IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 浙江大学の特許一覧

特許7254384マニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法
<>
  • 特許-マニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法 図1
  • 特許-マニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法 図2
  • 特許-マニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法 図3
  • 特許-マニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法 図4
  • 特許-マニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法 図5
  • 特許-マニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法 図6
  • 特許-マニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法 図7
  • 特許-マニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法 図8
  • 特許-マニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法 図9
  • 特許-マニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法 図10
  • 特許-マニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法 図11
  • 特許-マニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】マニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/16 20060101AFI20230403BHJP
【FI】
B25J9/16
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021538190
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 CN2020097079
(87)【国際公開番号】W WO2021253391
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【弁理士】
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】王 越
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 桐
(72)【発明者】
【氏名】熊 蓉
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109910015(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108789426(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108297105(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107717991(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107414860(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0215352(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法であって、
前記マニピュレータのエンドエフェクタと被覆対象物体表面との接触は点接触であり、被覆対象物体、マニピュレータ及び周囲の障害物の相対的な位置関係は既知であり、且つ被覆タスクの実行過程において変化しないように維持し、
前記マニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法は、具体的に、
被覆対象物体の曲面M上の全ての点に対してマニピュレータの逆運動学を解くことにより、この点を被覆する際のマニピュレータの位置・姿勢を取得し、曲面M上のいずれか1つの点pについて、全ての実行可能な位置・姿勢を
と記し、被覆対象物体表面が完全に被覆される場合、全ての点がいずれも1組の対応する実行可能な位置・姿勢を有し、そうでない場合、被覆対象物体表面上の被覆できない点が対応する位置・姿勢を有さず、曲面M上の全ての点の実行可能な位置・姿勢はマニピュレータの関節空間を構成し、前記マニピュレータの関節空間は特異な位置・姿勢及び非特異な位置・姿勢を含むステップ1と、
全ての特異な位置・姿勢を除去した後、前記マニピュレータの関節空間のうちの非特異な位置・姿勢は複数の互いに素な集合に分割され、各集合にはマニピュレータが連続して実行できる位置・姿勢が記憶され、同じ集合における位置・姿勢には同じ番号を付け、異なる集合における位置・姿勢には異なる番号を付け、異なる集合の番号を
として設定し、曲面M上の各点はその実行可能な位置・姿勢に対応する番号に基づいて点pに対応する番号の組み合わせを取得するステップ2と、
被覆対象物体の曲面M上の点の連結性に基づいて、同じ番号の組み合わせを有し且つ被覆対象物体の曲面M上で連結する点を同じセルに区分し、2つのセルの間の境界を1つのトポロジーエッジと記し、各セルは唯一の番号を有し、第1セル、第2セル…第Nセルとし、以下に第1セル、第2セル等と呼ばれ、各セルはこのセルの異なる種類のマニピュレータの位置・姿勢(即ち、上記番号の組み合わせ)を被覆することができ、更にそれに隣接するセルの番号を順に記憶するステップ3と、
