(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】ロボットハンドの触覚センサ付き指およびこれを用いた触覚センサ付きロボットハンド
(51)【国際特許分類】
G01L 5/165 20200101AFI20230403BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20230403BHJP
B25J 15/08 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
G01L5/165
G01L5/00 101Z
B25J15/08 Z
(21)【出願番号】P 2021091608
(22)【出願日】2021-05-31
【審査請求日】2023-01-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡津 裕次
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼野 勝己
(72)【発明者】
【氏名】桑高 悠
(72)【発明者】
【氏名】浅香 新伍
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 あゆ子
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-528483(JP,A)
【文献】特開2004-330370(JP,A)
【文献】特開2009-020006(JP,A)
【文献】国際公開第2020/080127(WO,A1)
【文献】特表2020-513919(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1278679(KR,B1)
【文献】特開2005-207993(JP,A)
【文献】特開2018-155711(JP,A)
【文献】特開2001-239479(JP,A)
【文献】特開2005-349492(JP,A)
【文献】特開2005-156531(JP,A)
【文献】特開2019-147237(JP,A)
【文献】特開2010-221357(JP,A)
【文献】米国特許第04555953(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00-5/28,1/00-1/26,25/00
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持対象物を把持するロボットハンドの指であって、
前記把持対象物に接触する掌面と、前記掌面と反対側の背面と、前記掌面および前記背面の延在方向の先端で前記掌面および前記背面と隣接する先端面と、前記掌面および前記背面の延在方向に交差する方向で前記掌面および前記背面と隣接する両方の側面とを有する指部と、
前記指部を構成する筐体外面に貼合されたフィルム状物であり、前記掌面と、前記先端面および2つの前記側面のうちの少なくとも1つとに跨って重なる感圧エリアを有する触覚センサ本体と、を備え
、
前記触覚センサ本体が保護層で被覆されており、前記触覚センサ本体の前記感圧エリアより外側の不感圧エリアに面するように、前記保護層の前記触覚センサ本体側に切欠き部が設けられている、ロボットハンドの触覚センサ付き指。
【請求項2】
前記触覚センサ本体が、前記掌面と前記先端面とに跨って重なる前記感圧エリアを有する、請求項1記載のロボットハンドの触覚センサ付き指。
【請求項3】
前記触覚センサ本体が、前記掌面と2つの前記側面とに跨って重なる前記感圧エリアを有する、請求項1記載のロボットハンドの触覚センサ付き指。
【請求項4】
前記触覚センサ本体が、第1基材フィルム上に第1電極が設けられた第1電極フィルムと、前記第1基材フィルムに対向する第2基材フィルム上に第2電極が設けられた第2電極フィルムと、前記第1電極フィルムと前記第2電極フィルムとの間に挟まれた絶縁体とを備えた静電容量式感圧センサであり、
前記第1基材フィルム側が前記指部に貼合されている、請求項1~3のいずれかに記載のロボットハンドの触覚センサ付き指。
【請求項5】
前記第1基材フィルム、前記第2基材フィルムの引張弾性率をそれぞれE
1、E
2、前記第1基材フィルム、前記第2基材フィルムの厚みをそれぞれt
1、t
2としたとき、
E
1×t
1>E
2×t
2の関係にある、請求項4に記載のロボットハンドの触覚センサ付き指。
【請求項6】
前記指部の前記掌面、前記先端面および2つの前記側面のうちの少なくとも1つが、複数面で構成され且つ前記感圧エリアと重なっている、請求項1~5のいずれかに記載のロボットハンドの触覚センサ付き指。
【請求項7】
前記触覚センサ本体が、前記指部を構成する前記筐体外面に沿わない部分を除いた展開パターンを有している、請求項1~6のいずれかに記載のロボットハンドの触覚センサ付き指。
【請求項8】
前記触覚センサ本体の前記感圧エリアが、前記触覚センサ本体の折り曲げられた形状に合わせて、複数に分割されている、請求項1~7のいずれかに記載のロボットハンドの触覚センサ付き指。
【請求項9】
前記切欠き部の空間が、前記保護層よりも柔らかいクッション層で埋まっている、
請求項1~8のいずれかに記載のロボットハンドの触覚センサ付き指。
【請求項10】
前記指部の前記触覚センサ本体が貼合されていない部分が、部分的または全体的に拡張された前記保護層で被覆されている、
請求項1~9のいずれかに記載のロボットハンドの触覚センサ付き指。
【請求項11】
把持対象物を把持するロボットハンドの指であって、
前記把持対象物に接触する掌面と、前記掌面と反対側の背面と、前記掌面および前記背 面の延在方向の先端で前記掌面および前記背面と隣接する先端面と、前記掌面および前記 背面の延在方向に交差する方向で前記掌面および前記背面と隣接する両方の側面とを有する指部と、
前記指部を構成する筐体外面に貼合されたフィルム状物であり、前記掌面と、前記先端 面および2つの前記側面のうちの少なくとも1つとに跨って重なる感圧エリアを有する触 覚センサ本体と、を備え、
前記触覚センサ本体が、前記掌面と前記先端面とに跨って重なる前記感圧エリアを有し、
前記触覚センサ本体全面および前記指部の2つの前記側面の一部又は全部が連続して保護層で被覆されており、
