装置である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1のレンズシステムの構成を示す図であり、
図1(a)は、フォーカス位置が無限遠のレンズ配置を示し、
図1(b)は、フォーカス位置が最短におけるレンズ配置を示す。
【
図2】実施例1のレンズシステムを構成する各レンズのデータを示す図。
【
図3】実施例1のレンズシステムの諸数値を示す図。
【
図4】実施例1のレンズシステムのフォーカスが無限遠の諸収差およびMTFを示す図。
【
図5】実施例1のレンズシステムのフォーカスが中間の諸収差およびMTFを示す図。
【
図6】実施例1のレンズシステムのフォーカスが最短の諸収差およびMTFを示す図。
【
図7】実施例2のレンズシステムの構成を示す図であり、
図7(a)は、フォーカス位置が無限遠のレンズ配置を示し、
図7(b)は、フォーカス位置が最短におけるレンズ配置を示す。
【
図8】実施例2のレンズシステムを構成する各レンズのデータを示す図。
【
図9】実施例2のレンズシステムの諸数値を示す図。
【
図10】実施例2のレンズシステムのフォーカスが無限遠の諸収差およびMTFを示す図。
【
図11】実施例2のレンズシステムのフォーカスが中間の諸収差およびMTFを示す図。
【
図12】実施例2のレンズシステムのフォーカスが最短の諸収差およびMTFを示す図。
【
図13】実施例3のレンズシステムの構成を示す図であり、
図13(a)は、フォーカス位置が無限遠のレンズ配置を示し、
図13(b)は、フォーカス位置が最短におけるレンズ配置を示す。
【
図14】実施例3のレンズシステムを構成する各レンズのデータを示す図。
【
図15】実施例3のレンズシステムの諸数値を示す図。
【
図16】実施例3のレンズシステムのフォーカスが無限遠の諸収差およびMTFを示す図。
【
図17】実施例3のレンズシステムのフォーカスが中間の諸収差およびMTFを示す図。
【
図18】実施例3のレンズシステムのフォーカスが最短の諸収差およびMTFを示す図。
【
図19】実施例4のレンズシステムの構成を示す図であり、
図19(a)は、フォーカス位置が無限遠のレンズ配置を示し、
図19(b)は、フォーカス位置が最短におけるレンズ配置を示す。
【
図20】実施例4のレンズシステムを構成する各レンズのデータを示す図。
【
図21】実施例4のレンズシステムの諸数値を示す図。
【
図22】実施例4のレンズシステムのフォーカスが無限遠の諸収差およびMTFを示す図。
【
図23】実施例4のレンズシステムのフォーカスが中間の諸収差およびMTFを示す図。
【
図24】実施例4のレンズシステムのフォーカスが最短の諸収差およびMTFを示す図。
【
図25】実施例5のレンズシステムの構成を示す図であり、
図25(a)は、フォーカス位置が無限遠のレンズ配置を示し、
図25(b)は、フォーカス位置が最短におけるレンズ配置を示す。
【
図26】実施例5のレンズシステムを構成する各レンズのデータを示す図。
【
図27】実施例5のレンズシステムの諸数値を示す図。
【
図28】実施例5のレンズシステムのフォーカスが無限遠の諸収差およびMTFを示す図。
【
図29】実施例5のレンズシステムのフォーカスが中間の諸収差およびMTFを示す図。
【
図30】実施例5のレンズシステムのフォーカスが最短の諸収差およびMTFを示す図。
【
図31】実施例6のレンズシステムの構成を示す図であり、
図31(a)は、フォーカス位置が無限遠のレンズ配置を示し、
図31(b)は、フォーカス位置が最短におけるレンズ配置を示す。
【
図32】実施例6のレンズシステムを構成する各レンズのデータを示す図。
【
図33】実施例6のレンズシステムの諸数値を示す図。
【
図34】実施例6のレンズシステムのフォーカスが無限遠の諸収差およびMTFを示す図。
【
図35】実施例6のレンズシステムのフォーカスが中間の諸収差およびMTFを示す図。
【
図36】実施例6のレンズシステムのフォーカスが最短の諸収差およびMTFを示す図。
【
図37】実施例7のレンズシステムの構成を示す図であり、
図37(a)は、フォーカス位置が無限遠のレンズ配置を示し、
図37(b)は、フォーカス位置が最短におけるレンズ配置を示す。
【
図38】実施例7のレンズシステムを構成する各レンズのデータを示す図。
【
図39】実施例7のレンズシステムの諸数値を示す図。
【
図40】実施例7のレンズシステムのフォーカスが無限遠の諸収差およびMTFを示す図。
【
図41】実施例7のレンズシステムのフォーカスが中間の諸収差およびMTFを示す図。
【
図42】実施例7のレンズシステムのフォーカスが最短の諸収差およびMTFを示す図。
【
図43】実施例8のレンズシステムの構成を示す図であり、
図43(a)は、フォーカス位置が無限遠のレンズ配置を示し、
図43(b)は、フォーカス位置が最短におけるレンズ配置を示す。
【
図44】実施例8のレンズシステムを構成する各レンズのデータを示す図。
【
図45】実施例8のレンズシステムの諸数値を示す図。
【
図46】実施例8のレンズシステムのフォーカスが無限遠の諸収差およびMTFを示す図。
【
図47】実施例8のレンズシステムのフォーカスが中間の諸収差およびMTFを示す図。
【
図48】実施例8のレンズシステムのフォーカスが最短の諸収差およびMTFを示す図。
【発明の実施の形態】
【0015】
図1に、撮像用の光学系を備えた撮像装置(カメラ、カメラ装置)の一例を示している。
図1(a)はフォーカシングが無限遠の状態を示し、
図1(b)はフォーカシングが最近距離の状態を示す。このカメラ(撮像装置)1は、レンズシステム(光学系、撮像光学系、結像光学系)10と、レンズシステム10の像面側(画像側、撮像側、結像側)12に配置された撮像素子(撮像デバイス、像面、結像面)5とを有する。この撮像用のレンズシステム10は、物体側11から順に配置された、正の屈折力の第1のレンズ群G1と、絞りStを挟んで配置された正の屈折力の第2のレンズ群G2と、正の屈折力の第3のレンズ群G3とから構成されている。第1のレンズ群G1、絞りStおよび第2のレンズ群G2はフォーカシングの際に一体となって移動し、第3のレンズ群G3は、フォーカシングの際に固定されている。すなわち、第3のレンズ群G3と像面5との距離はフォーカシングにより変動しない。
【0016】
このレンズシステム10は、正-正-正の3群構成の、35mm換算で焦点距離が55mmの標準タイプのレンズシステムであり、第1のレンズ群G1および第2のレンズ群G2がフォーカシングの際に光軸7に沿って移動する。正のパワーを物体側11に配置したタイプでは、負のパワーを像面側12に配置するテレフォトタイプ(望遠型)が一般的であり、標準タイプから望遠タイプでコンパクトなタイプのレンズシステムを提供することができる。一方、物体側の正のパワーのレンズで絞った光束を、後方の負のパワーで拡散させて像面に到達させるために各レンズにおける光線の屈折量が大きく、特に正のパワーが集中する物体側のレンズでの屈折量が大きくなり収差補正が難しくなる。収差補正を良好に行うためには数多くの面が必要となり、レンズ枚数が増える傾向になりやすく、レンズ枚数が多くなると個体差や公差による影響が大きくなる。また、レンズ枚数が多くなるとMTF(Modulation Tranfer Function)が低下しやすく、設計上でMTFを向上しても、それら数多くのレンズを所定の位置に所定の精度で配置しないとMTFが低下したり劣化したりする可能性も高い。
【0017】
本例のレンズシステム10においては、テレフォトタイプの正-負というパワー配置を、正-正-正という正のパワーの3群構成とし、正のパワーをレンズ群G1~G3に分散するようにしている。これにより、正のパワーがいずれかのレンズ群、特に物体側11のレンズ群に集中することを避けて、収差の発生を抑制し、収差補正を少ない枚数のレンズで可能としている。さらに、最も像面側12の第3のレンズ群G3の正のパワーを物体側11の他のレンズ群に対して低くすることにより、中望遠に適した構成とするとともに、必要に応じて負のパワーのレンズの組み合わせを可能とし、収差補正により適した構成としている。
【0018】
