(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】衣料用仕上げ剤組成物
(51)【国際特許分類】
D06M 15/333 20060101AFI20230403BHJP
D06M 15/643 20060101ALI20230403BHJP
D06M 15/11 20060101ALI20230403BHJP
C08L 31/04 20060101ALI20230403BHJP
C08L 83/10 20060101ALI20230403BHJP
C08L 3/04 20060101ALI20230403BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20230403BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20230403BHJP
C08G 77/452 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
D06M15/333
D06M15/643
D06M15/11
C08L31/04 B
C08L83/10
C08L3/04
C08L83/04
C08L29/04 B
C08G77/452
(21)【出願番号】P 2019102072
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】高井 雅規
(72)【発明者】
【氏名】福田 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】金尾 知樹
(72)【発明者】
【氏名】大滝 理紗
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-104992(JP,A)
【文献】特開2006-161197(JP,A)
【文献】特開2018-119235(JP,A)
【文献】特開2004-211232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715、
C08K3/00-13/08、C08L1/00-101/14、
C08G77/00-77/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酢酸ビニル由来の構成単位を含む重合体(以下、成分(A)という)、(B)ポリシロキサンのケイ素原子の少なくとも1個に、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、下記一般式(B1)で表される繰り返し単位からなるポリ(N-アシルアルキレンイミン)が結合している化合物(以下、成分(B)という)、(C)カチオン化澱粉(以下、成分(C)という)、(D)ジメチルポリシロキサン(以下、成分(D)という)及び水を含有する、衣料用仕上げ剤組成物。
【化1】
〔式中、R
1bは水素原子又は炭素数1以上22以下の炭化水素基を示し、nは2又は3の数を示す。〕
【請求項2】
成分(A)を5質量%以上50質量%以下、成分(B)を0.05質量%以上5質量%以下含有する、請求項1に記載の衣料用仕上げ剤組成物。
【請求項3】
成分(B)が、ポリシロキサンとポリ(N-アシルアルキレンイミン)との質量比(ポリシロキサン/ポリ(N-アシルアルキレンイミン))が1.5以上50以下であり、重量平均分子量が20,000以上500,000以下である、請求項1又は2に記載の衣料用仕上げ剤組成物。
【請求項4】
成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比(A)/(B)が5以上250以下である、請求項1から3の何れか1項に記載の衣料用仕上げ剤組成物。
【請求項5】
成分(D)の25℃における動粘度が1mm
2/s以上1000mm
2/s以下である、請求項1から4の何れか1項に記載の衣料用仕上げ剤組成物。
【請求項6】
成分(C)を0.1質量%以上10質量%以下含有する、請求項1から5の何れか1項に記載の衣料用仕上げ剤組成物。
【請求項7】
成分(D)を0.05質量%以上5質量%以下含有する、請求項1から6の何れか1項に記載の衣料用仕上げ剤組成物。
【請求項8】
成分(A)と成分(C)を含む複合体微粒子を含有する、請求項1から7の何れか1項に記載の衣料用仕上げ剤組成物。
【請求項9】
前記複合体微粒子が、更に、(E)ポリビニルアルコール(以下、成分(E)という)を含む、請求項8に記載の衣料用仕上げ剤組成物。
【請求項10】
前記複合体微粒子が保護コロイドである、請求項8又は9に記載の衣料用仕上げ剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料用仕上げ剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料が着用や洗濯の繰り返しによって、新品時の外観の美しさや風合いを失うことは避けられないと言われている。特にファッション性に優れたニット衣料は、単繊維を甘く撚った糸で構成されていることから、着用や洗濯によって糸を構成する単繊維の位置ずれが発生するため外観変化や風合いの劣化が発生しやすい。即ち、着用者にとって重要とされる衣料の外観美が失われてしまう。このように、衣料が中古化することによりくたびれた外観や風合い変化が生じる。
【0003】
特許文献1には、(A)特定重量平均分子量の水溶性加工澱粉及びその誘導体並びに特定重量平均分子量の水溶性セルロース誘導体からなる群から選ばれる水溶性高分子化合物、(B)シリコーン化合物及び(C)非イオン性界面活性剤を、それぞれ特定比率で含有することで、型くずれ、のび、縮み等、劣化した繊維製品の形態を回復させる繊維製品処理剤組成物が開示されている。
特許文献2には、i)特定重量平均分子量のポリ酢酸ビニルの鹸化物、ii)特定重量平均分子量のポリスチレンスルホン酸及びiii)特定重量平均分子量のN-ビニル-2-ピロリドンの重合物から選ばれる水溶性高分子化合物(A)と、4級アンモニウム化合物、3級アミンの無機又は有機の酸塩及びシリコーン化合物から選ばれる柔軟化剤(B)と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型の特定の非イオン性界面活性剤(C)とを、それぞれ特定比率で含有することで、型くずれ、のび、縮み等、劣化した繊維製品の形態を回復させる繊維製品処理剤組成物が開示されている。
特許文献3には、特定重量平均分子量の水溶性高分子化合物(A)と、アミノ変性シリコーン化合物(B)とを、それぞれ特定比率で含有することで、型くずれ、のび、縮み等、劣化した繊維製品の形態を回復させる繊維製品処理剤が開示されている。