前記保護層が、前記指部の前記掌面上で且つ前記触覚センサ本体の前記感圧エリアを被覆する部分において、前記指部の前記掌面と2つの前記側面との境界付近を被覆する部分よりも厚み方向に突出した突出部を有している
、ロボットハンドの触覚センサ付き指。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載のロボットハンドの触覚センサ付き指を複数本備え、
さらに、前記指部の後端を支持する支持部と、
把持対象物を把持又は解放するように前記指部を駆動する駆動部と、を備えた触覚センサ付きロボットハンド。
【請求項13】
前記指部を2本備え、
これらの前記指部が、前記掌面どうしが向き合うように配置され、
前記指部の各々が無関節で、平行な前記掌面どうしが接近することにより把持対象物を把持する、
請求項12記載の触覚センサ付きロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指部の掌面以外の部分に把持対象物が接触することに起因する破損や故障を抑制できる、ロボットハンドの触覚センサ付き指に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、製造業だけでなくサービス産業やヘルスケア産業など幅広い分野で、ロボットが活躍している。これらのロボットには、人間と同様に、さまざまな物体を持って運んだり、道具を掴んで作業したりできるように、ロボットハンドを備えているものが多い。
【0003】
ロボットハンドにおいては、把持力はもちろん、把持対象物を把持する指部の掌面に生じたせん断力などの各種接触状態を計測する必要がある。例えば、ロボットハンドが把持対象物から受ける剪断力を検出することにより、ロボットハンドが把持対象物を落とさずに把持するのに必要な最低限の把持力を求めることができる。
そこで、特許文献1では、3分力を測定できる触覚センサをロボットハンドの指部の掌面に設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に図示されるロボットハンドの例では、2本の指部の形状が直方体形状をしており、直方体の6つの面のうち掌面となる1つの広面積面のみに触覚センサ本体の感圧エリアが設けられているため、種々の問題がある。
【0006】
例えば、所定位置に載置されている球状の把持対象物Wに対してロボットハンド11を下降させたとき、把持対象物Wが転がって所定位置から位置ズレすると、指部2の先端面21cが把持対象物Wに当たることがある(
図18参照)。このとき、ロボットハンド11は、指部2の先端面21cと把持対象物Wとの接触を検知できない。その結果、ロボットハンド11が把持対象物Wを把持する位置までそのまま下降を続け、ロボットハンド11と把持対象物Wとの間に必要以上の負荷がかかるため、把持対象物Wの破損またはロボットハンド11の故障が生じる。
【0007】
また、別の例としては、木の枝のような複雑な形状の把持対象物Wに対してロボットハンド11の2本の指部2を両側から接近させたとき、指部2の両掌面21aに把持対象物Wが当たる前に、指部2の側面21dに把持対象物Wが当たることがある(
図19参照)。このとき、ロボットハンド11は、指部2の側面21dと把持対象物Wとの接触を検知できない。その結果、2本の指部2が把持対象物Wの両側からさらに接近をし続け、ロボットハンド11と把持対象物Wとの間に必要以上の負荷がかかるため、やはり把持対象物Wの破損またはロボットハンド11の故障が生じる。
【0008】
したがって、本発明は、上記の課題を解決し、触覚センサ付きロボットハンドの使用時に、指部の掌面以外の部分に把持対象物が接触することに起因する破損や故障を抑制できる、ロボットハンドの触覚センサ付き指を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0010】
本発明のロボットハンドの触覚センサ付き指は、把持対象物を把持するロボットハンドの指であって、指部と触覚センサ本体とを備えている。指部は、把持対象物に接触する掌面を有する。また、指部は、掌面と反対側の背面を有する。また、指部は、掌面および背面の延在方向の先端で掌面および背面と隣接する先端面を有する。また、指部は、掌面および背面の延在方向に交差する方向で掌面および背面と隣接する両方の側面とを有する。触覚センサ本体は、指部を構成する筐体外面に貼合されたフィルム状物であり、掌面と、先端面および2つの側面のうちの少なくとも1つとに跨って重なる感圧エリアを有する。
【0011】
このような構成を備えるロボットハンドの触覚センサ付き指は、指部の先端面や側面まで感圧エリアを拡大して触覚センサ本体を備えているので、指部の先端面や側面と把持対象物との接触を検知できる。その結果、指部の掌面以外の部分に把持対象物が接触することに起因する破損や故障を抑制できる。
【0012】
また、1つの態様として、触覚センサ本体が、第1基材フィルム上に第1電極パターンが設けられた第1電極フィルムと、第1基材フィルムに対向する第2基材フィルム上に第2電極パターンが設けられた第2電極フィルムと、第1電極フィルムと第2電極フィルムとの間に挟まれた絶縁体とを備えた静電容量式感圧センサであり、
第1基材フィルム側が指部に貼合されていると好適である。
上記構成により、触覚センサ本体は薄膜パターンの電極が絶縁体を介して積層されただけの単純な構造であるので、指部を構成する筐体外面の複数面に沿って立体的に貼合しても、触覚センサ本体の検出機能を十分に発揮することができる。
【0013】
また、1つの態様として、第1基材フィルム、第2基材フィルムの引張弾性率をそれぞれE1、E2、第1基材フィルム、第2基材フィルムの厚みをそれぞれt1、t2としたとき、E1×t1>E2×t2の関係にあると好適である。
上記構成により、指部側となる第1基材フィルムが外側となる第2基材フィルムよりも硬いので、指部を構成する筐体外面に沿ってフィルム状の触覚センサ本体を立体的に貼合しても、触覚センサ本体の寸法変化が起きにくい。したがって、検出精度が向上する。
【0014】
また、1つの態様として、指部の掌面、先端面および2つの側面のうちの少なくとも1つが、複数面で構成され且つ感圧エリアと重なっていると好適である。
上記構成により、より多くの面に感圧エリアを設けることで、把持対象物との多様な接触状態を計測することができる。
