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特許7254514偏光子用保護フィルム、偏光板、およびそれらを含む表示装置
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  • 特許-偏光子用保護フィルム、偏光板、およびそれらを含む表示装置 図1
  • 特許-偏光子用保護フィルム、偏光板、およびそれらを含む表示装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】偏光子用保護フィルム、偏光板、およびそれらを含む表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20230403BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20230403BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALN20230403BHJP
【FI】
G02B5/30
G09F9/00 302
G09F9/00 313
G02F1/1335 510
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018527203
(86)(22)【出願日】2016-11-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 KR2016013697
(87)【国際公開番号】W WO2017091031
(87)【国際公開日】2017-06-01
【審査請求日】2018-07-19
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-12
(31)【優先権主張番号】10-2015-0167738
(32)【優先日】2015-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508148079
【氏名又は名称】エスケイシー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SKC CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ダウ
(72)【発明者】
【氏名】イ・ジャンウォン
(72)【発明者】
【氏名】ホ・ヨンミン
(72)【発明者】
【氏名】カン・ホチョン
(72)【発明者】
【氏名】イ・セチョル
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】河原 正
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-219438(JP,A)
【文献】特開2009-288395(JP,A)
【文献】特開2015-111207(JP,A)
【文献】特開2013-139151(JP,A)
【文献】国際公開第2011/162198(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向(TD)の延伸比4.15倍以上および長手方向(MD)の延伸比1.2~2.0倍を有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
9.0~18kgf/mmの長手方向の引張強さ、24~35kgf/mmの幅方向の引張強さ、0.25~0.35の幅方向の引張強さに対する長手方向の引張強さの比、7,500nm以上の面内位相差、±2.5度以下の全幅における配向角の偏差、400nm以下の前記位相差の偏差、0.4~0.55の幅方向の弾性率に対する長手方向の弾性率の比、225kgf/mm270kgf/mmの長手方向の弾性率および500kgf/mm550kgf/mmの幅方向の弾性率を有する
ことを特徴とする、偏光子用保護フィルム。
【請求項2】
偏光子層;および
該偏光子層の上側および下側の少なくとも一方に隣接する偏光子用保護フィルム
を含み、
該偏光子用保護フィルムが、幅方向(TD)の延伸比4.15倍以上および長手方向(MD)の延伸比1.2~2.0倍を有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
