(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】ハンドル及び水栓
(51)【国際特許分類】
E03C 1/042 20060101AFI20230403BHJP
F16K 31/44 20060101ALI20230403BHJP
F16K 35/02 20060101ALI20230403BHJP
F16K 11/00 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
E03C1/042 C
E03C1/042 B
F16K31/44 B
F16K35/02 Z
F16K11/00 B
(21)【出願番号】P 2018128412
(22)【出願日】2018-07-05
【審査請求日】2021-06-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】矢口 翔平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 喜好
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-150158(JP,A)
【文献】特開2010-189842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00-1/10
F16K 31/00-31/05
F16K 31/44-31/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓本体に回動可能に取り付けられるハンドルであって、
筒状の周壁を有するハンドル本体と、
前記周壁の端部側から挿入されて前記ハンドル本体に収容されるとともに、前記周壁に設けられた孔部から露出する押しボタンと、
前記ハンドル本体と前記押しボタンとの間に配置され、前記押しボタンを押し下げていない状態では前記押しボタンの押し下げ方向への移動を規制してなく、前記押しボタンを押し下げた際に前記押しボタンに当接して、それ以上の前記押しボタンの移動を規制する規制部と
、
前記周壁の一方の端部に取り付けられるキャップとを備え
、
前記規制部は、前記キャップに一体に設けられていることを特徴とするハンドル。
【請求項2】
前記押しボタンの先端面は、前記押しボタンを押し下げていない状態において、前記周壁の外面に沿った面上の位置又は前記周壁の外面よりも凹んだ位置にあることを特徴とする請求項
1に記載のハンドル。
【請求項3】
前記規制部は、前記押しボタン側に位置する第1面と、前記第1面の反対に位置して前記ハンドル本体に当接する第2面とを有し、
前記押しボタンを押し下げた際に、前記規制部の前記第1面に前記押しボタンが当接することを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載のハンドル。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載されたハンドルと、前記水栓本体とを備えた水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓本体に回動可能に取り付けられるハンドル、及びハンドルを備える水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吐出口を有する水栓本体と、水栓本体の一端側に取り付けられた温調ハンドルと、水栓本体の他端側に取り付けられた切換ハンドルとを備える混合水栓が開示されている。特許文献1の混合水栓に備えられる温調ハンドルは、所定の温度に対応する位置を越えて高温側に回動されることを規制するロック機構を有し、温調ハンドルの外面には、このロック機構によるロック状態を解除する押しボタンが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるような従来の温調ハンドルの押しボタンは、孔部を有する筒状のハンドル本体に対して、軸方向側から挿入し、半径方向外側に移動させることによって、ハンドル本体の孔部から一部を露出させた状態としてハンドル本体に取り付けられる。このように押しボタンを取り付けるためには、ハンドル本体の内部に押しボタンよりも大きな収容部を設ける必要がある。
【0005】