【0015】
また、1つの態様として、触覚センサ本体が、指部を構成する筐体外面に沿わない部分を除いた展開パターンを有していると好適である。
上記構成により、触覚センサ本体として不要な部分が折り曲げを妨げることがないので、フィルム状の触覚センサ本体を指部の外面に沿わせて折り曲げやすくなる。
【0016】
また、1つの態様として、触覚センサ本体の感圧エリアが、触覚センサ本体の折り曲げられた形状に合わせて、複数に分割されていると好適である。
上記構成により、感圧エリアが2つ以上の面に跨って連続して存在しないので、検出される力の3次元ベクトルがどの向きかを正しく測定できる。
【0017】
また、1つの態様として、触覚センサ本体が保護層で被覆されており、触覚センサ本体の感圧エリアより外側の不感圧エリアに面するように、保護層の触覚センサ本体側が切り欠かれて切欠部が設けられていると好適である。
上記構成により、感圧エリアの外側において把持対象物と指部とが接触したときに、不感圧エリアに面するように、保護層の触覚センサ本体側に切欠き部が設けられているため、切欠き部の空間によって保護層が大きく変形する。その結果、触覚センサ本体の不感圧エリアに近い感圧エリアにも変形が及ぶため、不感圧エリアにおける把持対象物と指部との接触を検出することができる。
【0018】
また、1つの態様として、切欠き部の空間が、保護層よりも柔らかいクッション層で埋まっていると好適である。
上記構成により、切り欠き部があることによる触覚センサ本体の耐久性劣化を最小限に抑えることができる。
【0019】
また、1つの態様として、指部の触覚センサ本体が貼合されていない部分が、部分的または全体的に拡張された保護層で被覆されていると好適である。
上記構成により、触覚センサ本体の保護だけでなく、指部の保護エリアを拡大できる。
【0020】
また、1つの態様として、触覚センサ本体が、掌面と先端面とに跨って重なる感圧エリアを有する構成において、触覚センサ本体全面および指部の2つの側面の一部又は全部が連続して保護層で被覆されており、保護層が、指部の掌面上で且つ触覚センサ本体の感圧エリアを被覆する部分において、指部の掌面と2つの側面との境界付近を被覆する部分よりも、厚み方向に突出した突出部を有していると好適である。
上記構成により、触覚センサ本体の保護だけでなく、指部の保護エリアを拡大できる。
また、保護層が、指部の掌面上で且つ触覚センサ本体の感圧エリアを被覆する部分において厚み方向に突出しているので、指部の掌面と2つの側面との境界付近で把持対象物が接触するより前に、感圧エリアで把持対象物を検知できる。
なお、先に述べた切り欠き部を保護層の触覚センサ本体側に設ける構成と比べて、保護層の形成が容易である。例えば、インサート成形などで形成できる。
【0021】
また、本発明の触覚センサ付きロボットハンドは、上記したいずれかに記載のロボットハンドの触覚センサ付き指を複数本備え、さらに、これらの指部の後端を支持する支持部と、把持対象物を把持又は解放するように指部を駆動する駆動部と、を備えている。
【0022】
1つの態様として、指部を2本備え、これらの指部が、掌面どうしが向き合うように配置され、指部の各々が無関節で、平行な掌面どうしが接近することにより把持対象物を把持するようにしていると好適である。
【発明の効果】
【0023】
本発明のロボットハンドの触覚センサ付き指は、これを用いた触覚センサ付きロボットハンドの使用時に、指部の掌面以外の部分に把持対象物が接触することに起因する破損や故障を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態に係る
触覚センサ付き指を用いたロボットハンドが取り付けられたロボットの一例を示す図。
【
図2】第1実施形態に係る
触覚センサ付き指を用いたロボットハンドの一例を示す図
【
図3】第1実施形態に係るロボットハンドの
触覚センサ付き指の一例を示す図。
【
図4】第1実施形態に係る指部に貼合された触覚センサ本体の構成の一例を示す図。
【
図5】触覚センサで検出されたせん断力分布の一例を示す図。
【
図6】第1実施形態に係るロボットハンドの
触覚センサ付き指の別の例を示す図。
【
図7】第1実施形態に係るロボットハンドの
触覚センサ付き指の別の例を示す図。
【
図8】
図7の変化例で用いる触覚センサ本体の展開パターンを示す図。
【
図9】矩形の触覚センサ本体を用いて指部の先端部および2つの側面に貼合した場合を示す図。
【
図10】複数面からなる掌面を有する指部に貼合された触覚センサ本体の一例を示す図。
【
図12】第1実施形態に係るロボットハンドの
触覚センサ付き指における保護層形状の一例を示す図。
【
図13】第2実施形態に係るロボットハンドの
触覚センサ付き指における保護層形状の一例を示す図。
【
図14】第3実施形態に係るロボットハンドの
触覚センサ付き指における保護層形状の一例を示す図。
【
図15】第3実施形態に係るロボットハンドの
触覚センサ付き指における保護層形状の別の例を示す図。
【
図16】第4実施形態に係るロボットハンドの
触覚センサ付き指における保護層形状の一例を示す図。
【
図18】従来技術のロボットハンドを用いた例を示す図。
【
図19】従来技術のロボットハンドを用いた例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の触覚センサ付き指を用いたロボットハンドを図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0026】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る
触覚センサ付き指を用いたロボットハンド1を備えたロボット100を示す側面である。
【0027】
(1)ロボット本体
図1に示すように、ロボット本体100 は、水平多関節ロボット(スカラロボット)であって、基台110と、基台110に対して回動可能に接続されているアーム120と、を有している。また、アーム120は、関節機構を介して基台110に垂直軸まわりに回動可能に接続されている第1アーム130と、関節機構を介して第1アーム130に垂直軸まわりに回動可能に接続されている第2アーム140と、第2アーム140の先端部に設けられている作業ヘッド150と、を有している。そして、作業ヘッド150の下端部に
