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7254457医療用X線デバイスのオンライン較正のための方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】医療用X線デバイスのオンライン較正のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20230403BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20230403BHJP
   G01B 11/16 20060101ALI20230403BHJP
   G01B 21/32 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
A61B6/00 390A
A61B6/00 300D
A61B6/00 300X
G01B21/00 A
G01B11/16 G
G01B21/32
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018130747
(22)【出願日】2018-07-10
(65)【公開番号】P2019048034
(43)【公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】1700740
(32)【優先日】2017-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511148123
【氏名又は名称】タレス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・ゴルジュ
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・ベルナール
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08961010(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2013/0211419(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0258929(US,A1)
【文献】特表2014-508619(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0278732(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0236999(US,A1)
【文献】国際公開第2015/093248(WO,A1)
【文献】VAN DER MAAS,Advanced geometric calibration and control for medical X-ray systems,Technische Universiteit Eindhoven,2016年03月03日,p.85-107, 151-155
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの放射線源(3)および検出部(4)を含むデバイスDを較正するためのシステムであって、前記放射線源(3)および前記検出部(4)は、少なくとも1つの移動支持体(2)であって、少なくとも1つの回転軸を介して基部(1)に連結された少なくとも1つの移動支持体(2)に設置されている、システムにおいて、少なくとも以下の要素:
・前記放射線源(3)の付近に位置する少なくとも1つの第1のセンサ(21c)および前記検出部(4)の付近に位置する少なくとも1つの第2のセンサ(22c)であって、計算を通して前記放射線源の位置Psおよび前記検出部の位置Pdを推定するように構成された少なくとも1つの第1のセンサおよび少なくとも1つの第2のセンサ、ならびに前記移動支持体の角度位置を感知するためのセンサと、
・前記移動支持体の機械的変形を計測するために使用される少なくとも1つの追加センサと、
・前記センサの計測を同期してトリガするように構成された同期モジュール(23)と、
・前記センサの前記計測を前処理するためのモジュール(25)であって、前記モジュール(25)が、前記デバイスの動作モデルMと、データ合成アルゴリズム(27)とを受け取る入力(25e)を含み、前記放射線源および前記検出部の正確な位置の値PsおよびPdを推定するために、少なくとも、前記センサの、および前記少なくとも1つの追加センサの、前記計測と、前記モデルMとを考慮に入れる、モジュール(25)と
を含み、
