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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】刺しゅう枠
(51)【国際特許分類】
   D05B 39/00 20060101AFI20230403BHJP
   D05C 9/04 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
D05B39/00
D05C9/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018198720
(22)【出願日】2018-10-22
(65)【公開番号】P2020065612
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】株式会社ジャノメ
(74)【代理人】
【識別番号】100186358
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100191145
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 整博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悟拡
【審査官】津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09340913(US,B1)
【文献】特開2008-279184(JP,A)
【文献】実開平7-15793(JP,U)
【文献】特開平2-269861(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第03919861(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 39/00
D05C 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状の内枠と、夫々の対向面で対向する第1端部と第2端部とを有し、前記内枠の外側から被縫製物を挟持する外枠と、前記第1端部と第2端部との間隔を調節する締め付けユニットとを備える刺しゅう枠であって、
前記締め付けユニットは、前記第1端部と第2端部との間隔が変化する方向を軸方向とする連通軸と、前記連通軸に接続され、前記第1端部に対する押圧により前記第1端部と前記第2端部との間隔を調節する操作部材と、前記連通軸に通され、前記操作部材による押圧によって前記連通軸の軸方向に伸縮し、前記第1端部を前記第2端部側へ押圧する弾性体と、前記連通軸に通され、前記弾性体と前記操作部材との間に配置され、前記操作部材の押圧によ前記弾性体が縮むことで移動する圧力把握部材と、前記第1端部に形成され、前記圧力把握部材の位置を確認する位置確認部とを有し、
前記連通軸は、第1端部側に前記連通軸と直交する第1縦軸を有し、
前記操作部材は、前記第1縦軸の軸中心から異なる距離のカム面を有し、
前記操作部材は、前記第1縦軸を中心に回動することにより前記弾性体を押圧することを特徴とする刺しゅう枠。
【請求項2】
前記連通軸は、第2端部側に前記連通軸と直交する第2縦軸を有し、
前記第2縦軸の軸中心から異なる距離のカム面を有し、前記第2縦軸を中心に回動することにより前記第2端部を前記第1端部側へ押圧する厚み調節部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の刺しゅう枠。
【請求項3】
前記第1端部は、前記連通軸を挿通する第1貫通孔と、前記弾性体を収容する収容凹部とを有し、
前記第2端部は、前記連通軸を挿通する第2貫通孔を有することを特徴とする請求項1または2に記載の刺しゅう枠。
【請求項4】
