(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】押下操作検出装置および押下操作検出方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20230403BHJP
【FI】
G06F3/041 522
G06F3/041 600
(21)【出願番号】P 2019108091
(22)【出願日】2019-06-10
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】須藤 俊一
【審査官】▲高▼瀬 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-157268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによる操作部に対する接触を検出する接触検出部と、
上記ユーザによる上記操作部に対する押下量を検出する押下量検出部と、
上記押下量検出部により逐次検出される押下量の平滑化処理を行う平滑化処理部と、
上記操作部に対する接触および押下量に基づいて、上記操作部に対する押下操作が行われたか否かを判定する押下操作判定部と、
上記ユーザによる上記操作部に対する接触の開始から当該接触が継続している間の経過時間である接触時間を検出する接触時間検出部と、
上記接触時間検出部により検出される上記接触時間に応じて、上記押下操作判定部による判定処理の内容を、短い時間に押下量が瞬時的に変動した場合における上記押下操作の検出されやすさが異なる内容に変更する判定制御部とを備え
、
上記判定制御部は、上記接触時間検出部により検出される上記接触時間が所定値より長い場合は、上記押下操作判定部が上記平滑化処理部により平滑化された押下量を用いて押下操作の判定を行う一方、上記接触時間が上記所定値より長くない場合は、上記押下操作判定部が上記押下量検出部により検出された押下量を用いて押下操作の判定を行うように、上記押下操作判定部による判定処理の内容を変更し、
上記押下操作判定部は、上記接触時間が上記所定値より長い場合は、上記平滑化処理部により平滑化された押下量が閾値に達したか否かに基づいて上記押下操作が行われたか否かを判定し、上記接触時間が上記所定値より長くない場合は、上記押下量検出部により検出された押下量が上記閾値に達したか否かに基づいて上記押下操作が行われたか否かを判定する
ことを特徴とする押下操作検出装置。
【請求項2】
押下操作検出装置の接触検出部が、ユーザによる操作部に対する接触を検出するステップと、
上記押下操作検出装置の押下量検出部が、上記ユーザによる上記操作部に対する押下量を検出するステップと、
上記押下操作検出装置の平滑化処理部が、上記押下量検出部により逐次検出される押下量の平滑化処理を行うステップと、
上記押下操作検出装置の接触時間検出部が、上記ユーザによる上記操作部に対する接触の開始から当該接触が継続している間の経過時間である接触時間を検出するステップと、
上記押下操作検出装置の判定制御部が、上記接触時間検出部により検出される
上記接触時間が所定値より長い場合は、押下操作判定部が上記平滑化処理部により平滑化された押下量を用いて押下操作の判定を行う一方、上記接触時間が上記所定値より長くない場合は、上記押下操作判定部が上記押下量検出部により検出された押下量を用いて押下操作の判定を行うように、上記押下操作判定部による判定処理の内容を変更するステップと、
上記押下操作検出装置の上記押下操作判定部が、
上記接触時間が上記所定値より長い場合は、上記平滑化処理部により平滑化された押下量が閾値に達したか否かに基づいて上記押下操作が行われたか否かを判定し、上記接触時間が上記所定値より長くない場合は、上記押下量検出部により検出された押下量が上記閾値に達したか否かに基づいて上記押下操作が行われたか否かを判定するステップとを有する
ことを特徴とする押下操作検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押下操作検出装置および押下操作検出方法に関し、特に、操作部への接触および押下量により押下操作を検出するように成された押下操作検出装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タッチパネル付きディスプレイに表示されたGUI(Graphical User Interface)等をユーザが操作した際に、タッチパネルへの接触に加えて押下量を検出し、押下量が閾値を超えたことを検出したときにそのGUIが押下操作されたと判定するようにしたものが知られている。押下量の検出を押下操作の有無の判定に追加することで、ユーザに確実な押下操作を要求することができる。
