(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】状態監視装置及び流体圧駆動装置
(51)【国際特許分類】
G01M 13/003 20190101AFI20230403BHJP
F16K 37/00 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
G01M13/003
F16K37/00 G
(21)【出願番号】P 2018246007
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】久保山 豊
(72)【発明者】
【氏名】川谷 聖
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 貴章
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-124183(JP,A)
【文献】特開昭61-233204(JP,A)
【文献】特開2017-018970(JP,A)
【文献】特開2016-215254(JP,A)
【文献】特開平03-079806(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130404(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00- 13/045
G01M 99/00
F16K 37/00
F15B 9/00- 9/17
F15B 13/02- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1可動部の位置に応じて作動流体の吐出量を制御する流量制御弁と、
前記流量制御弁から吐出された作動流体に応じて位置を移動させる第2可動部を有するアクチュエータと、
前記第1可動部を中立位置に移動させる指令を出力する出力部と、
前記指令が出力された場合に、前記第2可動部の位置を検出する位置検出部と、
前記指令に従って前記第1可動部が前記中立位置に移動した状態で、前記位置検出部で検出した前記第2可動部の位置から算出した前記第2可動部の
変位速度と前記第2可動部を所定位置で静止させる指令を受けてから移動し始めるまでの時間との少なくとも一方に基づいて前記第1可動部の状態を推定する状態推定部と
を備えた流体圧駆動装置。
【請求項2】
前記第1可動部の状態推定を行うテストモードを選択可能なモード選択部を備え、
前記
出力部は、前記テストモードが選択され
た場合に、前記指令を出力する、請求項
1に記載の流体圧駆動装置。
【請求項3】
前記
第2可動部の変位速度と前記第2可動部を所定位置で静止させる指令を受けてから移動し始めるまでの時間との少なくとも一方が所定の閾値を超えた場合に所定の警告を行う警告部を備える
請求項
1又は2に記載の流体圧駆動装置。
【請求項4】
前記状態推定部で所定期間にわたって推定した前記第1可動部の状態に基づいて前記第1可動部の寿命を予測する寿命予測部を備える
請求項
1乃至3のいずれか一項に記載の流体圧駆動装置。
【請求項5】
前記アクチュエータは、鉛直方向に配置されており、
前記第2可動部は、前記第2可動部を所定位置で静止させる指令を受け、かつ、前記流量制御弁から前記アクチュエータへの作動流体の供給を停止した状態で自重により下降する
請求項
1乃至4のいずれか一項に記載の流体圧駆動装置。
【請求項6】
前記第1可動部の状態推定を行うときに前記状態推定部は前記流量制御弁から前記アクチュエータに対して前記作動流体の供給を停止する位置に第1可動部を移動させた後に、前記第2可動部の
変位速度と前記第2可動部を所定位置で静止させる指令を受けてから移動し始めるまでの時間との少なくとも一方を検出する
請求項
1乃至5のいずれか一項に記載の流体圧駆動装置。
【請求項7】
前記アクチュエータは、前記第2可動部の位置に応じて前記アクチュエータから供給される作動流体により駆動される他のアクチュエータへの作動流体の供給量を制御する弁である、請求項