しかしながら、収容部を大きく形成すると、押しボタンのストローク量が必要以上に大きくなって、使用感が悪くなるという問題が生じる。また、場合によっては、押しボタンを押し下げた際に、押しボタンの一部(例えば、先端面)がハンドル本体に引っ掛かって元の位置に戻らなくなってしまうこともある。
【0006】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、押しボタンを備えるハンドルの使用感を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するハンドルは、水栓本体に回動可能に取り付けられるハンドルであって、筒状の周壁を有するハンドル本体と、前記周壁の軸方向側から挿入されて前記ハンドル本体に収容されるとともに、前記周壁に設けられた孔部から露出する押しボタンと、前記ハンドル本体と前記押しボタンとの間に配置され、前記押しボタンを押し下げた際に前記押しボタンに当接して、それ以上の前記押しボタンの移動を規制する規制部とを備える。
【0008】
上記構成によれば、押しボタンが規制部に当接する位置が押しボタンのストロークエンドになる。そのため、押しボタンを取り付けるためにハンドル本体に大きな収容部を設けた場合にも、規制部の位置に基づいて、押しボタンのストロークエンドを任意の位置に設定することができ、押しボタンのストローク量が必要以上に大きくなることを抑制できる。その結果、押しボタンを備えるハンドルの使用感が向上する。
【0009】
上記ハンドルにおいて、前記周壁の一方の端部に取り付けられるキャップを備え、前記規制部は、前記キャップに一体に設けられていることが好ましい。
上記構成によれば、規制部を設けることによる部品点数の増加を抑制できる。また、キャップを組み付けることにより、規制部も所定の位置に配置されるため、規制部の位置決め作業が容易になる。
【0010】
上記ハンドルにおいて、前記押しボタンの先端面は、前記押しボタンを押し下げていない状態において、前記周壁の外面に沿った面上の位置又は前記周壁の外面よりも凹んだ位置にあることが好ましい。
【0011】
周壁の外面と押しボタンの先端面とが上記の位置関係にあると、押しボタンを押し下げた際に、押しボタンの先端面が周壁に引っ掛かって元の位置に戻らなくなりやすい。規制部を設けた場合には、こうした問題も抑制されることから、上記構成のハンドルに適用することにより、規制部による使用感の向上効果がより顕著に得られる。
【0012】
上記ハンドルにおいて、前記規制部は、前記押しボタン側に位置する第1面と、前記第1面の反対に位置して前記ハンドル本体に当接する第2面とを有し、前記押しボタンを押し下げた際に、前記規制部の前記第1面に前記押しボタンが当接することが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、押しボタンを押し下げた際に押しボタンから規制部に伝わる力(押圧力)をハンドル本体に支持させることができる。これにより、押しボタンを押し下げた際に規制部にかかる負荷が軽減されて、押しボタンが当接することによる規制部の変形を抑制できる。その結果、押しボタンの繰り返しの操作に対するハンドルの耐久性が向上する。
【0014】
上記ハンドルと、前記水栓本体とを備えた水栓であることが好ましい。この構成によれば、上記ハンドルの機能を奏する水栓とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、押しボタンを備えるハンドルの使用感が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】(a)は
図1の4-4線断面図、(b)は押しボタンを押し下げた状態の断面図。
【
図5】(a)は
図4の5-5線端面図、(b)は押しボタンを押し下げた状態の端面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
図1に示すように、水栓10は、浴室の壁面11に設置されている。水栓10は、壁面11側に向かって、中央に位置する水栓本体12を備えている。水栓本体12の左側には、温調ハンドル13が回動可能に取り付けられるとともに、水栓本体12の右側には、切換ハンドル14が回動可能に取り付けられている。なお、本実施形態における左側及び右側は、壁面11側に向かって水栓10を見た場合の左側及び右側である。
【0018】