単連結セルについては、2進数でその全ての異なる切断方式を符号化し、2進数の桁数がこのセルのトポロジーエッジの個数であり、2進数における対応する桁が1であるか0であるかに応じて、対応する桁が0である場合は、このトポロジーエッジが保持され、即ちトポロジーエッジの両側の2つのセルの番号が最終的に異なるものであり、マニピュレータが実行される際にエンドエフェクタが1回持ち上げられることを示し、対応する桁が1である場合は、このトポロジーエッジが削除され、即ちトポロジーエッジの両側の領域の番号が最終的に同じものであり、マニピュレータが実行される際にエンドエフェクタにより持ち上げられずに連続して被覆されることを示し、トポロジーエッジの数が1、2、3であるセルについては、サブセルのトポロジーエッジ数をさらに減少させるセル分解方法が存在しないため、列挙方法を直接使用し、トポロジーエッジ数が1、2、3のセルの全ての可能な番号に対して、全ての可能な解を取得し、そして、トポロジーエッジの数が3を超えるセルについては、セル分解後にサブセルを形成する可能性があり、サブセルのトポロジーエッジの数が元のセルよりも少なく、再帰によって全ての出現するサブセルを求め各サブセルに対して、トポロジーエッジ数が3より大きい場合、全ての可能なセル分解に対して、全ての可能な解を取得し、トポロジーエッジ数が1、2、3である場合、列挙方法を直接使用し、トポロジーエッジ数が1、2、3であるセルの全ての可能な番号に対して、全ての可能な解を取得するステップ4と、
n重連結セルについては、n重連結セルの内部にn-1個の内部境界があり、再帰方法でn重連結セルを求解し、n重連結セルの分解方法は、以下のとおりであり、
ステップ(5.1):n=1の場合、前記セルはステップ4における単連結セルであり、ステップ4により求解すればよく、
ステップ(5.2):n=2の場合、前記セルは内境界及び外境界と記される2つの境界があり、各境界はいずれも複数のトポロジーエッジからなり、各トポロジーエッジはいずれも他のセルに連結され、次の方法により、二重連結セルの全ての可能な解法を完全に分類し、
ステップ(5.2.1):内境界と外境界が連結する切断経路が存在しない状況を考慮して、内境界と外境界を分離し、2つの単連結セルとして見なしてそれぞれ求解し、
ステップ(5.2.2):内境界と外境界が連結する切断経路を考慮して、内境界と外境界を連結する切断経路を2つ設計し、二重連結セルの分解問題を2つの単連結セルの分解問題に変換し、その後、ステップ4における単連結セルの求解方法で求解し、
ステップ(5.3):n>2の場合、n重連結セルのn-1個の内境界に番号をつけ、外境界及びi番目の内境界に含まれるトポロジーエッジがそれぞれ以下の式で示され、
【数1】
【数2】
式中、αは該セルとそのK番目の外部隣接セルとの間のトポロジーエッジを示し、
は該セルとそのi番目の内部境界上の番号がJであるセルとの間のトポロジーエッジを示し、
ステップ(5.3.1):外境界ω及び1番目の内境界ωのみを考慮して、ステップ5における二重連結セルの求解過程に基づいて、ωとωからなる二重連結セルにおいて2つの切断経路を設計してそれらを2つの単連結セルにし、
ステップ(5.3.2):2番目の内境界ωをステップ(5.3.1)で生成された2つの単連結サブセルの一つに入れ、そうすると、このωを入れた単連結サブセルが1つの二重連結サブセルになり、ステップ(5.2)に記載のステップにより該二重連結サブセルを求解し、最終的にそれを2つの単連結サブセルに分け、このステップを経た後、元のn重連結セルは
を含み、既に3つの単連結サブセルに分けられ、
ステップ(5.3.3):後続の各内境界
に対して、いずれも、
を生成されたある単連結サブセルに入れて二重連結セルにして、さらに2つの単連結サブセルに分割するステップを順に実行し、i番目の内境界を入れるとき、元のセルが既にi部に分けられ、すべてのn-1個の内境界をセルに入れた後、元のセルがn個の単連結サブセルに分割され、ステップ4によりこれらのn個の単連結サブセルを求解するステップ5と、
ステップ4及びステップ5の求解過程に基づいて、次のように、反復方式で被覆対象物体表面上のマニピュレータの運動学モデルによって生成されたトポロジー図を求解し、
ステップ(6.1):被覆対象物体表面上の第1セルについては、前記第1セルの全ての可能な切断方法を使用し番号を設定すれば、前記第1セルの全ての解法を完了し、全ての解法のそれぞれに対してステップ(6.2)を実行し、
ステップ(6.2):被覆対象物体表面上の第2セルについては、前記第2セルの全ての可能な切断方法を使用し番号を設定すれば、前記第2セルの全ての解法を完了し、第2セルの全ての解法のうち、第1セルの設定とは矛盾を有する解を削除し、第2セルの残りの実行可能な解法のそれぞれに対してステップ(6.3)を実行し、
ステップ(6.3):被覆対象物体表面上の第3セル~第Nセルに対してステップ(6.2)を順に実行することにより、各セルにいずれも切断方法が設置され、各切断されたサブセルがいずれも唯一の番号を有し、即ち、マニピュレータがサブセルを被覆する方式を取得するステップ6と、を含むことを特徴とするマニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法。
【請求項2】
前記被覆対象物体表面の点が1回しか被覆され得ないことを特徴とする請求項1に記載のマニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマニピュレータ経路計画技術分野に関し、具体的には、マニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法である。
【背景技術】
【0002】