1乃至6のいずれか一項に記載の流体圧駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、状態監視装置及び流体圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作動油の吐出量を制御する流量制御弁の故障の一つに、流量制御弁のスプール(弁体とも呼ばれる)の摩耗による作動油漏れがある。本来、スプールは、中立位置のときは、確実に作動油をシールし、スプールが中立位置から移動すると、作動油を吐出しなければならない。
【0003】
ところが、流量制御弁内の作動油中に異物が混入している場合は、異物によってスプールの表面が削れてしまい、スプールが中立位置に移動しても、スプールの摩耗によって生じた隙間から作動油が漏れ出すおそれがある。
【0004】
スプールが中立位置に移動しても、作動油が漏れ出す場合、流量制御弁によって駆動される駆動部や、駆動部によって制御されるアクチュエータを誤動作させる要因になる。また、作動油の漏出量が過大になると、作動油の供給が不足し、十分な作動油圧が得られなくなって、駆動部やアクチュエータの効率が低下してしまう。
【0005】
流量制御弁を分解せずに、スプールの摩耗の度合いを調べることができれば、保守費用の削減が図れるため、望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、簡易かつ正確にスプール等の可動部の摩耗の度合いを調べることができる状態監視装置及び流体圧駆動装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様では、第1可動部の位置に応じて作動流体の吐出量を制御する流量制御弁における前記第1可動部の位置を取得する第1情報取得部と、
前記流量制御弁から吐出された作動流体に応じて位置を移動させる第2可動部を有するアクチュエータにおける前記第2可動部の位置を取得する第2情報取得部と、
前記第1情報取得部で取得した前記第1可動部の位置が前記アクチュエータに対して作動流体の供給を停止する中立位置であるか否かを判断する状態判断部と、
前記状態判断部により前記中立位置と判断されたときに前記第2可動部の単位時間あたりの変位に基づいて前記第1可動部の状態を推定する状態推定部と
を備えた状態監視装置が提供される。
【0009】
前記第1可動部が前記アクチュエータへの作動流体の供給を停止する前記中立位置に位置することを検出する検出部を備え、
前記状態判断部は、前記検出部にて前記中立位置に位置することが検出されたときに、前記第1可動部の位置が前記中立位置であると判断してもよい。
【0010】
前記第1可動部を前記中立位置に移動させる指令を検出する検出部を備え、
前記状態判断部は、前記検出部にて前記指令が検出されたときに、前記第1可動部の位置が前記中立位置であると判断してもよい。
【0011】
本発明の他の一態様では、第1可動部の位置に応じて作動流体の吐出量を制御する流量制御弁と、
前記流量制御弁から吐出された作動流体に応じて位置を移動させる第2可動部を有するアクチュエータと、
前記第2可動部の位置を検出する位置検出部と、
前記流量制御弁から前記アクチュエータに対して前記作動流体の供給を停止した状態において前記位置検出部で検出した前記第2可動部の位置から算出した前記第2可動部の単位時間あたりの変位に基づいて前記第1可動部の状態を推定する状態推定部と
を備えた流体圧駆動装置が提供される。
【0012】
前記変位は、前記第2可動部の変位速度と前記第2可動部を所定位置で静止させる指令を受けてから移動し始めるまでの時間との少なくとも一方であってもよい。
【0013】
前記変位が所定の閾値を超えた場合に所定の警告を行う警告部を備えてもよい。
【0014】
前記状態推定部で所定期間にわたって推定した前記第1可動部の状態に基づいて前記第1可動部の寿命を予測する寿命予測部を備えてもよい。
【0015】
前記アクチュエータは、鉛直方向に配置されており、
前記第2可動部は、前記第2可動部を所定位置で静止させる指令を受け、かつ、前記流量制御弁から前記アクチュエータへの作動流体の供給を停止した状態で自重により下降してもよい。
【0016】
前記第1可動部の状態推定を行うときに前記状態推定部は前記流量制御弁から前記アクチュエータに対して前記作動流体の供給を停止する位置に第1可動部を移動させた後に、前記第2可動部の前記変位を検出してもよい。
【0017】
