(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】仮設階段
(51)【国際特許分類】
E04G 27/00 20060101AFI20230403BHJP
E04F 11/06 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
E04G27/00
E04F11/06
(21)【出願番号】P 2022122613
(22)【出願日】2022-08-01
【審査請求日】2022-08-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和4年7月22日~令和4年7月23日 小岩金網株式会社 東北グランドフェア2022 (夢メッセみやぎ(宮城県仙台市宮城野区港3丁目1-7)) (2)令和4年7月28日 小岩金網株式会社(https://www.koiwa.co.jp/topics/20220728-30.html)
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390019323
【氏名又は名称】小岩金網株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】西村 康志
(72)【発明者】
【氏名】小林 人士
【審査官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-073243(JP,U)
【文献】特開2007-009472(JP,A)
【文献】特開2002-097800(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02428729(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 27/00
E04G 1/30
E04F 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜面に設置する仮設階段であって、
下段フレーム、上段フレーム、ステップおよび姿勢保持具を少なくとも具備し、
前記下段フレームおよび前記上段フレームの間に、前記ステップおよび前記姿勢保持具を回動自在に連結してあり、
前記姿勢保持具は、前記下段フレームとの連結箇所と前記上段フレームとの連結箇所との間の離隔長を調整可能
なターンバックルであり、
前記下段フレームに対し、前記上段フレームを斜面谷方向側に倒した状態から、前記ターンバックルの螺合によって、前記離隔長を縮長させることで、前記上段フレームを斜面山方向に持ち上げて、前記ステップの姿勢を保持することを特徴とする、
仮設階段。
【請求項2】
前記上段フレームを構成する桁材の外側面と、前記下段フレームを構成する桁材の外側面との間を、前記ターンバックルで連結してあることを特徴とする、
請求項1に記載の仮設階段。
【請求項3】
前記斜面に対し仮設階段を固定するためのアンカーピンおよび/または仮設階段に手すりを設けるための手すり用部材、を差し込み可能な、差し込み部を更に具備することを特徴とする、
請求項1に記載の仮設階段。
【請求項4】
斜面山谷方向に隣り合う他方の仮設階段との間で、互いに回動自在に連結可能な、連結部を設けたことを特徴とする、
請求項1に記載の仮設階段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然斜面や人工斜面(法面)等の斜面に設置して使用する仮設階段に関する。
【背景技術】
【0002】
法面に設置する仮設階段として、以下の特許文献1に係る仮設階段が知られている。
特許文献1に係る仮設階段は、左右一対の側けたを一組とする二組の支持体と、当該支持体間に回動自在に設けた踏板と、側けたの一端に設けて法尻の地面に接地させる伸縮脚とを設けており、踏板の角度が水平となるように伸縮脚の伸縮長を調整することで、階段を構築することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献に記載の仮設階段では、以下に記載する問題のうち、少なくとも何れか1つの問題を有する。
(1)伸縮脚の伸縮長を調整することでしか、踏板の角度を調整できない。
(2)法尻の地面に伸縮脚を接地させる必要があるため、設置場所に制約がある。
【0005】
よって、本発明は、設置場所を問わずかつ簡便な作業で任意の角度に保持した踏板部分を構築可能な仮設階段を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべくなされた本願発明は、斜面に設置する仮設階段であって、下段フレーム、上段フレーム、ステップおよび姿勢保持具を少なくとも具備し、前記下段フレームおよび前記上段フレームの間に、前記ステップおよび前記姿勢保持具を回動自在に連結してあり、前記姿勢保持具は、前記下段フレームとの連結箇所と前記上段フレームとの連結箇所との間の離隔長を調整可能なターンバックルであり、前記離隔長の調整によって、前記下段フレームに対する前記ステップの姿勢を保持することを特徴とする。