前記データ合成アルゴリズム(27)は、カルマン型アルゴリズムまたは拡張カルマン型アルゴリズムであることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記計測センサは、慣性センサ(21c、22c、23c)であり、
前記追加センサは、オプトエレクトロニクスセンサ、1つもしくは複数のブラッググレーティング、1つもしくは複数の干渉計、1つもしくは複数のレーザーテレメータ、またはRFIDセンサと超音波センサの組み合わせから構成されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記慣性センサは、前記放射線源(3)と前記検出部(4)との間の前記支持体(2)に沿って分布していることを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
少なくとも3つの慣性センサ(21c、22c、23c)を含み、前記慣性センサの2つは、前記移動支持体(2)の各端部(2、2)に位置し、および第3のセンサ(23c)は、前記2つの端部(2、2)間の中間に位置することを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記移動支持体(2)は、アームであることと、前記アームは、前記アームの移動の角度位置Paを計測するように構成されたエンコーダ(20)を含むこととを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記移動支持体(2)は、アームであることと、前記アームは、N個のエンコーダ(20)を含み、前記Nは、1以上であり、前記数Nは、前記システムの自由度の数に等しいこととを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記移動支持体(2)は、Cアームであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
少なくとも1つの移動支持体(2)と関連付けられる少なくとも1つの放射線源(3)および検出部(4)を含むデバイスDのオンライン較正のための方法において、少なくとも以下のステップ:
・前記放射線源の付近の少なくとも1つのセンサと、前記検出部の付近のセンサと、前記移動支持体の角度位置を計測するように構成されたセンサと、前記移動支持体の機械的変形を計測するように構成された少なくとも1つの追加センサとによって行われた計測を同時に記録するステップと、
・前記検出部の位置の値Pdおよび前記放射線源の位置の値Psならびに計測誤差を推定するために、前記計測および前記デバイスDの動作モデルMを、カルマン型アルゴリズムまたは拡張カルマン型アルゴリズムを用いて、データを合成するように構成されたモジュールに伝送するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記追加センサは、オプトエレクトロニクスセンサ、1つもしくは複数のブラッググレーティング、1つもしくは複数の干渉計、1つもしくは複数のレーザーテレメータ、またはRFIDセンサと超音波センサの組み合わせから構成され、計測を行うために用いられることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記放射線源および端部の付近の前記センサによって得られた前記計測は、N個のエンコーダ(20)の計測と合成され、前記Nは、1以上であり、前記数Nは、システムの自由度の数に等しいことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、医療用X線デバイスのオンライン較正のための方法およびシステムに関し、より詳細には、外科手術または画像診断的介入治療に用いられる、モバイル手術用Cアームなどの放射線医学システムに関する。本発明は、特に、Cアームデバイスと呼ばれるもののオンライン較正に用いられる。
【背景技術】
【0002】
モバイル画像診断的介入治療システムを用いて外科的処置または介入的処置を行うことは一般的である。モバイルCアーム(ブロック増幅器または手術用Cアーム)とも呼ばれるこれらのシステムにより、外科医は、介入中にX線画像を収集し、可能な限り非侵襲的にツール(カテーテル、針、プロテーゼなど)の位置をリアルタイムでモニタリングすることができる。これらのシステムの大多数は、毎秒最大30枚までの画像のビデオ画像ストリームで二次元画像を得ることが可能である。これらのシステムは、概して、X線源と、Cアームの両端部に設置された画像検出部であって、画像化が所望される対象物がその間に位置する画像検出部とを含む。検出部によって収集された画像は、対象物を検出部の平面に射影した結果である。
【0003】
