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特許7254572温度を検出するためのアセンブリ、およびそのような温度検出用アセンブリを有するコンタクトアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】温度を検出するためのアセンブリ、およびそのような温度検出用アセンブリを有するコンタクトアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/16 20060101AFI20230403BHJP
   G01K 1/14 20210101ALI20230403BHJP
【FI】
G01K1/16
G01K1/14 L
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019049239
(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公開番号】P2019168450
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】10 2018 204 271.3
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(74)【代理人】
【識別番号】100121533
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 まどか
(72)【発明者】
【氏名】マイスナー,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィットロック,フランク
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/001719(WO,A1)
【文献】特開2003-307457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
H01R 13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電気伝導性要素(7)の温度(T)を検出するためのアセンブリ(1)であって、
前記アセンブリ(1)は、
- 少なくとも1つの温度プローブ(9)と、
- 電気絶縁性かつ熱伝導性の材料(39)から作られた少なくとも1つの別個の熱導体(37)と、を有し、
前記熱導体(37)は、前記温度プローブ(9)を少なくとも部分的に囲み、かつ、前記熱導体(37)は、前記電気伝導性要素(7)を支承するための支承面(49)を有し、さらに、
前記熱導体(37)は、
電気絶縁性外殻(79)と、
前記電気絶縁性外殻(79)に受容されるさらなる熱伝導性媒体(81)と、を備える、
アセンブリ(1)
【請求項2】
少なくとも前記支承面(49)は、弾性的かつ可逆的に変形可能である、
請求項1に記載のアセンブリ(1)。
【請求項3】
前記支承面(49)は、少なくとも部分的に凹状に形成されている、
請求項1または2に記載のアセンブリ(1)。
【請求項4】
前記熱導体(37)は、シリコーン(41)を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のアセンブリ(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの温度プローブ(9)は、回路基板(17)に配置されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載のアセンブリ(1)。
【請求項6】
前記熱導体(37)は、前記温度プローブ(9)を少なくとも部分的に、少なくとも三面で囲む、
請求項1から5のいずれか一項に記載のアセンブリ(1)。
【請求項7】
前記回路基板(17)の少なくとも1つの部分(18)は、前記熱導体(37)に差し込まれている、
請求項5に記載のアセンブリ(1)。
【請求項8】
前記熱導体(37)は、前記少なくとも1つの温度プローブ(9)を受容するためのスロット(59)を有する、
請求項1から7のいずれか一項に記載のアセンブリ(1)。
【請求項9】
少なくとも前記温度プローブ(9)は、前記熱導体(37)により完全に囲まれている、
請求項1から8のいずれか一項に記載のアセンブリ(1)。
【請求項10】
前記熱導体(37)は、500V超の絶縁破壊電圧(40)を有する、
請求項1からのいずれか一項に記載のアセンブリ(1)。
【請求項11】
