IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エア・ウォーター株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-カボチャの種ワタ除去方法および装置 図1
  • 特許-カボチャの種ワタ除去方法および装置 図2
  • 特許-カボチャの種ワタ除去方法および装置 図3
  • 特許-カボチャの種ワタ除去方法および装置 図4
  • 特許-カボチャの種ワタ除去方法および装置 図5
  • 特許-カボチャの種ワタ除去方法および装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】カボチャの種ワタ除去方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A23N 15/00 20060101AFI20230403BHJP
   A23N 4/24 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
A23N15/00 Z
A23N4/24
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019035195
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020137445
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109472
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 直之
(72)【発明者】
【氏名】阿保 洋一
(72)【発明者】
【氏名】森 晃一
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3061383(JP,U)
【文献】特開平6-179198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 1/00~17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半切カボチャを対象品としてその切断面に現れる凹部と種ワタを露呈するよう支持手段で支持し、上記支持手段に支持された上記半切カボチャの上記凹部内に1または2以上の回転羽根を挿入して上記凹部から種ワタを除去する方法であって、
上記回転羽根を上記凹部の内面に向かって移動させる1または2以上の移動手順と、
上記移動手順で移動する回転羽根に対し、上記凹部の内面に向かう移動方向と反対方向へ弾性部材の弾性力を作用させる1または2以上の弾性力作用手順を行い、
上記弾性力作用手順では、上記回転羽根が上記凹部の内面に向かって移動した結果、上記凹部の内面に対し上記回転羽根が所定圧で作用したときに、その状態で上記弾性部材の弾性力と上記所定圧とを釣り合わせ
上記移動手順として、上記回転羽根を上記切断面に沿う方向に移動させる第2の移動手順を有し、
上記第2の移動手順に対応する第2の弾性力作用手順では、弾性を有する第2の弾性部材の弾性力と上記所定圧とを釣り合わせ
ことを特徴とするカボチャの種ワタ除去方法。
【請求項2】
上記移動手順として、上記回転羽根を上記切断面より上記凹部の奥に向かって移動させる第1の移動手順を有し、
上記第1の移動手順に対応する第1の弾性力作用手順では、圧縮弾性を有する第1の弾性部材の抗圧縮弾性力と上記所定圧とを釣り合わせる
請求項1記載のカボチャの種ワタ除去方法。
【請求項3】
記第2の弾性力作用手順では、引張弾性を有する第2の弾性部材の抗引張弾性力と上記所定圧とを釣り合わせる
請求項1または2記載のカボチャの種ワタ除去方法。
【請求項4】
記第2の弾性力作用手順では、圧縮弾性を有する第2の弾性部材の抗圧縮弾性力と上記所定圧とを釣り合わせる
請求項1または2記載のカボチャの種ワタ除去方法。
【請求項5】
上記支持手段は、上記半切カボチャを上記回転羽根と反対方向に回転させる状態に支持する
請求項1~4のいずれか一項に記載のカボチャの種ワタ除去方法。
【請求項6】
上記回転羽根によって種ワタが除去された上記半切カボチャの上記凹部の内面に対して洗浄液を噴射する洗浄工程をさらに行う
請求項1~5のいずれか一項に記載のカボチャの種ワタ除去方法。
【請求項7】
半切カボチャを対象品としてその切断面に現れる凹部と種ワタを露呈するよう支持手段で支持し、上記支持手段に支持された上記半切カボチャの上記凹部内に1または2以上の回転羽根を挿入して上記凹部から種ワタを除去する装置であって、
上記回転羽根を上記凹部の内面に向かって移動させるための1または2以上の移動ユニットと、
上記移動ユニットにより移動する回転羽根に対し、上記凹部の内面に向かう移動方向と反対方向へ弾性力を作用させることができる1または2以上の弾性部材とを備え、
上記回転羽根が上記凹部の内面に向かって移動した結果、上記凹部の内面に対し上記回転羽根が所定圧で作用したときに、その状態で上記弾性部材の弾性力と上記所定圧とが釣り合うように構成され
上記移動ユニットとして、上記回転羽根を上記切断面に沿う方向に移動させる第2の移動ユニットを有し、
上記第2の移動ユニットでは、弾性を有する第2の弾性部材の弾性力と上記所定圧とが釣り合うように構成されている
ことを特徴とするカボチャの種ワタ除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カボチャの種ワタを無駄なく効率的に除去するカボチャの種ワタ除去方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
収穫したカボチャを食用として流通させるために、種ワタを除去する加工が行われる。上記種ワタは、ヘタ及び花落ち(ヘタと反対側の極)の内側において強固に実と結合している。人力で除去するには極めて多大な労力を要する。種ワタの除去は、ヘタ取りや切断等、ほかの加工に比べて時間がかかる。このため、種ワタ除去の効率が、加工工程全体の効率を決定する。
【0003】
通常、カボチャの種ワタ除去は、主として、人力か手動機が採用されている。
【0004】
人力による方法は、半切りした半切カボチャで切断面に露出するカップ状凹部から、スプーンなどを用い、人手で種ワタの除去を行うものである。
上記手動機は、モーターに接続されて常時回転する回転羽を、ステージの中央に突出するように設けたものである。上記回転羽に半切カボチャの上記カップ状凹部を人力で押し付け、種ワタを除去する。
【0005】
そこで、最近は、つぎのような半自動機も考案されている。この半自動機は、切断面を下にした半切カボチャを偏心回転させ、回転羽を下から上昇させて種ワタを除去するものである。上記半切カボチャは、押え部材が上方から下降してカボチャを押えて回転させる。上記回転羽は、上記押え部材と逆方向に回転する。
