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特許7254419無線通信方法、プログラム、および、コーディネーター装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】無線通信方法、プログラム、および、コーディネーター装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/14 20090101AFI20230403BHJP
   H04W 28/08 20230101ALI20230403BHJP
   H04W 72/0446 20230101ALI20230403BHJP
【FI】
H04W16/14
H04W28/08
H04W72/0446
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019050953
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2020155857
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「狭空間における周波数稠密利用のための周波数有効利用技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 達哉
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 晃朗
(72)【発明者】
【氏名】横山 浩之
【審査官】望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/068286(WO,A1)
【文献】特開2006-049954(JP,A)
【文献】青木 寛 Hiroshi AOKI,無線LANにおける許容遅延を考慮した送信タイミング制御の検討,電子情報通信学会2020年総合大会講演論文集 通信1 PROCEEDINGS OF THE 2020 IEICE GENERAL CONFERENCE,2018年03月03日
【文献】吉岡 達哉 Tatsuya YOSHIOKA,狭空間における無線LANの送信タイミング制御に関する一検討,電子情報通信学会2018年総合大会講演論文集 通信1 PROCEEDINGS OF THE 2018 IEICE GENERAL CONFERENCE,日本,電子情報通信学会,2018年03月06日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00-H04W99/00
H04B7/24-H04B7/26
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の無線通信機器をそれぞれ含む無線システムであって、複数の前記無線システムを含む無線通信システムに用いられる無線通信方法であって、
前記複数の無線システム間で共通に使用するためのタイムスロットを定義するタイムスロット定義ステップであって、前記タイムスロットのスロット長とスロット開始時刻とを決定する前記タイムスロット定義ステップと、
前記無線通信機器が送信しようとしているトラフィックの送信タイミングに関するデータおよび許容遅延に関するデータであるトラフィックデータを、前記無線通信機器か収集するデータ収集ステップと、
前記トラフィックデータに基づいて、前記無線通信機器が送信しようとしているトラフィックごとに、タイムスロット数により規定されるカウンタ値であって、タイムスロット長を単位とする整数値により表される前記カウンタ値を設定するカウンタ値設定ステップであって、前記無線通信機器が送信しようとしているトラフィックごとに、前記トラフィックデータに含まれる前記許容遅延に関するデータに基づいて、前記カウンタ値を設定する前記カウンタ値設定ステップと、
1つのタイムスロットにおいて送信するトラフィック数である同一タイムスロット送信トラフィック数を設定するトラフィック数設定ステップと、
1つのタイムスロットにおいて、送信する候補となっている前記トラフィックの数が前記同一タイムスロット送信トラフィック数以下であるか否かを判定する判定ステップと、
(1)前記判定ステップにより、1つのタイムスロットにおいて、送信する候補となっている前記トラフィックの数が前記同一タイムスロット送信トラフィック数以下であると判定された場合、送信する候補となっている全ての前記トラフィックを送信対象とするトラフィックとして選択し、(2)前記判定ステップにより、1つのタイムスロットにおいて、送信する候補となっている前記トラフィックの数が前記同一タイムスロット送信トラフィック数以下ではないと判定された場合、1つのタイムスロットにおいて、送信する候補となっている前記トラフィックのカウンタ値についてのソート処理であるカウンタ値ソート処理を行い、当該カウンタ値ソート処理の結果に基づいて、前記同一タイムスロット送信トラフィック数と一致する個数のトラフィックを選択し、選択したトラフィックを、1つのタイムスロットで送信すべきトラフィックとして決定するトラフィック調整ステップと、
前記無線システムおよび前記無線通信機器の少なく一方の通信関連情報であって、(1)パケット生成周期および/またはパケット生成タイミング、(2)パケットサイズおよび/またはトラフィック量、並びに(3)許容遅延量を含む前記通信関連情報と、前記トラフィック調整ステップにより決定された、1つのタイムスロットで送信すべきトラフィックについての情報とに基づいて、前記複数の無線システムに含まれる前記無線通信機器のそれぞれに割り当てるタイムスロットの情報であるタイムスロット割当情報を生成するタイムスロット割当情報生成ステップと、
前記タイムスロット割当情報により、割り当てられたタイムスロットで規定される期間において、前記タイムスロット割当情報により割り当てられた無線通信機器が前記無線通信システムで使用されるチャネルを用いて、当該無線通信機器が、前記トラフィック調整ステップにより1つのタイムスロットで送信すべきトラフィックとして決定されたトラフィックを送信することで、無線通信を行う無線通信ステップと、
を備える無線通信方法。
【請求項2】
前記カウンタ値設定ステップは、
前記無線通信機器が送信しようとしているトラフィックの許容遅延量に相当するタイムスロット数に基づいて、前記カウンタ値の初期値を設定する、
請求項1に記載の無線通信方法。
【請求項3】
前記トラフィック調整ステップは、
1つのタイムスロットで送信すべきトラフィックの候補となったトラフィックであって、当該タイムスロットで送信するトラフィックとして選択されなかったトラフィックのカウンタ値を1だけ減算した値に更新する、
請求項1または2に記載の無線通信方法。
【請求項4】
前記判定ステップにより、1つのタイムスロットにおいて、送信する候補となっている前記トラフィックの数が前記同一タイムスロット送信トラフィック数以下ではないと判定された場合、
前記トラフィック調整ステップは、
1つのタイムスロットにおいて、送信する候補となっている前記トラフィックの許容遅延量についてソート処理を行い、前記許容遅延量についての当該ソート処理の結果、および、前記カウンタ値ソート処理の結果に基づいて、1つのタイムスロットで送信すべきトラフィックを決定する、
請求項1からのいずれかに記載の無線通信方法。
【請求項5】
前記判定ステップにより、1つのタイムスロットにおいて、送信する候補となっている前記トラフィックの数が前記同一タイムスロット送信トラフィック数以下ではないと判定された場合、
前記トラフィック調整ステップは、
1つのタイムスロットにおいて、送信する候補となっている前記トラフィックの通信の優先度を示す優先度ラベルについてソート処理を行い、前記優先度ラベルについての当該ソート処理の結果、および、前記カウンタ値ソート処理の結果に基づいて、1つのタイムスロットで送信すべきトラフィックを決定する、
請求項1からのいずれかに記載の無線通信方法。
【請求項6】
前記優先度ラベルの値を設定するためのデータを入力する入力ステップをさらに備え、
前記優先度ラベルの値は、前記入力ステップにより入力されたデータに基づいて、設定される、
請求項に記載の無線通信方法。
【請求項7】
前記優先度ラベルの値は、送信データ数が大きいトラフィックである程、優先度が高い値となるように設定される、
請求項またはに記載の無線通信方法。
【請求項8】
前記トラフィック数設定ステップは、
1つのタイムスロットにおいて送信するトラフィック数である同一タイムスロット送信トラフィック数を固定値に設定する、
請求項1からのいずれかに記載の無線通信方法。
【請求項9】
前記トラフィック数設定ステップは、
1つのタイムスロットにおいて送信するトラフィック数である同一タイムスロット送信トラフィック数を、タイムスロット間で異なる値に設定する、
請求項1からのいずれかに記載の無線通信方法。
【請求項10】
請求項1からのいずれかに記載の無線通信方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項11】
1または複数の無線通信機器をそれぞれ含む無線システムであって、複数の前記無線システムを含む無線通信システムに用いられるコーディネーター装置であって、
前記複数の無線システム間で共通に使用するためのタイムスロットを定義するタイムスロット定義部であって、前記タイムスロットのスロット長とスロット開始時刻とを決定する前記タイムスロット定義部と、
前記無線通信機器が送信しようとしているトラフィックの送信タイミングに関するデータおよび許容遅延に関するデータであるトラフィックデータを、前記無線通信機器か収集する無線システム情報取得保持部と、
前記トラフィックデータに基づいて、前記無線通信機器が送信しようとしているトラフィックごとに、タイムスロット数により規定されるカウンタ値であって、タイムスロット長を単位とする整数値により表される前記カウンタ値を設定するカウンタ値設定部であって、前記無線通信機器が送信しようとしているトラフィックごとに、前記トラフィックデータに含まれる前記許容遅延に関するデータに基づいて、前記カウンタ値を設定する前記カウンタ値設定部と、
1つのタイムスロットにおいて送信するトラフィック数である同一タイムスロット送信トラフィック数を設定し、
1つのタイムスロットにおいて、送信する候補となっている前記トラフィックの数が前記同一タイムスロット送信トラフィック数以下であるか否かを判定し、
(1)1つのタイムスロットにおいて、送信する候補となっている前記トラフィックの数が前記同一タイムスロット送信トラフィック数以下であると判定された場合、送信する候補となっている全ての前記トラフィックを送信対象とするトラフィックとして選択し、(2)1つのタイムスロットにおいて、送信する候補となっている前記トラフィックの数が前記同一タイムスロット送信トラフィック数以下ではないと判定された場合、1つのタイムスロットにおいて、送信する候補となっている前記トラフィックのカウンタ値についてのソート処理であるカウンタ値ソート処理を行い、当該カウンタ値ソート処理の結果に基づいて、前記同一タイムスロット送信トラフィック数と一致する個数のトラフィックを選択し、選択したトラフィックを、1つのタイムスロットで送信すべきトラフィックとして決定するトラフィック調整処理部と、
前記無線システムおよび前記無線通信機器の少なく一方の通信関連情報であって、(1)パケット生成周期および/またはパケット生成タイミング、(2)パケットサイズおよび/またはトラフィック量、並びに(3)許容遅延量を含む前記通信関連情報と、前記トラフィック調整処理部により決定された、1つのタイムスロットで送信すべきトラフィックについての情報とに基づいて、前記複数の無線システムに含まれる前記無線通信機器のそれぞれに割り当てるタイムスロットの情報であるタイムスロット割当情報を生成するタイムスロット割当情報生成部と、
前記タイムスロット割当情報により、割り当てられたタイムスロットで規定される期間において、前記タイムスロット割当情報により割り当てられた無線通信機器が前記無線通信システムで使用されるチャネルを用いて、当該無線通信機器が、前記トラフィック調整部により1つのタイムスロットで送信すべきトラフィックとして決定されたトラフィックを送信することで、無線通信を行うためのデータを取得する第1通信処理部と、
前記第1通信処理部により取得されたデータを各無線通信機器に送信するための第1通信インターフェースと、
を備えるコーディネーター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信技術に関し、特に、同一チャネルに複数の無線LANシステムを割り当て、トラフィックの送信タイミングを適切に制御する無線通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、本格的なIoT(Internet of Things)時代が到来し、製造やインフラなど様々な分野でIoT技術が活用されている。例えば、工場においてロボットや機械などの製造システムにIoT機器を取り付け、無線LAN(Local Area Network)経由で機器・機械の稼働状況把握や制御、品質管理が行われる。一方で、多くの製造システムが密に配置される工場においては、複数の無線機器が同時に通信を試みるため、パケット衝突が頻発し、パケットロスや遅延が発生する問題がある。
【0003】
パケット衝突を回避する手法として、使用するチャネルの割り当てや干渉検知、干渉検知時のチャネル変更や送信電力制御がある。例えば、特許文献1に記載されている技術を用いて使用するチャネルを変更することが考えられる。
【0004】
集中制御制御装置(例えば、コントローラ)を用いた制御を想定すると、制御用機器を用意し、制御対象とする無線LANシステムのアクセスポイント(AP:Access Point)を、例えば、ネットワークを介して上記集中制御装置に接続する。制御用機器は、上記集中制御装置に接続されたAPに対して前述の制御を行うことで、パケット衝突の発生を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-93708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記技術を用いた場合において、無線LANシステムが多いと、周波数軸上でチャネルが重複し、システム間干渉が発生してしまう。このような状況において、無線LANシステムによりトラフィックが送信されると、衝突が多数発生し、再送する必要が生じ、その結果、当該トラフィックの許容遅延時間内に当該トラフィックを送信することが困難となる。つまり、上記のような状況において、上記技術を用いた場合、トラフィックの送信タイミングを適切に制御することが困難である。