前記圧力把握部材は、前記位置確認部を介して前記弾性体の圧力が適切か否かを判別する判別表記を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の刺しゅう枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺しゅう機能を有するミシンに装着する刺しゅう枠に関し、特に、刺しゅう枠の内枠と外枠との間に被縫製物を挟持する際の締め付け圧が容易に調節できる刺しゅう枠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、両端部同士が対向するように形成された外枠と、前記外枠の内側に嵌め込み可能となるように形成された内枠とを有し、被縫製物を前記内枠と前記外枠の間に挟み込んで保持する刺しゅう枠において、被縫製物を前記内枠とともに挟み込んで保持する位置と、挟み込みから解放する位置との間で前記外枠の端部を移動可能とするように操作可能に設けられた操作部材と、前記操作部材の操作により被縫製物を前記外枠と前記内枠とで挟み込んで保持した状態における前記外枠の両端部間の間隔を調節する間隔調節部材とを備え、前記間隔調節部材により前記外枠の端部間隔を被縫製物の厚みに応じて調整可能なミシンの刺しゅう枠装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、前記特許文献1記載の刺しゅう枠装置では、被縫製物を外枠と内枠との間で挟持する際に、被縫製物を挟持する締め付け圧が適切であるかを確認することができない。
この課題に対して、内部面積を自在に変えることができるように分割された辺を持つ外枠と、外枠に加工布を固定する内枠と、外枠の分割された辺に装着され、加工布の締め付け量を調整できる締め付けねじと、締め付けねじを加工布の布厚に応じた締め付け位置に調整可能にするための締め付け目盛とを備え、締め付けねじの下端を締め付け目盛りに合わせることで、加工布の布厚に合った、適度な張りをもたせることができる刺しゅう枠が知られている(特許文献2参照)。
【0004】
さらに、前記課題に対して、外枠と、この外枠に内嵌されて当該外枠との間に加工布を挟持可能な内枠と、この内枠に対して前記外枠を締め付けるための締め付け機構と、を有する刺しゅう枠において、前記刺しゅう枠に設けられ、前記締め付け機構で前記外枠を締め付けることにより前記外枠の内周面と前記内枠の外周面との間に作用する前記加工布を挟持する圧力を検出する圧力検出器を設け、ユーザが加工布を挟持する圧力の適否を容易に判定できる刺しゅう枠も知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-279184号公報
【文献】実開平7-15793号公報
【文献】特開2015-62560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献2記載の刺しゅう枠では、使用する加工布の布厚に応じて分割された辺の間隔を調節することはできるが、加工布の物理特性(伸縮性等)が考慮されていないために、加工布の物理特性によっては加工布の布厚と締め付け目盛の布厚とが適切に対応していなかったり、想定していない圧が布にかかっていたりしても、その状況は確認できないという問題があった。
また、前記特許文献3記載の刺しゅう枠では、圧力検出器の配線等による大型化やコスト高が生じるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決することを課題とし、刺しゅう枠の内枠と外枠との間に被縫製物を挟持する際の締め付け圧の適否を確認することにより、締め付け圧が簡単に調節できる刺しゅう枠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、刺しゅう枠として、枠状の内枠と、夫々の対向面で対向する第1端部と第2端部とを有し、前記内枠の外側から被縫製物を挟持する外枠と、前記第1端部と第2端部との間隔を調節する締め付けユニットとを備える刺しゅう枠であって、前記締め付けユニットは、前記第1端部と第2端部との間隔が変化する方向を軸方向とする連通軸と、前記連通軸に接続され、前記第1端部に対する押圧により前記第1端部と前記第2端部との間隔を調節する操作部材と、前記連通軸に通され、前記操作部材による押圧によって前記連通軸の軸方向に伸縮し、前記第1端部を前記第2端部側へ押圧する弾性体と、前記連通軸に通され、前記弾性体と前記操作部材との間に配置され、前記操作部材の押圧によ前記弾性体が縮むことで移動する圧力把握部材と、前記第1端部に形成され、前記圧力把握部材の位置を確認する位置確認部とを有し、前記連通軸は、第1端部側に前記連通軸と直交する第1縦軸を有し、前記操作部材は、前記第1縦軸の軸中心から異なる距離のカム面を有し、前記操作部材は、前記第1縦軸を中心に回動することにより前記弾性体を押圧することを特徴とする構成を採用する。