【0006】
収穫した野菜や果実を食用として流通させるために加工する技術に関する先行技術文献として、本出願人は下記の特許文献1~3を把握している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4456167号公報
【文献】特開2008-161128号公報
【文献】実開平6-31491号公報
【0008】
上記特許文献1は、玉ねぎ等に同じ大きさの穴をくり抜く装置に関するものであり、下記の記載がある。
[0058]
図6に示されるように、作動杵53とエアシリンダー装置30のロッド300との間には、くり抜き刃本体54を刃本体50内に収容させる方向に付勢する付勢手段としてのスプリング56が介在されている。これにより、くり抜き刃本体54を刃本体50内に収容させる際の駆動力が不要となり、より簡易な構成で、くり抜き加工を効率的に行うことができる。
[0069]
まず、回転用モータ32が起動され、くり抜き用カッターCの刃本体50が正回転を開始する。次いで、昇降用モータ20が起動され、昇降フレームFが降下を開始する。これにより、軸方向へ切り込む刃51が対象物100を下方向に削りつつ、くり抜き用カッターCは降下を続ける。
[0070]
そして、第1のセンサSE1でくり抜き刃機構Kの動作位置が検知されると、その検知信号に基づく制御装置200の制御により、エアシリンダー装置30が起動して、くり抜き刃機構Kが動作する。
[0074]
次いで、第3のセンサSE3により、くり抜き用カッターCの下降限界位置が検知されると、その検知信号に基づく制御装置200の制御により、エアシリンダー装置30のロッド300が後退し、作動杵53はスプリング56の付勢力により上昇して元の位置に戻る。これにより、くり抜き刃本体54は、リンク機構Lの働きによって刃本体50の中空部52内に収納される。
【0009】
上記特許文献2は、バネにより除去範囲を規定して、柿のヘタおよび皮を除去する装置に関するものであり、下記の記載がある。
[0074]
また、本実施例では、昇降装置47Aと回動装置47Bとの連設部に削り量設定機構が設けられている。
[0075]
この削り量設定機構は、昇降装置47Aと回動装置47Bとをバネ56(抗縮バネ)を介して連結するとともに、この昇降装置47Aと回動装置47Bとの相対移動量を測定する相対移動量測定装置55を設けて構成されている。
[0076]
この相対移動量測定装置55は、前記昇降装置47Aに擺動自在に設けられる擺動部55aを回動装置47Bに連設し、この擺動部55aの擺動量により昇降装置47Aと回動装置47Bとの相対移動量を測定する測定部55bを具備している。
[0077]
具体的には、この削り量設定機構は、図8に図示したように昇降装置47Aを作動させて回動装置47Bを上昇させ、果実載置部4に載置される柿10に刃体14が当接した際に相対移動量測定装置55が作動し、この時点から更に昇降装置47Aが上昇して回動装置47Bとの相対移動量が予め設定された上昇距離(図9中の距離L)に達したことを擺動部55aの擺動量で測定することで昇降装置47Aを停止する(図9参照)。この昇降装置47Aにおける更なる上昇をさせることで果実載置部4に載置される柿10の上部に押圧機構16(刃体14及び当接体24)が押圧することになる。
[0078]
その後、回動装置47Bを作動させることで柿10の不要部分の除去作業が開始され、この不要部分が削られることで回動装置47Bはバネ56により昇降装置47Aとの間に生じた相対移動量(図9中の距離L)だけ昇降体51へ引き寄せられることになる(図10参照)。これにより刃体14による設定した通りの削り量が得られることになる。
[0079]
従って、この削り量設定機構により、大きさの異なる柿10に対して常に一定の深さの削り量が得られることになり、しかも、大きさの異なる柿10に対して常に柿10の不要部分を除去するに必要となる程度の支承力で支承することができる為(過度の支承力で柿10を支承することがない為)、柿10を傷めることなく確実且つ良好な不要部分の除去が行われることになる。
【0010】
上記特許文献3は、半割りのカボチャから木の葉型の切片を切り出すカボチャのくり抜き加工装置に関するものであり、下記の記載がある。
[0004]
[課題を解決するための手段]
前記目的に沿う請求項1記載のカボチャのくり抜き加工装置は、半切されたカボチャを載置するターンテーブルと、該ターンテーブルの駆動手段と、前記カボチャを前記ターンテーブルの中心部上に固定する位置決め手段と、前記ターンテーブルの近傍に設けられて、第1アームおよび第2アームが回動方向に位相を変えて配設された回動機構と、前記第1、2アームの先端部に片方づつ着脱自在に装着されて、前記カボチャから所定形状のカボチャ片をくり抜く一対の刃物と、前記回動機構の駆動により前記カボチャのくり抜き位置に達した第1または第2アームを伸縮させて、回転中の前記カボチャの周面に所定角度毎に前記刃物を突き刺す前記第1、2アームの移動手段と、前記ターンテーブルの中心部に設けられて、くり抜かれた前記カボチャ片を前記カボチャから外方へ突き出す突き出し手段とを備えた構成としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した人力による種ワタ除去は、労働負荷が甚大になるという大きな問題がある。人手によるため仕上がりは良い傾向があるが、1個1個の処理に極めて時間がかかってしまい、多数の人員で処理を進める人海戦術が必要となってしまう。
【0012】
上述した手動機による種ワタ除去は、作業者の負担が大きく、作業に危険性を伴うことがあるという問題がある。回転している回転羽に半切カボチャを押し付けるため、カボチャが回転しようとする。カボチャの回転を防ぐためには、カボチャを大きな力で押えなければならない。このとき、カボチャを押さえる手に振動が伝わり、手首や肘に加わる負担が甚大である。腱鞘炎のような障害を引き起こす要因ともなる。また、カップ状の凹部の大きさや形状が個体間で一定しないため、種ワタの取り残しが生じやすい。取り残した種ワタは、結局、スプーンなどを使って人力で除去することになる。取り残しを出さないように押付ける力を強くすると、カボチャが割れてしまうことがある。作業中にカボチャが割れると、回転羽に手が当たることがあり、極めて危険である。
【0013】
上述した半自動機による種ワタ除去は、処理できるカボチャのサイズに制約がある。半切カボチャのカップ状凹部の径が、偏心回転する回転羽の偏心量より大きいと、回転羽が当たらない種ワタを取り残すことになる。上記カップ状凹部の深さが、上記回転羽の上昇限度より深い場合も、回転羽が当たらない種ワタを取り残す。反対に、カップ状凹部が小さかったり浅かったりすると、回転羽がカボチャの実を削り取ってしまい、歩留りの悪化をまねく。