特許文献4には、(a)エステル、アミドもしくはエーテル結合を含む炭素数11~36の炭化水素基を有する第3級アミン、それらの塩及びそれらの4級化物から選ばれる1種以上のカチオン性柔軟基剤と、(b)共有結合以外の結合による分子内及び分子間架橋を生じる、温度20℃で固体のポリシロキサンであって、その成形体が、温度20℃、相対湿度65%における伸長率0~15%の範囲で破断又は塑性変形を生じないポリシロキサンを含有することで、優れた柔軟性付与効果を維持したまま、繊維製品に滑り性や弾力性のある風合いを付与できる柔軟剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-129577号公報
【文献】特開2000-129578号公報
【文献】特開2000-239970号公報
【文献】特開平11-229273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、保存安定性に優れ、衣料に発生した型崩れを回復させ、がさがさとしたごわつきのない風合いを付与する衣料用仕上げ剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(A)酢酸ビニル由来の構成単位を含む重合体(以下、成分(A)という)、(B)ポリシロキサンのケイ素原子の少なくとも1個に、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、下記一般式(B1)で表される繰り返し単位からなるポリ(N-アシルアルキレンイミン)が結合している化合物(以下、成分(B)という)、(C)カチオン化澱粉(以下、成分(C)という)、(D)ジメチルポリシロキサン(以下、成分(D)という)及び水を含有する、衣料用仕上げ剤組成物に関する。
【0007】
【0008】
〔式中、R1bは水素原子又は炭素数1以上22以下の炭化水素基を示し、nは2又は3の数を示す。〕
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保存安定性に優れ、着用や洗濯の繰り返しによって生じた、衣料の型崩れを回復させ、がさがさとしたごわつきのない風合いを付与することができる衣料用仕上げ剤組成物が提供される。
【0010】
本発明において「型崩れ」とは、衣料をハンガーにかけたり着用したりしたときに、布表面にハリ感がなく、表面が波打ってヨレやくたびれ感が生じた状態をいう。
なお、ヨレやくたびれ感は、例えば、新品の衣料と比べて身ごろ、袖口、首周りの形状が伸びたり縮んだりして当初とは異なる長さや形へと変化していることで生じると考えられる。
また本発明において、「風合い」とは、人が素肌で感じる感触的心地よさのことを指し、柔軟性だけでなく滑り、かさ高さ、弾力性、はり、こし、ぬめり等、他の多種多様の因子が混ざったものであり、心地良さのベクトルにおいて一定の方向性を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[衣料用仕上げ剤組成物]
<成分(A)>
本発明の成分(A)は、酢酸ビニル由来の構成単位を含む重合体であり、酢酸ビニル由来の構成単位が一部ないし全部を占める重合体である。
酢酸ビニル由来の構成単位の割合は、衣料の型崩れを回復させる観点から、重合体の重合に用いる全モノマー中に好ましくは75質量%以上、より好ましくは82質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは96質量%以下である。なお本発明において、製造時に用いるモノマー比率は、後述する酢酸ビニルと共重合可能なモノマーも含めて、成分(A)である重合体の構成単位の比率としてもよい。
【0012】
成分(A)の重合体を構成するためのその他のモノマー化合物としては、酢酸ビニルと共重合可能な重合性の不飽和結合を有する、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の低級アルコール(炭素数1以上3以下のアルコール)エステル、及び不飽和カルボン酸アミドから選ばれるモノマー化合物が好ましい。
【0013】
前記不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アコニチン酸、ソルビン酸、ケイ皮酸、α-クロロソルビン酸、及びシトラコン酸から選ばれる1種以上を挙げることができ、アクリル酸、メタクリル酸、及びクロトン酸から選ばれる1種以上が好ましい。
前記不飽和カルボン酸の割合は、成分(A)の重合体の重合に用いる全モノマー中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0014】
また、前記不飽和カルボン酸の低級アルコールエステルとしては、上記不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステルを挙げることができ、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、及びメタクリル酸エチルから選ばれる1種以上が好ましい。
前記不飽和カルボン酸の低級アルコールエステルの割合は、成分(A)の重合体の重合に用いる全モノマー中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0015】
また、前記不飽和カルボン酸アミドの例としては、N,N-ジアルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルメタクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミド、N-アルコキシアルキルアクリルアミド、N-ヒドロキシアルキルアクリルアミド、N-ヒドロキシアルキルメタクリルアミド、N-アシルアルキルアクリルアミド、及びN-アシルアルキルメタクリルアミドから選ばれる1種以上が挙げられる。これらアミド化合物のアルキル基、アルコキシ基、アシル基の鎖長は炭素数1以上18以下が好ましい。これらの中でも、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N-プロピルアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、及びダイアセトンイソアクリルアミドから選ばれる1種以上が好ましい。
前記不飽和カルボン酸アミドの割合は、成分(A)の重合体の重合に用いる全モノマー中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0016】