したがって、第3のレンズ群の合成焦点距離f3と、第1のレンズ群および第2のレンズ群の合成焦点距離f12とが以下の条件(1)を満たしてもよい。
2≦f3/f12≦200・・・(1)
条件(1)の下限は3であってもよく、100であってもよく、上限は170であってもよい。したがって、条件(1)は以下の条件(1a)であってもよい。
3≦f3/f12≦200・・・(1a)
特に、以下の条件(1b)の範囲は、第3のレンズ群G3における収差の発生を抑制でき、MTFの向上に適している。条件(1b)の下限は110であってもよい。上限が200であってもよいことは上記の通りである。
100≦f3/f12≦170・・・(1b)
また、以下の条件(1c)の範囲は、第3のレンズ群G3を比較的コンパクトに纏めることができ、全体としてコンパクトなレンズシステム10を提供できる。条件(1c)の上限は6であってもよい。
2≦f3/f12≦10・・・(1c)
【0019】
さらに、本例のレンズシステム10においては、第3のレンズ群G3に、ある程度の曲率の接合面S14と、接合面S14との距離が確保された曲率の大きな面S13およびS15との組み合わせを含む接合レンズB31を採用し、面間隔の調整が不要な接合レンズにより、色収差を含む諸収差の補正を行うようにしている。したがって、第3のレンズ群G3において、接合レンズB31の占める割合が非常に大きい。一方、接合レンズB31の距離(長さ)B31Lが大きくなりすぎるとレンズシステム10の全長WLが長くなりすぎるとともに、接合面S14の曲率も大きくなりすぎて製造コストが増加する。このため、第3のレンズ群G3の接合レンズB31を高屈折率のガラスを採用し、所定の収差補正能力を備えた接合レンズB31をコンパクトに実装している。
【0020】
このため、第3のレンズ群G3の最も物体側11の面S13から最も像面側12の面S17の光軸7上の距離(第3のレンズ群G3の全長)G3Lと、接合レンズB31の光軸7上の距離(面S13と面S15との距離、接合レンズB31の長さ)B31Lとは以下の条件(2)を満たしてもよい。
0.6≦B31L/G3L≦1・・・(2)
条件(2)の下限は0.65であってもよく、上限は0.80であってもよく、特に以下の条件(2a)の範囲はMTFの向上に適している。
0.65≦B31L/G3L≦0.8・・・(2a)
【0021】
また、接合レンズB31の正の屈折力のレンズL31および負の屈折力のレンズL32の少なくとも一方のレンズの屈折率nB31abが以下の条件(3)を満たしてもよい。
1.8≦nB31ab≦2.0・・・(3)
【0022】
また、第3のレンズ群の距離(全長)G3Lと、レンズシステム10の全長(最も物体側11の面S1から最も像面側12の面S17の光軸7上の距離)WLとは以下の条件(4)を満たしてもよい。
0.1≦G3L/WL≦0.5・・・(4)
条件(4)の下限は0.2であってもよく、0.25であってもよく、0.28であってもよい。条件(4)の上限は0.4であってもよい。
【0023】
さらに、第3のレンズ群G3の正のパワーを小さくできるので、接合レンズB31の像面側12に負のパワーのレンズL33を配置することは色収差を含めて諸収差を補正することに有効である。第3のレンズ群G3は、物体側11から接合レンズB31と、物体側11に凹の負の屈折力の後方のレンズL33とを含むことは有効である。最も像面側12に、物体側11に凹の負の屈折力のレンズL33を配置することにより、前方の正のパワーのレンズ群G1およびG2との組み合わせではテレフォトタイプ、またはそれに近い構成が実装できる。したがって、レンズシステムの全長WLを短くしやすい。さらに、最も像面側12の負のパワーのレンズL33により結像面5に向かう光束を広げることが可能となり、大きなイメージサークル、例えば直径55mm程度のサイズを確保できる。
【0024】
また、第3のレンズ群G3を接合レンズB31と負のパワーのレンズL33との構成とすることにより、第3のレンズ群G3のパワーを強くせずに、それぞれのレンズのパワーを確保することが可能となる。したがって、レンズ枚数をそれほど増やさずに収差をさらに良好に補正でき、MTFを向上しやすい。
【0025】
接合レンズB31の正の屈折力のレンズL31および負の屈折力のレンズL32の合成焦点距離f31abと、後方のレンズL33の焦点距離f3GLとが以下の条件(5)を満たしてもよい。
0.5≦|f31ab/f3GL|≦1.1・・・(5)
条件(5)の下限は、0.7であってもよく、1.0であってもよい。特に、以下の条件(5a)の範囲は、接合レンズB31のパワーよりも後方の負のレンズL33のパワーが若干上回り、収差を良好に補正できる。
1.0<|f31ab/f3GL|≦1.1・・・(5a)
【0026】
また、接合レンズB31の正の屈折力のレンズL31および負の屈折力のレンズL32の合成焦点距離f31abと、後方のレンズL33の焦点距離f3GLと、第3のレンズ群G3の合成焦点距離f3とが以下の条件(6)を満たしてもよい。
0<(|f31ab|+|f3GL|)/|f3|≦1.3・・・(6)
第3のレンズ群G3のパワーに対して、第3のレンズ群G3を構成する正のパワーと負のパワーとの合計を同じまたは大きくすることができ、第3のレンズ群G3のパワーを大きくせずに収差の補正に適した構成を提供できる。条件(6)の上限は1.0であってもよく、0.7であってもよく、0.1であってもよい。特に、以下の条件(6a)を満たす範囲は、接合レンズB31の正のパワーと、後ろの負のレンズL33の負のパワーとをほぼ均等で、第3のレンズ群G3のパワーに対して十分に大きくでき、第3のレンズ群G3のトータルのパワーを弱く設定できるので収差補正に適している。
0<(|f31ab|+|f3GL|)/|f3|≦0.1・・・(6a)
【0027】
第3のレンズ群G3の接合レンズB31は、物体側11から正のパワーのレンズL31と、負のパワーのレンズL32との組み合わせであることが望ましい。正-正-正のレンズシステム10において、第1のレンズ群G1の最も物体側11に負のレンズL11と正のレンズL12との組み合わせからなる接合レンズB11が配置され、この接合レンズB11と対称的な位置で対称的なパワーの組み合わせであることが対称性を向上でき、ペッツバール和の削減にも効果的である。この接合レンズB31において、光軸7に沿った距離(厚み)が大きくなる正のパワーのレンズL31の屈折率nB31aは大きいことが望ましく、以下の条件(7)を満たしてもよい。
1.65≦nB31a≦2.0・・・(7)
【0028】
また、対称的な位置となる接合レンズB11を構成する正のパワーのレンズL12の屈折率nB11bとともに、以下の条件(7a)および(11)を満たしてもよい。
1.75≦nB31a≦2.0・・・(7a)
1.75≦nB11b≦2.0・・・(11)
【0029】
この接合レンズB31においては、条件(3)に示したように、正のパワーのレンズL31の屈折率nB31aおよび負のパワーのレンズL32の屈折率nB31bの少なくとも一方の屈折率が1.8以上であることが望ましい。したがって、正のパワーのレンズL31の屈折率nB31aは大きいことが望ましく、以下の条件(7b)を満たしてもよい。
1.8≦nB31a≦2.0・・・(7b)
接合レンズB31を十分な面間隔を維持しながら薄くできるので、条件(2a)とともに、接合レンズB31の後方(像面側12)に負のパワーのレンズL33を配置するのに適している。
【0030】
さらに、接合レンズB31の正の屈折力のレンズL31の屈折率nB31aが以下の条件(7c)を満たしてもよく、条件(7d)を満たしてもよい。
1.85≦nB31a≦2.0・・・(7c)
1.88≦nB31a≦2.0・・・(7d)
接合レンズB31の物体側11に凹の接合面S14のパワーを得やすく、接合レンズB31における収差補正能力を向上できる。このため、このレンズシステム10を構成する高屈折率のレンズの数を削減でき、経済的である。
【0031】
特に、接合レンズB31の正のパワーのレンズL31の屈折率nB31aが、負のパワーのレンズL32の屈折率nB31bよりも大きく、以下の条件(8)を満たしてもよい。
0.5<nB31b/nB31a<1・・・(8)