【0014】
上記特許文献1の装置は、くり抜く部分が常に同じ容積である。したがって、カボチャのように、形状や容積が一定しないカップ状凹部から過不足なく種ワタを取り除くことはできない。また、上記特許文献1は、作動杵53とロッド300のあいだにスプリング56を介在させることを開示する。しかしながら、上記スプリング56は、くり抜き刃本体54を刃本体50内に収容させる方向に付勢力を作用させるものである。つまり、上記スプリング56は、形状や容積が一定しないカップ状凹部から過不足なく種ワタを取り除く技術を開示するものではない。
【0015】
上記特許文献2は、1軸方向にバネ56を用い、この昇降装置47Aと回動装置47Bとの相対移動量を測定して削り量を設定する機構を開示する。しかしながら、上記バネ56は、ヘタの除去範囲を規定するために作用するものである。つまり、上記バネ56は、形状や容積が一定しないカップ状凹部から過不足なく種ワタを取り除く技術を開示するものではない。
【0016】
上記特許文献3は、半切されたカボチャを載置するターンテーブルを開示する。しかしながら、上記特許文献3の装置は、設定した形状の切片を切り出す装置であり、カボチャの種ワタを過不足なく除去しうるものではない。
【0017】
本発明は、上記課題を解決することを目的とし、カボチャの形状やサイズにバラツキがあっても、過不足なく種ワタを取り除くことができるカボチャの種ワタ除去方法および装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1記載の種ワタ除去方法は、上記目的を達成するため、つぎの構成を採用した。
半切カボチャを対象品としてその切断面に現れる凹部と種ワタを露呈するよう支持手段で支持し、上記支持手段に支持された上記半切カボチャの上記凹部内に1または2以上の回転羽根を挿入して上記凹部から種ワタを除去する方法であって、
上記回転羽根を上記凹部の内面に向かって移動させる1または2以上の移動手順と、
上記移動手順で移動する回転羽根に対し、上記凹部の内面に向かう移動方向と反対方向へ弾性部材の弾性力を作用させる1または2以上の弾性力作用手順を行い、
上記弾性力作用手順では、上記回転羽根が上記凹部の内面に向かって移動した結果、上記凹部の内面に対し上記回転羽根が所定圧で作用したときに、その状態で上記弾性部材の弾性力と上記所定圧とを釣り合わせ
上記移動手順として、上記回転羽根を上記切断面に沿う方向に移動させる第2の移動手順を有し、
上記第2の移動手順に対応する第2の弾性力作用手順では、弾性を有する第2の弾性部材の弾性力と上記所定圧とを釣り合わせる。
【0019】
請求項2記載の種ワタ除去方法は、請求項1記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記移動手順として、上記回転羽根を上記切断面より上記凹部の奥に向かって移動させる第1の移動手順を有し、
上記第1の移動手順に対応する第1の弾性力作用手順では、圧縮弾性を有する第1の弾性部材の抗圧縮弾性力と上記所定圧とを釣り合わせる。
【0020】
請求項3記載の種ワタ除去方法は、請求項1または2記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
記第2の弾性力作用手順では、引張弾性を有する第2の弾性部材の抗引張弾性力と上記所定圧とを釣り合わせる。
【0021】
請求項4記載の種ワタ除去方法は、請求項1または2記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
記第2の弾性力作用手順では、圧縮弾性を有する第2の弾性部材の抗圧縮弾性力と上記所定圧とを釣り合わせる。
【0022】
請求項5記載の種ワタ除去方法は、請求項1~4のいずれか一項に記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記支持手段は、上記半切カボチャを上記回転羽根と反対方向に回転させる状態に支持する。
【0023】
請求項6記載の種ワタ除去方法は、請求項1~5のいずれか一項に記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記回転羽根によって種ワタが除去された上記半切カボチャの上記凹部の内面に対して洗浄液を噴射する洗浄工程をさらに行う。
【0024】
請求項7記載の種ワタ除去装置は、上記目的を達成するため、つぎの構成を採用した。
半切カボチャを対象品としてその切断面に現れる凹部と種ワタを露呈するよう支持手段で支持し、上記支持手段に支持された上記半切カボチャの上記凹部内に1または2以上の回転羽根を挿入して上記凹部から種ワタを除去する装置であって、
上記回転羽根を上記凹部の内面に向かって移動させるための1または2以上の移動ユニットと、
上記移動ユニットにより移動する回転羽根に対し、上記凹部の内面に向かう移動方向と反対方向へ弾性力を作用させることができる1または2以上の弾性部材とを備え、
上記回転羽根が上記凹部の内面に向かって移動した結果、上記凹部の内面に対し上記回転羽根が所定圧で作用したときに、その状態で上記弾性部材の弾性力と上記所定圧とが釣り合うように構成され
上記移動ユニットとして、上記回転羽根を上記切断面に沿う方向に移動させる第2の移動ユニットを有し、
上記第2の移動ユニットでは、弾性を有する第2の弾性部材の弾性力と上記所定圧とが釣り合うように構成されている。
【発明の効果】
【0030】
請求項1記載の種ワタ除去方法は、半切カボチャを除去処理の対象品とする。まず、上記半切カボチャの切断面に現れる凹部と種ワタを露呈するよう支持手段で支持する。そして、上記支持手段に支持された上記半切カボチャの上記凹部内に、1または2以上の回転羽根を挿入することにより、上記凹部から種ワタを除去する。
このとき、上記回転羽根を上記凹部の内面に向かって移動させる1または2以上の移動手順を行う。また、上記移動手順で移動する回転羽根に対し、上記凹部の内面に向かう移動方向と反対方向へ弾性部材の弾性力を作用させる1または2以上の弾性力作用手順を行う。
そして、上記弾性力作用手順では、上記回転羽根が上記凹部の内面に向かって移動した結果、上記凹部の内面に対し上記回転羽根が所定圧で作用したときに、その状態で上記弾性部材の弾性力と上記所定圧とを釣り合わせる。
このため、上記回転羽根が上記凹部の内面に届くまで移動し、種ワタを十分に除去する。また、上記回転羽根が上記凹部の内面に所定圧で作用した状態で上記弾性部材の弾性力と上記所定圧とが釣り合うため、回転羽根はそれ以上は進まない。これにより、上記回転羽根が実を削り取ってしまうのを防止する。したがって、カボチャの形状やサイズにバラツキがあったとしても、種ワタの取り残しが生じず、歩留りも悪化しない。
