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特許7254560ソケットユニット、水栓及び水栓の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】ソケットユニット、水栓及び水栓の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20230403BHJP
【FI】
E03C1/042 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019034223
(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公開番号】P2020139291
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】笠原 直之
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-115283(JP,A)
【文献】特開2006-118118(JP,A)
【文献】特開2008-063838(JP,A)
【文献】特開2001-123487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/042-1/044
F16L 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓本体と壁面の配管とを接続するためのクランク型のソケットユニットであって、
前記壁面の配管にねじ込みにより接続される管状のジョイントと、
前記水栓本体に接続される接続部を備え、前記ジョイントに対して一体回転可能かつ前記ジョイントの軸方向にスライド移動可能に組み付けられたソケット本体とを有し、
前記ソケット本体は前記ジョイントに対して360度未満の範囲で空回り可能に構成されており、
前記ジョイントには、前記壁面側及び前記水栓本体側の少なくとも一方への前記ソケット本体の移動を任意の位置で規制するストッパ部材が取り付けられていることを特徴とするソケットユニット。
【請求項2】
水栓本体と壁面の配管とを接続するためのクランク型のソケットユニットであって、
前記壁面の配管にねじ込みにより接続される管状のジョイントと、
前記水栓本体に接続される接続部を備え、前記ジョイントに対して一体回転可能かつ前記ジョイントの軸方向にスライド移動可能に組み付けられたソケット本体とを有し、
前記ソケット本体は、前記壁面側に位置する第1貫通孔と、前記水栓本体側に位置する第2貫通孔とを有しており、前記ソケット本体は、前記ジョイントが前記第1貫通孔と前記第2貫通孔を貫通した状態で前記ジョイントに組み付けられており、
前記ジョイントには、前記壁面側及び前記水栓本体側の少なくとも一方への前記ソケット本体の移動を任意の位置で規制するストッパ部材が取り付けられていることを特徴とするソケットユニット。
【請求項3】
前記ストッパ部材は、前記壁面側への前記ソケット本体の移動を任意の位置で規制する請求項1又は2に記載のソケットユニット。
【請求項4】
前記ジョイントの外周にはネジ溝が形成されており、
前記ストッパ部材は、前記ネジ溝に螺合した状態で取り付けられている請求項1~3のいずれか一項に記載のソケットユニット。
【請求項5】
前記水栓本体と、前記水栓本体に接続される一対のソケットユニットとを備え、
前記一対のソケットユニットの少なくとも一方が請求項1~のいずれか一項に記載のソケットユニットである水栓。
【請求項6】
壁面の湯用配管及び水用配管に水栓を接続する水栓の施工方法であって、
前記水栓は、水栓本体と、一対のソケットユニットとを有し、
前記ソケットユニットは、管状のジョイントと、前記ジョイントに対して一体回転可能かつ前記ジョイントの軸方向にスライド移動可能に組み付けられたソケット本体と、前記ジョイントに取り付けられて、前記壁面側への前記ソケット本体の移動を任意の位置で規制するストッパ部材とを有し、
前記ソケット本体は前記ジョイントに対して360度未満の範囲で空回り可能に構成されており、
前記ソケット本体は、前記水栓本体に接続される接続部を備え、
前記一対のソケットユニットにおける各ジョイントを前記湯用配管及び前記水用配管にねじ込んで接続した後、
前記ソケット本体を360度未満の範囲で回転させて前記接続部同士の間隔を調整するとともに、前記一対のソケットユニットのうち、前記ソケット本体の接続部が前記壁面からより離間している方のソケット本体を前記壁面側にスライド移動させた後、