物体表面の被覆タスクは工業応用におけるよく見られるタスクであり、物体表面の近距離モデリング、スプレー塗装、バフ加工等の作業に広く応用されている。三次元空間における一般的な形状の物体を加工する要件を満たすために、被覆タスクは一般的にマニピュレータにより完了する。
【0003】
一方では、マニピュレータの運動学は数十年にわたって研究されているホットな問題である。マニピュレータ運動学の本質はマニピュレータの各関節角度からなる関節空間からマニピュレータのエンドエフェクタの位置・姿勢空間までのマッピングを求めることである。マニピュレータが回転関節を有する場合、このようなマッピング関係は非線形である。他方では、曲面の被覆問題はロボット経路計画タスクにおける被覆経路計画問題であり、与えられた被覆対象空間に対して1つの経路を設計し、ロボットが経路に沿って動作した後に被覆対象空間内の各点を通るようにし、この過程においてロボットが1つの質点として見なされる。
【0004】
物体表面の被覆問題では、マニピュレータの末端に取り付けられるエンドエフェクタは設定された被覆経路に沿って動作し、即ち物体表面の各点を通ることができる。ところが、マニピュレータは運動学的制約があるため、エンドエフェクタが被覆経路全体を完全に追跡することができない。このような場合、被覆作業は強制的に中断され、マニピュレータはその位置・姿勢を調整して後続の追跡タスクを完了する必要がある。従来の被覆経路計画アルゴリズムは被覆された領域で経路を生成するアルゴリズムであり、マニピュレータの被覆経路計画問題では物体表面に被覆経路を直接生成することに相当する。ところが、マニピュレータの順運動学は非線形であるため、作業空間における被覆経路はマニピュレータの運動学的制約により切断されやすい。マニピュレータはエンドエフェクタを持ち上げ、空中でマニピュレータの位置・姿勢の変換を完了してから再接触する必要がある。エンドエフェクタの「離脱-再接触」過程は複雑な制御ポリシーを必要とし、追加の時間及びエネルギーを消費し、工業生産効率を低下させてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の欠陥を克服するために、本発明の目的はマニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法を提供することにある。該方法は完全に既知の環境で、物体表面に対して被覆タスクを実行する。該方法は被覆タスクの実行過程全体において、マニピュレータのエンドエフェクタが物体表面に最少回数だけで接触すればよい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は以下の技術案により実現される。
【0007】
マニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法であって、前記マニピュレータのエンドエフェクタと被覆対象物体表面との接触は点接触であり、被覆対象物体、マニピュレータ及び環境中の障害物の相対的な位置関係は既知であり、且つ被覆タスク実行過程では変化しないように維持する。
【0008】
前記マニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法は、具体的に以下のステップを含む。
【0009】
ステップ1:被覆対象物体の曲面M上の全ての点に対してマニピュレータの逆運動学的求解を行って、この点を被覆する際のマニピュレータの位置・姿勢を取得し、曲面M上のいずれか1つの点pについて、全ての実行可能な位置・姿勢を
と記し、被覆対象物体表面が完全に被覆される場合、全ての点がいずれも1組の実行可能な位置・姿勢に対応し、そうでない場合、被覆対象物体表面上の被覆できない点が対応する位置・姿勢を有さず、曲面M上の全ての点の実行可能な位置・姿勢はマニピュレータの関節空間を構成し、前記マニピュレータの関節空間は特異な位置・姿勢及び非特異な位置・姿勢を含む。
【0010】
ステップ2:全ての特異な位置・姿勢を除去した後、前記マニピュレータの関節空間は複数の互いに素な集合に分割され、各集合にはマニピュレータが連続して実行できる位置・姿勢が記憶され、同じ集合における位置・姿勢には同じ番号を付け、異なる集合における位置・姿勢には異なる番号を付け、異なる集合の番号を
として設定し、曲面M上の各点はその実行可能な位置・姿勢に対応する番号に基づいて点pに対応する番号の組み合わせを取得する。
【0011】
ステップ3:被覆対象物体の曲面M上の点の連結性に基づいて、同じ番号の組み合わせを有し且つ被覆対象物体の曲面M上で連結する点を同じセルに区分し、2つのセルの間の境界を1つのトポロジーエッジと記し、各セルは唯一の番号を有し、第1セル、第2セル…第Nセルとし、以下に第1セル、第2セル等と呼ばれ、各セルはこのセルの異なる種類のマニピュレータの位置・姿勢(即ち、上記番号の組み合わせ)を被覆することができ、更にそれに隣接するセルの番号を順に記憶する。
【0012】
ステップ4:単連結セルについては、2進数でその全ての異なる切断方式を符号化し、2進数の桁数がこのセルのトポロジーエッジの個数であり、2進数における対応する桁が1であるか0であるかに応じて、対応する桁が0である場合は、このトポロジーエッジが保持され、即ちトポロジーエッジの両側の2つのセルの番号が最終的に異なるものであり、マニピュレータが実行される際にエンドエフェクタが1回持ち上げられることを示し、対応する桁が1である場合は、このトポロジーエッジが削除され、即ちトポロジーエッジの両側の領域の番号が最終的に同じものであり、マニピュレータが実行される際にエンドエフェクタにより持ち上げられずに連続して被覆されることを示し、トポロジーエッジの数が1、2、3であるセルについては、列挙方法を直接使用して最適解を取得し、そして、トポロジーエッジの数が3を超えるセルについては、分解後にサブセルを形成する可能性があり、サブセルのトポロジーエッジの数が元のセルよりも少なく、再帰によって全ての出現するサブセルを求解して、全ての可能な解を取得する。
