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特許7254666軟包装袋の充填密閉方法および真空排気装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】軟包装袋の充填密閉方法および真空排気装置
(51)【国際特許分類】
   B65B 3/18 20060101AFI20230403BHJP
   B65B 3/04 20060101ALI20230403BHJP
   B65B 55/24 20060101ALI20230403BHJP
   B65B 31/04 20060101ALN20230403BHJP
【FI】
B65B3/18
B65B3/04
B65B55/24
B65B31/04 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019162933
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2021041939
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】廣谷 喜与士
(72)【発明者】
【氏名】河田 学
(72)【発明者】
【氏名】山田 千尋
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-328601(JP,A)
【文献】特開2005-145462(JP,A)
【文献】特開平01-279018(JP,A)
【文献】特開平06-047226(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0137727(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 3/18
B65B 3/04
B65B 55/24
B65B 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口栓を有する軟包装袋に内容物を充填する第1ステップと、
前記第1ステップにより前記内容物が充填された前記軟包装袋のヘッドスペースをエジェクタ効果により真空排気する第2ステップと、
前記第2ステップにより真空排気がなされた前記軟包装袋の前記口栓を密閉する第3ステップと、を備え
前記第2ステップにおいて、
前記口栓の軸線方向に沿い、かつ、前記口栓の周囲を取り囲む円環状に作動ガスが供給されることにより、前記エジェクタ効果を生じさせる、軟包装袋の充填密閉方法。
【請求項2】
前記作動ガスは、前記口栓の軸線方向に直交する速度成分を有する、
請求項に記載の軟包装袋の充填密閉方法。
【請求項3】
前記第2ステップは、前記口栓の洗浄を伴い、
前記ヘッドスペースの前記真空排気を前記口栓の洗浄に先行して行うか、または、
前記ヘッドスペースの前記真空排気と前記口栓の洗浄を同時に行う、
請求項1または請求項に記載の軟包装袋の充填密閉方法。
【請求項4】
前記ヘッドスペースの前記真空排気と前記口栓の洗浄を同時に行う場合に、
前記口栓の洗浄に用いられる洗浄剤が前記口栓の中に入るのを、前記エジェクタ効果を生じさせる作動ガスで遮る、
請求項に記載の軟包装袋の充填密閉方法。
【請求項5】
口栓を有し、内容物が充填された軟包装袋に含まれる空気を、前記口栓を介して外部に真空排気する装置であって、
前記口栓の周囲に作動ガスを供給して、前記口栓の内部および前記軟包装袋のヘッドスペースにエジェクタ効果を生じさせるガス供給部と、
前記ガス供給部に前記作動ガスを供給するガス供給源と、
を備え、
前記ガス供給部は、
前記口栓の軸線方向に沿い、かつ、前記口栓の周囲を取り囲む円環状に前記作動ガスを供給する、
軟包装袋の真空排気装置。
【請求項6】
前記ガス供給部は、
前記口栓の軸線方向に直交する速度成分を有する前記作動ガスを供給する、
請求項に記載の真空排気装置。
【請求項7】
前記口栓を洗浄するリンサを備え、
前記真空排気を前記リンサによる前記口栓の洗浄に先行して行うか、または、
前記真空排気を前記リンサによる前記口栓の洗浄を同時に行う、
請求項5または請求項6に記載の真空排気装置。
【請求項8】
前記真空排気と前記口栓の洗浄を同時に行う場合に、
前記ガス供給部は、前記口栓の洗浄に用いられる洗浄剤が前記口栓の中に入るのを遮るように前記作動ガスを供給する、
請求項に記載の真空排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、口栓付きの軟包装袋のヘッドスペースに含まれる空気を外部に排出してから口栓を密閉する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
