(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 7/23 20060101AFI20230403BHJP
【FI】
E06B7/23 A
(21)【出願番号】P 2019154695
(22)【出願日】2019-08-27
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002996
【氏名又は名称】弁理士法人宮田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 知規
(72)【発明者】
【氏名】吉留 大介
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-308148(JP,A)
【文献】特開2020-148062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00- 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠と、戸と、タイト材とを備え、枠は、取付部を有し、タイト材は、ベース部と、ベース部の戸側に設けられ
外側に向けて伸びるひれ状のものであると共にその背面側に外側に開口する凹部を形成する戸当接部と、ベース部の取付部側に設けられて取付部に係合する被取付部と、ベース部の外側に延びる延長部とを備えるとともに、延長部と枠との間に
延長部と枠に各々接着される裏漏り防止部を有することを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非特許文献1に記載されるように、玄関等に設けられ、室内外空間を隔てるために用いられる建具がある。しかしながら、従来の建具は、風水害等により室外空間において水位が高まった際、枠と戸との間の隙間を通じて室外空間から室内空間に水が浸入してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「玄関ドア総合カタログ2013-2014(STJ0802A)」三協立山株式会社、2013年2月、p.894, 895
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記実情に鑑み、室内への水の浸入を確実に防止できる建具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のうち請求項1の建具は、枠と、戸と、タイト材とを備え、枠は、取付部を有し、タイト材は、ベース部と、ベース部の戸側に設けられ外側に向けて伸びるひれ状のものであると共にその背面側に外側に開口する凹部を形成する戸当接部と、ベース部の取付部側に設けられて取付部に係合する被取付部と、ベース部の外側に延びる延長部とを備えるとともに、延長部と枠との間に延長部と枠に各々接着される裏漏り防止部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1の発明によれば、建具は、戸側に戸当接部を備えるとともに、枠側に裏漏り防止部を有するタイト材を備えるため、タイト材の裏漏り防止部によって枠と戸との間の隙間が塞がれるので、枠と戸との間の隙間を通じて室外空間から室内空間に水が浸入してしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】(a)は建具を室外側から見た図であり、(b)は(a)のI-I線断面図、(c)は(b)の拡大図である。
【
図3】(a)は戸が開状態のときのタイト材を室内側から見た図であり、(b)(c)はそれぞれ(a)のB-B線断面図、C-C線断面図である。(d)は枠を室外側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。以下において戸先側、吊元側、室内側、室外側、内側及び外側とは、
図1(a)乃至(c)に示される通りとする。本発明の建具の使用場所や用途は特に限定されるものではないが、本実施形態に係る建具は玄関用のドアとして用いられるものとする。
【0009】
建具は、
図1(a)乃至(c)に示される通り、建物の開口部に設けられた枠1と、枠1の内周を閉鎖する戸2と、枠1に取り付けられ、枠1に沿って枠1と戸2との間に連続して配置されるタイト材3を備える。一般に、
図1及び
図2に示される通り、戸2の開閉をスムーズにするため、枠1と戸2との間には隙間が設けられており、よって、風水害等により室外側において水位が高まった浸水時においては、その隙間を通じて水Fが浸入する。以降、通常時とは浸水時以外のときを指す。
【0010】
枠1は、