【0013】
ステップ5:n重連結セルについては、n重連結セルの内部にn-1個の内部境界があり、再帰方法でn重連結セルを求解し、n重連結セルの分解方法は、以下のとおりである。
【0014】
ステップ(5.1):n=1の場合、前記セルはステップ4における単連結セルであり、ステップ4により求解すればよい。
【0015】
ステップ(5.2):n=2の場合、前記セルは内境界及び外境界と記される2つの境界があり、各境界はいずれも複数のトポロジーエッジからなり、各トポロジーエッジはいずれも他のセルに連結され、次の方法により、二重連結セルの全ての可能な解法を完全に分類し、
ステップ(5.2.1):内境界と外境界が連結する切断経路が存在しない状況を考慮して、内境界と外境界を分離し、2つの単連結セルとして見なしてそれぞれ求解し、
ステップ(5.2.2):内境界と外境界が連結する切断経路を考慮して、内境界と外境界を連結する切断経路を2つ設計し、二重連結セルの分解問題を2つの単連結セルの分解問題に変換し、その後、ステップ4における単連結セルの求解方法で求解する。
【0016】
ステップ(5.3):n>2の場合、n重連結セルのn-1個の内境界に番号をつけ、外境界及びi番目の内境界に含まれるトポロジーエッジがそれぞれ以下の式で示され、
【数1】
【数2】
式中、αは該セルとそのK番目の外部隣接セルとの間のトポロジーエッジを示し、
は該セルとそのi番目の内部境界上の番号がJであるセルとの間のトポロジーエッジを示す。
【0017】
ステップ(5.3.1):外境界ω及び1番目の内境界ωのみを考慮して、ステップ5における二重連結セルの求解過程に基づいて、ωとωからなる二重連結セルにおいて2つの切断経路を設計してそれらを2つの単連結セルにする。
【0018】
ステップ(5.3.2):2番目の内境界ωをステップ(5.3.1)で生成された2つの単連結サブセルの一つに入れ、そうすると、このωを入れた単連結サブセルが1つの二重連結サブセルになり、ステップ(5.2)に記載のステップにより該二重連結サブセルを求解し、最終的にそれを2つの単連結サブセルに分け、このステップを経た後、元のn重連結セルは
を含み、既に3つの単連結サブセルに分けられる。
【0019】
ステップ(5.3.3):後続の各内境界
に対して、いずれも、
を生成されたある単連結サブセルに入れて二重連結セルにして、さらに2つの単連結サブセルに分割するステップを順に実行し、i番目の内境界を入れるとき、元のセルが既にi部に分けられ、すべてのn-1個の内境界をセルに入れた後、元のセルがn個の単連結サブセルに分割され、ステップ4によりこれらのn個の単連結サブセルを求解する。
【0020】
ステップ4及びステップ5の求解過程に基づいて、次のように、反復方式で被覆対象物体表面上のマニピュレータの運動学モデルによって生成されたトポロジー図を求解し、
ステップ(6.1):被覆対象物体表面上の第1セルについては、前記第1セルの全ての可能な切断方法をトラバースし番号を設定すれば、前記第1セルの全ての解法を完了し、全ての解法のそれぞれに対してステップ(6.2)を実行し、
ステップ(6.2):被覆対象物体表面上の第2セルについては、前記第2セルの全ての可能な切断方法をトラバースし番号を設定すれば、前記第2セルの全ての解法を完了し、第2セルの全ての解法のうち、第1セルの設定とは矛盾を有する解を削除し、第2セルの残りの実行可能な解法のそれぞれに対してステップ(6.3)を実行し、
ステップ(6.3):被覆対象物体表面上の第3セル~第Nセルに対してステップ(6.2)を順に実行することにより、各セルにいずれも切断方法が設置され、各切断されたサブセルがいずれも唯一の番号を有し、即ち、マニピュレータがサブセルを被覆する方式を取得する。
【0021】
更に、前記被覆対象物体表面の点が1回しか被覆され得ない。
【発明の効果】
【0022】
従来技術と比べて、本発明の有益な効果は以下のとおりである。
本発明はマニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法を開示し、マニピュレータのエンドエフェクタが被覆タスクの実行過程において物体表面から離れる回数は最も少ないように確保することができる。マニピュレータの力/トルク-位置切り替え制御ポリシーは複雑であることが認められ、エンドエフェクタは物体表面に接触しない際にマニピュレータの運動により物体のいかなる領域が被覆されることがないため、マニピュレータ被覆タスクにおいてエンドエフェクタを追加の、最も少ない回数以外の回数で持ち上げると、大量の時間及びエネルギー損失を消費してしまう。本発明は工業応用においてマニピュレータが被覆タスクを完了する効率を向上させることを目的とし、その直接応用シーンは物体表面の近距離モデリング、スプレー塗装、バフ加工等の作業を含む。
【0023】
まず、本発明の方法のマニピュレータ選択に対する制限は非冗長のみである。非冗長マニピュレータの作業とは、マニピュレータの効率を最大化することができることを意味する。従来の工業応用において、本発明によって提供される持ち上げ回数を最小化する被覆経路設計方法の欠如のため、非冗長マニピュレータを選択すれば、エンドエフェクタは数回持ち上げられる必要があり、作業効率を大幅に低下させてしまう。従って、従来の工業応用における同じ問題の解決案は、冗長マニピュレータを使用することのみであり、例えば、タスクは元々5自由度マニピュレータで完了できるが、持ち上げ回数が多すぎて効率が低すぎるため、6自由度又は7自由度マニピュレータ、又はマルチマニピュレータ例えば2つの5自由度マニピュレータで同じ作業を完了しかできない。従って、本発明は実際の工業的応用価値を有する。
【0024】