スライド移動させた前記ソケット本体の壁面側への移動を規制する位置に前記ストッパ部材を配置することを特徴とする水栓の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソケットユニット、水栓及び水栓の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、湯水混合水栓の水栓本体と壁面の配管とを接続するソケットについて記載されている。
図9(a)、(b)に示すように、壁面11に設けられた配管13である湯用配管13a及び水用配管13bが、一対のソケット70を介して水栓本体90の給湯管90a及び給水管90bに接続されている。ソケット70は、管状のジョイント71と、ジョイント71に一体に形成されたソケット本体72とを有しており、全体の形状がクランク型になっている。一対のソケット70におけるジョイント71が、壁面11の湯用配管13a及び水用配管13bにねじ込みにより接続されるとともに、ソケット本体72の接続部としての袋ナット72aが、水栓本体90の給湯管90a及び給水管90bに接続されることによって、水栓本体90は壁面11に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-96296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図9(b)に示すように、壁面11に水栓本体90を取り付ける際に、一対のソケット70における袋ナット72aの軸心同士の間隔Tは、水栓本体90の給湯管90a及び給水管90bの軸心同士の間隔に等しいことが要求される。また、袋ナット72aの水栓本体90側の端部同士を繋いだ仮想直線Uは、壁面11に対して平行であることが要求される。袋ナット72aの水栓本体90側の端部の位置を調整するためには、一対のソケット70における壁面11からより離間しているソケット70のジョイント71を壁面11側にねじ込む必要がある。しかし、ジョイント71とソケット本体72は一体回転するため、ジョイント71のねじ込みに伴って袋ナット72aの軸心同士の間隔Tも変化してしまう。袋ナット72aの軸心同士の間隔Tと、袋ナット72aの水栓本体90側の端部同士の位置とを個別に調整することができないため、両者を好適な位置に調整することが難しいという課題を有している。本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、水栓本体を好適な位置に取り付けることが容易なソケットユニット、水栓及び水栓の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのソケットユニットは、水栓本体と壁面の配管とを接続するためのクランク型のソケットユニットであって、前記壁面の配管にねじ込みにより接続される管状のジョイントと、前記水栓本体に接続される接続部を備え、前記ジョイントに対して一体回転可能かつ前記ジョイントの軸方向にスライド移動可能に組み付けられたソケット本体とを有し、前記ジョイントには、前記壁面側及び前記水栓本体側の少なくとも一方への前記ソケット本体の移動を任意の位置で規制するストッパ部材が取り付けられていることを要旨とする。
【0006】
この構成によれば、ジョイントに対して一体回転可能かつジョイントの軸方向にスライド移動可能に組み付けられたソケット本体を有することにより、ソケット本体を回転させて接続部同士の間隔を調整した後、ソケット本体をスライド移動させて、接続部同士の水栓本体側の端部の位置を調整することができる。また、ストッパ部材によって、ソケット本体の移動を任意の位置で規制することができる。一対のソケットにおける接続部同士の間隔と、接続部同士の水栓本体側の端部の位置とを個別に調整することができるため、水栓本体を好適な位置に取り付けることが容易になる。
【0007】
上記ソケットユニットについて、前記ストッパ部材は、前記壁面側への前記ソケット本体の移動を任意の位置で規制することが好ましい。この構成によれば、ストッパ部材によって壁面側へのソケット本体の移動を好適に規制することができる。
【0008】
上記ソケットユニットについて、前記ジョイントの外周にはネジ溝が形成されており、前記ストッパ部材は、前記ネジ溝に螺合した状態で取り付けられていることが好ましい。この構成によれば、ストッパ部材の位置を容易に調整することができる。