したがって、施術者は、これらの二次元の2D画像を用いて、思考において患者のモフォロジーの再構成をリアルタイムで行い、操作部位に対して使用する用具をリアルタイムで位置決めすることができる。自らの動きを正確に制御するために、施術者はまた、思考において空間内の全シーン(患者+外科手術用具)の向きも変える。
【0004】
近年、複雑なシステムが出現している。これらのシステムにより、介入中に外科手術用具の3D画像を収集することが可能になっている。システムは、2D画像のセットを得る目的で患者の周りを回転する。次に、これらの2D画像は、画像再構成アルゴリズムによって処理され、3Dボリューム画像を得ることができる。再構成アルゴリズムには、Cアームの正確な幾何学形状、すなわち、利用する各2D画像について患者または対象物に対する検出部およびX線管の位置を知る必要がある。現行のシステムは、「オフラインで」較正を実行するようになっており、例えば、3D較正チャートを用いて射影マトリクスを判定する。この「オフライン」較正は、例えば、6か月ごとにまたは毎年システムに実施される予防保全段階中に行われる。
【0005】
特許出願欧州特許第3141187号明細書は、対象物の三次元画像を、前記対象物の二次元の射影に基づく再構成により生成することを意図されたX線撮像デバイスを幾何学的に較正するための較正チャートに関する。較正チャートは、放射線吸収性を有するマーカーであって、三次元パターン内に分布しているマーカーが装備された容積支持部を含み、この放射線吸収性により、容積支持部に対するコントラストがもたらされる。マーカーは、実質的に平行なそれぞれの直線に分布しているマーカーのサブセット内に分布していることにより、マーカーのそれぞれのサブセットから非調和比のシーケンスを構築することができるようになっている。非調和比の各シーケンスは、マーカーの各四つ組に対して単一の非調和比を含み、この四つ組において、マーカーは、第1の所定の方向にマーカーが整列配置された直線に沿ったそれぞれのマーカーのランク数に応じた順序に順序付けられており、前記順序は、非調和比のすべてに共通である。
【0006】
従来技術から既知である較正技法の1つは、例えば、空間内の基準点としての役割を果たす人体模型に位置決めされたマーカーを用いる。空間内のマーカーの位置がわかっているため、射影された画像上のマーカーの位置から導き出された連立方程式を変形させることにより、各射影の収集物の幾何学形状を推論することが可能である。
【0007】
従来技術から既知であるシステムは、「オフラインで」判定された幾何学形状が、介入中にリアルタイムで収集される画像に適用可能であるように、回転収集が十分に繰り返し可能であることが前提となる。したがって、2D画像の回転収集中にCアームを安定させるために、システムの仕組みを改良する(機械的遊びの低減、構成部品の強靭化など)必要があった。機械的な改変が必要であるためにコストが高いことから、これらのシステムは広く普及していない。さらに、これらの改変を実施することは、Cアームデバイスの製造業者にとって容易ではない。
【0008】
従来技術から既知である解決策のいくつかは、デバイスに直接組み込まれたセンサに基づく方法を用い、放射線不透過マーカーを含む画像の分析を必要とせずに「オンラインで」較正を実行するようになっている。
【0009】
第1の解決策は、検出部または放射線源に位置決めされた単純な3軸慣性センサを用いるものである。このような方法は、Grzeda Victorらによる‘C-arm rotation encoding with accelerometer’,International Journal of Computer Assisted Radiology and Surgery,2010,5(4),pp:385-391という名称の文献に記載されている。
【0010】
第2の解決策は、例えば、Amiri Shahram,Wilson David R.による‘A low-cost tracked C-arm(TC-arm)upgrade system for versatile quantitative intraoperative imaging’,International Journal of Computer Assisted Radiology and Surgery,9(4),pp:695-711,2014という名称の文献におけるような、2つの6軸慣性座標系および2つのレーザーテレメータを用いるものである。
【0011】
非常に高い精度が要求される用途の場合、例えば、外科手術の分野では、これらの方法は最適ではない。具体的に言えば、実現される精度は、所望される3D再構成の品質に適合していない。
【0012】
Grzeda Victorによる文献では、3軸加速度計を用いて検出部およびX線源を位置決めする考えは、ナビゲーションによって導かれる原理を採用しているが、(ロータリエンコーダに置き換えて加速度計を用いて)その回転軸で回転角度を推定し、事前に較正された再現可能な経路によってシステムの位置をオンラインで推論するという考えを受け入れて放棄された。