少なくとも1つの電気伝導性要素(7)の温度(T)を検出するためのアセンブリ(1)であって、
前記アセンブリ(1)は、
- 少なくとも1つの温度プローブ(9)と、
- 電気絶縁性かつ熱伝導性の材料(39)から作られた少なくとも1つの別個の熱導体(37)と、を有し、
前記熱導体(37)は、前記温度プローブ(9)を少なくとも部分的に囲み、かつ、前記熱導体(37)は、前記電気伝導性要素(7)を支承するための支承面(49)を有するとともに、
前記少なくとも1つの温度プローブ(9)は、回路基板(17)に配置され、
前記回路基板(17)の少なくとも1つの部分(18)は、前記熱導体(37)に差し込まれている、
アセンブリ(1)。
【請求項12】
ンタクトアセンブリ(11)であって、
前記コンタクトアセンブリ(11)は、
- 少なくとも1つの電気伝導性要素(7)を受容するための、少なくとも1つのコンタクトレセプタクル(55)と、
- 請求項1から11のいずれか一項に記載の少なくとも1つの前記アセンブリ(1)が配置された、少なくとも1つのセンサレセプタクル(13)と、を有する、
コンタクトアセンブリ(11)。
【請求項13】
前記センサレセプタクル(13)は、掛止要素(15)に形成されている、
請求項12に記載のコンタクトアセンブリ(11)。
【請求項14】
前記アセンブリ(1)は前記掛止要素(15)とともに可動であり、
前記熱導体(37)が前記少なくとも1つのコンタクトレセプタクル(55)に当接する、または前記熱導体(37)が前記コンタクトレセプタクル(55)に重なる、前記掛止要素(15)の少なくとも1つの位置(34)が設けられている、
請求項13に記載のコンタクトアセンブリ(11)。
【請求項15】
前記コンタクトアセンブリ(11)の前記センサレセプタクル(13)内の前記アセンブリ(1)は、熱ブリッジの材料(39)で注封されている、
請求項12または13に記載のコンタクトアセンブリ(11)。
【請求項16】
前記コンタクトアセンブリ(11)は、ソケット(29)またはプラグ(31)である、
請求項12から15のいずれか一項に記載のコンタクトアセンブリ(11)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの電気伝導性要素の温度を検出するためのアセンブリに関する。本発明はさらに、少なくとも1つの電気伝導性要素を受容するための少なくとも1つのコンタクトレセプタクルと、少なくとも1つのセンサレセプタクルとを有する、コンタクトアセンブリ、特にソケットまたはプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
温度を検出するためのアセンブリおよびそのようなアセンブリを有するコンタクトアセンブリが、先行技術から知られている。アセンブリは、例えば、電気伝導性要素をモニタするために使用される。例えば、温度閾値に達すると、このアセンブリは、最大許容電流が電気伝導性要素を流れているかどうか、またはさらには、不完全接触または接触不良があるかどうかを示すことができる。接触不良により、例えば、電気伝導性要素の有効電気伝導性断面が小さくなり、一定の電流の場合に、前記要素が仕様内で設定された温度閾値を超えて加熱されることがある。特にエレクトロモビリティの分野において、この種の接触不良は重大であり、避けなければならない。この分野における1kVの範囲の電圧およびDC回路に流れる約200Aの範囲の電流により、1分未満で接触不良が生じ、電気伝導性要素が所定の閾値を超えて過度に加熱されることがある。
そのような過熱の場合、コンタクトアセンブリおよび周囲要素の熱破壊の危険があるだけでなく、有毒な蒸気/ガスが漏れて発火する危険もある。非常に高い電流が送られていることおよび電気接触が不良であることを、電気伝導性要素の温度により確実に示すことによって、前記危険を減らす、またはさらにはなくすことができる。
【0003】
しかしながら、先行技術から知られている解決策は、判定温度値に相違があり、判定温度閾値を遅れて判定することしかできず、すなわち特定の時間に判定された温度値が電気伝導性要素の現在の温度を表していないというさらなる不都合が生じるおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の1つの課題は、少なくとも1つの電気伝導性要素の温度を検出するためのアセンブリを作製すること、および電気伝導性要素の温度を正確かつできるだけ適時に判定することを可能にするコンタクトアセンブリ、特にソケットまたはプラグを作製することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記アセンブリは、少なくとも1つの温度プローブと、電気絶縁性かつ熱伝導性の材料から構成された少なくとも1つの別個の熱導体とを有し、熱導体が、温度プローブを少なくとも部分的に囲み、電気伝導性要素を支承するための支承面を有することにより、前記課題を解決する。
