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  • 特許-色素注入器 図1
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  • 特許-色素注入器 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】色素注入器
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20230403BHJP
   A61M 5/00 20060101ALI20230403BHJP
   A45D 44/00 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
A61M37/00
A61M5/00
A45D44/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021172142
(22)【出願日】2021-10-21
【審査請求日】2022-08-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516010892
【氏名又は名称】株式会社チームフォーチューン
(74)【代理人】
【識別番号】100167715
【弁理士】
【氏名又は名称】古岩 信嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100084445
【弁理士】
【氏名又は名称】古岩 信幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154634
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 みさ子
(72)【発明者】
【氏名】小川 篤史
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0287978(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1623202(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0213400(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
A61M 5/00
A45D 44/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に針を突出させた状態で保持し、前記針の先端に圧力が印加されても前記針の長さを維持する針保持部と、
前記針保持部を前記針の長手方向に移動可能な状態で保持する先端固定部と、
前記針保持部を前記長手方向に動作させる弾性部材と、
前記弾性部材を収納する弾性部材収納部と、
前記弾性部材収納部に挿入されて前記弾性部材に対して当接すると共に前記先端側と反
対の根元側に突出する突出当接部と、
前記突出当接部の先端位置を変更可能な状態で固定することにより、前記弾性部材の長さを変化させ、前記先端固定部に加わる圧力を変化させる調整固定部と
を有することを特徴とする色素注入器。
【請求項2】
前記調整固定部は、
前記突出当接部が挿入されるとともに、内側にねじ溝が形成されており、
前記突出当接部の外側に設けられたねじ溝と螺合することにより、前記突出当接部の先
端位置を変更可能な状態で保持する
ことを特徴とする請求項1に記載の色素注入器。
【請求項3】
前記先端固定部は、
固定ねじとはめ込み部材とを有しており、
前記固定ねじは、
大径部と、前記大径部より径の小さい小径部とを有し、
前記小径部の外側に形成されたねじ溝によって前記弾性部材収納部の前記先端側に螺合さ
れ、
前記針保持部は、
前記はめ込み部材に螺合され、
前記はめ込み部材は、
前記先端側から前先端固定部に係止されることにより、前記先端側の位置が固定される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の色素注入器。
【請求項4】
前記調整固定部は、
内側に形成されたねじ溝によって前記突出当接部を螺合し、
外側に形成されたねじ溝によって前記弾性部材収納部と螺合する
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の色素注入器。
【請求項5】
前記弾性部材は、
コイルばねである
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の色素注入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば医療目的で使用される色素注入器に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、皮膚を装飾するために皮膚に色素を注入するための入れ墨器具として、入墨銃が広く使用されている。この入墨銃は、電動式プランジャに接続された注射針又は注射針セットから構成され、電気で作動する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公表2008-534100号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、かかる構成の入墨銃では、常に一定の力で針を動作させるため、皮膚の硬さなどに応じて刺傷度合いが変化してしまい、操作性が難しいという問題があった。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、操作性を向上させ得る色素注入器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため、本発明の色素注入器では、先端側に針を保持可能な針保持部と、
前記針保持部を前記針の長手方向に移動可能な状態で保持する先端固定部と、
前記針保持部を前記長手方向に動作させる弾性部材と、
前記弾性部材を収納する弾性部材収納部と、
前記弾性部材収納部に挿入されて前記弾性部材に対して当接すると共に前記先端側と反対の根元側に突出する突出当接部と、