接合レンズB31の物体側11に凹の接合面S14のパワーを得やすく、接合レンズB31における収差補正能力を向上できる。このため、このレンズシステム10を構成する高屈折率のレンズの数を削減でき、経済的である。
【0032】
接合レンズB31の負のパワーのレンズL32の屈折率nB31bに注目すると、以下の条件(9)を満たしてもよい。
1.60≦nB31b<1.87・・・(9)
【0033】
また、接合レンズB31の負のパワーのレンズL32の屈折率nB31bと、第3のレンズ群G3の後方の負のパワーのレンズL33の屈折率n3GLとの関係では以下の条件(10)を満たしてもよい。
0.5<n3GL/nB31b<1・・・(10)
接合レンズB31の後方(像面側)12に隣接する、物体側11に凹の負のレンズL33の屈折率n3GLを相対的に小さくすることにより、負のレンズL33の物体側11の面S16の曲率を大きく(曲率半径を小さく)できる。このため、接合レンズB31の像面側12の面S15に、負のレンズL33の物体側11に凹の面S16の周辺部(エッジ部)を接近または接触させながら面S15および面S16の間隔を設定できる。したがって、レンズシステム10の組み立てが容易となりMTFを安定して良好な値を備えたレンズシステム10を提供できる。
【0034】
第1のレンズ群G1は、物体側11から順に、負の屈折力のレンズL11と正の屈折力のレンズL12とからなる第1の接合レンズB11と、正の屈折力のレンズL13と負の屈折力のレンズL14とからなる第2の接合レンズB12とを含み、第2のレンズ群G2は、物体側11から順に、負の屈折力のレンズL21と正の屈折力のレンズL22とからなる第3の接合レンズB21と、後方の正の屈折力のレンズL23とを含み、第3のレンズ群G3は、物体側11から順に、正の屈折力のレンズL31と負の屈折力のレンズL32とからなる第4の接合レンズB31を含んでもよい。
【0035】
このレンズシステム10は、物体側11から絞りStを挟んで、負-正-正-負のレンズと、負-正-正-正-負のレンズというほぼ対称的なパワー配置となり、さらに、絞りStから物体側11に、負-正・正-負の接合レンズB11およびB12が配置され、像面側12に負-正・正-負の接合レンズB21およびB31が配置されており、接合レンズの単位でも対称的な配置となる。また、物体側11の2つの接合レンズB11およびB12は、物体側11に凸の正のメニスカスタイプのレンズと物体側11に凸の負のメニスカスタイプのレンズの組み合わせであり、像面側12の2つの接合レンズB21およびB31は、物体側11に凹の負のメニスカスタイプのレンズと物体側11に凹の正のメニスカスタイプのレンズとの組み合わせであり、この点でも絞りStを挟んで対称的に面の向きが配置されている。したがって、対称性が高く、収差の補正が容易であり、ペッツバール和を小さくするのに適した配置となっている。このため、このレンズシステム10は、鮮明で、明るい像を得ることが可能であり、MTFを向上しやすい。
【0036】
また、絞りStを挟んで負のメニスカスタイプの接合レンズB12とB21とを向かい合わせに配置することにより絞りStに光軸7に対して平行化した光束を通過させることが可能となり、より明るく、F値の小さなレンズシステム10を提供できる。
【0037】
さらに、最も像面側12の負のレンズL33を含めて10枚構成であるが、4つの接合レンズB11、B12、B21およびB31を含むので、組立の際のレンズ要素としては6枚となる。このため、このレンズシステム10は組立が容易であるとともに、10枚のレンズ(L11~L14、L21~L23、L31~L33)の位置を精度よく設定することが可能となり、組立によるMTFの劣化または低下を防止でき、組立による公差変動が小さく、組立感度(組み立てによる性能の変動)の低いレンズシステム10を提供できる。
【0038】
さらに、第1の接合レンズB11の正の屈折力のレンズL12の屈折率nB11bと、第4の接合レンズB31の正の屈折力のレンズL31の屈折率nB31aとが上述した条件(7a)および(11)を満たしてもよい。レンズシステム10の最も物体側11および像面側12に位置する接合レンズB11およびB31の物体側11に凸の接合面S2および物体側11に凹の接合面S14のパワーを確保できる。このため、収差補正が良好に行えるとともに、レンズシステム10に含まれる高屈折率のレンズ枚数を低減でき、低コストで高性能のレンズシステム10を提供できる。
【0039】
また、第3のレンズ群G3の接合レンズ(第4の接合レンズ)B31の正の屈折力のレンズL31の屈折率nB31aと、第4の接合レンズB31の負の屈折力のレンズL32の屈折率nB31bが上記条件(8)を満たし、第1のレンズ群G1の物体側11の接合レンズ(第1の接合レンズ)B11の負の屈折力のレンズL11のアッベ数νB11aと、第1の接合レンズB11の正の屈折力のレンズL12のアッベ数νB11bとが以下の条件(12)を満たしてもよい。
0.5<νB11a/νB11b<1・・・(12)
【0040】
このレンズシステム10の最も物体側11に配置された負-正の接合レンズB11と、最も像面側12に配置された正-負の接合レンズB31とを、高屈折率、例えば1.8以上で、低分散(高アッベ数)の正のレンズと、低屈折率、例えば1.7以下で、高分散(低アッベ数)の負のレンズとの組み合わせにすることで、最も物体側11の物体側11に凸の接合面S2と、最も像面側12で物体側11に凹の接合面S14とに光学的に対称な性能を持たせることが可能となる。したがって、収差補正が良好に行えるとともに、レンズシステム10に含まれる高屈折率のレンズ枚数を低減でき、低コストで高性能のレンズシステム10を提供できる。
【0041】
このレンズシステム10は正-正-正の3群構成であり、第1のレンズ群の合成焦点距離f1と、第2のレンズ群の合成焦点距離f2と、第3のレンズ群の合成焦点距離f3とは以下の条件(13)を満たしてもよい。
f2<f1<f3・・・(13)
最も物体側11に配置された第1のレンズ群G1のパワーを抑制することにより、物体側11で最も光線の角度が大きくなりやすいレンズ群における収差の発生を抑制できる。また、最もパワーの大きな第2のレンズ群に異常分散ガラスからなるレンズを採用することによりレンズシステム10の性能(MTF)の向上に有効であり、色収差の補正にも有効である。したがって、第2のレンズ群G2を構成するレンズL21~L23の少なくとも1枚の異常低分散ガラスからなるレンズを含んでもよい。さらには、第2のレンズ群G2は、少なくとも2枚の異常低分散ガラスからなるレンズを含んでもよい。具体的には、第2のレンズ群G2の接合レンズ(第3の接合レンズ)B21の正の屈折力のレンズL22は、異常低分散ガラスであってよい。また、第2のレンズ群G2の接合レンズB21の後方の正の屈折力のレンズL23が、異常低分散ガラスであってもよい。
【0042】
実施例1
図面を参照してさらに詳しく説明する。
図1にレンズシステム10の幾つかの状態におけるレンズ配置を示している。
図1(a)は、フォーカス位置が無限遠のレンズ配置を示し、
図1(b)は、フォーカス位置が最短(近距離、400mm)におけるレンズ配置を示している。
【0043】
このレンズシステム10は、無限遠における焦点距離が約65mm(35mm換算の焦点距離55mm)の標準タイプのレンズであり、写真、映画あるいはビデオ撮影用のカメラ1の交換レンズとして適した構成となっている。レンズシステム10は3群構成であり、物体側11から合成屈折力(パワー)が正の第1のレンズ群G1、絞りStを挟んで、パワーが正の第2のレンズ群G2、パワーが正の第3のレンズ群G3からなり、第3のレンズ群G3は、フォーカシングに際して像面5に対する距離は変わらずに動かず、固定されたレンズ群である。絞りStを挟んで配置された第1のレンズ群G1および第2のレンズ群G2は、フォーカシングの際に、無限遠から近距離にフォーカス位置が移動すると、一体で、物体側11に単調に移動する。
【0044】
図2に、レンズシステム10を構成する各レンズのデータを示している。曲率半径(Ri)は物体側11から順に並んだ各レンズの各面の曲率半径(mm)、間隔diは各レンズ面の間の距離(mm)、有効径(Di)は各レンズ面の有効径(直径、mm)、屈折率ndは各レンズの屈折率(d線)、アッベ数νdは各レンズのアッベ数(d線)を示している。