さらに、上記移動手順として、上記回転羽根を上記切断面に沿う方向に移動させる第2の移動手順を有し、上記第2の移動手順に対応する第2の弾性力作用手順では、弾性を有する第2の弾性部材の弾性力と上記所定圧とを釣り合わせる。
このようにすることにより、上記回転羽根が上記凹部の内周面に届くまで移動して種ワタを十分に除去する。また、上記回転羽根が上記凹部の内周面に所定圧で作用した状態で上記第2の弾性部材の弾性力と上記所定圧とが釣り合うため、回転羽根はそれ以上は進まない。これにより、上記回転羽根が実を削り取ってしまうのを防止する。したがって、カボチャの形状やサイズにバラツキがあったとしても、種ワタの取り残しが生じず、歩留りも悪化しない。
【0031】
請求項2記載の種ワタ除去方法は、第1の移動手順により、上記回転羽根を上記切断面より上記凹部の奥に向かって移動させる。上記第1の移動手順に対応する第1の弾性力作用手順では、圧縮弾性を有する第1の弾性部材の抗圧縮弾性力と上記所定圧とを釣り合わせる。
このため、上記回転羽根が上記凹部の奥面に届くまで移動して種ワタを十分に除去する。また、上記回転羽根が上記凹部の奥面に所定圧で作用した状態で上記第1の弾性部材の抗圧縮弾性力と上記所定圧とが釣り合うため、回転羽根はそれ以上は進まない。これにより、回転羽根はそれ以上は進まない。これにより、上記回転羽根が実を削り取ってしまうのを防止する。したがって、カボチャの形状やサイズにバラツキがあったとしても、種ワタの取り残しが生じず、歩留りも悪化しない。
【0032】
請求項3記載の種ワタ除去方法は、上記第2の弾性力作用手順では、引張弾性を有する第2の弾性部材の抗引張弾性力と上記所定圧とを釣り合わせる
記回転羽根が上記凹部の内周面に所定圧で作用した状態で上記第2の弾性部材の抗引張弾性力と上記所定圧とが釣り合うため、回転羽根はそれ以上は進まない。これにより、上記回転羽根が実を削り取ってしまうのを防止する。したがって、カボチャの形状やサイズにバラツキがあったとしても、種ワタの取り残しが生じず、歩留りも悪化しない。
【0033】
請求項4記載の種ワタ除去方法は、上記第2の弾性力作用手順では、圧縮弾性を有する第2の弾性部材の抗圧縮弾性力と上記所定圧とを釣り合わせる
記回転羽根が上記凹部の内周面に所定圧で作用した状態で上記第2の弾性部材の抗圧縮弾性力と上記所定圧とが釣り合うため、回転羽根はそれ以上は進まない。これにより、上記回転羽根が実を削り取ってしまうのを防止する。したがって、カボチャの形状やサイズにバラツキがあったとしても、種ワタの取り残しが生じず、歩留りも悪化しない。
【0034】
請求項5記載の種ワタ除去方法は、上記支持手段が、上記半切カボチャを上記回転羽根と反対方向に回転させる状態に支持する。
このため、上記支持手段によって回転する半切カボチャに対し、それと反対回転する回転羽根が作用する。したがって、極めて効率よく種ワタを除去できる。また、回転羽根を偏心回転させる必要がなく、設備が簡略化する。
【0035】
請求項6記載の種ワタ除去方法は、上記回転羽根によって種ワタが除去された上記半切カボチャの上記凹部の内面に対して洗浄液を噴射する。
このため、回転羽根によって機械的に除去できなかった細かなクズを洗浄できれいに洗い落とせる。
【0036】
請求項7記載の種ワタ除去装置は、半切カボチャを除去処理の対象品とする。まず、上記半切カボチャの切断面に現れる凹部と種ワタを露呈するよう支持手段で支持する。そして、上記支持手段に支持された上記半切カボチャの上記凹部内に、1または2以上の回転羽根を挿入することにより、上記凹部から種ワタを除去する。
このとき、1または2以上の移動ユニットが、上記回転羽根を上記凹部の内面に向かって移動させる。また、1または2以上の弾性部材が、上記移動ユニットで移動する回転羽根に対し、上記凹部の内面に向かう移動方向と反対方向へ弾性部材の弾性力を作用させる。
そして、上記弾性力を作用させる際、上記回転羽根が上記凹部の内面に向かって移動した結果、上記凹部の内面に対し上記回転羽根が所定圧で作用したときに、その状態で上記弾性部材の弾性力と上記所定圧とを釣り合わせる。
このため、上記回転羽根が上記凹部の内面に届くまで移動して種ワタを十分に除去する。また、上記回転羽根が上記凹部の内面に所定圧で作用した状態で上記弾性部材の弾性力と上記所定圧とが釣り合うため、回転羽根はそれ以上は進まない。これにより、上記回転羽根が実を削り取ってしまうのを防止する。したがって、カボチャの形状やサイズにバラツキがあったとしても、種ワタの取り残しが生じず、歩留りも悪化しない。
さらに、上記移動ユニットとして、上記回転羽根を上記切断面に沿う方向に移動させる第2の移動ユニットを有し、上記第2の移動ユニットでは、弾性を有する第2の弾性部材の弾性力と上記所定圧とが釣り合うように構成されている。
このため、上記回転羽根が上記凹部の内周面に届くまで移動して種ワタを十分に除去する。また、上記回転羽根が上記凹部の内周面に所定圧で作用した状態で上記第2の弾性部材の弾性力と上記所定圧とが釣り合うため、回転羽根はそれ以上は進まない。これにより、上記回転羽根が実を削り取ってしまうのを防止する。したがって、カボチャの形状やサイズにバラツキがあったとしても、種ワタの取り残しが生じず、歩留りも悪化しない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の一実施形態であるカボチャの種ワタ除去方法の工程を説明する図である。
図2】上記実施形態の工程を説明する図である。
図3】本発明の一実施形態であるカボチャの種ワタ除去装置の全体構成を説明する図である。
図4】第1および第2の移動ユニットを説明する図である。
図5】第1の弾性部材を説明する図である。
図6】回転羽根の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1図6は、本発明の一実施形態を説明する図である。
【0044】
◆種ワタ除去方法
図1および図2は、本実施形態のカボチャの種ワタ除去方法を説明する図である。
図1(A)は、処理前の状態であり、半切カボチャ1と装置の一部を縦断面で示している。
図1(B)は、種ワタ除去工程における第1の移動手順の初期を説明する図である。
図1(C)は、上記第1の移動手順の終期を説明する図である。
図2(A)は、上記種ワタ除去工程における第2の移動手順の初期を説明する図である。
図2(B)は、上記第2の移動手順の終期を説明する図である。
図2(C)は、洗浄工程を説明する図である。
【0045】
〔対象品〕
本実施形態では、半切カボチャ1を対象品として切断する。上記半切カボチャ1は、切断面2に凹部3と種ワタ4が現れるよう、その切断方向で最大径となる位置で切断するのが好ましい。カボチャのヘタと花落ちを上下とした横方向を切断方向として半切りされたものが最も好適である。ただし、これに限定するものではなく、上記切断方向はカボチャに対して斜めであってもよい。
【0046】
〔支持手段〕