【0009】
前記水栓本体と、前記水栓本体に接続される一対のソケットユニットとを備える水栓であって、前記一対のソケットユニットの少なくとも一方が上記ソケットユニットであることが好ましい。この構成によれば、上記ソケットユニットの機能を奏する水栓とすることができる。
【0010】
上記課題を解決するための水栓の施工方法は、壁面の湯用配管及び水用配管に水栓を接続する水栓の施工方法であって、前記水栓は、水栓本体と、一対のソケットユニットとを有し、前記ソケットユニットは、管状のジョイントと、前記ジョイントに対して一体回転可能かつ前記ジョイントの軸方向にスライド移動可能に組み付けられたソケット本体と、前記ジョイントに取り付けられて、前記壁面側への前記ソケット本体の移動を任意の位置で規制するストッパ部材とを有し、前記ソケット本体は、前記水栓本体に接続される接続部を備え、前記一対のソケットユニットにおける各ジョイントを前記湯用配管及び前記水用配管にねじ込んで接続した後、前記一対のソケットユニットのうち、前記ソケット本体の接続部が前記壁面からより離間している方のソケット本体を前記壁面側にスライド移動させた後、スライド移動させた前記ソケット本体の壁面側への移動を規制する位置に前記ストッパ部材を配置することを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、一対のソケットユニットにおけるソケット本体の接続部が壁面からより離間している方のソケット本体のみをスライド移動させて、水栓本体を接続することができるため、水栓本体を好適な位置に取り付けることが容易になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のソケットユニットによれば、水栓本体を好適な位置に取り付けることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】水栓の斜視図。
図2】ソケットユニットの斜視図。
図3】ソケットユニットの分解斜視図。
図4図2の4-4線断面図。
図5】(a)~(c)は、ソケット本体の回転機構について説明する図。
図6】(a)~(d)は、ソケットユニットの位置を調整する方法について説明する図。
図7】変更例のソケットユニットの断面図。
図8】別の変更例のソケットユニットの断面図。
図9】(a)は従来技術の水栓の斜視図、(b)は従来技術のソケットの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ソケットユニットの実施形態を説明する。
図1、2に示すように、浴室の壁面11には、配管としての湯用配管及び水用配管(図示省略)が設けられている。湯用配管及び水用配管には、それぞれクランク型のソケットユニット20が接続されており、湯用配管及び水用配管とソケットユニット20との接続箇所はカバー14で覆われている。ソケットユニット20は、湯用配管及び水用配管にねじ込みにより接続される管状のジョイント30と、ジョイント30に対して一体回転可能かつジョイント30の軸方向にスライド移動可能に組み付けられた中空板状のソケット本体40とを有する。また、ソケットユニット20は、壁面11側へのソケット本体40の移動を任意の位置で規制するストッパ部材50を有する。
【0015】
ソケット本体40は、ソケット本体40におけるジョイント30に組み付けられた一端側の端部とは反対側である他端側の端部に接続部60を備えている。ソケット本体40の接続部60が水栓本体12の給湯管及び給水管(図示省略)に接続されることにより、水栓本体12は壁面11に取り付けられる。水栓本体12が壁面11に取り付けられた状態で、湯用配管及び水用配管から供給された湯水は、ソケットユニット20のジョイント30及びソケット本体40の内部を流通して、水栓本体12の給湯管及び給水管に供給されるように構成されている。水栓10は、水栓本体12とソケットユニット20とを備え、湯水を混合し、混合水の吐水と止水を切替えることが可能な混合水栓として機能する。
【0016】
ソケットユニット20を構成するジョイント30、ソケット本体40、ストッパ部材50について説明する。
ジョイント30について説明する。
【0017】
図3、4に示すように、ジョイント30は管状に構成されている。ジョイント30の軸方向における中央部から一端側の外周には、ネジ溝が形成されたネジ溝部31が設けられている。ネジ溝部31には、ストッパ部材50の位置を規制するための止め輪32を係止する係止溝33が設けられている。係止溝33は、ジョイント30の周方向に一周分設けられており、係止溝33の深さは、ネジ溝部31の溝の深さよりも深く形成されている。