図2において、レンズ名称にアスタリスクが付記されているものは異常分散性ガラスを用いたレンズであることを示している。以下においても同様である。
【0045】
図3に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠、中間(2400mm)、最短(最接近、400mm)のときのレンズシステム10の焦点距離fと、Fナンバー(FNo.)、画角、可変間隔d12の値を示している。
【0046】
図4(a)に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠ときの球面収差、非点収差、歪曲収差を示している。球面収差は、波長435.8400nm(長破線)と、波長486.1300nm(短破線、ドット)と、波長546.0700nm(二点鎖線)と、波長587.5600nm(一点鎖線)と、波長656.2800nm(実線)とを示している。非点収差は、タンジェンシャル(メリジオナル)光線Tとサジタル光線Sとを示している。以下に示す収差図においても同様である。
【0047】
図4(b)は、レンズシステム10の像高に対するMTFを示している。実線はRAD(サジタル面内のMTF)、破線はTAD(タンジェンシャル(メリジオナル)面内のMTF)を示し、上から10本/mm(10lp/mm)、20本/mm(20lp/mm)、30本/mm(30lp/mm)のMTFを示している。以下においても同様である。
【0048】
また、
図5に中間(2400mm)のときの収差図(
図5(a))とMTF(
図5(b))とを示し、
図6に最短(最接近、400mm)のときの収差図(
図6(a))とMTF(
図6(b))とを示している。
【0049】
これらの図に示したレンズシステム10は、全体が10枚のレンズ(L11~L14、L21~L23、L31~L33)からなる。最も物体側11に配置された第1のレンズ群G1は物体側11から、物体側11に凸の負のパワーのメニスカスレンズL11と、物体側11に凸の正のパワーのメニスカスレンズL12と、物体側11に凸の正のパワーのメニスカスレンズL13と、物体側11に凸の負のパワーのメニスカスレンズL14との4枚構成である。レンズL11およびL12により物体側11に凸の正のメニスカスタイプの接合レンズ(バルサム、第1の接合レンズ)B11が構成され、レンズL13およびL14により物体側11に凸の負のメニスカスタイプの接合レンズ(バルサム、第2の接合レンズ)B12が構成されている。
【0050】
絞りStを挟んで第1のレンズ群G1と対峙する第2のレンズ群G2は、物体側11に凹の負のメニスカスレンズL21と、物体側11に凹の正のメニスカスレンズL22と、両凸の正レンズL23との3枚構成である。レンズL21およびL22により、物体側11に凹の負のメニスカスタイプの接合レンズ(バルサム、第3の接合レンズ)B21が構成されている。
【0051】
第3のレンズ群G3は、物体側11から順に配置された、物体側11に凹の正のメニスカスレンズL31と、物体側11に凹の負のメニスカスレンズL32と、物体側に凹の負のメニスカスレンズL33との3枚構成である。レンズL31およびL32により、物体側11に凹の正のメニスカスタイプの接合レンズ(バルサム、第4の接合レンズ)B31が構成されている。
【0052】
したがって、このレンズシステム10は、全体として10枚のレンズにより構成されているが光学要素としては、4つの接合レンズB11、B12、B21およびB31と、2枚のレンズL23およびL33の6枚構成であり、接合レンズを多用することにより簡易な構成で組み立てやすいレンズシステムとなっている。
【0053】
図1に示したレンズシステム10の諸数値および各条件の値は以下の通りである。なお、焦点距離および全長の単位はmmである。以下においても同様である。
第1のレンズ群G1の焦点距離 (f1) : 121.92
第2のレンズ群G2の焦点距離 (f2) : 73.40
第3のレンズ群G3の焦点距離 (f3) : 11124.26
第1および第2のレンズ群の合成焦点距離 (f12) : 69.09
接合レンズB31の焦点距離 (f31ab) : 79.47
第3のレンズ群G3の後方のレンズL33の焦点距離 (f3GL) : -75.50
レンズシステムの全長 (WL) : 69.2
第3のレンズ群G3の全長 (G3L) : 23.52
接合レンズB31の全長 (B31L) : 16.97
条件(1) (f3/f12) : 161.0
条件(2) (B31L/G3L) : 0.72
条件(3) (nB31ab(max(nL31, nL32))) : 1.89
条件(4) (G3L/WL) : 0.34
条件(5) (|f31ab/f3GL|) : 1.05
条件(6) (|f31ab|+|f3GL|)/|f3|) : 0.01
条件(7) (nB31a(nL31)) : 1.89
条件(8) (nB31b/nB31a(nL32/nL31)) : 0.90
条件(9) (nB31b(nL32)) : 1.70
条件(10) (n3GL/nB31b(nL33/nL32)) : 0.88
条件(11) (nB11b(nL12)) : 1.83
条件(12) (νB11a/νB11b(νL11/νL12)) : 0.81
【0054】
図1に示したレンズシステム10は、上記に示した構成を全て含んでおり、さらに条件(1)~(13)を満足する。また、条件(1a)、(1b)、(2a)、(5a)、(6a)、(7a)~(7d)も含めすべての条件を満足する。また、第2のレンズ群G2のレンズL22およびL23に異常分散レンズを採用する一方、屈折率が1.8以上の高屈折率のレンズはL12とL31の2枚となっており、低コストで諸収差を良好に補正できるレンズシステム10を提供できる。
【0055】
このレンズシステム10は、無限遠にフォーカスしたときの焦点距離が65mm程度と中望遠または標準タイプの交換レンズとしての性能を備えており、Fナンバー(F値)が2.80と明るく、画角が46.8度と大きな撮像レンズを提供できる。また、
図4ないし
図6に示すように、無限遠から近距離(短距離)までのフォーカシングの全域において諸収差が良好に補正された画像を取得できる。MTF曲線においては、無限遠から近距離までのフォーカシングの全領域においてMTFの極端な低下は見られず、サジタルとタンジェンシャルとの剥離も小さく、コマ収差、非点収差などが良好に補正されていることが分かる。
【0056】
実施例2
図7にレンズシステム10の異なる例を示している。
図7(a)は、フォーカス位置が無限遠のレンズ配置を示し、
図7(b)は、フォーカス位置が最短(近距離、410mm)におけるレンズ配置を示している。
【0057】
このレンズシステム10も正-正-正のパワー配置の3群構成であり、物体側11から合成屈折力(パワー)が正の第1のレンズ群G1、絞りStを挟んで、パワーが正の第2のレンズ群G2、パワーが正の第3のレンズ群G3からなり、第3のレンズ群G3は、フォーカシングに際して像面5に対する距離は変わらずに動かず、固定されたレンズ群である。絞りStを挟んで配置された第1のレンズ群G1および第2のレンズ群G2は、フォーカシングの際に、無限遠から近距離にフォーカス位置が移動すると、一体で、物体側11に単調に移動する。
【0058】
図8に、レンズシステム10を構成する各レンズのデータを示している。
図9に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠、中間(2400mm)、最短(最接近、410mm)のときのレンズシステム10の焦点距離fと、Fナンバー(FNo.)、画角、可変間隔d12の値を示している。
図10~12に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠、中間および最短のときの諸収差(
図10(a),11(a),12(a))と、MTF(
図10(b),11(b),12(b))とを示している。
【0059】
これらの図に示したレンズシステム10は、全体が10枚のレンズ(L11~L14、L21~L23、L31~L33)からなり、各群および各レンズの基本的な構成は、