成分(A)の重合体は、衣料の型崩れを回復させる観点から、重量平均分子量が、好ましくは50,000以上、より好ましくは150,000以上、更に好ましくは300,000以上、そして、好ましくは500,000以下、より好ましくは450,000以下、更に好ましくは400,000以下である。この重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されたものである。具体的には、溶離液としてクロロホルム、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトン及びこれらの溶媒を組み合わせた液のいずれか、好ましくはジメチルホルムアミドを使用して測定したポリスチレン換算の分子量をいう。より具体的には、以下の方法で測定する。
成分(A)の重合体5gを20mLのメスフラスコに入れ、アセトンでメスアップした後、0.5μmのPTFEメンブランフィルターでろ過する。ろ液を用いて以下の条件のGPCにより重量平均分子量を測定する。
カラム :TSKgel α-M+TSKgel α-M(東ソー株式会社製)
溶離液 :H3PO4(60mmol/L)/LiBr(50mmol/L)/DMF
流速 :1.0mL/min
カラム温度 :40℃
検出器 :RI
サンプル濃度:5mg/mL
サンプル量 :100μL
【0017】
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、成分(A)を、衣料の型崩れを回復させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下含有する。
【0018】
<成分(B)>
本発明の成分(B)は、ポリシロキサンのケイ素原子の少なくとも1個に、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、下記一般式(B1)で表される繰り返し単位からなるポリ(N-アシルアルキレンイミン)が結合している化合物である。
【0019】
【0020】
〔式中、R1bは水素原子又は炭素数1以上22以下の炭化水素基を示し、nは2又は3の数を示す。〕
【0021】
上記ヘテロ原子を含むアルキレン基としては、窒素原子、酸素原子又はイオウ原子を1~3個含む炭素数2以上20以下のアルキレン基を挙げることができ、その具体例としては、下記式で表されるものを挙げることができる。
【0022】
【0023】
一般式(B1)中のR1bは水素原子又は炭素数1以上22以下の炭化水素基であって、炭素数1以上22以下の炭化水素基としては、ごわつきのない風合いを付与する観点から、炭素数1以上22以下のアルキル基、炭素数3以上22以下のシクロアルキル基、炭素数7以上22以下のアラルキル基、炭素数6以上22以下のアリール基が好ましい。
一般式(B1)中のR1bで示されるアルキル基としては、炭素数1以上10以下のものがより好ましく、シクロアルキル基としては、炭素数3以上6以下のものがより好ましく、アラルキル基としては、フェニルアルキル基、ナフチルアルキル基がより好ましく、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アルキル基置換フェニル基がより好ましい。一般式(B1)中のR1bは、炭素数1以上5以下のアルキル基が更に好ましく、エチル基がより更に好ましい。
【0024】
成分(B)中、ポリシロキサンとポリ(N-アシルアルキレンイミン)との質量比(ポリシロキサン/ポリ(N-アシルアルキレンイミン))は、ごわつきのない風合いを付与する観点から、好ましくは0.66以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは1.5以上、そして、好ましくは50以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは9以下である。
ここで前記質量比は、ポリシロキサンの含有率をプラズマ発光分析によるケイ素原子定量分析により求めた値を用いて算出することができる。
また前記質量比は、製造時において反応に使用するポリシロキサンとポリ(N-アシルアルキレンイミン)の質量比としてもよい。
【0025】
成分(B)の重量平均分子量は、ごわつきのない風合いを付与する観点から、好ましくは20,000以上、より好ましくは50,000以上、更に好ましくは100,000以上、そして、好ましくは500,000以下、より好ましくは300,000以下、更に好ましくは200,000以下、より更に好ましくは150,000以下である。成分(B)の重量平均分子量はクロロホルムを展開溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)から求めたポリスチレン重量換算分子量である。
【0026】
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、成分(B)を、ごわつきのない風合いを付与する観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.07質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、より更に好ましくは0.3質量%以上、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下含有する。
【0027】
本発明の衣料用仕上げ剤組成物において、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比(A)/(B)は、型崩れ回復性と風合いの両立の観点から、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは30以上、より更に好ましくは50以上、そして、好ましくは250以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下、より更に好ましくは100以下、より更に好ましくは80以下である。
【0028】
<成分(C)>
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、成分(A)の水中分散安定性の観点から、成分(C)として、カチオン化澱粉を含有する。
カチオン化澱粉の主骨格を形成する澱粉類としては、特開2010-180320号公報に記載の澱粉等を用いることができる。具体的には、コーンスターチ、小麦スターチ、ポテトスターチ、タピオカスターチ等の澱粉が挙げられる。