該偏光子用保護フィルムが、9.0~18kgf/mmの長手方向の引張強さ、24~35kgf/mmの幅方向の引張強さ、0.25~0.35の幅方向の引張強さに対する長手方向の引張強さの比、7,500nm以上の面内位相差、±2.5度以下の全幅における配向角の偏差、400nm以下の前記位相差の偏差、0.4~0.55の幅方向の弾性率に対する長手方向の弾性率の比、225kgf/mm270kgf/mmの長手方向の弾性率および500kgf/mm550kgf/mmの幅方向の弾性率を有する
ことを特徴とする、偏光板。
【請求項3】
表示パネル;および
該表示パネルの上側および下側の少なくとも一方の上に配置された偏光板
を含み、
該偏光板が、偏光子層;および該偏光子層の上側および下側の少なくとも一方に隣接する偏光子用保護フィルムを含み
幅方向(TD)の延伸比4.15倍以上および長手方向(MD)の延伸比1.2~2.0倍を有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
該偏光子用保護フィルムが、9.0~18kgf/mmの長手方向の引張強さ、24~35kgf/mmの幅方向の引張強さ、0.25~0.35の幅方向の引張強さに対する長手方向の引張強さの比、7,500nm以上の面内位相差、±2.5度以下の全幅における配向角の偏差、400nm以下の前記位相差の偏差、0.4~0.55の幅方向の弾性率に対する長手方向の弾性率の比、225kgf/mm270kgf/mmの長手方向の弾性率および500kgf/mm550kgf/mmの幅方向の弾性率を有する
ことを特徴とする、表示装置。
【請求項4】
ポリエチレンテレフタレート樹脂を成形して、未延伸シートを作製する工程、
該未延伸シートを長手方向に1.2~2.0倍延伸する工程、
該未延伸シートを幅方向に4.15倍以上延伸して延伸シートを作製する工程、および
該延伸シートを加熱処理して偏光子用保護フィルムを製造する工程
を含み、
フィルムが、9.0~18kgf/mmの長手方向の引張強さ、24~35kgf/mmの幅方向の引張強さ、0.25~0.35の幅方向の引張強さに対する長手方向の引張強さの比、7,500nm以上の面内位相差、±2.5度以下の全幅における配向角の偏差、400nm以下の前記位相差の偏差、0.4~0.55の幅方向の弾性率に対する長手方向の弾性率の比、225kgf/mm270kgf/mmの長手方向の弾性率および500kgf/mm550kgf/mmの幅方向の弾性率を有し、
延伸温度がTg+10℃~Tg+40℃の範囲であり、
幅方向の延伸工程において、幅方向の延伸速度が350%/分~800%/分であり、
加熱処理温度が200℃~210℃であり、
加熱処理時間が6秒~13秒である
ことを特徴とする、偏光子用保護フィルムを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施態様は、偏光子用保護フィルム、偏光板、およびそれらを含む表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化社会の到来により、液晶表示装置(LCD)、プラズマ表示パネル(PDP)、電気泳動表示装置(ELD)などの様々な表示装置が迅速に開発または商品化されている。室内使用用表示装置は、ますます大型化および薄型化されている傾向であり、屋外使用用ポータブル表示装置は、小型化および軽量化されている傾向にある。これらのディスプレイの機能をより向上させるために、様々な光学フィルムが使用されてきた。
【0003】
これらの光学フィルムに使用される材料は、ディスプレイの種類に依存するが、一般的に高透過率、光学等方性、無欠陥表面、高耐熱性、高耐湿性、高可撓性、高表面硬度、低収縮性、良好な加工性などの特性を満足する必要がある。
【0004】
偏光板の製造においては、ポリビニルアルコール製の偏光子の片面または両面上の偏光子を保護するための保護フィルムとして、高透過率、光学等方性、無欠陥表面などの特性を有するトリアセチルセルロース(TAC)製のフィルムを一般的に使用する。しかしながら、トリアセチルセルロースフィルムは、価格が高く、多くの供給元がなく、水分の悪影響を受けやすいという欠点を有する。
【0005】
従って、最近では、トリアセチルセルロースフィルムと置き換えることができる様々な材料の保護フィルムが開発されてきた。例えば、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、アクリルフィルム、ポリエステルフィルムなどを単独または組み合わせて使用することが提案されてきた。これにより、特許文献1には、偏光子用保護フィルムとして使用される幅方向(即ち、TD方向)に4倍以上延伸したポリエステルフィルムを提供する技術が開示されている。しかしながら、幅/長手方向の延伸が均一でないかもしれないという問題がある。また、上記フィルムの薄型化にも限界がある。