図1に示した実施例1と共通する。したがって、このレンズシステム10も、全体として10枚のレンズにより構成されているが光学要素としては、4つの接合レンズB11、B12、B21およびB31と、2枚のレンズL23およびL33の6枚構成であり、接合レンズを多用することにより簡易な構成で組み立てやすいレンズシステムとなっている。
【0060】
図7に示したレンズシステム10の諸数値および各条件の値は以下の通りである。
第1のレンズ群G1の焦点距離 (f1) : 106.87
第2のレンズ群G2の焦点距離 (f2) : 79.81
第3のレンズ群G3の焦点距離 (f3) : 7636.74
第1および第2のレンズ群の合成焦点距離 (f12) : 69.00
接合レンズB31の焦点距離 (f31ab) : 85.34
第3のレンズ群G3の後方のレンズL33の焦点距離 (f3GL) : -81.56
レンズシステムの全長 (WL) : 69.2
第3のレンズ群G3の全長 (G3L) : 23.60
接合レンズB31の全長 (B31L) : 17.10
条件(1) (f3/f12) : 110.7
条件(2) (B31L/G3L) : 0.72
条件(3) (nB31ab(max(nL31, nL32))) : 1.89
条件(4) (G3L/WL) : 0.34
条件(5) (|f31ab/f3GL|) : 1.05
条件(6) (|f31ab|+|f3GL|)/|f3|) : 0.02
条件(7) (nB31a(nL31)) : 1.89
条件(8) (nB31b/nB31a(nL32/nL31)) : 0.90
条件(9) (nB31b(nL32)) : 1.70
条件(10) (n3GL/nB31b(nL33/nL32)) : 0.88
条件(11) (nB11b(nL12)) : 1.83
条件(12) (νB11a/νB11b(νL11/νL12)) : 0.81
【0061】
図7に示したレンズシステム10は、上記に示した構成を全て含んでおり、さらに条件(1)~(13)を満足する。また、条件(1a)、(1b)、(2a)、(5a)、(6a)、(7a)~(7d)も含めすべての条件を満足する。また、第2のレンズ群G2のレンズL22に異常分散レンズを採用する一方、屈折率が1.8以上の高屈折率のレンズはL12とL31の2枚となっており、低コストで諸収差を良好に補正できるレンズシステム10を提供できる。
【0062】
このレンズシステム10は、無限遠にフォーカスしたときの焦点距離が65mm程度と中望遠または標準タイプの交換レンズとしての性能を備えており、Fナンバー(F値)が3.24と明るく、画角が46.8度と大きな撮像レンズを提供できる。また、
図10ないし
図12に示すように、無限遠から近距離(短距離)までのフォーカシングの全域において諸収差が良好に補正された画像を取得できる。MTF曲線においては、無限遠から近距離までのフォーカシングの全領域においてMTFの極端な低下は見られず、サジタルとタンジェンシャルとの剥離も小さく、コマ収差、非点収差などが良好に補正されている。特に、近距離のMTFに対して無限遠のMTFが良好であることが分かる。
【0063】
実施例3
図13にレンズシステム10の異なる例を示している。
図13(a)は、フォーカス位置が無限遠のレンズ配置を示し、
図13(b)は、フォーカス位置が最短(近距離、545mm)におけるレンズ配置を示している。
【0064】
このレンズシステム10も正-正-正のパワー配置の3群構成であり、物体側11から合成屈折力(パワー)が正の第1のレンズ群G1、絞りStを挟んで、パワーが正の第2のレンズ群G2、パワーが正の第3のレンズ群G3からなり、第3のレンズ群G3は、フォーカシングに際して像面5に対する距離は変わらずに動かず、固定されたレンズ群である。絞りStを挟んで配置された第1のレンズ群G1および第2のレンズ群G2は、フォーカシングの際に、無限遠から近距離にフォーカス位置が移動すると、一体で、物体側11に単調に移動する。
【0065】
図14に、レンズシステム10を構成する各レンズのデータを示している。
図15に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠、中間(2400mm)、最短(最接近、545mm)のときのレンズシステム10の焦点距離fと、Fナンバー(FNo.)、画角、可変間隔d12の値を示している。
図16~18に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠、中間および最短のときの諸収差(
図16(a),17(a),18(a))と、MTF(
図16(b),17(b),18(b))とを示している。
【0066】
これらの図に示したレンズシステム10は、全体が10枚のレンズ(L11~L14、L21~L23、L31~L33)からなり、各群および各レンズの基本的な構成は、第3のレンズ群G3の最も物体側11の正の屈折力のレンズL31が両凸の正レンズであり、接合レンズB31も両凸の正レンズタイプであること以外は、
図1に示した実施例1と共通する。したがって、このレンズシステム10も、全体として10枚のレンズにより構成されているが光学要素としては、4つの接合レンズB11、B12、B21およびB31と、2枚のレンズL23およびL33の6枚構成であり、接合レンズを多用することにより簡易な構成で組み立てやすいレンズシステムとなっている。
【0067】
図13に示したレンズシステム10の諸数値および各条件の値は以下の通りである。
第1のレンズ群G1の焦点距離 (f1) : 127.08
第2のレンズ群G2の焦点距離 (f2) : 75.22
第3のレンズ群G3の焦点距離 (f3) : 261.12
第1および第2のレンズ群の合成焦点距離 (f12) : 75.26
接合レンズB31の焦点距離 (f31ab) : 81.08
第3のレンズ群G3の後方のレンズL33の焦点距離 (f3GL) : -113.66
レンズシステムの全長 (WL) : 67.23
第3のレンズ群G3の全長 (G3L) : 18.58
接合レンズB31の全長 (B31L) : 14.35
条件(1) (f3/f12) : 3.47
条件(2) (B31L/G3L) : 0.77
条件(3) (nB31ab(max(nL31, nL32))) : 1.85
条件(4) (G3L/WL) : 0.28
条件(5) (|f31ab/f3GL|) : 0.71
条件(6) (|f31ab|+|f3GL|)/|f3|) : 0.75
条件(7) (nB31a(nL31)) : 1.82
条件(8) (nB31b/nB31a(nL32/nL31)) : 1.02
条件(9) (nB31b(nL32)) : 1.85
条件(10) (n3GL/nB31b(nL33/nL32)) : 0.80
条件(11) (nB11b(nL12)) : 1.80
条件(12) (νB11a/νB11b(νL11/νL12)) : 1.13
【0068】
図13に示したレンズシステム10は、条件(1)~(7)、(9)~(11)および(13)を満足する。また、条件(1a)、(1c)、(2a)および(7a)~(7b)を満足する。また、第2のレンズ群G2のレンズL22に異常分散レンズを採用している。このレンズシステム10においては、屈折率が1.8以上の高屈折率のレンズはL12、L14、L23、L31とL32の5枚となっており、比較的多くの高屈折率のレンズを採用し、諸収差を良好に補正している。
【0069】
このレンズシステム10は、無限遠にフォーカスしたときの焦点距離が65mm程度と中望遠または標準タイプの交換レンズとしての性能を備えており、Fナンバー(F値)が2.8と明るく、画角が47.6度と大きな撮像レンズを提供できる。また、
図16ないし
図18に示すように、無限遠から近距離(短距離)までのフォーカシングの全域において諸収差が良好に補正された画像を取得できる。MTF曲線においては、無限遠から近距離までのフォーカシングの全領域において、像高の高い領域を除いてMTFの極端な低下は見られず、サジタルとタンジェンシャルとの剥離も小さい。
【0070】
実施例4
図19にレンズシステム10の異なる例を示している。