図1(a)に示される通り、上枠10a、下枠10b、及び縦枠10c,10dで四周に組まれている。下枠10b及び縦枠10c,10dには、
図1(c)及び
図2に示される通り、各々に対するタイト材3の取り付けのために用いられる取付部11が、各々の長手方向に亘って戸2側の見付面に設けられている。
【0011】
取付部11は、
図1(c)及び
図2に示される通り、断面視コ字状のコ字状部111と、断面視鉤状の鉤状部112,112とを有しており、コ字状部111における開口部の両端に鉤状部112,112が位置する。鉤状部112,112は、各々、コ字状部111における開口部の端部から、それぞれ開口部を狭める方向に延びて形成されている。
【0012】
戸2は、
図1(a)に示される通り、ハンドル20を有し、ハンドル20に手が掛けられて室外側へ戸2が押し引きされることで、戸2は開けられて開状態となる。一方、室内側へ戸2が押し引きされることで、戸2は閉められて閉状態となる。戸2が閉状態のとき、
図1(c)及び
図2に示される通り、戸2の室内側面材21とタイト材3は当接する。
【0013】
タイト材3は、
図1(c)及び
図2に示される通り、枠1の取付部11における戸2側の見付面を覆うベース部31と、戸2が閉状態のときに戸2の室内側面材21と当接する戸当接部32と、枠1の取付部11と係合する被取付部33と、ベース部31から外側に延びて形成されている延長部34と、延長部34と枠1との間に裏漏り防止部35を有する。戸当接部32はベース部31及び延長部34に対して、
図1(c)及び
図2に示される通り、中間部30によって連続し、これらは一体成型されており、ベース部31及び延長部34と中間部30とによって、中空部300が形成されている。る。ベース部31と、被取付部33と、延長部34は、柔軟性を有するEPDMゴムからなり、戸当接部32と中間部30は、柔軟性及びクッション性を有するEPDMスポンジからなる。タイト材3全体の形状は、室外側から正面視すると、
図3(a)に示される通り、上側が開口したコ字状であり、よって、タイト材3は枠1に取り付けられたとき、下枠10bと、縦枠10c,10dのうちの下方部分とに、各々の長手方向に連続して配置される。
【0014】
ベース部31の戸2側には、
図1(c)及び
図2に示される通り、断面視略円弧状の戸当接部32が位置しており、ベース部31及び戸当接部32の各々の内側端部は、中間部30のうち、内周部30b,30c,30dの枠1側及び戸2側端部と各々接合されており、内周部30b,30c,30dは、下枠10b及び縦枠10c,10dの各々の長手方向に沿って設けられている。タイト材3の見込幅が大きいと、内周部30b,30c,30dの見込幅も大きくなり、戸2が開状態から閉状態となる際、戸当接部32は戸2と当接する面が大きくなる。
【0015】
戸当接部32は、戸2が開状態から閉状態となる際、戸2の室内側面材21に当接して枠1側へ押されて、戸2が開状態のときよりも、戸当接部32の位置が枠1側となるが、中空部300が存在することによるクッション性と、タイト材3の材質が有する柔軟性及びクッション性とにより、
図1(c)、
図2、及び
図3(a)に示される通り、中間部30の形状及び位置は保持される。よって、戸当接部32は戸が閉状態のときに室内側面材21に当接し更に密着する。浸水時においては、戸が閉状態のとき、戸当接部32のうち枠1側の面に対する、水Fの水圧により加わる力によって、戸当接部32は室内側面材21に圧着される。したがって、
図1(c)及び
図2に示される通り、戸2、タイト材3、及び室外空間で形成される空間S1は、戸当接部32によって室内空間と隔てられて閉塞される。
【0016】
一方、ベース部31の取付部11側には、
図1(c)及び
図2に示される通り、被取付部33が位置しており、被取付部33は、取付部11の鉤状部112,112に係合されるヒレ状部332,332を外側及び内側端部に各々有し、各々のヒレ状部332,332が鉤状部112,112に係合されることで、取付部11と被取付部33とが係合して、枠1にタイト材3が取り付けられている。
【0017】
また、ベース部31の外側端部には、
図1(c)及び
図2に示される通り、延長部34が形成されており、延長部34は、延長部34の内側端部から戸2側に延びて、中間部30と接合する脚部34aを有する。脚部34aは、
図3(b)(c)に示される通り、枠1のコーナー部分に沿う部分である、タイト材3の角部Pにおいては開口部となっているが、角部Pにおいても脚部34aが設けられてもよい。
【0018】
延長部34の枠1側の見付面と、枠1における戸2側の見付面である枠壁12との間には、