また、本願発明では、前記上段フレームを構成する桁材の外側面と、前記下段フレームを構成する桁材の外側面との間を、前記ターンバックルで連結することができる。
また、本願発明では、前記斜面に対し仮設階段を固定するためのアンカーピンおよび/または、仮設階段に手すりを設けるための手すり用部材、を差し込み可能な、差し込み部を更に具備してもよい。
また、本願発明では、斜面山谷方向に隣り合う他方の仮設階段との間で、互いに回動自在に連結可能な、連結部を更に具備してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、以下に記載する効果のうち、少なくとも何れか1つの効果を奏する。
(1)下段フレームと上段フレームとの間を連結し、各フレーム間の離隔長を調整可能な姿勢保持具でもって、ステップを任意の角度で保持できる。
(2)姿勢保持具を、ターンバックルで構成することにより、当該ターンバックルの本体部の回転動作でもって、各フレーム間の離隔長を簡便に調整することができる。
(3)アンカーピンを差し込み可能な差し込み部を設けることで、仮設階段そのものを法面に固定できるため、各フレームの下端を地面に接地させることが必須とならず、設置場所に制約を受けない。
(4)手すり用部材を差し込み可能な差し込み部を設けることで、より安全性の高い歩行路を構築することができる。
(5)連結部でもって、仮設階段同士を回動自在に連結することで、複数の仮設階段を法面の不陸に追従させながら斜面山谷方向に設置していくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】仮設階段の構造モデル上での倒伏姿勢から展開姿勢への遷移図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例】
【0010】
<1>全体構成(
図1)
本発明に係る仮設階段は、自然斜面や人工斜面(法面)等の斜面に設置して、当該斜面上に作業者等の歩行路を確保するための構造体である。
本発明に係る仮設階段は、少なくとも下段フレーム10、上段フレーム20、複数のステップ30および姿勢保持具40を具備する。
なお、
図1に示す仮設階段では、上記した下段フレーム10、上段フレーム20、複数のステップ30、および姿勢保持具40に加えて、さらに、差し込み部50および連結部60を具備している。
以下、各部材の詳細について説明する。
【0011】
<2>下段フレーム(
図1)
下段フレーム10は、斜面と接地する部材である。
本実施例において、下段フレーム10は、間隔をあけて配置する一組の桁材と、当該桁材間に架け渡す桟材(図示せず)とで、略梯子形状を呈している。
下段フレーム10は、後述する複数のステップ30について、各ステップ30の一端側を回動可能に接続している。
【0012】
<3>上段フレーム(
図1)
上段フレーム20は、下段フレーム10の上方に位置して下段フレーム10に対し、平行移動可能とした部材である。
本実施例において、上段フレーム20は、下段フレーム10と同様、間隔をあけて配置する一組の桁材と、当該桁材間に架け渡す桟材(図示せず)とで、略梯子形状を呈している。
また、上段フレーム20は、下段フレーム10を流用してもよい。
上段フレーム20は、後述する複数のステップ30について、各ステップ30の他端側を回動可能に接続している。
上記接続態様により、上段フレーム20は、下段フレーム10に対し、各ステップ30の回動を介して接近または離隔するように平行移動可能としている。
仮設階段を運搬する際や、斜面への載置作業の際には、上段フレーム20を斜面谷方向側に倒した状態としておく。この状態を倒伏姿勢とする。
【0013】
<4>ステップ(
図1)
ステップ30は、仮設階段における歩行者の踏板部分を担う部材である。
ステップ30は、下段フレーム10と上段フレーム20とを繋ぐように、両フレームに対し、それぞれ回動自在に接続している。
ステップ30は、下段フレーム10の長手方向に間隔を空けて少なくとも二箇所以上配置するものとする。
本実施例に係る仮設階段では、5箇所のステップ30を設けている。
上記配置態様により、各ステップ30は、下段フレーム10および上段フレーム20とともに、側面視上で平行クランクを構成することになる。
【0014】
<4.1>ステップの構成(
図1)
本実施例では、ステップ30を、矩形枠と、矩形枠を覆うように配置するメッシュ部材とで構成しており、このメッシュ部材が、仮設階段における踏板表面を構成する。本実施例では、メッシュ部材として金網を用いている。
矩形枠は、ステップ30の左右方向(仮設階段の幅方向)の対向面において、内側に折り返した箇所を設けている。この折り返し箇所に、金網を構成する素線の端部を溶接している。
また、ステップ30の前後方向(仮設階段の長手方向)では、金網を構成する素線の端部を下方に折り曲げて、前記した矩形枠の内周面に溶接している。
【0015】
<5>姿勢保持具(
図1,
図2)
姿勢保持具40は、仮設階段の姿勢を保持するための部材である。
より詳細には、姿勢保持具40は、下段フレーム10に対して展開移動させた上段フレーム20に対し、上段フレーム20の自重による戻りを規制するための部材である。