【0003】
ところで、ユーザがタッチパネルを操作している際に、電磁ノイズや外来振動ノイズなどの影響により、センサにより検出される押下量が瞬時的に大きな値となることがある。ノイズが発生して瞬時的に大きな値となった押下量が閾値を超えると、ユーザによる押下量が実際にはまだ閾値に達していないにもかかわらず、押下操作が行われたと誤判定されてしまう。従来、このような問題を回避するために、MAF(Moving Average Filter)などのLPF(Low pass Filter)を設け、センサにより逐次検出される押下量を移動平均して平滑化することにより、ノイズの影響を低減化することが行われている。
【0004】
図6は、ノイズによる押下操作の誤検出の発生とMAFによる対策について説明するための模式図である。
図6において、横軸は経過時間、縦軸は押下量をそれぞれ示している。
図6は、タッチパネルへの押下操作が開始された後、押下力が徐々に強くされていった状態を示している。ここでは説明を簡単にするため、ユーザが時間の経過と共に一定の割合で押下力を強くしていった(一定の割合で押下量が増えていく)ものとする。
【0005】
図6に示す例では、ユーザがタッチパネルへの押下力を徐々に強くしていって押下量が徐々に大きくなっていく過程で、2回のノイズが発生している。MAFにより移動平均処理を行わない場合、2回目に発生したノイズの影響を受けて瞬時的に大きな値となった押下量が閾値を超え、この時点で押下操作が行われたと誤判定されてしまう。これに対し、移動平均処理を行っている場合は、2回目のノイズの影響を受けて押下量の検出値が瞬時的に閾値より大きな値となっても、移動平均により平滑化された押下量は閾値を超えないため、この時点で押下操作が行われたと誤判定されてしまうことを回避することができる。
【0006】
なお、特許文献1には、ノイズの影響によるタッチ操作の誤検出を防止するようになされたタッチ操作検出装置が開示されている。すなわち、特許文献1に記載のタッチ操作検出装置では、タッチパネルへの接触位置から検出した移動距離と接触荷重とが所定の関係を満たしている場合に、操作面への接触をタッチ操作として検出する。このようにすれば、ノイズなどを検知した場合は、移動距離と接触荷重とが所定の関係を満たさないので、タッチ操作として誤検出されることがなくなる。
【0007】
また、所定の処理を行うための閾値を複数設定し、タッチパネルに対する押圧を多段階で検出可能になされた電子機器において、押圧量が増加するに従って閾値の差が順次小さくなるように複数の閾値を設定するようにしたものも知られている(例えば、特許文献2参照)。このようにすれば、上位の段階の押圧を検出するまでにかかるユーザの負担を軽減でき、かつ、ユーザが意図せずにタッチパネルに軽く触れただけで押圧が一気に複数段階で検出されてしまうといった誤操作の発生も低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-131014号公報
【文献】特開2013-12186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した通り、センサにより逐次検出される押下量の移動平均をとることにより、ノイズの影響を受けてセンサからの出力値が大きく変動して瞬時的に閾値より大きな値となっても、その時点で押下操作が行われたと誤判定されてしまうことを回避することができる。しかしながら、
図7に示すように、ユーザが比較的短い時間の間にタッチパネルを強く押下する操作(いわゆるタップ操作)を行った場合に、センサから出力される押下量の値が閾値より大きな値となっても、移動平均処理された押下量が閾値を超えないため、タップ操作が行われたことを検出できない場合があるという問題があった。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、比較的長い時間をかけて押下力を徐々に強めていく押下操作時に、ノイズの影響を受けた押下量の瞬時的な変動により押下操作が誤検出されることを抑制するとともに、比較的短い時間の間に強く押下する押下操作時に、押下操作が未検出となることを抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために、本発明では、ユーザによる操作部に対する接触および押下量に基づいて、操作部に対する押下操作が行われたか否かを判定する際に、ユーザによる操作部に対する接触の開始から当該接触が継続している間の経過時間である接触時間に応じて、押下量に基づく判定処理の内容を、短い時間に押下量が瞬時的に変動した場合における押下操作の検出されやすさが異なる内容に変更するようにしている。