【0018】
ジョイント30の軸方向におけるネジ溝部31よりも他端側には、ネジ溝部31よりも径が大きい第1拡径部34が形成されている。ネジ溝部31と第1拡径部34の間には、ネジ溝部31と第1拡径部34を繋ぐ第1連結面37aが形成されている。第1連結面37aは、ジョイント30の径方向に沿った平面で構成されている。第1拡径部34よりもジョイント30の他端側には、第1拡径部34よりも径が大きい第2拡径部35が形成されている。第1拡径部34と第2拡径部35の間には、第1拡径部34と第2拡径部35を繋ぐ第2連結面37bが形成されている。第2連結面37bは、ジョイント30の径方向に沿った平面で構成されている。第2連結面37bには、第2連結面37bと略同形状の環状のワッシャー38が配置されている。第2拡径部35よりもジョイント30の他端側には、第2拡径部35よりも径が大きい第3拡径部36が形成されている。第3拡径部36は、ジョイント30の他端側端部に位置する。第1拡径部34及び第3拡径部36の外周には、全周に凹溝34a、36aが形成されており、この凹溝34a、36aにOリング34b、36bが配置されている。これらのOリング34b、36bは、後述のように、ソケット本体40の第1周壁41bと第2周壁42dに当接することにより、第1拡径部34と第3拡径部36の間に位置する第2拡径部35の外周側と、ソケット本体40の内周側との間が水密状態となるように構成されている。第2拡径部35には、ジョイント30を径方向に貫通する孔35aが形成されている。第2拡径部35の外周には、径方向外側に突出した外側凸部35bが1個形成されている。外側凸部35bの先端部は、第3拡径部36の外径に略等しく構成されている。ジョイント30には、止水弁39が第3拡径部36側から挿入された状態で取り付けられている。
【0019】
ソケット本体40について説明する。
図3、4に示すように、ソケット本体40は、対向して配置される長尺状の一対の縦壁と、一対の縦壁の周縁を接続する接続壁43とを備え、中空板状に構成されている。一方の縦壁である第1縦壁41の一端側には、円形の第1貫通孔41aが形成されている。第1貫通孔41aの内径は、ジョイント30の第1拡径部34の外径よりも若干大きく、ジョイント30の第2拡径部35の外径よりも小さく構成されている。他方の縦壁である第2縦壁42の一端側には、第1貫通孔41aと同一軸線となる位置に円形の第2貫通孔42aが形成されている。第2貫通孔42aの内径は、第1貫通孔41aの内径よりも大きく構成されている。第2貫通孔42aの内径は、ジョイント30の第3拡径部36の外径よりも若干大きく構成されている。第2縦壁42の他端側には、円形の第3貫通孔42bが形成されている。第3貫通孔42bの内周にはネジ溝42cが形成されている。このネジ溝42cに、グラン60aを介して袋ナット60bが取り付けられる。グラン60a及び袋ナット60bによって、水栓本体12の給湯管及び給水管に接続される接続部60が構成される。
【0020】
第1縦壁41の外表面には、第1貫通孔41aの周縁から第1縦壁41の厚さ方向外側に突出した第1周壁41bが形成されている。第1縦壁41の内表面には、第1貫通孔41aの周縁において第1縦壁41の厚さが薄く構成された円形の段差部41dが形成されている。段差部41dの外径は、ジョイント30の第2拡径部35の外径よりも若干大きく構成されている。第2縦壁42の内表面には、第2貫通孔42aの周縁から第2縦壁42の厚さ方向内側に突出した第2周壁42dが形成されている。第2周壁42dは、第2縦壁42の肉厚がソケット本体40の内側に向かって部分的に厚くなった箇所と、接続壁43の内周とによって構成されている。ソケット本体40の接続壁43における第1貫通孔41aと第2貫通孔42aとの間の位置には、ソケット本体40の内側へ突出した内側凸部43aが1個形成されている。内側凸部43aは、ソケット本体40をジョイント30に組み付けた際に、ジョイント30の周方向に沿って、ジョイント30の外側凸部35bと重なる位置に配置される。
【0021】
ストッパ部材50について説明する。
