(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】包装用箱
(51)【国際特許分類】
B65D 5/66 20060101AFI20230403BHJP
【FI】
B65D5/66 301G
(21)【出願番号】P 2018226972
(22)【出願日】2018-12-04
【審査請求日】2021-11-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年8月30日に広島県広島市中区舟入本町3-7で公開
(73)【特許権者】
【識別番号】391019500
【氏名又は名称】朝日印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】島田 拓
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-173717(JP,A)
【文献】特開2000-326955(JP,A)
【文献】特開2015-229520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾力性を有する箱体形成片から成り4つの側面を有した筒体の一端部に、矩形の蓋片と一対のサイドフラップとが延設され、前記蓋片の先端部に差込片が延設され、組み立て状態で、前記サイドフラップを倒した外側に前記蓋片が重ねられ、前記差込片が前記筒体の内側に差し込まれて蓋部が形成される包装用箱において、
前記差込片は、基端部両端から内向きに延びる一対の切り込みと前記一対の切り込みの先端同士を真っすぐ結ぶように設けられた差込用折罫線とで前記蓋片と区切られ、前記差込片の、前記一対の切り込みによって前記蓋片と区切られた部分である一対の係合部は、各側方の端縁間の長さが、前記筒体の互いに対向する側面であって前記蓋片の両側に位置する側面の内面間の間隔よりも長く、且つ
各先端角部が丸く面取りされ、
組み立て状態で、前記差込片は、前記差込用折罫線で折り曲げられて前記筒体の内側に差し込まれ、
挿入と共に前記一対の係合部が撓み、前記差込片の、前記一対の係合部以外の部分である中央部は、前記筒体の一側面の内側に
弾性的に押し付けられて重なり、前記一対の係合部は、前記端縁が前記筒体の他の側面の内側に係止されて、前記一側面と前記他の側面とが連続する角部の内側に斜めに配置され、前記一対の切り込みの中に前記サイドフラップの端部が入って係合し、前記筒体の開口が前記蓋片によって閉鎖されることを特徴とする包装用箱。
【請求項2】
一対の係合部は、各側方の端縁が、前記蓋片の両側端辺を超えて外向きに突出する形状である請求項1記載の包装用箱。
【請求項3】
箱体形成片は、合成樹脂により形成されている請求項1記載の包装用箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、筒体の一端部を開閉する蓋部を有した包装用箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、4つの側面を有した筒体の一端部に矩形の蓋片と一対のサイドフラップとが延設され、蓋片の先端部に差込片が延設され、組み立て状態で、サイドフラップを倒した外側に蓋片が重ねられ、差込片が筒体の内側に差し込まれて蓋部が形成される包装用箱があった。
【0003】
例えば、特許文献1の
図1には、蓋片と差込片との境界両端に一対の切れ目が設けられ、組み立て状態で、切れ目の中にサイドフラップの端部が入って係合し、蓋片が閉鎖状態に保持される構造(以下、第一の構造と称する)が記載されている。第一の構造の差込片は、幅が蓋片の幅よりも短い。また、サイドフラップの端部が切れ目の中に深く入ってしっかり係合するように、切れ目は、蓋片と差込片とを区切る折罫線よりも差込片の先端側に少しずらして設けられている。
【0004】
特許文献1の