前記澱粉にカチオン基を導入してカチオン化澱粉とする方法は特に限定されず、例えば、澱粉類と四級アンモニウムアルキル化試薬とを反応させる方法が挙げられる。
四級アンモニウムアルキル化試薬としては、例えば、特開2010-180320号公報に記載のグリシジル基を有する四級アンモニウム化合物を挙げることができ、化合物の入手の容易性の観点から、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
四級アンモニウムアルキル化試薬の具体的な製造方法としては、例えば特開昭56-36501号公報、特開平6-100603号公報、特開2010-180320号公報、及び特開平8-198901号公報等に記載の方法が挙げられる。
【0029】
カチオン化澱粉の置換度は、成分(A)の水中分散安定性の観点から、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.05以上、そして、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.15以下である。
なお、カチオン化澱粉の置換度は、CHN元素分析計(エレメンタール社製、商品名:VARIO ELIII)によって測定した、カチオン化澱粉の窒素含有量(N)質量%から下記の式より算出される。
置換度=(グルコースの分子量-水の分子量)×N÷(窒素の原子量×100-四級アンモニウムアルキル化試薬の分子量×N)
この置換度は、カチオン化の程度を示すものであり、澱粉の無水単糖ユニット当りに付加したカチオン基のモル数を示す値である。
【0030】
カチオン化澱粉は、5質量%水溶液の50℃における粘度が30mPa・s以上、更に50mPa・s以上、そして、100mPa・s以下、更に90mPa・s以下のものを用いることが、成分(A)の水中分散安定性を向上し、成分(A)と保護コロイドを構成する観点から好ましい。粘度は、B型粘度計を用いて、No.1ローターを用い、12r/minで回転させてから、1分後の指示値とする。
【0031】
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、成分(C)を、成分(A)の水中分散安定性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下含有する。
【0032】
本発明の衣料用仕上げ剤組成物において、成分(A)の含有量と成分(C)の含有量との質量比(A)/(C)は、成分(A)の水中分散安定性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、より更に好ましくは10以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは30以下、より更に好ましくは15以下である。
【0033】
<成分(D)>
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、成分(D)として、ジメチルポリシロキサンを含有する。成分(D)を含有することで、高濃度でも保存安定性に優れ、衣料に発生した型崩れの高い回復性を維持したまま、風合いを向上させることができる。
【0034】
ジメチルポリシロキサンの25℃における動粘度は、風合い向上の観点から、好ましくは1mm2/s以上、より好ましくは1.5mm2/s以上、そして、型崩れ回復性と風合いのバランスの観点から、好ましくは1000mm2/s以下、より好ましくは500mm2/s以下、更に好ましくは300mm2/s以下であるものが好適である。成分(D)の動粘度は、日本工業規格が定める測定方法(JIS Z 8803)で測定することができる。
【0035】
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、成分(D)を、風合い向上の観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.15質量%以上、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下含有する。
【0036】
本発明の衣料用仕上げ剤組成物において、成分(A)の含有量と、成分(B)及び成分(D)の合計含有量との質量比(A)/[(B)+(D)]は、風合い向上の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、そして、好ましくは50以下、より好ましくは45以下である。
【0037】
本発明の衣料用仕上げ剤組成物において、成分(B)の含有量と成分(D)の含有量との質量比(B)/(D)は、保存安定性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.3以上、より更に好ましくは1.4以上、そして、型崩れ回復性と風合いの両立の観点から、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下、より更に好ましくは2以下である。
【0038】
<複合体(M)>
本発明において、成分(A)と成分(C)は、複合体(以下、複合体(M)という場合がある)を形成していることが好ましい。すなわち、本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、成分(A)と成分(C)とを含む複合体(M)を含有することが好ましい。複合体(M)は、後述する成分(E)であるポリビニルアルコールを含有することが好ましい。
【0039】
複合体(M)は、衣料用仕上げ剤組成物に均質に溶解した状態のものではなく、一部ないし全部が水で膨潤していてもよい塊状ないし液滴的な或いは凝集的な複合体であることが好ましい。さらに複合体(M)が、微粒子(以下、複合体微粒子という場合もある)を、より好ましくはカチオンを表面電荷とする保護コロイドを、形成していることがより好ましい。すなわち、本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、成分(A)と成分(C)とを含む複合体微粒子を含有することが好ましく、該複合体微粒子は、更に、成分(E)であるポリビニルアルコールを含むことが好ましい。成分(A)、成分(C)、成分(E)は、それぞれ、一部が、複合体(M)を形成せずに、衣料用仕上げ剤組成物中に溶解ないし分散していてもよい。
【0040】
複合体(M)を微粒子、好ましくは保護コロイドにするためには、例えば、成分(C)、後述する任意の成分(E)及び成分(F)を含有する水溶液中で、成分(A)の構成単位となる酢酸ビニルを主たるモノマーとする単一又は複数モノマーを重合することで得ることができる。