口栓付きの軟包装袋、例えば、口栓付パウチに清涼飲料、ゼリー状食品などの内容物を充填密封した商品が広く販売されている。内容物の充填後には、口栓の開口が内蓋であるシール材を融着して密封されている。このシール材として、例えば、アルミニウム箔を含む複合フィルムが用いられている。内蓋をした後に、口栓には外蓋が装着される。
口栓付パウチにおいて、内容物の酸化を防止するために、充填後のヘッドスペースからの酸素の除去が重要な課題となっていた。
【0003】
この課題に対して、特許文献1は、液状内容物を充填する前にパウチ内からガスを真空排気し、次いで、パウチ内に不活性ガスを吹き込み、次いで、パウチ内のガスを真空排気してパウチ内のガスを所定量に減量させる充填前脱酸素工程を実施する。その後、特許文献1は、パウチ内を真空排気してから、内容物を充填し、さらに充填後ガス置換を行う。特許文献1によれば、泡立ち易い内容物であっても泡立ちの発生を効果的に抑えて充填でき、且つ脱酸素効率を飛躍的に高めることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-174297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、不活性ガス、典型的には窒素ガスをパウチの内部に吹き込むので、窒素ガス自体のコストがかかるのに加えて、内容物の充填密閉までの工数がかかる。
以上より、本開示は、低コストでかつ少ない工数で軟包装袋の中から空気を排出できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る軟包装袋の充填密閉方法は、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップを備える。第1ステップは、口栓を有する軟包装袋に内容物を充填する。第2ステップは、第1ステップにより内容物が充填された軟包装袋のヘッドスペースを真空排気する。第3ステップは、第2ステップにより真空排気がなされた軟包装袋の口栓を密閉する。
【0007】
本開示による排気装置は、充填された口栓を有し、内容物が充填された軟包装袋のヘッドスペースに含まれる空気を、口栓を介して外部に真空排気する装置に関する。
真空排気装置は、ガス供給部とガス供給源を備える。
ガス供給部は、口栓の周囲に作動ガスを供給して、口栓の内部およびヘッドスペースにエジェクタ効果を生じさせる。ガス供給源は、ガス供給部に作動ガスを供給する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ヘッドスペースを真空排気するという処理により、軟包装袋の中から空気を排出できるのに加えて、その後の酸素の侵入を低く抑えることができるので、低コストでかつ少ない工数で軟包装袋の中から空気を排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1実施形態に係る真空排気装置の概略構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係る真空排気装置の要部を示す縦断面図と、そのA-A線矢視断面図と、B-B線矢視断面図である。
図3】第1実施形態の変形例に係る真空排気装置の要部を示す図と、作動ガスとエジェクタ効果により排気される空気の関係を示す図である。
図4】第2実施形態に係る真空排気装置の要部を示す縦断面図と、そのC-C線矢視断面図である。
図5】第2実施形態に係る真空排気装置の動作手順の一例を示す図である。
図6】第2実施形態に係る真空排気装置の動作手順の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下、添付図面を参照しながら、第1実施形態について説明する。
第1実施形態は、内容物Cが充填された軟包装袋100のヘッドスペースHSに含まれる空気Airを外部に真空排気する。真空排気された軟包装袋100は、軟包装袋100の内部が真空状態となる。真空排気された軟包装袋100は、ヘッドスペースHSの分だけ容積が減り、真空排気前に比べて軟包装袋100の見かけ上の厚さが小さくなる。つまり、軟包装袋100は真空排気により潰れる。軟包装袋100を構成するフィルムは剛性が低いため、この潰れた形状がほぼ維持される。つまり、軟包装袋100の内部の容積が増加する状態を経ることなく、口栓103に内蓋を付ける密封処理を行えば、軟包装袋100の内部には空気が存在しないか存在したとしても微小である。なお、ヘッドスペースHSの容積が小さければ、潰れたか否かを目視により確認できないこともある。