【0006】
そこで、本発明者らは、前述の従来技術の問題点を解決しようと努力した結果、フィルムの長手/幅方向の強度の差を発生させながらフィルム中央部と端部の配向角の差を最小化することによって、虹状汚れなしに機械的強度に優れる偏光子用保護フィルムを発見することにより、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4962661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の実施形態は、長手/幅方向の強度の差を発生させながらフィルムの中央部と端部の配向角の差を最小化することによって、虹状汚れなしに機械的強度に優れる偏光子用保護フィルム、上記保護フィルムを含む偏光板、および上記偏光板を含む表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの実施形態によると、幅方向(TD)に4.15倍以上延伸され、長手方向(MD)に2.0倍以下延伸された一軸または二軸延伸ポリエステルフィルムであり、上記フィルムが9.0~18kgf/mmの長手方向の引張強さ、24~35kgf/mmの幅方向の引張強さ、0.25~0.6の幅方向の引張強さに対する長手方向の引張強さの比、および3,000nm以上の面内位相差を有する偏光子用保護フィルムを提供する。
【0010】
更に、本発明の1つの実施形態によると、偏光子層;および上記偏光子層の上側および下側の少なくとも一方に隣接する偏光子用保護フィルム;を含む、偏光板を提供する。
【0011】
また、本発明の1つの実施形態によると、表示パネル;上記表示パネルの上側および下側の少なくとも一方の上に配置された偏光板を含み、上記偏光板が、偏光子層;および該偏光子層の上側および下側の少なくとも一方に隣接する偏光子用保護フィルムを含む、表示装置を提供する。
【0012】
更に、本発明の1つの実施形態によると、ポリエステル樹脂を成形して、未延伸シートを作製する工程;上記未延伸シートを長手方向に2.0倍以下延伸する工程;および上記未延伸シートを幅方向に4.15倍以上延伸する工程;を含み、
延伸フィルムが、9.0~18kgf/mmの長手方向の引張強さ、24~35kgf/mmの幅方向の引張強さ、0.25~0.6の幅方向の引張強さに対する長手方向の引張強さの比、および3,000nm以上の面内位相差を有する、偏光子用保護フィルムを製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態に係る偏光子用保護フィルムは、フィルムの長手/幅方向の強度の差を発生させながら、フィルムの中央部と端部の配向角の差を最小化することによって、虹状汚れなしに機械的強度が優れる。従って、偏光子用保護フィルムとして有利に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】試験例1として用いられる配向角測定用システムを示す模式図である。
図2】試験例4において虹状汚れが観察されるかどうかを確認するための表示装置に用いられるフィルムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の実施形態は、幅方向(TD)に4.15倍以上延伸され、長手方向(MD)に2.0倍以下延伸された一軸または二軸延伸ポリエステルフィルムであり、9.0ないし18kgf/mmの長手方向の引張強さ、24から35kgf/mmの幅方向の引張強さ、0.25ないし0.6の幅方向の引張強さの長手方向の引張強さの比、および3,000nm以上の面内位相差を有する、偏光子用保護フィルムを提供する。
【0016】
上記偏光子用保護フィルムは、ポリエステル樹脂を含む単層フィルムであり、幅方向に4.15倍以上延伸され、長手方向に2.0倍以下延伸されていてもよい。
例えば、幅方向に4.15倍以上、または詳細には4.15倍~4.5倍に延伸されていてもよい。長手方向に延伸されていないか、或いは2.0倍以下、詳細には1.5倍以下、またはより詳細には1.0倍~1.3倍延伸されていてもよい。
【0017】