従って成分(A)、成分(C)及び任意の成分(E)が複合体微粒子を構成していると仮定して、成分(A)、成分(C)及び任意の成分(E)の合計に対する成分(A)の質量比は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
【0041】
また成分(A)、成分(C)及び任意の成分(E)の合計に対する成分(C)の質量比は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0042】
<成分(E)>
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、成分(E)として、ポリビニルアルコールを含有することが好ましい。とりわけ、本発明の衣料用仕上げ剤組成物が、成分(A)と成分(C)とを含む複合体微粒子を含有する場合、エマルジョンの貯蔵安定性をさらに向上させる観点から、前記複合体微粒子が、更に、成分(E)を含むことが好ましい。
成分(E)は重量平均分子量が10,000以上、そして、200,000以下、好ましくは100,000以下であるものが好適である。成分(E)の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、アセトニトリルと水の混合溶液(リン酸緩衝液)を展開溶媒とし、ポリエチレングリコールを標準物質として測定することができる。
なお成分(A)、成分(C)及び任意の成分(E)の合計に対する成分(E)の質量比は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは4質量%以下である。
【0043】
なお本発明の衣料用仕上げ剤組成物において、成分(E)を用いる場合、成分(E)を、成分(A)の水中分散安定性の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、そして、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.9質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下含有する。
【0044】
<成分(F)>
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、成分(F)として、非イオン界面活性剤を含有することが好ましい。とりわけ、本発明の衣料用仕上げ剤組成物が、成分(A)と成分(C)とを含む複合体を含有する場合、複合体微粒子、好ましくは保護コロイドを構成し、安定化する観点から、前記複合体を含む後述の液状組成物Iが、更に、成分(F)を含むことが好ましい。本発明では、複合体微粒子、好ましくは保護コロイドを構成し、安定化する観点から、成分(F)は、具体的には、特開平10-195772号公報の7欄43行~8欄40行に記載されたものを用いることが出来る。成分(F)としては、好ましくは炭素数7以上22以下の飽和又は不飽和アルコールのエチレンオキサイド付加物であるポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテルである。該ポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテルのオキシエチレン基の平均付加モル数は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上、そして、好ましくは60以下、より好ましくは50以下である。
【0045】
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、成分(F)を用いる場合、成分(F)を、成分(A)の水中分散安定性の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下含有する。
【0046】
<成分(G)>
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、風合いをより良好にする観点から、成分(G)として、カチオン界面活性剤を含有することが好ましい。
カチオン界面活性剤としては、後述する下記一般式(G1)に包含されるアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩の他に、構造にエステル結合又はアミド結合を有するカチオン界面活性剤である、トリエタノールアミンのジ脂肪酸エステル四級アンモニウム塩、ジエタノールジメチルアミンのジ脂肪酸エステル四級アンモニウム塩、N-ヒドロキシエチル-N-メチル-プロパンジアミンの脂肪酸モノエステルモノアミド塩、またベンジル基を有するアルキルベンジルジメチル四級アンモニウム塩が挙げられ、その他にアルキルピリジニウム塩、ポリエチレンポリアミン等が挙げられる。
四級アンモニウム塩は、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸塩又は塩化物塩が好ましい。またアルキル基又は脂肪酸残基(カルボニル炭素原子を含む)の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは12以上、そして、好ましくは22以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下である。この段落においてカチオン界面活性剤は、アルキル基又は脂肪酸残基をアルケニル基や不飽和脂肪酸等の不飽和結合を有するものに置き換えた化合物も含まれる。
【0047】
成分(G)は、下記一般式(G1)で表される四級アンモニウム塩化合物であってもよく、好ましくはモノ長鎖アルキル-トリ短鎖アルキル基の四級アンモニウム塩化合物である。
【0048】
【0049】
〔式中、R1g及びR2gは、炭素数1以上22以下の炭化水素基、好ましくはR1gが炭素数8以上18以下のアルキル基又はアルケニル基であり、且つR2gが炭素数1以上3以下のアルキル基、好ましくはメチル基である。R3g、R4gは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基、好ましくはメチル基であり、Y-は陰イオンである。〕
【0050】
一般式(G1)中、Y-は、ハロゲン化物イオン、好ましくは塩化物イオン、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数1以上3以下のアルキル基が1個以上3個以下置換していてもよいベンゼンスルホン酸イオンから選ばれる陰イオンが好ましく、塩化物イオンが好ましい。