図19(a)は、フォーカス位置が無限遠のレンズ配置を示し、
図19(b)は、フォーカス位置が最短(近距離、555mm)におけるレンズ配置を示している。
【0071】
このレンズシステム10も正-正-正のパワー配置の3群構成であり、物体側11から合成屈折力(パワー)が正の第1のレンズ群G1、絞りStを挟んで、パワーが正の第2のレンズ群G2、パワーが正の第3のレンズ群G3からなり、第3のレンズ群G3は、フォーカシングに際して像面5に対する距離は変わらずに動かず、固定されたレンズ群である。絞りStを挟んで配置された第1のレンズ群G1および第2のレンズ群G2は、フォーカシングの際に、無限遠から近距離にフォーカス位置が移動すると、一体で、物体側11に単調に移動する。
【0072】
図20に、レンズシステム10を構成する各レンズのデータを示している。
図21に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠、中間(2500mm)、最短(最接近、555mm)のときのレンズシステム10の焦点距離fと、Fナンバー(FNo.)、画角、可変間隔d12の値を示している。
図22~24に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠、中間および最短のときの諸収差(
図22(a),23(a),24(a))と、MTF(
図22(b),23(b),24(b))とを示している。
【0073】
これらの図に示したレンズシステム10は、全体が10枚のレンズからなる。第1のレンズ群G1は、3枚構成で、物体側11に凸の正のメニスカスレンズL11と、物体側11に凸の正のメニスカスレンズL13と、物体側11に凸の負のメニスカスレンズL14とを含む。レンズL13およびL14は、物体側11に凸の負のメニスカスレンズタイプの接合レンズB12を構成する。第2のレンズ群G2は4枚構成で、物体側に凹の負のメニスカスレンズL21と、物体側11に凹の正のメニスカスレンズL22と、両凸の正レンズL23aと、物体側11に凹の負のメニスカスレンズL23bとを含む。レンズL21およびL22は、物体側11に凹の接合レンズB21を構成し、レンズL23aおよびL23bは両凸の接合レンズB22を構成する。
【0074】
第3のレンズ群G3は、両凸の正レンズL31と、物体側11に凹の負のメニスカスレンズL32と、物体側11に凹の負のメニスカスレンズL33とを含み、レンズL31およびL32により両凸の接合レンズB31が構成されている。
【0075】
図19に示したレンズシステム10の諸数値および各条件の値は以下の通りである。
第1のレンズ群G1の焦点距離 (f1) : 122.56
第2のレンズ群G2の焦点距離 (f2) : 84.55
第3のレンズ群G3の焦点距離 (f3) : 244.88
第1および第2のレンズ群の合成焦点距離 (f12) : 76.12
接合レンズB31の焦点距離 (f31ab) : 62.62
第3のレンズ群G3の後方のレンズL33の焦点距離 (f3GL) : -81.25
レンズシステムの全長 (WL) : 68.7
第3のレンズ群G3の全長 (G3L) : 17.66
接合レンズB31の全長 (B31L) : 13.85
条件(1) (f3/f12) : 3.22
条件(2) (B31L/G3L) : 0.78
条件(3) (nB31ab(max(nL31, nL32))) : 1.92
条件(4) (G3L/WL) : 0.26
条件(5) (|f31ab/f3GL|) : 0.77
条件(6) (|f31ab|+|f3GL|)/|f3|) : 0.59
条件(7) (nB31a(nL31)) : 1.85
条件(8) (nB31b/nB31a(nL32/nL31)) : 1.04
条件(9) (nB31b(nL32)) : 1.92
条件(10) (n3GL/nB31b(nL33/nL32)) : 0.84
条件(11) (nB11b(nL12)) : NA
条件(12) (νB11a/νB11b(νL11/νL12)) : NA
【0076】
図19に示したレンズシステム10は、条件(1)~(7)、(9)、(10)および(13)を満足する。また、条件(1a)、(1c)、(2a)および(7a)~(7b)を満足する。また、第2のレンズ群G2のレンズL22に異常分散レンズを採用している。このレンズシステム10においては、屈折率が1.8以上の高屈折率のレンズはL11、L23a、L23b、L31とL32の5枚となっており、比較的多くの高屈折率のレンズを採用し、諸収差を良好に補正している。
【0077】
このレンズシステム10は、無限遠にフォーカスしたときの焦点距離が65mm程度と中望遠または標準タイプの交換レンズとしての性能を備えており、Fナンバー(F値)が2.8と明るく、画角が47.6度と大きな撮像レンズを提供できる。また、
図22ないし
図24に示すように、無限遠から近距離(短距離)までのフォーカシングの全域において諸収差が良好に補正された画像を取得できる。MTF曲線においては、無限遠から近距離までのフォーカシングの全領域において、MTFの極端な低下は見られず、サジタルとタンジェンシャルとの剥離も大きくなく良好である。
【0078】
実施例5
図25にレンズシステム10の異なる例を示している。
図25(a)は、フォーカス位置が無限遠のレンズ配置を示し、
図25(b)は、フォーカス位置が最短(近距離、540mm)におけるレンズ配置を示している。
【0079】
このレンズシステム10も正-正-正のパワー配置の3群構成であり、物体側11から合成屈折力(パワー)が正の第1のレンズ群G1、絞りStを挟んで、パワーが正の第2のレンズ群G2、パワーが正の第3のレンズ群G3からなり、第3のレンズ群G3は、フォーカシングに際して像面5に対する距離は変わらずに動かず、固定されたレンズ群である。絞りStを挟んで配置された第1のレンズ群G1および第2のレンズ群G2は、フォーカシングの際に、無限遠から近距離にフォーカス位置が移動すると、一体で、物体側11に単調に移動する。
【0080】
図26に、レンズシステム10を構成する各レンズのデータを示している。
図27に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠、中間(2400mm)、最短(最接近、540mm)のときのレンズシステム10の焦点距離fと、Fナンバー(FNo.)、画角、可変間隔d12の値を示している。
図28~30に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠、中間および最短のときの諸収差(
図28(a),29(a),30(a))と、MTF(
図28(b),29(b),30(b))とを示している。
【0081】
これらの図に示したレンズシステム10は、全体が10枚のレンズ(L11~L14、L21~L23、L31~L33)からなり、各群および各レンズの基本的な構成は、第3のレンズ群G3の最も物体側11の正の屈折力のレンズL31が両凸の正レンズであり、接合レンズB31も両凸の正レンズタイプであること以外は、
図1に示した実施例1と共通する。したがって、このレンズシステム10も、全体として10枚のレンズにより構成されているが光学要素としては、4つの接合レンズB11、B12、B21およびB31と、2枚のレンズL23およびL33の6枚構成であり、接合レンズを多用することにより簡易な構成で組み立てやすいレンズシステムとなっている。
【0082】
図25に示したレンズシステム10の諸数値および各条件の値は以下の通りである。
第1のレンズ群G1の焦点距離 (f1) : 136.84
第2のレンズ群G2の焦点距離 (f2) : 80.26
第3のレンズ群G3の焦点距離 (f3) : 186.81
第1および第2のレンズ群の合成焦点距離 (f12) : 80.60
接合レンズB31の焦点距離 (f31ab) : 75.07
第3のレンズ群G3の後方のレンズL33の焦点距離 (f3GL) : -122.63
レンズシステムの全長 (WL) : 64.07
第3のレンズ群G3の全長 (G3L) : 15.97
接合レンズB31の全長 (B31L) : 13.10