前記アクチュエータは、前記第2可動部の位置に応じて前記アクチュエータから供給される作動流体により駆動される他のアクチュエータへの作動流体の供給量を制御する弁であってもよい。
【0018】
前記第1可動部の状態推定を行うテストモードを選択可能なモード選択部を備え、
前記状態推定部は、前記モード選択部にて前記テストモードが選択されると、前記第2可動部を中立位置に移動させた後に、前記第1可動部を中立位置に移動させるとともに、前記第2可動部の位置情報を前記流量制御弁に帰還させる制御を停止させた状態で、前記第1可動部の状態を推定してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡易かつ正確にスプール等の可動部の摩耗の度合いを調べることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1の実施形態による状態監視装置を備えた流体圧駆動装置の概略構成を示すブロック図。
【
図2】第2の実施形態による流体圧駆動装置の概略構成を示すブロック図。
【
図3】(a)と(b)は作動油の漏れ出す経路がそれぞれ異なる例を示す図。
【
図4】第3の実施形態による流体圧駆動装置の概略構成を示す図。
【
図5】第4の実施形態による流体圧駆動装置の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態による状態監視装置15を備えた流体圧駆動装置1の概略構成を示すブロック図である。
図1の流体圧駆動装置1は、流量制御弁2と、アクチュエータ3と、状態監視装置15とを備えている。
【0023】
流量制御弁2は、1つ以上のスプール2a(第1可動部)を有する弁棒2bを備えている。流量制御弁2は、コントローラ6の指令により、弁棒2bを移動させてスプール2aを所望の位置に移動させる。弁棒2bは、例えば不図示の電磁コイルに流れる電流により、図示の左右に移動制御される。なお、弁棒2bは、必ずしも電磁コイル等の電気制御で移動させる必要はなく、他の制御手法(例えば、油圧制御)により移動させてもよい。スプール2aの移動位置の一つは中立位置である。スプール2aが中立位置に移動した場合には、流量制御弁2に流入する作動油と、流量制御弁2から流出される作動油のいずれも遮断される。よって、コントローラ6は、流量制御弁2とアクチュエータ3との間での作動油の流れをシールしたい場合に、スプール2aを中立位置に移動させる指令を出す。
【0024】
コントローラ6は、流量制御弁2の弁棒2bの位置を検出する位置検出部7の検出信号に基づいてスプール2aの位置を検出し、検出されたスプール2aの位置が、予め定めた目標位置に一致するように帰還制御を行ってもよい。目標位置とは、コントローラ6の指令位置である。
【0025】
図1の流量制御弁2には、作動油が流入出する複数のポートが設けられており、スプール2aの位置に応じて、各ポートからの作動油の流入出が制御される。例えば、流量制御弁2は、アクチュエータ3からの作動油が流れ込むポートP1と、流量制御弁2からアクチュエータ3に作動油を供給するポートP2と、流量制御弁2からタンクに作動油を排出するポートP3とを有する。なお、流量制御弁2に設けられるポートの種類と数は任意である。
【0026】
アクチュエータ3は、例えば中空のスリーブ3a内を移動可能な可動部(第2可動部)3bを有する。アクチュエータ3は、流量制御弁2からの作動油の吐出量に応じて可動部3bの位置を可変させる。
図1では、アクチュエータ3内の可動部3bの動きにより、燃料噴射弁8と排気弁9を制御する例を示しているが、これは一例であり、アクチュエータ3が駆動する対象物は任意である。
【0027】
アクチュエータ3は、可動部3bの位置を検出する位置検出部10を備えていてもよい。位置検出部10は、例えば可動部3bの一端部側に配置されており、可動部3bとの距離を非接触で検出する。
状態監視装置15は、第1情報取得部16と、第2情報取得部17と、状態判断部18と、状態推定部5とを備えている。また、状態監視装置15は、指令検出部19を備えていてもよい。第1情報取得部16と、第2情報取得部17と、状態判断部18と、状態推定部5とは、コントローラ6に内蔵されていてもよい。
第1情報取得部16は、スプール(第1可動部)2aの位置に応じて作動流体の吐出量を制御する流量制御弁2におけるスプール2aの位置を取得する。