特に本発明では、接触時間が所定値より長い場合は、平滑化された押下量を用いて押下操作の判定を行う一方、接触時間が所定値より長くない場合は、押下量を用いて押下操作の判定を行うように、押下操作判定の判定処理の内容を変更し、接触時間が所定値より長い場合は、平滑化された押下量が閾値に達したか否かに基づいて押下操作が行われたか否かを判定し、接触時間が所定値より長くない場合は、押下量が閾値に達したか否かに基づいて押下操作が行われたか否かを判定するようにしている。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成した本発明によれば、ユーザによる操作部に対する接触時間に応じて、短い時間における押下量の瞬時的な変動に反応して押下操作が検出されやすくなるような判定処理に変更したり、押下量の瞬時的な変動に反応して押下操作が検出されにくくなるような判定処理に変更したりすることができる。これにより、本発明によれば、比較的長い時間をかけて押下力を徐々に強めていく押下操作時に、ノイズの影響を受けた押下量の瞬時的な変動により押下操作が誤検出されることを抑制するとともに、比較的短い時間の間に強く押下する押下操作時に、押下操作が未検出となることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態による押下操作検出装置を適用した車載装置の構成例を模式的に示す図である。
【
図2】本実施形態による押下操作検出装置を含む演算処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態の押下操作検出装置による押下操作の検出動作例を模式的に示す図である。
【
図4】本実施形態による押下操作検出装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態の押下操作検出装置による押下操作の他の検出動作例を模式的に示す図である。
【
図6】ノイズによる押下操作の誤検出の発生とその対策について説明するための模式図である。
【
図7】従来のタップ操作検出時の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態による押下操作検出装置を適用した車載装置の構成例を模式的に示す図である。
図1に示すように、車載装置は、本実施形態による押下操作検出装置を含む演算処理装置100、タッチパネル101、表示パネル102および押下力検出センサ103を備えて構成される。
【0015】
タッチパネル101は、特許請求の範囲の操作部に相当するものであり、車両に搭乗しているユーザが触れた位置を検知し、その接触位置を示す接触位置情報を出力する。表示パネル102は、演算処理装置100により生成される画像を表示するものであり、例えば液晶パネルまたは有機ELパネル等により構成される。押下力検出センサ103は、ユーザがタッチパネル101を押圧したときの押下力を検出するものであり、押下力に応じて変動する押下量を示す押下量情報を出力する。
【0016】
図1に示すように、最上層にタッチパネル101が配置され、タッチパネル101の下層に表示パネル102が配置され、表示パネル102の下層に押下力検出センサ103が配置されている。ユーザがタッチパネル101の所望の位置を軽く接触すると、その接触位置がタッチパネル101により検出される。また、ユーザがタッチパネル101の所望の位置を強く接触する(押下する)と、その押下力がタッチパネル101から表示パネル102を介して押下力検出センサ103に伝達され、接触位置がタッチパネル101により検出されるとともに、押下力(押下量)が押下力検出センサ103により検出される。
【0017】
なお、
図1に示したタッチパネル101、表示パネル102および押下力検出センサ103の構成および配置は一例に過ぎず、これに限定されるものではない。例えば、表示パネル102をタッチパネル101および押下力検出センサ103よりも若干小さく構成し、表示パネル102の外側においてタッチパネル101と押下力検出センサ103とを連結するようにすることで、ユーザがタッチパネル101を押下したときの押下力がタッチパネル101から表示パネル102を介さずに押下力検出センサ103にダイレクトに伝達されるように構成してもよい。