ここで、本開示における真空とは、通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間の状態(日本工業規格 JIS Z 8126-1)をいうものとする。したがって、本開示における真空排気とは、大気圧よりも低い圧力となるように排気することを意味しており、高い真空度まで排気することを意図していない。
【0011】
[真空排気装置1]
真空排気装置1は、図1に示すように、エジェクタ効果(ejector effect)を発生させる作動ガスGを供給するガス供給部10と、ガス供給部10に向けて作動ガスGを供給するガス供給源30と、ガス供給源30から供給される作動ガスGをガス供給部10まで届けるガス搬送路40とを備える。真空排気装置1は、真空排気装置1の動作を司るコントローラ50を備える。本開示でいうエジェクタ効果とは、軟包装袋100の外部の圧力よりもヘッドスペースHSの内部の圧力が低くなることをいう。
【0012】
[ガス供給源30]
ガス供給源30は、ガス搬送路40を通じて、高圧とされた作動ガスGをガス供給部10に供給する。作動ガスGは、エジェクタ効果を発生できる限りその種類を問われず、空気、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス)などの選択肢がある。軟包装袋100の周囲の酸化まで考慮する必要がない場合には、空気を用いるのがコスト的な観点から好ましい。
作動ガスGが空気からなる場合、ガス供給源30は圧縮機を備えればよい。また、作動ガスGが不活性ガスからなる場合、ガス供給源30は圧縮機と不活性ガスを蓄える容器を備えればよい。
【0013】
[ガス搬送路40]
ガス搬送路40は、ガス供給源30とガス供給部10を結ぶ配管41と、配管41に設けられる流量制御弁43と、を備える。流量制御弁43としては、コントローラ50の指示によりその開度を無段階で変更される例えば絞り弁が適用されるのが好ましい。これにより、ガス供給部10から供給される作動ガスGの流量、圧力を制御できる。
【0014】
[ガス供給部10]
次に、図1および図2に基づいて、ガス供給部10を説明する。
ガス供給部10は、作動ガスGを軟包装袋100の口栓103に向けて作動ガスGを供給する。ガス供給部10は、図2に示すように、外筒11と、外筒11の内部に外筒11と同軸上に設けられる内柱13と、外筒11と内柱13の間の間隙からなる供給路15と、を備えている。供給路15は円環状の空間であるから、供給路15を通って供給される作動ガスGは円環状をなしている。
ガス供給部10は、図示を省略する駆動源により、昇降可能とされている。
【0015】
[ガス供給部10による真空排気プロセス]
作動ガスGは、本開示の一例として、図2のA-A矢視断面図に示すように、供給路15を通って円環状となって口栓103に向けて供給される。この作動ガスGは、口栓103の外周を取り囲むように、一例として口栓103の軸線方向Axに平行に下向きに供給される。本実施形態において、軸線方向Axは鉛直方向Vと一致する。高圧流体である作動ガスGがこのように流れることで、口栓103の内部の圧力が低くなり、口栓103および袋101のヘッドスペースHSに存在している空気Airは、一点鎖線で示すように口栓103の上部の開口を通って外部に真空排気される。
【0016】
図2に示すように、供給路15を通って供給される作動ガスGが鉛直方向Vに流れる場合、作動ガスGが口栓103の外周を取り囲むためには、ガス供給部10と口栓103が以下の関係を有することが必要である。つまり、内柱13の外径をD13とし、口栓103の内径をD103とすると、D13≧D103の関係を満たす。この関係が逆、つまりD13<D103になると口栓103の中に高圧の作動ガスGが供給されるので、エジェクタ効果が生じない。また、内径D13が内径D103よりも大きすぎる、つまり円環状となって供給される作動ガスGが口栓103から水平方向Hに遠く離れてしまうと、口栓103の内部の圧力を十分に低くできなくなる。したがって、作動ガスGの圧力をも考慮して、内径D13と内径D103の寸法の関係を特定することが必要である。これは、当業者が実験的に確認することができる。また、ガス供給部10と口栓103の最適な距離についても同様であり、最適な距離は実験的に確認できる。
【0017】
口栓103から排出される空気Airは、口栓103を平面視したときに、図2のB-B矢視断面図に示すようにも口栓103から径方向の外側に向けて排出される。この空気Airは、口栓103の周方向に流量、圧力が均等に流れて排出される。この均等な空気Airの流れは、その過程で乱れを生じさせにくいので、ヘッドスペースHSからの空気Airの排出が効率よく行われる。