触覚センサ付き指を用いたロボットハンド1が取りつけられている。作業ヘッド150は、ロボットハンド1を垂直軸回りに回動可能であり、かつ、上下方向に昇降可能である。
【0028】
(2)ロボットハンド1
以下、このようなロボットハンド1について詳細に説明する。
本実施形態の
触覚センサ付き指を用いたロボットハンド1は、
図2に示すように、
触覚センサ付き指1Fを2本備えている。各々の
触覚センサ付き指1Fは、指部2と、指部2を構成する筐体21外面に貼合された触覚センサ本体5とを備える。また、2本の指部2の後端を支持する支持部3と、指部2を駆動する駆動部4とを備えている。駆動部4は、2本の指部2を互いに近づく向きと離れる向きとに可動させることができる。これにより、ロボットハンド1 は、把持対象物Wを把持したり、把持している把持対象物Wを解放したりすることができる。また、ロボットハンド1全体は、必要に応じて上下移動や回転も可能である。
なお、把持対象物Wとしては、特に限定されず、例えば、種々の工業製品や農作物、様々な大きさ・形状を有するものや、正確な形状が不明なものなどが挙げられる。
【0029】
(3)指部2
図3は、第1実施形態に係るロボットハンド1の
触覚センサ付き指1Fの一例を示す図である。
図3(a)は、
触覚センサ付き指1Fを指部2の掌面21a側から見た図である。
図3(b)は、
図3(a)のAA線断面である。
各々の指部2は、持対象物Wに接触(ロボットハンドとしては持対象物Wを把持)する掌面21aと、掌面21aと反対側の背面21bと、掌面21aおよび背面21bの延在方向Xの先端で掌面21aおよび背面21bと隣接する先端面21cと、掌面21aおよび背面21bの延在方向Xに交差する方向Yで掌面21aおよび背面21bと隣接する両方の側面21d,21dとを各々有する、おおよそ直方体の筐体21で構成される。また、筐体21は、樹脂または金属製である。
また、各々の指部2は、
図2および
図3に示すよう例では、無関節である。したがって、
触覚センサ付き指1Fは、平行な掌面21aどうしが接近することにより把持対象物Wを把持する。
【0030】
(4)触覚センサ本体5
触覚センサ本体5は、
図3に示すように、指部2を構成する筐体21外面に貼合されたフィルム状物である。また、
図3に示す例では、触覚センサ本体5は、指部2の掌面21aと、先端面21cに跨って重なる感圧エリア5aを有する。
【0031】
触覚センサ本体5は、感圧エリア5aにて押す力(圧力)と滑る力(摩擦力)を検出する3軸力覚センサである。ロボットハンド1の指部2に実装することで、把持対象物Wを握る力だけでなく、”ねじる”、”押し込む”、”引っ張る”などの動作の大きさを測定することが可能になる。
【0032】
図4は、第1実施形態に係る指部2に貼合された触覚センサ本体5の構成の一例を示す図である。触覚センサ5が貼合された指部2の破線で囲まれた領域を部分拡大して描いている。
触覚センサ本体5は、例えば、
図4に示すように、第1基材フィルム51上に第1電極52が設けられた第1電極フィルム53と、第1基材フィルム51に対向する第2基材フィルム54上に第2電極55が設けられた第2電極フィルム56と、第1電極フィルム51と第2電極フィルム54との間に挟まれた絶縁体57とを備えた静電容量式感圧センサとすることができる。
なお、第1電極52と第2電極55とによって検知可能な領域が感圧エリア5aである。また、感圧エリア5aの外側に第1電極52や第2電極55と接続された配線パターンが形成された不感圧エリア5bが存在する。
この静電容量式感圧センサを、第1基材フィルム51側を接着層6にて指部2に貼合させる。
【0033】
触覚センサ本体5は薄膜パターンの電極が絶縁体を介して積層されただけの単純な構造であるので、指部を構成する筐体外面の複数面に沿って立体的に貼合しても、触覚センサ本体の検出機能を十分に発揮することができる。
【0034】
第1基材フィルム51および第2基材フィルム54の材質としては、ウレタン、エポキシ、シリコーンなどのゴムシートや、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)などの合成樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0035】
第1基材フィルム51および第2基材フィルム54の厚みは0.03μm~0.5mmである。このように、合計厚さ1mm以下の薄くて柔軟なフィルムを基材に使用しているので、ロボットハンド1の指部2の表面に違和感なく実装することができる。
【0036】
ところで、第1基材フィルム51、第2基材フィルム54の引張弾性率をそれぞれE1、E2、第1基材フィルム51、第2基材フィルム54の厚みをそれぞれt1、t2としたとき、E1×t1>E2×t2の関係にするのが好ましい。
上記構成により、指部2側となる第1基材フィルム51が外側となる第2基材フィルム54よりも硬いので、指部2を構成する筐体外面に沿ってフィルム状の触覚センサ本体5を立体的に貼合しても、触覚センサ本体5の寸法変化が起きにくい。したがって、検出精度が向上する。
【0037】
なお、本発明でいう引張弾性率は、第1基材フィルム51や第2基材フィルム54をダンベル1号試験片の形状にカットし、微小な変位測定が可能な非接触方式の伸び幅計を使用して、JISK7127およびJISK7161に準拠した引張試験の方法にて、第1基材フィルム51や第2基材フィルム54が受けた引張応力を第1基材フィルム51や第2基材フィルム54に生じたひずみで除した値のことを指す。
【0038】
静電容量式感圧センサの第1電極52および第2電極55のパターンは、下記の各パターン例のほか、公知のパターンを用いることができる。
【0039】
<パターン例1>
第1電極52および第2電極55としては、線状パターンからなり、それらが平面視において同じ方向に伸びたパターンの態様が挙げられる(図示せず)。第1電極52と第2電極55とが同じ方向に伸びた線状パターンからなるようにすることで、第2電極55の伸びた一方向と交差する角度の方向から力が加わった際に、その力の大きさに応じて第2電極55が変形し、第1電極52との間の距離が変化し、第1電極52と第2電極55との間の静電容量値が変化する際の電気信号を検知して力の大きさを測定できる。
【0040】