【0018】
タッチパネル101により検出された接触位置情報および押下力検出センサ103により検出された押下量情報は、演算処理装置100に供給される。演算処理装置100は、タッチパネル101から供給される接触位置情報および押下力検出センサ103から供給される押下量情報に基づいて、押下操作が行われたか否かを判定し、押下操作が行われたと判定した場合に、接触位置に表示されているGUIの内容に応じた所定の処理を実行する。
【0019】
図2は、本実施形態による押下操作検出装置を含む演算処理装置100の機能構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態による演算処理装置100は、その機能構成として、接触検出部11、押下量検出部12、押下操作判定部13、判定制御部14、平滑化処理部15、接触時間検出部16、処理実行部17および表示制御部18を備えている。このうち、接触検出部11、押下量検出部12、押下操作判定部13、判定制御部14、平滑化処理部15および接触時間検出部16により、本実施形態による押下操作検出装置が構成される。
【0020】
上記各機能ブロック11~18は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック11~18は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0021】
接触検出部11は、タッチパネル101から供給される接触位置情報に基づいて、ユーザによるタッチパネル101に対する接触を検出する。また、接触検出部11は、タッチパネル101から供給される接触位置情報に基づいて、タッチパネル101への接触位置も検出する。タッチパネル101に対する接触の有無に関する情報は押下操作判定部13および接触時間検出部16により利用され、接触位置に関する情報は処理実行部17により利用される。
【0022】
押下量検出部12は、押下力検出センサ103から供給される押下量情報に基づいて、ユーザによるタッチパネル101に対する押下量を逐次検出する。タッチパネル101に対する押下量に関する情報は、押下操作判定部13により利用される。
【0023】
平滑化処理部15は、押下量検出部12により逐次検出される押下量の平滑化処理を行う。平滑化処理は、押下力検出センサ103により検出される押下力の値が瞬時的に大きく変動するようなノイズを除去するための処理であり、例えばMAFにより構成される。すなわち、平滑化処理部15は、押下量検出部12により逐次検出される押下量を移動平均処理することにより、ノイズの影響を低減化する。なお、MAFは平滑化処理の一例であり、これに限定されるものではない。例えば、MAF以外のLPF処理を行うようにしてもよい。
【0024】
接触時間検出部16は、タッチパネル101から供給される接触位置情報に基づいて、ユーザによるタッチパネル101に対する接触の開始から当該接触が継続している間の経過時間(以下、これを接触時間という)を検出する。すなわち接触時間検出部16はタイマ機能を有し、タッチパネル101から接触位置情報の供給が開始されたときにタイマの計時動作を開始し、タッチパネル101から接触位置情報の供給が終了したときにタイマの計時動作を停止する。タイマの計時動作を開始してから終了するまでの間、検出される接触時間は徐々に増えていく。
【0025】
押下操作判定部13は、接触検出部11により検出されるタッチパネル101に対する接触と、押下量検出部12により検出されるタッチパネル101に対する押下量または平滑化処理部15により平滑化された押下量の何れかとに基づいて、タッチパネル101に対する押下操作が行われたか否かを判定する。ここでいう押下操作とは、タッチパネル101を軽く接触するだけでなく、閾値として設定された押下量に達するまで強くタッチパネル101を押下する操作をいう。すなわち、押下操作判定部13は、接触検出部11によりタッチパネル101に対する接触が検出され、かつ、押下量検出部12または平滑化処理部15より出力される押下量が閾値に達したか否かに基づいて、タッチパネル101に対する押下操作が行われたか否かを判定する。
【0026】