図3、4に示すように、ストッパ部材50は、円環状に構成されており、内周にネジ溝50aが形成されている。このネジ溝50aが、ジョイント30のネジ溝部31に螺合することにより、ストッパ部材50はジョイント30に取り付けられる。ストッパ部材50が螺合する位置を変更することにより、ジョイント30のネジ溝部31における任意の位置にストッパ部材50を配置することができるように構成されている。ストッパ部材50の軸方向における両側の表面50bは平面で構成されている。後述のように、ソケットユニット20の各部材を組み付けた状態で、ストッパ部材50の表面50bは、ジョイント30の第1連結面37aに当接する。また、ソケット本体40の第1周壁41bの先端側端面41cと、ストッパ部材50の表面50bとの間には、若干の隙間Wが形成されている。この隙間Wが形成されていることにより、ソケット本体40の空回りが許容されている。また、ソケット本体40が壁面11側へ移動した際には、ストッパ部材50の表面50bがソケット本体40の第1周壁41bの先端側端面41cに当接することにより、壁面11側へのソケット本体40の移動が規制される。ストッパ部材50の表面50bがソケット本体40の第1周壁41bの先端側端面41cに当接した状態で、ストッパ部材50は、ジョイント30の係止溝33よりもジョイント30の他端側に位置するように構成されている。
【0022】
ソケットユニット20を構成する各部材の組み付け方法について説明する。
図4に示すように、ソケット本体40の第2貫通孔42aに、ジョイント30の一端側であるネジ溝部31を挿入し、ソケット本体40の第1貫通孔41aからネジ溝部31を突出させる。ジョイント30における第1拡径部34と第2拡径部35の間の第2連結面37bを、ワッシャー38とともにソケット本体40の段差部41dに収容する。第2連結面37bがワッシャー38を介して段差部41dに当接することにより、それ以上、ジョイント30が第1貫通孔41aから突出することが規制される。
【0023】
次に、ジョイント30のネジ溝部31に、ストッパ部材50を螺合させる。ストッパ部材50の表面50bをジョイント30の第1連結面37aに当接させる。この状態で、ソケット本体40の第1周壁41bの先端側端面41cと、ストッパ部材50の表面50bとの間には、若干の隙間Wが形成される。次に、ジョイント30の係止溝33に止め輪32を係止させる。係止溝33に止め輪32を係止させることにより、止め輪32よりもジョイント30の一端側へのストッパ部材50の移動を規制することができる。これにより、ジョイント30のネジ溝部31における配管13との接続に必要な所定の長さを確保することができる。次に、ソケット本体40の第3貫通孔42bに、グラン60aを介して袋ナット60bを取り付ける。また、ソケット本体40の第2貫通孔42aに、止水弁39を取り付ける。以上の方法によって、ソケットユニット20を構成する各部材は組み付けられる。各部材を組み付ける順序は、適宜変更することが可能である。
【0024】
図4に示すように、各部材が組み付けられた状態において、ソケットユニット20は、ソケット本体40の長手方向の一端側と他端側とからそれぞれ逆方向に、ジョイント30と袋ナット60bとが突出した形状になっており、所謂、クランク型の形状を有している。
【0025】
各部材が組み付けられた状態において、ジョイント30の第1拡径部34とソケット本体40の第1周壁41bとがジョイント30の径方向において重なる位置となり、第1拡径部34のOリング34bが第1周壁41bに当接する。また、ジョイント30の第3拡径部36とソケット本体40の第2周壁42dとがジョイント30の径方向において重なる位置となり、第3拡径部36のOリング36bが第2周壁42dに当接する。第3拡径部36の他端側の端部は、ソケット本体40の第2縦壁42の外表面と略同一平面上となる。また、ジョイント30の第2拡径部35の外側凸部35bとソケット本体40の内側凸部43aとが、ジョイント30の周方向において当接可能な位置となる。
【0026】
ソケット本体40とジョイント30とは、2つのOリング34b、36bが当接した状態で組み付けられているため、第1拡径部34と第3拡径部36の間に位置する第2拡径部35の外周側と、ソケット本体40の内周側との間が水密状態となる。また、ジョイント30に対してソケット本体40を回転させることが可能となる。さらに、ストッパ部材50の位置を調整して、ストッパ部材50の表面50bとソケット本体40の第1周壁41bの先端側端面41cとが当接しない状態にすると、2つのOリング34b、36bが、第1周壁41bと第2周壁42dとに当接する範囲において、ソケット本体40をスライド移動させることが可能となる。