【0006】
熱導体は電気絶縁性であり、温度プローブを少なくとも部分的に囲むため、空気および沿面距離がいずれも増加して、電気回路(高電圧回路および低電圧回路)を互いに確実に電気絶縁することができる。
【0007】
さらに、本発明による解決策によって、電気伝導性要素との優れた熱結合が可能になるため、温度差および時間遅延を最小限にすることができる。
【0008】
本発明によるアセンブリおよび本発明によるコンタクトアセンブリは、温度を測定する予定の電気伝導性要素と温度プローブとが略ぴったりと熱接続するという利点を有する。熱接続とは、電気伝導性要素から温度プローブに熱を伝導する熱ブリッジを意味するものと理解される。さらに、熱導体および特にその支承面により、熱導体と電気伝導性要素との間または熱導体と温度プローブとの間に生じ得る空隙を防止する、または少なくとも最小限にすることができる。したがって、熱伝達に関して絶縁するように作用する空気層の厚さを低減させることができ、適時の測定が可能になる。
【0009】
本発明による前記コンタクトアセンブリは、本発明による、温度を検出するための少なくとも1つのアセンブリをセンサレセプタクルに配置することにより、前記課題を解決する。
【0010】
本発明によるアセンブリおよび本発明によるコンタクトアセンブリを、以下でより詳細に説明する構成によってさらに改良することができる。この場合、以下で説明する特定の構成の技術的特徴を希望に応じて互いに組み合わせることができ、省略しようとする技術的特徴によって達成される技術的効果が重要でなければ、その技術的特徴を省略することもできる。
【0011】
熱伝導性の材料とは、特に、絶縁材料に関連付けられず、少なくとも0.2W/(mK)の熱伝導性を有する材料を意味するものと理解される。最大数百W/(mK)のより高い熱伝導性を本質的に有することのできる金属が、実際にはより優れた熱導体である(より高い熱伝導性という意味でより優れている)が、金属は電気絶縁を保証しないため、電気伝導性要素と温度プローブとの間の温度の伝達に使用することができない。しかしながら、低電圧電気回路の電気部品を欠陥および/または破壊から保護するために、高電圧電気回路(約1kV)を低電圧電気回路(例えば12ボルト、電気自動車の搭載電子機器)から電気的に分離する必要に迫られている。
【0012】
本発明によるアセンブリの1つの可能な構成において、少なくとも支承面が弾性的かつ可逆的に変形可能である。これは、そのような構成を温度プローブおよび/または温度を測定する予定の電気伝導性要素に物理的に適合させることができるという利点を有する。
【0013】
したがって、熱導体と電気伝導性要素および/または温度プローブとの間にできるだけ広範囲な機械的接触が保証される。電気伝導性要素から温度プローブへの熱伝導を大幅に低減させる絶縁空隙は生じない。
【0014】
少なくとも支承面が可逆的に変形可能であることにより、1つの同じ熱導体を、本質的にわずかに異なる要素に適合させることができる。したがって、起こり得る製造公差にかかわらず、電気伝導性要素との最適な熱結合が常に保証される。
【0015】
本発明によるさらなるアセンブリにおいて、支承面は、少なくとも部分的に凹状に形成される。これは、この種の凹状アセンブリを対応する凸状に形成された電気伝導性要素の周りに部分的に当てることができるという利点を有する。特に、電気伝導性要素を円筒形またはロッド状にして、電気伝導性要素の温度測定点における外径を凹状支承面の半径に対応させることができる。
【0016】
しかしながら、同様に、支承面の任意の形状が考えられ、このような形状は、電気伝導性要素の外形に適合させることができると特に好ましい。
【0017】
特に有利な構成において、完全な別個の熱導体が弾性的かつ可逆的に変形可能である。
【0018】
本発明によるアセンブリのさらなる構成において、熱導体はシリコーンを有していてもよい。シリコーンは、高電圧電気回路を低電圧電気回路から確実に分離することができる優れた電気絶縁体である。
【0019】
いわゆる高充填シリコーンを熱導体として使用できることが特に好ましい。この種の高充填シリコーンは、高熱伝導性材料の微粒子と混合される。微粒子は熱伝導に寄与するが、それにもかかわらず、電気絶縁シリコーンに埋め込まれているため、それ自体が電気絶縁性であるように構成する必要はない。