条件(1) (f3/f12) : 2.32
条件(2) (B31L/G3L) : 0.82
条件(3) (nB31ab(max(nL31, nL32))) : 1.80
条件(4) (G3L/WL) : 0.25
条件(5) (|f31ab/f3GL|) : 0.61
条件(6) (|f31ab|+|f3GL|)/|f3|) : 1.06
条件(7) (nB31a(nL31)) : 1.70
条件(8) (nB31b/nB31a(nL32/nL31)) : 1.06
条件(9) (nB31b(nL32)) : 1.80
条件(10) (n3GL/nB31b(nL33/nL32)) : 0.83
条件(11) (nB11b(nL12)) : 1.83
条件(12) (νB11a/νB11b(νL11/νL12)) : 1.64
【0083】
図25に示したレンズシステム10は、条件(1)~(7)、(9)~(11)および(13)を満足する。また、条件(1c)を満足する。このレンズシステム10においては、異常分散レンズを採用しておらず、屈折率が1.8以上の高屈折率のレンズはL12、L14、L23とL32の4枚となっている。比較的多くの高屈折率のレンズを採用し、諸収差を良好に補正している。
【0084】
このレンズシステム10は、無限遠にフォーカスしたときの焦点距離が65mm程度と中望遠または標準タイプの交換レンズとしての性能を備えており、Fナンバー(F値)が2.8と明るく、画角が47.8度と大きな撮像レンズを提供できる。また、
図28ないし
図30に示すように、無限遠から近距離(短距離)までのフォーカシングの全域において諸収差が良好に補正された画像を取得できる。MTF曲線においては、無限遠から近距離までのフォーカシングの全領域において、MTFの極端な低下は見られず、サジタルとタンジェンシャルとの剥離も小さく良好である。
【0085】
実施例6
図31にレンズシステム10の異なる例を示している。
図31(a)は、フォーカス位置が無限遠のレンズ配置を示し、
図31(b)は、フォーカス位置が最短(近距離、600mm)におけるレンズ配置を示している。
【0086】
このレンズシステム10も正-正-正のパワー配置の3群構成であり、物体側11から合成屈折力(パワー)が正の第1のレンズ群G1、絞りStを挟んで、パワーが正の第2のレンズ群G2、パワーが正の第3のレンズ群G3からなり、第3のレンズ群G3は、フォーカシングに際して像面5に対する距離は変わらずに動かず、固定されたレンズ群である。絞りStを挟んで配置された第1のレンズ群G1および第2のレンズ群G2は、フォーカシングの際に、無限遠から近距離にフォーカス位置が移動すると、一体で、物体側11に単調に移動する。
【0087】
図32に、レンズシステム10を構成する各レンズのデータを示している。
図33に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠、中間(2500mm)、最短(最接近、600mm)のときのレンズシステム10の焦点距離fと、Fナンバー(FNo.)、画角、可変間隔d12の値を示している。
図34~36に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠、中間および最短のときの諸収差(
図34(a),35(a),36(a))と、MTF(
図34(b),35(b),36(b))とを示している。
【0088】
これらの図に示したレンズシステム10は、全体が10枚のレンズ(L11~L14、L21~L23、L31~L33)からなり、各群および各レンズの基本的な構成は、実施例5のレンズシステム10と共通し、光学要素としては、接合レンズを多用した構成となっている。
【0089】
図31に示したレンズシステム10の諸数値および各条件の値は以下の通りである。
第1のレンズ群G1の焦点距離 (f1) : 139.11
第2のレンズ群G2の焦点距離 (f2) : 77.96
第3のレンズ群G3の焦点距離 (f3) : 195.53
第1および第2のレンズ群の合成焦点距離 (f12) : 79.78
接合レンズB31の焦点距離 (f31ab) : 77.75
第3のレンズ群G3の後方のレンズL33の焦点距離 (f3GL) : -126.46
レンズシステムの全長 (WL) : 64.10
第3のレンズ群G3の全長 (G3L) : 15.88
接合レンズB31の全長 (B31L) : 13.10
条件(1) (f3/f12) : 2.45
条件(2) (B31L/G3L) : 0.82
条件(3) (nB31ab(max(nL31, nL32))) : 1.80
条件(4) (G3L/WL) : 0.25
条件(5) (|f31ab/f3GL|) : 0.61
条件(6) (|f31ab|+|f3GL|)/|f3|) : 1.04
条件(7) (nB31a(nL31)) : 1.70
条件(8) (nB31b/nB31a(nL32/nL31)) : 1.06
条件(9) (nB31b(nL32)) : 1.80
条件(10) (n3GL/nB31b(nL33/nL32)) : 0.83
条件(11) (nB11b(nL12)) : 1.83
条件(12) (νB11a/νB11b(νL11/νL12)) : 1.64
【0090】
図31に示したレンズシステム10は、条件(1)~(7)、(9)~(11)および(13)を満足する。また、条件(1c)を満足する。このレンズシステム10においては、異常分散レンズを採用しておらず、屈折率が1.8以上の高屈折率のレンズはL12、L14、L23とL32の4枚となっている。比較的多くの高屈折率のレンズを採用し、諸収差を良好に補正している。
【0091】
このレンズシステム10は、無限遠にフォーカスしたときの焦点距離が65mm程度と中望遠または標準タイプの交換レンズとしての性能を備えており、Fナンバー(F値)が2.8と明るく、画角が47.8度と大きな撮像レンズを提供できる。また、
図34ないし
図36に示すように、無限遠から近距離(短距離)までのフォーカシングの全域において諸収差が良好に補正された画像を取得できる。MTF曲線においては、無限遠から近距離までのフォーカシングの全領域において、MTFの極端な低下は見られず、サジタルとタンジェンシャルとの剥離も小さく良好である。
【0092】
実施例7
図37にレンズシステム10の異なる例を示している。
図37(a)は、フォーカス位置が無限遠のレンズ配置を示し、
図37(b)は、フォーカス位置が最短(近距離、590mm)におけるレンズ配置を示している。
【0093】
このレンズシステム10も正-正-正のパワー配置の3群構成であり、物体側11から合成屈折力(パワー)が正の第1のレンズ群G1、絞りStを挟んで、パワーが正の第2のレンズ群G2、パワーが正の第3のレンズ群G3からなり、第3のレンズ群G3は、フォーカシングに際して像面5に対する距離は変わらずに動かず、固定されたレンズ群である。絞りStを挟んで配置された第1のレンズ群G1および第2のレンズ群G2は、フォーカシングの際に、無限遠から近距離にフォーカス位置が移動すると、一体で、物体側11に単調に移動する。
【0094】
図38に、レンズシステム10を構成する各レンズのデータを示している。
図39に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠、中間(3000mm)、最短(最接近、590mm)のときのレンズシステム10の焦点距離fと、Fナンバー(FNo.)、画角、可変間隔d13の値を示している。
図40~42に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠、中間および最短のときの諸収差(
図40(a),41(a),42(a))と、MTF(
図40(b),41(b),42(b))とを示している。
【0095】
これらの図に示したレンズシステム10は、全体が10枚のレンズ(L11~L14、L21~L23、L31~L33)からなり、各群および各レンズの基本的な構成は、第1のレンズ群G1のレンズL13およびL14は単独で配置され、接合レンズを構成しない点を除くと実施例1のレンズシステム10と共通し、光学要素としては、3つの接合レンズB11、B21およびB31と、レンズL13、L14、L23およびL33とを含む7つの要素により構成されている。なお、本例のレンズシステム10においては、上述した面S13、S14、S15、S16およびS17はそれぞれ、面S14、S15、S16、S17およびS18に対応する。