【0013】
上述のAmiri Sharhamによる文献の、2つの6軸慣性座標系および2つのレーザーテレメータを含むデバイスでは、得られる精度は、おおよそ次の通りである。
・システムの等角点の位置を特定する精度は、1.5mm+/-1.2mmであり、
・2D-3D較正の精度は、2.3mm+/-1.1mmであり、
・再構成されたシーンでのマーカーの位置を特定する際の精度は、4.4mm+/-1.9mmである。
【0014】
これらの精度値は、正確かつ綿密な用途、特に外科手術用途において、または正確性を要する他の分野、例えば製造終了時の構成部品の計量において、要求される精度値をかなり下回る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】欧州特許第3141187号明細書
【非特許文献】
【0016】
【文献】Grzeda Victor et al,‘C-arm rotation encoding with accelerometer’,International Journal of Computer Assisted Radiology and Surgery,2010,5(4),pp:385-391
【文献】Amiri Shahram,Wilson David R.,‘A low-cost tracked C-arm(TC-arm)upgrade system for versatile quantitative intraoperative imaging’,International Journal of Computer Assisted Radiology and Surgery,9(4),pp:695-711,2014
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の趣旨は、操作中にオンラインでデバイスの幾何学形状を推定するための較正方法およびシステムに関する。較正は、デバイスの取扱い手順を妨げないように、特に煩わしく制限的な事前の(オフライン)較正を必要としないように、デバイスの回転収集中に行われる。本発明は、特に、外科手術の分野で、より広義には、非制限的でありかつ実行時間が速い臨床用途に適用可能である。
【0018】
本明細書では、用語「装置」および「デバイス」は、同一の対象物を表す。
【0019】
システムの「幾何学形状」という表現は、9つの内部パラメータ(X線源/検出部のペアの特徴付け)のすべておよび外部パラメータ(患者//X線源/検出部のセットの幾何学形状の特徴付け)を表す。
【0020】
本発明は、少なくとも1つの放射線源および検出部を含むデバイスDを較正するためのシステムであって、この放射線源および検出部は、少なくとも1つの移動支持体であって、少なくとも1つの回転軸を介して基部に連結された少なくとも1つの移動支持体に設置されている、システムにおいて、少なくとも以下の要素:
・放射線源の付近に位置する少なくとも1つの第1のセンサおよび検出部の付近に位置する少なくとも1つの第2のセンサであって、計算を通して放射線源の位置Psおよび検出部の位置Pdを推定するように構成された少なくとも1の第1のセンサおよび少なくとも1つの第2のセンサ、ならびに移動支持体の角度位置を計測するためのセンサと、
・センサの計測を同期してトリガするように構成された同期モジュールと、
・センサの計測を前処理するためのモジュールであって、モジュールが、デバイスの動作モデルMと、データ合成アルゴリズムとを受け取る入力を含み、放射線源および検出部の正確な位置の値PsおよびPdを推定するために、少なくともセンサの2つの計測モデルMを考慮に入れる、モジュールと
を含むことを特徴とするシステムに関する。
【0021】
計測センサは、例えば、慣性センサである。
【0022】
1つの実施形態によれば、前記慣性センサは、放射線源と検出部との間の支持体に沿って分布している。
【0023】
システムは、少なくとも3つの慣性センサを含み得、この慣性センサの2つは、移動支持体の各端部に位置し、および第3のセンサは、2つの端部間の中間に位置する。
【0024】
移動支持体は、例えば、アームの移動の角度位置Paを計測するように構成されたエンコーダを装備したアームである。
【0025】
移動支持体は、N個のエンコーダを含むアームでもあり得、システムの自由度は、1以上のN個である。移動支持体は、Cアームであり得る。
【0026】
データ合成アルゴリズムは、カルマン型アルゴリズムまたは拡張カルマン型アルゴリズムである。
【0027】
本発明は、少なくとも1つの移動支持体と関連付けられる少なくとも1つの放射線源および検出部を含むデバイスのオンライン較正のための方法において、少なくとも以下のステップ:
・放射線源の付近の少なくとも1つのセンサおよび検出部の付近のセンサと、移動支持体の角度位置を計測するように構成されたセンサとによって行われた計測を同時に記録するステップと、
・検出部の位置の値Pdおよび放射線源の位置の値Psならびに計測誤差を推定するために、これらの計測およびデバイスDの動作モデルMを、データを合成するように構成されたモジュールに伝送するステップと
を含むことを特徴とする方法にも関する。
【0028】
データを合成するために、カルマン型フィルタまたは拡張カルマン型フィルタを用いることが可能である。
【0029】
計測は、例えば、慣性センサにより行われる。
【0030】
1つの変形実施形態によれば、放射線源および端部の付近のセンサによって得られた計測は、N個のエンコーダの計測と合成され、Nは、システムの自由度の数に対応し、かつNは、1以上である。
【0031】
例えば、アームの機械的変形を計測するためのオプトエレクトロニクスセンサ、または移動支持体の変形を判定するための1つもしくは複数のブラッググレーティングもしくは干渉計が用いられる。
【0032】
移動支持体の機械的変形を計測するために、以下のリスト:1つまたは複数の干渉計またはレーザーテレメータ、1つまたは複数のRFID/超音波センサから選択されるデバイスが使用される。
【0033】
本発明の他の特徴および利点は、図面とともに例示的な実施形態の説明を読むことにより、さらに明確に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】Cアーム型の撮像装置の概略図を示す。
図2】データ処理モジュールの図を示す。
図3】本発明による較正において実施されるステップの概要を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の主題を理解し易くするために、以下の例は、外科手術の分野において使用されるCアームデバイスの実例として示されている。本発明の範囲から逸脱することなく、少なくとも1つの放射線源および検出部であって、1つまたは複数の移動支持体に設置された少なくとも1つの放射線源および検出部を含む任意のデバイスであって、計測結果を最適化するために(デバイスの操作中に)オンラインで較正されるデバイスにおいて本発明を実施し得る。
【0036】
図1において、示されているデバイスDは、Cアーム2が設置されている基部1を含む。Cアームは、例えば、X線管で構成された放射線源3を第1の端部2で、かつ2D画像を供給するX線検出部4を第2の端部2で支持する。Cアームは、円弧形状の中空のスライドレール6に位置し、スライドレール内において、Cアームは、「軌道」回転移動R1で摺動する。この回転移動の軸A1は、一部がCアームによって表されている円の中心である。スライドレールは、保持部品8と、第2の軸A2に沿って第2の「角度」回転移動R2を提供するためのアーム7とを介して基部1に取り付けられている。
【0037】
装置をオンラインで較正するために、デバイスは、放射線源3の付近に位置する第1のセンサ、例えば慣性センサ21cと、検出部4の付近に位置する少なくとも1つの第2のセンサ、例えば慣性センサ22cとを含む。2つの慣性センサ21c、22cは、放射線源の位置Psおよび検出部の位置Pdが、当業者に既知の原理を用いてそれから推論可能になる加速度および速度計測を行うように構成されている。
【0038】
加速度および速度計測を行うように構成されたセンサは、当業者に既知の慣性センサ、超音波センサ、光学センサ、エンコーダ、またはそれに基づいて位置の計算または推定が可能である計測機能を提供する任意の他のデバイスであり得る。
【0039】
デバイスは、所与の時間tにおいて、Cアームの軌道移動の角度位置Paを計測するように構成されたエンコーダセンサ20も含み得る。エンコーダを使用することにより、計測が簡単になり、信頼度を高めることが可能になる。本明細書では、いくつかのタイプのセンサについて例として後述する。
【0040】
計測を行うために、デバイスは、駆動およびデータ処理モジュール10(図2)に連結されている。駆動およびデータ処理モジュールは、以下の要素:アームに取り付けられたセンサでの計測を同期してトリガするための同期モジュール23、本発明による方法のステップを実行するプロセッサ24、およびセンサによって行われた計測を前処理するためのモジュール25を含む。
【0041】
同期モジュール23により、画像収集ならびに慣性センサの計測およびアームに取り付けられたエンコーダの計測を同時にタイムスタンプすることが可能になる。(慣性センサおよびアームの)計測結果は、例えば、所与の時間tiにわたり、2D画像収集および3つの計測を含む表またはデータベースの形式をとる。
【0042】