例えば、第1電極52は一方向に伸びた3本の線状パターン(左端、真ん中、右端とする)からなり、第2電極55も第1電極52と同じ方方向に伸びた2本の線状パターン(左側、右側とする)である。第1電極52の左端のパターンと真ん中のパターンの隙間および第1電極52の真ん中のパターンと右端のパターンの隙間の位置に形成する。このような構成において、第2電極55の伸びた一方向と交差する角度の方向で左から右へ力が加わると、その力の大きさに応じて第2電極55の2本の線状パターンが力の加わった方向に変形(平行移動)し、第1電極52の真ん中のパターンとの間の距離は、第2電極55の左のパターンについては近くなり、第2電極55の右のパターンについては遠くなる。また、第1電極52の左端のパターンと第2電極55の左のパターンについては遠くなり、第1電極52の右端のパターンと第2電極55の右のパターンについては近くなる。これらの線状パターンの層間の距離の変化は、加えられた力の大きさに比例する。
すなわち、触覚センサ本体5の表面に対してせん断力が働くことによって、第1電極52と第2電極55が対向して重なり形成する複数のキャパシタの重なり面積の増減が生じるため、静電容量の割合が変化する。よって、この複数の静電容量の変化を測定することで、押圧力とせん断力を検出することができる。
したがって、これらの線状パターンの層間の距離の変化に伴う各々の線状パターン間の静電容量値の変化を検知すれば、加えられた力の大きさを検知できる。
【0041】
この例は、第1電極52が3本の線状パターンで第2電極55が2本の線状パターンの場合を記載しているが、1本のみでもよいし4本以上であってもよい。また、第1電極52と第2電極55とで線状パターンの本数が同じであってもよい。
【0042】
また、第1電極52および第2電極55の線状パターンは、ともにほぼ同じ形状の長尺の長方形であってもよいし、幅や長さがそれぞれ異なっていてもよいし、部分的に幅が広くなっている形状や狭くなっている形状のものでもよい。
また、長方形状だけでなく、多角形の形状や、円弧形状のような曲線状になっているものでもよい。また、それらが複合した形状や波形状であってもよい。なお、これらの正方形や円の形状などは、一般的に線状パターンの範疇に入らないが、本発明においては、本発明の作用や機能を呈する態様であれば線状パターンの一種と見做す。
【0043】
また、第1電極52と第2電極55とが同じ方向に伸びた線状パターンからなる本パターン例1においては、触覚センサ本体5の表面に対して法線方向の力(押圧力)が働くことによって、第1電極52と第2電極55との距離が接近するため、第1電極52と第2電極55が対向して重なり形成する複数のキャパシタの静電容量の量が増える。この静電容量の変化を測定することで、押圧力の大きさを測定できる。
【0044】
<パターン例2>
また、第1電極52は絶縁体を挟んで下部第1電極と上部第1電極からなる二層であり、第2電極55は絶縁体を挟んで下部第2電極と上部第2電極からなる二層になっていてもよい(図示せず)。この場合は、第1電極52を、X方向に伸びた線状パターンの下部第1電極とY方向に伸びた線状パターンの上部第1電極とし、第2電極55を、下部第1電極と同じX方向に伸びた線状パターンの下部第2電極と、上部1電極パターンと同じY方向に伸びた線状パターンの上部第2電極にすることが好ましい。
なお、第1電極52の二層の上部に第2電極55の二層を形成する例に限定されず、第1電極52と第2電極55の各層を互い違いに形成しても構わない。
【0045】
このようにすれば、同じX方向に伸びた下部第1電極と下部第2電極との間の静電容量の割合の変化と、同じY方向に伸びた上部第1電極と上部第2電極との間の静電容量の割合の変化とを、それぞれ別々に検知することができる。
その結果、せん断力が加わる方向が、平面から見た場合でも斜め方向で、せん断力にX方向の分力成分とY方向の分力成分がある場合(せん断力の方向が上部第1電極パターンまたは上部第2電極パターンのいずれかの線状パターンの方向と平行または直角ではない場合)であっても、力のX方向およびY方向の各分力成分をそれぞれ測定することができるメリットがある。
【0046】
また、第1電極52は絶縁体を挟んで下部第1電極と上部第1電極からなる二層であり、第2電極55は絶縁体を挟んで下部第2電極と上部第2電極からなる二層になっている本パターン例2においては、触覚センサ本体5の表面に対して法線方向の力(押圧力)が加わった際に、下部第1電極と下部第2電極との間、上部第1電極と上部第2電極との間で距離が接近するため、下部第1電極と下部第2電極、上部第1電極と上部第2電極が対向して重なり形成する複数のキャパシタの静電容量の量が増える。これらの静電容量の変化を測定することで、押圧力の大きさを測定できる。
【0047】
<パターン例3>
さらに、上記したパターン例1のような静電容量式感圧センサを縦横マトリックス状に複数個並べた静電容量式感圧センサ群を構成すると、各静電容量式感圧センサの一方向と交差する角度の方向の力の面状分布を測定することもできる。すなわち、各々の静電容量式感圧センサはそれぞれ各々の位置における静電容量式感圧センサと交差する角度の方向の力を測定することができるので、力の大きさが場所によって異なる場合であっても、静電容量式感圧センサを縦横マトリックス状に複数個並べると、各場所における力の大きさを測定できる。
なお、この場合の静電容量式感圧センサは、第1基材フィルム51および第2基材フィルム54はすべて共通化したうえで第2電極55や第1電極52をそれぞれ別個独立して形成している。
【0048】
<パターン例4>
さらに、上記したパターン例2のような第2電極55および第1電極52をそれぞれ複数層形成した静電容量式感圧センサを、縦横マトリックス状に複数個並べて静電容量式感圧センサ群を構成すると、各々の静電容量式感圧センサに加えられた力のX方向およびY方向の各分力成分も測定でき、力のX方向およびY方向の各分力成分の面状分布も測定することができる。すなわち、各々の静電容量式感圧センサはそれぞれ各々の位置における静電容量式感圧センサと交差する角度の方向の力の分力(X方向の分力およびY方向の分力)をそれぞれ測定することができるので、力の大きさおよび方向が場所によって異なる場合であっても、静電容量式感圧センサを縦横マトリックス状に複数個並べると、各場所における力の分力(X方向の分力およびY方向の分力)の大きさを測定できる。