図1(A)に示すように、本実施形態では、上記半切カボチャ1の切断面2に現れる凹部3と種ワタ4を露呈するよう支持手段10で支持する。
【0047】
上記支持手段10は、載置台11と押えユニット15とを含んで構成されている。
【0048】
上記載置台11は、上記半切カボチャ1が切断面2を下にした状態で載置される。上記載置台11には開口12が設けられている。上記開口12は、載置された半切カボチャ1の切断面に現れる凹部3と種ワタ4を、上記載置台11の下側に露呈させる。
【0049】
上記押えユニット15は、押え部材16と駆動軸17とを備えて構成されている。
上記押え部材16は、この例ではランプシェード状に形成され、上記載置台11に載置された半切カボチャ1の頂部周辺を上から押える。上記駆動軸17は、上記押え部材16を昇降させて、半切カボチャ1に対する押えとその解除を行う。また、上記駆動軸17は、上記押え部材16が降下して半切カボチャ1を上から押えた状態で、上記押え部材16を回転駆動させる。これにより、上記支持手段10は、上記半切カボチャ1を回転させる状態に支持する。
【0050】
ここで、上記支持手段10は、上記半切カボチャ1を後述する回転羽根20の回転と反対方向に回転させる状態に支持する。
【0051】
〔工程〕
本実施形態では、上記半切カボチャ1を上記支持手段10に支持させた状態で、後述する除去工程と洗浄工程を行う。
上記除去工程では、上記支持手段10に支持された上記半切カボチャ1の上記凹部3内に1または2以上の回転羽根20を挿入して上記凹部3から種ワタ4を除去する。 上記洗浄工程では、上記回転羽根20によって種ワタ4が除去された上記半切カボチャ1の上記凹部3の内面に対して洗浄液を噴射する。
【0052】
〔除去工程〕
図1(B)(C)および図2(A)(B)は、上記除去工程を説明する図である。
上記除去工程は、第1の移動手順と第2の移動手順を行う。
図1(B)(C)は上記第1の移動手順を示す。上記第1の移動手順では、上記回転羽根20を上記切断面2より上記凹部3の奥に向かって移動させる。以下の説明では、上記第1の移動手順における上記回転羽根20の移動方向をY方向ともいう。
図2(A)(B)は上記第2の移動手順を示す。上記第2の移動手順では、上記回転羽根20を上記切断面2に沿う方向に移動させる。以下の説明では、上記第2の移動手順における上記回転羽根20の移動方向をX方向ともいう。
【0053】
〔第1の移動手順〕
図1(B)(C)に示すように、上記第1の移動手順では、上記回転羽根20を回転させながらY方向に移動させ、上記回転羽根20を上記切断面2より上記凹部3の奥に向かって移動させる。
【0054】
上記半切カボチャ1は、下にした切断面2を下にして現れる凹部3と種ワタ4が上記開口12から下側に露呈するように、上記載置台11に載置されている。上記載置台11に載置された上記半切カボチャ1は、降下した押え部材16で上から押えられ、上記駆動軸17の回転により回転される。そして、上記回転羽根20が、上記半切カボチャ1の回転方向と反対方向に回転しながらY方向に移動する。これにより、回転する回転羽根20が種ワタ4と接触し、種ワタ4の除去が行われる。
【0055】
上記回転羽根20は、後述する第1の弾性部材31を介してモータ32に接続され、上記モータ32によって回転駆動される。上記モータ32は、昇降シリンダ33に接続され、上記昇降シリンダ33によって昇降される。つまり、上記回転羽根20は、上記モータ32によって回転されながら、上記昇降シリンダ33の動作によってY方向に移動される。
【0056】
上記第1の弾性部材31は、圧縮弾性を有する圧縮バネを用いることができる。上記回転羽根20が種ワタ4を除去するための力よりも、上記第1の弾性部材31の抗圧縮力が大きくなるよう設定されている。具体的には、上記第1の弾性部材31としてフォースゲージで測定した力が30N以上のものを用いることができる。
【0057】
〔第1の弾性力作用手順〕
上記第1の移動手順で移動する回転羽根20に対し、上記凹部3の内面に向かう移動方向(Y方向)と反対方向(反Y方向)へ第1の弾性部材31の弾性力を作用させる第1の弾性力作用手順を行う。
【0058】
図1(C)に示すように、上記第1の移動手順に対応する上記第1の弾性力作用手順では、上記回転羽根20が上記凹部3の奥面に向かって(Y方向)移動した結果、上記凹部3の奥面に対し上記回転羽根20が所定圧で作用したときに、その状態で上記第1の弾性部材31の弾性力と上記所定圧とを釣り合わせる。
この例では、上述したように、上記第1の弾性部材31は圧縮弾性を有するものであり、上記第1の弾性力作用手順では、圧縮弾性を有する第1の弾性部材31の抗圧縮弾性力と上記所定圧とを釣り合わせる。
【0059】
つまり、上記第1の移動手順では、上記回転羽根20をY方向に移動させていくと、順次種ワタ4が除去され、やがて上記回転羽根20が凹部3の奥面に到達する。半切カボチャ1の実5は種ワタ4よりも固い。
【0060】
ここで、上記第1の弾性部材31は、上述したように、圧縮弾性を有する圧縮バネを用いることができる。上記回転羽根20が実5を削ってしまう力よりも、上記第1の弾性部材31の抗圧縮力が小さくなるよう設定されている。具体的には、上記第1の弾性部材31としてフォースゲージで測定した力が70N以下のものを用いることができる。したがって、上記回転羽根20が凹部3の奥面に到達すると、上記第1の弾性部材31が圧縮される。この状態では、上記モータ32が昇降シリンダ33でY方向に移動しても、上記回転羽根20は実5を削ってしまわず、上記第1の弾性部材31が圧縮され、上記第1の弾性部材31の抗圧縮弾性力と、上記凹部3の奥面に対して上記回転羽根20が作用する所定圧とが釣り合うことになる。
【0061】
上記第1の移動手順は、あらかじめ決められた所定時間が経過したときに終了し、第2の手順に移行する。上記所定時間は、上記昇降シリンダ33の動作でモータ32がY方向に移動を始めた時を開始時とし、図示しないタイマーで計測することができる。
【0062】
上記第1の移動手順が終了した時点で、上記種ワタ4の中央部が除去され、そこにはY方向に延びて凹部3の奥面に達する穴4Aが掘られた状態となる。
【0063】
〔第2の移動手順〕
図2(A)(B)に示すように、上記第2の移動手順では、上記第1の移動手順が終了した状態から、上記回転羽根20を回転させながら上記切断面2に沿う方向(X方向)に移動させ、上記回転羽根20を上記X方向に移動させる。このとき、上記支持手段10は、上記第1の手順の際と同様に、上記半切カボチャ1を上記回転羽根20の回転方向と反対方向に回転させる状態に支持する。
【0064】
上記回転羽根20がX方向に移動し、上記回転羽根20が凹部3の内面に沿って徐々に外側に移動する。これにより、種ワタ4の中央部に掘られた穴4Aが周囲に広がるように、残った種ワタ4が除去される。