【0018】
エジェクタ効果によりヘッドスペースHSの空気Airが排出されるのに伴って、袋101は排出された空気Airの分だけその容積が減少する。こうして、軟包装袋100の袋101の内部はヘッドスペースHSがなくなり、図1に示すように、内容物Cで満たされる。ここで、袋101は厚さ方向の剛性が小さいので厚さ方向に容易に伸縮する。したがって、ヘッドスペースHSが真空排気されると、袋101は厚さ方向に潰れる。これにより、袋101の内部は真空排気を終えても空気Airが袋101の中に侵入しにくい。したがって、意図的に負荷を加えない限り、袋101の潰れた状態がほぼ維持されるので、ヘッドスペースHSに空気が戻ってきたとしても微量に抑えることができる。この状態で、口栓103を内蓋で密閉した後に、外蓋を装着することにより、酸化が抑えられた軟包装袋100の飲料などの製品が得られる。
【0019】
エジェクタによる真空排気を制御するには、例えば、制御量を実験的に求め、実際の製品の生産時にその制御量に基づいて真空排気を行うことができる。
所定量の内容物Cが充填された軟包装袋100に向けて一定時間だけ作動ガスGを供給する。作動ガスGを供給している間に、軟包装袋100(ヘッドスペースHS)から排出された空気Airの量を計測する。この計測結果に基づいて真空排気に必要な作動ガスGの流量を算出して求める。求められた作動ガスGの流量が得られるように作動ガスGの供給時間および流量制御弁43の開度を設定すれば、ヘッドスペースHSから必要な量の空気Airが排出される。このエジェクタに関する空気Airの排出量の制御の再現性が高い。
【0020】
[作動ガスGの流れの変形例]
以上で説明した第1実施形態は、作動ガスGを口栓103の軸線方向Axに平行に供給したが、作動ガスGの供給の向きはこれに限らない。図3を参照してその一例を説明する。図3に示される作動ガスGは軸線方向Axに対して傾いて、かつ、口栓103の軸線方向Axから遠ざかるように供給される。なお、図3に示される例は、作動ガスGが傾いて供給されることを除けば、これまで説明したのと同様に供給される。つまり、作動ガスGは、円環状となって供給されるので、上方から下方に向けて末広がりに供給され、口栓103の軸線方向に直交する速度成分を有する。
【0021】
図3の下方に作動ガスGと排出される空気Airの関係を示している。作動ガスGは、鉛直方向Vの速度成分GVと水平方向Hの速度成分GHを備えている。速度成分GHは軸線方向Axに直交する方向の速度成分である。軟包装袋100から排出される空気Airは、鉛直方向Vの上向きに流れてから、径方向の外側に向けて水平方向Hに流れる。作動ガスGの速度成分GHは、径方向の外側に向けて流れる空気Airを誘引するので、末広がりに流れる作動ガスGは真空排気の効果が高い。
末広がりに流れる作動ガスGは、上述したのと同様に、口栓103の頂部104を掠めるように流れることが好ましい。
ここで、本開示において、鉛直方向Vの速度成分GVを有する作動ガスGは、軸線方向Axに沿っている。
【0022】
[第1実施形態の効果]
第1実施形態によれば、所定量の内容物Cが充填された軟包装袋100のヘッドスペースHSを真空排気することによりヘッドスペースHSに含まれる空気Airを排出する。空気Airが排出された軟包装袋100は、内容物Cを除いて袋101の内部が真空状態となり、袋101の柔軟性が相まって、空気Airが排出され潰れた状態が維持されやすい。このように、第1実施形態によれば、ヘッドスペースHSを真空排気するという処理により、軟包装袋100の中から空気を排出できるのに加えて、その後の酸素の侵入を低く抑えることができるので、低コストでかつ少ない工数で軟包装袋の中から空気を排出できる。
【0023】
また、第1実施形態によれば、ヘッドスペースHSから排出する空気Airの量の再現性の高いエジェクタ効果による真空排気がなされる。したがって、第1実施形態によれば、軟包装袋100に内容物Cが充填された製品を工業的な生産規模において安定して得ることができる。
【0024】
また、第1実施形態によれば、エジェクタ効果を作用させる作動ガスGが、口栓103の周囲を取り囲み、かつ、口栓103の軸線方向Axに沿って供給される。したがって、第1実施形態によれば、空気Airを口栓103からその周方向に等方的に効率よく排出できる。特に、作動ガスGを末広がり、つまり口栓103の軸線方向に直交する速度成分を有するように供給することにより、より効率よく空気Airを排出できる。