この場合の静電容量式感圧センサも、パターン例3と同様に、第1基材フィルム51および第2基材フィルム54はすべて共通化したうえで第2電極55や第1電極52をそれぞれ別個独立して形成している。
【0049】
上記のパターン例3、4は、面状分布を測定できるので、ロボットハンド用途にはとくに適している。
なお、上記のパターン例3、4では、静電容量式感圧センサを縦横マトリックス状に並べる場合を示したが、指部2が細長い場合、静電容量式感圧センサを一列に並べても構わない。
【0050】
<パターン例5>
また、第1電極52が島状パターンからなり、第2電極55が絶縁体を挟んで上部第2電極と下部第2電極の二層からなり、かつ上部第2電極と下部第2電極とが平面視において交差する複数本の線状パターンからなり、第1電極52の島状パターンの一部が上部第2電極のパターンの一部および下部第2電極のパターンの一部と平面視においてそれぞれ重なるパターンにする態様もある。この平面視において上部第2電極と下部第2電極とが交差する角度は限定されず、それらが直交する(すなわち交差する角度が90°になる)場合は第1電極52のパターンは長方形状の碁盤目状になり、直交しない場合には第1電極52のパターンは平行四辺形状の碁盤目状となる。
【0051】
この島状パターンの第1電極52と上部第2電極との間の静電容量値の変化およびこの島状パターンの第1電極52と下部第2電極との間の静電容量値の変化を計測することで、それぞれ上部第2電極のパターン方向の力のX軸方向の分力成分と下部第2電極のパターン方向の力のY軸方向の分力成分とを測定することができる。
そして、この状態からX軸方向の分力成分が加わると、その力の大きさに比例して上部第2電極は平行移動し、その結果、第1電極52と上部第2電極との間の静電容量値を検出できる領域は増加する。したがって、この増加した静電容量値を検出すれば、もとのX軸方向の分力成分が測定できる。
同様に、Y軸方向の分力成分が加わると、その力の大きさに比例して下部第2電極は平行移動し、その結果、第1電極52と下部第2電極との間の静電容量値を検出できる領域が増加する。したがって、この増加した静電容量値を検出すれば、もとのY軸方向の分力成分が測定できる。
【0052】
また、本パターン例5においては、触覚センサ本体5の表面に対して法線方向の力(押圧力)が加わった際に、上部第2電極と下部部第2電極との距離が接近するため、上部第2電極と下部部第2電極が対向して重なり形成する複数のキャパシタの静電容量の量が増える。この静電容量の変化を測定することで、押圧力の大きさを測定できる。
【0053】
以上、第1電極52および第2電極55のパターンについて、幾つかの例を示したが、これらに限定されない。
【0054】
第1電極52および第2電極55の材質は、1)金、銀、銅、白金、パラジウム、アルミニウム、ロジウム等の金属膜のほか、2)これらの金属粒子を樹脂バインダーに分散させた導電ペースト膜、あるいはポリへキシルチオフェン、ポリジオクチルフルオレン、ペンタセン、テトラベンゾポルフィリンなどの有機半導体などが挙げられるが、特に限定されない。
第1電極52および第2電極55の形成方法は、上記1)の場合、メッキ法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等で導電膜を全面形成した後にエッチングによりパターニングする方法が挙げられ、上記2)の場合、スクリーン、グラビア、オフセットなどの印刷法等で直接パターン形成する方法が挙げられる。
【0055】
絶縁体57の材質としては、ウレタン、シリコーン、エポキシ、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ブタジエンなどで作成されたゴムシートや、フォーム材などが挙げられる。さらに、これらの材料を弾性接着剤、すなわち硬化後も弾性を有する接着剤によって第1電極フィルム53や第2電極フィルム55に接着してもよい。なお、絶縁体57は、押出成形などの一般的なシート成形法によりシート化されたものに限定されるわけでなく、印刷やコーターなどによって形成されたコーティング層であってもよい。
【0056】
また、触覚センサ本体5の感圧エリア5aの外側の不感圧エリア5bには、第1電極52および第2電極55の各々からの配線パターンが形成されている。これらの配線パターンは、
図3(b)に示すように、フィルムコネクタ10により触覚センサ本体5から取り出され、ロボットハンド1の指部2を構成する筐体21内部に納められたPCB(プリント基板)91と電気接続されている。PCB91で処理された信号は、PCB91からUSBケーブルなどのケーブル92を介して、ロボット本体に送られる。
【0057】
(5)接着層6
また、触覚センサ本体5は、
図4に示すように、接着層6によってロボットハンド1の指部2に貼合されている。
接着層6の材質としては、例えば、両面テープなどが挙げられる。
【0058】
(6)保護層7
また、触覚センサ本体5は、
図4に示すように、保護層7で被覆されている。
保護層7は、力の加えられる触覚センサ本体5の感圧エリアを保護するものである。護層7の上面が、把持対象物Wとの接触面になっている。
図12は、第1実施形態に係るロボットハンドの
触覚センサ付き指における保護層7形状の一例を示す断面図である。
図12(a)は、指部2を掌面21a側から見た図である。
図12(b)は、
図12(a)のDD線断面である。
保護層7は、
図12(b)に示すように、触覚センサ本体5を被覆しているが、触覚センサ本体5の感圧エリア5aより外側の不感圧エリア5bに面するように、保護層7の触覚センサ本5体側に切欠き部71が設けられている。この切欠き部71の空間には何も無く、空気層となっている。
不感圧エリア5bにおいて把持対象物Wと指部2とが接触したときに、切欠き部71の空間によって保護層7が大きく変形する。その結果、触覚センサ本体5の不感圧エリア5bに近い感圧エリア5aにも変形が及ぶため、把持対象物Wと指部2との接触を検出することができる。
なお、図示された切欠き部71は、保護層7の空間と接する面が指部2の筐体21表面に対して平行な下面と垂直な壁面とで構成されているが、これに限定されない。例えば、下面が指部2の筐体21表面に対して傾斜してもよい。また、下面を指部2の筐体21表面に対して傾斜させ、壁面を無くしてもよい。また、保護層7の空間と接する面が曲面で構成されていてもよい。
