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特許7254369血管変化のためのコンピュータ支援神経内促進
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】血管変化のためのコンピュータ支援神経内促進
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/02 20060101AFI20230403BHJP
   A61B 8/06 20060101ALI20230403BHJP
   A61B 5/0285 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
A61H1/02 Z
A61B8/06
A61B5/0285 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020559541
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 US2019028593
(87)【国際公開番号】W WO2019209754
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】62/661,568
(32)【優先日】2018-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519222933
【氏名又は名称】ロマ リンダ ユニヴァーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100176418
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】バッセル マーク
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0150077(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0228019(US,A1)
【文献】特表2003-527149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
A61B 8/06
A61B 5/0285
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引装置を動作させて神経内促進(INF)のための血流パターンを検出するためのシステムであって、
1つまたは複数のプロセッサと、
プローブが被験者の1つまたは複数のエリアに配置されたときに前記被験者を1つまたは複数の位置に配置するように、前記1つまたは複数のプロセッサによって牽引を制御するための1つまたは複数の牽引装置であって前記プローブが前記被験者の1つまたは複数のエリアに適用されたときに信号を供給するために前記1つまたは複数のプロセッサに接続された、前記1つまたは複数の牽引装置と、
前記1つまたは複数のプロセッサと通信する1つまたは複数のメモリ装置であって、前記1つまたは複数のプロセッサによって実行されたときに、前記システムに、
前記被験者の第1のエリアに前記プローブが配置されたとき、および前記牽引装置が第1の位置に配置されたときに、前記プローブから、第1の信号を受け取ること、
前記受け取った第1の信号を処理して、第1の動脈から、前記被験者の1つまたは複数の神経に血流を供給する第2の動脈に供給されているときの前記血流の尺度となる第1の2Dフローパターンの第1の表示を提供すること、
前記1の2Dフローパターンに少なくとも部分的に基づいて、前記牽引装置を第2の位置に移動させ、それによって前記血流を、第1の所定の期間の間、制御すること、
前記被験者の1つまたは複数の第2のエリアに前記プローブが配置されたとき、および前記牽引装置が前記第2の位置に配置されたときに、前記プローブから第2の信号を受け取り、それによって前記血流を、第1の所定の期間の間、制御すること、
前記受け取った第2の信号を処理して、前記第1の動脈から前記第2の動脈への前記血流の尺度となる第2の2Dフローパターンの第2の表示を提供すること、ならびに
前記第1の2Dフローパターンと前記第2の2Dフローパターンを比較して、前記第2の動脈を流れる前記血流の第1の変化を決定し、それによって前記被験者の血管変化をINFを介して提供すること
を実行させる命令を含む、前記1つまたは複数のメモリ装置と
を備えるシステム。
【請求項2】
前記血流の前記決定された第1の変化が、前記第2の動脈を流れる前記血流の低下を含み、前記命令がさらに、
前記比較に少なくとも部分的に基づいて、前記牽引装置を第3の位置に移動させ、それによって前記血流を、第2の所定の期間の間、制御すること、
前記被験者の前記1つまたは複数の第2のエリアに前記プローブが配置されたとき、および前記牽引装置が第3の位置に配置されたときに、前記プローブから第3の信号を受け取ること、
前記受け取った第3の信号を処理して、前記第1の動脈から前記第2の動脈への前記血流の尺度となる第3の2Dフローパターンの第3の表示を提供すること、ならびに
前記第2の2Dフローパターンと前記第3の2Dフローパターンを比較して、前記第2の動脈を流れる前記血流の第2の変化を決定すること
を前記システムに実行させるように構成された、請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記血流の決定された前記第2の変化が、前記第2の動脈を流れる前記血流の増大を含み、前記命令がさらに、
前記比較に少なくとも部分的に基づいて、前記牽引装置を第4の位置に移動させ、それによって前記血流を変化させること、
前記被験者の前記1つまたは複数の第2のエリアに前記プローブが配置されたとき、および前記牽引装置が前記第4の位置に配置されたときに、前記プローブから第4の信号を受け取ること、
前記受け取った第4の信号を処理して、前記第1の動脈から前記第2の動脈への前記血流の尺度となる第4の2Dフローパターンの第4の表示を提供すること、ならびに
前記第1の2Dフローパターンと前記第4の2Dフローパターンを比較して、前記第2の動脈を流れる血流の前記増大を確認すること
を前記システムに実行させるように構成された、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
前記被験者の前記第1のエリアが、尺骨神経の隣の尺骨動脈を含む、請求項に記載のシステム。
【請求項5】
前記被験者の前記第1のエリアが足関節を含む、請求項に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのプロセッサで実行されたときに、
前記被験者の尺骨神経によって神経支配された遠位皮膚エリアの前記1つまたは複数の第2のエリアを決定すること
を前記システムにさらに実行させる命令を、前記少なくとも1つのメモリが含む、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の信号および前記第2の信号を処理して、少なくとも、前記第1の信号および前記第2の信号のそれぞれの血流量(VF)および拍動指数(PI)を計算するように構成された超音波機をさらに備える、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記超音波機が、前記第1のエリアおよび前記1つまたは複数の第2のエリアからのドップラー測定値を、第1の2Dフローパターンおよび前記第2の2Dフローパターンに変換するためのドップラー超音波機であり、前記変換することが、前記少なくとも1つのプロセッサで実行されたときに、
(a)前記ドップラー測定値の判別特徴を決定すること、
(b)前記判別特徴を2次元にプロットすること、および
(c)前記判別特徴が、第1の流れ状態または第2の流れ状態を表す所定のフローパターンのエリアに集積していることを判定すること
を前記システムにさらに実行させる、前記少なくとも1つのメモリの中の前記命令による、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記命令がさらに、遠位制御値と局所循環値との比を、少なくとも部分的に、前記第1の信号および前記第2の信号のそれぞれの前記計算されたVFおよびPIに基づいて導き出すことを、前記システムに実行させるように構成された、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
前記命令がさらに、前記プローブが配置された前記第1のエリアに対して遠位の1つまたは複数の神経と比較した、局所神経血管循環が1つまたは複数の標的とされた神経に影響を及ぼしている百分率を、前記導き出した比に基づいて決定することを、前記システムに実行させるように構成された、請求項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願はPCT出願であり、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている、2018年4月23日に出願された「COMPUTER-SUPPORTED INTRANEURAL FACILITATION FOR VASCULAR CHANGES」という名称の米国特許仮出願第62/661,568号の優先権および利益を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本技術は一般に神経内促進(intraneural facilitation)に関し、より詳細には、牽引装置を動作させて神経内促進のための血流パターンを検出することを対象とする方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
神経血管不全は、血管網への血液供給の低下を指し、身体系の不全または外傷などさまざまな原因を有する。例えば、神経血管不全(神経障害とも呼ばれる)は、神経内の局所毛細血管閉鎖、局所動脈内の血流低下、交感神経による動脈制御の不全、神経根の機械的損傷もしくは血管不全、または脊椎傍神経節に関連した代謝性虚血が原因で起こることがある。神経内促進(INF)治療は、損傷した神経への血流を回復するため、ならびに神経障害に伴ってしばしば生じる痛み、ヒリヒリ感、しびれおよびその他の症状を除くために一般的に使用されている。
【0004】
INF治療は、症状が識別された局所神経により多くの血液を運ぶため、または最も炎症が強いもしくは最も症状が顕著な神経を処置するために施される。例えば、人間被験者の足の血行阻止(strangulation)は、足の循環を調節する交感神経への神経血流に影響を及ぼすことがある脊椎傍神経節の虚血など、遠隔の問題によって引き起こされることがある。しかしながら、たとえ症状の近くの足の局所神経が治療されたとしても、足底神経の改善された循環が、この遠隔問題の起源である虚血下の脊椎傍神経節には到達しないことがある。したがって、神経障害を引き起こす本当の問題はINFでは解決されず、症状は再発する。
【0005】
治療を最もよく施すことができる場所をガイドするのに必要な計算およびデータの提供に関してINFを支援することができる正確なシステムが欠けている。末梢神経障害は、最も一般的には、筋電図検査法(Electromyography)(EMG)および神経伝導研究(Nerve Conduction Study)(NCS)を使用して診断されている。しかしながら、EMGは、遠隔対局所神経血管制御および大きな動脈と神経との間の関係に関するリアルタイムの情報を提供せず、INF施術に関しては役立たない。EMG解析が、神経障害を生み出している血管性虚血の存在を示すことがあるが、必要な血管計算をEMGによって生成することは実際的でないかまたは不可能である。EMGは、電気信号をモニタリングし、筋肉障害、神経障害および神経と筋肉の間の接続に影響を及ぼす障害の診断に役立つ。しかしながら、EMGが、これらの障害が神経血管系に対して有する影響を定量的に示すことはない。この影響を定量的に示すことは、INFなどの神経血管治療をガイドするのに必要である。
【0006】