【0065】
上記第2の移動手順では、上記モータ32が、Y方向の位置を一定を保った状態でX方向に移動する。この移動のとき、上記回転羽根20は、上記凹部3の内面に沿って移動し、Y方向の位置が徐々に下がる。この回転羽根20のY方向の位置変動は、上記第1の弾性部材31が圧縮されることで吸収される。
【0066】
上記モータ32のX方向への移動は、第2の弾性部材41によって行われる。すなわち、上記モータ32のX方向には、引張弾性を有する第2の弾性部材41が連結されている。これにより、上記モータ32は、上記第2の弾性部材41の引張弾性により、常にX方向に引っ張られている。
【0067】
上記第1の移動手順のあいだは、上記第2の弾性部材41の引張弾性力で上記モータ32がX方向に移動してしまわないよう、上記モータ32のX方向側にストッパ42がかけられている(図1(B)(C)参照)。
【0068】
上記第2の移動手順では、上記ストッパ42が解除されることにより、上記第2の弾性部材41の引張弾性力で上記モータ32がX方向に移動する。これにより、上記回転羽根20がX方向に移動し、上記回転羽根20が凹部3の内面に沿って徐々に外側に移動する。このとき、凹部3の周辺部に残った種ワタ4が、上記回転羽根20の移動に伴って徐々に除去される。
【0069】
上記第2の弾性部材41は、引張弾性を有する引張バネを用いることができる。上記回転羽根20が種ワタ4を除去するための力よりも、上記第2の弾性部材41の引張力が大きくなるよう設定されている。具体的には、上記第2の弾性部材41としてフォースゲージで測定した力が20N以上のものを用いることができる。したがって、上記回転羽根20が種ワタ4を除去しているあいだ、上記第2の弾性部材41は引張による収縮が続けられる。
【0070】
〔第2の弾性力作用手順〕
上記第2の移動手順で移動する回転羽根20に対し、上記凹部3の内側面に向かう移動方向と反対方向(反X方向)へ第2の弾性部材41の弾性力を作用させる第2の弾性力作用手順を行う。
【0071】
図2(A)(B)に示すように、上記第2の移動手順に対応する第2の弾性力作用手順では、上記回転羽根20が上記凹部3の内側面に向かって移動した結果、上記凹部3の内側面に対し上記回転羽根20が所定圧で作用したときに、その状態で上記第2の弾性部材41の弾性力と上記所定圧とを釣り合わせる。
この例では、上記第2の弾性部材41は引張弾性を有するものであり、上記第2の弾性力作用手順では、引張弾性を有する第2の弾性部材41の抗引張弾性力と上記所定圧とを釣り合わせる。
【0072】
つまり、上記第2の移動手順では、上記回転羽根20をX方向に移動させていくときに、凹部3の周辺部に残った種ワタ4が順次除去される。このとき、上述したように、半切カボチャ1の実5が種ワタ4よりも固いため、上記回転羽根20は、凹部3の内面に沿って移動する。
【0073】
つまり、上記第2の弾性部材41は、上述したように、引張弾性を有する引張バネを用いることができる。上記回転羽根20が実5を削ってしまう力よりも、上記第2の弾性部材41の抗引張力が小さくなるよう設定されている。具体的には、上記第2の弾性部材41としてフォースゲージで測定した力が40N以下のものを用いることができる。したがって、上記回転羽根20が凹部3の内面に接触した状態でX方向に移動したときに、上記第2の弾性部材41の引張による収縮は妨げられる。上記回転羽根20は凹部3の内面に沿って動き、上記回転羽根20によって実5が削り取られてしまうことがない。このように、上記第2の弾性部材41の抗引張力と、上記凹部3の奥面に対して上記回転羽根20が作用する所定圧とが釣り合うことになる。
【0074】
〔洗浄工程〕
図2(C)に示すように、上記回転羽根20によって種ワタ4が除去された上記半切カボチャ1の上記凹部3の内面に対し、洗浄液を噴射する洗浄工程をさらに行う。
【0075】
上記洗浄工程では、上記載置台11の開口12の下側に洗浄ノズル50を配置し、上記洗浄ノズル50から半切カボチャ1の凹部3に向かって洗浄液を噴射する。つまり上記洗浄ノズル50が本発明の洗浄手段として機能する。このとき、上記支持手段10は、上記除去工程と同様に、上記半切カボチャ1を載置台11の上で回転させる状態に支持する。
【0076】
上記洗浄ノズル50は、洗浄液として高圧水を扇状に噴射する。扇状の噴射角は45~90度に設定するのが好ましく、より好ましいのは60~70度である。上記洗浄ノズル50を鉛直から約20~30度傾けて配置する。上記洗浄ノズル50により、上記半切カボチャ1を回転させながら、凹部3のドーム状になった天井部の最も奥から開口付近にわたって高圧水を噴射する。高圧水の水圧は、10~16MPa程度に設定するのが好ましく、より好ましいのは12~14MPaである。
【0077】
◆種ワタ除去装置
図3図6は、本実施形態のカボチャの種ワタ除去装置を説明する図である。
本実施形態の装置は、上述したカボチャの種ワタ除去方法を実現するための構成を備えている。以下の説明では、上述した方法に関する説明と共通する部分には、基本的に同じ符号を用いて説明する。
図3は、装置の全体構成を説明する図である。
図4(A)は、第1および第2の移動ユニットを正面から見た図である。
図4(B)は、第1および第2の移動ユニットを側面から見た図である。
図4(C)は、第1および第2の移動ユニットを背面から見た図である。
図5は、第1の弾性部材を説明する図である。
図6(A)は、回転羽根の斜視図である。
図6(B)は、回転羽根の側面図である。
【0078】
〔全体構成〕
図3に示すように、本実施形態の装置は、筐体60のなかに、載置台11が配置され、上記載置台11上に4つの加工ステージが設けられている。上記加工ステージは、図示の左から順に、第1ステージA,第2ステージB,第3ステージC,第4ステージDである。この順に、対象品である半切カボチャの加工を進めるものである。
【0079】
上記第1ステージAは、投入ステージであり、あらかじめ半切りにされた半切カボチャ1を載置台11上に投入するステージである。
【0080】
上記第2ステージBは、除去ステージであり、上述した除去工程を行うステージである。載置台11に開口12Bが設けられ、上記開口12Bに対応して上部に押えユニット15Bが配置されている。上記押えユニット15Bは、押え部材16B,駆動軸17B,駆動手段18Bを含んで構成されている。上記開口12Bを有する載置台11と上記押えユニット15Bを含んで支持手段10Bが構成されている。上記開口12Bの下には、回転羽根20が配置されている。上記回転羽根20は、上記回転羽根20をY方向に移動させるための第1の移動ユニット70と、上記回転羽根20をX方向に移動させるための第2の移動ユニット80に搭載されている。上記支持手段10Bは、上記半切カボチャ1を上記回転羽根20と反対方向に回転させる状態に支持する。
【0081】