【0059】
保護層7の材質としは、ウレタン、シリコーン、エポキシ、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ブタジエンなどで作成されたゴムシートや、フォーム材などが挙げられる。保護層7の被覆は、これらゴムシートやフォーム材を貼合することによって行う。触覚センサ本体5を貼合した筐体21を成形型に設置して液状のゴム材料などを流し込んで成型するインサート成型などによっておこなってもよい。保護層7の厚みは、0.5mm~5mmが好ましい。
【0060】
さらに、保護層7の表面にはさまざまな意匠シートを貼合することができる。目的に応じて、絵柄シートのほかに、レザーや布などを貼り合わせることで、デザイン性を付与することができる。また、保護層7自体に絵柄を形成することもできる。
【0061】
図5は、
図2のように把持対象物Wを把持したときに触覚センサ本体5で検出されたせん断力分布の一例を示す図である。2本の触覚センサ付き指1Fのうち一方を1FA、他方を1FBとし、それぞれが有する触覚センサ本体5によって指部2の掌面21a間に把持対象物Wを把持したときのせん断力を測定し、せん断力分布を感圧面視で表示した。なお、ここで用いる電極パターンは、前述のパターン例5であり、持対象物Wは筒状物である。
検出されたせん断力分布によれば、
図2の紙面手前から奥の向きに把持対象物Wが引っ張られているのがわかる。
【0062】
(7-1)変形例1
上記第1実施形態では、先端部にロボットハンド1の取りつけられているロボット本体100は、水平多関節ロボットの場合を図示して説明したが、これに限定されない。例えば、ロボット本体100は、垂直多関節ロボットなど他のロボットであってもよい。
【0063】
(7-2)変形例2
上記第1実施形態では、ロボットハンド1の指部2が無関節の場合を図示して説明したが、指部2はこれに限定されない。例えば、各指部2が1~2の関節を有していてもよい。
指部2が関節を有していていることによって、把持対象物Wに対する指部2の接触する角度が多様となり、指部2の掌面21a以外のとの接触機会も多くなる。したがって、それらの接触面に対しても触覚センサが必要となる。
【0064】
(7-3)変形例3
上記第1実施形態では、ロボットハンド1の指部2が2つの2本指型の場合を図示して説明したが、指部2これに限定されない。例えば、指部2が3つの3本指型、人間と同様の5本指型などの多指型であってもよい。多指型のロボットハンド1の場合、変形例2で述べた関節を組み合わせるのが好ましい。
例えば、3本または5本の指部2は、それらの後端を支持する支持部3の垂直軸の周方向に離散的に配列されており、これら指部2は、駆動部4によって各指部2の関節を曲げることで、軸に対して近づく向きと離れる向きとに可動する。
【0065】
(7-4)変形例4
上記第1実施形態では、触覚センサ本体5が、掌面21aと、先端面21cのみに跨って重なる感圧エリア5aを有している例を示して説明したが、これに限定されない。感圧エリア5aは、掌面21aと、先端面21cおよび2つの側面21d,21dのうちの少なくとも1つとに跨って重なっていればよい。例えば、
図6に示すように、触覚センサ本体5が、掌面21aと2つの側面21d,21dと跨って重なる感圧エリア5aを有していてもよい。また、触覚センサ本体5が、
図7に示すように、掌面21aと先端面21cと2つの側面21d,21dとに跨って重なる感圧エリア5aを有していてもよい。
【0066】
なお、
図7に示す触覚センサ本体5の展開パターンは、矩形ではない。
図8に示すように、本実施形態の触覚センサ本体5は、指部2を構成する筐体21外面に沿わない部分を除いた展開パターンを有している。
仮に触覚センサ本体5の展開パターンが
図8の破線の部分を含む矩形であった場合、
図9に示すように、触指部2の先端面21cと側面21d,21dとの境界上に、筐体21の外面に沿わない部分が生ずる。この部分が基材フィルムの剛性によって折り曲げを妨げるので、フィルム状の触覚センサ本体5を指部2の外面に沿わせて折り曲げにくい。また、触覚センサ本体5の外面に皺などの凸部が生じやすくなり、触覚センサ本体5の感圧エリア5aと把持対象物Wとの接触が不確実となる。
本実施形態のように、筐体21外面に沿わない部分を除くことにより、この触覚センサ本体5として不要な部分が折り曲げを妨げることがないので、フィルム状の触覚センサ本体5を指部2の外面に沿わせて折り曲げやすくなる。
【0067】
(7-5)変形例5
上記第1実施形態では、ロボットハンド1の指部2がおおよそ直方体の筐体21で構成されていたが、これに限定されない。例えば、指部2の掌面21a、先端面21cおよび2つの側面21d,d1dのうちの少なくとも1つが、複数面で構成され且つ感圧エリア5aと重なっているようにしてもよい。
図10は、複数面からなる掌面21aを有する指部2に貼合された触覚センサ本体5の一例を示す図である。
図10(a)は、触覚センサ本体5の大面積部分を指部2側とは反対側から見た図である。
図10(b)は、
図10(a)のBB線断面である。
図10(c)は、
図10(a)のCC線断面である。
図10に示す例では、指部2の掌面21aが平面ではなく、6つの面からなる立体面である構成において貼合された、触覚センサ本体5の形状の一例が示されている。
図11は、
図10に示す触覚センサ本体5の展開パターンであり、指部2を構成する筐体21外面に沿わない部分を除いた形状をしている。なお、触覚センサ本体5の感圧エリア5aは、触覚センサ本体5の折り曲げられた形状に合わせて、6つの面に対応するエリアに分割されている(図示せず)。
このように、より多くの面に感圧エリア5aを設けることで、把持対象物Wとの多様な接触状態を計測することができる。
【0068】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る触覚センサ付きロボットハンドについて、
図13を用いて説明する。
図13(a)は、指部2を掌面21a側から見た図である。
図13(b)は、
図13(a)のEE線断面である。
第3実施形態は、指部2の触覚センサ本体5が貼合されていない部分が、保護層7で被覆されている点で第1実施形態と異なる。