次に、本発明はマニピュレータ、被覆対象物体及び周囲障害物の相対的な位置関係が被覆タスクの実行過程において変化しないように求められるが、それらの実際の空間位置を制限せず、固定されていなくてもよい。例えば、工業組立ラインにより支持される被覆対象物体は固定されたマニピュレータの前に停止し、マニピュレータでその表面の被覆タスクを完了してから移動し続ける。更に、例えば、移動マニピュレータプラットフォーム(マニピュレータが移動可能なシャーシプラットフォームに取り付けられる)は被覆対象物体の周囲のある箇所に移動し、センサにより周囲環境をセンシングした後、被覆タスクを実行し、マニピュレータが被覆タスクを完了する過程においてシャーシは移動しない。以上、本発明は実際の工業応用において多くの応用シーンを有する。
【0025】
本方法は列挙方法で番号(
)の全ての可能な組合せをトラバースし、従って、与えられたマニピュレータ構成、物体モデル、障害物モデル及びそれらの相対的な位置関係を考慮して、マニピュレータは最も少ない持ち上げ回数で被覆タスク完了する全ての最適解を求解することができる。証明されるように、最も少ない持ち上げ回数を満足するいずれかのマニピュレータ被覆手段はいずれも本方法で与えられたある最適解の同相写像変形である(同相写像変形とは、各領域の連結性を変化せずに、異なる領域間の境界を他の形状に連続して変化させ又は他の位置に連続して移動させることを指す。)。
【0026】
従って、本発明の方法はマニピュレータのエンドエフェクタの持ち上げ回数を最も少なくするという特徴を有する。また、エンドエフェクタが物体表面から持ち上げる過程において、マニピュレータの運動により物体表面のいかなる領域を被覆しないことを考慮するため、本発明の方法はマニピュレータの被覆タスクにおけるエネルギー損失を間接的に最小化する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1はトポロジー図の作成過程の模式図である。
図2図2は単連結セルを分解する際の3つの等価領域分解方法である。
図3図3は3つのトポロジーエッジを有する単連結セルを分解する際の全ての可能な解法である。
図4図4は4つのトポロジーエッジを有する単連結セルを分解する際の全ての可能な解法、及びサブセルを形成する模式図である。
図5図5は二重連結セルを求解するとき、内境界と外境界との間に切断経路が連結しない場合、「二重連結セルを直接求解する」及び「まず、内境界を除去して外境界からなる単連結セルを求解した後、さらに内境界を外境界の任意の位置に入れる」の2つの方法の等価性の模式図である。
図6図6は二重連結セルにおける内境界及び外境界の等価性の模式図である。
図7図7は二重連結セルにおける循環切断経路及び非循環切断経路の模式図である。
図8図8は二重連結セルにおける循環切断経路及び非循環切断経路の等価性の模式図である。
図9図9は二重連結セルにおける内境界と外境界を連結しない切断経路が分割された2つの単連結サブセルにおいて再び分解する切断経路として見なされ得る模式図である。
図10図10は二重連結セルにおける内境界と外境界を連結する2つ以上の切断経路が分割された2つの単連結サブセルにおいて再び分解する切断経路として見なされ得る模式図である。
図11図11はn重連結セルを反復求解するフローチャートである。
図12図12は三重連結セルにおいて、1つの内境界に入れて分割を完了した場合、2番目の内境界をセルに入れるとき、それを既存の切断経路に入れない最適性の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明はマニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法を開示する。マニピュレータのエンドエフェクタは各領域に対していずれも被覆を連続して完了するように確保することができ、即ち、エンドエフェクタと物体表面との接触を解除する必要がない。本方法は、物体表面を最も少ない領域のみに分解するように確保し、更にエンドエフェクタが物体表面被覆タスクを完了する過程において最少回数だけで持ち上げる必要があることを確保する。
【0029】
本発明は非冗長マニピュレータで被覆タスクを完了し、前記マニピュレータのエンドエフェクタと被覆対象物体表面との接触は点接触であり、被覆対象物体、マニピュレータ及び環境中の障害物の相対的な位置関係は既知であり、被覆タスクの実行過程において変化しないように維持する。点接触は柔軟で、具体的な被覆経路を計画するとき、該方法がエンドエフェクタと被覆された物体表面との接触面積を考慮しなければ、点接触と見なされる。前記被覆対象物体表面の点が1回しか被覆され得ない。
【0030】
前記マニピュレータを使用して最も少ない持ち上げ回数で繰り返し不可能な被覆タスクを完了する方法は、具体的に以下のステップを含む。
【0031】
ステップ1:被覆対象物体の曲面M上の全ての点に対してマニピュレータの逆運動学的求解を行って、この点を被覆する際のマニピュレータの位置・姿勢を取得し、曲面M上のいずれか1つの点pについて、全ての実行可能な位置・姿勢を
と記し、被覆対象物体表面が完全に被覆される場合、全ての点がいずれも1組の実行可能な位置・姿勢に対応し、そうでない場合、被覆対象物体表面上の被覆できない点が対応する位置・姿勢を有さず、曲面M上の全ての点の実行可能な位置・姿勢はマニピュレータの関節空間を構成し、前記マニピュレータの関節空間は特異な位置・姿勢及び非特異な位置・姿勢を含む。
【0032】
ステップ2:マニピュレータが特異な位置・姿勢にあるとき、マニピュレータのヤコビ行列がフルランクではないため、マニピュレータのエンドエフェクタがある方向からの力又はトルクを抵抗できず、従って、エンドエフェクタが被覆対象物体に力強く接触するタスクにおいて、特異な位置・姿勢がいずれも使用できない。全ての特異な位置・姿勢を除去した後、前記マニピュレータの関節空間はいくつかの互いに素な集合に分割され、各集合にはマニピュレータが連続して実行できる位置・姿勢が記憶され、同じ集合における位置・姿勢に同じ番号を付け、異なる集合における位置・姿勢に異なる番号を付け、異なる集合の番号を