【0096】
図37に示したレンズシステム10の諸数値および各条件の値は以下の通りである。
第1のレンズ群G1の焦点距離 (f1) : 133.84
第2のレンズ群G2の焦点距離 (f2) : 83.22
第3のレンズ群G3の焦点距離 (f3) : 194.91
第1および第2のレンズ群の合成焦点距離 (f12) : 78.33
接合レンズB31の焦点距離 (f31ab) : 88.56
第3のレンズ群G3の後方のレンズL33の焦点距離 (f3GL) : -162.41
レンズシステムの全長 (WL) : 63.10
第3のレンズ群G3の全長 (G3L) : 15.04
接合レンズB31の全長 (B31L) : 11.67
条件(1) (f3/f12) : 2.49
条件(2) (B31L/G3L) : 0.78
条件(3) (nB31ab(max(nL31, nL32))) : 2.00
条件(4) (G3L/WL) : 0.24
条件(5) (|f31ab/f3GL|) : 0.55
条件(6) (|f31ab|+|f3GL|)/|f3|) : 1.29
条件(7) (nB31a(nL31)) : 1.83
条件(8) (nB31b/nB31a(nL32/nL31)) : 1.09
条件(9) (nB31b(nL32)) : 2.00
条件(10) (n3GL/nB31b(nL33/nL32)) : 0.74
条件(11) (nB11b(nL12)) : 1.88
条件(12) (νB11a/νB11b(νL11/νL12)) : 1.75
【0097】
図37に示したレンズシステム10は、条件(1)~(7)、(9)~(11)および(13)を満足する。また、条件(1c)、(2a)、(7a)および(7b)を満足する。このレンズシステム10においては、異常分散レンズを採用しておらず、屈折率が1.8以上の高屈折率のレンズはL12、L14、L23とL32の4枚となっている。比較的多くの高屈折率のレンズを採用し、諸収差を良好に補正している。
【0098】
このレンズシステム10は、無限遠にフォーカスしたときの焦点距離が65mm程度と中望遠または標準タイプの交換レンズとしての性能を備えており、Fナンバー(F値)が2.8と明るく、画角が47.6度と大きな撮像レンズを提供できる。また、
図40ないし
図42に示すように、無限遠から近距離(短距離)までのフォーカシングの全域において諸収差が良好に補正された画像を取得できる。MTF曲線においては、無限遠から近距離までのフォーカシングの全領域において、MTFの極端な低下は見られず、サジタルとタンジェンシャルとの剥離も小さく良好である。
【0099】
実施例8
図43にレンズシステム10の異なる例を示している。
図43(a)は、フォーカス位置が無限遠のレンズ配置を示し、
図43(b)は、フォーカス位置が最短(近距離、500mm)におけるレンズ配置を示している。
【0100】
このレンズシステム10も正-正-正のパワー配置の3群構成であり、物体側11から合成屈折力(パワー)が正の第1のレンズ群G1、絞りStを挟んで、パワーが正の第2のレンズ群G2、パワーが正の第3のレンズ群G3からなり、第3のレンズ群G3は、フォーカシングに際して像面5に対する距離は変わらずに動かず、固定されたレンズ群である。絞りStを挟んで配置された第1のレンズ群G1および第2のレンズ群G2は、フォーカシングの際に、無限遠から近距離にフォーカス位置が移動すると、一体で、物体側11に単調に移動する。
【0101】
図44に、レンズシステム10を構成する各レンズのデータを示している。
図45に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠、中間(2400mm)、最短(最接近、500mm)のときのレンズシステム10の焦点距離fと、Fナンバー(FNo.)、画角、可変間隔d11の値を示している。
図46~48に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠、中間および最短のときの諸収差(
図46(a),47(a),48(a))と、MTF(
図46(b),47(b),48(b))とを示している。
【0102】
これらの図に示したレンズシステム10は、全体が8枚のレンズからなる。第1のレング群G1は、3枚構成で、物体側11に凸の正のメニスカスレンズL11と、両凸の正レンズL13と、両凹の負レンズL14とを含む。レンズL13およびL14は、物体側11に凸の負のメニスカスレンズタイプの接合レンズB12を構成する。第2のレンズ群G2は3枚構成で、物体側に凹の負のメニスカスレンズL21と、物体側11に凹の正のメニスカスレンズL22と、物体側11に凹の正のメニスカスレンズL23とを含む。レンズL21およびL22は、物体側11に凹の接合レンズB21を構成する。
【0103】
第3のレンズ群G3は、物体側11に凸の負のメニスカスレンズL31と、両凸の正レンズL32とを含み、レンズL31およびL32により両凸の接合レンズB31が構成されている。このレンズシステム10は、光学要素としては、3つの接合レンズB12、B21およびB31と、レンズL11およびL23とを含む5つの要素により構成されており、簡易な構成となっている。なお、本例のレンズシステム10においては、上述した面S13、S14およびS15はそれぞれ、面S12、S13およびS14に対応し、面S14が像面側12の最終の面S17に対応する。
【0104】
図43に示したレンズシステム10の諸数値および各条件の値は以下の通りである。
第1のレンズ群G1の焦点距離 (f1) : 142.14
第2のレンズ群G2の焦点距離 (f2) : 68.24
第3のレンズ群G3の焦点距離 (f3) : 396.85
第1および第2のレンズ群の合成焦点距離 (f12) : 72.19
接合レンズB31の焦点距離 (f31ab) : 396.85
第3のレンズ群G3の後方のレンズL33の焦点距離 (f3GL) : NA
レンズシステムの全長 (WL) : 57.86
第3のレンズ群G3の全長 (G3L) : 8.38
接合レンズB31の全長 (B31L) : 8.38
条件(1) (f3/f12) : 5.50
条件(2) (B31L/G3L) : 1.00
条件(3) (nB31ab(max(nL31, nL32))) : 1.74
条件(4) (G3L/WL) : 0.14
条件(5) (|f31ab/f3GL|) : NA
条件(6) (|f31ab|+|f3GL|)/|f3|) : NA
条件(7) (nB31a(nL31)) : 1.74
条件(8) (nB31b/nB31a(nL32/nL31)) : 0.92
条件(9) (nB31b(nL32)) : 1.60
条件(10) (n3GL/nB31b(nL33/nL32)) : NA
条件(11) (nB11b(nL12)) : NA
条件(12) (νB11a/νB11b(νL11/νL12)) : NA
【0105】
図43に示したレンズシステム10は、条件(1)、(2)、(4)、(7)~(9)および(13)を満足する。また、条件(1c)を満足する。このレンズシステム10においては、レンズL32に異常分散レンズを採用している。一方、屈折率が1.8以上の高屈折率のレンズは採用していない。
【0106】
このレンズシステム10は、無限遠にフォーカスしたときの焦点距離が65mm程度と中望遠または標準タイプの交換レンズとしての性能を備えており、Fナンバー(F値)が2.8と明るく、画角が46.8度と大きな撮像レンズを提供できる。また、
図46ないし
図48に示すように、無限遠から近距離(短距離)までのフォーカシングの全域において諸収差が良好に補正された画像を取得できる。MTF曲線においては、像高が高い領域を除き、無限遠から近距離までのフォーカシングの全領域において、MTFの極端な低下は見られず、サジタルとタンジェンシャルとの剥離も小さく良好である。