【0025】
[第2実施形態]
次に、図4図6を参照して第2実施形態に係る真空排気装置2を説明する。真空排気装置2は、空気Airを排出する真空排気機能に加えて、口栓103を洗浄する機能を備える。
軟包装袋100に内容物Cを充填した後に、ヘッドスペースHSから空気Airが排出される。ここで、内容物Cの充填中あるいは充填後の充填ノズルからの液垂れにより、内容物Cを充填した後には口栓103に内容物Cが付着することがある。この内容物Cの付着は後のシール材の密着不良を招くおそれがあるので、付着した内容物Cを取り除くために、口栓103を洗浄することが好ましい。第2実施形態に係る真空排気装置2は、内容物Cの充填後に行われる口栓103の洗浄の機能を備える。
【0026】
真空排気装置2は、口栓103を洗浄するリンサ20を備えることを除いて、真空排気装置1と同じ構成を備えている。そこで、以下では真空排気装置2が備えるリンサ20に絞って説明する。
【0027】
[リンサ20]
リンサ20は、図4に示すように、一例として、洗浄剤Lを口栓103に向けて吐出する洗浄筒21と、洗浄筒21に向けて洗浄剤Lを供給する洗剤供給源27と、洗浄筒21と洗剤供給源27を結ぶ洗剤配管28と、洗剤配管28に設けられる開閉弁29と、を備える。
円筒状の洗浄筒21は、内周面21Iと外周面21Oを備える。洗浄筒21は、洗浄筒21の内部において周方向に連なる洗剤通路22と、洗浄筒21の内周面21Iと洗剤通路22を貫通する複数の吐出孔24とを備えている。
【0028】
リンサ20は洗浄筒21の内側に軟包装袋100の口栓103を配置した状態で口栓103の洗浄を行うことができる。したがって、洗浄筒21の内径は、口栓103の外径よりも大きく設定される。また、洗浄筒21の鉛直方向Vの寸法は、口栓103の鉛直方向Vの全域に洗浄剤Lが散布されるように、口栓103と同等であること、および、吐出孔24は鉛直方向Vの上中下に分散して設けられることが好ましい。同様に、口栓103の周方向についても、まんべんなく洗浄剤Lが散布されるように、周方向に等間隔で複数の吐出孔24を設けることが好ましい。
【0029】
リンサ20で口栓103を洗浄するときに、洗剤配管28の開閉弁29が開くと、洗剤配管28を介して洗剤供給源27から洗浄筒21に液状の洗浄剤Lが供給される。供給された洗浄剤Lは、洗剤通路22および吐出孔24を順に通って、口栓103に吐出される。
【0030】
[真空排気および洗浄手順]
次に、以上説明したリンサ20を備える真空排気装置2により軟包装袋100からの真空排気および口栓103の洗浄を行う手順を説明する。この手順は以下の第1手順、第2手順および第3手順を含んでいる。
第1手順:真空排気を洗浄に先行して行う
第2手順:洗浄を真空排気に先行して行う
第3手順:真空排気と洗浄を同時に行う
【0031】
[第1手順]
図5を参照して第1手順を説明する。
図5の上段は軟包装袋100から空気を排出する真空排気を行っている様子を示し、図5の下段は口栓103の洗浄を行っている様子を示している。
図5においては、図4に示されるガス供給部10が用いられており、ガス供給部10から末広がりの作動ガスGが吐出される。作動ガスGの吐出は、ヘッドスペースHSに含まれていた空気Airが十分に排出されるまで行われる。
【0032】
次に、口栓103の洗浄を行う。
ここで、口栓103を洗浄するときには、口栓103の中に洗浄剤Lが入らないように留意する必要がある。本実施形態において、洗浄剤Lが口栓103の中に入らないようにするには、以下の二つの選択肢がある。
【0033】
第1選択肢は、ガス供給部10を口栓103に突き当てることで、口栓103の開口を閉じるというものである。第1選択肢を行うには、真空排気の際にはガス供給部10と口栓103の間に設けられていた隙間を詰める。図5には第1の選択肢が示されている。
第2選択肢は、ガス供給部10から作動ガスGの吐出を継続するというものである。第2選択肢は、吐出される作動ガスGが障害となって洗浄剤Lを遮る。第2選択肢における作動ガスGは、洗浄剤Lを遮ることを目的とするから、真空排気のときと同じ条件で吐出される必要はない。通常、真空排気のときに比べると、洗浄剤Lを遮るのに必要な作動ガスGの圧力、流量を小さくしてもよい。
【0034】
本実施形態においては、第1選択肢および第2選択肢のいずれをも適用できるが、それぞれ以下の特質を備えていることを念頭においていずれかを選択することが望まれる。
第1選択肢によれば、ガス供給部10を口栓103に突き当てるために、口栓103に内容物Cが付着するおそれがある。したがって、第1選択肢によれば、付着した内容物Cを除去する作業が必要である。第2選択肢によれば、このような作業が必要でない。