【0027】
ソケット本体40の回転機構について説明する。
図5(a)に示すように、ソケット本体40の内側凸部43aとジョイント30の外側凸部35bとが当接した状態では、ソケット本体40を矢印の方向(図中の右回り)に回転させると、ジョイント30も一体となって回転する。すなわち、ソケット本体40とジョイント30とを一体回転させることができる。
【0028】
図5(b)に示すように、図5(a)の状態からソケット本体40を矢印の方向(図中の左回り)に回転させると、内側凸部43aと外側凸部35bの当接状態が解除されるため、ソケット本体40のみを回転させる、すなわち、ソケット本体40を空回りさせることが可能となる。
【0029】
図5(c)に示すように、さらに、ソケット本体40を矢印の方向(図中の左回り)に回転させると、内側凸部43aと外側凸部35bとが、図5(a)とは反対側から当接した状態となる。内側凸部43aと外側凸部35bとが当接する範囲において、ソケット本体40を空回りさせることが可能となる。すなわち、ソケット本体40は、ジョイント30に対して360度未満の範囲で空回り可能に構成されている。
【0030】
図6(a)~(d)を用いて、ソケットユニット20の位置を調整する方法について説明する。なお、図6(a)~(d)では、便宜上、カバー14を省略している。また、ストッパ部材50の表面50bと、ソケット本体40の第1周壁41bの先端側端面41cとの間の隙間Wも省略している。
【0031】
図6(a)に示すように、壁面11の配管13に、一対のソケットユニット20を取り付ける。具体的には、各ソケットユニット20のネジ溝部31を、配管13にねじ込むことにより、ソケットユニット20を配管13に接続する。その際、ソケット本体40に対して、ジョイント30を中心に回転する方向に力を付与することにより、ソケット本体40とジョイント30とを一体回転させて、ソケットユニット20をねじ込むことができる。一対のソケットユニット20の各袋ナット60bに、水栓本体の給湯管及び給水管(図示省略)を仮止め状態で接続する。
【0032】
図6(b)に矢印で示すように、一対のソケットユニット20のうち、袋ナット60bの水栓本体側の端部が、壁面11からより離間している方のソケットユニット20のストッパ部材50を、壁面11側に移動させる。ストッパ部材50を壁面11側に移動させることにより、ソケット本体40の第1周壁41bの先端側端面41cとストッパ部材50の表面50bとの間に隙間Sが形成される。
【0033】
図6(c)に矢印で示すように、ソケット本体40を壁面11側にスライド移動させて、袋ナット60bの水栓本体側の端部の位置を、もう一方のソケットユニット20における袋ナット60bの水栓本体側の端部と同じ位置にする。すなわち、袋ナット60bの水栓本体側の端部同士を繋いだ仮想直線が、壁面11に対して平行となるようにする。
【0034】
図6(d)に矢印で示すように、ストッパ部材50を移動させて、ストッパ部材50の表面50bをソケット本体40の第1周壁41bの先端側端面41cに当接させる。これにより、ソケット本体40の壁面11側への移動が規制される。この状態で、各袋ナット60bと、水栓本体の給湯管及び給水管とを本接続することにより、水栓本体は壁面11に対して平行に取り付けられた状態となる。
【0035】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)ジョイント30に対して一体回転可能かつジョイント30の軸方向にスライド移動可能に組み付けられたソケット本体40を有し、ジョイント30には、壁面11側へのソケット本体40の移動を任意の位置で規制するストッパ部材50が取り付けられている。
【0036】
ソケット本体40を回転させて袋ナット60b同士の間隔を調整した後、ソケット本体40をスライド移動させて、袋ナット60b同士の水栓本体12側の端部の位置を調整することができる。また、ストッパ部材50によって、ソケット本体40の壁面11側への移動を任意の位置で規制することができる。
【0037】
したがって、一対のソケットユニット20における袋ナット60b同士の間隔と、袋ナット60b同士の水栓本体12側の端部の位置とを個別に調整することができるため、水栓本体12を好適な位置に取り付けることが容易になる。また、ストッパ部材50が取り付けられていることにより、配管13に取り付けた後の水栓本体12のがたつきを抑制することもできる。
【0038】