【0051】
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、成分(G)を用いる場合、成分(G)を、風合いをより良好にする観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、そして、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下、より更に好ましくは2.0質量%以下、より更に好ましくは1.0質量%以下含有する。なお成分(G)の配合は、洗濯機の仕上げ剤投入口などへの成分(A)の付着性を低減させる作用も示す。
【0052】
<成分(H)>
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、仕上げ剤組成物の保存安定性の観点から、成分(H)として、水溶性有機溶剤を含有することができる。水溶性有機溶剤としては、液体柔軟剤組成物に用いられる一般的な水溶性有機溶剤が挙げられる。なお、成分(H)における「水溶性有機溶剤」とは、20℃の脱イオン水100gに対して20g以上溶解する有機溶剤をいう。水溶性有機溶剤の具体例としては、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、モノエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、イソプロパノール、及びエタノールから選ばれる1種以上を挙げることができる。これらの中でも、グリセリン及びプロピレングリコールから選ばれる1種以上が好ましい。
【0053】
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、成分(H)を用いる場合、成分(H)を、仕上げ剤組成物の保存安定性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下含有する。
【0054】
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、仕上げ剤組成物の保存安定性の観点から、成分(H)として、グリセリン(以下、成分(H1)という)及びプロピレングリコール(以下、成分(H2)という)から選ばれる1種以上を含有することが好ましく、成分(H1)と成分(H2)の両方を含有することがより好ましい。
本発明の衣料用仕上げ剤組成物において、成分(H1)と成分(H2)の両方を含有する場合、成分(H1)の含有量と成分(H2)の含有量との質量比(H1)/(H2)は、仕上げ剤組成物の保存安定性の観点から、好ましくは2.0以上、より好ましくは5.0以上、そして、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下である。
【0055】
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、一般に浴処理用糊剤や柔軟剤組成物に含有することが知られている成分を含有することができる。例えばpH調整剤としての酸剤やアルカリ剤、香料成分、殺菌や消臭剤として知られている化合物、プロキセル名で市販されている抗菌・抗カビ剤、サニゾール名で市販されている第四級アンモニウム塩化合物等の殺菌剤、顔料染料等の着色剤、キサンタンガムのような増粘化剤、ハイドロカーボン、脂肪酸アルコールエステル、脂肪族アルコール等の油剤、ブチルカルビトールや2-エチルヘキシルグリセリルエーテル等の有機溶剤など(但し成分(A)~成分(H)成分を除く)を、本効果を損なわない程度に含有することができる。
【0056】
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は好ましくは分散媒として水を含有する。水としては、次亜塩素酸で殺菌された水を用いることができ、脱イオンしたものを用いることが好ましい。水は成分(A)、成分(C)から持ち込まれるもの以外に、好ましい組成物を調製する上で別途添加してもよい。本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、水を、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下含有する。
【0057】
本発明の衣料用仕上げ剤組成物のpHは、JIS K 3362;2008の項目8.3に従って25℃で測定した場合に好ましくは3以上、より好ましくは4以上、そして、好ましくは8以下、より好ましくは7以下である。
【0058】
pHを調整するために酸剤やアルカリ剤を用いてもよく、酸剤としてはクエン酸、フマル酸等の有機酸、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸を挙げることができ、アルカリ剤としてはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩の他にモノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機性のアルカリ剤としてアミン化合物を用いることもできる。
【0059】
<衣料用仕上げ剤組成物の製造方法>
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、成分(A)、成分(C)及び水を含有する液状組成物(以下、液状組成物Iという場合もある)を調製する工程Iと、工程Iで得られた液状組成物Iと成分(B)と成分(D)とを混合する工程IIとを有する製造方法により製造することが好ましい。
本発明の衣料用仕上げ剤組成物の製造方法は、本発明の衣料用仕上げ剤組成物で述べた事項を適宜適用することができる。
【0060】
工程Iでは、成分(A)、成分(C)、成分(E)、成分(F)、及び水を含有する液状組成物Iを調製することが好ましい。
工程Iでは、成分(A)、成分(C)、成分(E)、成分(F)、及び水を含有する液状組成物Iであって、成分(A)、成分(C)、成分(E)が、複合体(M)として、更には複合体微粒子として、より更には保護コロイドとして、分散している液状組成物Iを調製することがより好ましい。
【0061】
工程Iでは、反応媒体、例えば水中で、(A)成分の構成単位となるモノマー化合物を、成分(C)、並びに任意の成分(E)及び任意の成分(F)の存在下で、重合させることが好ましい。これにより、複合体(M)を含有する液状組成物Iを容易に得ることができる。
【0062】