【0020】
同様に、高充填シリコーンは粒状物を含むことができる。粒状物/ナノ粒子は、特に、ケイ素またはセラミックから構成されていてもよい。ケイ素は本来、特定の電気特性(電気伝導性)を有するが、ケイ素がシリコーンに埋め込まれているため、前記電気特性が作用し始めることはない。
【0021】
粒状物/ナノ粒子はさらに、以下の物質または化合物、すなわち、アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、および窒化ケイ素のうちの1つまたは複数から構成されていてもよい。
【0022】
これらの物質/化合物は、純シリコーンよりも高い熱伝導性を有することができる。さらに、これらの物質/化合物は電気絶縁性(例えば酸化アルミニウム)であってもよく、前述したように、シリコーンの電気絶縁効果による電気熱伝導性(例えばアルミニウムの場合)は、そのような伝導性充填剤の使用を除外するものではない。
【0023】
本発明によるさらなるアセンブリにおいて、少なくとも1つの温度プローブを回路基板に配置してもよい。そのようなアセンブリは、一方で、温度プローブをその位置に固定し、容易に取り付けることができ、他方で、簡単に電気接触させることができるという利点を有する。特に、プリント回路基板(PCB)を使用することができる。
【0024】
特に有利な構成において、回路基板は2つの温度プローブを有することができるため、2つの電気伝導性要素を、起こり得る過熱に関して、同時かつ互いに独立して検査およびモニタすることができる。
【0025】
特に、2つの電気伝導性要素は、電気車両の充電装置用のコンタクトであってもよい。自由に利用可能な充電ステーションの充電プラグまたは充電ソケットは、欠陥を有することがあるため、電気接触が不十分になることがあり、前述したように、ある状況下でソケットまたはプラグの過度の加熱またはさらには破壊が生じることがある。
【0026】
さらに、電気車両の充電ソケットまたは充電プラグにおける適用を用いて、事故電流または未知の降下などの車両デバイスまたは充電デバイスに生じる欠陥を認識し、供給される充電電流を電気接続の質に対応して適合させることができると有利である。
【0027】
本発明によるアセンブリを、温度プローブを少なくとも部分的に、少なくとも三面で囲む熱導体により、さらに改良することができる。そのような温度プローブまたは温度プローブを有する回路基板のU字形の囲いは、沿面距離をさらに増加させることができ、両電気回路の電気絶縁を向上させることができるという利点を有する。
【0028】
特に、U字形熱導体のベースを支承面により形成することができる。U字形熱導体の外側要素は、それらの間で、温度プローブまたは温度プローブを有する回路基板を少なくとも部分的に取り囲むことができる。
【0029】
したがって、本発明によるアセンブリの特に有利な構成において、回路基板の少なくとも1つの部分を、熱導体に差し込むことができる。そのような差込みは、温度プローブを含む回路基板に熱導体を簡単に取り付けることができ、前記熱導体を簡単に交換することができるという利点をさらに有する。
【0030】
本発明によるアセンブリのさらなる構成において、熱導体は少なくとも1つの温度プローブを受容するためのスロットを有する。そのような熱導体のスロットは、回路基板を前記スロットにも差し込むことができるため、断面がU字形に構成された熱導体と同様の利点を有する。特に、スロットをポケットの形状に形成して、スロットに一方の側からのみアクセスできるようにし、スロットのベースからベースを完全に囲む外側壁が、ベースから離れて延びるようにしてもよい。特に、前記外側壁は電気伝導性要素から離れて延びる。
【0031】
したがって、コンタクトアセンブリの特に有利な構成において、温度プローブを回路基板の舌部に構成することができ、前記舌部を熱導体のスロットで受容することができる。回路基板をぴったりと受容することができるため回路基板に加わる機械力効果が単に低いまたはないにもかかわらず、ポケットとして形成されるこの種のスロットを、回路基板に拘束して保持することができる。
【0032】
いわゆる表面実装デバイス(SMD)を使用するのであれば、熱導体がSMDに機械的に接触しないことが必要となり得る。そのような構成においては、熱導体とSMDとの距離をできるだけ小さく選択して、生じる空隙ができるだけ小さくなる(例えば数百μm)ようにすべきである。
【0033】