水栓本体12の壁側の部分には、壁面11に固定される配管15(湯用配管及び水用配管)が取り付けられている。また、水栓本体12は、カラン吐水用の第1吐出口16と、シャワーホース17に接続されたシャワー吐水用の第2吐出口(図示せず)とを有する。
【0019】
水栓10は、温調ハンドル13を回動させることにより、第1吐出口16や第2吐出口から吐出される混合水の温度を調節可能に構成される。また、水栓10は、切換ハンドル14を回動させることにより、第1吐出口16と第2吐出口の切り換えや、吐止水の切り換えを行うことが可能に構成されている。
【0020】
水栓10は、所定の温度(例えば、43℃)に対応する位置を越えて高温側に温調ハンドル13が回動されることを規制するロック機構を有している。温調ハンドル13の外面には、このロック機構によるロック状態を解除する押しボタン20が設けられている。
【0021】
以下、温調ハンドル13について具体的に説明する。
図3に示すように、水栓本体12は、回動させることによって混合水の温度を調節可能に構成された回動軸18を備えている。温調ハンドル13は、水栓本体12から突出する回動軸18に対して一体に回動可能に取り付けられる。
【0022】
図2及び
図3に示すように、温調ハンドル13は、回動軸18と一体に回動可能なハンドル本体30を備えている。ハンドル本体30は、両端が開放された筒状の周壁31を備えている。周壁31の内周面における左側の部分(水栓本体12と反対側の部分)には、半径方向内側に延びる複数のリブ32が設けられるとともに、リブ32の先端には、周壁31の軸方向に延びる筒状の被挿入部33が設けられている。被挿入部33は、回動軸18が一体回動可能に挿入される部位である。
【0023】
図4(a)及び
図5(a)に示すように、ハンドル本体30の内部における周壁31の軸方向中央部には、押しボタン20を収容する収容部34が設けられている。
図5(a)に示すように、収容部34は、周壁31と、被挿入部33と、周壁31内において押しボタン20の移動方向に平行に設けられた一対の第1案内壁35とによって区画されている。周壁31における収容部34を区画する部分には、押しボタン20を露出させるための孔部31aが周壁31を貫通して設けられている。
【0024】
図4(a)に示すように、周壁31の内周面には、孔部31aに沿った環状の第2案内壁31bが設けられている。第2案内壁31bは、その内周面が孔部31aの縁と面一となるように形成されている。そして、ハンドル本体30の収容部34には、押しボタン20が、第1案内壁35に沿った方向に進退移動が可能な状態で収容されている。
【0025】
図2~5に示すように、押しボタン20は、収容部34に収容される本体部21を備えている。
図5(a)に示すように、本体部21は、第1案内壁35に沿って延びる一対の縦壁22と、縦壁22の一方の端部同士を接続する前壁23と、縦壁22の他方の端部同士を接続する後壁24とを有する略四角筒状の部位であり、その内側に被挿入部33を挿通させた状態として収容部34に収容されている。
【0026】
本体部21の前壁23の中央部23aの内面は、断面円弧状に形成されている。前壁23の中央部23aの外面には、外面側に突出する軸部25が設けられるとともに、軸部25の先端には周壁31の孔部31aから露出するボタン部26が設けられている。ボタン部26の外周形状は、孔部31aと同形状かつ孔部31aよりも一回り小さい形状であり、ボタン部26は、孔部31a内及び第2案内壁31b内に配置されている。ボタン部26の先端面は、押しボタン20が押し下げられていない状態にあるときに、周壁31の外周面に沿った面上に位置して、周壁31の外周面から押しボタン20が突出しない形状に形成されている。
【0027】
本体部21の後壁24と周壁31との間には、押しボタン20を孔部31a側へ付勢するバネ等の付勢部材40が設けられている。付勢部材40によって付勢された後壁24が被挿入部33に当接する位置が、押し下げられていない状態の押しボタン20の位置であり、付勢部材40は、押しボタン20を押し下げられていない位置に位置決めしている。
【0028】
図2に示すように、押しボタン20は、ハンドル本体30の収容部34に向かって、周壁31の一方の端部側(水栓本体12側)から挿入されて、周壁31の孔部31a側へ押し上げられることによって収容部34内に配置される。そのため、
図4(a)に示すように、ハンドル本体30における被挿入部33の外面から第2案内壁31bの先端までの距離L1は、押しボタン20におけるボタン部26の先端面から本体部21の前壁23内面までの距離L2よりも十分に長くなっている。