第2選択肢によれば、洗浄剤Lが口栓103に付着するのを作動ガスGが妨げるおそれがある。したがって、第2選択肢によれば、このようなことがないように、作動ガスGを制御する必要がある。第1選択肢によれば、このような制御が必要でない。
【0035】
[第2手順]
第2手順は第1手順と順番を逆にすればよいので、第2手順の具体的な説明は省略する。
【0036】
[第3手順]
次に、第3手順について図6を参照して説明する。
真空排気と洗浄を同時に行うには、図6に示すように、第2選択肢を適用する。つまり、ガス供給部10から作動ガスGを吐出することで真空排気しながら、リンサ20から洗浄剤Lを吐出して口栓103を洗浄する。
ただし、作動ガスGの吐出による真空排気する期間と洗浄剤Lの吐出による洗浄の期間が一致している必要はない。一例として、真空排気に要する期間が洗浄に要する期間よりも長ければ、真空排気を先行して行うが真空排気が未だ行われている間に、所定時間だけ遅れて洗浄を開始することができる。要するに、真空排気を行っている期間と洗浄を行っている期間が重複していれば、第3手順に該当する。
【0037】
[第2実施形態の効果]
真空排気装置2によれば、真空排気装置1に加えて、以下の効果を奏する。
真空排気装置2によれば、軟包装袋100を移動させることなく、ヘッドスペースHSに含まれる空気Airを真空排気できるとともに、口栓103の洗浄を行うことができるので、軟包装袋100を用いた飲料、その他の製品の生産効率を向上できる。特に、真空排気と洗浄を同時に行うことができる第3手順は生産効率の向上に寄与する。
【0038】
次に、内容物Cからなる泡が軟包装袋100の中に残存している場合には、真空排気に伴ってこの泡が吸い出され、口栓103に付着することもある。これに対して、真空排気装置2によれば、真空排気に伴って口栓103の洗浄を行うことができるので、口栓103への泡の付着による汚染を防止することができる。
【0039】
真空排気装置2によれば、真空排気の機能と洗浄の機能を備えているので、真空排気用の装置と洗浄用の装置を個別に用意するのに比べて、コストを低減できるとともに設置スペースを省くことができる。
【0040】
[付記]
以上の実施形態に記載の充填密閉方法および真空排気装置方法は、以下のように把握される。
[第1の態様に係る充填密閉方法]
第1の態様に係る軟包装袋100の充填密閉方法は、口栓103を有する軟包装袋100に内容物Cを充填する第1ステップと、軟包装袋100の内容物Cを除いた空間であるヘッドスペースHSを減圧してヘッドスペースHSに含まれる空気Airを排出する第2ステップと、第2ステップにより真空排気がなされた軟包装袋100の口栓103を密閉する第3ステップと、を備える。
第1の態様に係る充填密閉方法において、空気Airが排出された軟包装袋100は、内容物Cを除いて袋101の内部が真空となるために、空気Airが排出された後に空気Airが侵入するのを低く抑えることができる。
【0041】
第1ステップについて、本開示は任意であり、内容物Cの充填に先立って、軟包装袋100を真空排気する、不活性ガスを充填する、などの処理を行うことができる。また、内容物Cの充填については、口栓103に内容物Cを充填するノズルを密着させた状態で定量の内容物Cを充填する。
【0042】
また、第3ステップについても、本開示は任意である。口栓103の密閉には、例えば、アルミニウム箔と合成樹脂フィルムからなるシール材を用いることができる。このシール材は、熱融着が可能であるとともに、ガスバリア性を有することが好ましい。内蓋用のシール材が口栓103に熱融着されると、軟包装袋100は内蓋で密封される。
内蓋で密閉された後、口栓103には外蓋が装着される。
【0043】
[第2の態様に係る充填密閉方法]
第2の態様に係る充填密閉方法は、エジェクタ効果により、ヘッドスペースHSを減圧する。
第2の態様に係る充填密閉方法は、ヘッドスペースHSから排出する空気Airの量の再現性の高いエジェクタ効果による減圧を作用させる。したがって、第2の態様によれば、軟包装袋100に内容物Cが充填された製品を工業的な生産規模において安定して得ることができる。
【0044】
[第3の態様に係る充填密閉方法]
第3の態様に係る充填密閉方法は、口栓103の軸線方向に沿って作動ガスGを供給することにより、エジェクタ効果を生じさせる。
第3の態様に係る充填密閉方法によれば、エジェクタの作動ガスGが、口栓103の周囲を取り囲み、かつ、口栓103の軸線方向に沿って供給される。したがって、第3の態様によれば、空気Airを口栓103からその周方向に等方的に効率よく排出できる。