さらに、足の神経障害性炎症および報告されたしびれまたは痛みが、INFの局所施術が本当の問題に対処しないことがあることを示すこともある。硬膜(脳および脊髄を包んでいる最も外側の強靭な膜)および神経根における接続を含む第1の血管トラック(track)が、静脈還流に影響を及ぼすことがあり、このことが静脈うっ血を生み出し、神経内膜毛細血管循環が、足の皮膚の毛細血管床を自由に流れることを妨げることがある。胴の近位脊椎傍神経節虚血は、虚血が、神経障害下の足の皮膚の中へ走る交感神経の機能低下または機能亢進に影響を与え、そのような交感神経の機能低下または機能亢進を生み出すことを意味する。口辺結節腫神経根衝突が、神経障害性炎症を有する足の皮膚の毛細血管に流入する感覚神経の神経内膜循環に影響を及ぼすことがある。あるいは、影響を受けるのが、足の皮膚の局所毛細血管、および足への循環の影響を受ける他の系であることもある。
【0007】
神経障害ではしばしば神経幹が影響を受け、患者は、最も悪い症状だけに気づき、危険にさらされている全ての系および神経を識別することができないことがある。臨床的な感覚検査は、求心性神経または遠位性神経の性能を示すことができるが、しばしば、血管の不具合を示すことに関して、またはどの系が血管系に影響を及ぼしているかを示すことに関して確定的でない。
【0008】
現在のところ、物理療法によってまたは装置によって神経障害に効果的かつホリスティックに対処することはできない。麻痺に至る神経障害性疼痛および神経衰弱は現在、一貫性を持って治療されていない。さらに、末梢神経障害は、捕らえどころがなく治癒不能のままである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
出願人は、上述の困難を認識し、INF治療を精密かつ正確に施して神経障害を治療するシステムおよび方法に対する満たされていない必要性が存在することを認識している。出願人は、現状技術が、神経に関する循環を測定するため、および正常な循環が存在するかどうかを数値的に測定するための客観的な方法を欠いていることを認識している。神経循環に首尾一貫した精密な影響を与えるように、血流を、遠位方向および近位方向に制御する客観的方法も欠いている。詳細な検査および解析から、出願人は、神経血流の遠位制御に失敗した場合には循環計算を使用してこの失敗を示すことができること、および症状の位置から遠く離れた問題のある神経にINFを施すことができることを認識した。これらの計算を使用して、免疫系が、大きな血管の局所血管制御に影響を及ぼしているかどうか、および局所神経が適切に循環を受け取っているかどうかを示すことができる。
【0010】
本開示は、牽引装置を動作させて神経内促進(INF)治療のための血流パターンを検出する方法の一実施形態を対象としており、この方法は、被験者の1つまたは複数のエリアに配置されたときに被験者を1つまたは複数の位置に配置するように、1つまたは複数のプロセッサによって牽引を制御するための牽引装置を提供することを含む。この方法はさらに、被験者の第1のエリアにプローブが配置されたとき、および牽引装置が第1の位置に配置されたときに、プローブから、1つまたは複数のプロセッサによって第1の信号を受け取ることを含むことができる。一実施形態では、この方法がさらに、受け取った第1の信号を、1つまたは複数のプロセッサを介して処理して、第1の動脈から、被験者の1つまたは複数の神経に血流を供給する第2の動脈に供給されているときの血流の尺度となる第1の2次元(2D)フローパターンを決定することを含むことができる。一実施形態によれば、この方法はさらに、決定された第1の2Dフローパターンに少なくとも部分的に基づいて、牽引装置を、1つまたは複数のプロセッサを介して第2の位置に移動させ、それによって血流を、第1の所定の期間の間、制御することを含むことができる。この方法はさらに、被験者の1つまたは複数の第2のエリアにプローブが配置されたとき、および牽引装置が第2の位置に配置されたときに、プローブから、1つまたは複数のプロセッサによって第2の信号を受け取ることを含むことができる。この方法はさらに、受け取った第2の信号を、1つまたは複数のプロセッサを介して処理して、第1の動脈から第2の動脈への血流の尺度となる第2の2Dフローパターンを決定することを含むことができる。一実施形態では、この方法がさらに、1つまたは複数のプロセッサを介して、第1の2Dフローパターンと第2の2Dフローパターンを比較して、第2の動脈を流れる血流の第1の変化を決定し、それによって被験者の血管変化(vascular change)をINFを介して提供することを含むことができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態によれば、この方法がさらに、比較に少なくとも部分的に基づいて、牽引装置を、1つまたは複数のプロセッサを介して第3の位置に移動させ、それによって血流を、第2の所定の期間の間、制御することを含むことができるような態様で、血流の決定された第1の変化が、第2の動脈を流れる血流の低下を含むことがある。この方法はさらに、被験者の1つまたは複数の第2のエリアにプローブが配置されたとき、および牽引装置が第3の位置に配置されたときに、プローブから、1つまたは複数のプロセッサによって第3の信号を受け取ることを含むことができる。この方法はさらに、受け取った第3の信号を、1つまたは複数のプロセッサを介して処理して、第1の動脈から第2の動脈への血流の尺度となる第3の2Dフローパターンを決定することを含むことができる。この方法はさらに、1つまたは複数のプロセッサを介して、第2の2Dフローパターンと第3の2Dフローパターンを比較して、第2の動脈を流れる血流の第2の変化を決定することを含むことができる。
【0012】
一実施形態では、この方法がさらに、比較に少なくとも部分的に基づいて、牽引装置を、1つまたは複数のプロセッサを介して第4の位置に移動させ、それによって血流を変化させることを含むことができるような態様で、血流の決定された第2の変化が、第2の動脈を流れる血流の増大を含みうる。この方法はさらに、被験者の1つまたは複数の第2のエリアにプローブが配置されたとき、および牽引装置が第4の位置に配置されたときに、プローブから、1つまたは複数のプロセッサによって第4の信号を受け取ることを含むことができる。この方法はさらに、受け取った第4の信号を、1つまたは複数のプロセッサを介して処理して、第1の動脈から第2の動脈への血流の尺度となる第4の2Dフローパターンを決定することを含むことができる。この方法はさらに、1つまたは複数のプロセッサを介して、第1の2Dフローパターンと第4の2Dフローパターンを比較して、第2の動脈を流れる血流の増大を確認することを含むことができる。
【0013】
本開示はさらに、牽引装置を動作させて神経内促進(INF)のための血流パターンを検出するためのシステムを対象としており、一実施形態によれば、このシステムは、1つまたは複数のプロセッサと、被験者の1つまたは複数のエリアに配置されたときに被験者を1つまたは複数の位置に配置するように、1つまたは複数のプロセッサによって牽引を制御するための1つまたは複数の牽引装置と、被験者の1つまたは複数のエリアに適用されたときに信号を供給するために1つまたは複数のプロセッサに接続された1つまたは複数のプローブと、1つまたは複数のプロセッサと通信する1つまたは複数のメモリ装置とを備える。一実施形態では、この1つまたは複数のメモリ装置が、1つまたは複数のプロセッサによって実行されたときに、このシステムに、被験者の第1のエリアにプローブが配置されたとき、および牽引装置が第1の位置に配置されたときに、プローブから、第1の信号を受け取ること、受け取った第1の信号を処理して、第1の動脈から、被験者の1つまたは複数の神経に血流を供給する第2の動脈に供給されているときの血流の尺度となる第1の2次元(2D)フローパターンの第1の表示を提供すること、決定された第1の2Dフローパターンに少なくとも部分的に基づいて、牽引装置を第2の位置に移動させ、それによって血流を、第1の所定の期間の間、制御すること、被験者の1つまたは複数の第2のエリアにプローブが配置されたとき、および牽引装置が第2の位置に配置されたときに、プローブから第2の信号を受け取り、それによって血流を、第1の所定の期間の間、制御すること、受け取った第2の信号を処理して、第1の動脈から第2の動脈への血流の尺度となる第2の2Dフローパターンの第2の表示を提供すること、ならびに第1の2Dフローパターンと第2の2Dフローパターンを比較して、第2の動脈を流れる血流の第1の変化を決定し、それによって被験者の血管変化をINFを介して提供することを実行させる命令を含むことができる。
【0014】
一実施形態では、血流の決定された第1の変化が、第2の動脈を流れる血流の低下を含みうる。一実施形態によれば、この命令がさらに、比較に少なくとも部分的に基づいて、牽引装置を第3の位置に移動させ、それによって血流を、第2の所定の期間の間、制御すること、被験者の1つまたは複数の第2のエリアにプローブが配置されたとき、および牽引装置が第3の位置に配置されたときに、プローブから第3の信号を受け取ること、受け取った第3の信号を処理して、第1の動脈から第2の動脈への血流の尺度となる第3の2Dフローパターンの第3の表示を提供すること、ならびに第2の2Dフローパターンと第3の2Dフローパターンを比較して、第2の動脈を流れる血流の第2の変化を決定することをシステムに実行させることができる。
【0015】
一実施形態によれば、血流の決定された第2の変化が、第2の動脈を流れる血流の増大を含みうる。一実施形態では、この命令をさらに、比較に少なくとも部分的に基づいて、牽引装置を第4の位置に移動させ、それによって血流を変化させること、被験者の1つまたは複数の第2のエリアにプローブが配置されたとき、および牽引装置が第4の位置に配置されたときに、プローブから第4の信号を受け取ること、受け取った第4の信号を処理して、第1の動脈から第2の動脈への血流の尺度となる第4の2Dフローパターンの第4の表示を提供すること、ならびに第1の2Dフローパターンと第4の2Dフローパターンを比較して、第2の動脈を流れる血流の増大を確認することをシステムに実行させるように構成することができる。
【0016】
牽引装置を動作させてINFのための血流パターンを検出する方法から収集されたデータは、INF治療の進捗および神経の治癒状態に対する洞察を提供することができる。この方法はさらに、意図された組織への循環にINF治療が成功したかどうかに関して、INFをガイドすることができることがある。さらに、この方法を使用して、患者の血管経過の程度を示すこともできる。
【0017】
本明細書の詳細な説明および添付図を読んだ後、当業者には、本開示のその他の態様および特徴が明白であろう。
【0018】
本開示の特徴および利益の一部を述べたが、その他の特徴および利益は、添付図面とともに解釈したときに、説明が進むにつれて明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】さまざまな実施形態による、筋肉を観察することによる物理療法の全般的な概要を示す図である。
図1B】さまざまな実施形態による、血流モニタリングによって提供された例示的な情報の表示を示す図である。
図2】本開示の態様による、血管変化のためのコンピュータ支援神経内促進(INF)の例を示す図である。
図3】本開示の態様における、血管変化のためのコンピュータ支援INFのさらなる詳細を示す図である。
図4A】本開示の態様による、血管変化のためのコンピュータ支援INFにおけるさまざまな血流パターンおよび関連情報の例を示す図である。
図4B】本開示の態様による、血管変化のためのコンピュータ支援INFにおけるさまざまな血流パターンおよび関連情報の例を示す図である。
図5】本開示の態様による、血管変化のためのコンピュータ支援INFの例示的な方法を示す図である。
図6】本開示の態様による、血管変化のためのコンピュータ支援INFを提供する、システム内の例示的な装置を示す図である。
図7】本開示の態様による、血管変化のためのコンピュータ支援INFのためのシステムで使用される例示的なネットワークアーキテクチャを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、好ましい実施形態に関して説明されるが、本開示をその実施形態に限定することは意図されていないことが理解されるであろう。反対に、添付の特許請求項によって定義された本開示の趣旨および範囲に含まれる可能性がある全ての代替実施形態、変更および等価物をカバーすることが意図されている。
【0021】