判定制御部14は、接触時間検出部16により検出される接触時間に応じて、押下操作判定部13による判定処理の内容を、短い時間に押下量が瞬時的に変動した場合における押下操作の検出されやすさが異なる内容に変更する。具体的には、判定制御部14は、接触時間検出部16により検出される接触時間が所定値より長い場合(タイマによる計時動作が、所定値で示される時間より長く続く場合)は、平滑化処理部15により平滑化処理された押下量を用いて押下操作の判定を行う一方、接触時間が所定値より長くない場合は、押下量検出部12により検出された押下量を用いて押下操作の判定を行うように、押下操作判定部13による判定処理の内容を変更する。
【0027】
これにより、押下操作判定部13は、タッチパネル101への接触時間が所定値より長い場合(接触時間が所定値に達するまで、接触検出部11によるタッチパネル101への接触の検出が続いた場合)は、平滑化処理部15により平滑化処理された押下量が閾値に達したか否かに基づいて、押下操作が行われたか否かを判定する。一方、タッチパネル101への接触時間が所定値より長くない場合は、押下量検出部12により検出された押下量が閾値に達したか否かに基づいて、押下操作が行われたか否かを判定する。
【0028】
なお、押下操作判定部13は、初期状態では、押下量検出部12により検出された押下量(平滑化処理部15により平滑化されていない押下量)を用いて押下操作の判定を行う。そして、タッチパネル101への接触が接触検出部11により検出された後、接触時間検出部16により検出される接触時間が所定値より長くなった場合に、判定制御部14からの制御に従って、平滑化処理部15により平滑化された押下量に基づいて押下操作の判定を行うように、判定処理の内容を変更する。
【0029】
一般に、ユーザによるタッチパネル101への接触が、接触時間が所定値に達するまで続いている場合は、ユーザが比較的長い時間をかけてタッチパネル101への押下力を徐々に強くしていくような押下操作を行っている状態に相当する。よって、この場合に判定制御部14は、ノイズに起因して生じる押下量の瞬時的な変動に反応して押下操作が検出されにくくなるように、平滑化処理部15により平滑化された押下量を用いて押下操作の判定を行うように押下操作判定部13を制御する。
【0030】
一方、ユーザによるタッチパネル101への接触が、接触時間が所定値に達する前に終わった場合は、ユーザが比較的短い時間の間にタッチパネル101を強く押下する操作(いわゆるタップ操作)を行った状態に相当する。よって、この場合に判定制御部14は、短い時間に押下量が瞬時的に変動した場合における押下操作が検出されやすくなるように、押下量検出部12により検出された押下量(平滑化処理部15により平滑化されていない押下量)を用いて押下操作の判定を行うように押下操作判定部13を制御する。
【0031】
押下操作判定部13による判定処理の内容を切り替える際の判定の基準として用いる接触時間の所定値は、短い時間の間に押下量が閾値を超えるようなタップ操作について、タッチパネル101への接触の開始から終了までの接触時間が標準的にどの程度の値になるかという観点から試行的に取得した情報に基づいて、適切な値にあらかじめ設定されている。
【0032】
処理実行部17は、タッチパネル101に対する押下操作が行われたと押下操作判定部13により判定された場合に、タッチパネル101への接触位置に表示されているGUIに対応した所定の処理を実行する。表示制御部18は、処理実行部17による所定の処理の実行結果に基づいて、処理実行部17により生成された画像を表示パネル102に表示させるように制御する。これにより、タッチパネル101に対する押下操作に応じて、表示パネル102に表示される画像が切り替えられる。
【0033】
図3は、本実施形態の押下操作検出装置による押下操作の検出動作例を模式的に示す図である。
図3(a)は、タッチパネル101への接触時間が所定値よりも長くなるような押下操作が行われている場合の動作を示し、
図3(b)は、タッチパネル101への接触時間が所定値よりも短くなるような押下操作(タップ操作)が行われている場合の動作を示す。
図3において、横軸は経過時間、縦軸は押下量をそれぞれ示している。
【0034】
図3(a)は、時点t1においてタッチパネル101への接触が開始され、押下力が徐々に強くされていった状態を示している。ここでは説明を簡単にするため、グラフG1に示すように、ユーザが時間の経過と共に一定の割合で押下力を強くしていった(一定の割合で押下量が増えていく)ものとする。グラフG2は、グラフG1のように押下量検出部12により逐次検出される押下量に対して平滑化処理部15により移動平均演算を行った結果を模式的に示している。