【0029】
図2及び
図3に示すように、温調ハンドル13は、ハンドル本体30の他方の端部(水栓本体12側の反対側の端部)に取り付けられるキャップ50を備えている。キャップ50は、ハンドル本体30の端部を覆う板状の被覆部51と、被覆部51の内面側に突出する係合部52とを備えている。係合部52は、ハンドル本体30の被挿入部33に挿入されて、被挿入部33内において水栓本体12の回動軸18に係合する部位である。係合部52と回動軸18とが係合することにより、回動軸18に対して温調ハンドル13が抜け止めされる。
【0030】
キャップ50には、被覆部51の内面側に突出する板状の規制部53が一体に設けられている。
図4(a)及び
図5(a)に示すように、規制部53は、ハンドル本体30の被挿入部33の外周面に当接する態様で、被挿入部33と押しボタン20の前壁23の中央部23aとの間に挿入されている。規制部53は、押しボタン20の押し下げ方向への移動を制限する部位であり、付勢部材40の付勢力に抗して押しボタン20を押し下げた際に、押しボタン20の前壁23の中央部23aに当接して、それ以上の押しボタン20の押し下げを規制する。したがって、押しボタン20が規制部53に当接する位置が押しボタン20のストロークエンドになる。
【0031】
図5(a)に示すように、規制部53の外面(押しボタン20側に位置する第1面)は、押しボタン20の前壁23の中央部23aの内面に一致する断面円弧状に形成されている。
図5(b)に示すように、押しボタン20をストロークエンドまで押し下げたとき、規制部53の外面は、押しボタン20の前壁23の中央部の内面に対して面接触の状態で当接する。規制部53の内面(第1面の反対に位置する第2面)は、被挿入部33の外周面に一致する断面円弧状に形成されており、規制部53は、被挿入部33に対して面接触の状態で当接している。
【0032】
次に、温調ハンドル13のロック機構について説明する。
図2及び
図3に示すように、押しボタン20の本体部21の前壁23には、水栓本体12側に突出する円弧柱形状の突出部27が設けられている。また、
図3に示すように、水栓本体12の回動軸18の周囲には、回動軸18の周方向に沿って回動軸18を囲むロック壁19が設けられている。押しボタン20の突出部27と、水栓本体12のロック壁19とによってロック機構が構成されている。
【0033】
図6(a)に示すように、水栓本体12に温調ハンドル13が取り付けられた状態において、ロック壁19の端部19aに押しボタンの突出部27が当接することにより、所定温度よりも高温側への温調ハンドル13の回動が規制される。ロック機構を解除する際は、押しボタン20を押し下げ状態とする。これにより、
図6(b)の矢印A1で示すように、押しボタン20の突出部27の位置がロック壁19の端部19aよりも径方向内側に変位して、温調ハンドル13を高温側へ回動可能なロック解除状態になる。したがって、矢印A2で示すように、押しボタン20を押し下げた状態で温調ハンドル13を回動させることにより、所定温度よりも高温側に温調ハンドル13を回動させることができる。
【0034】
次に、本実施形態の作用について記載する。
図4(a)及び
図5(a)に示すように、押しボタン20を押し下げていない状態において、キャップ50に設けられた規制部53は、押しボタン20の前壁23とハンドル本体30の被挿入部33との間に配置されている。
図4(b)及び
図5(b)に示すように、この状態から押しボタン20を押すと、押しボタン20は、ハンドル本体30の第1案内壁35及び第2案内壁31bに沿って下方に移動するとともに、規制部53に当接することにより、それ以上の移動が規制される。したがって、押しボタン20が規制部53に当接する位置が、規制部53によって規定される押しボタン20のストロークエンドになる。
【0035】
ここで、
図4(a)に示すように、規制部53は、被挿入部33と前壁23の中央部23aとの間において、規制部53の外面から第2案内壁31bの先端までの距離L3が、押しボタン20におけるボタン部26の外面から本体部21の前壁23の内面までの距離L2よりも短くなるように設けられている。
【0036】
そのため、