図2によれば、前処理モジュールの出力25sを介して再構成モジュールに伝送されることになる射影マトリクスをそれから推論するために、前処理モジュールは、装置の動的動作モデル26を受け取る入力25eと、少なくとも2つの慣性センサおよびエンコーダの3つの計測28と、装置の動的動作モデル26とを考慮に入れる、例えば、カルマン型または拡張カルマン型のデータ合成アルゴリズム27とを含む。
【0043】
使用するエンコーダの数は、例えば、装置の自由度(回転-平行移動)の数に応じて選択される。エンコーダの役割は、特に、装置の基部に連結された基準点(例えば、ホイールが取り付けられているCアーム装置の座標または基準点)に対する装置の絶対位置を、精度は低いが安定した方法で判定し、したがって内部パラメータおよび外部パラメータの第1の近似値を確認するか、そうでなければ、当業者に既知の技法に従って3D画像を再構成するのに用いられる関連する4x3 3D/2D射影マトリクスを確認することである。
【0044】
Cアームの位置を判定するために、例えば、「軌道」移動R1に対して線形電位差位置決め規則が用いられ、「角度」移動R2ならびに図1の移動T1(「前進/後退」)およびT2(「上/下」)の2つの直線移動に対して、光学エンコーダホイールを有するエンコーダが用いられる。
【0045】
アームをずらすために、アームは、可撓性の歯付ベルトと、アームを支持し、可撓性の歯付ベルトを乗せて運ぶ切欠きホイールを有するスライドレール6とを装備し得る。
【0046】
図3は、本方法によって実施されるステップのシーケンスを列挙するフローチャートを示す。
【0047】
以下の例では、方法は、例えば、エンコーダ20を用いて、Cアームの位置と、放射線源および検出部が配置されたアームの端部のそれぞれに位置する少なくとも2つの慣性センサとを確認する。計測を同時にトリガする命令をエンコーダおよび2つの慣性センサに伝送する同期モジュールにより、同期302して計測301が行われる。慣性センサ(加速度および角速度)の計測は、記録および前処理される。前処理は、例えば、これらの計測をフィルタリングするステップと、バイアス値を抽出するステップと、計測を再びサンプリングするステップとを伴う。プロセッサは、当業者に既知の原理を用いて、デバイスDの動作の動的モデルMも確立する。そうでなければ、動的動作モデルはデータベースに格納され、プロセッサに送られることになる。
【0048】
2つの慣性センサ21c、22cによって行われた2つの計測およびエンコーダによって行われた計測Paは、データ前処理モジュール25に伝送303される。この例では、拡張カルマン型フィルタが用いられる。均等な機能を有するフィルタを用いることも可能である。拡張カルマン型フィルタ305は、入力において装置の動作の動的モデルMを受領304し、かつデータ処理モジュールからの3つの計測Ps、PdおよびPaを受け取る。拡張カルマン型フィルタによって行われる、データを合成するステップにより、特に検出部および放射線源の姿勢(方向および向き)を推定するだけでなく、生じた誤差もここで推定することが可能になる。これらのデータの合成に基づいて、拡張カルマン型フィルタは、X線源の位置および検出部の正確な位置を推定306する。得られる位置の精度は、例えば、間隔[100μm~500μm]内に含まれる。次に、正確な位置に基づいて3D/2D射影マトリクスが計算される。
【0049】
正確性は、特に本発明によるシステムが非因果性であり、推定がリアルタイムで行われないことにより、「後退-前進」フィルタを用いることが可能になるという事実に起因する。
【0050】
デバイスの動的動作モデルMを構築することができる。Cアームの移動が非再現的であるにもかかわらず、2つのコース間の差異は限定されたままである。Cアームの平均経路を確立し、モデルに組み込むことができる。使用するセンサの正確なモデル(慣性モデル)が確立され、拡張カルマン型フィルタの観測モデルに組み込まれる。
【0051】
姿勢情報の冗長性を活用し、相関性のない誤差を平滑化し易くするために異種センサ(慣性センサまたは同一形式のセンサ)を使用することも可能である。
【0052】
得られる位置の正確性を向上させるために、デバイスは、6つまたは9つの自由度を有し、かつ選択された位置に配置されるMEMS型の慣性センサのネットワークを装備され得る。慣性センサは、低コストでありかつ容易に実施できるため、それらの数を多くすることができる。
【0053】
例えば、1つの解決策は、次のように慣性センサを配置することを含む。
・システムの基準点に連結された第1の基準慣性センサ、
・Cアームの回転点上にある(軌道移動するための機械的結合にある)慣性センサ、
・Cアームの中心点上にある慣性センサまたはアーム長全体にわたって分布する慣性センサ、