第2情報取得部17は、流量制御弁2から吐出された作動流体に応じて位置を移動させる可動部(第2可動部)3bを有するアクチュエータ3における可動部3bの位置を取得する。
状態判断部18は、第1情報取得部16で取得したスプール2aの位置がアクチュエータ3に対して作動流体の供給を停止する中立位置であるか否かを判断する。
状態推定部5は、状態判断部18により中立位置と判断されたときに可動部3bの単位時間あたりの変位に基づいてスプール2aの状態を推定する。
位置検出部7は、スプール2aがアクチュエータ3への作動流体の供給を停止する中立位置に位置することを検出することができる。よって、状態判断部18は、位置検出部7にて中立位置に位置することが検出されたときに、スプール2aの位置が中立位置であると判断してもよい。
指令検出部19は、スプール2aを中立位置に移動させる指令を検出することができる。よって、状態判断部18は、指令検出部19にて指令が検出されたときに、スプール2aの位置が中立位置であると判断してもよい。
このように、
図1の状態監視装置15は、スプール2aが中立位置に位置すると判断されるときのアクチュエータ3の可動部3bの変位に基づいて、スプール2aの状態を推定するため、流量制御弁2を分解してスプール2aを取り出さなくても、スプール2aの摩耗度合いを精度よく判断できる。
【0028】
(第2の実施形態)
図2は第2の実施形態による流体圧駆動装置1の概略構成を示すブロック図である。
図2の流体圧駆動装置1は、流量制御弁2と、アクチュエータ3と、変位検出部4と、状態推定部5とを備えている。状態推定部5は、例えばコントローラ6の一部を構成している。
【0029】
図2の流量制御弁2とアクチュエータ3は、
図1の流量制御弁2とアクチュエータ3と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0030】
変位検出部4は、アクチェータ3内の可動部3bの変位を検出する。ここで、変位とは、可動部3bの変位速度と、可動部3bが移動指令を受けてから移動し始めるまでの時間との少なくとも一方である。例えば、可動部3bの位置を検出する位置検出部10が設けられている場合には、変位検出部4は、位置検出部10で検出された可動部3bの位置を微分処理することで、可動部3bの変位速度を検出できる。あるいは、変位検出部4は、可動部3bの変位速度を直接的に検出する速度センサを含んでいてもよい。
【0031】
状態推定部5は、流量制御弁2からアクチュエータ3に対して作動流体の供給を停止した状態において位置検出部10で検出した可動部(第2可動部)3bの位置から算出した可動部3bの単位時間あたりの変位に基づいてスプール(第1可動部)2aの状態を推定する。変位は、可動部3bの変位速度と可動部3bを所定位置で静止させる指令を受けてから移動し始めるまでの時間との少なくとも一方である。より具体的には、状態推定部5は、変位検出部4で検出された変位に基づいて、流量制御弁2のスプール2aの状態を推定する。スプール2aが中立位置にいるときは、流量制御弁2は作動油をシールするため、本来的には流量制御弁2とアクチュエータ3との間で作動油の流入出は生じないはずである。しかしながら、スプール2aが摩耗すると、
図3(a)又は
図3(b)の矢印に示すように、スプール2aが中立位置にいても、スプール2aの隙間から作動油が漏れ出してしまう。
図3(a)及び
図3(b)に示すように、スプール2aの摩耗する場所によって、作動油が漏れ出す方向も変化することが考えられる。作動油が漏れ出す方向によって、アクチュエータ3の可動部3bを上に上げようとする力が働いたり、下に下げようとする力が働いたりする。状態推定部5は、流量制御弁2からアクチュエータ3に対して作動流体の供給を停止する位置にスプール2aを移動させた後に、可動部3bの変位を検出してもよい。
【0032】
アクチュエータ3が、例えば
図2に示すように、可動部3bを鉛直方向に移動させる向きに配置されている場合、流量制御弁2のスプール2aが中立位置にいる場合には、本来的には可動部3bは自重により下方に一定速度で落下する。一方、スプール2aが摩耗している場合、スプール2aが中立位置にいても、スプール2aの隙間からアクチュエータ3側に作動油が漏れ出すため、可動部3bの落下速度が変化する。例えば、