上記第3ステージCは、洗浄ステージであり、上述した洗浄工程を行うステージである。載置台11に開口12Cが設けられ、上記開口12Cに対応して上部に押えユニット15Cが配置されている。上記押えユニット15Cは、押え部材16C,駆動軸17C,駆動手段18Cを含んで構成されている。上記開口12Cを有する載置台11と上記押えユニット15Cを含んで支持手段10Cが構成されている。上記開口12Cの下には、洗浄ノズル50が配置されている。上記洗浄ノズル50は、洗浄液である高圧水を送り込むポンプ51と接続されている。上記洗浄ノズル50は、上記回転羽根20によって種ワタ4が除去された上記半切カボチャ1の上記凹部3の内面に対して洗浄液を噴射する。上記支持手段10Cは、上記半切カボチャ1を上記回転羽根20と反対方向に回転させる状態に支持する。
【0082】
上記第4ステージDは、排出ステージであり、上記除去工程と上記洗浄工程を終了した半切カボチャ1を載置台11上から排出するステージである。
【0083】
上記第1ステージへの半切カボチャ1の投入は、図示しないベルトコンベアから図示しないプッシャ装置で、所定のタクトタイムおきに、半切カボチャ1を自動的に行うことができる。
上記第1ステージAから第2ステージBへの移動は、図示しないロッドコンベアで行うことができる。上記第2ステージBから上記第3ステージC、上記第3ステージCから上記第4ステージDへの移動も同様である。上記ロッドコンベアは、具体的には、複数のロッドで梯子状に接続した一組のエンドレスチェーンを二組のスプロケットにかけて回転させるものを用いることができる。
上記第4ステージDからの半切カボチャ1の排出は、目視検査を兼ねて手動で行うことができる。
【0084】
この装置により、半切カボチャ1を対象品としてその切断面2に現れる凹部3と種ワタ4を露呈するよう支持手段10で支持し、上記支持手段10に支持された上記半切カボチャ1の上記凹部3内に回転羽根20を挿入して上記凹部2から種ワタ4を除去する。
【0085】
〔移動ユニット〕
図4(A)(B)(C)に示すように、上記回転羽根20を上記半切カボチャ1の凹部3内面に向かって移動させる移動ユニットとして、第1の移動ユニット70と第2の移動ユニット80を備えている。
上記第1の移動ユニット70は、上記回転羽根20を上記半切カボチャ1の切断面2より凹部3の奥に向かって(Y方向)移動させる。
上記第2の移動ユニット80は、上記回転羽根20を上記切断面2に沿う方向(X方向)に移動させる。
【0086】
〔第1の移動ユニット〕
上記第1の移動ユニット70は、上記回転羽根20が搭載される第1の弾性部材31と、上記第1の弾性部材31を介して上記回転羽根20を回転させるモータ32と、上記モータ32を昇降させることで上記回転羽根20を昇降させる昇降シリンダ33とを備えている。
【0087】
図5に示すように、上記第1の弾性部材31は、ケース34に収容されている。上記ケース34の上部にシャフト穴34Aが形成され、上記シャフト穴34Aに回転羽根20のシャフト21が挿通されている。上記シャフト21は、上記シャフト穴34A内で軸方向への進退が自在となり、軸回転はしないように噛み合っている。具体的には、たとえば、上記シャフト21に軸方向に延びる平行キー状の突条を形成し、上記シャフト穴34Aに上記突条に嵌合するキー溝状の凹部を形成すればよい。
【0088】
上記シャフト21の下端には、上記ケース34内に収容された第1の弾性部材31を圧縮させる押圧板22が設けられている。上記ケース34の下面には、上記モータ32の回転軸32Aが接続されている。さらに上記モータ32の下面には上記昇降シリンダ33のシリンダロッド33Aが接続されている。上記昇降シリンダ33の下端部は、第1の実装板71に固定された支持板72によって支持されている。
【0089】
上記第1の実装板71には、上記モータ32の昇降をガイドする第1のガイド部材73が設けられている。上記第1のガイド部材73は、例えばガイドレールとすることができ、上記ガイドレールにスライド自在に嵌合するスライド部材35をモータ32に固定すればよい。
【0090】
上記のような構成により、上記モータ32が駆動して回転軸32Aが回転すると、その回転はケース34、シャフト21を伝わって回転羽根20を回転させる。
【0091】
また、上記昇降シリンダ33のシリンダロッド33Aが進退すると上記モータ32が昇降し、それとあわせてケース34および回転羽根20が昇降する。上述したように、上記回転羽根20がY方向に移動して半切カボチャ1の凹部3内面に達すると、それよりモータ32が上昇しても、回転羽根20はY方向に移動せずに第1の弾性部材31が圧縮され、シャフト21の一部がケース34内に入り込むことになる。
【0092】
上記第1の弾性部材31は、上記第1の移動ユニット70によりY方向に移動する回転羽根20に対して反対方向へ弾性力を作用させる。そして、上記回転羽根20がY方向に移動した結果、上記凹部3の内面に対し上記回転羽根20が所定圧で作用したときに、その状態で圧縮弾性を有する第1の弾性部材31の抗圧縮弾性力と上記所定圧とが釣り合うように構成される。
【0093】
〔第2の移動ユニット〕
上記第2の移動ユニット80は、上記第1の移動ユニット70が、第2の実装板81に対し、X方向に進退可能に搭載されて構成されている。
【0094】
上記第2の実装板81には、上記第1の実装板71のX方向への進退をガイドする第2のガイド部材83が設けられている。この例では、上記第2のガイド部材83が上下に1つずつ設けられていて、Y方向に長い第1の実装板71の上部と下部をそれぞれガイドする。上記第2のガイド部材83は、例えばガイドレールとすることができ、上記ガイドレールにスライド自在に嵌合するスライド部材82を第1の実装板71に固定すればよい。
【0095】
上記第2の実装板81の板面に沿って、上記第1の移動ユニット70をX方向に進退させる。具体的には、第2の弾性部材41とストッパ42によって実現する。
【0096】
上記第2の実装板81の板面には、X方向の一方に、第2の弾性部材41の一端が固定されるアンカー部材84が固定されている。一方、第1の実装板70の板面には、第2の弾性部材41の他端が固定される引寄せ部材74が固定されている。初期状態(図示した状態)では、上記アンカー部材84と引寄せ部材74は最も離れた位置に配置される。この状態の上記アンカー部材84と引寄せ部材74を、引張伸長された第2の弾性部材41が接続している。
【0097】
また、第2の実装板81の板面には、X方向の一方に、ストッパ42として機能するシリンダの一端を支持する支持板85が設けられている。一方、第1の実装板70の板面には、上記ストッパ42を受ける受板75が設けられている。上記シリンダのシリンダロッドが上記受板75を支えているあいだ、上記ストッパ42が機能し、第1の移動ユニット70はX方向に移動しない。