【0010】
本発明の刺しゅう枠の具体的実施形態として、前記連通軸は、第2端部側に前記連通軸と直交する第2縦軸を有し、前記第2縦軸の軸中心から異なる距離のカム面を有し、前記第2縦軸を中心に回動することにより前記第2端部を前記第1端部側へ押圧する厚み調節部をさらに備えることを特徴とする構成を採用し、また、前記第1端部は、前記連通軸を挿通する第1貫通孔と、前記弾性体を収容する収容凹部とを有し、前記第2端部は、前記連通軸を挿通する第2貫通孔を有することを特徴とする構成を採用し、また、前記圧力把握部材は、前記位置確認部を介して前記弾性体の圧力が適切か否かを判別する判別表記を有することを特徴とする構成を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の刺しゅう枠は、外枠の第1端部と第2端部との間隔が変化する方向を軸方向とする連通軸と、前記連通軸に接続され、前記第1端部に対する押圧により前記第1端部と前記第2端部との間隔を調節する操作部材と、前記連通軸に通され、前記操作部材による押圧によって前記連通軸の軸方向に伸縮し、前記第1端部を前記第2端部側へ押圧する弾性体と、前記連通軸に通され、前記弾性体と前記操作部材との間に配置され、前記操作部材の押圧によ前記弾性体が縮むことで移動する圧力把握部材と、前記第1端部に形成され、前記圧力把握部材の位置を確認する位置確認部とを有し、前記連通軸は、第1端部側に前記連通軸と直交する第1縦軸を有し、前記操作部材は、前記第1縦軸の軸中心から異なる距離のカム面を有し、前記操作部材は、前記第1縦軸を中心に回動することにより、前記弾性体を押圧するだけで、締め付け圧が適切であるかを確認することができ、内枠と外枠との間に、被縫製物を適切な締め付け圧により挟持することができる。
【0012】
また、本発明の刺しゅう枠は、前記連通軸が、第2端部側に前記連通軸と直交する第2縦軸を有し、前記第2縦軸の軸中心から異なる距離のカム面を有し、前記第2縦軸を中心に回動することにより前記第2端部を前記第1端部側へ押圧する厚み調節部をさらに備えることにより、内枠と外枠との間に挟持する被縫製物の厚みに応じて、締め付け圧を適切に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例に係る刺しゅう枠の外観を示す全体斜視図である。
図2】本発明の実施例に係る刺しゅう枠の外枠の要部を示す図であり、(a)は上面図、(b)は斜視図である。
図3図1の締め付けユニットを示す拡大斜視図である。
図4】本発明の実施例に係る刺しゅう枠の締め付けユニットを示す分解斜視図である。
図5】本発明の実施例に係る刺しゅう枠の締め付けユニットを示す上面図である。
図6】本発明の実施例に係る刺しゅう枠の布厚調節カムを示す図であり、(a)はカム面の説明図、(b)は上面図である。
図7】本発明の実施例に係る刺しゅう枠の布厚調節カムによる締め付け圧の調節原理を説明する模式図であり、(a)は「薄物」の場合の模式図、(b)は「厚物」の場合の模式図である。
図8】本発明の実施例に係る刺しゅう枠の締め付け圧の検知機構を示す図であり、(a)は解除状態の断面図、(b)は締め付け状態の断面図である。
図9】本発明の実施例に係る刺しゅう枠の圧力把握部材の判別表記を示す側面図である。
図10】本発明の実施例に係る刺しゅう枠の締め付け圧の第1の確認方法を示す模式図である。
図11】本発明の実施例に係る刺しゅう枠の締め付け圧の第2の確認方法を示す模式図である。
図12】本発明の実施例に係る刺しゅう枠の締め付け圧の第3の確認方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態に係る刺しゅう枠について、実施例に示した図面を参照して説明する。
なお、以下の説明では、図1の斜視図でみて、縦方向を「上下」、右下から左上方向を「前後」、左下から右上方向を「左右」とする。
【実施例
【0015】
図1において、Aは刺しゅう機能付きミシンや自動刺しゅう機などの刺しゅうミシンによって刺しゅう模様を縫う際に使用される刺しゅう枠であり、刺しゅう枠Aは、枠状の内枠Bと、夫々の対向面で対向する第1端部C1と第2端部C2とを有し、前記内枠Bの外側から被縫製物である布Fを挟持する外枠Cと、前記第1端部C1と第2端部C2との間隔Sを調節する締め付けユニットDとを備える。
【0016】