として設定し、曲面M上の各点はその実行可能な位置・姿勢に対応する番号に基づいて点pに対応する番号の組み合わせを取得する。
【0033】
ステップ3:図1に示すように、被覆対象物体の曲面M上の点の連結性に基づいて、同じ番号の組み合わせを有し且つ被覆対象物体の曲面M上で連結する点を同じセルに区分する。2つのセルの間の境界を1つのトポロジーエッジと記す。各セルは唯一の番号を有し、第1セル、第2セル…第Nセルとする。各セルはこのセルの異なる種類のマニピュレータ位置・姿勢を被覆することができ、更にそれに隣接するセルの番号を順に記憶する。
【0034】
ステップ4:単連結セルについては、3つの等価関係が与えられ、セルの分解方法は同じ持ち上げ回数を有する。いかなる2つの等価のセル分解方法については、その中の一方の分解方法を考慮すればよく、他方の分解方法は同じ持ち上げ回数を有するため、一層少なくなることがなく、従ってこの分解方法が最適性をなくすことがない。明らかに、物体表面のある単連結領域を区分する方法は無限にあり、与えられた3つの等価関係によってほとんどの分解方法を排除し、最終的に考慮すべき非等価の分解方法が限られた複数ある。図2に示すように、図2では、点線はトポロジーエッジを示し、切断経路を設計してセルを複数の部分に分けさせる。以上から発見されるように、(1)トポロジーエッジのいかなる非端点を切断経路の開始点又は終了点として設定することは意味がない理由は、持ち上げ回数を増加せずに、端点をその位置するトポロジーエッジの端点に連続して移動できるためであり、(2)切断経路は他のトポロジーエッジを通る必要がない理由は、不必要な追加の持ち上げ回数を引き起こす恐れがあるためであり、(3)切断経路同士は交叉する必要がない理由は、このような切断方式が持ち上げ回数を増加せずに、セルをトポロジーエッジに沿って切断することに相当するためである。あるセルについては、2進数でその全ての異なる切断方式を符号化し、2進数の桁数はこのセルのトポロジーエッジの個数である。2進数における対応する桁が1であるか0であるかに応じて、対応する桁が0である場合は、このトポロジーエッジが保持され、即ちトポロジーエッジの両側の2つのセルの番号が最終的に異なるものであり、マニピュレータが実行する際にエンドエフェクタが1回持ち上げられることを示し、対応する桁が1である場合は、このトポロジーエッジが削除され、即ちトポロジーエッジの両側の領域の番号が最終的に同じものであり、マニピュレータが実行する際にエンドエフェクタにより持ち上げられずに連続して被覆されることを示す。図3及び図4には、3つのトポロジーエッジを有するセル及び4つのトポロジーエッジを有するセルの全ての異なる領域分解を示す。図3では、最左側は3つの点線を境界とする、3つのトポロジーエッジを有する単連結セルの模式図であり、その記憶された隣接セルの順序は反時計回り(左上、左下、右)である。図3の右側には2進数で示される8つの異なる切断方法を示し、0は対応するトポロジーエッジがセル分解方法において保持され、即ち点線から実線になることを示すが、1は対応するトポロジーエッジの両側のセルが一体に連結され、中間のトポロジーエッジが削除され、即ち点線が削除されることを示す。
【0035】
トポロジーエッジの数が1、2、3であるセルについては、列挙方法を直接使用して最適解を取得する。そして、トポロジーエッジの数が3を超えるセルについては、分解後にサブセルを形成する可能性があり、このとき、サブセルのトポロジーエッジが依然として未定であり、例えば、図4における番号がxx11、x11x、1xx1、11xxの4つの場合は、4-セルが分解された後に1つの3-セルが生成され、このサブセルの一辺は指定された切断経路であり、残りの2つの辺は保持するか除去するかを確認すべきトポロジーエッジである。なお、生成された切断経路が必ず保持されなければならないため、求解過程全体にとっては、サブセルの生成に起因して問題の求解が多くの分岐を有することがない。サブセルのトポロジーエッジの数が元のセルよりも少なく、再帰によって全ての出現するサブセルを求解して、全ての可能な解を取得する。あるセルに対してその分解方法を指定した後、列挙過程において矛盾すれば、この列挙分岐が削除される。
【0036】
ステップ5:二重連結セルについては、境界は2つあり、一方が内境界であり、他方が外境界であり、各境界はいずれもいくつかのトポロジーエッジからなる。二重連結セルを求解するために、以下の5つの分析がある。
【0037】
(1)、二重連結セルの内境界と外境界が切断経路により連結されなければ、個別に求解してもよい。
【0038】
図5の場合、該方法は、中間の二重連結セル(同心円で示される)によりそれに隣接する第1セルと第2セルを連結し、それらがエンドエフェクタにより持ち上げられずに実行されるようにすることが期待される。図5の左側部分は二重連結セルを直接求解する場合であり、合計して5つの可能性があり、図5の右側部分は内境界を除去し、次に外境界のみがあるセル(このとき、単連結セルとなる)に対してステップ4に記載の方法で求解し、最後に内境界を任意に求解後のセルに入れる。容易に分かるように、図5の左右両側は等価である。従って、二重連結セルについては、内境界が切断経路により切断されない場合、内境界を除去し、外境界により形成された単連結セルのみを求解し、その後、内境界を任意にセルに配置してもよい。
【0039】
以下、内境界と外境界の重要性が同じであることについて説明する。図6に示すように、ステレオ投影によって内境界と外境界の等価性を説明する。1つの投影ボールを内境界内に置けば、内境界の球面での画像は南極近傍の1つの円であり、外境界の球面での画像も1つの円であるが、北極に近いである。投影ボールの半径をゼロ近傍に縮小すれば、内境界と外境界の画像がそれぞれ新たな外境界と内境界となることが見え、従って、それらの役割が交換可能である。
【0040】
以上、二重連結セルの切断経路がその内境界と外境界を連結しない場合、二重連結セルは2つの単連結セルに分けられて求解してもよい。