前記突出当接部が挿入されるとともに、前記突出当接部の先端位置を変更可能な状態で保持する調整固定部と
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、操作性を向上させ得る色素注入器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】色素注入器の構成を示す略線図である。
図2】色素注入器を部品ごとに分解した略線図である。
図3】色素注入器の組み立ての説明に供する略線図である。
図4】突出当接部の位置を説明する略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
<実施の形態>
図1に示すように、1は全体として色素注入器を示しており、部分的に中身を示す部分透過図である。この色素注入器1は、羽ペンのように、針9の先端に色素インクをつけながら刺傷して使用するものであり、主に乳房再生などの医療用途に用いられることが想定されている。以下、針9の先端方向を先端側、反対方向(キャップ62側)を根元側、先端側及び根元側を結ぶ方向を長軸方向と呼ぶ。
【0010】
色素注入器1は、針9を先端側から挿入させて針9を脱着可能に保持する針保持部2と、針保持部2をばね収納部4に固定する先端固定部3と、ばね収納部4に収納されたばね部材5と、ばねに当接して根元側に突出する突出当接部6と、突出当接部6をばね収納部4に固定する調整固定部7とを有している。
【0011】
針9は、複数の長さ(例えば20mm、30mm)が準備され、用途に応じて使用する針の長さが選択される。針保持部2は、先端側に保持部材21及び軸部22とを有している。保持部材21は、2つの円錐台を両端が先細るようにして円柱を挟んで配置した形状を有し、その断面が6角形状となっており、中心部分には長軸方向に対して平行に針9を保持するための針挿入口21Aが形成されている。例えば、保持部材21の最大直径が7mm、最小直径は4mm、長さは8.2mm、軸部22の径が4mm、長さが11mm、針保持部2としての長さは19.2mmである。
【0012】
軸部の外周には、ねじ溝(例えばM4)が形成されている。軸部22には、針挿入口21Aに繋がる穴は形成されておらず、針挿入口21Aに挿入された針9は、根元側が軸部22に当接して長軸方向に対する位置が固定される。従って、長さの相違する針9が使用されると、針保持部2から突出する針9の長さが変化する。
【0013】
先端固定部3は、固定ねじ31と、はめ込み部材32とを有している。はめ込み部材32は、先端側から小径部36と大径部37とが組み合わされており、その内側に貫通孔38が形成されている。貫通孔38は、先端側で小さく、根元側で大きく形成されており、先端側にはねじ溝(例えばM4)が形成されている。貫通孔38には、針保持部2の軸部22及び保持部材21の一部が挿入され、根元側にはばね部材5の一部が挿入される。例えば、はめ込み部材32の小径部36の直径が6mm、大径部の直径が8.9mm、貫通孔38の小径部分の長さは軸部22の長さとほぼ同じ11mm、大径部分の長さは16mmに設定されている。
【0014】
固定ねじ31には、先端側から大径部33と大径部より径の小さい小径部34とが形成されており、内側にはめ込み部材32の小径部36が挿入可能な貫通孔35が形成されている。例えば、大径部33の長さは4mm、外経は10mm、小径部34の長さは4mm、貫通孔35は長軸が7.1mm、短軸が6.1mmの楕円柱形状を有している。
【0015】
ばね収納部4には、ばね部材5が収納される。ばね収納部4の長軸方向の長さは、ばね部材5よりも小さく、ばね収納部4の両端部分の内側には、ねじ溝42,43がそれぞれ形成されている。例えば、ばね収納部4の長さは80mm、外径が10mm、内径が9mmである。両端のねじ溝は、それぞれ2mm-4mmである。
【0016】
ばね部材5は、スプリングばねや圧縮ばねなどが使用される。また、ばね以外にも、圧力が印加されると収縮後するが、開放されるともとのサイズに戻る、いわゆる弾性部材が使用されても良い。例えば、ばね部材5は、中心のみが弾性を呈する圧縮ばねであり、外径が6mm、圧力をかけていないときの全長が63mm~66mm、中心部分の長さが25mm、1周あたりのピッチが1.3mm、両端の弾性を呈さない部分の長さが約19mmである。
【0017】
突出当接部6は、当接棒61と、キャップ62とを有している。当接棒61は、その外側全体にねじ溝が形成されており、棒ねじ形状を有する。キャップ62は、当接棒61とほぼ同系の穴部63が形成されており、穴部63にはねじ溝が形成されている。従って、回転によって当接棒61に対してキャップ62を固定することができる。例えば、当接棒61の径は4mm(M4)であり、長さは41mmである。また、キャップ62の外径は10mm、長さは10mm、穴部63の内径はM4、長さは6.8mmである。なお、キャップ62は必須ではない。
【0018】
調整固定部7は、固定ねじ72と、はめ込み部材71とを有している。はめ込み部材71はその内側に貫通孔73が形成されている。貫通孔73は、先端側で大きく、根元側で小さく形成されており、根本側には当接棒61の一部が挿入され、先端側にはばね部材5の一部が挿入される。例えば、固定ねじ72の外径は10mm、大径部4mm、小径部4mmで全体の長さは8mm、小径部にはM4のねじ溝が形成されている。また、貫通孔73にはM4のねじ溝が形成されている。
【0019】
図3に示すように、固定ねじ31の外側に形成されたねじ溝とばね収納部4に形成されたねじ溝42とが螺合されることにより、はめ込み部材32がばね収納部4の内部に挿入された状態で、はめ込み部材32先端側の位置が固定される。
【0020】
針保持部2の軸部は、はめ込み部材32の小径部の内側に形成されたねじ溝に螺合される。はめ込み部材32の小径部36は、固定ねじ31よりも長く形成されている。従って、小径部36の長さから固定ねじ31の長さを引いた余長文分だけ、はめ込み部材32が長手方向に移動可能な状態で保持される。
【0021】