【0007】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、多数の無線通信端末が存在している狭空間であっても、トラフィックの送信タイミングを適切に制御することで、無線通信性能の劣化を引き起こすことなく、高速かつ高精度の無線通信を行うことができる無線通信システムで実行される無線通信方法およびプログラムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第1の発明は、1または複数の無線通信機器をそれぞれ含む無線システムであって、複数の無線システムを含む無線通信システムに用いられる無線通信方法である。無線通信方法は、タイムスロット定義ステップと、データ収集ステップと、カウンタ値設定ステップと、トラフィック数設定ステップと、判定ステップと、トラフィック調整ステップと、タイムスロット割当情報生成ステップと、無線通信ステップと、を備える。
【0009】
タイムスロット定義ステップは、複数の無線システム間で共通に使用するためのタイムスロットを定義するタイムスロット定義ステップであって、タイムスロットのスロット長とスロット開始時刻とを決定する。
【0010】
データ収集ステップは、無線通信機器が送信しようとしているトラフィックの送信タイミングに関するデータおよび許容遅延に関するデータであるトラフィックデータを、無線通信機器からから収集する。
【0011】
カウンタ値設定ステップは、無線通信機器が送信しようとしているトラフィックごとに、タイムスロット数により規定されるカウンタ値を設定する。
【0012】
トラフィック数設定ステップは、1つのタイムスロットにおいて送信するトラフィック数である同一タイムスロット送信トラフィック数を設定する。
【0013】
判定ステップは、1つのタイムスロットにおいて、送信する候補となっているトラフィックの数が同一タイムスロット送信トラフィック数以下であるか否かを判定する。
【0014】
トラフィック調整ステップは、判定ステップの判定結果に基づいて、1つのタイムスロットで送信すべきトラフィックを決定する。
【0015】
タイムスロット割当情報生成ステップは、無線システムおよび無線通信機器の少なく一方の通信関連情報と、トラフィック調整ステップにより決定された、1つのタイムスロットで送信すべきトラフィックについての情報とに基づいて、複数の無線システムに含まれる無線通信機器のそれぞれに割り当てるタイムスロットの情報であるタイムスロット割当情報を生成する。
【0016】
無線通信ステップは、タイムスロット割当情報により、割り当てられたタイムスロットで規定される期間において、タイムスロット割当情報により割り当てられた無線通信機器が無線通信システムで使用されるチャネルを用いて無線通信を行う。
【0017】
この無線通信方法では、無線通信システムに含まれる全ての機器の情報(通信状況を示す情報、通信性能を示す情報等)に基づいて共通に定義したタイムスロットを用いることで、1つのチャネルを多数の無線システムが時分割で使用することができる。また、この無線通信方法では、各通信機器が送信しようとしているトラフィックについて、例えば、送信タイミング、許容遅延量を考慮したカウンタ値であって、タイムスロット長を単位とする整数値により表されるカウンタ値を設定し、当該カウンタ値に基づいて、各タイムスロットで送信すべきトラフィックを特定する。つまり、この無線通信方法では、タイムスロット長を単位とする整数値により表されるカウンタ値を導入することにより、各タイムスロットをどのタイミングで送信するのが良いのかという組み合わせ最適化問題を簡単な手法により解くことができる。そして、この無線通信方法では、このようにして求めた解(組み合わせ最適化問題の解)に基づいて、各タイムスロットで送信すべきトラフィックを決定する。したがって、この無線通信方法を実行する無線通信システムでは、多数の無線通信機器が存在している狭空間であっても、トラフィックの送信タイミングを適切に制御することができる。その結果、この無線通信方法を実行する無線通信システムでは、無線通信性能の劣化を引き起こすことなく、高速かつ高精度の無線通信を行うことができる。
【0018】
第2の発明は、第1の発明であって、カウンタ値設定ステップは、無線通信機器が送信しようとしているトラフィックの許容遅延量に相当するタイムスロット数に基づいて、カウンタ値の初期値を設定する。
【0019】
これにより、この無線通信方法では、各トラフィックのカウンタ値の初期値をトラフィックの許容遅延量に相当するタイムスロット数に設定することができる。
【0020】
第3の発明は、第1または第2の発明であって、トラフィック調整ステップは、1つのタイムスロットで送信すべきトラフィックの候補となったトラフィックであって、当該タイムスロットで送信するトラフィックとして選択されなかったトラフィックのカウンタ値を1だけ減算した値に更新する。
【0021】
これにより、この無線通信方法では、各トラフィックのカウンタ値を調べることで、許容される遅延量まで、あとどのくらいの時間が残っているかをタイムスロット数単位で把握することができる。
【0022】
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明であって、判定ステップにより、1つのタイムスロットにおいて、送信する候補となっているトラフィックの数が同一タイムスロット送信トラフィック数以下ではないと判定された場合、トラフィック調整ステップは、1つのタイムスロットにおいて、送信する候補となっているトラフィックのカウンタ値についてソート処理を行い、当該ソート処理の結果に基づいて、1つのタイムスロットで送信すべきトラフィックを決定する。
【0023】
これにより、この無線通信方法では、1つのタイムスロットにおいて、送信する候補となっているトラフィックのカウンタ値についてのソート処理結果に基づいて、1つのタイムスロットで送信すべきトラフィックを適切に選択することができる。
【0024】
第5の発明は、第1から第4のいずれかの発明であって、判定ステップにより、1つのタイムスロットにおいて、送信する候補となっているトラフィックの数が同一タイムスロット送信トラフィック数以下ではないと判定された場合、トラフィック調整ステップは、1つのタイムスロットにおいて、送信する候補となっているトラフィックの許容遅延量についてソート処理を行い、当該ソート処理の結果に基づいて、1つのタイムスロットで送信すべきトラフィックを決定する。
【0025】
これにより、この無線通信方法では、1つのタイムスロットにおいて、送信する候補となっているトラフィックの許容遅延量についてのソート処理結果に基づいて、1つのタイムスロットで送信すべきトラフィックを適切に選択することができる。
【0026】
第6の発明は、第1から第5のいずれかの発明であって、判定ステップにより、1つのタイムスロットにおいて、送信する候補となっているトラフィックの数が同一タイムスロット送信トラフィック数以下ではないと判定された場合、トラフィック調整ステップは、1つのタイムスロットにおいて、送信する候補となっているトラフィックの通信の優先度を示す優先度ラベルについてソート処理を行い、当該ソート処理の結果に基づいて、1つのタイムスロットで送信すべきトラフィックを決定する。
【0027】
これにより、この無線通信方法では、1つのタイムスロットにおいて、送信する候補となっているトラフィックの優先度ラベルについてのソート処理結果に基づいて、1つのタイムスロットで送信すべきトラフィックを適切に選択することができる。
【0028】
第7の発明は、第6の発明であって、優先度ラベルの値を設定するためのデータを入力する入力ステップをさらに備える。優先度ラベルの値は、入力ステップにより入力されたデータに基づいて、設定される。
【0029】
これにより、この無線通信方法では、優先度ラベルの値を、例えば、可変値とすることができる。
【0030】
第8の発明は、第6または第7の発明であって、優先度ラベルの値は、送信データ数が大きいトラフィックである程、優先度が高い値となるように設定される。
【0031】
これにより、この無線通信方法では、送信データ数が大きいトラフィックである程、優先的に送信される可能性が高くなり、その結果、送信データ数が大きいトラフィックによる通信がより適切に確保される。
【0032】
第9の発明は、第1から第8のいずれかの発明であってトラフィック数設定ステップは、1つのタイムスロットにおいて送信するトラフィック数である同一タイムスロット送信トラフィック数を固定値に設定する。
【0033】
これにより、この無線通信方法では、同一タイムスロット送信トラフィック数を固定値として、1つのタイムスロットで送信すべきトラフィックを選択することができる。
【0034】
第10の発明は、第1から第8のいずれかの発明であって、トラフィック数設定ステップは、1つのタイムスロットにおいて送信するトラフィック数である同一タイムスロット送信トラフィック数を、タイムスロット間で異なる値に設定する。
【0035】
これにより、この無線通信方法では、同一タイムスロット送信トラフィック数をタイムスロット間で可変値として、1つのタイムスロットで送信すべきトラフィックを選択することができる。
【0036】
第11の発明は、第1から第10のいずれかの発明であって、無線通信方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0037】
これにより、第1から第10のいずれかの発明である無線通信方法と同様の効果を奏するプログラムを実現することができる。
【0038】
第12の発明は、1または複数の無線通信機器をそれぞれ含む無線システムであって、複数の無線システムを含む無線通信システムに用いられるコーディネーター装置である。コーディネーター装置は、タイムスロット定義部と、無線システム情報取得保持部と、カウンタ値設定部と、トラフィック調整処理部と、タイムスロット割当情報生成部と、第1通信処理部と、第1通信インターフェースと、を備える。
【0039】
タイムスロット定義部は、複数の無線システム間で共通に使用するためのタイムスロットを定義するタイムスロット定義部であって、タイムスロットのスロット長とスロット開始時刻とを決定する。
【0040】
無線システム情報取得保持部は、無線通信機器が送信しようとしているトラフィックの送信タイミングに関するデータおよび許容遅延に関するデータであるトラフィックデータを、無線通信機器からから収集する。
【0041】
カウンタ値設定部は、無線通信機器が送信しようとしているトラフィックごとに、タイムスロット数により規定されるカウンタ値を設定する。
【0042】
トラフィック調整処理部は、(1)1つのタイムスロットにおいて送信するトラフィック数である同一タイムスロット送信トラフィック数を設定し、(2)1つのタイムスロットにおいて、送信する候補となっているトラフィックの数が同一タイムスロット送信トラフィック数以下であるか否かを判定し、(3)当該判定結果に基づいて、1つのタイムスロットで送信すべきトラフィックを決定する。
【0043】
タイムスロット割当情報生成部は、無線システムおよび無線通信機器の少なく一方の通信関連情報と、トラフィック調整処理部により決定された、1つのタイムスロットで送信すべきトラフィックについての情報とに基づいて、複数の無線システムに含まれる無線通信機器のそれぞれに割り当てるタイムスロットの情報であるタイムスロット割当情報を生成する。
【0044】
第1通信処理部は、タイムスロット割当情報により、割り当てられたタイムスロットで規定される期間において、タイムスロット割当情報により割り当てられた無線通信機器が無線通信システムで使用されるチャネルを用いて無線通信を行うためのデータを取得する。
【0045】
第1通信インターフェースは、第1通信処理部により取得されたデータを各無線通信機器に送信するための通信インターフェースである。
【0046】
これにより、第1の発明と同様の効果を奏するコーディネーター装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、多数の無線通信端末が存在している狭空間であっても、トラフィックの送信タイミングを適切に制御することで、無線通信性能の劣化を引き起こすことなく、高速かつ高精度の無線通信を行うことができる無線通信システムで実行される無線通信方法およびプログラムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】第1実施形態に係る無線通信システム1000の概略構成図。
図2】第1実施形態に係るコーディネーター装置100の概略構成図。
図3】第1実施形態に係る第1アクセスポイントAP1-1の概略構成図。
図4】第1実施形態に係る無線端末STA1-1の概略構成図。
図5】無線通信システム1000で実行される処理を説明するためのシーケンス図。
図6】無線通信システム1000で実行される処理を説明するためのシーケンス図。
図7】トラフィックTr1~Tr4を送信するタイムスロットを決定する処理(タイムスロットの割り当て処理)を説明するための図(N=1の場合)。
図8】トラフィックTr1~Tr4を送信するタイムスロットを決定する処理(タイムスロットの割り当て処理)を説明するための図(N=1の場合)。
図9】トラフィックTr1~Tr4を送信するタイムスロットを決定する処理(タイムスロットの割り当て処理)を説明するための図(N=1の場合)。
図10】トラフィックTr1~Tr4を送信するタイムスロットを決定する処理(タイムスロットの割り当て処理)を説明するための図(N=1の場合)。
図11】トラフィックTr1~Tr4を送信するタイムスロットを決定する処理(タイムスロットの割り当て処理)を説明するための図(N=1の場合)。