本発明によるアセンブリは、少なくとも温度プローブを熱導体により完全に囲むことによりさらに改良することができる。温度プローブと熱導体とのそのような分離できない接続は、温度プローブを有害な影響、例えばガスまたは液体から保護する場合に有利となり得る。さらに、温度プローブをそのように囲むことは、自動車分野において典型的な振動によって熱導体が温度プローブから分離されることもないという利点を有する。
【0034】
本発明によるコンタクトアセンブリの対応する構成において、コンタクトアセンブリのセンサレセプタクル内のアセンブリを、熱導体の材料で注封してもよい。言い換えると、温度を検出するためのアセンブリとコンタクトアセンブリのセンサレセプタクルの境界線との間の中間空間を、熱導体の材料で完全に注封または充填する。そのような注封により、前述したように、分離できない接続が得られ、この場合、アセンブリ全体を有害な環境条件および振動から保護する。
【0035】
さらに、熱導体を中空に構成することができ、本発明によるアセンブリのさらなる有利な構成において、熱導体は、電気絶縁外殻と、前記電気絶縁外殻に受容されるさらなる熱伝導性媒体とを備えることができる。そのような構成は、さらなる熱伝導性媒体を選択することにより、到達可能な熱導体の熱伝導性を高めることができるという利点を有する。この場合、さらなる熱伝導性媒体は、絶縁された外殻よりも高い熱伝導性を有することができ、特に、必ずしも電気絶縁性である必要はないことに留意することが重要である。
【0036】
特に、熱導体は、500V超の絶縁破壊電圧を有する。絶縁破壊電圧はさらに高いことが特に好ましく、例えば600V超、700V超、800V超、900V超、特に好ましくは1000V超である。
【0037】
本発明によるコンタクトアセンブリの好ましい構成において、センサレセプタクルを二次掛止要素に形成してもよい。特に、温度を検出するためのアセンブリは二次掛止要素とともに可動であってもよく、熱導体が少なくとも1つのコンタクトレセプタクルに当接する、または前記コンタクトレセプタクルに重なる、二次掛止要素の少なくとも1つの位置を設けることができる。
【0038】
電気伝導性要素をコンタクトレセプタクルで受容することができるため、電気伝導性要素の温度測定が二次掛止要素の少なくとも1つの位置で可能であることが保証される。少なくとも1つの位置は掛止位置に対応することが好ましく、その位置に到達することが、電気伝導性要素による電流接続を開始するために必須条件となり得る。
【0039】
したがって、特に電気車両の直流ソケットまたは直流プラグであり得るコンタクトアセンブリのそのような構成において、通電電気伝導性要素の温度を熱導体に直接接触させ、これにより、少なくとも1つの温度プローブに熱を間接的に伝導することができる。
【0040】
アセンブリは、2つの温度プローブを有することが好ましい。したがって、電気伝導性要素の温度プロファイルを非常に精密かつ略瞬時に追跡し、ある状況下で伝導電流を適合させる、すなわち再調整することができる。
【0041】
したがって、これにより、そのような直流ソケットまたはそのような直流プラグを使用するときの安全性を高めることができる。隣接する要素の電気伝導性要素の過熱を防止することができるため、本発明により寿命を延長することもできる。
【0042】
本発明によるアセンブリまたは本発明によるコンタクトアセンブリを自動車分野で使用することにより、少なくとも熱導体の支承面の標準的かつ可逆的な変形性が有利となる。これは、電気伝導性要素が振動しているときでも、そのような要素を連続して、すなわち振動による中断なく機械的に接触させることができ、前記要素の温度をモニタすることができるからである。
【0043】
したがって、コンタクトアセンブリの損傷、またはさらには電気車両の損傷も防止することができるとともに、高電圧電気回路を低電圧電気回路(搭載電子機器)から絶縁することができる。
【0044】
以下で、添付図面を使用しながら本発明についてさらに詳細に説明する。添付図面は、本発明によるアセンブリおよび本発明によるコンタクトアセンブリの特定の構成を示す。以下に示す構成の技術的特徴を希望に応じて互いに組み合わせることができ、技術的特徴によって達成される技術的効果が重要でなければ、その技術的特徴を他の構成において省略することもできる。記載される特定の構成は意図した保護範囲を限定するものではなく、本発明の複数の可能な構成のいくつかを表すものにすぎない。さらに、本発明によるアセンブリまたは本発明によるコンタクトアセンブリは、特定された数の技術的特徴に限定されず、したがって、例えば、複数の温度プローブ、例えば3個、4個、5個またはそれ以上の温度プローブを有していてもよい。