(2)各ソケットユニット20のネジ溝部31を配管13にねじ込んで接続する際に、作業者は、各袋ナット60bの水栓本体12側の端部の位置を厳密に調整する必要がない。すなわち、作業者は、各袋ナット60bの水栓本体12側の端部の位置が概ね同じ位置となるようにネジ溝部31を配管13にねじ込めばよい。このように接続したソケットユニット20の各袋ナット60bに、水栓本体12の給湯管及び給水管を仮接続した状態で、水栓本体12が壁面11に対して平行となるように水栓本体12の位置を調整することができるため、作業効率を向上させることができる。
【0039】
(3)ジョイント30の外周にはネジ溝部31が形成されており、ストッパ部材50は、ネジ溝部31に螺合した状態で取り付けられている。したがって、ストッパ部材50の位置を容易に調整することができる。また、ストッパ部材50がジョイント30から簡単に脱離してしまうことを抑制することができる。
【0040】
(4)一対のソケットユニット20における各ジョイント30を配管13にねじ込んで接続した後、一対のソケットユニット20のうち、ソケット本体40の接続部60が壁面11からより離間している方のソケット本体40を壁面11側にスライド移動させる。その後、スライド移動させたソケット本体40の壁面11側への移動を規制する位置にストッパ部材50を配置する。
【0041】
したがって、一対のソケットユニット20におけるソケット本体40の接続部60が壁面11からより離間している方のソケット本体40のみをスライド移動させて、水栓本体12を接続することができるため、水栓本体12を好適な位置に取り付けることが容易になる。さらに、スライド移動させない片方のソケットユニット20のストッパ部材50が、最も他端側に位置していると、その片方のソケットユニット20のソケット本体40は、ストッパ部材50の表面50bと、ソケット本体40の第1周壁41bの先端側端面41cとの間の隙間W分を除いて、スライド方向への移動が規制される。そのため、両方のソケットユニット20に可動域がある場合と比べて、よりがたつきを抑制することができる。
【0042】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・本実施形態では、各袋ナット60bに水栓本体12の給湯管及び給水管を仮接続した状態でソケット本体40の位置を調整することによって、水栓本体12が壁面11と平行となるように水栓本体12の位置を調整し、その後、水栓本体12を本接続していたが、この態様に限定されない。各袋ナット60bの水栓本体12側の端部同士を繋いだ仮想直線が、壁面11に対して平行となるように調整したうえで、水栓本体12を接続してもよい。すなわち、水栓本体12の仮接続を省略してもよい。
【0043】
・ジョイント30の第1拡径部34と第2拡径部35を接合する第2連結面37bに配置されるワッシャー38は、省略されていてもよい。
・ジョイント30に取り付けられる止め輪32は省略されていてもよい。同様に、ジョイント30のネジ溝部31は、止め輪32が取り付けられる係止溝33を有することなく構成されていてもよい。
【0044】
・ジョイント30の第2貫通孔42aに取り付けられる止水弁39は、省略されていてもよい。すなわち、ジョイント30は止水弁としての機能を有することなく構成されていてもよい。
【0045】
・本実施形態では、ジョイント30のネジ溝部31にストッパ部材50が螺合していたが、この態様に限定されない。例えば、ジョイント30において、配管13にねじ込まれるネジ溝部31とは別に、ストッパ部材50を螺合させるネジ溝が別途設けられていてもよい。
【0046】
・本実施形態では、ソケットユニット20の各部材を組み付けた状態で、ストッパ部材50の表面50bと、ソケット本体40の第1周壁41bの先端側端面41cとの間には隙間Wが形成されるように構成されていたが、この隙間Wは形成されていなくてもよい。すなわち、ソケット本体40の空回りが許容される範囲において、ストッパ部材50の表面50bとソケット本体40の第1周壁41bの先端側端面41cとが当接した状態で組み付けられていてもよい。
【0047】
・ストッパ部材50は、環状部材で構成された態様に限定されない。ジョイント30の所定の位置に配置することができる部材を適宜採用することができる。例えば、ストッパ部材50は、Cリングで構成され、ジョイント30のネジ溝部31の所定の位置に係止することができるように構成されていてもよい。
【0048】