図12】タイムスロット割当情報のデータ形式(一例)と、接続機器とノードIDの対応表とを示す図。
図13】タイムスロット割当情報のデータ形式(一例)を示す図。
図14】第2実施形態に係る無線通信システム2000の概略構成図。
図15】第2実施形態に係るコーディネーター装置100Aの概略構成図。
図16】第2実施形態の無線通信システム2000で用いるデータD_slotのデータ構造を示す図。
図17】トラフィックTr1~Tr5を送信するタイムスロットを決定する処理(タイムスロットの割り当て処理)を説明するための図(N=2の場合)。
図18】トラフィックTr1~Tr5を送信するタイムスロットを決定する処理(タイムスロットの割り当て処理)を説明するための図(N=2の場合)。
図19】トラフィックTr1~Tr5を送信するタイムスロットを決定する処理(タイムスロットの割り当て処理)を説明するための図(N=2の場合)。
図20】トラフィックTr1~Tr5を送信するタイムスロットを決定する処理(タイムスロットの割り当て処理)を説明するための図(N=2の場合)。
図21】トラフィックTr1~Tr5を送信するタイムスロットを決定する処理(タイムスロットの割り当て処理)を説明するための図(N=2の場合、優先度ラベルによる処理)
図22】トラフィックTr1~Tr5を送信するタイムスロットを決定する処理(タイムスロットの割り当て処理)を説明するための図(N=2の場合、優先度ラベルによる処理)
図23】トラフィックTr1~Tr5を送信するタイムスロットを決定する処理(タイムスロットの割り当て処理)を説明するための図(N=2の場合、優先度ラベルによる処理)
図24】同一タイムスロットでのトラフィック選択処理(N=4の場合)を説明するための図。
図25】CPUバス構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0049】
[第1実施形態]
第1実施形態について、図面を参照しながら、以下、説明する。
【0050】
<1.1:無線通信システムの構成>
図1は、第1実施形態に係る無線通信システム1000の概略構成図である。
【0051】
図2は、第1実施形態に係るコーディネーター装置100の概略構成図である。
【0052】
図3は、第1実施形態に係る第1アクセスポイントAP1-1の概略構成図である。
【0053】
図4は、第1実施形態に係る無線端末STA1-1の概略構成図である。
【0054】
無線通信システム1000は、図1に示すように、コーディネーター装置100と、第1無線システムSYS1と、第2無線システムSYS2と、第3無線システムSYS3と、を備える。コーディネーター装置100と、第1無線システムSYS1と、第2無線システムSYS2と、第3無線システムSYS3とは、それぞれ、図1に示すように、ネットワークNW1(例えば、有線ネットワーク)に接続されており、互いに通信を行うことができる。
【0055】
なお、無線通信システム1000は、複数の無線システムを含んでおり、以下では、説明便宜のために、無線通信システム1000に含まれる無線システムの数が「3」である場合を例に説明するが、これに限定されることはなく、無線通信システム1000に含まれる無線システムの数が「3」以外の数であってもよい。
【0056】
(1.1.1:コーディネーター装置)
コーディネーター装置100は、図2に示すように、第1通信インターフェース11と、第1通信処理部12と、無線システム情報取得保持部13と、タイムスロット定義部14と、カウンタ値設定部15と、トラフィック調整処理部16と、タイムスロット割当情報生成部17と、とを備える。
【0057】
第1通信インターフェース11は、ネットワークNW1を介して、外部の装置とデータ送受信を行うための通信インターフェースである。第1通信インターフェース11は、第1通信処理部12から出力されるデータD11を、ネットワークNW1を介して通信できる形式のデータD1_outにして、当該データD1_outを、ネットワークNW1を介して送信する。また、第1通信インターフェース11は、ネットワークNW1を介してデータD1_inを受信する。第1通信インターフェース11は、受信したデータD1_inを、第1通信処理部12が処理できるデータD11にして、当該データD11を第1通信処理部12に出力する。
【0058】
第1通信処理部12は、ネットワークNW1にデータを送信する場合、第1通信インターフェース11にデータD11を出力する。また、第1通信処理部12は、ネットワークNW1からデータを受信する場合、第1通信インターフェース11からデータD11を入力する。また、第1通信処理部12は、第1通信インターフェース11から入力したデータD11から、各無線システムの情報、各無線システムに含まれるアクセスポイントの情報、無線端末の情報、および/または、無線通信機器(各無線システムに含まれるアクセスポイント、無線端末を総称して「無線通信機器」という。以下同様)端末が送信しようとしている各トラフィックの送信タイミングと許容遅延量についての情報を含むデータD12を取得し、取得したデータD21を無線システム情報取得保持部13に出力する。また、第1通信処理部12は、タイムスロット定義部14から出力されるデータD_slot_defと、タイムスロット割当情報生成部17から出力されるデータD_slotを入力し、データD_slot_defおよび/またはデータD_slotを含むデータを生成し、生成したデータをデータD11(送信用データ)として、第1通信インターフェース11に出力する。
【0059】
無線システム情報取得保持部13は、第1通信処理部12から出力されるデータD12を入力する。無線システム情報取得保持部13は、データD12から、各無線システムの情報、各無線システムに含まれるアクセスポイントの情報、無線端末の情報、および/または、無線通信機器が送信しようとしている各トラフィックの送信タイミングと許容遅延量についての情報を取得する。そして、無線システム情報取得保持部13は、取得した情報を含むデータを無線システム情報Info_sysとして、タイムスロット定義部14と、カウンタ値設定部15と、タイムスロット割当情報生成部17とに出力する。
【0060】
タイムスロット定義部14は、無線通信システム1000で使用するタイムスロットを定義する処理(タイムスロット定義処理)を実行する。タイムスロット定義部14は、無線システム情報取得保持部13から出力される無線システム情報Info_sysを入力し、無線システム情報Info_sysに基づいて、タイムスロット定義処理を実行し、タイムスロットを規定(定義)するために必要なデータをデータD_slot_defとして取得する。そして、タイムスロット定義部14は、取得部したデータD_slot_defをカウンタ値設定部15と、第1通信処理部12とに出力する。また、タイムスロット定義部14は、初期値として、例えば、無線通信システム1000の初期状態や無線環境の定常状態に基づいて、タイムスロットを規定するために必要なデータD_slot_defを取得し、取得したデータD_slot_defを第1通信処理部12およびカウンタ値設定部15に出力する。
【0061】
カウンタ値設定部15は、無線システム情報取得保持部13から出力される無線システム情報Info_sysと、タイムスロット定義部14から出力されるデータD_slot_defとを入力する。カウンタ値設定部15は、無線システム情報Info_sysと、データD_slot_defとに基づいて、無線通信機器が送信しようとしている各トラフィックのカウンタ値Cnt(TrX)(TrXはトラフィックを特定する変数)を設定する。具体的には、カウンタ値設定部15は、無線通信機器が送信しようとしている各トラフィックの送信タイミングと、許容遅延に基づいて、カウンタ値Cnt(TrX)を設定する。そして、カウンタ値設定部15は、各トラフィックの送信タイミングおよびカウンタ値Cnt(TrX)を含むデータをデータD_cntとして、トラフィック調整処理部16に出力する。なお、カウンタ値Cnt(TrX)は、トラフィックTrXのカウンタ値を示すものであり、0以上の整数で表現される。
【0062】
トラフィック調整処理部16は、無線システム情報取得保持部13から出力される無線システム情報Info_sysと、カウンタ値設定部15から出力されるデータD_cntとを入力する。トラフィック調整処理部16は、無線通信機器が送信しようとしている各トラフィックの送信タイミングと、カウンタ値Cnt(TrX)とに基づいて、各タイムスロットで送信するトラフィックを特定するためのトラフィック調整処理を実行する。そして、トラフィック調整処理部16は、トラフィック調整処理の結果を示すデータをデータD_adjとしてタイムスロット割当情報生成部17に出力する。
【0063】
タイムスロット割当情報生成部17は、無線システム情報取得保持部13から出力される無線システム情報Info_sysと、トラフィック調整処理部16から出力されるデータD_adjとを入力する。タイムスロット割当情報生成部17は、無線システム情報Info_sysと、データD_adjとに基づいて、無線通信システム1000で使用するタイムスロット割当情報を生成し、生成したタイムスロット割当情報をデータD_slotとして、第1通信処理部12に出力する。
【0064】
(1.1.2:第1無線システム)
第1無線システムSYS1は、図1に示すように、第1アクセスポイントAP1-1と、2つの無線端末STA1-1および無線端末STA1-2とを備える。なお、第1無線システムSYS1は、3つ以上の無線端末を備えるものであってもよい。
【0065】
(1.1.2.1:第1アクセスポイント)
第1アクセスポイントAP1-1は、図3に示すように、第2通信インターフェース21と、第2通信処理部22と、RF処理部23と、タイムスロット情報記憶部24と、無線システム情報取得保持部25と、アンテナAnt1とを備える。
【0066】
第2通信インターフェース21は、ネットワークNW1を介して、外部の装置とデータ送受信を行うための通信インターフェースである。第2通信インターフェース21は、第2通信処理部22から出力されるデータD21を、ネットワークNW1を介して通信できる形式のデータD2_outにして、当該データD2_outを、ネットワークNW1を介して送信する。また、第2通信インターフェース21は、ネットワークNW1を介してデータD2_inを受信する。第2通信インターフェース21は、受信したデータD2_inを、第2通信処理部22が処理できるデータD21にして、当該データD21を第2通信処理部22に出力する。
【0067】
第2通信処理部22は、ネットワークNW1にデータを送信する場合、第2通信インターフェース21にデータD21を出力する。また、第2通信処理部22は、ネットワークNW1からデータを受信する場合、第2通信インターフェース21からデータD21を入力する。また、第2通信処理部22は、第2通信インターフェース21から入力したデータD21から、タイムスロット割当情報を含むデータD_slotを取得し、取得したデータD_slotをタイムスロット情報記憶部24に出力する。また、第2通信処理部22は、第2通信インターフェース21から入力したデータD21から、タイムスロットを定義するための情報(タイムスロット定義情報)を含むデータD_slot_defを取得し、取得したデータD_slot_defをタイムスロット情報記憶部24に出力する。また、第2通信処理部22は、RF処理部23から出力されるデータD22から、アクセスポイントAP1-1が含まれる無線システムである第1無線システムSYS1の情報を含むデータD23を取得し、取得したデータD23を無線システム情報取得保持部25に出力する。また、第2通信処理部22は、無線システム情報取得保持部25から出力される第1無線システムの情報Info_sys(SYS1)を入力する。
【0068】
RF処理部23は、第2通信処理部22から出力されるデータD22を入力し、入力したデータD22に対して、送信用のRF処理(RF変調処理等)を実行し、アンテナAnt1を介して外部へ送信することができるRF信号RF2_outを取得する。そして、RF処理部23は、アンテナAnt1を介して、外部に、RF信号RF2_outを送信する。また、RF処理部23は、アンテナAnt1を介して、外部からRF信号RF2_inを受信し、受信したRF信号RF2_inに対して受信用のRF処理(RF復調処理等)を実行し、第2通信処理部22が処理できるデータD22を取得し、取得したデータD22を第2通信処理部22に出力する。
【0069】
タイムスロット情報記憶部24は、第2通信処理部22から出力されるデータD_slot、および/または、データD_slot_defを入力し、入力したデータを記憶する。また、タイムスロット情報記憶部24は、第2通信処理部22からの指令に従い、記憶しているデータD_slot、および/または、データD_slot_defを、第2通信処理部22に出力する。
【0070】
無線システム情報取得保持部25は、第2通信処理部22から出力されるデータD23を入力し、データD23から、第1無線システムSYS1の情報Info_sys(SYS1)を取得し、取得した情報Info_sys(SYS1)を記憶(保持)する。また、無線システム情報取得保持部25は、第2通信処理部22からの指令に従い、記憶(保持)している情報Info_sys(SYS1)を第2通信処理部22に出力する。
【0071】
(1.1.2.2:無線端末)
無線端末STA1-1は、図4に示すように、アンテナAnt2と、RF処理部31と、第3通信処理部32と、タイムスロット情報記憶部33と、無線端末情報取得保持部34とを備える。
【0072】
RF処理部31は、アンテナAnt2を介して、外部からRF信号RF3_inを受信し、受信したRF信号RF3_inに対して受信用のRF処理(RF復調処理等)を実行し、第3通信処理部32が処理できるデータD31を取得し、取得したデータD31を第3通信処理部32に出力する。また、RF処理部31は、第3通信処理部32から出力されるデータD31を入力し、入力したデータD31に対して、送信用のRF処理(RF変調処理等)を実行し、アンテナAnt2を介して外部へ送信することができるRF信号RF3_outを取得する。そして、RF処理部31は、アンテナAnt2を介して、外部へ、RF信号RF3_outを送信する。