【0035】
図3(a)に示す例では、時点t1から計時されるタッチパネル101への接触時間が所定値Δtを超えて長く続いている。そして、このようにユーザがタッチパネル101への押下力を徐々に強くしていって押下量が徐々に大きくなっていく過程で、時点t2,t3においてそれぞれノイズが発生している。
図3(a)に示すように、タッチパネル101への接触時間が所定値Δtよりも長くなっている場合は、接触時間が所定値Δtを超えた後における押下操作判定部13による押下操作の判定処理が、グラフG1(押下量検出部12により検出される押下量)ではなく、グラフG2(平滑化処理部15により平滑化された押下量)に基づいて行われる。そのため、時点t3において発生した2回目のノイズの影響を受けて押下量の検出値が瞬時的に閾値より大きな値となっても、平滑化された押下量は閾値を超えないため、時点t3で押下操作が行われたと誤判定されてしまうことを回避することができる。
【0036】
なお、
図3(a)のようにユーザがタッチパネル101への押下力を徐々に強くしていく押下操作を行っている際に、接触時間が所定値Δtを超える前は、グラフG1に示す押下量検出部12により検出される押下量に基づいて押下操作判定部13による押下操作の判定処理が行われる。ここで、接触時間が所定値Δtを超える前の時点でノイズが発生し、押下量検出部12により検出される押下量が瞬時的に変動することがあっても、閾値を超えることは殆どない。そのため、接触時間が所定値Δtを超える前の時点において、ノイズの影響を受けて押下操作が行われたと誤判定されてしまうことは殆どないと言える。
【0037】
一方、
図3(b)は、時点t1においてタッチパネル101への接触が開始され、短時間の間に押下力が閾値を超えるまで強くなって時点t4でピークとなった後、押下力が弱くなっていって時点t5でタッチパネル101への接触が検出されなくなった状態を示している。グラフG3は、この一連の押下量の変化を模式的に示したものであり、押下量検出部12により検出される押下量を示している。グラフG4は、グラフG3のように押下量検出部12により逐次検出される押下量に対して平滑化処理部15により移動平均演算を行った結果を模式的に示している。
【0038】
この
図3(b)に示す例では、時点t1から計時されるタッチパネル101への接触時間が所定値に達する前に、タッチパネル101への接触がなくなっている。このため、押下操作判定部13による押下操作の判定処理が、グラフG4(平滑化処理部15により平滑化された押下量)ではなく、グラフG3(押下量検出部12により検出される押下量)に基づいて行われる。そのため、平滑化された押下量が閾値を超えないような場合であっても、平滑化されていない押下量が閾値を超えるため、押下操作(タップ操作)が行われたことを検出することができる。
【0039】
図4は、以上のように構成した押下操作検出装置の動作例を示すフローチャートである。
図4に示すフローチャートは、車載装置の電源がオンとなったときに開始する。なお、電源オン直後の初期状態において、押下操作判定部13は、押下量検出部12により検出された押下量を用いて押下操作の判定を行うように設定されている。
【0040】
まず、接触検出部11は、タッチパネル101から供給される接触位置情報の有無に基づいて、ユーザによるタッチパネル101に対する接触が検出されたか否かを判定する(ステップS1)。タッチパネル101に対する接触が検出されていない場合は、ステップS1の判定が繰り返し実行される。タッチパネル101に対する接触が検出された場合、接触時間検出部16は、タイマによる接触時間の計時動作を開始する(ステップS2)。また、押下量検出部12は、タッチパネル101に対する押下量の検出動作を開始する(ステップS3)。
【0041】
そして、判定制御部14は、接触時間検出部16により検出される接触時間が所定値より長くなったか否かを判定する(ステップS4)。接触時間が所定値よりまだ長くなっていない場合、押下操作判定部13は、押下量検出部12により検出される押下量が閾値より大きくなったか否かを判定する(ステップS5)。押下量が閾値よりもまだ大きくなっていない場合、処理はステップS4に戻り、接触時間の計時動作および押下量の検出動作を継続する。
【0042】