図3(a)の向きに作動油が漏れ出した場合、可動部3bの落下速度はより速くなる。一方、
図3(b)の向きに作動油が漏れ出した場合、可動部3bの落下速度はより遅くなる。
【0033】
このように、流量制御弁2のスプール2aを中立位置に移動させる指令を受けた場合に、アクチュエータ3の可動部3bの変位を検出することにより、スプール2aが摩耗しているか否かを判断することができる。そこで、状態推定部5は、例えば、可動部3bの変位速度が、予め想定した変位速度と異なる場合には、スプール2aが摩耗したと推定する。また、スプール2aの摩耗の度合いが大きいほど、可動部3bの変位速度がより大きく変化するため、可動部3bの変位速度によって、スプール2aの摩耗の度合いも推定できる。
【0034】
図2の流体圧駆動装置1は、破線で示す警告部11を備えていてもよい。警告部11は、状態推定部5が、スプール2aの変位が所定の閾値を超えたと判断した場合に、所定の警告処理を行う。警告処理の具体的な内容は任意であるが、例えば、流量制御弁2の管理を行う不図示の管理サーバ等に、無線又は有線のネットワークを介して、警告信号を送信して、管理サーバ等の表示装置に警告内容を表示してもよい。あるいは、流量制御弁2に接続された表示装置やスピーカにて、警告内容を表示又は音声出力してもよい。警告内容の一例は、スプール2aの点検を促すものであってもよい。
【0035】
このように、第2の実施形態では、流量制御弁2のスプール2aを中立位置に移動させる指令を受けた場合に、アクチュエータ3の可動部3bの変位を検出し、検出された変位をスプール2aに摩耗がない場合の変位と比較することで、スプール2aが摩耗したか否か、すなわち、スプール2aが中立位置のときに作動油の漏れが生じているか否かを判断できる。また、可動部3bの変位の大きさにより、スプール2aの摩耗の度合い、すなわち作動油の漏れ量も推定できる。
【0036】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、状態推定部5で推定した状態に基づいて、流量制御弁2のスプール2aの寿命を予測するものである。
【0037】
図4は第3の実施形態による流体圧駆動装置1の概略構成を示す図である。
図4の流体圧駆動装置1は、
図2の構成に加えて、寿命予測部12を備えている。
【0038】
寿命予測部12は、状態推定部5で所定期間にわたって推定した流量制御弁2のスプール2aの状態に基づいて、スプール2aの寿命を予測する。一般には、スプール2aは使用している間に徐々に摩耗していくため、スプール2aが中立位置のときに漏れ出す作動油の量も徐々に増えることが予想される。ただし、作動油中に含まれる異物がスプール2aに噛み込んだりすると、急激に作動油の漏出量が増えることがありうる。作動油の漏出量が増えるほど、アクチュエータ3の可動部3bの変位も大きくなる。
【0039】
スプール2aの変位が、それぞれどのくらいの値になったら、スプール2aの寿命と判断するかは、流量制御弁2の種類や用途等によって異なる。そこで、寿命予測部12は、スプール2aの寿命と判断する閾値を設けてもよい。例えば、寿命予測部12は、スプール2aの変位速度が閾値を超えた場合に、スプール2aの寿命と判断してもよい。
【0040】
また、寿命予測部12は、作動油の漏出量が急激に増える兆候が見られた時点で、スプール2aの寿命であると判断してもよい。より具体的には、時間の経過とともに、スプール2aの変位速度がほぼ線形的に増大する傾向であったのに、ある時点を境に、変位速度の増大する傾きがより大きくなった場合は、その時点でスプール2aの寿命と判断してもよい。
【0041】
このように、寿命予測部12がスプール2aの寿命と判断する基準は、種々考えられるが、いったん寿命と判断した場合には、何らかの手段でスプール2aの交換時期であることを報知するのが望ましい。報知の仕方は、
図2の警告部11による警告処理と同様に、種々の手法が考えられる。
【0042】
また、寿命予測部12は、スプール2aが寿命に到達する前に、寿命が近づいたことを報知してもよく、その際にいつ頃寿命になるかの情報も合わせて提供してもよい。
【0043】
このように、第3の実施形態では、状態推定部5で推定した状態に基づいて、スプール2aの寿命を予測する寿命予測部12を設けるため、流量制御弁2の使用中に、作動油が大量に漏れ出すような不具合を未然に防止できる。また、流量制御弁2を分解してスプール2a自体を検査しなくても、スプール2aの交換時期を把握できるため、流量制御弁2の保守管理費用を削減できる。