以下で、同一の技術的特徴および同じ技術的機能を有する技術的特徴には、それぞれ同じ参照数字が与えられる。繰返しの説明を省き、異なる図に示す構成間の違いに明確に言及する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】電気伝導性要素および温度プローブの例示的な測定温度プロファイルを示す図である。
図2】先行技術のコンタクトアセンブリを示す図である。
図3】コンタクトハウジングのない本発明によるコンタクトアセンブリの第1の構成を示す図である。
図4図3のコンタクトアセンブリの分解図である。
図5】少なくとも1つの電気伝導性要素の温度を検出するための本発明によるアセンブリの概略図である。
図6図6a~図6cは、本発明による熱導体の異なる構成の断面図である。
図7】それぞれ定常状態においてシミュレートした温度差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、先行技術のアセンブリ1の例示的な測定温度プロファイル5を示す。図中、温度Tが時間tに対してプロットされており、示される温度Tの範囲は20℃~120℃、時間tの範囲は0~100分である。
【0047】
点線は、参照数字5aで特徴付けられた周囲温度の温度プロファイルを表す。破線は、2つの温度プロファイル5を表し、これらは2つの電気伝導性要素7(図2参照)の温度Tの推移を説明し、参照数字5cで特徴付けられている。2つの温度プロファイル5cは互いにわずかにのみ異なり、これは構成および/または測定中に起こり得る実験偏差に関連する偏差(ずれ)によるものであり得る。
【0048】
実線は温度プローブ9の温度プロファイル5を特徴付け、この温度プロファイルは参照数字5sで示される。
【0049】
図1において、先行技術の解決策の欠点が明らかになる。一方で、温度プロファイル5c、5s間の温度差ΔTが見られ、これは図示した測定において約15Kである。さらに、温度プロファイル5sは温度プロファイル5cに対して時間的に遅れており、これは、例えば図1に遅延時間Δtで表される。
【0050】
例えば、電気伝導性要素7は約16分後に80℃の温度Tに到達するが、温度プローブは約30分後にならないとこの温度に到達しない。したがって、先行技術の解決策により電気伝導性要素7の温度を適時かつ正確に判定することは不可能である。
【0051】
本開示中で、用語「適時」は瞬時を意味するものと理解すべきではない。測定する予定の物体の熱を温度プローブに伝達しなければならないため、温度測定は常にある時間遅延に関連付けられる。この伝達および特にこの伝達が行われる時間枠は、異なるパラメータ、例えば、電気伝導性要素と温度プローブとの温度差、2つの要素間の熱伝導性、温度プローブの比熱容量などに応じて決まる。
【0052】
図1に示す測定は、10~20分の遅延時間Δtが時々生じ得ることを示す。そのような遅延時間Δtを根拠とすると、1~2分の遅延時間Δtを伴う温度測定を確かに適時と表現することができる。
【0053】
さらに、正確に判定された温度とは、1/10℃まで正確な、高精度の温度の判定と理解すべきではなく、±5℃の精度を有する測定であると理解すべきである。
【0054】
図2は、先行技術の少なくとも1つの電気伝導性要素7の温度Tを検出するための関連するアセンブリ1を示す。
【0055】
アセンブリ1は、一部透視的に描かれ、図示した構成において、コンタクトアセンブリ11内で使用するように設けられている。この場合、アセンブリ1は、二次掛止要素15のセンサレセプタクル13に受容される。
【0056】
アセンブリ1は、例えばプリント回路基板19(PCB)として構成可能な回路基板17を備え、図示した構成において、PCB19に機械的かつ電気的に接続された2つの温度プローブ9をさらに備える。アセンブリ1は、評価ユニット21、記憶ユニット23、ならびにPCB19およびPCB19に取り付けられる要素(例えば温度プローブ9)に接触するための接触領域25をさらに備えることができる。接触領域25を介して、PCB19は、例えば、温度プローブ9により測定された温度Tを表す値(図示せず)を提示することができる。
【0057】
したがって、PCB19は二次掛止要素15に受容され、前記二次掛止要素15は、コンタクトアセンブリ11のコンタクトハウジング27に配置および/または固定される。コンタクトアセンブリ11は、(図示の通り)ソケット29またはプラグ31(図示せず)であってよく、例えば充電ソケットおよび充電プラグの形で、電動車両の分野において使用できることが好ましい。そのような適用において、そのようなアセンブリにより、1つまたは複数の電気伝導性要素の温度を測定またはモニタすることができる。