上記比で延伸された保護フィルムは、±2.5度以下の全幅における配向角の偏差を有してもよい。詳細には、±0.5~±2.5度の配向角の偏差を有してもよい。保護フィルムが上記範囲内の配向角の偏差を有する場合、虹状汚れなどの色歪曲現象を防止することができる。
【0018】
上記保護フィルムの機械的強度を向上させるために、以下の方法を用いてもよい。
具体的には伸長力(即ち、応力)を増加する方法を延伸時に用いてもよい。上記保護フィルムを長手方向および/または幅方向に延伸するとき、延伸温度を下げて、上記保護フィルムに適用される予熱量を低減すると、そこにかかる応力が増大し、結晶が配向される傾向が増加し、それによって、上記フィルムの機械的強度を向上することができる。
【0019】
また、前記保護フィルムを、低延伸速度で製造してもよい。そのような低延伸速度により、上記保護フィルムは、幅方向および長手方向に向上した引張強さと弾性率を有することができる。更に、そのような低延伸速度により、上記保護フィルムは、上記位相差の低い偏差を有することができる。例えば、上記フィルムは、400nm以下の上記位相差の偏差を有してもよい。
【0020】
上記保護フィルムは、9.0~18kgf/mmの長手方向の引張強さ、24~35kgf/mmの幅方向の引張強さを有する。上記幅方向の引張強さに対する長手方向の引張強さの比(長手方向の引張強さ/幅方向の引張強さ)は、0.25~0.6、詳細には0.25~0.4、より詳細には0.25~0.35であってもよい。上記保護フィルムが上記範囲内の引張強さおよび引張強さ比を有する場合、機械的強度を向上することができる。
【0021】
この他にも、延伸後の加熱処理時の熱処理温度(または、TMS温度)を上昇することによって、上記フィルムを結晶化する方法を用いてもよい。上記TMS温度を上昇すると、フィルムの機械的強度が向上することができるように、フィルム内の結晶成長が加速され、結晶量も増加する。
【0022】
更に、上記保護フィルムは、延伸後の加熱処理時の熱処理時間を短くすることにより、幅方向および長手方向に向上した引張強さおよび向上した弾性率を有することができる。また、上記保護フィルムは、そのような短い熱処理時間により、上記位相差の低い偏差を有することができる。
【0023】
上記フィルムは、0.4~0.6、詳細には0.4~0.55の幅方向の弾性率に対する長手方向の弾性率の比を有してもよい。
【0024】
上記フィルムは、225kgf/mm~290kgf/mm、または詳細には225kgf/mm~270kgf/mmの長手方向の弾性率を有してもよい。上記フィルムは、480kgf/mm~560kgf/mm、詳細には480kgf/mm~550kgf/mm、またはより詳細には500kgf/mm~550kgf/mmの幅方向の弾性率を有してもよい。
【0025】
上記保護フィルムは、約3,000nm以上、または詳細には3,500nm以上の面内位相差(Re)を有してもよい。より詳細には、上記保護フィルムは、約7,000nm以上の面内位相差を有してもよい。より詳細には、上記保護フィルムは、7,500nm以上の面内位相差を有してもよい。
【0026】
上記保護フィルムは、約30~300μm、詳細には約30~200μm、またはより詳細には40~200μmの厚さを有してもよい。
【0027】
更に、本発明の1つの実施形態は、ポリエステル樹脂を成形して、未延伸シートを作製する工程:該未延伸シートを長手方向に2.0倍以下延伸する工程:および該未延伸シートを幅方向に4.15倍以上延伸する工程を含み、
延伸フィルムが、9.0~18kgf/mmの長手方向の引張強さ、24~35kgf/mmの幅方向の引張強さ、0.25~0.6の幅方向の引張強さに対する長手方向の引張強さの比、および3,000nm以上の面内位相差を有することを特徴とする、偏光子用保護フィルムを製造する方法を提供する。
【0028】
具体的には、ポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂等のフィルムの原料として使用することができる樹脂を溶融押出して未延伸シートを製造し、上記未延伸シートを幅方向および長手方向に延伸して、それによって保護フィルムを製造する。
【0029】