図4(b)に示すように、押しボタン20がストロークエンドにあるときに、ボタン部26の先端面は、第2案内壁31bの先端よりも半径方向外側に位置している。これにより、押しボタン20を押し下げた際に、ハンドル本体30の周壁31(第2案内壁31b)の内側に押しボタン20のボタン部26の先端面が引っ掛かって元の位置に戻らなくなってしまうことが抑制される。
【0037】
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)水栓本体12に回動可能に取り付けられる温調ハンドル13は、筒状の周壁31を有するハンドル本体30と、周壁31の軸方向側から挿入されてハンドル本体30に収容されるとともに、周壁31に設けられた孔部31aから露出する押しボタン20と、ハンドル本体30と押しボタン20との間に配置され、押しボタン20を押し下げた際に押しボタン20に当接して、それ以上の押しボタン20の移動を規制する規制部53とを備えている。
【0038】
上記構成によれば、押しボタン20を取り付けるためにハンドル本体30に大きな収容部34を設けた場合にも、規制部53の位置に基づいて、押しボタン20のストロークエンドを任意の位置に設定することができ、押しボタン20のストローク量が必要以上に大きくなることを抑制できる。これにより、押しボタン20を備える温調ハンドル13の使用感が向上する。
【0039】
(2)周壁31の端部に取り付けられるキャップ50を備え、規制部53は、キャップ50に一体に設けられている。
上記構成によれば、規制部53を設けることによる部品点数の増加を抑制できる。また、キャップ50を組み付けることにより、規制部53も所定の位置に配置されるため、規制部53の位置決め作業が容易になる。
【0040】
(3)押しボタン20の先端面は、押しボタン20を押し下げていない状態において、周壁31の外面に沿った面上の位置にある。
周壁31の外面と押しボタン20の先端面とが上記の位置関係にあると、押しボタン20を押し下げた際に、押しボタン20の先端面が周壁31に引っ掛かって元の位置に戻らなくなりやすい。規制部53を設けた場合には、こうした問題も抑制されることから、上記構成のハンドルに適用した場合には、規制部53による使用感の向上効果がより顕著に得られる。
【0041】
(4)規制部53は、押しボタン20が規制部53に当接したときに(ストロークエンドにあるときに)、押しボタン20の先端面が周壁31の内周面(第2案内壁31bの先端)よりも半径方向外側に位置するように設けられている。
【0042】
上記構成によれば、押しボタン20の先端面が周壁31のハンドル本体30に引っ掛かって元の位置に戻らなくなることが抑制される。
(5)温調ハンドル13は、押しボタン20を押し下げた状態で回動させて用いられるハンドルである。
【0043】
上記構成の場合、温調ハンドル13を回動させた際に、ハンドル本体30に対して、押し下げた状態の押しボタン20が位置ずれし、これ起因して、押しボタン20の一部が周壁31に引っ掛かって元の位置に戻らなくなることが生じやすい。したがって、上記構成のハンドルに適用した場合には、規制部53による使用感の向上効果がより顕著に得られる。
【0044】
(6)規制部53の第1面(外面)は、押しボタン20の前壁23の中央部23aの内面に一致する形状に形成されており、規制部53は、押しボタン20に対して面接触の状態で当接する。
【0045】
上記構成によれば、面接触の状態にある押しボタン20と規制部53との間の摩擦抵抗等によって、押し下げた状態の押しボタン20が位置ずれし難くなる。これにより、押し下げた状態の押しボタン20の位置ずれが抑制される。その結果、押しボタン20の一部がハンドル本体30に引っ掛かって元の位置に戻らなくなることが抑制される。
【0046】
(7)規制部53は、押しボタン20側に位置する第1面(外面)と、第1面の反対に位置してハンドル本体30(被挿入部33)に当接する第2面(内面)とを有している。押しボタン20を押し下げた際に、規制部53の第1面に押しボタン20が当接する。
【0047】
上記構成によれば、押しボタン20を押し下げた際に押しボタン20から規制部53に伝わる力(押圧力)をハンドル本体30に支持させることができる。これにより、押しボタン20を押し下げた際に規制部53に作用する負荷が軽減されて、押しボタン20が当接することによる規制部53の変形を抑制できる。その結果、押しボタン20の繰り返しの操作に対するハンドルの耐久性が向上する。
【0048】