・ストッパ部材50の表面50bと、ソケット本体40の第1周壁41bの先端側端面41cとの間に、スペーサ部材を介在させてもよい。このスペーサ部材を介在させることによってソケット本体40の移動を規制してもよい。
【0049】
・本実施形態では、ソケット本体40は、ジョイント30に対して空回りできるように構成されていたが、この態様に限定されない。すなわち、ソケット本体40は、ジョイント30に対してスライド移動は可能なものの、空回りできないように構成されていてもよい。空回りできないように構成されていても、ソケット本体40とジョイント30とを一体回転させることにより、一対のソケットユニット20における接続部60を構成する袋ナット60b同士の間隔を調整することができる。さらに、袋ナット60b同士の間隔を調整したうえで、ソケット本体40をスライド移動させることにより、袋ナット60bの水栓本体12側の端部の位置を、もう一方のソケットユニット20における袋ナット60bの水栓本体12側の端部の位置に揃えることができる。これにより、各袋ナット60bの水栓本体12側の端部同士を繋いだ仮想直線を、壁面11に対して平行にすることができる。
【0050】
・ソケット本体40は、ジョイント30に対して360度以上空回りできるように構成されていてもよい。例えば、ジョイント30の外形が、直接、回転方向に力を付与することができる形状になっており、ジョイント30を直接回転させて配管13にねじ込むことができるように構成されていれば、ソケット本体40は、ジョイント30に対して360度以上空回りできるように構成されていてもよい。
【0051】
・本実施形態では、ソケットユニット20のソケット本体40は、中空板状に構成されていたが、この態様に限定されない。内部を湯水が流通するように構成されていれば、ソケット本体40は、管状に構成されていてもよい。
【0052】
・本実施形態では、ストッパ部材50は、壁面11側へのソケット本体40の移動を任意の位置で規制していたが、この態様に限定されない。ストッパ部材50は、水栓本体側へのソケット本体40の移動を任意の位置で規制することができるように構成されていてもよいし、水栓本体側と壁面側の両方へのソケット本体40bの移動を任意の位置で規制することができるように構成されていてもよい。
【0053】
例えば、図7に示すように、ジョイント30aの他端側の外表面にネジ溝部31aを形成し、このネジ溝部31aを、ソケット本体40aの第1貫通孔41e側から挿入して、第2貫通孔42e側から突出するように構成してもよい。このネジ溝部31aに、ストッパ部材50を螺合した状態で取り付けることにより、水栓本体側へのソケット本体40aの移動を任意の位置で規制することができる。
【0054】
さらに、例えば、図8に示すように、ジョイント30bにおける一端側のネジ溝部31bと、他端側のネジ溝部31aとの両方に、ストッパ部材50が配置されていてもよい。各ストッパ部材50により、水栓本体側と壁面側の両方へのソケット本体の移動を任意の位置で規制することができる。
【0055】
・本実施形態のソケットユニット20は、湯用配管及び水用配管の両方に接続されていたが、湯用配管及び水用配管のいずれか一方のみに接続されていてもよい。すなわち、湯用配管及び水用配管のいずれか一方に本実施形態のソケットユニット20が接続され、湯用配管及び水用配管のいずれか他方には、従来のソケットが接続されていてもよい。本実施形態のソケットユニット20が、湯用配管及び水用配管のいずれか一方のみに接続された態様であっても、従来のソケットを基準として、本実施形態のソケットユニット20におけるソケット本体40の位置を調整することにより、水栓本体12を好適な位置に容易に取り付けることができる。
【0056】
・本実施形態では、一対のソケット本体40の位置を調整して、袋ナット60bの水栓本体12側の端部同士を繋いだ仮想直線が、壁面11に対して平行となるように構成していたが、この態様に限定されない。例えば、一対のソケット本体40の位置を調整して、袋ナット60bの水栓本体12側の端部同士を繋いだ仮想直線が、壁面11に対して所定の角度を有するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0057】
11…壁面、12…水栓本体、13…配管、30…ジョイント、40…ソケット本体、50…ストッパ部材、60…接続部。
図1
図2
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図9