すなわち、触覚センサ本体5の保護だけでなく、指部2の保護エリアを拡大できる。なお、拡大させる保護エリアは、指部2の触覚センサ本体5が貼合されていない部分の全てでもよいし、指部2の触覚センサ本体5が貼合されていない部分の一部だけでもよい。
【0069】
その他の点については、第1実施形態と説明が重複するため、説明を省略する。また、第1実施形態で説明した各変化例も、第2実施形態に適用できる。
【0070】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る触覚センサ付きロボットハンドについて、
図14、
図15を用いて説明する。
図14(a)は、触覚センサ本体5のみが保護層7で保護された指部2を掌面21a側から見た図である。
図14(b)は、
図14(a)のFF線断面である。
図15(a)は、保護層7で保護された指部2を掌面21a側から見た図である。
図15(b)は、
図15(a)のGG線断面である。
第3実施形態は、保護層7の切欠き部71の空間が、保護層7よりも柔らかいクッション層8で埋まっている点で第1、第2実施形態と異なる。
切欠き部71の空間を保護層7よりも柔らかいクッション層8で埋めることにより、空間がクッション層8で埋まっていない場合と比べて感圧エリア5aの縁部への応力集中を緩和できる。感圧エリア5aの縁部への応力集中は、繰り返し続けられると感圧エリア5aでの断線リスクを高める。したがって、切り欠き部71があることによる触覚センサ本体5の耐久性劣化を最小限に抑えることができる。
【0071】
第3実施形態において、クッション層8を構成する柔らかい材料としては、フォーム材を用いることができる。フォーム材は、例えば、ウレタンやシリコーンなどのゴム材料を発泡させたものなどを挙げることができる。
なお、クッション層8の形成方法としては、例えば、加硫前の液体ゴムに発泡材を混ぜてそれを保護層7の切り欠き部71に流し込む方法や、予め触覚センサ本体5の不感圧エリア5bに発泡材を貼り付けておき、その後、保護層7の硬化前の液体を触覚センサ本体5の感圧エリア5aおよび発泡体を覆うように流し込んで成形する方法などが挙げられる。
【0072】
その他の点については、第1、第2実施形態と説明が重複するため、説明を省略する。また、第1実施形態で説明した各変化例も、第3実施形態に適用できる。
【0073】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係るロボットハンドの
触覚センサ付き指における保護層形状の一例について、
図16を用いて説明する。
図16(a)は、保護層7で保護された指部2を掌面21a側から見た図である。
図16(b)は、
図16(a)のHH線断面である。
第4実施形態は、触覚センサ本体5全面と、指部2の2つの側面21d,21dの一部(
図16参照)又は全部(図示せず)とが、連続して保護層7で被覆されている点で第1実施形態と異なる。また、保護層7が、指部2の掌面21a上で且つ触覚センサ本体5の感圧エリア5aを被覆する部分において、指部2の掌面21aと2つの側面21d,21dとの境界付近を被覆する部分よりも厚み方向に突出した突出部72を有している点でも第1実施形態と異なる。なお、
図16に示す例では、指部2の先端面21c上で且つ触覚センサ本体5の感圧エリア5aを被覆する部分においても突出部72を有している。
【0074】
上記構成により、触覚センサ本体5の保護だけでなく、指部2の保護エリアを拡大できる。また、保護層7が、指部2の掌面21a上で且つ触覚センサ本体5の感圧エリア5aを被覆する部分において厚み方向に突出しているので、指部2の掌面21aと2つの側面21d,21dとの境界付近、すなわち感圧エリア5aの存在しない部分で接触するより前に突出部73に把持対象物Wが接触するから、突出部72のある感圧エリア5aで把持対象物Wを検知できる(
図17参照)。したがって、2本の指部2が把持対象物Wの両側からさらに接近をし続けることがなく、ロボットハンド11と把持対象物Wとの間に必要以上の負荷がかからない。
突出部72の突出程度は、例えば、
図16(a)のHH線断面である
図16(b)において、指部2の掌面21aに平行な保護層7表面の外縁と突出部72天面の外縁とを結ぶ仮想面(
図16(b)中の二点鎖線)の掌面21aに対する傾斜角度θが30°以上であるのが好ましい。傾斜角度θが30°に満たないと、突出部72による効果が得にくい。
【0075】
保護層7の上記突出部72を有する構成は、先に述べた切り欠き部71を保護層7の触覚センサ本体5側に設ける構成と比べて、保護層7の形成が容易である。例えば、インサート成形などで形成できる。すなわち、触覚センサ本体5を貼合した筐体21を成形型に設置して液状のゴム材料などを流し込んで、保護層7を成形する。もちろん、第1実施形態で説明したように、貼合することによって保護層7を被覆してもよい。
なお、
図16に示す例では、指部2の筐体21が露出する例が示されているが、本実施形態4はこれに限定されない。例えば、指部2の筐体21が露出する面積が
図16に示す例よりも増減してもよいし、保護層7で指部2を全体的に被覆してもよい。
【0076】
その他の点については、第1実施形態と説明が重複するため、説明を省略する。また、第1実施形態で説明した各変化例も、第4実施形態に適用できる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態および変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【符号の説明】
【0078】
1,11 ロボットハンド
1F 触覚センサ付き指
2 指部
21 筐体
21a 掌面
21b 背面
21c 先端面
21d 側面
3 支持部
4 駆動部
5 触覚センサ本体
5a 感圧エリア
5b 不感圧エリア
51 第1基材フィルム
52 第1電極
53 第1電極フィルム
54 第2基材フィルム
55 第2電極
56 第2電極フィルム
57 絶縁体
6 接着層
7 保護層
71 切欠き部
72 突出部
8 クッション層
90 フィルムコネクタ
91 PCB
92 ケーブル
100 ロボット本体
110 基台
120 アーム
130 第1アーム
140 第2アーム
150 作業ヘッド