【0041】
(2)、図7に示される循環切断経路は、非循環切断経路の解に相当するため、考慮する必要がない。図8に示すように、二重連結セルの内境界を連続して回転することにより、循環切断経路及び非循環切断経路の等価性が容易に見える。
【0042】
(3)、二重連結セルの全ての切断経路は2種類に分けられてもよく、第1種類は二重連結セルを単連結セルに変換する切断経路であり、第2種類は二重連結セルを単連結セルに変換した後、新しく生成された単連結セルにおいて指定された切断経路と見なされてもよい。図9に示す二重連結セルの分解方法(図9の左)は2つのステップを経て生成するものとして見なされてもよく、即ち、まず内境界と外境界を連結する上方及び右側の切断経路によって二重連結セルを単連結セルに変換し(図9の中)、次に単連結セルに1つの切断経路を追加する(図9の右)。
【0043】
(4)、(3)に記載の2種類の切断経路のうち、第1種類の切断経路の数は必ず2つでなければならず、その理由は以下のとおりである。まず、単一の切断経路は二重連結セルを単連結セルに変換できないが、矛盾を引き起こすだけであり、それは、切断経路が存在することとは、その両側のセルが最終的に異なる番号として指定されるが、二重連結セルの内境界と外境界を連結する切断経路の両側が同じセルであって、異なる番号として指定され得ないことを意味するためである。次に、内境界と外境界を連結する切断経路が2つ以上あれば(図10の左図に示される)、まず2つの切断経路で二重連結セルを2つの単連結セルに区分し(図10の中間の図)、更に、ある単連結セル内に3番目の切断経路を指定する(図10の右図)と見なされてもよい。従って、二重連結セルを求解する時に必ず先ずに2つの単連結セルに分割してから更に分解しなければならない。
【0044】
(5)、二重連結セルにおいて内境界と外境界を連結する切断経路を2つ設計することは、内境界と外境界からそれぞれ一連の連続したトポロジーエッジを選択し、それらをある生成された単連結セルの境界として指定することに相当する。二重連結セルの内境界と外境界にある選択されていないトポロジーエッジは他の生成された単連結セルのトポロジーエッジとなる。二重連結セルの内境界と外境界ω、ω’はそれぞれJ、K個のトポロジーエッジを順に配列してなると仮定すれば、トポロジーエッジの番号は、それぞれ、以下の式で示され、
【数3】
【数4】
ここで、括弧はその中の要素の順番には順序があることを示す。この2つの括弧からそれぞれいくつかの連続して配列する要素を選択し、且つ、循環選択を回避するために、αの位置するサブセルが1番目の単連結セルであるように要求される。容易に分かるように、ωには以下の取得方法(式中、第i行はi個の要素を選択する全ての可能な状況である)があり、
【数5】
同様に、ω’には以下の取得方法(式中、第i行はi個の要素を選択する全ての可能な状況である)がある。
【数6】
【0045】
従って、二重連結セルの全ての分解方法は、以下のとおりであり、
ステップ(5.1) 内境界と外境界が連結する切断経路が存在しない場合を考慮して、内境界と外境界を分離し、2つの単連結セルとして見なしてそれぞれ求解する。
ステップ(5.2) 内境界と外境界が連結する切断経路を考慮して、内境界と外境界を連結する切断経路を2つ設計し、二重連結セルの分解問題を2つの単連結セルの分解問題に変換し、その後、ステップ4における単連結セルの求解方法で求解する。
【0046】
ステップ6:n重連結セルについては、n重連結セルの内部にn―1個の内部境界があり、まず、ステップ5における分析(1)から分かるように、このn―1個の内境界のいずれか1つは切断経路によって連結されない場合、最初にこの内境界を考慮せずに、残りの部分の分解を完了した後、この境界を任意の位置に置いてもよい。また、残りの部分にn―2個の内境界のみがあるため、1つのn―1重連結セルである。要するに、n―1重連結セルの解法は与えられたものであると仮定する。従って、いかなる切断経路によって連結されないある内境界がある場合のn重連結セルは以上のように求解してもよい。以下、「全ての内境界がいずれも切断経路によって連結される」状況のみを考慮すればよい。
【0047】
n重連結セルにおいて、いずれか1つの内境界と外境界を連結すれば、n―1重連結セルとなることができるため、求解可能になり、従って、「内境界を1つずつ外境界に入れる」ポリシーを考慮し、n重連結セルの分解方法は以下のとおりである。
【0048】
ステップ(6.1):n重連結セルのn―1個の内境界に番号をつけ、外境界及びi番目の内境界に含まれるトポロジーエッジは、それぞれ、以下の式で示され、
【数7】
【数8】
ここで、αは該セルとそのK番目の外部隣接セルとの間のトポロジーエッジを示し、
は該セルとそのi番目の内部境界上の番号がJであるセルとの間のトポロジーエッジを示す。
【0049】
ステップ(6.2):外境界ω及び1番目の内境界ωのみを考慮し、ステップ5における二重連結セルの求解過程に基づいて分かるように、ωとωからなる二重連結セルにおいて2つの切断経路を設計して2つの単連結セルにする。
【0050】
ステップ(6.3):2番目の内境界ωをステップ(6.2)で生成された2つの単連結サブセルのうちの一方に入れる。
【0051】
(ステップ6.4):ステップ(6.3)におけるそのωを入れた単連結サブセルは1つの二重連結サブセルとなり、該二重連結サブセルについては、ステップ5を繰り返し、2つの単連結サブセルに分ける。このとき、
を含むセルは3つの単連結サブセルに分けられる。
【0052】
ステップ(6.5):後続の各内境界
に対して、いずれもステップ(6.3)~(6.4)を順に実行し、
を生成されたある単連結サブセルに入れて二重連結セルにして、さらに、2つの単連結サブセルに分割する。i番目の内境界を入れるとき、元のセルが既にi部に分けられる。
【0053】