より具体的には、ポリエステル樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のフィルムの原料として使用することができる樹脂は、エチレングリコールなどのジオール成分とテレフタル酸などのジカルボン酸成分のエステル化反応および重合反応を行うことによって直接製造してもよい。或いはまた、市販樹脂を使用するために購入してもよい。上記樹脂を溶融押出し、次いで冷却して未延伸シートを製造してもよい。上記未延伸シートを長手方向に2.0倍以下延伸し、幅方向に例えば4.15倍以上延伸し、加熱処理して保護フィルムを製造してもよい。このような場合、上記未延伸シートを、特別な工程なしに長手方向に延伸した後、すぐに幅方向に延伸してもよい。
【0030】
上記溶融押出は、Tm+30℃~Tm+60℃の温度で行ってもよい。上記温度範囲内で溶融押出を行う場合、溶融を円滑に行うことができ、押出物の粘度を適切に維持することができる。また、上記冷却は、30℃以下、具体的には15℃~30℃の温度で行ってもよい。
【0031】
延伸温度は、Tg+5℃~Tg+50℃の範囲であってもよい。Tgが低いほど、押出性が良好であるが、破断が生じる可能性がある。特に、脆性を改善するために、延伸温度がTg+10℃~Tg+40℃の範囲であってもよい。
【0032】
幅方向の延伸工程において、幅方向の延伸速度は、350%/分~800%/分であってもよい。詳細には、幅方向の延伸速度は、約350%/分~約770%/分であってもよい。このような場合、延伸温度は、約85℃~約100℃であってもよい。
【0033】
上記延伸されたフィルムを、加熱処理してもよい。上記加熱処理を開始した後、上記フィルムを、長手方向および/または幅方向に緩和してもよい。加熱処理温度は200℃~210℃であってもよい。加熱処理時間は、約6秒~約13秒であってもよい。
【0034】
前述の製造方法によると、虹状汚れなしに機械的強度が改善されるように、適切な厚さと3,000nm以上の面内位相差を有する保護フィルムを製造することができる。また、上記保護フィルムは、通常の帯電化剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、その他の無機滑剤などの各種添加剤を、本実施形態の効果を損なわない範囲内で含んでもよい。
【0035】
また、本発明の1つの実施形態は、偏光子層;および該偏光子層の上側および下側の少なくとも一方に隣接する偏光子用保護フィルムを含み、
該偏光子用保護フィルムが、幅方向(TD)に4.15倍以上延伸され、長手方向(MD)に2.0倍以下延伸された一軸または二軸延伸ポリエステルフィルムであり、
該偏光子用保護フィルムが、9.0~18kgf/mmの長手方向の引張強さ、24~35kgf/mmの幅方向の引張強さ、0.25~0.6の幅方向の引張強さに対する長手方向の引張強さの比、および3,000nm以上の面内位相差を有する
ことを特徴とする、偏光板を提供する。
【0036】
上記偏光板は、前述のように偏光子用保護フィルムを含むので、改良された光学的特性、機械的特性、および熱的特性を有することができる。
【0037】
更に、本発明の1つの実施形態は、表示パネル;および該表示パネルの上側および下側の少なくとも一方の上に配置された偏光板を含み、
該偏光板が、偏光子層;および該偏光子層の上側および下側の少なくとも一方に隣接する偏光子用保護フィルムを含み
幅方向(TD)に4.15倍以上延伸され、長手方向(MD)に2.0倍以下延伸された一軸または二軸延伸ポリエステルフィルムであり、
該偏光子用保護フィルムが、9.0~18kgf/mmの長手方向の引張強さ、24~35kgf/mmの幅方向の引張強さ、0.25~0.6の幅方向の引張強さに対する長手方向の引張強さの比、および3,000nm以上の面内位相差を有する
ことを特徴とする、表示装置を提供する。
【0038】
詳細に前述したように、実施形態に係る偏光子用保護フィルムは、フィルムの長手/幅方向の強度の差を発生させながら、フィルムの中央部と端部の配向角の差を最小化することによって、機械的強度が向上し、虹状汚れの発生が最小化される。従って、偏光子用保護フィルムとして有用に使用することができ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどの表示装置に使用することができる。
【実施例
【0039】
以下の実施例により、本発明を更に詳細に説明する。但し、以下の実施例は、本発明を例示するためのもので、本発明の範囲をそれらに限定するものではない。
