(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】散布機能付きマルチコプターの離着陸装置
(51)【国際特許分類】
A01M 9/00 20060101AFI20230403BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20230403BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20230403BHJP
B64D 1/16 20060101ALI20230403BHJP
B64D 27/24 20060101ALI20230403BHJP
B64F 1/12 20060101ALI20230403BHJP
A01M 7/00 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
A01M9/00 Z
B64C27/08
B64C39/02
B64D1/16
B64D27/24
B64F1/12
A01M7/00 H
(21)【出願番号】P 2019237906
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山地 一平
(72)【発明者】
【氏名】内田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】大野 貴章
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104386258(CN,A)
【文献】中国実用新案第202271897(CN,U)
【文献】特開2019-106959(JP,A)
【文献】特開2019-064544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
B64C 27/08
B64C 39/02
B64D 1/16
B64D 27/24
B64F 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
散布剤を収容する散布剤容器と、
前記散布剤を希釈するための希釈液を収容する希釈液容器と、
前記散布剤と前記希釈液とを含む散布液を散布可能なマルチコプターが離着陸可能な離着陸部と、
前記散布剤容器に収容された前記散布剤及び前記希釈液容器に収容された前記希釈液を前記マルチコプターに供給する供給装置と、
少なくとも前記離着陸部、前記散布剤容器、前記希釈液容器、前記供給装置を搭載して走行可能な走行体と、
を備え
、
前記離着陸部は、機枠と、前記機枠上に設けられてマルチコプターが上面に離着陸する天板とを備え、
前記走行体は、牽引車両により牽引されることにより走行可能な台車であって、前記牽引車両の後部に設けられた連結機構に連結可能な連結部と、載置台と、車輪とを有し、
前記載置台は、前記機枠が載置される下枠体と、前記下枠体の前部から上方に延びる前枠体と、前記下枠体の前後方向中途部と前記前枠体の上部と接続する斜め材とを有し、
前記連結部は、前記前枠体の上部に設けられているマルチコプターの離着陸装置。
【請求項2】
前記連結機構は、トップリンクと、左側のロアリンクと、右側のロアリンクを有する昇降可能なリンク機構であって、
前記連結部は、前記トップリンクに連結される上連結部と、前記左側のロアリンクに連結される左連結部と、前記右側のロアリンクに連結される右連結部とを有し
、
前記上連結部は、前記前枠体から上前方に延びる左部材及び右部材と、前記左部材と前記右部材とを連結する連結軸と、を有し、
前記左連結部は、左板と、前記左板から左方に突出する左軸と、を有し、
前記右連結部は、右板と、前記右板から右方に突出する右軸と、を有し、
前記左板と前記左部材とは、左接続体により接続され、
前記右板と前記右部材とは、右接続体により接続されている請求項1に記載のマルチコプターの離着陸装置。
【請求項3】
前記散布剤容器及び前記希釈液容器は、前記天板の下方に配置され、
前記供給装置は、前記天板の下部に取り付けられ、
前記供給装置には、前記散布剤容器に収容された散布剤及び前記希釈液容器に収容された希釈液を取り出すための第1ホースと、前記第1ホースにより取り出された散布剤と希釈液との混合液である散布液をマルチコプターのタンクに送るための第2ホースとが接続されており、
前記第1ホースは、前記天板の下方に向けて延びており、
前記第2ホースは、前記天板の上方に向けて延びている請求項1又は2に記載の散布機能付きマルチコプターの離着陸装置。
【請求項4】
前記散布剤容器から取り出す散布剤の量と、前記希釈液容器から取り出す希釈液の量とを調整する調整装置を備えている請求項1
~3のいずれか1項に記載のマルチコプターの離着陸装置。
【請求項5】
前記走行体は、前記マルチコプターに搭載されるバッテリと、前記バッテリに電力を充電可能な充電器とを搭載している請求項1
~4のいずれか1項に記載のマルチコプターの離着陸装置。
【請求項6】
前記走行体は、前記充電器に充電する電力を発生する発電機と、前記発電機を駆動するための燃料を収容した燃料タンクとを搭載している請求項
5に記載のマルチコプターの離着陸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば農薬等の散布液を散布可能なマルチコプターの離着陸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マルチコプターの離着陸装置として、特許文献1に開示された装置が知られている。特許文献1に開示された装置は、無人走行移動体と、この無人走行移動体の上面に設けられたヘリポートを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、マルチコプターを利用した圃場への散布液(薬液等)の散布が行われている。このような散布機能付きマルチコプターは、散布液を収容するための散布装置とタンクを備えているが、圃場の面積が広い場合には散布作業の途中でタンクに散布液を補充することが必要となる場合がある。しかし、特許文献1に開示された装置は、マルチコプターが離着陸可能な領域を備えているものの、当該領域に着陸したマルチコプターに対して散布液の補給を円滑に行うことは難しい。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、散布液を散布可能なマルチコプターが離着陸可能であるとともに、着陸したマルチコプターに対して散布液を円滑に補給することができる散布機能付きマルチコプターの離着陸装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