ステップ(6.6):すべてのn-1個の内境界をセルに入れた後、元のセルがn個の単連結サブセルに分割され、ステップ4によりこのn個の単連結サブセルを求解する。
【0054】
n重連結セルの分解方法の模式図は図11に示され、上記(1)~(5)における全ての異なる状況をトラバースすることにより、単一セルの全ての可能な解を取得することができる理由は、新たな内境界を既存の境界及び指定された切断経路に挿入するとき、既存の切断経路が新たな内境界を通る状況を考慮する必要がなく、新たな内境界を生成されたサブセルの内部に入れるだけでよいという等価関係を有するためである。この等価関係の模式図は図12に示される。
【0055】
ステップ7:ステップ4~6の求解過程に基づいて、反復方式で被覆対象物体表面上のマニピュレータの運動学モデルにより生成されたトポロジー図を求解し、即ち、
ステップ(7.1):被覆対象物体表面上の第1セルについては、前記第1セルの全ての可能な切断方法をトラバースし番号を設定すれば、前記第1セルの全ての解法を完了する。全ての解法のそれぞれに対してステップ(7.2)を実行し、
ステップ(7.2):被覆対象物体表面上の第2セルについては、前記第2セルの全ての可能な切断方法をトラバースし番号を設定すれば、前記第2セルの全ての解法を完了する。第2セルの全ての解法のうち、第1セルの設定とは矛盾を有する解を削除する。第2セルの残りの実行可能な解法のそれぞれに対してステップ(7.3)を実行し、
ステップ(7.3):被覆対象物体表面上の第3セル~第Nセルに対してステップ(7.2)を順に実行し、各セルにいずれも切断方法が設置され、各切断されたサブセルがいずれも唯一の番号を有し、即ち、マニピュレータがサブセルを被覆する方式を取得する
【0056】
本方法の番号(
)指定ポリシーはマニピュレータ関節の空間的連続性に基づいて構築されたものである。異なる構成、異なる次元のマニピュレータで異なる物体表面を処理するとき、連続性の定義が変形する可能性がある。マニピュレータ関節の空間的連続性に基づいてマニピュレータの被覆タスクにおける実行可能な位置・姿勢を区分し、持ち上げ回数を最も少なくする他の方法は、いずれもある番号を指定したことに相当する。従って、このような変形は本発明の保護範囲であると見なされるべきである。
【0057】
本方法は列挙でトラバースする方法で非冗長マニピュレータによる接触被覆タスクにおけるマニピュレータと物体表面との接触回数を最も少なくする全ての最適解を取得する。しかしながら、全ての可能な組み合わせのうちの一部のみを検査するとき、いくつかの最適解又はいくつかの近似最適解を取得することもできる。従って、列挙ポリシーを使用せずにこのマニピュレータによる接触被覆タスクにおける1つの最適解又は近似最適解を取得するための他の方法も、本発明の保護範囲であると見なされるべきである。
【0058】
代表的なマニピュレータの非冗長状況における作業シーンについては、以下のシーンが挙げられる。第(1)としては、5自由度マニピュレータで三次元物体表面領域を被覆して、エンドエフェクタを、物体表面例えば金属部品の表面に垂直にして仕上げ加工、自動車の表面に垂直にしてバフ加工を行う等である。第(2)としては、2自由度マニピュレータで平面領域例えばテーブルの表面を被覆して拭く等である。第(3)としては、4自由度マニピュレータで三次元物体表面領域のスプレー塗装を完了する。第(4)としては、6自由度マニピュレータで三次元物体表面領域の近距離観察を完了する。
【0059】
実施例
非冗長マニピュレータは「+」のような領域を被覆する必要があり、本発明の方法におけるステップ1によってマニピュレータが物体表面の各点を被覆する逆運動学を求め、取得された1組の連続した位置・姿勢は「-」を被覆できるが、もう1組の連続した位置・姿勢は「|」を被覆できる。本発明の方法におけるステップ2の過程によって全ての位置・姿勢に番号をつけ、「-」を被覆できる全ての位置・姿勢に1の番号をつけ、「|」を被覆できる全ての位置・姿勢に2の番号をつける。ステップ3によってセルの構築を行い、構築されたトポロジー図は図1と同じであり、即ち図1と同じセル番号を使用してもよい。第1セルの被覆され得るマニピュレータ位置・姿勢は{1}であり、ここで、大括弧はその中の要素の順序が特定の意味を有しないことを示し、その隣接セルは(2)であり、ここで、小括弧はその中の要素が順に配列されることを示す。以上から分かるように、第2、3、4、5セルの被覆され得るマニピュレータの位置・姿勢は順に
であり、その隣接セルは順に
である。ステップ4に記載の求解方法から分かるように、第1、3、4、5セルはそれぞれ唯一の番号選択方法及び切断方法しかなく、従って、第2セルを求解すればよい。求解によって分かるように、第2セルの(1)切断方式は1010であって番号が1として設定され、又は(2)切断方式は0101であって番号が2として設定される場合、該問題は最適解を取得できる。この2つの解の物理的意味はそれぞれ以下のとおりである。(1)、まず番号が1である位置・姿勢で第1、2、5セルの位置する領域を被覆してから1回持ち上げ、番号が2である位置・姿勢で第3セルの位置する領域を被覆してから更に1回持ち上げ、最終的に番号が2である位置・姿勢で第4セルの位置する領域を被覆する。(2)、まず番号が2である位置・姿勢で第2、3、4セルの位置する領域を被覆してから1回持ち上げ、番号が1である位置・姿勢で第1セルの位置する領域を被覆してから更に1回持ち上げ、最終的に番号が1である位置・姿勢で第5セルの位置する領域を被覆する。上記2つの方法によって求められた最も少ない持ち上げ回数はいずれも2である。
【0060】
最後に注意されるように、本発明は以上の実施例に限らず、更に多くの変形があってもよい。当業者が本発明に開示される内容から直接導出又は想到し得る全ての変形は、いずれも本発明の保護範囲として見なされるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12