【0098】
上記ストッパ42が解除されると、引張伸長された第2の弾性部材41の弾性力により、上記第2の弾性部材41は引張圧縮を開始し、引寄せ部材74がアンカー部材84側に引き寄せられる。これにより、第1の移動ユニット70がX方向に移動するのである。上記シリンダのシリンダロッドを伸ばすと、第1の移動ユニット70は元の位置に戻り、そのままシリンダロッドがストッパ42として機能する。
【0099】
上記第2の移動ユニット80の動作により第1の移動ユニット70がX方向に移動すると、第1の移動ユニット70に搭載された回転羽根20がX方向に移動する。
【0100】
上記第2の移動ユニット80の動作により回転羽根20がX方向に移動した結果、上記半切カボチャ1の凹部3の内面に対し上記回転羽根20が所定圧で作用したときに、引張弾性を有する第2の弾性部材41の抗引張弾性力と上記所定圧とが釣り合うように構成される。
【0101】
〔回転羽根〕
図6は、上記回転羽根20の一例を示す。この例では、上から見て5枚の羽根20Aが星形を呈するように配置されている。上記回転羽根20を横から見たときに先端が丸くなるよう、各羽根20Aは扇形を呈している。各羽根20Aの外側の下部には延長部20Bが設けられている。
【0102】
◆実施形態の効果
上記実施形態は、上記構成により、つぎの作用効果を奏する、
本実施形態は、Y方向とX方向の2軸方向に回転羽根20を移動させることによって、複雑形状のカボチャでも種ワタ4の除去が可能になる。
【0103】
つまり、上記回転羽根20が上記凹部3の内面に届くまで移動し、種ワタ4を十分に除去する。また、上記回転羽根20が上記凹部3の内面に所定圧で作用した状態で第1の弾性部材31および第2の弾性部材41の弾性力と上記所定圧とが釣り合うため、回転羽根20はそれ以上は進まない。これにより、上記回転羽根20が実5を削り取ってしまうのを防止する。したがって、カボチャの形状やサイズにバラツキがあったとしても、種ワタ4の取り残しが生じず、歩留りも悪化しない。
また、上記支持手段10によって回転する半切カボチャ1に対し、それと反対回転する回転羽根20が作用し、極めて効率よく種ワタ4を除去できる。また、回転羽根20を偏心回転させる機構が必要がなく、設備が簡略化する。
また、回転羽根20によって機械的に除去できなかった細かなクズを洗浄できれいに洗い落とせる。
【0104】
◆第2の実施形態
第2の実施形態として、上記第2の移動ユニット80において、第2の弾性部材41として引張弾性を有する弾性部材を用いたが、圧縮弾性を有する弾性部材を用いることもできる。
【0105】
この場合、第1の移動ユニット70に対する第2の弾性部材41の配置が、図示したものと反対側になる。つまり、図4において、上記第2の実装板81の板面に、X方向の反対側に、第2の弾性部材41の一端が固定されるアンカー部材84を固定する。一方、第1の実装板70の板面には、第2の弾性部材41の他端が固定される引寄せ部材74が固定される。初期状態で、上記アンカー部材84と引寄せ部材74は最も近接した位置に配置される。この状態の上記アンカー部材84と引寄せ部材74のあいだに、圧縮された第2の弾性部材41を配置する。
【0106】
この構成における第2の移動手順は、上記モータ32のX方向への移動を、第2の弾性部材41の抗圧縮力により、上記モータ32を常にX方向に押すことにより行う。上記第1の移動手順のあいだに、上記第2の弾性部材41の抗圧縮力で上記モータ32がX方向に移動してしまわないようにストッパ42をかけるのは上記実施形態と同様である。
【0107】
このケースでは、上記第2の弾性部材41として、圧縮弾性を有する圧縮バネを用いることができる。
【0108】
上記回転羽根20が種ワタ4を除去するための力よりも、上記第2の弾性部材41の抗圧縮力が大きくなるよう設定される。具体的には、上記第2の弾性部材41としてフォースゲージで測定した力が20N以上のものを用いることができる。したがって、上記回転羽根20が種ワタ4を除去しているあいだ、上記第2の弾性部材41は抗圧縮による伸長が続けられる。
【0109】
また、上記第2の弾性部材41は、上記回転羽根20が実5を削ってしまう力よりも、上記第2の弾性部材41の抗圧縮力が小さくなるよう設定されている。具体的には、上記第2の弾性部材41としてフォースゲージで測定した力が40N以下のものを用いることができる。したがって、上記回転羽根20が凹部3の内面に接触した状態でX方向に移動したときに、上記回転羽根20は凹部3の内面に沿って動き、上記回転羽根20によって実5が削り取られてしまうことがない。このように、上記第2の弾性部材41の抗圧縮力と、上記凹部3の奥面に対して上記回転羽根20が作用する所定圧とが釣り合うことになる。
【0110】
◆変形例
以上は本発明の特に好ましい実施形態について説明したが、本発明は図示した実施形態に限定する趣旨ではなく、各種の態様に変形して実施することができ、本発明は各種の変形例を包含する趣旨である。
【0111】
たとえば、上記回転羽根20は、上述した構造のものに限定するものではなく。羽根をらせん状にすることもできるし、羽根の数を増減することもできる。
また、上記実施形態では、半切カボチャ1の回転方向と回転羽根20の回転方向を反対方向としたが、同じ方向に回転させることもできる。この場合、半切カボチャ1と回転羽根20のうちどちらかを相対的に早く回転させればよい。
【符号の説明】
【0112】
A:第1ステージ
B:第2ステージ
C:第3ステージ
D:第4ステージ
1:半切カボチャ
2:切断面
3:凹部
4:種ワタ
4A:穴
5:実
10:支持手段
10B:支持手段(第2ステージ)
10C:支持手段(第2ステージ)
11:載置台
12:開口
12B:開口(第2ステージ)
12C:開口(第3ステージ)
15:押えユニット
15B:押えユニット(第2ステージ)
15C:押えユニット(第3ステージ)
16:押え部材
16B:押え部材(第2ステージ)
16C:押え部材(第3ステージ)
17:駆動軸
17B:駆動軸(第2ステージ)
17C:駆動軸(第3ステージ)
18B:駆動手段(第2ステージ)
18C:駆動手段(第3ステージ)
20:回転羽根
20A:羽根
20B:延長部
21:シャフト
22:押圧板
31:第1の弾性部材
32:モータ
32A:回転軸
33:昇降シリンダ
33A:シリンダロッド
34:ケース
34A:シャフト穴
35:スライド部材
41:第2の弾性部材
42:ストッパ
50:洗浄ノズル
51:ポンプ
60:筐体
70:第1の移動ユニット
71:第1の実装板
72:支持板
73:第1のガイド部材
74:引寄せ部材
75:受板
80:第2の移動ユニット
81:第2の実装板
82:スライド部材
83:第2のガイド部材
84:アンカー部材
85:支持板
図1
図2
図3
図4
図5
図6