・Cアームの両端部に取り付けられた検出部およびX線源にある3つまたは4つの慣性センサ。
【0054】
センサ22cは、例えば、少なくとも6つの自由度、すなわち3つの加速度計および3つのジャイロメータの自由度を有する慣性センサである。また、センサ21cは、少なくとも3つの自由度、すなわち3つの加速度計の自由度を有する慣性センサである。
【0055】
図1では、第3の慣性センサ23cは、2つの慣性センサ21cおよび22c間の中間に位置している。
【0056】
1つの変形実施形態によれば、後述するように、カルマン型フィルタは、わかり易くするために図示されていないが、1つまたは複数のブラッググレーティングを用いて得られる、Cアームの変形の計測などの追加の計測を受け取り得る(図3、307)。アームの変形を計測するために、これらのグレーティングをCアームの表面または縁端に沿って位置決めし得る。
【0057】
精度を向上させるための別の解決策は、1つまたは複数のマッハツェンダー干渉計またはマイケルソン干渉計の使用を伴う。これにより、例えば、非伸縮性で非圧縮性であり、Cアームに沿って配置された鞘内に位置する1つまたは複数の可撓性ロッドによって計測することが可能になる。
【0058】
すべてのデータ、すなわち慣性センサ、エンコーダ、ブラッググレーティングおよび干渉計によって得られた計測データを合成することにより、すべてのパラメータがより高い精度で取得可能になる。エンコーダの計測により、特に慣性センサの計測を強化することが可能になる。
【0059】
空間のあらゆる方向の変形を計測するための電子センサの数を減らすために、1つの変形形態は、すべてのセンサのデータを合成することで、Cアームの機械的変形をモデル化するようになっている。具体的には、Cアームのデザインによっては、依然として十分な推定の精度を保持しつつ、少ない数の変形を計測するのみで十分な場合があり得る。
【0060】
1つの変形実施形態によれば、1つまたは複数のレーザーテレメータを組み合わせることにより、精度が向上した計測が可能になる。例えば、Cアームをその理論的経路に対して軌道移動上で回転させるメカニズムに関するCアームの変位の三次元の差異は、1ミクロン程度である。1つの変形形態は、Cアームのプロファイルの一部をリアルタイムで計測するレーザー走査システムを用いるというものである。
【0061】
別の解決策は、光学的計測(干渉計、レーザーテレメータなど)による解決策の代わりに、同じ差異を計測するために、超音波センサと組み合わせたRFIDセンサの組み合わせを用いるというものである。相対「飛行時間型」計測に基づくこれらの解決策は、光学的計測ほど正確ではないが、やはりそれほど高価ではないため、目標とされる最終的なシステムにより好適である。
【0062】
次に、計測に基づく三角測量操作により、Cアームを保持し、その軌道回転を可能にする機械部品の、装置の基準点に連結された基準点に対する変位が計測可能になる。この移動は、「後退/前進」変位および「上/下」変位を組み合わせている。この追加的な計測には、任意の他の正確な追跡システム、例えば光学系、2Dまたは3Dのレーザー走査システムなどを使用し得る。
【0063】
外部パラメータは、定義されてきたように、患者が位置するテーブルではなく、装置のフレームに連結された基準点に関連する。2つの基準点間の変換は、当業者によって容易に行うことができる。
【0064】
本発明により、任意の時点で放射線源および検出部の位置を必ず正確に有するように、リアルタイムで、デバイスをオンラインで較正することが可能になる。本発明は、高品質の患者の3D断層構築物の生成を可能にする3D/2D射影マトリクスをそれから正確に推論するために、Cアームの内部および外部幾何学的パラメータをオンラインで判定する選択肢だけでなく、外科手術中のCアームの正確な位置決めも提供する。
【符号の説明】
【0065】
1 基部
2 Cアーム
第1の端部
第2の端部
3 放射線源
4 X線検出部
6 スライドレール
7 アーム
8 保持部品
10 データ処理モジュール
20 エンコーダセンサ
21c 第1のセンサ
22c 第2のセンサ
23 同期モジュール
23c 第3の慣性センサ
24 プロセッサ
25 前処理モジュール
25e 入力
25s 出力
26 動的動作モデル
27 データ合成アルゴリズム
28 3つの計測
301 計測
302 同期計測
303 測定をデータ前処理モジュールに伝送する
304 入力で、装置の動作の動的モデルMを受領する
305 拡張カルマン型フィルタ
306 X線源および検出部の正確な位置
307 追加の計測
A1 軸
A2 軸
D デバイス
M 動的モデル
Pa 角度位置
Pd 検出部の位置
Ps 放射線源の位置
R1 回転移動
R2 回転移動
T1 移動
T2 移動
t 時間
ti 時間
図1
図2
図3