一方、タッチパネル101に対する押下量が閾値より大きくなったと押下操作判定部13により判定された場合、接触時間検出部16は接触時間の計時動作を停止してタイマをクリアし(ステップS6)、押下操作判定部13は押下操作が行われたことを検出する(ステップS7)。この場合は、タッチパネル101に対する接触時間が所定値より短い間に押下量が閾値に達するタップ操作が行われたことが押下操作判定部13により検出され、それをもって
図4に示すフローチャートの処理が終了する。
【0043】
上記ステップS4において、タッチパネル101に対する接触時間が所定値より長くなったと判定制御部14により判定された場合、判定制御部14は、平滑化処理部15により平滑化された押下量を用いて押下操作の判定を行うように、押下操作判定部13の判定処理の内容を変更する(ステップS8)。また、接触時間検出部16は、接触時間の計時動作を停止してタイマをクリアする(ステップS9)。
【0044】
その後、押下操作判定部13は、押下量検出部12により検出される押下量が閾値より大きくなったか否かを判定する(ステップS10)。ここで、タッチパネル101に対する押下量が閾値より大きくなったと判定された場合、押下操作判定部13は押下操作が行われたことを検出する(ステップS7)。この場合は、タッチパネル101に対する押下力が徐々に強くなっていって接触時間が所定値を超えた後に押下量が閾値に達するような押下操作が行われたことが押下操作判定部13により検出され、それをもって
図4に示すフローチャートの処理が終了する。
【0045】
一方、タッチパネル101に対する押下量がまだ閾値より大きくなっていないと押下操作判定部13により判定された場合、接触検出部11は、タッチパネル101への接触が依然として検出されているか否かを判定する(ステップS11)。タッチパネル101への接触が接触検出部11により検出されている場合、処理はステップS10に戻り、押下量の検出動作を継続する。一方、タッチパネル101への接触が接触検出部11により検出されなくなった場合、押下操作判定部13による押下操作の検出はされず、
図4に示すフローチャートの処理が終了する。
【0046】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、ユーザによるタッチパネル101に対する接触および押下量に基づいて、タッチパネル101に対する押下操作が行われたか否かを判定する際に、ユーザによるタッチパネル101に対する接触の開始から当該接触が継続している間の経過時間である接触時間に応じて、押下操作判定部13における押下量に基づく判定処理の内容を、短時間に押下量が瞬時的に変動した場合における押下操作の検出されやすさが異なる内容(押下量検出部12により検出された押下量に基づく判定処理または平滑化処理部15により平滑化された押下量に基づく判定処理の何れか)に変更するようにしている。
【0047】
このように構成した本実施形態によれば、比較的長い時間をかけて押下力を徐々に強めていくような押下操作時に、平滑化処理部15により平滑化された押下量に基づく判定処理を行うことにより、ノイズの影響を受けた押下量の瞬時的な変動により押下操作が誤検出されることを抑制することができる。また、比較的短い時間の間に強く押下するような押下操作時に、押下量検出部12により検出された押下量に基づく判定処理を行うことにより、押下操作が未検出となることを抑制することができる。
【0048】
なお、上記実施形態にて説明した判定制御部14の制御内容は一例に過ぎず、本発明はこれに限定されない。例えば、判定制御部14は、接触時間検出部16により検出される接触時間が所定値より長い場合は第1の閾値を押下操作判定部13に設定し、接触時間が所定値より長くない場合は、第1の閾値よりも小さい第2の閾値を押下操作判定部13に設定することによって、押下操作判定部13の判定処理の内容を変更するようにしてもよい。
【0049】
この場合、押下操作判定部13は、どちらの閾値を用いる場合も、平滑化処理部15により平滑化された押下量に基づく判定処理を行う。すなわち、押下操作判定部13は、タッチパネル101に対する接触時間が所定値より長い場合は、平滑化処理部15により平滑化された押下量が第1の閾値に達したか否かに基づいて押下操作が行われたか否かを判定する。一方、タッチパネル101に対する接触時間が所定値より長くない場合、押下操作判定部13は、平滑化処理部15により平滑化された押下量が第2の閾値に達したか否かに基づいて押下操作が行われたか否かを判定する。
【0050】