【0040】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート樹脂(100モル%のエチレングリコールおよび100モル%のテレフタル酸からなり、0.61dL/gのIV値を有する、SKC社)を、約280℃で押出機によって溶融押出し、次いで約25℃の成形ロール上で冷却して、未延伸シートを作製した。上記未延伸シートを100℃に予熱した後、90℃で長手方向に約1.2倍延伸した後、幅方向に4.16倍延伸した。このとき、幅方向の延伸速度は、約396.2%/分であった。次いで、上記の一軸延伸されたシートを約210℃の温度で約0.21分間加熱処理して、厚188μmの単層フィルムを製造した。
【0041】
(実施例2~5)
長手方向と幅方向の延伸比および最終フィルムの厚さを以下の表1に示すように変化させた以外は、上記実施例1と同様に単層フィルムを製造した。
【0042】
(比較例1)
長手方向と幅方向の延伸比および最終フィルムの厚さを以下の表1に示すように変化させた以外は、上記実施例1と同様に単層フィルムを製造した。
【0043】
(比較例2)
Toyobo製のSRF製品を使用した。
【0044】
<試験例>
(1)配向角評価
図1に示すような配向角測定システムを用いて、フィルムの配向角を測定し、測定された配向角の偏差を表3に示した。
【0045】
(2)弾性率と引張強さの評価
実施例1~5および比較例1および2において作製したフィルム(即ち、試料フィルム)について、KS B 5521に準拠して長手方向の弾性率および幅方向の弾性率を測定した。幅方向の弾性率に対する長手方向の弾性率の比(長手方向の弾性率/幅方向の弾性率)も計算した。また、上記実施例と比較例のフィルムに荷重を加えて、フィルムを延伸した時の最大荷重をフィルムの元の断面積で割って引張強さを測定した。その結果を下記表2に示す。
【0046】
(3)面内位相差評価
フィルムの互いに直交する2方向の屈折率(n、n)と厚さ方向の屈折率(n)をアッベ屈折計(株式会社Atagoから市販されているNAR-4T、測定波長589nm)を用いて測定した。フィルムの厚さd(nm)を、Feinpruef Millitronから市販されている電子マイクロメータ(Millitron 1245D)を用いて測定し、nm単位に換算した。上記直交する2方向の屈折率の差の絶対値(|n-n|)を求め、厚さd(nm)を乗じて、積(△nxy×d)としての面内位相差(Re)を求めた。その結果を以下の表3に示す。
【0047】
(4)虹状汚れの観察
実施例1~5および比較例1および2の保護フィルム(即ち、試料フィルム)をそれぞれ、偏光子の吸収軸とフィルムの配向主軸が互いに垂直になるように、PVAおよびヨウ素からなる偏光子の片側に積層した。次いで、その反対側にTACフィルム(80μm、Fuji Film社)を積層して偏光板を作製した。上記偏光板を、青色発光ダイオードおよびイットリウム‐アルミニウム‐ガーネット系黄色蛍光体を組み合わせた発光素子からなる光源としての白色LED(NSPW500CS、Nichia)を使用した液晶表示装置の発行側に搭載した。ここで、上記試料フィルムを観察者側に配置した。上記液晶ディスプレイは、偏光子用保護フィルムとして2枚のTACフィルムを有する偏光板を有し、液晶セルの入射光側に配置された(図2参照)。液晶表示装置の偏光板の正面と斜め方向から目視で観察することによって、虹状汚れ(偏光ムラ)の有無を検査した。その結果を以下の表3に示した。
【0048】
(5)幅方向に切断した表面の評価
偏光子用保護フィルムを、カッターを使用して、それぞれ幅方向に切断した。その後、切断表面を、顕微鏡を通して目視観察した。切断表面にバリ(burr)が発生した場合、不良と評価した。切断表面にバリが発生していない場合、良好と評価した。その結果を以下の表3に示した。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
上記表2および3に示された結果から確認されるように、実施例1~5において作製されたフィルムはすべて、優れた引張強さ、0.4以下の幅方向の引張強さに対する長手方向の引張強さの比、2.5度未満の配向角の偏差、および3,000nm以上の高い面内位相差を有し、かつ虹状汚れはほとんど観察されなかった。一方、比較例1において作製されたフィルムは、高い機械的強度を有したが、配向角の偏差が大きく、面内位相差が低く、虹状汚れが非常に目立った。また、比較例2のフィルムは、機械的強度が低く、幅方向に切断した表面にバリ(burr)が観察された。従って、実施例で製造された偏光子用保護フィルムは、虹状汚れの発生が最小限に抑えられるだけでなく、機械的強度が大幅に向上することが確認された。
図1
図2