【0058】
図3および図4は、本発明によるアセンブリ1を2つの電気伝導性要素7および二次掛止要素15に関連して、取付け状態33(図3)または分解図(図4)で示す。図5は、本発明によるアセンブリ1を電気伝導性要素7のみに関連して示す。取付け状態33において、二次掛止要素15は、熱導体37がコンタクトレセプタクル55に当接する、または前記コンタクトレセプタクル55と重なる位置34にある。
【0059】
これらの図において、二次掛止要素15および/またはPCB19も一部透視的に描かれて、下面35(図5と比較)に配置された温度プローブ9が見えるようになっている。
【0060】
図示したアセンブリ1は、PCB19とともに、電気絶縁性かつ熱伝導性の材料39、例えばシリコーン41、好ましくはいわゆる高充填シリコーン43を含む2つの熱導体37を備える。これらの材料39、41は、好ましくは500V超、さらに好ましくは1000V超の絶縁破壊電圧40を有する。これらの材料39、41を、熱導体37の1つの拡大図に示す微粒子47と混合する。
【0061】
熱導体37は弾性的かつ可逆的に変形可能であるため、弾性45を有する。
【0062】
熱導体37は、陰影で示す支承面49をさらに備え、図示した支承面49は曲率51を有する。図示した支承面49は凹状に構成されている。
【0063】
取付け状態33で、熱導体37の支承面49は、概略的に示す凹部53に位置する。この凹部53は、センサレセプタクル13(破線で示す)を二次掛止要素15のコンタクトレセプタクル55に接続し、図示した電気伝導性要素7をこのコンタクトレセプタクル55に挿入することができる。したがって、取付け状態33で、熱導体37の支承面49はコンタクトレセプタクル55に当接して、または前記コンタクトレセプタクル55と重なって組み立てられるため、支承面49がそれぞれの電気伝導性要素7の測定点57に寄りかかり、かつその弾性45(少なくとも支承面49がこの弾性45を有する)によって測定点57にぴったりと寄りかかり、空隙(図示せず)の発生を最小限にする。熱導体37がその支承面49で測定点57に寄りかかる様子が、図5にも示される。
【0064】
熱導体37は、少なくとも1つの温度プローブ9を受容するためのスロット59をさらに有する。スロット59は、PCB19(図5参照)の幅61に略対応する幅61を有することができる。
【0065】
さらに、スロット59から支承面49に平行な方向で熱導体37の本体内に延びる溝63が設けられる。PCB19に取り付けられた温度プローブ9をこの溝で受容することができる。溝63の形状およびその端部65で受容される温度プローブ9も、図5に概略的に示される。
【0066】
したがって、PCB19が熱導体37に受容されると、前記熱導体37は、温度プローブ9、および図示した構成では、さらにPCB19の一部を少なくとも三面から囲むため、沿面距離が大幅に増加し、電気伝導性要素7がPCB19の要素から電気絶縁される。回路基板17またはPCB19の少なくとも1つの部分18を、熱導体37に差し込むことができる。対応する熱導体37に差し込まれる2つの部分18が図3に示される。
【0067】
本発明によるアセンブリ1のさらなる構成において、熱導体37は、図5に示すように、PCB19で終端するのではなく、前記PCB19を完全に囲むことができる。そのような構成では、接触領域25のみにアクセスすることができる。このように完全に囲むことは、PCB19が、少なくとも1つの温度プローブ9などの電気要素とともに、腐食性ガスまたは液体などの外部環境の影響から保護されるという利点を有する。そのような構成の熱導体が図6cに示される。
【0068】
図7は、印加される電流Iに応じてシミュレートした(FEM)温度上昇ΔTを示す。温度上昇ΔTのシミュレートした値はそれぞれ定常状態で、すなわち時間に関係なく判定される。シミュレーションは、両側に70mmの断面および90マイクロオームの全抵抗を有する電気伝導性要素7を想定して行った。室温は30℃を想定した。
【0069】
この図においても、電気伝導性要素7の温度プロファイル5c(〇印付き)と温度プローブ9の温度プロファイル5sとの明確な温度差ΔTを認めることができる。
【0070】