【0073】
第3通信処理部32は、アンテナAnt2を介して外部からデータを受信する場合、RF処理部31からデータD31を入力し、アンテナAnt2を介して外部へデータを送信する場合、RF処理部31へデータD31を出力する。第3通信処理部32は、RF処理部31から入力したデータD31から、タイムスロット割当情報を含むデータD_slotを取得し、取得したデータD_slotをタイムスロット情報記憶部33に出力する。また、第3通信処理部32は、RF処理部31から入力したデータD31から、タイムスロットを定義するための情報(タイムスロット定義情報)を含むデータD_slot_defを取得し、取得したデータD_slot_defをタイムスロット情報記憶部33に出力する。また、第3通信処理部32は、RF処理部31から出力されるデータD31から、無線端末STA1-1の情報を含むデータD32を取得し、取得したデータD32を無線端末情報取得保持部34に出力する。また、第3通信処理部32は、無線端末情報取得保持部34から出力される無線端末STA1-1の情報Info_sys(STA1-1)を入力する。
【0074】
なお、第2無線システムSYS2、第3無線システムSYS3は、第1無線システムSYS1と同様の構成を有している。また、第2無線システムSYS2の第2アクセスポイントAP2-1は、第1アクセスポイントAP1-1と同様の構成を有している。第3無線システムSYS3の第3アクセスポイントAP3-1は、第1アクセスポイントAP1-1と同様の構成を有している。
【0075】
また、第1無線システムSYS1の無線端末STA1-2、第2無線システムSYS2の無線端末STA2-1および無線端末STA2-2、第3無線システムSYS3の無線端末STA3-1および無線端末STA3-2は、いずれも、無線端末STA1-1と同様の構成を有している。
【0076】
<1.2:無線通信システムの動作>
以上のように構成された無線通信システム1000の動作について、以下、図面を参照しながら説明する。
【0077】
図5図6は、無線通信システム1000で実行される処理を説明するためのシーケンス図である。以下、図5図6を参照しながら、無線通信システム1000の動作について、説明する。
【0078】
(ステップS1):
ステップS1において、コーディネーター装置100のタイムスロット定義部14は、無線通信システム1000で使用するタイムスロットを定義する処理(タイムスロット定義処理)を実行する。
【0079】
タイムスロット定義部14は、初期値として、例えば、無線通信システム1000の初期状態や無線環境の定常状態に基づいて、タイムスロットを規定するために必要なデータD_slot_defを取得する。
【0080】
例えば、無線通信システム1000が、工場等の狭空間に設置されている場合、第1無線システムSYS1、第2無線システムSYS2、および、第3無線システムSYS3の無線環境の定常状態(例えば、搬送車や人の移動がないときの無線環境の状態)を予め知ることができるので、当該定常状態に基づいて、タイムスロット定義部14は、複数の無線システムで使用するための(1)タイムスロットのスロット長、(2)スロット開始時刻を決定する。そして、タイムスロット定義部14は、決定した(1)スロット長、および、(2)スロット開始時刻を含むデータD_slot_defを生成し、生成したデータD_slot_defを第1通信処理部12およびカウンタ値設定部15に出力する。
【0081】
なお、コーディネーター装置100は、例えば、各アクセスポイント(アクセスポイントAP1-1、AP2-1、AP3-1)、各無線システムに含まれる無線端末から、機器情報、通信状況等の情報を収集し、収集した当該情報に基づいて、複数の無線システムで使用するための(1)タイムスロットのスロット長、(2)スロット開始時刻を決定してもよい。
【0082】
(ステップS2):
ステップS2において、コーディネーター装置100は、各無線通信機器からデータを収集する処理(データ収集処理)を実行する。具体的には、データ収集処理は、以下のようにして処理が実行される。
【0083】
コーディネーター装置100は、第1通信処理部12により、各無線システム、および、各無線システムに含まれる無線端末から、タイムスロット割当に必要な情報を要求するデータ(リクエストデータ)を生成し、生成したリクエストデータを第1通信インターフェース11、ネットワークNW1を介して、第1アクセスポイントAP1-1、第2アクセスポイントAP2-1、および、第3アクセスポイントAP3-1に送信する。
【0084】
第1アクセスポイントAP1-1は、上記リクエストデータを、ネットワークNW1、第2通信インターフェースを介して受信し、上記リクエストデータに基づいて、第1無線システムに含まれる無線端末STA1-1、および、無線端末STA1-2から、タイムスロット割当に必要な情報を要求するデータ(リクエストデータ)を生成し、生成したリクエストデータをRF処理部23、アンテナAnt1を介して、無線端末STA1-1、および、無線端末STA1-2に送信する。
【0085】
無線端末STA1-1は、第1アクセスポイントAP1-1から送信されるリクエストデータを含むRF信号を受信し、当該RF信号に対して、受信用のRF処理を実行することで、上記リクエストデータを取得する。そして、当該リクエストデータに基づいて、無線端末STA1-1の第3通信処理部32は、無線端末情報取得保持部に保持されている無線端末情報Info_sys(STA1-1)を取得する。なお、無線端末情報Info_sys(STA1-1)には、無線端末STA1-1が送信しようとしているトラフィックの送信タイミングに関するデータおよび許容遅延に関するデータであるトラフィックデータが含まれている。
【0086】
無線端末STA1-1は、上記により取得した無線端末情報Info_sys(STA1-1)に対して送信用のRF処理を施し、無線端末情報Info_sys(STA1-1)を含むRF信号を生成する。そして、無線端末STA1-1は、生成したRF信号を、アンテナAnt2を介して、第1アクセスポイントAP1-1に送信する。
【0087】
第1アクセスポイントAP1-1は、無線端末STA1-1から受信したRF信号に対して受信用のRF処理を実行し、無線端末STA1-1のデータInfo_sys(STA1-1)を取得する。第1アクセスポイントAP1-1の第2通信処理部22は、無線端末STA1-1のデータInfo_sys(STA1-1)を第2通信インターフェース21、ネットワークNW1を介して、コーディネーター装置100に送信する。
【0088】
コーディネーター装置100の第1通信処理部12は、ネットワークNW1、第1通信インターフェース11を介して、第1アクセスポイントAP1-1から送信されるデータInfo_sys(STA1-1)を含むデータをデータD12として取得する。無線システム情報取得保持部13は、データD12から、無線端末STA1-1のデータInfo_sys(STA1-1)を取得し保持する。
【0089】
このようにして、コーディネーター装置100は、無線端末STA1-1のデータ(タイムスロット割当に必要な情報)Info_sys(STA1-1)を取得する。また、無線端末STA1-2のデータ(タイムスロット割当に必要な情報)Info_sys(STA1-2)も上記と同様の処理により取得される。
【0090】
また、第1アクセスポイントAP1-1は、コーディネーター装置100からのリクエストデータに基づいて、第1無線システムのタイムスロット割当に必要な情報であるデータInfo_sys(SYS1)を取得する。具体的には、第2通信処理部22が、無線システム情報取得保持部25から、第1無線システムのタイムスロット割当に必要な情報であるデータInfo_sys(SYS1)を取得する。なお、第1無線システムのタイムスロット割当に必要な情報であるデータInfo_sys(SYS1)は、例えば、第1無線システムで用いられるパケット生成周期、パケット生成タイミング、パケットサイズ、許容遅延、ACK/NACK情報等のデータを含んで構成される。また、無線端末情報Info_sys(SYS1)には、アクセスポイントAP1-1が送信しようとしているトラフィックの送信タイミングに関するデータおよび許容遅延に関するデータであるトラフィックデータが含まれている。また、第1無線システムのタイムスロット割当に必要な情報であるデータInfo_sys(SYS1)の一部または全部は、第1アクセスポイントAP1-1により、データ収集処理が実行されることで取得されものであってもよい。
【0091】
第1アクセスポイントAP1-1は、上記のようにして取得した第1無線システムのタイムスロット割当に必要な情報であるデータInfo_sys(SYS1)を含むデータを、ネットワークNW1を介して、コーディネーター装置100に送信する。
【0092】
コーディネーター装置100の第1通信処理部12は、ネットワークNW1、第1通信インターフェース11を介して、第1アクセスポイントAP1-1から送信されるデータInfo_sys(SYS1)を含むデータをデータD12として取得する。無線システム情報取得保持部13は、データD12から、無線端末STA1-1のデータInfo_sys(SYS1)を取得し保持する。
【0093】
上記と同様にして、第2無線システムSYS2、第3無線システムSYS3、および、それらに含まれる無線端末のタイムスロット割当に必要な情報が、コーディネーター装置100により取得される。
【0094】
つまり、コーディネーター装置100は、無線通信システム1000に含まれる全ての機器について、タイムスロット割当に必要な情報を取得し保持する。
【0095】
なお、タイムスロット割当に必要な情報は、例えば、以下のものである。
(1)パケット生成周期、パケット生成タイミング
(2)パケットサイズ
(3)許容遅延
(4)ACK/NACK情報(ハンドシェーク通信の有無)
(5)トラフィック量
(6)通信エラー情報(通信エラー頻度、再送回数等)
(7)送信しようとしているトラフィックの送信タイミング
(8)送信しようとしているトラフィックの許容遅延量
(ステップS3):
ステップS3において、コーディネーター装置100のカウンタ値設定部15は、無線システム情報取得保持部13から出力される無線システム情報Info_sysと、タイムスロット定義部14から出力されるデータD_slot_defとに基づいて、無線通信機器が送信しようとしている各トラフィックのカウンタ値Cnt(TrX)(TrXはトラフィックを特定する変数)を設定する処理を行う。具体的には、カウンタ値設定部15は、無線通信機器が送信しようとしている各トラフィックの送信タイミングと、許容遅延量に基づいて、カウンタ値Cnt(TrX)を設定する。カウンタ値設定部15は、各トラフィックの許容遅延量をタイムスロットの数により設定(特定)する。例えば、トラフィックTrXの送信タイミングが時刻txであり、トラフィックTrXの許容遅延量が、(時刻txから)X1[ms]であり、データD_slot_defにより定義されるタイムスロット長がTsl[ms]である場合、カウンタ値設定部15は、トラフィックTrxの許容遅延量を、
Cnt(TrX)=ceil(X1/Tsl)-1
ceil():天井関数、n<x≦n+1(n:整数)のとき、ceil(x)=n+1
として取得する(タイムスロット数により特定する)。カウンタ値設定部15は、上記のように取得した値を、トラフィックTrxのカウンタ値Cnt(TrX)とする。
【0096】
そして、カウンタ値設定部15は、各トラフィックの送信タイミングおよびカウンタ値Cnt(TrX)を含むデータをデータD_cntとして、トラフィック調整処理部16に出力する。
【0097】
(ステップS4):
ステップS4において、コーディネーター装置100のトラフィック調整処理部16は、無線通信機器が送信しようとしている各トラフィックの送信タイミングと、カウンタ値Cnt(TrX)とに基づいて、各タイムスロットで送信するトラフィックを特定するためのトラフィック調整処理を実行する。ここでは、トラフィックTr1~Tr4が以下のように設定されている場合のトラフィック調整処理について、図7図11を参照しながら、説明する。図7図11は、トラフィックTr1~Tr4を送信するタイムスロットを決定する処理(タイムスロットの割り当て処理)を説明するための図であり、1つのタイムスロットで送信するトラフィック数Nが「1」である場合を示している。なお、タイムスロット長は20msであるものとする。図7図11において、各トラフィックを矩形で示し、許容遅延量をTa(TrX)(トラフィックTrXの許容遅延量)と表記し、各トラフィックを示す矩形の上に矢印により示している。
(1)トラフィックTr1:
送信元:STA1-1
送信タイミング:時刻t0
許容遅延量:40ms(タイムスロット2つ分に相当)
カウンタ値:Cnt(Tr1)=1
(2)トラフィックTr2:
送信元:STA1-2
送信タイミング:時刻t0
許容遅延量:60ms(タイムスロット3つ分に相当)
カウンタ値:Cnt(Tr2)=2
(3)トラフィックTr3:
送信元:AP1-1
送信タイミング:時刻t0
許容遅延量:20ms(タイムスロット1つ分に相当)
カウンタ値:Cnt(Tr3)=0
(4)トラフィックTr4:
送信元:AP1-1
送信タイミング:時刻t2
許容遅延量:40ms(タイムスロット2つ分に相当)
カウンタ値:Cnt(Tr4)=1
上記のように設定されたトラフィックTr1~Tr4は、図7に示す状態に対応する。図7に示すように、1番目のタイムスロット(時刻t0~t1のタイムスロット)において、3つのトラフィックTr1からTr3が送信候補となっているが、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数Nは「1」であるので、どのトラフィックを1番目のタイムスロットのタイムスロットで送信すべきか決定する必要がある。
【0098】
そこで、トラフィック調整処理部16は、以下のように処理を行う。