図1(c)及び
図2に示される通り、粘着性を有するシール材からなる裏漏り防止部35が、各々に接着されて設けられている。裏漏り防止部35は、枠1が工場出荷される時点においては枠壁12に貼付されており、延長部34と接着される部分は剥離材が貼付されている。建具の施工時において、その剥離材は剥がされ、裏漏り防止部35と延長部34とが接着される。
【0019】
裏漏り防止部35は、
図3(d)に示される通り、タイト材3と同様に、下枠10bと、縦枠10c,10dのうちの下方部分とにおいて、下枠10b及び縦枠10c,10dの各々の長手方向に亘って貼付されている。したがって、戸2が閉状態のとき、通常時においては、戸当接部32が戸2の室内側面材21に密着することで気密性に優れるとともに、浸水時においては、延長部34のうち戸2側の面に対する、水Fの水圧により加わる力によって、裏漏り防止部35の延長部34側の面にも力が加わり、裏漏り防止部35は枠1の枠壁12に圧着されることで水密性に優れる。よって、
図1(c)及び
図2に示される通り、枠1、タイト材3、及び室外空間で形成される空間S2は、裏漏り防止部35によって室内空間と隔てられて閉塞される。また、裏漏り防止部35は、延長部34のうち戸2側の面に加わる力によって、延長部34と圧着するので、延長部34の延出元であるベース部31、及びベース部31が有する被取付部33と、枠1の取付部11との間も、裏漏り防止部35によって室内空間と隔てられて閉塞される。
【0020】
このように構成した建具によれば、戸2が閉状態のとき、タイト材3は、戸2に密着する戸当接部32を備えるとともに、枠1に密着する裏漏り防止部35を有するので、戸2、タイト材3、及び室外空間で形成される空間S1は、戸当接部32によって室内空間と隔てられて閉塞され、かつ、枠1、タイト材3、及び室外空間で形成される空間S2は、裏漏り防止部35によって室内空間と隔てられて閉塞され、タイト材3によって枠1と戸2との間の隙間が塞がれるため、通常時においては気密性に優れるとともに、浸水時においては、水Fの水圧により加わる力によって、タイト材3は枠1及び戸2に圧着されるので、枠1と戸2との間の隙間を通じた室外空間から室内空間への水Fの浸入が防止でき、水密性に優れる。
【0021】
特に浸水時においては、タイト材3の延長部34の戸2側の面に対する水Fの水圧により加わる力によって、延長部34により裏漏り防止部35が枠1に圧着される力が働くので、延長部34の延出元であるベース部31、及び被取付部33と、枠1の取付部11との間も閉塞されて、枠1と戸2との間の隙間が塞がれるため、枠1と戸2との間の隙間を通じた室外空間から室内空間への水Fの浸入が防止でき、水密性に優れる。
【0022】
また、本発明の建具が備えるタイト材3の、縦枠10c,10dに沿って設けられている内周部30c,30dの見込幅は大きく、また、下枠10bに沿って設けられている内周部30bの見付幅も大きいので、戸当接部32と戸2との密着する面は十分に大きいため、通常時においては、枠1と戸2の間の気密性に優れるとともに、浸水時においては、水Fの水圧により加わる力によって、タイト材3は枠1及び戸2に圧着されるので、枠1と戸2との間の隙間を通じた室外空間から室内空間への水Fの浸入をより確実に防止でき、水密性に優れる。
【0023】
加えて、裏漏り防止部35は、枠1の工場出荷時点において、予め枠1に対して貼付し、タイト材3の延長部34に接着される面は剥離材が貼付しておくことができるものなので、建具の施工時においては剥離材を剥離し枠1に接着させるのみでよいため、施工が容易である。
【0024】
本発明は、上記の実施形態に限定されず、特許請求の範囲内であれば適宜変更することができる。例えば、建具はすべり出し窓や開き窓であってもよいし、タイト材は枠の全周に連続して取り付けられてもよく、タイト材の材質は耐水性を有したものであれば、EPDMゴム及びEPDMスポンジでなくてもよい。また、タイト材の裏漏り防止部は、延長部と一体成型されていてもよく、その場合、枠の工場出荷時においては、裏漏り防止部のうち枠に接着される面には剥離材が貼付され、建具の施工時においてはその剥離材を剥離し枠に接着させるのみでよいので、施工が容易であるとともに、枠と戸との間の隙間を塞ぎ、通常時においては気密性に優れるとともに、浸水時においては、水圧により加わる力によって、タイト材は枠及び戸に圧着されるため、枠と戸との間の隙間を通じた室外空間から室内空間への水の浸入が防止でき、水密性に優れる。
【符号の説明】
【0025】
1 枠
11 取付部
2 戸
3 タイト材
31 ベース部
32 戸当接部
33 被取付部
34 延長部
35 裏漏り防止部