内枠Bは、平面視で略長方形状や略正方形状等の矩形状に形成され、布Fを保持可能な外側形状に形成された4辺からなる内枠体1を備えている。
なお、内枠体1の形状は、矩形状に限らず、円形や楕円形の形状であっても構わない。
【0017】
外枠Cは、内枠Bの内枠体1の外側形状に対応し、内枠体1との間で布Fを保持可能な内側形状に形成された前辺10a,左辺10b,後辺10c,右辺10dの4辺からなる外枠体10と、外枠体10の後辺10cから後方へ張り出した取付部Eとを備えている。
なお、取付部Eは、ミシン本体の上下動する針と同期してX-Y方向に移動する刺しゅうミシンの移動体(図示せず)に着脱自在に装着して使用される。
さらに、前記外枠体10の前辺10a,左辺10b,後辺10c,右辺10dの各内側下端には、内枠Bの下方位置を設定するためのリブ11が内方に向けてそれぞれ形成されている。
【0018】
図2に示すように、外枠Cは、外枠体10の前辺10aの中央で第1端部C1と第2端部C2とに切り離され、第1端部C1と第2端部C2には、それぞれ、前方に張り出した第1ブロック12と、第2ブロック13とが形成されている。
第1ブロック12は、第2ブロック13と対向する第1対向面12aと、該第1対向面12aと反対側の第1反対面12bとを有し、第2ブロック13は、第1ブロック12と対向する第2対向面13aと、該第2対向面13aと反対側の第2反対面13bとを有している。
【0019】
図2に示すように、第2ブロック13には、第2反対面13bに、ガイド凸部14が形成され、第1ブロック12と第2ブロック13には、外枠体10の前辺10aの長手方向と平行に、第1反対面12bから第1対向面12aを貫通する第1貫通孔15と、第2反対面13bから第2対向面13aを貫通する第2貫通孔16とが形成されている。
さらに、第1ブロック12には、第1反対面12bから第1貫通孔15に沿って収容凹部17が形成されるとともに、収容凹部17と直交する方向に位置確認部である観測窓18が形成されている。
【0020】
図3および4に示すように、締め付けユニットDは、第1ブロック12の第1貫通孔15と第2ブロック13の第2貫通孔16とを貫通し、外枠Cの第1端部C1と第2端部C2との間隔が変化する方向を軸方向とする連通軸20と、前記連通軸20に接続され、前記第1ブロック12の第1反対面12bに対する押圧により前記第1端部C1と前記第2端部C2との間隔Sを調節する操作部材である操作レバー22と、前記操作レバー22による押圧によって前記連通軸20の周りを軸方向に伸縮し、前記第1端部C1を前記第2端部C2側へ押圧するために、前記第1ブロック12の収容凹部17に収容される弾性体である検知ばね21と、前記操作レバー22の押圧による前記検知ばね21の圧縮長を把握する圧力把握部材23と、前記連通軸20に接続され、前記第2ブロック13の第2反対面13bに対する押圧により前記第1端部C1と前記第2端部C2との間隔Sを調節する厚み調節部である布厚調節カム24とを備えている。
【0021】
図8に示すように、前記圧力把握部材23は、収容凹部17に挿入される先端部23aと、先端部23aの後端縁から外方に拡張されるフランジ部23bとを備え、前記連通軸20の前記検知ばね21と前記操作レバー22との間に配置されている。
図4に示すように、前記連通軸20の両端には、第1端部C1側に螺設された第1ねじ部25と、第2端部C2側に螺設された第2ねじ部26とが形成されている。第1ねじ部25には、連通軸20と直交して螺合される第1縦軸27が接続され、第2ねじ部26には、連通軸20と直交して螺合される第2縦軸28が接続されている。さらに、第1縦軸27と第2縦軸28は、互いに平行になるように接続されている。
【0022】
図5に示すように、前記第1縦軸27には、操作レバー22が回動自在に取り付けられ、前記第2縦軸28には、布厚調節カム24が回動自在に取り付けられている。
操作レバー22は、第1縦軸27を中心に回動するために指を掛けるレバー部22aと、第1縦軸27の軸中心から異なる距離の操作カム面30とを有している。
また、図6(a)に示すように、布厚調節カム24は、第2縦軸28を中心に回動する際に、第2縦軸28の軸中心からA~Dの異なる距離に変化することで、布Fの布厚に対応する調節カム面31を有している。
さらに、図4に示すように、布厚調節カム24は、第2ブロック13の第2反対面13bに形成されたガイド凸部14に沿って摺動可能なガイド凹部32を有している。