(1A)k番目(k:自然数)のタイムスロットにおいて、送信候補となっているトラフィック数が、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数N(図7の場合、N=1)以下である場合、送信候補となっているトラフィックを、k番目のタイムスロットにて送信するトラフィックに決定する。
(1B)k番目(k:自然数)のタイムスロットにおいて、送信候補となっているトラフィック数が、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数N(図7の場合、N=1)よりも大きい場合、送信候補となっているトラフィックを、カウンタ値Cntでソートし、カウンタ値が小さい方からN個(図7の場合、N=1)を選択し、選択したトラフィックをk番目のタイムスロットにて送信するトラフィックに決定する。
(2)k番目のタイムスロットでの送信候補となっていたトラフィックであって、k番目のタイムスロットで送信するトラフィックに決定されなかったトラフィックについては、k+1番目のタイムスロットでの送信候補のトラフィックとし、当該トラフィックのカウンタ値Cntを「1」減算した値に変更する。
【0099】
トラフィック調整処理部16は、上記の(1A)、(1B)、(2)の処理を繰り返し実行し、各タイムスロットで送信するトラフィックを決定する。
【0100】
図7の場合、1番目のタイムスロットにおいて、送信候補となっているトラフィックは、トラフィックTr1~Tr3の3つであり、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数N(=1)よりも大きいので、トラフィック調整処理部16は、トラフィックTr1~Tr3をカウンタ値Cntでソートする(処理(1B))。
【0101】
そして、トラフィック調整処理部16は、カウンタ値が小さい方からN個(N=1)を選択する。図7の場合、トラフィック調整処理部16は、最もカウンタ値が小さいトラフィックTr3(Cnt(Tr3)=0)を選択し、当該トラフィックTr3(送信元:AP1-1)を1番目のタイムスロットにて送信するトラフィックに決定する(処理(1B))。
【0102】
また、トラフィック調整処理部16は、1番目のタイムスロットでの送信候補となっていたトラフィックであって、1番目のタイムスロットで送信するトラフィックに決定されなかったトラフィックTr1、Tr2については、2番目のタイムスロット(時刻t1~t2のタイムスロット)での送信候補のトラフィックとし、当該トラフィックTr1、Tr2のカウンタ値Cntを「1」減算した値に変更する。つまり、トラフィック調整処理部16は、
Cnt(Tr1)=1-1=0
Cnt(Tr2)=2-1=1
に相当する処理を行う(処理(2))。
【0103】
上記処理後、図8に示すように、トラフィック調整処理部16は、2番目のタイムスロットで送信するトラフィックを決定する処理を行う。
【0104】
つまり、図8に示すように、2番目のタイムスロットにおいて、送信候補となっているトラフィックは、トラフィックTr1~Tr2の2つであり、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数N(=1)よりも大きいので、トラフィック調整処理部16は、トラフィックTr1~Tr2をカウンタ値Cntでソートする(処理(1B))。
【0105】
そして、トラフィック調整処理部16は、カウンタ値が小さい方からN個(N=1)を選択する。図8の場合、トラフィック調整処理部16は、最もカウンタ値が小さいトラフィックTr1(Cnt(Tr1)=0)を選択し、当該トラフィックTr1(送信元:STA1-1)を2番目のタイムスロットにて送信するトラフィックに決定する(処理(1B))。
【0106】
また、トラフィック調整処理部16は、2番目のタイムスロットでの送信候補となっていたトラフィックであって、2番目のタイムスロットで送信するトラフィックに決定されなかったトラフィックTr2については、3番目のタイムスロット(時刻t2~t3のタイムスロット)での送信候補のトラフィックとし、当該トラフィックTr2のカウンタ値Cntを「1」減算した値に変更する。つまり、トラフィック調整処理部16は、
Cnt(Tr2)=1-1=0
に相当する処理を行う(処理(2))。
【0107】
上記処理後、図9に示すように、トラフィック調整処理部16は、3番目のタイムスロットで送信するトラフィックを決定する処理を行う。
【0108】
つまり、図9に示すように、3番目のタイムスロットにおいて、送信候補となっているトラフィックは、トラフィックTr2、Tr4の2つであり、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数N(=1)よりも大きいので、トラフィック調整処理部16は、トラフィックTr2、Tr4をカウンタ値Cntでソートする(処理(1B))。
【0109】
そして、トラフィック調整処理部16は、カウンタ値が小さい方からN個(N=1)を選択する。図9の場合、トラフィック調整処理部16は、最もカウンタ値が小さいトラフィックTr2(Cnt(Tr2)=0)を選択し、当該トラフィックTr2(送信元:STA1-2)を3番目のタイムスロットにて送信するトラフィックに決定する(処理(1B))。
【0110】
また、トラフィック調整処理部16は、3番目のタイムスロットでの送信候補となっていたトラフィックであって、3番目のタイムスロットで送信するトラフィックに決定されなかったトラフィックTr4については、4番目のタイムスロット(時刻t3~t4のタイムスロット)での送信候補のトラフィックとし、当該トラフィックTr4のカウンタ値Cntを「1」減算した値に変更する。つまり、トラフィック調整処理部16は、
Cnt(Tr4)=1-1=0
に相当する処理を行う(処理(2))。
【0111】
上記処理後、図10に示すように、トラフィック調整処理部16は、4番目のタイムスロットで送信するトラフィックを決定する処理を行う。
【0112】
つまり、図10に示すように、4番目のタイムスロットにおいて、送信候補となっているトラフィックは、トラフィックTr4の1つであり、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数N(=1)以下であるので、送信候補となっているトラフィックTr4を、4番目のタイムスロットにて送信するトラフィックに決定する(処理(1A))。
【0113】
このように、トラフィック調整処理部16がトラフィック調整処理を行うことで、1番目から4番目のタイムスロットで送信するトラフィックを決定することができる。
【0114】
そして、トラフィック調整処理部16が、5番目以降のタイムスロットについても上記と同様の処理を行うことで、各タイムスロットで送信するトラフィックを特定することができる。このように処理した場合において、各タイムスロットで送信するトラフィックが決定された状態(一例)を図11に示す。図11から分かるように、上記のようにトラフィック調整処理が実行されることで、全てのトラフィックが許容遅延量以下となるタイミングで送信されるように配置されている。
【0115】
トラフィック調整処理部16は、トラフィック調整処理の結果を示すデータ(例えば、図11に示すように、どのトラフィックをどのタイムスロットで送信するかを決定するための情報を含むデータ)をデータD_adjとしてタイムスロット割当情報生成部17に出力する。
【0116】
(ステップS5):
ステップS5において、タイムスロット割当情報生成処理が実行される。つまり、コーディネーター装置100のタイムスロット割当情報生成部17は、無線システム情報取得保持部13から出力される無線システム情報Info_sysと、トラフィック調整処理部16から出力されるデータD_adjとに基づいて、無線通信システム1000で使用するタイムスロット割当情報を生成する。
【0117】
タイムスロット割当情報生成部17は、例えば、図12に示すように、第1ヘッダH1とペイロードP1とから構成されるデータ形式により、データD_slotを生成する。すなわち、データD_slotの1バイト目が一連のタイムスロット群の送信間隔(図12の場合、240ms)を示しており、データD_slotの2バイト目がタイムスロット群の送信間隔内に含めるタイムスロット数(図12の場合、12個)を示している。そして、3バイト目からは、ノードIDが1バイトで示されている。そして、図12の右図に示すような接続機器とノードIDとの対応表のデータを、無線通信システム1000に含まれる全ての機器が有しており、当該対応表のデータを参照することで、所定のタイムスロットに割り当てられた機器(所定のタイムスロットにおいて通信が許可される機器)を特定することができる。
【0118】
タイムスロット割当情報生成部17は、例えば、図12に示すようなデータ形式によりデータD_slotを生成する。タイムスロット割当情報生成部17は、トラフィック調整処理部16から出力されるデータD_adj(トラフィック調整処理の結果データ)に基づいて、データD_slotを生成する。例えば、図13に示すデータD_slotは、図11に示す状態により決定されたトラフィック調整処理の結果データD_adjに対応している。
【0119】
(ステップS6):
ステップS6において、コーディネーター装置100は、ステップS1~S5で生成した、(1)タイムスロット定義情報を含むデータD_slot_defと、(2)タイムスロット割当情報を含むデータD_slotとを第1アクセスポイントAP1-1に送信し、第1アクセスポイントAP1-1は、コーディネーター装置100から送信される当該データを受信する(ステップS601)。
【0120】
第1アクセスポイントAP1-1は、コーディネーター装置100から受信したデータD_slot_defとデータD_slotをタイムスロット情報記憶部24で記憶するとともに、無線端末STA1-1および無線端末STA1-2にRF処理を施した後、アンテナAnt1を介して送信する。
【0121】
無線端末STA1-1は、第1アクセスポイントAP1-1から送信される上記データを受信し、タイムスロット情報記憶部33に記憶する(ステップS602)。また、無線端末STA1-2も、無線端末STA1-1と同様の処理を行い、第1アクセスポイントAP1-1から送信される上記データを記憶する(ステップS603)。
【0122】
第2アクセスポイントAP2-1、無線端末STA2-1、STA2-2においても、上記と同様の処理が実行される(ステップS604~S606)。
【0123】
また、第3アクセスポイントAP1-3、無線端末STA3-1、STA3-2においても、上記と同様の処理が実行される(ステップS607~S609)。
【0124】
なお、無線通信システム1000において、データD_slot(タイムスロット割当情報)は、定期的にコーディネーター装置100から各アクセスポイントに送信され、かつ、定期的に各アクセスポイントから、当該アクセスポイントが属する無線システムの無線端末に、例えば、ビーコンにより送信される。
【0125】
以上により、無線通信システム1000の全ての機器は、(1)タイムスロット定義情報を含むデータD_slot_defと、(2)タイムスロット割当情報を含むデータD_slotとを記憶保持した状態となる。そして、無線通信システム1000の全ての機器(無線通信機器)は、それぞれ、タイムスロット割当情報を含むデータD_slotに従って、トラフィックを、タイムスロット割当情報で示されているタイムスロット内で送信する(例えば、図11に示したデータD_slotに従って、トラフィックを送信する)。これにより、無線通信システム1000では、各トラフィックが適切なタイミングで送信される。
【0126】
以上のように、無線通信システム1000では、無線通信システム1000に含まれる全ての機器の情報(通信状況を示す情報、通信性能を示す情報等)に基づいて共通に定義したタイムスロットを用いることで、1つのチャネルを多数の無線システムが時分割で使用することができる。また、無線通信システム1000では、上記のように、各通信機器が送信しようとしているトラフィックについて、送信タイミング、許容遅延量を考慮したカウンタ値であって、タイムスロット長を単位とする整数値により表されるカウンタ値を設定し、当該カウンタ値に基づいて、各タイムスロットで送信すべきトラフィックを特定する。つまり、無線通信システム1000では、タイムスロット長を単位とする整数値により表されるカウンタ値を導入することにより、各タイムスロットをどのタイミングで送信するのが良いのかという組み合わせ最適化問題を簡単な手法により解くことができる。そして、無線通信システム1000では、このようにして求めた解(組み合わせ最適化問題の解)に基づいて、各タイムスロットで送信すべきトラフィックを決定する。したがって、無線通信システム1000では、多数の無線通信機器が存在している狭空間であっても、トラフィックの送信タイミングを適切に制御することができる。その結果、無線通信システム1000では、無線通信性能の劣化を引き起こすことなく、高速かつ高精度の無線通信を行うことができる。
【0127】
なお、無線通信システム1000では、上記のトラフィック調整処理において、各通信機器が送信しようとしているトラフィックのカウンタ値の初期値を、当該トラフィックの許容遅延量をタイムスロット長で換算した整数値に設定することで、トラフィックの送信タイミングをより適切に制御することができる。
【0128】
つまり、無線通信システム1000では、各通信機器が送信しようとしているトラフィックのカウンタ値の初期値を、当該トラフィックの許容遅延量に相当するタイムスロット数に設定し、各通信機器が希望した送信タイミングのタイムスロットにおいて、送信候補のトラフィックとして割り当てる。そして、無線通信システム1000では、(1)当該タイムスロットにおける送信候補のトラフィック数が1つのタイムスロットにおいて送信するトラフィック数以下である場合、送信候補のトラフィックを当該タイムスロットで送信するトラフィックに決定し、(2)当該タイムスロットにおける送信候補のトラフィック数が1つのタイムスロットにおいて送信するトラフィック数よりも多い場合、カウンタ値でソートし、カウンタ値の小さい方からN個(N:1つのタイムスロットで送信可能なトラフィック数)のトラフィックを選択し、選択したN個のトラフィックを当該タイムスロットで送信するトラフィックに決定する。