本発明の衣料用仕上げ剤組成物の製造方法では、工程IIにおいて、成分(A)、成分(C)、及び任意の成分(E)を含む複合体(M)の微粒子と、成分(B)との混合時に、複合体微粒子の分散性を制御する観点から、成分(G)を、更に混合することが好ましい。成分(G)は、工程Iで複合体微粒子が存在する液状組成物Iに配合してもよく、成分(B)を水で溶解ないし分散させた液状組成物(以下、液状組成物IIという場合もある)に配合してもよい。工程Iで用いる水は、次亜塩素酸で殺菌した水や、脱イオン水、蒸留水、および超純水等が挙げられる。
【0063】
本発明の衣料用仕上げ剤組成物の製造方法では、各成分は、前述の衣料用仕上げ剤組成物の好適な含有量となるように用いることが好ましい。
【0064】
<衣料の処理方法>
本発明の衣料の処理方法は、前記衣料用仕上げ剤組成物を、衣料の質量に対して0.1質量%から3質量%となるように水浴中で接触させるものであり、衣料の型崩れ回復とごわつきのない風合いを効果的に達成することができる。衣料の質量に対する衣料用仕上げ剤組成物の量が0.1質量%以上であると、前記衣料用仕上げ剤組成物を用いることによる効果を十分に得ることができ、3質量%以下であれば経済的に好ましい。
【0065】
前記衣料用仕上げ剤を希釈する水の量は、一般的に浴比で決めることができる。なお、本明細書において「浴比」とは、衣料の質量と衣料用仕上げ剤を含有する水の容量の比、[水の容量(リットル)]/[衣料の質量(kg)]をいう。洗濯機等を用いて衣料用仕上げ剤を希釈した水を撹拌しながら衣料と衣料用仕上げ剤組成物とを接触させる場合には、衣料同士の擦れを少なくし、毛羽・毛玉の発生を抑制する観点から、浴比は好ましくは10以上、より好ましくは15以上、更に好ましくは20以上、そして、好ましくは90以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは60以下である。
【実施例】
【0066】
<製造例>
(1)複合体(M-1)の調製
窒素雰囲気下で重合反応槽に、成分(C)としてカチオン化澱粉8.9質量部、及びイオン交換水100質量部を添加し、90℃にて攪拌しながら均一溶解した後60℃まで冷却した。ここで、カチオン化澱粉は、コーンスターチと3-(N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド)-1,2-プロピレンオキサイドとの反応で得たもの(表中、C-1とした)であり、カチオン置換度は0.08、5%水溶液の50℃における粘度は70mPa・sであった。
次いで、成分(A)である重合体を含む複合体(M)を得るために、酢酸ビニルを10質量部とポリビニルアルコール(重量平均分子量66,000、表中、E-1とした)3質量部、非イオン界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル(平均付加モル数40、HLB18.3)、表中、F-1とした)1.5質量部を、攪拌している前記カチオン化澱粉を含む水溶液に加え、さらに、リン酸3ナトリウム0.5質量部、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩0.4質量部、イオン交換水20質量部を加え、75℃に加熱して重合を開始した。重合開始後、酢酸ビニル、アクリル酸、N,N-ジメチルアクリルアミドの最終比率が95.5/2.5/2(質量比)になるように予め混合しておいたもの100質量部を、6時間かけて、反応溶液中に滴下した。滴下終了後、80℃に昇温し、1時間そのまま攪拌を続け、25℃まで冷却しエマルションを得た。冷却後、10質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いてエマルションのpHを5に調整し、成分(A)、成分(C)及び成分(E)を含有する複合体(M-1)、成分(F)並びに水を含む液状組成物Iを得た。液状組成物I中の複合体(M-1)の含有量は50質量%、(F)成分の含有量は0.6質量%であった。また、複合体(M-1)では、(A)/(C)/(E)の質量比は19/1.53/0.52であった。なお、複合体(M-1)は液状組成物I中で、複合体微粒子、具体的には保護コロイドを形成していた。
成分(A)である重合体(表中、A-1とした)は、酢酸ビニル/アクリル酸/N,N-ジメチルアクリルアミドが95.5/2.5/2(質量比)の重合体(重量平均分子量340,000)であった。
【0067】
(2)(B)成分の調製(B-1)
下記の製造方法により、B-1を製造した。
2-エチル-2-オキサゾリン12.9g(0.13モル)と酢酸エチル27.7gとを混合し、混合液をモレキュラーシーブ(商品名:ゼオラムA-4、東ソー株式会社製)2.0gで15時間脱水を行った。また、側鎖一級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量100,000、アミン当量20,000)100gと酢酸エチル203gとを混合し、混合液をモレキュラーシーブ15.2gで15時間脱水を行った。上記の脱水2-エチル-2-オキサゾリンの酢酸エチル溶液に硫酸ジエチル0.77g(0.005モル)を加え、窒素雰囲気下8時間、80℃で加熱還流し、末端反応性ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)を合成した。この末端反応性ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)溶液を、上記の脱水した側鎖一級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン溶液に一括して加え、10時間、80℃で加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、N-プロピオニルエチレンイミン-ジメチルシロキサン共重合体を白色ゴム状固体(108g、収率95%)として得た。最終生成物におけるポリシロキサン鎖部分とポリ(N-アシルアルキレンイミン)との質量比(ポリシロキサン鎖/ポリ(N-アシルアルキレンイミン))は88.6/11.4、最終生成物の重量平均分子量は115,000であった。
【0068】
<衣料用仕上げ剤組成物の調製>
実施例1~6、比較例1及び参考例1
表1に示す配合量にしたがって衣料用仕上げ剤組成物を調製した。具体的には以下の通り調製した。500mLビーカーに衣料用仕上げ剤組成物の全量が400gになる量のイオン交換水(温度:25℃)を入れた。このビーカーに上記製造法で得られた成分(B)及び下記成分(D)を投入して、成分(G)を含む場合は下記成分(G)も併せて投入し、均一に溶解させた後10分間撹拌した。更に成分(H)を含む場合は下記成分(H)も加えて均一溶解させた後に、上記合成例にて得られた複合体(M-1)を含む液状組成物Iを投入して10分間撹拌した。