図2には、差込片の左右両側に、蓋片の両側端辺を超えて突出する一対の係止突部が設けられ、筒体の2つの角部に一対の係止受部が設けられ、組み立て状態で、係止突部が係止受部に係合し、蓋片が閉鎖状態に保持される構造(以下、第二の構造と称する)が記載されている。第二の構造の係止受部は、例えば、筒体の角部近傍をコの字形に切り欠いて形成した孔により設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された第一の構造は、組み立て状態で、差込片が近接する筒体の一側面と差込片との間に隙間が発生するので、筒体の一端部が完全に閉鎖されず、埃が入りやすい。また、第二の構造は、組み立て状態で、差込片の係合突部や筒体の係合受部が筒体の側方に突出するため、複数個の箱体を重ねたり並べたりして陳列する時に、この突出する部分が邪魔になる。さらに、係合受部による透孔も筒体の側方に表れるので、埃も侵入しやすい。また、箱体単体としての見栄えも良くない。
【0007】
この発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、組み立て状態で差込片がサイドフラップにしっかり係合し、しかも蓋部に隙間が発生しない包装用箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、4つの側面を有した筒体を形成する弾力性を有する箱体形成片から成り、前記筒体の一端部に矩形の蓋片と一対のサイドフラップとが延設され、前記蓋片の先端部に差込片が延設され、組み立て状態で、前記サイドフラップを倒した外側に前記蓋片が重ねられ、前記差込片が前記筒体の内側に差し込まれて蓋部が形成される包装用箱である。前記差込片は、基端部両端から内向きに延びる一対の切り込みと前記一対の切り込みの先端同士を真っすぐ結ぶように設けられた差込用折罫線とで前記蓋片と区切られ、前記差込片の、前記一対の切り込みによって前記蓋片と区切られた部分である一対の係合部は、各側方の端縁間の長さが、前記筒体の互いに対向する側面であって前記蓋片の両側に位置する側面の内面間の間隔よりも長く、各先端角部が丸く面取りされた形状である。
【0009】
この包装用箱は、組み立て状態で、前記差込片は、前記差込用折罫線で折り曲げられて前記筒体の内側に差し込まれ、挿入と共に前記一対の係合部が撓み、前記差込片の、前記一対の係合部以外の部分である中央部は、前記筒体の一側面の内側に弾性的に押し付けられて重なり、前記一対の係合部は、前記端縁が前記筒体の他の側面の内側に係止されて、前記一側面と前記他の側面とが連続する角部の内側に斜めに配置され、前記一対の切り込みの中に前記サイドフラップの端部が入って係合し、前記筒体の開口が前記蓋片によって閉鎖される。
【0010】
また、一対の係合部は、各側方の端縁が、前記蓋片の両側端辺を超えて外向きに突出する形状である。さらに、前記差込片の前記一対の係合部は、各先端角部が丸く面取りされている。箱体形成片は、組み立て状態で前記差込片の係合部が折れない程度の弾性を有した合成樹脂等の基材により形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の包装用箱は、構造が簡単で容易に組み立てることができる。また、組み立て状態で、差込片がサイドフラップにしっかり係合して安定な蓋部が形成され、しかも、蓋部に隙間が発生しないので埃が入りにくい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明の包装用箱の一実施形態を構成する箱体形成片を表面側から見た展開図(a)、蓋片の一部及び差込片を拡大した図(b)である。
【
図2】この実施形態の包装用箱の組み立て途中の状態を示す斜視図(a)。組み立て状態を示す斜視図(b)である。
【
図3】この実施形態の包装用箱の組み立て状態を示す平面図(a)、蓋片を透視した平面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の包装用箱の一実施形態について図面に基づいて説明する。この実施形態の包装用箱10は、
図2(b)に示す略直方体の箱体であり、厚紙や合成樹脂シート等の基材による一枚の箱体形成片12を組み立てることによって形成される。
【0014】
図1(a)は、箱体形成片12を表面側から見た展開図であり、箱体形成片12は、互いに平行に連接された長方形の側面板14,16,18,20を有している。連接方向と直交する幅方向の長さは、側面板14,16,20は同じであるが、側面板18は他の側面板14,16,20よりも少し長く、上側に突出している(突出部18a)。連接方向の長さは、側面板14,18が長くて互いにほぼ等しく、側面板16,20が短くて互いにほぼ等しい。
【0015】