以下の説明では、さまざまな実施形態を説明する。説明の目的上、実施形態の完全な理解を提供するために特定の構成および詳細が記載される。しかしながら、特定の詳細なしで実施形態を実施することができることも、当業者には明白になるであろう。さらに、記載されている実施形態を不明瞭にすることがないように、よく知られた特徴は省略されたり、または単純化されたりすることがある。
【0022】
本開示のさまざまな実施形態によるシステムおよび方法は、人間または他の哺乳類の被験者の何らかの状態から生じる神経障害を管理する従来の手法で経験される上記の欠陥およびその他の欠陥のうちの1つまたは複数を解決することができる。一例では、血管変化のための神経内促進(INF)のためのコンピュータ実施方法が開示される。一実施形態によれば、このコンピュータ実施方法は、人間被験者の第1のエリアにあるプローブから第1の信号を受け取ることを含むことができる。第1の信号を処理して、第1の動脈から、人間被験者の少なくとも1つの神経に供給する第2の動脈への血流に関連した第1の2次元(2D)フローパターンを提供することができる。このようなプロセスは、第1の信号から判別特徴を識別することを含むことができる。それらの判別特徴は、2D平面に集積した速度値とすることができる。一実施形態によれば、人間被験者の第1のエリアにおいて第1の物理変化を生じさせることができる。例えば、この物理変化は、人間被験者の足関節のエリアの血流を、第1の所定の期間の間、制御するために、牽引装置を介して足関節を回旋させることを含むことができる。第1の物理変化を生じさせた後に、プローブからの第2の信号を処理することができる。第1の信号の場合と同様に、第2の信号の処理は、血流に関連した第2の2Dフローパターンを提供することができる。一実施形態によれば、この第2の2Dフローパターンは、第2の動脈を流れる血流の低減を示しうる。
【0023】
第2の2Dフローパターンは、人間被験者の1つまたは複数の第2のエリアにおいて第2の物理変化をどのように生じさせるのかを決定する際に役立つ。例えば、一実施形態によれば、人間被験者の手指などの遠位エリアを、牽引装置を介した第2の物理変化にかけることができる。この第2の物理変化は、血流を、第2の所定の期間の間、制御するように生じさせることができる。第2の物理変化を生じさせた後に、プローブからの第3の信号を処理することができる。第3の信号の処理は、血流に関連した第3の2Dフローパターンを提供することができる。一実施形態によれば、この第3の2Dフローパターンは、第2の動脈を流れる血流の増大を示しうる。牽引装置を介して、第1の物理変化を、第2の物理変化とともに、第3の所定の期間の間、維持することができる。これは、第3の2Dフローパターンから示されるとおり、第2の動脈を流れる血流を増大させうる。一実施形態によれば、完了した後、牽引装置を介して、第1の物理変化および第2の物理変化を解いて、第1の2Dフローパターンとは異なる、神経障害が管理されていることを確認する第4の2Dフローパターンを提供することができる。
【0024】
少なくとも1つの牽引システムと、上述の処理ステップを提供するために少なくとも1つのプロセッサによって実行するための命令を含むメモリとを含むことができるシステムの一実施形態も説明される。このシステムは、上述の処理ステップを、少なくとも1つの牽引システムによって生じさせた人間被検者に対する物理変化とともに使用して、第1、第2および第3の信号のそれぞれから判別特徴を生成または提供することができる。それぞれの場合の(例えば第1、第2および第3の信号の)判別特徴は、神経障害問題が識別されていることおよび神経障害問題が管理されていることの判定を支援するための、2D平面に集積した速度値とすることができる。
【0025】
さまざまな他の機能が、さまざまな実施形態において実施され得、また本明細書の他の場所で論じられ、提案されることがある。
【0026】
本明細書で使用されるとき、交感神経は一般に、そうではないと示されていない限り、意図的な行為なしで血管平滑筋を収縮させるように機能する神経を指す。神経上膜は一般に、そうではないと示されていない限り、小動脈の外エリア、外層、外チャンバまたは外側神経束を指す。神経内膜は一般に、そうではないと示されていない限り、関連神経と関連毛細血管との間で酸素が交換される神経束の内組織を指す。神経周膜は一般に、そうではないと示されていない限り、外チャンバまたは神経束と内チャンバまたは神経束との間に存在することがある強靭な分割神経組織層を指す。本明細書で使用されるとき、経神経周膜血管は一般に、そうではないと示されていない限り、神経束の外層または外チャンバ(例えば神経上膜)から神経束の内層(例えば神経内膜)に血液を運ぶ神経を指す。末梢神経系は一般に、脚および腕の神経を含み、中枢神経系は一般に、脊髄および頭部の神経を含む。本明細書で使用されるとき、小動脈は一般に、そうではないと示されていない限り、神経支配された平滑筋を少なくとも有する小さな動脈を指す。本明細書で使用されるとき、血管周囲神経叢は一般に、そうではないと示されていない限り、動脈または小動脈を取り囲み、小動脈または動脈の平滑筋を神経支配する一群の神経を指す。
【0027】
本開示は、牽引システムを使用して、人間被験者または他の哺乳類被検者の肢を標的とするように選択された少なくとも2つのエリアの牽引制御であって、次いで牽引システムをさらに制御するために使用される血流パターンを決定するための(例えば図4A,Bに示され、以下でより詳細に論じられる)介在信号処理を用いた牽引制御を提供する。その結果、本明細書に記載されたシステムおよび方法は、神経血管再生が最も必要な組織、神経、トラックおよび動脈チャンバに対処する。本発明のシステムおよび方法は、介在信号処理ステップおよび標的とされた牽引制御によって提供される制御を使用することによって、神経の特定の液圧または電気ニーズの正確なターゲティングを可能にする。本発明のシステムおよび方法は、末梢神経血管の緩徐化を間接的に生み出している、神経活動の増大に反応しない虚血性の中枢神経系(CNS)領域を識別し、標的とする。
【0028】
図1Aは、基礎状態に起因する神経障害を有する人間被験者の手および手首102A、102Bを示す部分詳細図である。図示された実施形態は、圧点104A、104Bに物理的圧力を加え、その間に、周囲の組織108内の筋肉の緊張の変化110を視覚的にモニタリングする106ことによって神経障害が自覚的に治療されることがある既知の治療方法を示している。化学療法誘発性末梢神経障害(chemothrapy-induced peripheral neuropathy)(CIPN)が、そのような1つの基礎状態であることがあり、この状態は、手および足の痛み、ヒリヒリ感および過敏を伴う進行性の状態である。この状態は、化学療法を受けている患者に起こることがある。当業者には容易に理解されることであるが、神経障害に伴って生じることがあるその他の状態は、損傷、慢性疼痛症候群および他の医学的状態を含む。圧点104は、神経障害下のエリアにそれらの点が近接するように選ぶことができる。その意図は、圧点104に圧力を加えることにより、血液を駆動して動脈112に流すことにあるが、このプロセスには成功を示すものが特になく、このプロセスは、不正確な試験ベースのプロセスとなることがある。そうではないと示されていない限り、人間被験者の部分、例えば手102A、102Bへの言及は、人間被験者全体への言及と相互に交換可能に使用される。
【0029】
図1Bは、さまざまな実施形態による、血流モニタリングによって提供された例示的な情報の表示150を示す。図1Bは、検査患者の神経障害を示す情報152、154、156、158を提供し、この情報は、拍動指数(Pulsatility Index)(PI)、血流量(volume flow)(VF)および波形を含むことができる。一例では、この情報を、人間被験者の例えば手および手首102A、102Bの圧点104A、104Bに適用されたプローブから取得することができる。このような情報は神経障害を示すが、このような情報を使用して状態を改善することが以前に企図されたりまたは理解されたりすることはなかった。具体的には、このような情報152、154、156、158は状態が存在することだけを示し、情報152、154、156、158を変化させるための指示を一切提供しない。
【0030】
図1Aに示された状態を解決するため、および図1Bに提供された情報を理解するために、本開示はシステム200を利用する。システム200の一実施形態が図2に示されている。図2は、本開示の態様による、血管変化のためのコンピュータ支援神経内促進の例を示す。図2は、牽引装置によって実施される、人間被験者の少なくとも2本の肢202A、202Bに対する一連の制御された物理変化によって、神経障害を有する人間被験者を治療することができることを示している。手および手首202A、202Bとして示されているが、当業者には容易に理解されるように、他の実施形態では、脚、足首および足などの他の肢を標的とすることができ、さらに他の例では、人間被験者の他のさまざまな他の部分を標的とすることができる。
【0031】
牽引装置によって人間被験者の肢202A、202Bに加えられるそれぞれの物理変化の間に、プローブ206を使用して、物理変化が加えられている圧点204A~Dの周囲の特定の点またはエリアにおいてデータ信号をモニタリングする。当業者には容易に理解されるように、これらの信号を処理して、収集されたデータの判別特徴を識別する。判別特徴は、とりわけ速度値を含むことができる。判別特徴は、時間次元とともに、2次元フレームに集積する。判別特徴に加えて、血流量(VF)および灌流指数(PI)をモニタリングすることもできる。一例では、圧点204A~Dに加えられる物理変化が、手202Aの遠位エリアを操作することを含むことができる。この操作は、牽引装置を介して、手指を、点204A~Dに関して曲げることを含むことができる。この物理変化は、少なくとも1つの牽引システムによって導入することができ、いくつかの例では牽引システムを機械制御することができ、または、他の例では、牽引システムを人間オペレータによって制御することができる。機械制御された牽引システムの使用は、それぞれの基準点204A~Dにおいて、全ての適用時間において、および全ての被験者に対して、一定の牽引を適用することを可能にすることができる。例えば、加えられた物理変化の量の客観的で一貫した制御を維持するために、基準点204A~Dを、互いに比例的に刺激することができる。
【0032】
図2に示された物理変化を開始する前に、人間被験者の体の別の部分に、1次物理変化を加えることができる。これは、例えば図5のプロセスフローおよび図3に示されたシステムに示されている。一実施形態によれば、1次物理変化を加えた後に、点204A、204Bのうちの1つまたは複数の点にある1つまたは複数のプローブから信号を取得することができる。点204A、204Bは、受け取った信号の表示形態処理に少なくとも部分的に基づいて選択することができる。例えば、プローブは、点204A、204Bの中に音波を発し、ドップラー効果などによって、エコー音波を、点204A、204Bを通して受け取ることができる。したがって、1つまたは複数のプローブから取得した信号は、次いでコンピュータまたは超音波装置を介した処理にかけることができる十分な情報を伝達することができる。さらに、図1Aの場合と同様に、圧点204A、204Bも、神経障害下のエリアにそれらの点が近接するように選ぶことができるが、1次物理変化後のフローパターンからの特定の指示、PIおよび流れ体積も考慮して選ぶ。あるいは、点204A、204B以外のエリアに1つまたは複数のプローブを適用することもできるが、神経障害を経験している人間被験者の特定の身体エリアの近くに(または人間被験者の特定の身体エリア内に)適用する。次いで、これらの信号からの情報を繰り返し使用して、1次物理変化とは異なる物理変化を、所望の血流に圧力が加えられて神経障害を経験している領域に流入するように調整することができる。したがって、本開示は、牽引装置によって実施される物理変化の後続の段階をガイドするために物理変化のそれぞれの段階の後に血流パターンを提供する信号を処理することによるフィードバックに基づく段階的介入手技において、血液を駆動して動脈210に流し、次いで動脈210から関連動脈に流すための方法およびシステムを提供する。
【0033】