電流が約300Aの場合、本発明による熱導体37を使用することより、温度差ΔTを18Kから約6Kまで低減させることができる。熱導体37により得られた温度プロファイル5hは、×印付きの線で描かれる。この温度プロファイル5hを、温度プロファイル5sと同様に、非常に少ない誤差で温度プロファイル5cを検出するように参照することができる。
【0071】
第2の温度差ΔTを、例えば熱導体37の材料のさらなる最適化により、さらに低減させることができる。
【0072】
図6a~図6cは、本発明による熱導体37の異なる構成の断面図である。3つの構成すべてがスロット59の中央の断面で示され、図6cに示す構成では、受容容積67を説明することができる。
【0073】
さらに、図示したすべての構成が支承面49を有し、この支承面49は半径69を有して凹状に形成される。この半径69は、対応する電気伝導性要素7の測定点57の半径69に対応することが有利である。
【0074】
図4に関連し、対称軸71に関して鏡映関係にある第2の熱導体37を設けてもよいことが容易に明らかである。対称軸71は図6aに例としてのみ描かれる。
【0075】
図6aおよび図6bの構成は、スロット59に溝63を有し、この溝63は、支承面49の方向で端部5まで延びる。PCB19から図の平面内へ突出する温度プローブを、この溝63に沿って最終位置73(破線)まで受容することができる。最終位置73には、例えば、取付け状態33で到達する。
【0076】
図6aの熱導体37の1つの本体75は、シリコーン41、特に充填シリコーン43から完全に構成される。本体75は、さらなる構成において、電気絶縁性かつ熱伝導性であれば他の材料を含んでいてもよい。部分輪郭77(破線)は、二次掛止要素15のセンサレセプタクル13と相補的であるように構成される。部分輪郭77の一部は測定点57と相補的であってもよい。
【0077】
スロット59の形状は、他の構成において他の形状を有していてもよく、例えば、円形、矩形、または三角形であってもよい。特に、スロット59の形状は、PCB19の形状に適合し、すなわち、PCB19の形状と相補的であるように形成される。
【0078】
図6bの熱導体37の構成が有する本体75は、外殻79と、この外殻79に受容されるさらなる熱伝導性媒体81とを備える。外殻79は電気絶縁性かつ熱伝導性の材料39を含み、さらなる熱伝導性媒体81は、必須ではないが、電気絶縁性であることが好ましい。外殻79が十分に高い絶縁破壊電圧を有し、したがって、電気伝導性要素7の電気回路とPCB19の電気回路とを互いに確実に電気的に分離する限り、電気伝導性媒体をさらなる熱伝導性媒体81として使用してもよい。さらなる技術的特徴および機能に関し、図6bに示す構成は図6aに示す構成に対応する。
【0079】
図6cは、電気絶縁性かつ熱伝導性の材料39が、少なくとも表示した温度プローブ9の領域でPCB19を完全に囲む、熱導体37の構成を示す。材料39は、次いで温度プローブ9を含むPCB19を完全に取り囲む。この温度プローブ9は、図の平面において断面で描かれたPCB19の下面に位置する。これにより、PCB19および特に温度プローブ9の化学的影響が防止される。
【0080】
図6cに示す熱導体37の構成を、特に一体として、第2の温度プローブ9を取り囲むように構成してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 アセンブリ
3 温度
5 温度プロファイル
5a 周囲温度の温度プロファイル
5c 電気伝導性要素の温度プロファイル
5h 熱導体による温度プロファイル
5s 温度プローブの温度プロファイル
7 電気伝導性要素
9 温度プローブ
11 コンタクトアセンブリ
13 センサレセプタクル
15 二次掛止要素
17 回路基板
18 部分
19 プリント回路基板(PCB)
21 評価ユニット
23 記憶ユニット
25 接触領域
27 コンタクトハウジング
29 ソケット
31 プラグ
33 取付け状態
34 位置
35 下面
37 熱導体
39 電気絶縁性かつ熱伝導性の材料
40 絶縁破壊電圧
41 シリコーン
43 高充填シリコーン
45 弾性
47 微粒子
49 支承面
51 曲率
53 凹部
55 コンタクトレセプタクル
57 測定点
59 スロット
61 幅
63 溝
65 端部
67 受容容積
69 半径
71 対称軸
73 最終位置
75 本体
77 部分輪郭
79 外殻
81 さらなる熱伝導性媒体
Δt 遅延時間
ΔT 温度差
t 時間
T 温度
I 電流
ΔT 温度上昇
ΔT 第2の温度差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7