【0129】
そして、無線通信システム1000では、タイムスロットでの送信候補となっていたトラフィックであって、当該タイムスロットで送信するトラフィックに決定されなかったトラフィックについては、次のタイムスロットでの送信候補のトラフィックとし、当該トラフィックのカウンタ値Cntを「1」減算した値に変更する。これにより、あるタイムスロットにおいて、送信するトラフィックを決定するときに、トラフィックのカウンタ値を調べることで、当該トラフィックをあとタイムスロットいくつ分だけ後ろにずらすことができるかを容易に把握することができる。つまり、無線通信システム1000では、タイムスロットでの送信候補となっていたトラフィックを後ろにずらす度にカウンタ値を1だけ減算するため、トラフィックのカウンタ値がC1である場合、当該トラフィックは、あとC1回だけ後ろにずらすことができることを容易に把握することができる。例えば、送信タイミングが第k番目のタイムスロットの開始時刻であり、カウンタ値の初期値(許容遅延量に相当する値)がC0であるトラフィックについては、上記処理により、n回後ろにずらした場合(n回送信候補から外れた場合)、当該トラフィックのカウンタ値は、C0-nとなっており、この値が、例えば、「1」であれば、あと1回後ろにずらすことができ(あと1回だけ後のタイムスロットの送信候補とすることができ)、「0」であれば、これ以上後ろにずらすことができない(これ以上後ろにずらすと許容遅延量を超えてしまう)ことを把握することができる。
【0130】
このように、無線通信システム1000では、タイムスロット長を単位とする整数値により表されるカウンタ値を導入し、上記のように処理することで、各タイムスロットをどのタイミングで送信するのが良いのかという組み合わせ最適化問題を簡単な手法により解くことができる。したがって、無線通信システム1000では、無線通信システム1000に含まれる無線通信機器が多数であっても、各無線通信機器のトラフィックの送信タイミングを適切に決定することができる。
【0131】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について、説明する。なお、上記実施形態と同様の部分については、同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0132】
図14は、第2実施形態に係る無線通信システム2000の概略構成図である。
【0133】
図15は、第2実施形態に係るコーディネーター装置100Aの概略構成図である。
【0134】
図16は、第2実施形態の無線通信システム2000で用いるデータD_slotのデータ構造を示す図である。
【0135】
<2.1:無線通信システムの構成>
第2実施形態の無線通信システム2000では、図14に示すように、第1実施形態の無線通信システム1000において、コーディネーター装置100をコーディネーター装置100Aに置換した構成を有している。そして、第2実施形態のコーディネーター装置100Aは、図15に示すように、第1実施形態のコーディネーター装置100において、トラフィック調整処理部16を、トラフィック調整処理部16Aに置換した構成を有している。これ以外については、無線通信システム2000は、無線通信システム1000と同様である。
【0136】
トラフィック調整処理部16Aは、1つのタイムスロットにおいて、送信候補のトラフィックをカウンタ値のソート結果だけからでは特定できない場合に、どのトラフィックを選択するかの処理を行う。この点において、トラフィック調整処理部16Aは、第1実施形態のトラフィック調整処理部16と相違する。なお、トラフィック調整処理部16Aは、各トラフィックの許容遅延量に関するデータを記憶保持することができ、また、優先度ラベルを調整するための制御信号Ctl_priを入力する。
【0137】
<2.2:無線通信システムの動作>
以上のように構成された無線通信システム2000の動作について、以下、図面を参照しながら説明する。
【0138】
説明便宜のため、無線通信システム2000において、1つのタイムスロットにおいて送信するトラフィック数の上限値が「2」(N=2)である場合(一例)について、以下説明する。なお、1つのタイムスロットにおいて送信するトラフィック数の上限値Nは、「2」以外の値であってもよい。
【0139】
無線通信システム2000では、図16に示す形式のデータD_slotを用いる。本実施形態で用いるデータD_slotは、図16に示すように、図12図13に示したデータ形式に対して、第2ヘッダH2を追加したデータ形式を有している。無線通信システム2000では、第2ヘッダH2を追加したデータ形式を有するデータD_slotを用いる点が、第1実施形態の無線通信システム1000と相違する。
【0140】
そして、第2ヘッダH2には、図16に示すように、
(1)N番目のスロット(1バイト)
(2)ノード数(1バイト)
(3)ノードID(ノード数分バイト)
を単位とするデータを1または複数個含めることができる。
【0141】
例えば、図16に示した第2ヘッダH2では、
(1)1番目のスロットにおいて、ノードIDが「4」の機器とノードIDが「6」の機器とが無線通信システムが使用するチャネルを使用して通信でき、
(2)2番目のスロットにおいて、ノードIDが「3」の機器とノードIDが「1」の機器とが無線通信システムが使用するチャネルを使用して通信でき、
(3)6番目のスロットにおいて、ノードIDが「2」の機器とノードIDが「9」の機器とが無線通信システムが使用するチャネルを使用して通信でき、
(4)8番目のスロットにおいて、ノードIDが「1」の機器とノードIDが「3」の機器とが無線通信システムが使用するチャネルを使用して通信できる
ことを意味している。
【0142】
無線通信システム2000では、上記のように規定されたデータ形式を有するデータD_slotを用いることで、1つのタイムスロットにおいて、複数の無線通信機器が同一チャネルを使用して通信を行うことができる。なお、上記では、1つのタイムスロットに割り当てられている機器の数が「2」である場合のみを例示しているが、これに限定されることはなく、1つのタイムスロットに3以上の機器が通信できるように、第2ヘッダH2にデータを設定してもよい。
【0143】
無線通信システム2000において、コーディネーター装置100Aは、無線通信システム2000に含まれる全ての機器について、タイムスロット割当に必要な情報を取得し保持する。
【0144】
なお、タイムスロット割当に必要な情報は、例えば、以下のものである。
(1)パケット生成周期、パケット生成タイミング
(2)パケットサイズ
(3)許容遅延
(4)ACK/NACK情報(ハンドシェーク通信の有無)
(5)トラフィック量
(6)通信エラー情報(通信エラー頻度、再送回数等)
(7)送信しようとしているトラフィックの送信タイミング
(8)送信しようとしているトラフィックの許容遅延量
(9)優先度ラベル
第2実施形態では、第1実施形態の場合から、さらに「(9)優先度ラベル」をタイムスロット割当に必要な情報として取得する。
【0145】
コーディネーター装置100Aは、各無線通信機器から、上記情報を収集することで、無線システム情報Info_sysを取得する。
【0146】
第2実施形態の無線通信システム2000では、トラフィック調整処理(ステップS4の処理)と、タイムスロット割当情報生成処理(ステップS5の処理)と、送信処理(ステップS6の処理)とが、第1実施形態の無線通信システム1000とは相違し、その他の処理については第1実施形態と同様であるので、上記3つの処理について、以下説明する。
【0147】
なお、以下では、(1)カウンタ値、許容遅延量に基づいてトラフィック選択を行う場合と、(2)カウンタ値、許容遅延量、優先度ラベルに基づいてトラフィック選択を行う場合とに分けて説明する。
【0148】
(2.2.1:カウンタ値、許容遅延量に基づいてトラフィック選択を行う場合)
まず、(1)カウンタ値、許容遅延量に基づいてトラフィック選択を行う場合について、説明する。
【0149】
(ステップS4):
ステップS4において、コーディネーター装置100Aのトラフィック調整処理部16Aは、無線通信機器が送信しようとしている各トラフィックの送信タイミングと、カウンタ値Cnt(TrX)とに基づいて、各タイムスロットで送信するトラフィックを特定するためのトラフィック調整処理を実行する。ここでは、トラフィックTr1~Tr5が以下のように設定されている場合のトラフィック調整処理について、図17図20を参照しながら、説明する。図17図20は、トラフィックTr1~Tr5を送信するタイムスロットを決定する処理(タイムスロットの割り当て処理)を説明するための図であり、1つのタイムスロットで送信するトラフィック数Nが「2」である場合を示している。なお、タイムスロット長は20msであるものとする。図17図20において、各トラフィックを矩形で示し、許容遅延量をTa(TrX)(トラフィックTrXの許容遅延量)と表記し、各トラフィックを示す矩形の上に矢印により示している。
(1)トラフィックTr1:
送信元:STA1-1
送信タイミング:時刻ta(時刻t0よりも1タイムスロット分前の時刻)
許容遅延量:80ms(タイムスロット4つ分に相当)
カウンタ値:Cnt(Tr1)=2
(2)トラフィックTr2:
送信元:STA1-2
送信タイミング:時刻t0
許容遅延量:60ms(タイムスロット3つ分に相当)
カウンタ値:Cnt(Tr2)=2
(3)トラフィックTr3:
送信元:AP1-1
送信タイミング:時刻t0
許容遅延量:20ms(タイムスロット1つ分に相当)
カウンタ値:Cnt(Tr3)=0
(4)トラフィックTr4:
送信元:STA2-1
送信タイミング:時刻t0
許容遅延量:20ms(タイムスロット1つ分に相当)
カウンタ値:Cnt(Tr4)=0
(5)トラフィックTr5:
送信元:STA2-2
送信タイミング:時刻t0
許容遅延量:20ms(タイムスロット1つ分に相当)
カウンタ値:Cnt(Tr5)=0
上記のように設定されたトラフィックTr1~Tr5は、図17に示す状態に対応する。図17に示すように、1番目のタイムスロット(時刻t0~t1のタイムスロット)において、5つのトラフィックTr1からTr5が送信候補となっているが、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数Nは「2」であるので、どのトラフィックを1番目のタイムスロットのタイムスロットで送信すべきか決定する必要がある。
【0150】
そこで、トラフィック調整処理部16Aは、以下のように処理を行う。
(1A)k番目(k:自然数)のタイムスロットにおいて、送信候補となっているトラフィック数が、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数N(図17の場合、N=2)以下である場合、送信候補となっているトラフィックを、k番目のタイムスロットにて送信するトラフィックに決定する。
(1B)k番目(k:自然数)のタイムスロットにおいて、送信候補となっているトラフィック数が、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数N(図17の場合、N=2)よりも大きい場合、送信候補となっているトラフィックを、カウンタ値Cntでソートする。
(1B-1)カウンタ値が小さい方からN個(図17の場合、N=2)を選択できる場合、当該N個のトラフィックをk番目のタイムスロットにて送信するトラフィックに決定する。
(1B-2)カウンタ値が小さい方からN個(図17の場合、N=2)を選択できない場合、トラフィックの許容遅延量により判定する。つまり、選択処理の対象となっているトラフィックについて、許容遅延量でソートし、許容遅延量の小さい方から、トラフィックの選択個数がN個となるように、トラフィックを選択する。そして、選択されたトラフィックを、k番目のタイムスロットにて送信するトラフィックに決定する。
(2)k番目のタイムスロットでの送信候補となっていたトラフィックであって、k番目のタイムスロットで送信するトラフィックに決定されなかったトラフィックについては、k+1番目のタイムスロットでの送信候補のトラフィックとし、当該トラフィックのカウンタ値Cntを「1」減算した値に変更する。
【0151】
トラフィック調整処理部16Aは、上記の(1A)、(1B)、(1B-1)、(1B-2)、(2)の処理を繰り返し実行し、各タイムスロットで送信するトラフィックを決定する。
【0152】
図17の場合、1番目のタイムスロットにおいて、送信候補となっているトラフィックは、トラフィックTr1~Tr5の5つであり、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数N(=2)よりも大きいので、トラフィック調整処理部16Aは、トラフィックTr1~Tr5をカウンタ値Cntでソートする(処理(1B))。
【0153】
そして、トラフィック調整処理部16は、カウンタ値が小さい方からN個(N=2)を選択する。図17の場合、トラフィック調整処理部16Aは、同値で最もカウンタ値が小さいトラフィックTr4(Cnt(Tr4)=0)と、トラフィックTr5(Cnt(Tr5)=0)を選択し、当該トラフィックTr4(送信元:STA2-1)とトラフィックTr5(送信元:STA2-2)とを1番目のタイムスロットにて送信するトラフィックに決定する(処理(1B))。
【0154】
また、トラフィック調整処理部16Aは、1番目のタイムスロットでの送信候補となっていたトラフィックであって、1番目のタイムスロットで送信するトラフィックに決定されなかったトラフィックTr1~Tr3については、2番目のタイムスロット(時刻t1~t2のタイムスロット)での送信候補のトラフィックとし、当該トラフィックTr1~Tr3のカウンタ値Cntを「1」減算した値に変更する。つまり、トラフィック調整処理部16は、
Cnt(Tr1)=2-1=1
Cnt(Tr2)=2-1=1
Cnt(Tr3)=1-1=0
に相当する処理を行う(処理(2))。
【0155】