側面板14の、側面板16と反対側の縁部には、組み立て状態で側面板20の表面に糊付けされる糊付片22が延設されている。そして、糊付片22と側面板14,16,18,20は、各々折罫線24,26,28,30で区切られている。
【0016】
なお、側面板18の突出部18aは、情報表示のスペースを広くしたり、フックに吊り下げるための引っ掛け部を設けたりするための部分であり、突出部18aが必要なければ、側面板18を側面板14と同じ形状にすることができる。
【0017】
側面板14の、連接方向に対して直角な方向の一端部(突出部18aが設けられている側の端部)には、矩形の蓋片32が折罫線34で区切られて延設されている。蓋片32の延出長さは、側面板14,20の連接方向の長さとほぼ同じである。さらに、蓋片32の先端部には、差込片36が延設されている。
【0018】
差込片36は、
図1(b)に示すように、基端部両端から内向きに延びる一対の切り込み38,39と、一対の切り込み38,39の先端同士を真っすぐ結ぶように設けられた差込用折罫線40とで、蓋片32と区切られている。差込片36の、一対の切り込み38,39によって蓋片32と区切られた部分である一対の係合部42,44は、各先端角部が丸く面取りされ、各側方の端縁42a,44aが蓋片32の両側端辺を超えて外向きに突出している。中央部46は、差込片36の、一対の係合部42,44以外の部分である。
【0019】
側面板14の、折罫線34と反対側の端部には、変形した台形状の第一底片48が折罫線50で区切られて延設されている。第一底片48の延出長さ(折罫線50から折罫線50に対して平行な端部48aまでの長さ)は、包装用箱10の組み立て状態で端部48aが底部の中心線を超える長さに設定されている。また、第一底片48の側面板16に近い傾斜した辺の途中には、略三角形の糊付片52が折罫線54で区切られて延設されている。折罫線50から、糊付片52の、端部48a側の基端部までの長さは、包装用箱10の組み立て状態で底部の中心線付近に位置する長さに設定されている。第一底片48の、糊付片52の端部48a側に隣接する部分には、底部の組み立てを維持するために後述する第二底片66の切り欠き74に係止される小さい切り欠き部56が設けられている。
【0020】
側面板16の、折罫線34と隣接する端部には、台形状のサイドフラップ58が折罫線60で区切られて延設されている。サイドフラップ58は、突出部18aに近い側端部が少し膨出しており、この部分が、組み立て状態で切り込み39の中に入る端部58aとなる。側面板16の、折罫線60と反対側の端部には、略三角形状のフラップ62が折罫線64で区切られて延設されている。
【0021】
側面板18の、突出部18aと反対側の端部には、変形した台形状の第二底片66が折罫線68で区切られて延設されている。第二底片66の延出長さ(折罫線68から折罫線68に対して平行な端部66aまでの長さ)は、包装用箱10の組み立て状態で端部66aが底部の中心線を超える長さに設定されている。第二底片66の側面板20に近い傾斜した辺の途中には、略三角形の糊付片70が折罫線72で区切られて延設されている。折罫線68から、糊付片70の、端部66a側の基端部までの長さは、包装用箱10の組み立て状態で底部の中心線付近に位置する長さに設定されている。第二底片66の、糊付片70の端部66a側に隣接する部分には、底部の組み立てを維持するため第一底片48の切り欠き部56に係止される切り欠き部74が設けられている。
【0022】
側面板20の、突出部18aと隣接する端部には、台形状のサイドフラップ76が折罫線78で区切られて延設されている。サイドフラップ76は、突出部18aに近い側端部が少し膨出しており、この部分が、組み立て状態で切り込み38の中に入る端部76aとなる。側面板20の、折罫線78と反対側の端部には、略三角形状のフラップ80が折罫線82で区切られて延設されている。
【0023】
次に、この実施形態の包装用箱10の組み立て方法の一例を説明する。なお、
図2は箱体形成片12の表面側を見たものであり、以下、箱体形成片12の表面側が凸になる折り方を正折り、裏面側が凸になる折り方を逆折りと称する。
【0024】