図3は、本開示のさまざまな態様による、血管変化のためのコンピュータ支援神経内促進のさらなる詳細300を示す。当業者なら容易に理解することであるが、神経内促進は、動脈324から人間被験者302の神経系の循環への加圧された血流を誘起する。いくつかの実施形態によれば、本明細書で言及される循環は微小血管循環であることがある。図示された実施形態によれば、微小血管系は、神経338A、338Bの周囲に位置することがあり、2つのチャンバを有することがある。外チャンバ(または神経上膜)318は、外チャンバ自体および内チャンバ340に対する血流を調節するチャンバである。外チャンバは、圧力および液圧機構によって制御することができる。
【0034】
一例では、外チャンバ318に血液を運ぶより大きな動脈324から栄養血管(neutrient vesselまたはfeeding vessel)330を通して外チャンバ318に直接に血液が供給されることがある。この連続流が、外チャンバ318を通して血液をプッシュする。栄養血管330は、関節においてクラスタ状になり、コイル状に巻かれて、いずれの組織も引き裂くことなく動脈324、326と神経338A、338Bとの間の移動を可能にする。動脈と随伴する神経との間には間欠栄養血管も存在する。この外チャンバ318の内側328には、交感神経322A~C、320によって神経支配された、平滑筋を有する平滑小動脈または微小動脈326がある。図面は図解が目的であり、現時点で図面の縮尺は考慮されておらず、そのため、たとえ例えば図3で同様のサイズで描かれているとしても、当業者は、小動脈が動脈よりも細いことまたは小さいことを認識しているであろう。
【0035】
交感神経322A~C、320は、神経の外チャンバ318内の循環の液圧プッシュと内チャンバまたは神経内膜340内への循環の液圧プッシュの両方に寄与する、外チャンバ318内の血管周囲神経叢の部分である。血管330が収縮すると、栄養血管330を通って大きな動脈324へ逆戻りする還流が生じることがあり、それによって、循環は、一時的に逆行的に移動しうる。
【0036】
神経338Bの内チャンバ340への循環が生じた後、このような神経流は、液圧によってではなく電気的に制御される。外チャンバ318は、外チャンバ318に供給されている血液から直接の圧力を受けるが、内チャンバ340はそうでないことがある。内チャンバ340に対する内循環を推進するある液圧力が存在する。神経内膜340の毛細血管床の赤血球は負電荷を有し、脱分極と再分極とを経験している神経の交互作用によって部分的に前方にプッシュされる。
【0037】
脱分極を経験している神経322A~322C、320、338Bによって生み出された正電荷に一時的に引き寄せられた赤血球と負電荷を有する周囲の血球との間の複雑な関係が維持される。上述の電荷によって生み出されるプッシュおよびプルの最中の赤血球(動脈中では長方形の粒子として示される)は、神経の再分極によって解放され、位置エネルギーの解放によって前方へ加速される。この加速は、圧力の一時的な増大を生み出し、正常な毛細血管開存性を維持している間に毛細血管床に生じた可能性がある抵抗を克服するのを助ける。増大した毛細血管開存性は、無症状レベルで生じる正常な神経伝導を促進する。したがって、神経伝導は、緊張を維持するため、位置感覚に関する情報を潜在意識に提供するため、およびその他の機能のために必要である。
【0038】
神経338A、338Bがトリガまたはファイヤするためには、中央神経系(CNS)との明白な接続がなければならない。この接続は、神経内膜循環との正のフィードバックループを含む。神経への循環が良好であるほど、神経は良好に「脱分極」またはファイヤし、中央神経系との接続は良好である。このことは、より良好な神経内膜血流を促進する。隣接する動脈の神経制御は、それらの動脈内の血液循環を制御するのに決定的に重要である。局所神経によって部分的に供給されている交感神経神経叢338Aは、動脈324の平滑筋の神経誘発性収縮を提供する。次いで、平滑筋は締まり、栄養血管330から局所栄養血管への循環を強制する。神経338Bが循環を局所的に受け取るためには、栄養血管330が開存していなければ(開いていなければ)ならず、神経支配された小動脈326も開存していなければ(開いていなければ)ならない。
【0039】
上記の説明から、神経338A、338Bへの循環を維持するように働く2つの系が存在する。このような複雑な系は、適用された物理変化間のフィードバックとして機能する多数の信号処理を必要とすることなしには認識可能でない可能性がある筋緊張に対する広範囲にわたる応答を提供する。実際、信号処理の必要性は、単にプローブの適用点における流れの問題を示すだけでなく、遠位エリアに適用された、遠位エリアの領域の基準点に対する回旋に客観的に基づく追加の物理変化によって施すことができる可能な方向変更を示すフローパターンも提供する。
【0040】
外チャンバ318は保持および調節チャンバであり、液圧で駆動される。内チャンバ340は電気的に駆動される。外チャンバ318には、栄養血管330を介して血液が供給され、内チャンバ340には、外チャンバ318を介して、内部328から内チャンバの口336に血液が供給される。一例では、外チャンバ318が血管周囲神経叢を介して制御され、内チャンバ340が、神経内膜循環、機能している神経338B、および中央神経系(CNS)との無傷の接続を含む正のフィードバックループの部分である。どの神経の外チャンバ318および内チャンバ340も、より大きな微小血管循環の部分であり、閉じた系に関与する。外チャンバ318は血液成分を有し、神経338Bの局所循環に液圧を提供する。機能している神経と局所血流との間の共生関係によって正常に機能するために、神経338Bは、チャンバ318内の循環を有していなければならない。神経伝導は、CNSに対する無傷の接続または正常な神経伝導を必要とし、そうでなければ循環は停止する。
【0041】
どの神経322A~C、320、338Bにも、5つの経路またはトラックの毛細血管循環によって血液が供給される。このような経路またはトラックは、硬膜、自律神経、血管周囲、脊髄および皮膚経路またはトラックを含む。本明細書で使用されるとき、トラック1は硬膜トラックを指し、トラック2は自律神経トラックを指し、トラック3は血管周囲トラックを指し、トラック4は脊髄トラックを指し、トラック5は皮膚トラックを指す。そのため、物理変化のタイプおよび牽引システムの適用は、操作のために選択されるトラックに依存する。どの神経の両方のチャンバ318、330への循環も、ある点で調節され、それぞれの経路から毛細血管を通って流れる。それぞれの経路は、神経がより強く影響を受ける1次エリアを有する。例えば、第V脳神経または三叉神経(Cranial 5thとも呼ばれる)は、硬膜循環の影響を受ける1次神経エリアである。別の例として、内臓エリアは、自律神経経路またはトラックの影響を受け、橈骨動脈は、血管周囲経路またはトラックおよび脊髄神経に対する筋肉伸張の影響を受け、皮膚神経支配は、皮膚経路またはトラックの影響を受ける。
【0042】
それぞれの神経の循環を維持するためには、本開示の他の場所で述べた2つの系が重要である。液圧系および電気系は、適用可能な場合、動脈324内および内チャンバ340内に制御を提供する。自律神経障害に関して、欠陥を有する圧受容器は、広範囲にわたる神経障害を生み出すと判定されている。圧受容器は、自己免疫過程を通して損傷することがある。圧受容器は、一貫した交感神経緊張で圧力が維持されることを保証し、そのため、人間被験者が立っているとき、循環は、腹部または下肢に貯留しない。意図されたとおりに圧受容器が機能していないときには、広範囲にわたる神経痛が起こることがあり、その間に、遠位神経が潅流不足になることがあり、神経血圧が維持されないことがある。
【0043】
神経病理は、外または内チャンバ318、340に対する炎症または損傷による局所ミクロレベルの出来事を含みうる。神経病理は、神経322A~C、320、338Bに循環をプッシュしている動脈324の調節異常を含みうる。神経病理は、外チャンバ318の内側の小動脈326を神経支配している、栄養血管330を通して循環をプッシュすることができない小さな神経322A~Cの神経性虚血を含みうる。このような循環不全は、小動脈326を通して、または経神経周膜血管336を通って内チャンバ340内へ順方向であることがある。神経病理は、神経および血管の緩徐化を生み出す、CNSレベルにおける電気的切断を含みうる。神経病理はさらに、上述の5つの神経トラックのいずれかまたはそれぞれを含む1次エリアを含みうる。それによって、1次トラックエリアに始まる循環のパターン化された緩徐化が生み出され、追加の遠位神経性虚血が促進される。したがって、神経病理は、CNS神経性虚血を生み出し、最も遠位の毛細血管床を潅流不足にする神経圧受容器の機能不全を含みうる。
【0044】
一実施形態によれば、本INF方法およびシステムは、神経系中へ循環を加圧またはバイアスすることによって治療を開始する。これは、人間被験者の第1のエリアにあるプローブから第1の信号を受け取って、第1のエリアの神経障害など治療を必要としている状態を決定する第1のステップの後に実行することができる。第1の信号を処理して、第1の動脈から、人間被験者の少なくとも1つの神経に供給する第2の動脈への血流に関連した第1の2次元(2D)フローパターンを提供する。この第1の2Dフローパターンは、治療を必要としている状態の決定を支援する。一実施形態によれば、この方法は、人間被験者の第1のエリアの第1の物理変化を開始することを含むことができる。これは、人間被験者が心地よさを感じる範囲で関節を回旋させることによって達成することができるが、制限機能を有する牽引システム308Aの使用によって規定することもできる。この物理変化は、第1のエリアへの血流を、第1の所定の期間の間、制御するために提供することができる。例えば、第1の物理変化の結果として、随伴する動脈と一緒に神経が引っ張られることがある。これは、第1の足位置306Aから第2の足位置306Cへの足306の位置の変化で示される。被験者のもう一方の足306Bは、最初に置かれた位置にとどまる。この牽引は、機械によってまたは手によって制御することができる。機械ベースの制御では、牽引量を制限するため、INFを提供するシステムの部分として、コンピュータによってフィードバックループを適用することができる。例えば過剰な牽引を吸収し、足306Cに牽引を伝えない弾性制限によって過大な量の牽引が適用されないように、手による制御は、牽引制御で使用される材料308Aに依存することがある。
【0045】
この第1の物理変化によって、コイル状に巻かれた栄養血管はまっすぐにされ、それにより、血流を、動脈から、その動脈のより大きな開口内の神経の外層の中にバイアスする。加圧された血流は、圧点ならびにストレッチおよびホールドが、所望の神経の内チャンバの中へのより一貫した循環を誘起することを可能にし、さらに、ベルヌーイの原理を利用することにより循環を吸い上げまたは吸引する目的に神経のどの供給トラックが使用されるのかを指定する。この時点で、命令を含むメモリと命令を処理するためのプロセッサとを備える血流表示装置に接続されたプローブから、第2の信号を取得することができる。第2の信号を処理するために、分類器、ディスプレイ、コントローラおよびマイクロプロセッサを含むさまざまな構成要素が提供される。例えば、第1の物理変化を生じさせた後に、プローブからの第2の信号を処理して、検査の第1のエリアの血流に関連した第2の2Dフローパターンを提供する。この第2の2Dフローパターンは、第2の動脈を流れる血流の低減を示す。
【0046】
2次ホールドを使用して、バイアスする2次神経を識別することができる。具体的には、2次ホールドは、人間被験者の1つまたは複数の第2のエリアにおいて第2の物理変化を生じさせる。第1の物理変化の場合と同様に、第2の所定の期間の間、血流を制御するために、第2の物理変化が提供される。一例では、図3に示されているように、遠位エリアの変化に対する3つ以上の基準点を有する第2の牽引制御システム308Bによって、第2の物理変化が実施される。人間被験者302の小指が、位置(4)314Aから位置(2)314Bへの第2の物理変化にかけられる。第2の所定の期間に基準変化を提供して、基準位置(5)314E、基準位置(3)314Dまたは基準位置(1)314Cのところに手指を保持するのに、牽引制御システム308Bが適用可能である。この例では、尺骨神経の隣の尺骨動脈が単相性であり、局所神経虚血および血流を押し出す増大した抵抗により、動脈から神経に流入する循環はない。
【0047】