(8)規制部53の第2面(内面)は、被挿入部33の外周面に一致する形状に形成されており、規制部53は、被挿入部33に対して面接触の状態で当接している。
上記構成によれば、規制部53とハンドル本体30(被挿入部33)とが面接触の状態であることにより、押しボタン20から規制部53に伝わる力を効率的にハンドル本体30に伝えて支持させることができる。これにより、押しボタン20の繰り返しの操作に対するハンドルの耐久性が更に向上する。
【0049】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・押しボタン20の先端面は、押し下げられていない状態において、ハンドル本体30の周壁31の外面よりも凹んだ位置にあってもよい。また、押しボタン20の先端面は、押し下げられていない状態において、ハンドル本体30の周壁31の外面よりも突出した位置にあってもよい。この場合、押しボタン20がストロークエンドまで押し下げられたときの押しボタン20の先端面は、ハンドル本体30の周壁31の外面よりも突出した位置、同外面に沿った位置、及び同外面よりも凹んだ位置のいずれにあってもよい。
【0050】
・規制部53の形状は、特に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、規制部53の第1面(外面)の形状を、押しボタン20における第1面に当接する部分(中央部23aの内面)に面接触する形状としていたが、線接触又は点接触する形状としてもよい。また、規制部53の第2面(内面)の形状を、ハンドル本体30における第2面に当接する部分(被挿入部33の外周面)に線接触又は点接触する形状としてもよい。
【0051】
・ハンドル本体30と押しボタン20との間における規制部53の配置は、押しボタン20を押し下げた際に押しボタン20に当接して、それ以上の押しボタン20の移動を規制することが可能な位置であれば特に限定されるものではない。例えば、押しボタン20の後壁24と、ハンドル本体30の周壁31との間に規制部53を配置してもよい。また、ハンドル本体30に当接しない位置に規制部53を配置してもよい。
【0052】
・押しボタン20の形状は特に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ハンドル本体30の被挿入部33が挿通される環状の本体部21を有する押しボタンを採用していたが、環状の本体部21を有さない形状の押しボタン(例えば、特許文献1に開示される押しボタン)であってもよい。
【0053】
・上記実施形態では、キャップ50に対して規制部53を一体に設けていたが、温調ハンドル13を構成するキャップ50以外の部品に対して規制部53を一体に設けてもよい。また、温調ハンドル13を構成する部品の一部分として規制部53を一体に設けるのではなく、規制部53を一つの部品として設けて、ハンドル本体30や押しボタン20等の温調ハンドル13を構成する部品に対して、規制部53を組み付ける構成としてもよい。
【0054】
・キャップ50に設けた規制部53によって押しボタン20の移動を規制する構成を、切換ハンドル14等の温調ハンドル13以外のハンドルに適用してもよい。切換ハンドル14に設けられる押しボタンとしては、例えば、第1吐出口16と第2吐出口の切り換えを行う押しボタンや、吐止水の切り換えを行う押しボタンが挙げられる。また、押しボタン20を押し下げた状態で回動させる必要のないハンドル、例えば、押しボタン20をクリック操作することによりロック機構がオン・オフされるハンドルに適用してもよい。
【0055】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ)前記ハンドル本体は、前記水栓本体の回動軸が挿入される被挿入部を備え、前記押しボタンは、前記周壁と前記被挿入部との間に配置され、前記規制部は、前記押しボタンと前記被挿入部との間に挿入される突出部分であり、前記規制部の前記第2面は、前記被挿入部に当接する前記ハンドル。
【0056】
(ロ)前記押しボタンを押し下げた状態で回動させて用いられる前記ハンドル。
(ハ)前記押しボタンは、当該ハンドルの所定以上の回動の規制を解除する押しボタンである前記ハンドル。
【符号の説明】
【0057】
10…水栓、12…水栓本体、13…温調ハンドル、18…回動軸、20…押しボタン、21…本体部、26…ボタン部、30…ハンドル本体、31…周壁、31a…孔部、33…被挿入部、50…キャップ、53…規制部。