まず、折罫線50,64,68,82を正折りし、さらに糊付片52の折罫線54と、糊付片70の折罫線72をそれぞれ逆折りする。そして、糊付片52の裏面に糊を塗布し、折罫線26を正折りする。これにより、糊付片52の裏面がフラップ62の表面に糊付けされる。次に、糊付片22の裏面に糊を塗布し、糊付片70の裏面に糊を塗布した後、折罫線30を正折りするとともに、糊付片22を側面板20の表面側に貼り合わせる。これにより糊付片70の裏面がフラップ80の表面に糊付けされ、糊付片22の裏面が側面板20の表面に糊付けされる。箱体形成片12は、この折り畳み状態で出荷される。
【0025】
次に、商品等を包装する工場等において、折罫線24,26,28,30を各々90度に正折りし、側面板14,16,18,20及び糊付片22で成る四角形の筒体84を形成する操作を行う。すると、第一底片48は側面板14からフラップ62とともに引き起こされて折罫線50で直角に正折りされ、同時に第二底片66は側面板18からフラップ80とともに引き起こされて折罫線68で直角に正折りされる。そして、第一底片48の切り欠き部56と第二底片66の切り欠き部74が互いに係止され、逆戻りが防止された底部86が自動的に形成され、
図2(a)に示す状態となる。
【0026】
蓋片32側の開口部から商品等を中に入れた後は、折罫線60でサイドフラップ58を90度に正折りし、折罫線78でサイドフラップ76を90度に正折りする。そして、折罫線34で蓋片32を90度に正折りし、差込片36を差込用折罫線40で90度に正折りし、差込片36を筒体84の内側(側面板18の内側)に差し込むと、蓋部88が形成される。これで
図2(b)に示す組み立て状態となり、包装が完了する。
【0027】
図3(b)は、組み立て状態における差込片36の様子を示している。差込片36の中央部46は、側面板18(筒体84の一側面)の内側に重なっており、中央部46と側面板18との間には隙間が発生しない。差込片36の係合部42は、端縁42aが側面板20(筒体84の他の側面)の内側に係止されて、側面板18と側面板20とが連続する角部の内側に斜めに配置される。そして、切り込み38の中にサイドフラップ76の端部76aが深く入り、係合部42がサイドフラップ76にしっかり係合する。
【0028】
同様に、差込片36の係合部44は、端縁44aが側面板16(筒体84の他の側面)の内側に係止されて、側面板18と側面板16とが連続する角部の内側に斜めに配置される。そして、切り込み39の中にサイドフラップ58の端部58aが深く入り、係合部44がサイドフラップ58にしっかり係合する。
【0029】
一対の係合部42,44は、筒体84の互いに対向する側面16,20の内面間の間隔よりも各側方の端縁42a,44a間の長さが長いので、組み立て状態で、差込片36は、サイドフラップ58,76の内側に湾曲して確実にサイドフラップ58,76に係止される。このとき、係合部42,44と中央部46との境界部には、屈曲させようとする力が作用するので、係合部42,44が境界部で折れてしまわないように、箱体形成片12の基材は、弾力性を有したものを選択することが好ましい。
【0030】
以上説明したように、包装用箱10は、構造が簡単で容易に組み立てることができる。また、組み立て状態で、差込片36がサイドフラップ58,76にしっかり係合して安定な蓋部88が形成され、しかも、筒体84の開口が蓋片32によって隙間なく閉鎖されるので埃が入りにくい。差込片36の一対の係合部42,44は、各先端角部が丸く面取りされているので、端縁42a,44aが蓋片32の両側端辺を超えて外向きに突出していても、容易に側面16,20間に挿入される。そして、挿入とともに一対の係合部42,44が容易に撓んで、サイドフラップ58,76に確実に係止される。
【0031】
なお、本発明の包装用箱は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、各部材の形状や大きさは内容物に合わせて適宜変更可能であり、また底部の構造も適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0032】
10 包装用箱
12 箱体形成片
14,16,18,20 側面板
32 蓋片
36 差込片
38,39 切り込み
40 差込用折罫線
42,44 係合部
42a,44a 端縁
46 中央部
58,76 サイドフラップ
58a,76a端部
84 筒体
88 蓋部