ここで、押下操作判定部13は、初期状態では、第2の閾値を用いて押下操作の判定を行う。そして、タッチパネル101への接触が接触検出部11により検出された後、接触時間検出部16により検出される接触時間が所定値より長くなった場合に、判定制御部14からの制御に従って、第2の閾値に代えて第1の閾値を用いて押下操作の判定を行うように、判定処理の内容を変更する。
【0051】
図5は、このように押下操作判定部13の閾値を切り替える場合における押下操作の検出動作例を模式的に示す図である。
図5(a)は、タッチパネル101への接触時間が所定値よりも長くなるような押下操作が行われている場合の動作を示し、
図5(b)は、タッチパネル101への接触時間が所定値よりも短くなるような押下操作(タップ操作)が行われている場合の動作を示す。
図5(a)に示す第1の閾値は、
図3の例で説明した閾値と等しい。このため、
図5(a)に示す動作は、
図3(a)に示した動作内容と同じである。
【0052】
図5(b)において、押下量検出部12により検出される押下量の変化を示したグラフG3と、平滑化処理部15により平滑化された押下量の変化を示したグラフG4は、
図3(b)に示したものと同じである。
図5(b)において
図3(b)と異なるのは、第1の閾値よりも小さい第2の閾値の存在である。
図3(b)に示す例では、押下操作判定部13は、グラフG3のように押下量検出部12により検出される押下量が第1の閾値より大きくなったか否かに基づいて、押下操作の有無を判定していた。
【0053】
これに対し、
図5(b)に示す例では、押下操作判定部13は、グラフG4のように平滑化処理部15により平滑化された押下量が第2の閾値より大きくなったか否かに基づいて、押下操作の有無を判定する。このようにすれば、平滑化処理部15により平滑化された押下量が第1の閾値を超えないような場合であっても、第2の閾値を超えるため、押下操作(タップ操作)が行われたことを検出することができる。
【0054】
なお、押下操作判定部13は、タッチパネル101に対する接触時間が所定値より長い場合に、平滑化処理部15により平滑化された押下量が第1の閾値に達したか否かに基づいて押下操作が行われたか否かを判定する一方、タッチパネル101に対する接触時間が所定値より長くない場合に、押下量検出部12により検出される押下量(平滑化処理部15により平滑化されていない押下量)が第2の閾値に達したか否かに基づいて押下操作が行われたか否かを判定するようにしてもよい。ただし、ノイズの影響を受けて瞬時的に大きくなる押下量が第2の閾値を超えることがあり得るため、平滑化処理部15により平滑化された押下量を用いるのがより好ましい。
【0055】
上記実施形態では、操作部の一例としてタッチパネル101を用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、機械的な構造から成るハードウェアの押しボタンを操作部として用いるようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、押下操作の有無を判定する際に用いる閾値(第1の閾値および第2の閾値)が絶対値である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、タッチパネル101および押下力検出センサ103を含む押下検出構造が車両に搭載される場合において、当該押下検出構造がダッシュボード等に設置される構造によっては、押下力検出センサ103が車両の振動の影響を受けて押下力を検出したり、ユーザがタッチパネル101以外の周辺部分を押下することによって押下力検出センサ103が押下力を検出したりすることがある。すなわち、タッチパネル101が接触を検出していないにもかかわらず、押下力検出センサ103が押下力を検出することがある。この場合、タッチパネル101が接触を検出していないときに押下力検出センサ103により検出されている押下力(押下量)を基準として、その基準からの相対値を閾値として設定するようにしてもよい。
【0057】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0058】
11 接触検出部
12 押下量検出部
13 押下操作判定部
14 判定制御部
15 平滑化処理部
16 接触時間検出部
17 処理実行部
18 表示制御部
100 演算処理装置(押下操作検出装置を含む)
101 タッチパネル(操作部)
102 表示パネル
103 押下力検出センサ