第2の物理変化314A~314Eに伴い、プローブから第3の信号を取得する。第3の信号の処理は、血流に関連した第3の2Dフローパターンを提供する。第3の2Dフローパターンは、第2の動脈を流れる血流の増大を示す。血流が増大しても、(第2の信号の処理に依存する)超音波上の第3の2Dフローパターンは、動脈の不十分な制御も明らかにし、動脈に流入する血液を制御する循環の乾燥によるより弱い力での動脈の低下した制御を示し、神経が十分に機能しておらず、随伴する動脈の制御が不十分であることを示す。したがって、神経の中へ血液を弱くプッシュしている近くの動脈から、神経は血液を受け取っていない。左尺骨神経の周囲のリンパ管および皮膚を通して循環を運ぶために、第3の2Dフローパターンがさらなる改善を必要としていると判定されたとき、第2の物理変化は、第1のエリアを担当している経路またはトラックを通して循環を運ぶためにさらなる変化を含むことができる。したがって、第2の動脈を流れる血流の増大が示されたときに、上記のINFプロセスは、の第3の所定の期間の間、第1の物理変化および第2の物理変化を維持する。人間被験者の器官の自律神経に血液が運ばれた後、血液をさらに、追加の第2の物理変化によって、皮膚の交感神経に液圧でまたは段階的に送る。第1の物理変化および第2の物理変化を解いて、第1の2Dフローパターンとは異なる第4の2Dフローパターンを提供する。第4の2Dフローパターンは、少なくとも第1のエリアの改善された血流を示し、それによって以前に第1のエリアで判定された神経障害状態を改善する。
【0048】
上記の第1の物理変化に加えて、第1のエリアのさらなる物理変化によって、人間被験者の1つまたは複数の第2のエリアで実施される第2の物理変化を規定することができる。例えば、牽引制御システム308Aを制御することによって、外神経系全体の血流の加圧を提供することができる。一実施形態によれば、これが、ストラップ308Aを用いて人間被験者の足を引っ張って310、位置306Cにある足をさらに回旋させることを含むことができる。いくつかの実施形態では、人間被験者302が支持台304上にうつぶせになり、その間に、治療を施す。脊椎の下に1つまたは複数の丸めたタオルまたは当て物を置くことによって、さらなる物理変化を実施することができる。これらの丸めたタオルは、加圧された血流が、円を描いて、または脊椎関節を神経支配している交感神経内の正のフィードバックループ内で移動することを可能にする可能性がある。第2の物理変化は、自律神経系の神経に関連した毛細血管内の吸引を生み出すことができる。これらの追加の第2の物理変化を提供するための決定は、それぞれの物理変化の後、および特定の指標、すなわち後退または接近しているPI、ピーク、流れ体積および速度点が信号から取得された後に処理された信号から受け取ったフィードバックの特定の結果である。
【0049】
タオル、足の回旋および遠位手指のストレッチに加えて、またはこれらの代わりに、人間被験者の後頭部の下に置かれた当て物および人間被験者の頭部エリアに取り付けられたウエイトの付いたアンクルウエイト牽引システムによって、第2の物理変化を実施することもできる。一実施形態によれば、このウエイトを、額エリアに取り付けられた1ポンドのウエイトとすることができる。このウエイトは、硬膜を神経支配している主神経を変形させ、加圧された循環が(例えば静脈循環を助けるために)この血管路を通って移動することを可能にするであろう。他の全ての経路および路のための循環は、本明細書に記載された2つのトラックの方へバイアスされる。これは、加速された正のフィードバックループを提供し、圧力の低減を生み出し、毛細血管の血流速度を増大させる。さらに、第1および第2の物理変化に関して、人間被験者のバイアスされてない2つのトラックに適用されるサブホールドまたは圧点を交互にすることによって、さらなる調整を実施することができる。これらの調整は、トラック1およびトラック2の中に引っ張られている循環の方向を変えるのに役立つことがある。尺骨神経によって神経支配された最も遠位の皮膚エリアにある治療エリアに、2次ホールドまたは第2の物理変化を提供することができる。例えば、手指または手の緊張変化を規定するプローブ信号からのフローパターンに応じて、支持トラックおよび手指が弱くなりまたはもたついたときに、第2の物理変化はさらに、循環がより強い器官により近いシーケンスを含むことができる。
【0050】
第3の2Dフローパターンに応じて筋緊張の変化が近位で改善された後、第2の物理変化のうちの最初の1つの変化を規定した最初の2次ホールドに再び注意を向けることができる。その意図は、循環が最初の2次ホールドまで回復されたかどうかを判定することである。触診および筋肉変化を使用するなどによって牽引および介在信号態様をサポートするために、本明細書のINFシステムおよび方法はさらに、感覚系を組み込む。改善が示されないときには、内臓などの他のトラックを調査して、循環が皮膚を通して下がっているかどうかを判定することができる。調査した後、器官の隣の変化を、第2の2Dフローパターンの一部としてモニタリングし、より良好な流れが示されたときに、第2の物理変化に対処することができる。このプロセスは、本質的に、少なくとも皮膚エリアにおける循環の意図された目標により近いINFの循環改善態様を示す。したがって、筋緊張変化および腫脹低減をモニタリングすることによって、感覚系のサポートが提供される。さらに、足指に部分的な抵抗が存在し、関心のエリアまたは2次ホールドのエリアの膨張が低減されたときには(すなわち第2の物理変化のうちの少なくとも1つの変化が適用された場合には)、超音波を繰り返して、第1の2Dフローパターン(例えば流れが低下したまたは流れがない状態)とは異なる(例えば改善された流れを示す)第4の2Dフローパターンを確認することができる。
【0051】
図4A,Bは、本開示の態様による、血管変化のためのコンピュータ支援神経内促進におけるさまざまな血流パターンおよび関連情報402~416の例400を示す。図4A,Bのグラフィカルユーザインタフェース(GUI)には、本INF方法の2つの態様が提供されている。このGUI表示では、水平線418よりも上方の処理された信号点によって動脈の神経制御が行われる。動脈循環の神経受容性は、この線418よりも下方に発生する。交感神経虚血は、波形を変化させて、波形のピークの鋭さを低減させる。PI値402は、そのときに動脈を流れている血液の量の交感神経制御の程度として提供された情報値または尺度として示されている。血流量404は、動脈を通って脈動している血液の量の尺度となる。高い血流量は、隣接して神経抵抗があり、神経のより小さな小動脈が血流を受け取っていないことを示している。低いPIおよび高い血流量は、単相性波形を有する患者では一般的である。したがって、4つの四分区間表示のうちの上の2つの四分区間は、INF治療前の血流パターンおよび関連情報を提供する。参照符号402は、低いPI値(4.48)を提供し、参照符号404は、低い流れ体積(15.3cc/分)を提供し、波形は、参照符号406の低減されたピークを示しており、線418よりも下方に示されている動脈循環の1~0の神経受容性408を示している。動脈循環のこの神経受容性は、プローブから後退しているときにプローブによってピックアップされた速度を暗示する後退している速度値の結果であることがあり、水平線よりも上方の速度は、プローブに向かって移動しているときにピックアップされた速度である。したがって、後退している速度値および増大している速度値は、プローブから受け取った速度データの2つのタイプの集積を識別するためだけに提供されていることを当業者は認識するであろう。
【0052】
対照的に、4つの四分区間表示のうちの下の2つの四分区間は、INF治療後または治療中の血流パターンおよび関連情報を提供する。図示された実施形態によれば、参照符号414は、より高いまたは改善されたPI値(9.74)を提供し、参照符号412は、より低いまたは改善された流れ体積(7.10cc/分)を提供し、波形は、基準符号410で突出したピークを示しており、線418よりも下方に示されている動脈循環の少なくとも2を超える神経受容性416を示している。低下した血流量412は、神経に流入しなかった高い循環408と比較して改善された、神経に流入する循環を、フローパターン410が示していることを示している。
【0053】
図5は、本開示の態様による、血管変化のためのコンピュータ支援神経内促進の例示的な方法500を示す。このコンピュータ実施方法は、人間被験者の第1のエリアにあるプローブから第1の信号を受け取るサブプロセス505を含む。サブプロセス510では、第1の信号を処理して、第1の動脈から、人間被験者の少なくとも1つの神経に供給する第2の動脈への血流に関連した第1の2次元(2D)フローパターンを提供する。このようなプロセスは、第1の信号から判別特徴を識別することを含むことができる。一実施形態によれば、それらの判別特徴を、2次元平面に集積した速度値とすることができる。サブプロセス515は、人間被験者の第1のエリアにおいて第1の物理変化を生じさせることを含むことができる。例えば、この物理変化は、人間被験者の足関節のエリアの血流を、第1の所定の期間の間、制御するために、足関節を回旋させることを含むことができる。サブプロセス520は、第1の物理変化を生じさせた後に、プローブからの第2の信号を処理することを含むことができる。第1の信号の場合と同様に、第2の信号の処理は、血流に関連した第2の2Dフローパターンを提供する。図示された実施形態によれば、この第2の2Dフローパターンが、第2の動脈を流れる血流の低減を示す。
【0054】
第2の2Dフローパターンからのデータは、サブプロセス525で、人間被験者の1つまたは複数の第2のエリアにおいて第2の物理変化を生じさせるのに役立つ。例えば、人間被験者の手指などの遠位エリアを第2の物理変化にかけることができる。この第2の物理変化は、血流を、第2の所定の期間の間、制御するために生じさせる。サブプロセス530は、第2の物理変化を生じさせた後に、プローブからの第3の信号を処理することを含むことができる。第3の信号の処理は、血流に関連した第3の2Dフローパターンを提供する。図示された実施形態によれば、この第3の2Dフローパターンが、第2の動脈を流れる血流の増大を示す。サブプロセス535では、第1の物理変化を、第2の物理変化とともに、第3の所定の期間の間、維持することができる。これは、第3の2Dフローパターンから示されるとおり、第2の動脈を流れる血流を増大させうる。一例では、図4A,Bを参照して説明したとおり、流れ体積の低下が、PI情報および波形パターンとともに、第2の動脈を流れる血流の増大を示す。サブプロセス540は、第2の動脈を流れる血流の増大を、第3の信号に従って確かめる。確認した後、サブプロセス545は、第1の物理変化および第2の物理変化を解いて、第1の2Dフローパターンとは異なる、神経障害が管理されていることを確認する第4の2Dフローパターンを提供することを含む。血流の増大が確認されない場合には、サブプロセス545に進んで第1および第2の物理変化を解くのに十分な血流の増大が観察されるまで、維持するサブプロセス535を継続する。
【0055】
本開示の全体を通じて論じられるINF治療は、神経小動脈への圧力が弱い動脈の障害が生じた交感神経制御および炎症を起こした神経小動脈を含む、神経の問題が対処されることを保証する。実際に、このINF治療は、介在信号確認を含む特定の誘導された牽引制御システムを使用して、動脈から交感神経に血流を運び、それによって動脈および神経に対して外因性の動脈を制御する。これは、皮膚の交感神経を通る、器官から皮膚の末梢神経への血管経路を生み出す。介在信号データを、分類器またはドップラー超音波などの超音波機に送信することができる。それらの信号を処理して、流れ体積、PI、および水平線の上かまたは下かの分類のための波形を決定し、波形のピーク形状から情報を提供する。不十分な動脈収縮性および循環の低下した神経受容性を有する動脈の血流は改善され、それによって動脈収縮性は改善し、循環の神経受容性は増大する。
【0056】
図6は、本開示の態様による、血管変化のためのコンピュータ支援神経内促進を提供する、システム内の例示的な装置600を示す。具体的には、装置600には、例示的な一組の構成要素602~618が提供されている。したがって、一実施形態によれば、装置600を、図2の例の装置212とすることができる。一例では、装置600を、本開示に基づいて開発された機能を有する超音波機とすることができる。例えば、この開発された機能は、超音波機が、前の例で参照した第1、第2、第3および第4の信号のそれぞれからの判別特徴を識別および処理することを可能にする。したがって、超音波機600は、マイクロプロセッサ602、分類器610および信号変更要素612が、第1、第2および第3の信号のそれぞれから判別特徴を生成または提供するための命令をメモリ604内に含む。第1、第2および第3の信号のそれぞれの判別特徴は、神経障害問題が識別されていることおよび神経障害問題が管理されていることの判定を支援するための、2次元平面に集積した速度値を含むことができる。