【0023】
つぎに、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
まず、本実施例の刺しゅう枠Aに布Fを装着するには、操作レバー22を図1、3および5に示す状態にすることにより、外枠Cの第1端部C1と第2端部C2との間隔Sを拡げた状態にしておく。
この状態で、布Fを内枠Bの内枠体1に張った状態のまま、外枠Cの上方から外枠体10の内側に挿入し、内枠体1の下面に張った布Fが外枠体10のリブ11に当接するまで下方に押し込む。
【0024】
その後、使用する布Fの布厚に応じて、外枠Cの締め付け圧を調節するために、布厚調節カム24の上面に図6(b)のように表記された「薄物」、「中厚物」および「厚物」に応じて布厚調節カム24の調節カム面31を選択し、選択した調節カム面31が第2ブロック13の第2反対面13bと当接するように、第2縦軸28を中心に、布厚調節カム24を回動すると、選択された調節カム面31が第2ブロック13の第2反対面13bと当接し、第1端部C1と第2端部C2との間隔Sを調節することにより、外枠Cの締め付け圧を調節することができる。
【0025】
つぎに、第1縦軸27を中心に、操作レバー22のレバー部22aを外枠体10に向けて回動すると、操作レバー22に形成された操作カム面30が第1ブロック12の第1反対面12bから突出した圧力把握部材23を押圧することにより、検知ばね21を介して第1ブロック12を押圧し、外枠Cの第1端部C1と第2端部C2との間隔Sを狭めて、外枠Cの内側と内枠Bの外側との間に挟持された布Fを締め付けることができる。
【0026】
ここで、布厚調節カム24により外枠Cの締め付け圧を布厚に応じて調節する原理について説明する。
図6(a)に示すように、布厚調節カム24の調節カム面31は、第2縦軸28の軸中心からの距離がA~Dの順で長くなるため、使用者は、布厚調節カム24を回動し、布厚に応じた調節カム面31として、例えば「薄物」を選択すると、操作レバー22で外枠Cを締め付けた際に、図7(a)に示すように、第1端部C1と第2端部C2の間隔Sが小さくなるとともに、布Fを挟持する内枠Bと外枠Cとの隙間も小さくなる。
これに対して、布厚に応じた調節カム面31として「厚物」を選択すると、操作レバー22で外枠Cを締め付けた際に、図7(b)に示すように、第1端部C1と第2端部C2の間隔Sが「薄物」のときより大きくなるとともに、布Fを挟持する内枠Bと外枠Cとの隙間も大きくなり、布Fの締め付け量を変化させ、外枠Cの締め付け圧を調節することができる。
【0027】
しかしながら、布厚調節カム24により布厚に応じて外枠Cの締め付け圧を調節しても、実際の締め付け圧が適切であるかを簡単に確認することはできない。
このため、本発明では、操作レバー22と第1端部C1との間、または布厚調節カム24と第2端部C2との間のどちらかに、締め付け圧の検知機構として、連通軸20に通した検知ばね21と圧力把握部材23を挟み、操作レバー22で締め付けた際に検知ばね21が縮むことで移動する圧力把握部材23を観測窓18から観測することで、締め付け圧が適切であるかを確認することができる。
【0028】
本実施例では、締め付け圧の検知機構として、図5に示すように、操作レバー22と第1ブロック12との間に、連通軸20に通した検知ばね21と圧力把握部材23を挟む構造を採用している。
図8に示すように、第1縦軸27を中心に、操作レバー22のレバー部22aを外枠体10に向けて矢印方向に回動すると、操作レバー22に形成された操作カム面30は、第1ブロック12の第1反対面12bから突出した圧力把握部材23のフランジ部23bを押圧し、押圧された圧力把握部材23は、第1ブロック12の収容凹部17に収容された検知ばね21を先端部23aが押圧することにより、外枠Cの締め付け圧に応じて収容凹部17内を左方向に移動する。
【0029】
圧力把握部材23は、図9に示すように、先端部23aの端面23cや側面23dに判別表記である印nを付けるか、色分けp(ハッチングで示す)をしておくことで、第1ブロック12に形成された観測窓18から見た際に、圧力が適切であるか確認するための部材である。
なお、図9の(E)および(G)の場合には、薄く点線で囲われている部分は、先端部23aの端面23cを判別表記として利用した場合を示しており、実際に部材が存在しているわけではない。