姿勢保持具40は、全長を任意の長さに調整可能な伸縮部材を用いることができる。この伸縮部材の両端部に、下段フレーム10または上段フレーム20との連結機構を設けて、下段フレーム10および上段フレーム20の間を繋いでおき、伸縮部材の伸縮長の調整でもって、連結箇所間の離隔長を調整することができる。
【0016】
<5.1>姿勢保持具の構成(
図1)
図1では、姿勢保持具40としてターンバックルを用いている。
姿勢保持具40として使用されるターンバックルは、ナット要素となる本体部41と、ボルト要素として本体部41に螺合される右ネジ部42および左ネジ部43と、各フレームに取り付けて各ネジ部を係止可能なフック44からなる。
各ネジ部42,43の解放端側には係止孔を設けておき、各フレームの側面に回動自在に連結したフック44に係止することで、下段フレーム10と上段フレーム20の間に姿勢保持具40を介在させることができる。
また、姿勢保持具40は、前記した倒伏姿勢(下段フレーム10に対し上段フレーム20を斜面谷方向側に倒した状態)において、下段フレーム10と姿勢保持具40との連結箇所が、上段フレーム20と姿勢保持具40との連結箇所よりも斜面山方向側に位置させている。
【0017】
<5.2>姿勢保持具による作用(
図2)
図2(a)は、倒伏姿勢の仮設階段を斜面Xに載置した状態を示している。
この状態から、本体部41を回転させて当該本体部41に螺合してある右ネジ部42および左ネジ部43が互いに接近させると、下段フレーム10との連結箇所と上段フレーム20との連結箇所との間の離隔長が縮長(L1>L2)し、上段フレーム20が斜面山方向に持ち上げられるように移動して、各ステップ30は、倒伏した状態から起立する方向へと回動する(
図2(b))。この状態を展開姿勢とする。
ステップ30の展開角度は、姿勢保持具40による離隔長の調整によって、任意の角度に調整することができる。
【0018】
この展開姿勢において上段フレーム20は、自重や作業員等の通行による荷重によって前記した倒伏姿勢へ戻ろうとする力が働くものの、姿勢保持具40において右ネジ部42および左ネジ部43が離隔するように本体部41を逆回転させない限り、上段フレーム20が斜面谷方向に移動することはなく、ステップ30の角度も保持されることになる。
【0019】
なお、本発明において、姿勢保持具による離隔長の調整作業と、上段フレーム20を展開作業の順番は特段限定するものではない。例えば、上段フレームを所定の位置まで人力で保持した状態から、姿勢保持具による離隔長の縮長作業を行ってステップ30の角度を保持するように使用してもよい。
また、斜面の角度が低い場合(例:20度前後)には、姿勢保持具による離隔長の調整を行わず、倒伏姿勢のまま斜面に設置しても、ステップを踏板として使用することもできる。
【0020】
<6>差し込み部(
図1,
図3)
差し込み部50は、仮設階段を斜面上に固定するためのアンカーピンや、仮設階段に手すりを設けるための手すり用部材を差し込むための部位である。
本実施例では、差し込み部50として、下段フレーム10を構成する桁材の外側面に、別途ナットで締結したU字ボルトを用いている。
図3に示す仮設階段は、アンカーピンBを、差し込み部50を経由して斜面に打ち込んだ状態を示している。なお、
図3において、手すり用部材は図示していない。
このように、差し込み部50を介して、斜面への固定や手すりの構築等を行うことで、歩行路としての安全性を高めることができる。
【0021】
<7>連結部(
図1,
図3)
連結部60は、複数の仮設階段を斜面の山谷方向に並べて連結するための部位である。
本実施例では、
図1に示すように、下段フレーム10を構成する桁材の上端側および下端側にそれぞれ形成した挿通孔でもって、連結部60を構成している。
また、
図3では、斜面の山谷方向に隣り合う仮設階段を、互いの下段フレーム10を斜面幅方向に互い違いとなるように重ねて配置しつつ、各連結部60を連結具Cで繋ぐことで、一方の仮設階段A1と他方の仮設階段A2とを互いに回動自在に構成している。
このように、一方の仮設階段A1と他方の仮設階段A2とを回動自在に連結することで、斜面上の勾配の変化や不陸に対して、仮設階段を適宜斜面に追従させつつ、一体化した仮設階段群を構築することができる。
【符号の説明】
【0022】
A :仮設階段
10:下段フレーム
20:上段フレーム
30:ステップ
40:姿勢保持具
41:本体部
42:右ネジ部
43:左ネジ部
44:フック
50:差し込み部
B :アンカーピン
C :連結具
X :斜面
【要約】
【課題】設置場所を問わずかつ簡便な作業で任意の角度に保持した踏板部分を構築可能な仮設階段を提供する。
【解決手段】下段フレーム10、上段フレーム20、ステップ30および姿勢保持具40を少なくとも具備する。下段フレーム10および上段フレーム20の間には、ステップ30および姿勢保持具40を回動自在に連結する。姿勢保持具40は下段フレーム10との連結箇所と上段フレーム20との連結箇所との間の離隔長を調整可能である。使用時には、姿勢保持具40による離隔長の調整によって下段フレーム10に対するステップ30の姿勢を保持して踏板部分とする。
【選択図】
図1