【0057】
図示された例示的な装置600は、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)もしくはフラッシュメモリまたは他の同種の選択肢などの装置上の物理メモリ604に記憶された命令を実行するための少なくとも1つの主マイクロプロセッサ602を含む。当業者には明白なことであろうが、装置600はさらに、ハードディスクまたは固体状態メモリなど、装置のデータストレージまたはメモリ604として機能する多くのタイプのメモリ、データストレージまたはコンピュータ可読媒体を含むことができる。(メモリ604とは別個の)追加のデータストレージによって、少なくとも1つのマイクロプロセッサ602が実行するためのアプリケーション命令を記憶することができ、それらの命令は次いで、装置600を動作させるため、必要に応じてメモリ604にロードされる。マイクロプロセッサ602はさらに、処理のためのデータおよび命令を一時的に記憶するためにいくつかの実施形態で使用される内部メモリを有することができる。装置600はさらに、他の装置との情報の共有に役立つ(メモリ604の部分としてのまたはメモリ604とは別個の)取外し可能なメモリをサポートすることができる。装置はさらに、装置に電力を供給するための1つまたは複数の電源構成要素616を含むことができる。当業者には容易に理解されることであるが、電源構成要素は、例えば、再充電可能バッテリ、内部電源もしくは外部電力を受け取るためのポート、または他の同種の選択肢を使用して装置に電力を供給するためのバッテリ区画を含むことができる。
【0058】
このコンピューティング装置は、タッチスクリーン、有機発光ダイオード(OLED)もしくは液晶ディスプレイ(LCD)などの少なくとも1つのタイプのディスプレイ要素606を含むこと、または通信することができる。いくつかの装置は、多数のディスプレイ要素を含むことができ、さらにLED、プロジェクタおよび他の同種のものを含むことができる。この装置は、少なくとも1つの通信またはネットワーキング構成要素614を含むことができ、さまざまなタイプのデータの送受信または他の電子通信を可能にすることができる。この通信は、インターネット、イントラネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、5Gもしくは他のセル方式ネットワーク、またはWi-Fiネットワークなどの任意の適切なタイプのネットワークを介して実施することができ、あるいは、とりわけBLUETOOTH(登録商標)またはNFCなどの伝送プロトコルを利用することができる。この装置は、ユーザまたは他の源から入力を受け取ることができる少なくとも1つの入力要素618を含むことができる。この入力装置は、例えば、ボタン、ダイヤル、スライダ、タッチパッド、ホイール、ジョイスティック、キーボード、マウス、トラックボール、カメラ、マイクロホン、キーパッドまたは他のこのような装置もしくは構成要素を含むことができる。いくつかの実施形態ではさらに、無線リンクまたは他のこのようなリンクによってさまざまな装置を接続することができる。装置または物理入力機構と接触する必要なしにユーザが装置を制御することができるように、いくつかの実施形態では、視覚コマンドと音声コマンドの組合せによって、または身振りによって装置を制御することも考えられる。さらに、装置600は、ドップラー音声信号などの信号を提供および受信するためのプローブ送信器/受信器要素608を含むことができる。有効な例では、ドップラー信号を、血流速度が高いときには高い音を提供し、速度が低いときは低い音を提供する音声信号に変換することもできる。分類器610は、音声信号の判別特徴を分類するため、またはドップラー可聴音から直接に判別特徴を分類するためのニューラルネットワーク分類器とすることができる。判別特徴は、フーリエ変換された音声信号、または音声信号から提示された無変換の速度値とすることができる。
【0059】
さまざまな実施形態とともに利用される機能の多くは、コンピューティング環境で機能させることができ、そのコンピューティング環境は、サービスプロバイダもしくはサービスエンティティによって運営されているもの、またはサービスプロバイダもしくはサービスエンティティのためのものであってもよい。その代わりに、またはそれに加えて、専用コンピューティングリソースまたはクラウド環境の部分として割り振られたリソースが存在してもよい。図7は、本開示の態様による、血管変化のためのコンピュータ支援神経内促進のためのシステムで使用される例示的なネットワークアーキテクチャまたは環境700を示す。さらに、例示的なネットワークアーキテクチャまたは環境700を使用して、INF治療プロセスを共有すること、またはINF治療プロセスを遠隔的に制御することもできる。リソースは、いくつかのオペレーティングシステムおよびアプリケーションのうちの任意のオペレーティングシステムまたはアプリケーションを利用することができ、任意の数のワークステーションまたはサーバ702、704を含むことができる。とりわけTCP/IPまたはFTPなどの市販のさまざまなプロトコルのうちのいずれかのプロトコルを使用した通信をサポートするために、さまざまな実施形態が、少なくとも1つのクラウドまたはインターネットベースのネットワーク706を利用することができる。他の例示的なネットワーク706は、例えば、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、仮想専用ネットワーク、インターネット、イントラネットおよびこれらのさまざまな組合せを含む。サーバ712を使用して、分類器610の部分などの提供物のホストを務めることができる。このことは、システムの正確さを向上させるための試験ニューラルネットワークまたは訓練ニューラルネットワークを提供するための分類器の再訓練を可能にする。一例では、疾患を有する患者の波形を識別した後に、ネットワークを訓練するための波形値または波形点を記憶する。INF治療を施した後、第2のネットワークを訓練する目的に使用することができる新たな値または点の形態で、波形の改良が提供される。次いで、将来の人間被験者について、これらの2つのネットワークに対して人間被験者を試験して、将来の人間被験者のそれぞれから取得された波形がどこに分類されるのかを決定する。その分類が正常な血流パターンを示しているとき、その人間被験者の状態は肯定的であり、治療を必要としないと判定される。さらに、その分類が、神経障害状態が存在することを示している場合には、少なくとも、第2の物理変化の後に取り出された第3の信号が第2のネットワークに分類されるまで、人間被験者にINF治療が施される。
【0060】
ニューラルネットワークプロセスは、データ集約的な複雑なプロセスであるため、分類器または分類器718の部分をサーバ712から操作することができる。INF治療のそれぞれのセッションのためのデータは暗号化し、状態の重症度の指示以外は匿名で、データストレージ714に記憶することができる。セッション情報716は、進行中のINF治療に対して有用であり、セッションが完了した後に、セッション情報716からデータストレージ714にデータを移動させることができる。次いで、分類器718を改良するため、このデータを分類器に移動させることができる。一例では、ニューラルネットワークに加えて、サポートベクトルマシン(support vector machine)(SVM)またはk近傍アルゴリズムを使用することができる。ニューラルネットワークの場合と同様に、プローブから受け取った信号の音声バージョンから、フーリエ変換および線形予測係数を含むピッチまたは他の特徴を抽出することができる。これらの特徴は、データを訓練、またはクラスタに分類するために使用される。
【0061】
サーバ708、710、712によって実行される機能は、ユーザ装置702、704からのリクエストに応答してプログラムまたはスクリプトを実行するように構成された命令によって実行することができる。このようなプロセスは、適切な任意のプログラミング言語で書かれた1つまたは複数のスクリプトまたはプログラムとして実施することができる1つまたは複数のアプリケーションを実行することを含むことができる。データリクエストに応え、他のこのような操作を実行するために、サーバ708、710、712はさらに、1つまたは複数のデータベースサーバを含むことができる。環境700はさらに、上で論じたさまざまなデータストアならびに他のメモリおよびストレージ媒体のうちのいずれかを含むことができる。コンピュータ化された装置をシステムが含む場合、そのような装置はそれぞれ、バスまたは他のこのような機構を介して電気的に結合されていてもよいハードウェア要素を含むことができる。当業者には容易に理解されることであるが、例示的な要素は、以前に論じたとおり、少なくとも1つの中央処理ユニット(CPU)および1つまたは複数のストレージ装置を含み、この1つまたは複数のストレージ装置は、ディスクドライブ、光学ストレージ装置および固体状態ストレージ装置、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)またはリードオンリーメモリ(ROM)、ならびに取外し可能媒体装置、メモリカード、フラッシュカードなどである。このような装置はさらに、装置の少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な命令を記憶するための1つまたは複数のコンピュータ可読ストレージ媒体を含み、または利用することができる。例示的な装置はさらに、オペレーティングシステムおよびさまざまなアプリケーションプログラムを含む、メモリ内に位置するいくつかのソフトウェアアプリケーション、モジュール、サービスまたは他の要素を含むことができる。代替実施形態は、上に記載したものの多数の変形物を有することができることを理解すべきである。
【0062】
本明細書で論じ、示唆したさまざまな目的のために、さまざまなタイプの非一時的コンピュータ可読ストレージ媒体を使用することができる。これは例えば、さまざまな動作をシステムに実行させるために少なくとも1つのプロセッサが実行することができる命令またはコードを記憶することを含む。これらの媒体は、揮発性および不揮発性メモリを含むさまざまなタイプの媒体のうちの任意の媒体に対応しうる。いくつかの実施態様では、この揮発性および不揮発性メモリが取外し可能であってもよい。これらの媒体は、さまざまなコンピュータ可読命令、データ構造体、プログラムモジュールおよび他のデータまたは内容を記憶することができる。媒体のタイプは、例えば、RAM、DRAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、固体状態メモリおよび他のメモリ技術を含む。他のタイプのストレージ媒体は、光学(例えばBlu-Rayもしくはディジタルバーサタイルディスク(DVD))ストレージもしくは磁気ストレージ(例えばハードディスクもしくは磁気テープ)または他の同種の選択肢を含むことができるような、他のタイプのストレージ媒体を使用することもできる。本明細書に提供された開示および教示に基づいて、当業者は、さまざまな実施形態を実施するための他の手段および/または方法を理解するであろう。
【0063】
一実施形態では、図7の環境を、1つまたは複数のコンピュータネットワークまたは直接接続を使用し、通信リンクを介して相互接続されたいくつかのコンピュータシステムおよび構成要素を利用する分散コンピューティング環境とすることができる。しかしながら、このようなシステムは、記載された構成要素よりも少数のまたは多数の構成要素を有するシステムにおいても等しく良好に動作することができることを当業者は理解するであろう。したがって、本明細書におけるさまざまなシステムおよびサービスの描写は、本質的に例示のためのものであると解釈すべきであり、本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0064】