上記処理後、図18に示すように、トラフィック調整処理部16Aは、2番目のタイムスロットで送信するトラフィックを決定する処理を行う。
【0156】
つまり、図18に示すように、2番目のタイムスロットにおいて、送信候補となっているトラフィックは、トラフィックTr1~Tr3の3つであり、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数N(=2)よりも大きいので、トラフィック調整処理部16Aは、トラフィックTr1~Tr3をカウンタ値Cntでソートする(処理(1B))。
【0157】
そして、トラフィック調整処理部16Aは、カウンタ値が小さい方からN個(N=2)を選択できるか否かを判定する。図18の場合、カウンタ値の最小値は、トラフィックTr3のCnt(Tr3)=0であるが、その次にカウンタ値が小さい値は、Cnt(Tr1)とCnt(Tr2)でありその値はともに「1」であるので、選択すべきカウンタ値が小さい方からN個(N=2)のトラフィックを特定することができない。
【0158】
そこで、トラフィック調整処理部16Aは、トラフィックの許容遅延量により判定する。つまり、トラフィック調整処理部16Aは、選択処理の対象となっているトラフィックについて、許容遅延量でソートし、許容遅延量の小さい方から、トラフィックの選択個数がN個となるように、トラフィックを選択する。図18の場合、トラフィックTr1の許容遅延量Ta(Tr1)は「4」タイムスロット分の80msであり、トラフィックTr2の許容遅延量Ta(Tr2)は「3」タイムスロット分の60msであり、Ta(Tr1)>Ta(Tr2)であるので、より許容遅延量の小さいトラフィックTr2を、2番目のタイムスロットで送信するトラフィックに決定する(処理(1B-2))。
【0159】
つまり、上記処理により、図18の場合、トラフィック調整処理部16Aは、2番目のタイムスロットで送信するトラフィックを、トラフィックTr3とトラフィックTr2に決定する。
【0160】
また、トラフィック調整処理部16Aは、2番目のタイムスロットでの送信候補となっていたトラフィックであって、2番目のタイムスロットで送信するトラフィックに決定されなかったトラフィックTr1については、3番目のタイムスロット(時刻t2~t3のタイムスロット)での送信候補のトラフィックとし、当該トラフィックTr1のカウンタ値Cntを「1」減算した値に変更する。つまり、トラフィック調整処理部16Aは、
Cnt(Tr1)=1-1=0
に相当する処理を行う(処理(2))。
【0161】
上記処理後、図19に示すように、トラフィック調整処理部16Aは、3番目のタイムスロットで送信するトラフィックを決定する処理を行う。
【0162】
つまり、図19に示すように、3番目のタイムスロットにおいて、送信候補となっているトラフィックは、トラフィックTr1の1つであり、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数N(=2)以下であるので、送信候補となっているトラフィックTr1を、3番目のタイムスロットにて送信するトラフィックに決定する(処理(1A))。
【0163】
このように、トラフィック調整処理部16Aがトラフィック調整処理を行うことで、1番目から3番目のタイムスロットで送信するトラフィックを決定することができる。
【0164】
そして、トラフィック調整処理部16Aが、4番目以降のタイムスロットについても上記と同様の処理を行うことで、各タイムスロットで送信するトラフィックを特定することができる。このように処理した場合において、各タイムスロットで送信するトラフィックが決定された状態(一例)を図20に示す。図20から分かるように、上記のようにトラフィック調整処理が実行されることで、1つのタイムスロットで送信されるトラフィック数が2以下であり、かつ、全てのトラフィックが許容遅延量以下となるタイミングで送信されるように配置されている。
【0165】
トラフィック調整処理部16Aは、トラフィック調整処理の結果を示すデータ(例えば、図11に示すように、どのトラフィックをどのタイムスロットで送信するかを決定するための情報を含むデータ)をデータD_adjとしてタイムスロット割当情報生成部17に出力する。
【0166】
(ステップS5):
ステップS5において、タイムスロット割当情報生成処理が実行される。つまり、コーディネーター装置100Aのタイムスロット割当情報生成部17は、無線システム情報取得保持部13から出力される無線システム情報Info_sysと、トラフィック調整処理部16から出力されるデータD_adjとに基づいて、無線通信システム1000で使用するタイムスロット割当情報を生成する。
【0167】
タイムスロット割当情報生成部17は、例えば、図16に示すようなデータ形式によりデータD_slotを生成する。タイムスロット割当情報生成部17は、トラフィック調整処理部16Aから出力されるデータD_adj(トラフィック調整処理の結果データ)に基づいて、データD_slotを生成する。例えば、図16に示すデータD_slotは、図20に示す状態により決定されたトラフィック調整処理の結果データD_adjに対応している。
【0168】
(ステップS6):
ステップS6において、コーディネーター装置100Aは、ステップS1~S5で生成した、(1)タイムスロット定義情報を含むデータD_slot_defと、(2)タイムスロット割当情報を含むデータD_slotとを第1アクセスポイントAP1-1に送信し、第1アクセスポイントAP1-1は、コーディネーター装置100から送信される当該データを受信する(ステップS601)。
【0169】
第1アクセスポイントAP1-1は、コーディネーター装置100から受信したデータD_slot_defとデータD_slotをタイムスロット情報記憶部24で記憶するとともに、無線端末STA1-1および無線端末STA1-2にRF処理を施した後、アンテナAnt1を介して送信する。
【0170】
無線端末STA1-1は、第1アクセスポイントAP1-1から送信される上記データを受信し、タイムスロット情報記憶部33に記憶する(ステップS602)。また、無線端末STA1-2も、無線端末STA1-1と同様の処理を行い、第1アクセスポイントAP1-1から送信される上記データを記憶する(ステップS603)。
【0171】
第2アクセスポイントAP2-1、無線端末STA2-1、STA2-2においても、上記と同様の処理が実行される(ステップS604~S606)。
【0172】
また、第3アクセスポイントAP1-3、無線端末STA3-1、STA3-2においても、上記と同様の処理が実行される(ステップS607~S609)。
【0173】
なお、無線通信システム1000において、データD_slot(タイムスロット割当情報)は、定期的にコーディネーター装置100から各アクセスポイントに送信され、かつ、定期的に各アクセスポイントから、当該アクセスポイントが属する無線システムの無線端末に、例えば、ビーコンにより送信される。
【0174】
以上により、無線通信システム2000の全ての機器は、(1)タイムスロット定義情報を含むデータD_slot_defと、(2)タイムスロット割当情報を含むデータD_slotとを記憶保持した状態となる。そして、無線通信システム2000の全ての機器(無線通信機器)は、それぞれ、タイムスロット割当情報を含むデータD_slotに従って、トラフィックを、タイムスロット割当情報で示されているタイムスロット内で送信する(例えば、図20に示したデータD_slotに従って、トラフィックを送信する)。これにより、無線通信システム2000では、各トラフィックが適切なタイミングで送信される。
【0175】
(2.2.2:カウンタ値、許容遅延量、優先度ラベルに基づいてトラフィック選択を行う場合)
次に、(2)カウンタ値、許容遅延量、優先度ラベルに基づいてトラフィック選択を行う場合について説明する。
【0176】
(ステップS4):
ステップS4において、コーディネーター装置100Aのトラフィック調整処理部16Aは、無線通信機器が送信しようとしている各トラフィックの送信タイミングと、カウンタ値Cnt(TrX)とに基づいて、各タイムスロットで送信するトラフィックを特定するためのトラフィック調整処理を実行する。ここでは、トラフィックTr1~Tr5が以下のように設定されている場合のトラフィック調整処理について、図21図23を参照しながら、説明する。図21図23は、トラフィックTr1~Tr5を送信するタイムスロットを決定する処理(タイムスロットの割り当て処理)を説明するための図であり、1つのタイムスロットで送信するトラフィック数Nが「2」である場合を示している。なお、タイムスロット長は20msであるものとする。図21図23において、各トラフィックを矩形で示し、許容遅延量をTa(TrX)(トラフィックTrXの許容遅延量)と表記し、各トラフィックを示す矩形の上に矢印により示している。
(1)トラフィックTr1:
送信元:STA3-1
送信タイミング:時刻t0
許容遅延量:80ms(タイムスロット4つ分に相当)
カウンタ値:Cnt(Tr1)=3
優先度ラベル:PriL=0
(2)トラフィックTr2:
送信元:STA1-2
送信タイミング:時刻t0
許容遅延量:60ms(タイムスロット3つ分に相当)
カウンタ値:Cnt(Tr2)=2
優先度ラベル:PriL=5
(3)トラフィックTr3:
送信元:AP1-1
送信タイミング:時刻t0
許容遅延量:40ms(タイムスロット2つ分に相当)
カウンタ値:Cnt(Tr3)=1
優先度ラベル:PriL=4
(4)トラフィックTr4:
送信元:STA2-1
送信タイミング:時刻t0
許容遅延量:40ms(タイムスロット2つ分に相当)
カウンタ値:Cnt(Tr4)=1
優先度ラベル:PriL=3
(5)トラフィックTr5:
送信元:STA2-2
送信タイミング:時刻t0
許容遅延量:20ms(タイムスロット1つ分に相当)
カウンタ値:Cnt(Tr5)=0
上記のように設定されたトラフィックTr1~Tr5は、図21に示す状態に対応する。図21に示すように、1番目のタイムスロット(時刻t0~t1のタイムスロット)において、5つのトラフィックTr1からTr5が送信候補となっているが、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数Nは「2」であるので、どのトラフィックを1番目のタイムスロットのタイムスロットで送信すべきか決定する必要がある。
【0177】
そこで、トラフィック調整処理部16Aは、以下のように処理を行う。
(1A)k番目(k:自然数)のタイムスロットにおいて、送信候補となっているトラフィック数が、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数N(図21の場合、N=2)以下である場合、送信候補となっているトラフィックを、k番目のタイムスロットにて送信するトラフィックに決定する。
(1B)k番目(k:自然数)のタイムスロットにおいて、送信候補となっているトラフィック数が、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数N(図21の場合、N=2)よりも大きい場合、送信候補となっているトラフィックを、カウンタ値Cntでソートする。
(1B-1)カウンタ値が小さい方からN個(図21の場合、N=2)を選択できる場合、当該N個のトラフィックをk番目のタイムスロットにて送信するトラフィックに決定する。
(1B-2)カウンタ値が小さい方からN個(図21の場合、N=2)を選択できない場合、トラフィックの許容遅延量により判定する。つまり、選択処理の対象となっているトラフィックについて、許容遅延量でソートする。
(1B-2-1)許容遅延量のソート結果から、k番目のタイムスロットで送信する合計N個(図21の場合、N=2)のトラフィックを選択できる場合、許容遅延量の小さいものから順にトラフィックを選択し、k番目のタイムスロットで送信する合計N個のトラフィックを決定する。
(1B-2-2)許容遅延量のソート結果から1つのタイムスロットで送信する合計N個(図21の場合、N=2)のトラフィックを選択できない場合、トラフィックの優先度ラベルPriLにより判定する。つまり、選択処理の対象となっているトラフィックについて、優先度ラベルPriLでソートし、優先度ラベルの大きい方から、トラフィックの選択個数がN個となるように、トラフィックを選択する。そして、選択されたトラフィックを、k番目のタイムスロットにて送信するトラフィックに決定する。
【0178】
なお、優先度ラベルの値が大きい程、トラフィックの送信の優先度合いが高いものとする(優先して送信しなければならないトラフィックである度合いが高いものとする)。
(2)k番目のタイムスロットでの送信候補となっていたトラフィックであって、k番目のタイムスロットで送信するトラフィックに決定されなかったトラフィックについては、k+1番目のタイムスロットでの送信候補のトラフィックとし、当該トラフィックのカウンタ値Cntを「1」減算した値に変更する。
【0179】
トラフィック調整処理部16Aは、上記の(1A)、(1B)、(1B-1)、(1B-2)、(1B-2-1)、(1B-2-2)、(2)の処理を繰り返し実行し、各タイムスロットで送信するトラフィックを決定する。
【0180】
図21の場合、1番目のタイムスロットにおいて、送信候補となっているトラフィックは、トラフィックTr1~Tr5の5つであり、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数N(=2)よりも大きいので、トラフィック調整処理部16Aは、トラフィックTr1~Tr5をカウンタ値Cntでソートする(処理(1B))。
【0181】
そして、トラフィック調整処理部16Aは、カウンタ値が小さい方からN個(N=2)を選択する。図21の場合、トラフィックTr2~Tr5の4つのトラフィックのカウンタ値が「1」(Cnt(Tr2)=Cnt(Tr3)=Cnt(Tr4)=Cnt(Tr5)=1)であり、同値で最小値のトラフィックが4個ある状態である。つまり、この場合、カウンタ値のソート結果からN個のトラフィックを選択することができない。そこで、トラフィック調整処理部16Aは、許容遅延量によるソートを行う(処理(1B-2))。