【0030】
つぎに、観測窓18による締め付け圧の確認方法の例について説明する。
第1の確認方法は、図10に示すように、矩形の観測窓18の周囲に一定の間隔で目盛mを付け、目盛mの間に、圧力把握部材23の端面23cや側面23dの判別表記である印nや色分けpの境が見えることで適切な締め付け圧であることを確認する。
また、第2の確認方法は、図11に示すように、矩形の観測窓18の周囲に1点のみ目盛mを付け、その目盛mの位置が圧力把握部材23における側面23dの印nの間、または色分けpの間に見えることで適切な締め付け圧であることを確認する。
【0031】
さらに、第3の確認方法は、図12に示すように、円形の観測窓18から見える圧力把握部材23の端面23cや側面23dに付けた印n、または色分けpの変化で適正な締め付け圧であること確認する。
第3の確認方法は、観測窓18からの見え具合で、以下のように、パターン(A)~(E)の5段階に分類できる。
パターン(A)、(C)および(E)は、それぞれ、締め付け圧が過小な状態、締め付け圧が適正な状態、締め付け圧が過大な状態を示し、パターン(B)および(D)は、適切な状態としても構わないし、不適切な状態としても構わないので、必要に応じて、どちらにも設定可能である。
【0032】
前記観測窓18と圧力把握部材23による締め付け圧の確認の結果、締め付け圧が過小な状態と確認された場合には、図8(b)に示すように、布厚調節カム24を第2縦軸28を中心に「薄物」方向に回動することにより、外枠Cの締め付け圧を増大することができる。
反対に、締め付け圧が過大な状態と確認された場合には、布厚調節カム24を第2縦軸28を中心に「厚物」方向に回動することにより、外枠Cの締め付け圧を減少することができる。
【0033】
本実施例では、操作部材として、第1縦軸27を中心に回動し、第1縦軸27の軸中心から異なる距離の操作カム面30を有する操作レバー22を採用しているが、第1縦軸27および操作レバー22を省略し、連通軸20の第1ねじ部25と螺合する操作ねじ部を有し、前記操作ねじ部を回動して軸方向に移動することで圧力把握部材23を押圧するねじ式操作部材を採用しても構わない。
前記ねじ式操作部材を採用する場合には、布厚調節カム24を省略し、ねじ式操作部材を回動するだけで、前記観測窓18を見ながら、締め付け圧が適正と確認されるように外枠Cの締め付け圧を調節することができる。
なお、本実施例では、前記操作レバー22や前記操作ねじ部等の操作部材は、第1端部C1側に配置されているが、操作部材を第2端部C2側に配置して、第2端部C2を押圧するようにしても良い。この場合でも、第1端部C1に当接する弾性体の圧縮長から、圧力を把握することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の刺しゅう枠は、内枠と外枠との間に被縫製物を挟持する際の締め付け圧が適切であるかを観測窓と圧力把握部材で確認することにより、被縫製物を適切な締め付け圧で挟持することができ、刺しゅう機能付きミシンや自動刺しゅう機などの刺しゅうミシンに広く適用して有利なものである。
【符号の説明】
【0035】
A 刺しゅう枠
B 内枠
C 外枠
C1 第1端部
C2 第2端部
D 締め付けユニット
E 取付部
F 布(被縫製物)
S 間隔
m 目盛
n 印(判別表記)
p 色分け(判別表記)
1 内枠体
10 外枠体
10a 前辺
10b 左辺
10c 後辺
10d 右辺
11 リブ
12 第1ブロック
12a 第1対向面
12b 第1反対面
13 第2ブロック
13a 第2対向面
13b 第2反対面
14 ガイド凸部
15 第1貫通孔
16 第2貫通孔
17 収容凹部
18 観測窓(位置確認部)
20 連通軸
21 検知ばね(弾性体)
22 操作レバー(操作部材)
22a レバー部
23 圧力把握部材
23a 先端部
23b フランジ部
23c 端面
23d 側面
24 布厚調節カム(厚み調節部)
25 第1ねじ部
26 第2ねじ部
27 第1縦軸
28 第2縦軸
30 操作カム面
31 調節カム面
32 ガイド凹部
図1
図2
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図10
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図12