さまざまな態様を、サービス指向アーキテクチャの部分など、少なくとも1つのサービスまたはウェブサービスの部分として実施することができる。ウェブサービスなどのサービスは、SOAP(「シンプルオブジェクトアクセスプロトコル(Simple Object Access Protocol)」に由来する)などの適切なプロトコルを使用して交換されるエクステンシブルマークアップランゲージ(extensible markup language)(XML)フォーマットのメッセージを使用するなど、適切な任意のタイプのメッセージ交換を使用して通信することができる。このようなサービスによって提供または実行されるプロセスは、ウェブサービスデスクリプションランゲージ(Web Services Description Language)(WSDL)などの適切な任意の言語で書くことができる。WSDLなどの言語の使用は、さまざまなSOAPフレームワークのクライアント側コードの自動生成などの機能を可能にする。
【0065】
サーバを利用する実施形態では、サーバが、HTTPサーバ、FTPサーバ、CGIサーバ、データサーバ、Javaサーバおよびビジネスアプリケーションサーバを含むさまざまなサーバまたは中間層アプリケーションのうちの任意のサーバまたは中間層アプリケーションを走らせることができる。サーバはさらに、Java(登録商標)、C、C#もしくはC++、または任意のスクリプト言語、例えばPerl、Python(登録商標)もしくはツールコマンドランゲージ(Tool Command Language)(TCL)、およびこれらの組合せなどの任意のプログラミング言語で書かれた1つまたは複数のスクリプトまたはプログラムとして実施することができる1つまたは複数のウェブアプリケーションを実行するなどによって、ユーザ装置からの応答リクエストの中のプログラムまたはスクリプトを実行することができることがある。 サーバはさらに、限定はされないが、Oracle(登録商標)、Microsoft(登録商標)、Sybase(登録商標)およびIBM(登録商標)から市販されているものを含むデータベースサーバを含むことができる。
【0066】
この環境は、上で論じたさまざまなデータストアならびに他のメモリおよびストレージ媒体を含むことができる。これらは、1つもしくは複数のコンピュータに対して局所の(および/または1つもしくは複数のコンピュータ内に存在する)ストレージ媒体上、あるいはネットワーク全体にわたるいずれかもしくは全部のコンピュータから遠隔のストレージ媒体上など、さまざまな位置に存在することができる。特定の一組の実施形態では、情報が、当業者に知られているストレージエリアネットワーク(storage-area network)(「SAN」)内に存在することができる。同様に、コンピュータ、サーバまたは他のネットワーク装置に属する機能を実行するのに必要な任意のファイルは、適宜、局所的におよび/または遠隔的に記憶することができる。システムがコンピュータ化された装置を含む場合、そのような装置はそれぞれ、バスを介して電気的に結合されていてもよいハードウェア要素を含むことができ、それらの要素は、例えば、少なくとも1つの中央処理ユニット(CPU)、少なくとも1つの入力装置(例えばマウス、キーボード、コントローラ、タッチスクリーンまたはキーパッド)、および少なくとも1つの出力装置(例えばディスプレイ装置、プリンタまたはスピーカ)を含む。このようなシステムはさらに、1つまたは複数のストレージ装置を含むことができ、この1つまたは複数のストレージ装置は、ディスクドライブ、光学ストレージ装置および固体状態ストレージ装置、例えばランダムアクセスメモリ(「RAM」)またはリードオンリーメモリ(「ROM」)、ならびに取外し可能媒体装置、メモリカード、フラッシュカードなどである。
【0067】
このような装置はさらに、コンピュータ可読ストレージ媒体リーダ、通信装置(例えばモデム、ネットワークカード(無線または有線)、赤外線通信装置など)、および上述の作業メモリを含むことができる。コンピュータ可読ストレージ媒体リーダは、遠隔、局所、固定および/または取外し可能ストレージ装置、ならびにコンピュータ可読情報を一時的におよび/またはより恒久的に含み、記憶し、送信し、取り出すためのストレージ媒体を表すコンピュータ可読ストレージ媒体に接続することができ、またはこのようなコンピュータ可読ストレージ媒体を受け取るように構成することができる。このシステムおよびさまざまな装置はさらに、少なくとも1つの作業メモリ装置内に位置する、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラム、例えばクライアントアプリケーションまたはウェブブラウザを含む、いくつかのソフトウェアアプリケーション、モジュール、サービスまたは他の要素を含むことができる。代替実施形態は、上に記載したものの多数の変形物を有することができることを理解すべきである。例えば、カスタマイズされたハードウェアを使用することもでき、かつ/または特定の要素を、ハードウェア、ソフトウェア(アプレットなどのポータブルソフトウェアを含む)またはその両方で実施することができる。さらに、ネットワーク入力/出力装置などの他のコンピューティング装置への接続を使用することもできる。
【0068】
単一のニューロンに課される血管制限は複雑であり、遠位および近位の神経血管循環の調節および促進に関与する多数の系を含む。これらの系は、遠位または近位の危険にさらされた血管系を有することがあり、これが、近位と遠位の両方の調節系の機能低下または機能亢進を通して、局所と遠位の両方で循環に影響を及ぼすことがある。
【0069】
近位にまたは遠位においてどの系が危険にさらされているのか、および超音波プローブの周囲のどの神経が影響を受けたのかを識別するのに、超音波画像化は決定的に重要である。すなわち、超音波画像化は、標的とされている神経循環に影響を与える系、および超音波プローブに対して近位の神経血管構造体で起こっている虚血のレベルを識別する。
【0070】
INF治療を施すためのコンピュータ実施方法の一実施形態によれば、この方法は、人間被験者の第1のエリアにあるプローブから第1の信号を受け取ることを含む。この方法はさらに、第1の信号を処理して、第1の2次元(2D)フローパターンを提供することを含む。この第1の2次元(2D)フローパターンは、どの神経血管構造体が最も影響を受けているのか、および局所または遠位のどの調節系に対処する必要があるのかに関する情報を提供する。超波形および拍動性の解析を伴う音波画像化は、治療を開始すべき場所に関するガイダンスをINFに提供する。
【0071】
INFは、神経障害性疼痛を治療する際の2つの特定の選択肢を提供する。選択肢は、(1)どの神経構造体が最も影響を受けており、治療を必要としているのかを決定すること、および(2)循環が特定のエリアに到達することを妨げているどの血管系に対処する必要があるのかを決定することである。例えば、誤った神経が標的とされた場合には、治療する必要性に劣る虚血部位が選ばれて影響を受けている神経が無視されたときに、毛細血管は閉じたままになる可能性がある。したがって、誤ったトラック系が標的とされた場合、特定の神経の循環不足の原因となっている血管トラックは閉じたままになるか、または機能不全に陥り、治療過程が逆転する可能性がある。
【0072】
下表は、血管部位における4つの超音波読みを記載した表である。
【表1】
【0073】
超音波グラフの最上部は、順行(anterograde)と呼ばれる。順行は、超音波の視野に入る血管の収縮性および全血流量を記述する。超音波は、動脈内の超音波から遠ざかっている循環を見ている。
【0074】
超音波グラフの最下部は、循環が神経に入った後に動脈上の超音波の視野に戻ってくる血流量を記述する。さらに、超音波グラフの最下部は、超音波の視野に戻る流れの拍動性を記述する。グラフの最下部は、動脈からの循環に対する神経毛細血管の受容性に関して最も信頼できる指示を提供することができる。
【0075】
神経による動脈の体積制御(順行波形ならびにPIおよび血流量とともに超音波グラフの最上部に示されている)および神経毛細血管に流入する循環の神経受容性(血流量および拍動指数を用いた逆行波形解析によって示されている)は、神経構造体循環内の神経性虚血および酸素化に関する有益な情報を提供する。神経性虚血は、神経障害治療にとって固有かつ決定的である。
【0076】
低下した順行拍動性は、超音波プローブの部位における循環に影響を及ぼす交感神経の神経制御の程度および島皮質の生存能力を反映する。超音波プローブの部位の増大した血流量は、動脈に循環が残っていて超音波ヘッドの部位の血流量が増大するようにして、神経毛細血管が閉鎖したことを示している可能性がある。超音波プローブの部位の低下した血流量は、免疫活性化に伴うヒスタミン放出および神経毛細血管床中への低減された液圧を示している可能性がある。
【0077】
本開示の一実施形態によれば、上記の超音波読みを使用して、最も危険にさらされた神経系および治療のための要件を決定することができる。さらに、本開示の実施形態で説明した統計プログラムに超音波読みを送信することができる。この統計プログラムは、評価中の神経(変換器が置かれた位置の真下の神経)に影響を及ぼす、関連する系それぞれのデータを生成することができる。より高い数値は、INF治療を必要としているより多くの神経を示している可能性がある。
【0078】
超音波ガイダンス下で、INFは、下表2に示されているような大きな下肢神経、上肢神経および神経根に対処することができる。
【表2】
【0079】
統計プログラムを使用して、超音波読みの全ての成分を解析し、虚血に対する数値を生み出すことができる。一般に、低下した順行拍動性は、自律神経および硬膜の虚血を示す。
【0080】
順行血流量の問題に対処するために、INFが、島治療による中立クリアリング(neutral clearing)に対処する必要があることがある。サブホールドを使用してこの系を通る循環をバイアスするように、INF戦略を設計することができる。
【0081】
本開示の実施形態は、以下の実施例を参照することによってさらに理解することができる。
【実施例
【0082】
(実施例1)
順行/逆行波形の統計解析
本開示の実施形態では、人間被験者の圧点にプローブを適用する。圧点は、神経障害下のエリアに近接するように選ぶことができる。
【0083】
人間被験者の圧点へのプローブの適用に続いて、超音波機を使用して、プローブから受け取った信号を処理することができる。超音波機は、受け取ったそれぞれの信号を処理した後に少なくとも以下の情報を提供することができる。
a.順行PI(Anterograde PI)(AP)
b.順行血流量(Anterograde volume flow)(AV)
c.逆行PI(Retrograde PI)(RP)
d.逆行血流量(RV)
【0084】
上記の情報を使用して、遠位または局所制御が神経障害を引き起こすかどうかを判定することができる。この情報を使用して、プローブに対して遠位の神経の循環中に炎症があるのか、またはプローブに対して近位の神経から炎症が生み出されたのかを判定することもできる。その結果として、神経血管組織内の循環を可動化する、または分流させることができ、最終的に、より大きな血管が追加の毛細血管床を満たすであろう。
【0085】
上記の情報は神経障害を示すが、このような情報を使用して状態を改善することが以前に企図されたりまたは理解されたりすることはなかった。具体的には、このような情報は状態が存在することだけを示し、上記の情報を変化させるための指示を一切提供しない。
【0086】
以下の計算例は、血管変化のためのINF治療を施すための本開示の範囲に含まれるコンピュータ実施方法の統計解析の特定の実施形態を当業者に提供する。
a.順行PI(AP):7.16
b.順行VF(AV):17.3
c.逆行PI(RP):3.86
d.逆行VF(RV):9.02
【0087】
本開示の一実施形態によれば、このコンピュータ実施方法を使用して、遠位制御(distal control)(DC)と局所循環(local circulation)(LC)の比を決定することができる。本開示によれば、このコンピュータ実施方法を使用して、遠位制御(DC)を、式(1)を使用することにより決定することができる。式(1)で、APは順行PIを表し、AVは順行血流量を表す。
DC=sqrt(AP×AV) (1)
DC=sqrt(7.16×17.3)
DC=11.12
【0088】