【0182】
当該ソートの結果、図21から分かるように、
Ta(Tr2)=Ta(Tr3)=Ta(Tr4)=Ta(Tr5)=40ms
であり、許容遅延量によるソート結果によっても、N個のトラフィックを選択することができない。
【0183】
そこで、トラフィック調整処理部16Aは、優先度ラベルPriLによるソートを行う(処理(1B-2-2))。
【0184】
当該ソートの結果、図21から分かるように、
PriL(Tr2)>PriL(Tr3)>PriL(Tr4)>PriL(Tr5)
であるので、トラフィック調整処理部16Aは、優先度ラベルの値が大きい方から2個のトラフィックであるトラフィックTr2とトラフィックTr3を、1番目のタイムスロットで送信するトラフィックに決定する(処理(1B-2-2))。
【0185】
また、トラフィック調整処理部16Aは、1番目のタイムスロットでの送信候補となっていたトラフィックであって、1番目のタイムスロットで送信するトラフィックに決定されなかったトラフィックTr1、Tr4、Tr5については、2番目のタイムスロット(時刻t1~t2のタイムスロット)での送信候補のトラフィックとし、当該トラフィックTr1、Tr4、Tr5のカウンタ値Cntを「1」減算した値に変更する。つまり、トラフィック調整処理部16は、
Cnt(Tr1)=3-1=2
Cnt(Tr4)=1-1=0
Cnt(Tr5)=1-1=0
に相当する処理を行う(処理(2))。
【0186】
上記処理後、図22に示すように、トラフィック調整処理部16Aは、2番目のタイムスロットで送信するトラフィックを決定する処理を行う。
【0187】
つまり、図22に示すように、2番目のタイムスロットにおいて、送信候補となっているトラフィックは、トラフィックTr1、Tr3、Tr4の3つであり、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数N(=2)よりも大きいので、トラフィック調整処理部16Aは、トラフィックTr1、Tr3、Tr4をカウンタ値Cntでソートする(処理(1B))。
【0188】
そして、トラフィック調整処理部16Aは、カウンタ値が小さい方からN個(N=2)を選択できるか否かを判定する。図22の場合、トラフィックTr4とトラフィックTr5とが、カウンタ値が小さい方からN個(N=2)のトラフィックであるので、トラフィック調整処理部16Aは、トラフィックTr4とトラフィックTr5とを2番目のタイムスロットで送信するトラフィックに決定する(処理(1A))。
【0189】
また、トラフィック調整処理部16Aは、2番目のタイムスロットでの送信候補となっていたトラフィックであって、2番目のタイムスロットで送信するトラフィックに決定されなかったトラフィックTr1については、3番目のタイムスロット(時刻t2~t3のタイムスロット)での送信候補のトラフィックとし、当該トラフィックTr1のカウンタ値Cntを「1」減算した値に変更する。つまり、トラフィック調整処理部16Aは、
Cnt(Tr1)=2-1=1
に相当する処理を行う(処理(2))。
【0190】
上記処理後、図23に示すように、トラフィック調整処理部16Aは、3番目のタイムスロットで送信するトラフィックを決定する処理を行う。
【0191】
つまり、図23に示すように、3番目のタイムスロットにおいて、送信候補となっているトラフィックは、トラフィックTr1の1つであり、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数N(=2)以下であるので、送信候補となっているトラフィックTr1を、3番目のタイムスロットにて送信するトラフィックに決定する(処理(1A))。
【0192】
このように、トラフィック調整処理部16Aがトラフィック調整処理を行うことで、1番目から3番目のタイムスロットで送信するトラフィックを決定することができる。
【0193】
そして、トラフィック調整処理部16Aが、4番目以降のタイムスロットについても上記と同様の処理を行うことで、各タイムスロットで送信するトラフィックを特定することができる。
【0194】
無線通信システム2000では、上記のようにトラフィック調整処理を実行することで、1つのタイムスロットで送信されるトラフィック数がN個以下であり、かつ、全てのトラフィックが許容遅延量以下となるタイミングで送信されるように配置することができる。
【0195】
無線通信システム2000では、上記処理の後、上記と同様に、ステップS5、S6の処理を実行する。
【0196】
以上のように、無線通信システム2000では、上記のように処理することで、1つのタイムスロットで送信するトラフィックを適切に決定することができる。つまり、無線通信システム2000では、1つのタイムスロットでの候補となるトラフィックの数が、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数の上限値Nよりも多い場合に、
(1)カウント値によりソートした結果に基づいて、1つのタイムスロットで送信するトラフィックを選択し、
(2)カウント値のソート結果により1つのタイムスロットで送信するN個のトラフィックを決定できない場合、さらに、許容遅延量によりソートした結果に基づいて、1つのタイムスロットで送信するトラフィックを選択し、
(3)許容遅延量のソート結果によっても1つのタイムスロットで送信するN個のトラフィックを決定できない場合、さらに、優先度ラベルによりソートした結果に基づいて、1つのタイムスロットで送信するトラフィックを選択する。
【0197】
したがって、無線通信システム2000では、1つのタイムスロットでの候補となるトラフィックの数が、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数の上限値Nよりも多い場合であっても、1つのタイムスロットで送信するトラフィックを適切に選択(決定)することができる。
【0198】
なお、優先度ラベルによりソートした結果によっても1つのタイムスロットで送信するN個のトラフィックを決定できない場合、無線通信システム2000において、さらに別の優先度ラベルや、別の基準(例えば、送信データ数が大きいパケット(トラフィック)を優先的に選択させるための基準データ)によるソートを行い、1つのタイムスロットで送信するトラフィックを選択(特定)するようにしてもよい。
【0199】
また、上記では、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数の上限値Nが「2」である場合について、説明したが、これに限定されることはなく、Nは他の数であってもよい。
【0200】
例えば、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数の上限値Nが「4」の場合のトラフィックの選択処理(トラフィック調整処理)を説明するための図を図24に示す。
【0201】
図24に示すように、N=4の場合であって、1つのタイムスロットでの候補となるトラフィックの数が、1つのタイムスロットで送信できるトラフィック数の上限値Nよりも多い場合においても、無線通信システム2000のトラフィック調整処理部16Aにおいて、
(1)カウント値(Cnt)によるソート、
(2)許容遅延量によるソート、
(3)優先度ラベルによるソート、
を順次実行することで、適切に、1つのタイムスロットで送信するトラフィックを選択(特定)することができる。
【0202】
また、無線通信システム2000において、トラフィック調整処理部16Aに入力する制御信号Ctl_priにより、各トラフィックの優先度ラベルPriLを変更するようにしてもよい。例えば、無線通信システム2000を工場に設置した場合において、工場の稼働状況に応じて、制御信号Ctl_priにより、各トラフィックの優先度ラベルPriLを変更するようにしてもよい。例えば、工場において、工作機械やロボットが稼働している時間帯においては、工作機械やロボットを稼働するために必要であり、重要度が高い通信が優先的に確保されるように、制御信号Ctl_priにより、当該通信のトラフィックの優先度を高い値となるように制御し、工作機械やロボットが稼働していない時間帯においては、工作機械やロボットを稼働するための通信のトラフィックの優先度を低い値となるように制御してもよい。つまり、無線通信システム2000が、時間帯により、重要となる通信が変化する環境に設置された場合、無線通信システム2000において、時間帯により、重要となる通信のトラフィックの優先度ラベルが高い値となるように制御するようにしてもよい。このようにすることで、無線通信システム2000では、特定の時間帯において重要となる通信が確実に行われるように、トラフィックの送信タイミングを制御することができる。
【0203】
なお、制御信号Ctl_prjは、コーディネーター装置100Aの制御部(不図示)により、所定のデータに基づいて、自動的に生成されるものであってもよいし、コーディネーター装置100Aの外部とのインターフェース(不図示)から所定のデータ(例えば、優先度ラベルの変更を指示するデータ)を入力し、当該データに基づいて、生成されるものであってもよい。
【0204】
[他の実施形態]
上記実施形態では、各無線システムにアクセスポイントが1つである場合について説明したが、これに限定されることはなく、各無線システムにアクセスポイントが複数個存在してもよい。
【0205】
また、上記実施形態(変形例を含む)で説明した無線通信システムで使用される通信方法は、本願発明に含まれる。
【0206】
また、上記実施形態では、1つのタイムスロットにおいて送信するトラフィック数の上限値Nが固定値である場合について、説明したが、これに限定されることはなく、例えば、タイムスロット間で送信するトラフィック数の上限値Nを変化させてもよい。この場合、例えば、トラフィック調整処理部に、手動または自動で、送信するトラフィック数の上限値Nを入力できるようにし、トラフィック調整処理部は、入力された値Nに応じて、1つのタイムスロットにおいて送信するトラフィック数の上限値Nを設定するようにすればよい。これにより、1つのタイムスロットにおいて送信するトラフィック数の上限値Nを可変することができる。
【0207】
また、無線通信システムにおいて、1つのタイムスロットにおいて送信するトラフィック数の上限値Nを所定の値に設定した場合の無線通信性能を測定し、当該測定結果に応じて、無線通信性能が良くなるように、値Nを変えるようにしてもよい。
【0208】
また、上記実施形態(変形例を含む)で説明した無線通信システムにおいて、各ブロックは、LSIなどの半導体装置により個別に1チップ化されても良いし、一部又は全部を含むように1チップ化されても良い。
【0209】
なお、ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0210】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用しても良い。
【0211】
また、上記各実施形態の各機能ブロックの処理の一部または全部は、プログラムにより実現されるものであってもよい。そして、上記各実施形態の各機能ブロックの処理の一部または全部は、コンピュータにおいて、中央演算装置(CPU)により行われる。また、それぞれの処理を行うためのプログラムは、ハードディスク、ROMなどの記憶装置に格納されており、ROMにおいて、あるいはRAMに読み出されて実行される。
【0212】
また、上記実施形態の各処理をハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア(OS(オペレーティングシステム)、ミドルウェア、あるいは、所定のライブラリとともに実現される場合を含む。)により実現してもよい。さらに、ソフトウェアおよびハードウェアの混在処理により実現しても良い。
【0213】
また、例えば、上記実施形態(変形例を含む)の各機能部を、ソフトウェアにより実現する場合、図25に示したハードウェア構成(例えば、CPU、ROM、RAM、入力部、出力部等をバスBusにより接続したハードウェア構成)を用いて、各機能部をソフトウェア処理により実現するようにしてもよい。
【0214】
また、上記実施形態における処理方法の実行順序は、必ずしも、上記実施形態の記載に制限されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、実行順序を入れ替えることができるものである。
【0215】
前述した方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム及びそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、本発明の範囲に含まれる。ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、大容量DVD、次世代DVD、半導体メモリを挙げることができる。
【0216】
上記コンピュータプログラムは、上記記録媒体に記録されたものに限られず、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク等を経由して伝送されるものであってもよい。
【0217】
なお、本発明の具体的な構成は、前述の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更および修正が可能である。
【符号の説明】
【0218】
1000、2000 無線通信システム
100、100A コーディネーター装置
SYS1 第1無線システム
SYS2 第2無線システム
SYS3 第3無線システム
AP1-1 第1アクセスポイント
AP2-1 第2アクセスポイント
AP3-1 第3アクセスポイント
STA1-1、STA1-2、STA2-1、STA2-2、STA3-1、STA3-2 無線端末
11 第1通信インターフェース
12 第1通信処理部
13 無線システム情報取得保持部
14 タイムスロット定義部
15 カウンタ値設定部
16、16A トラフィック調整処理部
17 タイムスロット割当情報生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25