【0044】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、流量制御弁2に複数の動作モードがあり、そのうちの一つがスプール2aの状態推定を行う状態推定モードであって、この状態推定モードが選択された場合に、スプール2aの状態推定を行うものである。
【0045】
図5は第4の実施形態による流体圧駆動装置1の概略構成を示す図である。
図5の流体圧駆動装置1は、
図4の構成に加えて、コントローラ6内にモード選択部13を設けている。なお、第4の実施形態による流体圧駆動装置1は、
図2の構成にモード選択部13を付加してもよい。
【0046】
コントローラ6内のモード選択部13は、複数の動作モードのうち、任意の一つを選択することができる。複数の動作モードのうち一つは、スプール2aの状態推定を行う状態推定モードである。状態推定モード以外に、どのような動作モードを設けるかは、アクチュエータ3の構成及び動作に依存する。本実施形態では、コントローラ6が状態推定モードを選択した場合の流体圧駆動装置1の動作を説明する。
【0047】
コントローラ6が状態推定モードを選択すると、コントローラ6は流量制御弁2のスプール2aを中立位置に移動させる指令を出す。この指令に従って、スプール2aが中立位置に移動した状態で、変位検出部4は、アクチュエータ3の可動部3bの変位を検出し、検出された変位に基づいて、状態推定部5は、スプール2aの状態を推定する。状態推定部5は、モード選択部13にてテストモードが選択されると、可動部3bを中立位置に移動させた後に、スプール2aを中立位置に移動させるとともに、可動部3bの位置情報を流量制御弁2に帰還させる制御を停止させた状態で、スプール2aの状態を推定してもよい。
【0048】
流量制御弁2の動作モードの選択は、例えば不図示のボタン操作やタッチ操作で行うことができる。よって、作業者は、状態推定モードを簡易な操作で選択することができる。作業者が状態推定モードを選択すれば、自動的にスプール2aが中立位置に移動して、アクチュエータ3の可動部3bの変位を検出して、スプール2aの状態を推定することができる。
【0049】
このように、第4の実施形態では、スプール2aの状態を推定する動作モードを設けるため、作業者はこの動作モードを選択しさえすれば、自動的にスプール2aが中立位置に移動して、アクチュエータ3の可動部3bの変位が検出されて、検出された変位に基づいてスプール2aの状態を推定することができる。これにより、作業員の手間を省くことができ、必要に応じて任意のタイミングでスプール2aの摩耗状態を調べることができる。よって、スプール2aの寿命が来る前に、スプール2aの摩耗異常を検出できる。
【0050】
上述した各実施形態では、流量制御弁2とアクチュエータ3を備えた流体圧駆動装置1について説明したが、アクチェエータ3の構成及び動作は任意であることから、流量制御弁2から吐出される作動油を利用して種々の動作を行う流体圧駆動装置1に幅広く適用可能である。流量制御弁2は、スプール2aを有し、スプール2aの位置に応じて作動油の吐出量を制御するものであればよい。流量制御弁2の具体例は、上述したスプール弁の他に、ポペット弁、ボール弁、ニードル弁などにも適用可能である。アクチュエータ3は、流量制御弁2からの作動油の吐出量に応じて位置を可変可能な可動部3bを有し、可動部3bの位置に応じてアクチュエータ軸を直接駆動するもののほか、可動部3bは位置に応じて、別置きのアクチュエータ3に対する作動油の供給量を制御する弁であってもよい。駆動部の具体例は、上述した可動部3b式のアクチュエータ3の他に、スプール弁やポペット弁でもよいし、油圧モータ等の流体圧駆動モータでもよい。
【0051】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 流体圧駆動装置、2 流量制御弁、3 アクチュエータ、3a スリーブ、3b 可動部、4 変位検出部、5 状態推定部、6 コントローラ、7 位置検出部、8 燃料噴射弁、9 排気弁、10 位置検出部、11 警告部、12 寿命予測部、13 モード選択部