表1の各組成物は、合計で100質量%となる。表1の各組成物の25℃におけるpHは5であった。得られた組成物について、後述の評価方法に沿って、保存安定性、型崩れ回復性効果、風合いを評価した。結果を表1に示す。なお表1において、液状組成物Iに含まれる水は、衣料用仕上げ剤組成物中に含まれる水に算入して表記した。
【0069】
実施例、比較例及び参考例で用いた成分は以下の通りである。
<成分(A)>
A-1:酢酸ビニル/アクリル酸/N,N-ジメチルアクリルアミドが95.5/2.5/2(質量比)の重合体(重量平均分子量340,000)
<成分(B)>
B-1:上記製造法で得られたもの
<成分(C)>
C-1:カチオン化澱粉(コーンスターチと3-(N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド)-1,2-プロピレンオキサイドとの反応で得たもの。カチオン置換度0.08、粘度70mPa・s(5%水溶液、50℃))
<成分(D)>
D-1:ジメチルポリシロキサン、KF-96L-2cs(動粘度(25℃)2mm2/s、信越化学工業株式会社製)
D-2:ジメチルポリシロキサン、KF-96-20cs(動粘度(25℃)20mm2/s、信越化学工業株式会社製)
D-3:ジメチルポリシロキサン、KF-96-100cs(動粘度(25℃)100mm2/s、信越化学工業株式会社製)
D-4:ジメチルポリシロキサン、KF-96-500cs(動粘度(25℃)500mm2/s、信越化学工業株式会社製)
<成分(E)>
E-1:ポリビニルアルコール(重量平均分子量66,000)
<成分(F)>
F-1:非イオン界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、平均付加モル数40、HLB18.3)
<成分(G)>
G-1:ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド(一般式(G1)中、R1gがステアリル基、R2g、R3g、R4gがメチル基、Y―が塩化物イオンの化合物)
<成分(H)>
H-1:グリセリン
H-2:プロピレングリコール
【0070】
<保存安定性>
各衣料用仕上げ剤組成物を調製後、室温にて60分間静置後の外観を目視で確認し、下記の判定基準で保存安定性を判定した。結果を表1に示す。
〔判定基準〕
〇:均一であり、且つ分離がない。
×:不均一又は分離している。
【0071】
<試験布の調製と処理方法>
T/C天竺(ニット)布(綿50質量%、ポリエステル50質量%、MVSカラーTOP天竺、サックスモク、双日ファッション株式会社製)2kgを市販の液体洗剤(花王株式会社製のアタックバイオジェル(登録商標)、2019年製)を用いて全自動洗濯機(日立アプライアンス株式会社製、NW-7FT)で5回繰り返し洗濯した(洗剤濃度0.083質量%、水道水(20℃)40L使用、標準コース(洗濯9分-すすぎ2回-脱水6分)、浴比20)。
洗濯したT/Cニット布を25℃/40%RHの環境下で12時間乾燥させて5×7cm角に裁断した試験布(X1)及び、10×20cm角に裁断した試験布(X2)を得た。
次いで、500mLプラスチックカップに水道水(炭酸塩アルカリ度:37mg/L CaCO3)285g、及び各衣料用仕上げ剤組成物0.12gをそれぞれ加えてマグネットスターラーと回転子(クロスヘッド回転子ダブル、型番001.1140、高さ14mm、直径40mm、アズワン株式会社製)を使用して1分間撹拌した(回転速度400rpm)。撹拌後、この溶液に試験布(X1)を6枚及び、試験布(X2)を2枚(9.5g)入れ、5分間撹拌した(回転速度400rpm)。その後、二層式洗濯機(東芝ライフスタイル株式会社製、VH-52G(H))を用い、試験布(X1及びX2)を脱水槽に入れて1.5分間脱水し、布の形を元のように手で整えて25℃/40%RHの環境下で12時間乾燥させた。乾燥後、処理した試験布(X1)を試験布(X3)、処理した試験布(X2)を試験布(X4)とした。
【0072】
<型崩れ回復性の評価法>
各衣料用仕上げ剤組成物で処理した各試験布(X3)の型崩れ回復性を以下の基準サンプル1、3と比較して下記判定基準にて得点をつけて平均点を求めることにより評価した。なお、評価はT/C天竺布や衣類の外観状態の変化を判断するのによく訓練された専門評価者5名により評価判定した。基準サンプル1は、未処理の前記T/C天竺布を、前記の全自動洗濯機を使用して、前記のように洗剤で5回洗濯した後に、さらに洗剤なしで前記と同様の方法で2回洗濯を繰り返すことによって劣化した状態になったものを使用した。
型崩れ回復性評価は、数値が高いほど優れており、具体的には2.0以上が好ましい。
【0073】
〔基準サンプル〕
基準サンプル1:未処理で型崩れしている前記T/C天竺布
基準サンプル3:比較例1の試験布(X3)
基準サンプル1は強く型崩れがあり、基準サンプル3は型崩れの回復性があった。
【0074】
〔判定基準〕
0 :基準サンプル1の試験布と同等の外観で、強い型崩れがあり、型崩れ回復性がない。
1.0:基準サンプル1の試験布より、やや型崩れが少ないが、型崩れ回復性は低い。
2.0:基準サンプル1の試験布より型崩れが少なく、やや型崩れ回復性がある。
2.5:基準サンプル3の試験布より、やや型崩れが残っているが、型崩れ回復性がある。
3.0:基準サンプル3の試験布と同等の外観で、明らかに型崩れ回復性がある。
【0075】
<風合いの評価法>
各衣料用仕上げ剤組成物で処理した各試験布(X4)の風合いを以下の基準サンプル2、3と比較して下記判定基準にて得点をつけて平均点を求めることにより評価した。なお、評価はT/C天竺布や衣類の風合いの変化を判断するのによく訓練された専門評価者5名により評価判定した。
風合い評価は数値が高いほど優れている。
【0076】
〔基準サンプル〕
基準サンプル2:未処理の前記T/C天竺布
基準サンプル3:比較例1の試験布(X4)
基準サンプル3はごわつきがあり、基準サンプル2はごわつきがなかった。
【0077】
〔判定基準〕
0 :基準サンプル3の試験布と同等の風合いで、ごわつく。
1.0:基準サンプル3の試験布より、ややごわつきが少ない。
2.0:基準サンプル3の試験布よりごわつきが少なく、ごわつきはあまりない。
2.5:基準サンプル2の試験布よりやや風合いの違いを感じるが、ごわつきはない。
3.0:基準サンプル2の試験布と同等の風合いで、明らかにごわつきがない。
【0078】