【0045】
[第4の態様に係る充填密閉方法]
第4の態様に係る充填密閉方法において、作動ガスGは口栓103の周囲を取り囲む円環状に供給される。
第4の態様に係る充填密閉方法によれば、作動ガスGが口栓103の周囲を取り囲む円環状に供給されるので、口栓103の全周囲に亘ってエジェクタ効果を発揮させることができる。これにより、第4の態様に係る充填密閉方法によれば、迅速な真空排気を実現できる。
【0046】
[第5の態様に係る充填密閉方法]
第5の態様に係る充填密閉方法によれば、作動ガスGは、口栓103の軸線方向に直交する速度成分を有する。
第5の態様に係る充填密閉方法によれば、空気Airを口栓103からその周方向により効率よく排出できる。
【0047】
[第6の態様に係る充填密閉方法]
第6の態様に係る充填密閉方法によれば、第2ステップは、口栓103の洗浄を伴い、ヘッドスペースHSの減圧を口栓103の洗浄に先行して行うか、または、ヘッドスペースHSの減圧と口栓103の洗浄を同時に行う。
第6の態様に係る充填密閉方法によれば、第2ステップにおいて、口栓103の洗浄を伴うので、軟包装袋100を用いた飲料、その他の製品の生産効率を向上できる。特に、真空排気と洗浄を同時に行うことができる第3手順は生産効率の向上に寄与する。
【0048】
[第7の態様に係る充填密閉方法による効果]
第7の態様に係る充填密閉方法によれば、口栓103の洗浄に用いられる洗浄剤が口栓103の中に入るのを、作動ガスGで遮る。
第7の態様に係る充填密閉方法によれば、口栓103の洗浄に用いられる洗浄剤が口栓103の中に入るのを、作動ガスGで遮るので、口栓103の洗浄と減圧を同時に行うことができる。
【0049】
[第1の態様に係る真空排気装置]
第1の態様に係る軟包装袋100の真空排気装置1は、内容物Cが充填された口栓103を有する軟包装袋100のヘッドスペースHSに含まれる空気Airを、口栓103を介して外部に真空排気する装置である。真空排気装置1は、口栓103の周囲に作動ガスGを供給して、口栓103の内部およびヘッドスペースHSにエジェクタ効果を生じさせるガス供給部10と、ガス供給部10に作動ガスGを供給するガス供給源30と、を備える。
第1の態様に係る真空排気装置によれば、ヘッドスペースHSを真空排気するという処理により、軟包装袋100の中から空気Airを排出できるのに加えて、その状態を維持することができるので、低コストでかつ少ない工数で軟包装袋の中から空気を排出できる。
【0050】
上記以外にも、第1実施形態および第2実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0051】
以上の実施形態においては、作動ガスGが口栓103の外周を取り囲むように、かつ、鉛直方向Vの下向きに連続時に流れるのを一例として示している。しかし、本開示における作動ガスGの流れはこれに限らず、口栓103に水平方向Hに沿って流してもよいし、口栓103の周囲をらせん状に流してもよい。また、口栓103の周囲を取り囲むように作動ガスGを周方向に間隔をあけて流してもよい。また、作動ガスGは連続的に流れるのに限らず、間欠的であってもよい。
【0052】
つぎに、本開示において、真空排気をするための手段は、口栓103の周囲に作動ガスGを流してエジェクタ効果を生じさせるものに限るものではなく、軟包装袋100のヘッドスペースHSを真空にすることができる手段を広く適用できる。例えば、真空ポンプを別途設け、真空ポンプが生み出す減圧をヘッドスペースHSに作用させてもよい。また、シリンジを別途設け、シリンジが生み出す減圧をヘッドスペースHSに作用させてもよい。
【0053】
さらに、本開示において、口栓103を洗浄できる限り、口栓103を洗浄する手段はリンサ20に限るものではない。ただし、洗浄中に口栓103から洗浄液が軟包装袋100の内部に入るのを阻止する手立てを備えていることが肝要である。
【符号の説明】
【0054】
1,2 真空排気装置
10 ガス供給部
11 外筒
13 内柱
15 供給路
20 リンサ
21 洗浄筒
21I 内周面
21O 外周面
22 洗剤通路
24 吐出孔
27 洗剤供給源
28 洗剤配管
29 開閉弁
30 ガス供給源
40 ガス搬送路
41 配管
43 流量制御弁
50 コントローラ
100 軟包装袋
101 袋
103 口栓
104 頂部
Air 空気
C 内容物
G 作動ガス
HS ヘッドスペース
L 洗浄剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6