また、当接棒61は、はめ込み部材71に螺合された状態で、固定ねじ72がばね収納部4のねじ溝43に螺合されて固定される。すなわち、当接棒61は、圧力が印加されても移動することはないが、当接棒61を回転させると当接棒61の先端側の位置が変化した状態で固定される。従って、図4に示すように、色素注入器1では、当接棒61の位置によってばね部材5の長さを変化させることができる。
【0022】
例えば、図4(A)のように当接棒61を浅く挿入させた場合、ばね部材5が広がった状態であるため、先端側から圧力を印加した場合、軽い力で針保持部2(はめ込み部材32)が移動することができる。
【0023】
一方、図4(B)のように当接棒61を深く挿入させた場合、ばね部材5が縮まった状態であるため、先端側から圧力を印加した場合、針保持部2(はめ込み部材32)を移動させるためには、図4(A)よりも大きい力が必要となる。
【0024】
このように、色素注入器1によって圧力調整ができるため、作業者は、皮膚の硬さや部位などが変わった場合であっても、同じ力で作業をすれば済み、操作性を向上させることができる。
【0025】
<動作及び効果>
以下、上記した実施形態から抽出される発明群の特徴について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、上記各実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。また、各特徴に記載した用語の意味や例示等は、同一の文言にて記載した他の特徴に記載した用語の意味や例示として適用しても良い。
【0026】
以上の構成によれば、本発明の色素注入器(色素注入器1)では、先端側に針(針9)を保持可能な針保持部(針保持部2)と、
前記針保持部を前記針の長手方向に移動可能な状態で保持する先端固定部(先端固定部3)と、
前記針保持部を前記長手方向に動作させる弾性部材(ばね部材5)と、
前記弾性部材を収納する弾性部材収納部(ばね収納部4)と、
前記弾性部材収納部に挿入されて前記弾性部材に対して当接すると共に前記先端側と反対の根元側に突出する突出当接部(突出当接部6)と、
前記突出当接部の先端位置を変更可能な状態で保持する調整固定部(調整固定部7)とを有することを特徴とする。
【0027】
これにより、色素注入器では、弾性部材収納部における突出当接部の先端位置を自在に変更でき、突出当接部による圧力の印可によって弾性部材の長さを予め調整することができる。この結果、同じ力で針を刺した場合に、針の移動量を変更することができ、刺衝対象となる皮膚の硬さなどの条件が変化した場合であっても、弾性部材の長さを調整すれば、いつも同じ力で刺衝すればよく、操作性を向上させることができる。
【0028】
本発明の色素注入器において、調整固定部は、
前記突出当接部が挿入されるとともに、内側にねじ溝が形成されており、
前記突出当接部の外側に設けられたねじ溝と螺合することにより、前記突出当接部の先端位置を変更可能な状態で保持することを特徴とする。
【0029】
これにより、簡易な構成で弾性部材の長さを調整することが可能となる。
【0030】
本発明の色素注入器において、
前記先端固定部は、
固定ねじ(固定ねじ31)とはめ込み部材(はめ込み部材32)とを有しており、
前記固定ねじは、
大径部と、前記大径部より径の小さい小径部とを有し、
前記小径部の外側に形成されたねじ溝によって前記弾性部材収納部の先端側に螺合され、
前記針保持部は、
前記はめ込み部材に螺合され、
前記はめ込み部材は、
前記先端側から前先端固定部に係止されることにより、先端側の位置が固定される
ことを特徴とする。
【0031】
これにより、簡易な構成で針収納部を長軸方向に移動可能な状態で先端側に取り付けることが可能となる。
【0032】
本発明の色素注入器において、
前記調整固定部は、
内側に形成されたねじ溝によって前記突出当接部を螺合し、
外側に形成されたねじ溝によって前記弾性部材収納部と螺合する
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の色素注入器。
【0033】
これにより、簡易な構成で弾性部材の長さを調整することが可能となる。
【0034】
本発明の色素注入器において、
前記弾性部材は、
コイルばねであることを特徴とする。
【0035】
コイルばねは安価で種類も豊富なため、設計の自由度を向上させ得る。
【0036】
<他の実施の形態>
上述実施形態では、針保持部としての針保持部2と、先端固定部としての先端固定部3と、弾性部材としてのばね部材5と、弾性部材収納部としてのばね収納部4と、突出当接部としての突出当接部6と、調整固定部としての調整固定部7とによって本発明の色素注入器としての色素注入器1を構成するようにした。本発明はこれに限らず、その他種々の構成による針保持部と、先端固定部と、弾性部材と、弾性部材収納部と、突出当接部と、調整固定部とによって本発明の色素注入器を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、例えば医療用途に使用される色素注入器として利用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 :色素注入器
2 :針保持部
3 :先端固定部
4 :ばね収納部
5 :ばね部材
6 :突出当接部
7 :調整固定部
9 :針
21 :保持部材
21A :針挿入口
22 :軸部
31 :固定ねじ
32 :はめ込み部材
33,37 :大径部
34,36 :小径部
35,38 :貫通孔
42,43 :ねじ溝
61 :当接棒
62 :キャップ
63 :穴部
71 :はめ込み部材
72 :固定ねじ
73 :貫通孔
【要約】
【課題】 扱いの容易な色素注入器を実現する。
【解決手段】本発明の色素注入器は、先端側に針を保持可能な針保持部と、針保持部を針の長手方向に移動可能な状態で保持する先端固定部と、針保持部を長手方向に動作させる弾性部材と、弾性部材を収納する弾性部材収納部と、弾性部材収納部に挿入されて弾性部材に対して当接すると共に先端側と反対の根元側に突出する突出当接部と、突出当接部の先端位置を変更可能な状態で保持する調整固定部とを有することを特徴とする。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4