このコンピュータ実施方法の特定の実施形態では、局所制御(LC)を、式(3)により決定することができる。式(3)で、RPは逆行PIである。式(2)を使用して、順行VF(AV)と逆行血流量(RV)の差を決定することができる。本開示の一実施形態によれば、理想的な逆行血流量(RV)は順行の1/4である。
RD=AV-RV (2)
RD=17.3-9.02=8.28
LC=sqrt(RP×RD) (3)
LC=sqrt(3.86×8.28)=5.65
【0089】
局所比は、プローブの領域の近くの循環を調節する、プローブの部位に対して遠位の神経と比較して、局所神経血管循環が標的とされた神経に影響を及ぼしている百分率を示すことができる。
【0090】
このコンピュータ実施方法の一実施形態によれば、式(4)により順行-逆行比(AR)を決定することができる。
AR=DC/LC (4)
AR=11.129/5.65
AR=0.50796
【0091】
アッパー比(upper ratio)(UR)は、遠位制御が局所制御よりも大きい百分率を示すことができる。本開示の一実施形態では、このコンピュータ実施方法を使用して、URを、式(5)を使用することにより決定することができる。
UR=(1-AR)+1 (5)
UR=1.49204
【0092】
このコンピュータ実施方法の実施形態によれば、式(6)、式(7)、式(8)および式(9)により、それぞれ高PI(High PI)(HP)、低PI(Low PI)(LP)、高VF(HV)および低VF(LV)を決定することができる。
a.高PI(HP)
HP=sqrt(AP×UR/sqrt(AV×RP×RD) (6)
HP=sqrt(7.16×1.492/sqrt(17.3×3.86×8.28)
HP=0.65
b.低PI(LP)
LP=sqrt(RP×LR/sqrt(AV×AP×RD) (7)
LP=sqrt(3.86×0.507/sqrt(7.16×17.3×8.28)
LP=0.2474
c.高VF(HV)
HV=sqrt(AV×UR/sqrt(AP×RP×RD) (8)
HV=sqrt(17.3×1.492/sqrt(7.16×3.86×8.28)
HV=1.3062
d.低VF(LV)
LV=sqrt(RV×LR/sqrt(AV×AP×RP) (9)
LV=sqrt(9.02×0.507/sqrt(7.16×17.3×3.86)
LV=0.457753
【0093】
本開示の実施形態によれば、このコンピュータ実施方法を使用し、式(10)、式(11)、式(12)および式(13)を使用することにより、それぞれFCAP、FCAV、FCRPおよびFCRVを決定することができる。この計算では、AP、AV、RVおよびRPをそれぞれのノルムから減じ、次いでAP、AV、RVおよびRPを正数にする。
CAP=9-AP
CAP=9-7.16=1.84
FCAP=sqrt(CAP2) (10)
FCAP=1.84
CAV=8-17.3=-9.3
FCAV=sqrt(CAV2) (11)
FCAV=9.3
CRP=8-RP
CRP=8-3.86=4.14
FCRP=sqrt(CRP2) (12)
FCRP=4.14
CRV=3-RV
CRV=3-9.02=-6.02
FCRV=sqrt(CRV2) (13)
FCRV=6.02
【0094】
本開示の一実施形態によれば、調整後の数値FCAP、FCAV、FCRPおよびFCRVに、高PI(HP)、低PI(LP)、高VF(HV)および低VF(LV)の計算値を乗じて、尤度比(likelihood ratio)LHPI、LLPI、LHVFおよびLLVFを決定することができる。
【0095】
本開示の実施形態によれば、このコンピュータ実施方法を使用して、尤度比LHPI、LLPI、LHVFおよびLLVFを、それぞれ式(14)、式(15)、式(16)および式(17)を使用することにより決定することができる。
LHPI=(9-FCAP)×HP (14)
LHPI=(9-1.84)×0.659=4.72
LLPI=FCRP×LP (15)
LLPI=4.14×0.2474
LLPI=0.707
LHVF=(8-FCAV)×HV (16)
LHVF=(8-9.3)×1.3=-12.09
LLVF=(8-FCRV)×LV (17)
LLVF=6.02×0.45=-2755
【0096】
本開示の実施形態によれば、このコンピュータ実施方法を使用し、式(18)を使用することにより、高拍動性(High pulsatility)(PHI)を決定することができる。
PHI=(9-FCAP)×LHPI/LHPI2×0.01 (18)
PHI=(9-1.84)×4.72/4.722×0.01
PHI=0.1468=14.68%
【0097】
この例では、高拍動性PHIが14.68%の不足を有する。
【0098】
本開示の実施形態によれば、このコンピュータ実施方法を使用し、式(19)を使用することにより、
高ボリューム(High volume)PHVを決定することができる。
PHV=(8-FCAV)×LHVF/LHVF2×0.01 (19)
PHV=(8-9.3)×-1.6/-1.62×0.01
PHV=2.3227=232.28%
【0099】
この例では、高ボリュームPHVが232.28%の不足を有する。
【0100】
(実施例2)
INFの超音波ガイド下施術
以下の例は、人間被験者の例えば足の化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)を治療するために臨床環境で使用されたときの、INF治療を施すための本開示の範囲に含まれるコンピュータ実施方法の特定の実施形態を当業者に提供する。化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)はしばしば、手および足の痛み、ヒリヒリ感および過敏を伴う。本開示の実施形態によれば、人間被験者の足に隣接した圧点にプローブを適用して、少なくとも以下の動脈から情報を取得する。
a.後脛骨動脈
b.腓骨動脈
c.膝窩動脈
【0101】
足に隣接した圧点へのプローブの適用に続いて、超音波機を使用して、プローブから受け取った信号を処理することができる。超音波機は、受け取った信号のそれぞれを処理した後に少なくとも以下の情報を提供することができる。
【0102】
脛骨動脈から受け取り、超音波機によって処理した信号は、以下の情報を提供することができる。
a.順行PI:10.64、順行血流量:7.70
b.逆行PI:5.22、逆行血流量:3.64
c.本開示の一実施形態によれば、上記の情報を統計学的に解析することができ、上記の情報はさらに以下の情報を提供することができる。
i.高PI不足:0.64%
ii.低PI不足:72.90%
iii.高VF不足:3.83%
iv.低VF不足:58.94%
d.取得した情報から以下の観察結果を得ることができる。後脛骨動脈が主に足の下面の遠位脛骨神経に血液を供給することを考えると、統計解析にかけた取得情報から以下の観察結果を導き出すことができる。
i.足底神経を通る軽微な循環不足(低VF)
ii.足の底面を通る軽微から中程度の循環不足
iii.概ね無傷の循環の遠隔制御(神経根、交感神経)
【0103】
腓骨動脈から受け取り、超音波機によってさらに処理した信号は、以下の情報を提供することができる。
a.順行PI:9.64、順行血流量:7.30cc/分
b.逆行PI:5.22、逆行血流量4.91cc/分
i.本開示の一実施形態によれば、上記の情報を統計学的に解析することができ、上記の情報はさらに以下の情報を提供することができる。
1.高PI不足:-1.05%
2.低PI不足:58.41%
3.高VF不足:-4.4%
4.低VF不足:500.87%
c.取得した情報からさらに以下の観察を得ることができる。腓骨動脈が主に足の下面の遠位腓骨神経に血液を供給することを考えると、統計解析にかけた取得情報から以下の観察を導き出すことができる。
i.腓骨神経の運動枝の顕著な灌流不足(低VF)
ii.足の背の面を通る軽微から中程度の循環不足
iii.概ね無傷の循環の遠隔制御(神経根、交感神経)
【0104】
本開示の一実施形態では、コンピュータ実施方法がさらに、人間被験者の第1のエリアの第1の物理変化を生じさせることを含むことができる。この例では、第1の物理変化を生じさせる人間被験者の選択された第1のエリアが、腓骨神経の運動枝を見出すことができる足の上面にある。
【0105】
本開示の一実施形態によれば、コンピュータ支援神経内促進が、動脈から人間被験者の神経系の循環中への加圧された血流を誘起する。この特定の例では、コンピュータ支援神経内促進1次治療トラックが、脊髄神経(皮膚またはリンパ管の上でなく主神経を通って走っている循環)、および血管周囲神経叢(随伴する大きな動脈を通って走っている血管周囲神経叢を通って走っている循環)を含むことがある。
【0106】
1次治療ホールドは、腓骨神経の運動枝によって神経支配された筋肉であると決定され、それらの神経は標的となる、または「ストレッチされる」。この例では、短指伸筋が標的となる。
【0107】
一実施形態では、筋緊張および皮膚変化を所定のレベルに従ってモニタリングして、INF治療を施すためのコンピュータ実施方法の次のステップを決定する。
【0108】
足の上面の第1の物理変化を生じさせた後に、プローブからの第2の信号を取得し、超音波機によって処理して、腓骨動脈に関連した情報を取得する。続いて、コンピュータ実施方法を使用して、以下の情報を生成することができる。
a.順行PI:8.86、順行VF:9.8cc/分
b.逆行PI:7.38、逆行VF:3.86cc/分
c.本開示の一実施形態によれば、コンピュータ実施方法によって生成された情報を統計学的に解析することができ、この情報はさらに以下の情報を提供することができる。
i.高PI不足:1.26%
ii.低PI不足:4.62%
iii.高VF不足:.14%
iv.低VF不足:59.7%
【0109】
コンピュータ実施方法の一実施形態を使用し、現在の低VF不足値を以前に取得された低VF不足値と比較して、次のステップを決定することができる。所定の許容レベルに向かっての低VF不足値の低下は、少なくとも第1のエリアにおける改善された血流を示している可能性がある。この例では、低VF不足が、500%の不足から59.7%の不足に改善する。したがって、第1のエリアにおいて生じさせた物理変化は、人間被験者の足の化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)を改善する。神経障害状態の改善の後、INF治療を施すこのコンピュータ実施方法を終了することができる。他方、低VF不足値が、所定の許容レベルに向かって低下しない場合には、人間被験者の1つまたは複数の第2のエリアにおいて第2の物理変化を生じさせることによって、INF治療を施すコンピュータ実施方法を繰り返すことができる。例えば、1次物理変化後のフローパターンからの特定の指示、PIおよび流れ体積を考慮して、第2の物理変化を生じさせる人間被験者の第2のエリアを選ぶことができる。
【0110】
この特定の例では、第2のエリアが、後下腿部および前下腿部を含むことができる。したがって、本開示の実施形態によれば、このコンピュータ実施方法は、段階的な介入手技において、後続の物理変化段階をガイドするために、物理変化のそれぞれの段階後の血流パターンを提供する信号の処理からのフィードバックに基づいて、血液を駆動してその動脈および関連動脈に血液を流すための方法およびシステムを提供する。
【0111】
本出願はPCT出願であり、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている、2018年4月23日に出願された「COMPUTER-SUPPORTED INTRANEURAL FACILITATION FOR VASCULAR CHANGES」という名称の米国特許仮出願第62/661,568号の優先権および恩典を主張するものである。
【0112】
したがって、本明細書に記載された開示は、目的を達成し、記載された結果および利点ならびに他の固有の結果および利点を得るように十分に適合されている。開示の目的上、本開示の現時点における好ましい実施形態を示したが、所望の結果を達成する手順の詳細には多数の変更が存在する。これらの変更および他の同様の変更は、当業者の念頭に容易に浮かび、それらの変更は、本明細書に開示された本開示の趣旨および添付の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7