散布機能付きマルチコプターの離着陸装置は、散布剤を収容する散布剤容器と、前記散布剤を希釈するための希釈液を収容する希釈液容器と、前記散布剤と前記希釈液とを含む散布液を散布可能なマルチコプターが離着陸可能な離着陸部と、前記散布剤容器に収容された散布剤及び前記希釈液容器に収容された前記希釈液を前記マルチコプターに供給する供給装置と、少なくとも前記離着陸部、前記散布剤容器、前記希釈液容器、前記供給装置を搭載して走行可能な走行体と、を備え、前記離着陸部は、機枠と、前記機枠上に設けられてマルチコプターが上面に離着陸する天板とを備え、前記走行体は、牽引車両により牽引されることにより走行可能な台車であって、前記牽引車両の後部に設けられた連結機構に連結可能な連結部と、載置台と、車輪とを有し、前記載置台は、前記機枠が載置される下枠体と、前記下枠体の前部から上方に延びる前枠体と、前記下枠体の前後方向中途部と前記前枠体の上部と接続する斜め材とを有し、前記連結部は、前記前枠体の上部に設けられている。
また、前記連結機構は、トップリンクと、左側のロアリンクと、右側のロアリンクを有する昇降可能なリンク機構であって、前記連結部は、前記トップリンクに連結される上連結部と、前記左側のロアリンクに連結される左連結部と、前記右側のロアリンクに連結される右連結部とを有し、前記上連結部は、前記前枠体から上前方に延びる左部材及び右部材と、前記左部材と前記右部材とを連結する連結軸と、を有し、前記左連結部は、左板と、前記左板から左方に突出する左軸と、を有し、前記右連結部は、右板と、前記右板から右方に突出する右軸と、を有し、前記左板と前記左部材とは、左接続体により接続され、前記右板と前記右部材とは、右接続体により接続されている。
また、前記散布剤容器及び前記希釈液容器は、前記天板の下方に配置され、前記供給装置は、前記天板の下部に取り付けられ、前記供給装置には、前記散布剤容器に収容された散布剤及び前記希釈液容器に収容された希釈液を取り出すための第1ホースと、前記第1ホースにより取り出された散布剤と希釈液との混合液である散布液をマルチコプターのタンクに送るための第2ホースとが接続されており、前記第1ホースは、前記天板の下方に向けて延びており、前記第2ホースは、前記天板の上方に向けて延びている。
【0007】
また、前記散布剤容器から取り出す散布剤の量と、前記希釈液容器から取り出す希釈液の量とを調整する調整装置を備えている。
また、前記走行体は、前記マルチコプターに搭載されるバッテリと、前記バッテリに電力を充電可能な充電器とを搭載している。
また、前記走行体は、前記充電器に充電する電力を発生する発電機と、前記発電機を駆動するための燃料を収容した燃料タンクとを搭載している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、散布液を散布可能なマルチコプターが離着陸部に離着陸可能であるとともに、着陸したマルチコプターに対して散布剤容器、希釈液容器、供給装置を用いて散布液を円滑に補給することができるマルチコプターの離着陸装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】マルチコプターの離着陸装置の第一実施形態を示す図である。
【
図2】マルチコプターの離着陸装置の第二実施形態を示す図である。
【
図10】収容スペースに収容された装備品を示す平面図である。
【
図14】可動部の別の実施形態を示す正面図である。
【
図15】離着陸部に幌構造体を取り付けた状態を示す図である。
【
図21】マルチコプターの離着陸装置の第三実施形態を示す図である。
【
図22】マルチコプターの離着陸装置の第四実施形態を示す図である。
【
図28】拡張部材(第1板体)とタンクの平面図である。
【
図29】拡張部材(第1板体)とタンクの正面図である。
【
図30】拡張部材(第2板体)とタンクの平面図である。
【
図31】拡張部材(第2板体)とタンクの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1、
図2に示すように、マルチコプターの離着陸装置100は、散布液を散布可能なマルチコプター(散布機能付きマルチコプター)60が離着陸可能な離着陸部1を備えている。散布液は、圃場等に散布される農業用の薬液や液肥等であって、薬剤や肥料等の散布剤と水等の希釈液とを含む。
【0012】
また、離着陸装置100は、散布剤を収容する散布剤容器81と、散布剤を希釈するための希釈液を収容する希釈液容器82と、散布剤容器81に収容された散布剤及び希釈液容器82に収容された希釈液をマルチコプター60に供給する供給装置102と、少なくとも離着陸部1、散布剤容器81、希釈液容器82、供給装置102を搭載して走行可能な走行体20と、を備えている。
【0013】
<離着陸部(機枠、天板)>
図3~
図5に示すように、離着陸部1は、機枠2と天板3と固定部4とを備えている。以下、説明の便宜上、
図3~
図5の矢印F方向を前方、矢印B方向を後方、矢印L方向を左方、矢印R方向を右方という。また、矢印W方向を機枠幅方向という。
機枠2は、天板3を支持する支持枠5と、支持枠5を所定高さに支持する複数の支持脚6とを有する。天板3は、支持枠5の上面を覆うように取り付けられている。但し、
図5では、図示の都合上、天板3により覆われている支持枠5も実線で示している。
【0014】
支持枠5は、第1フレーム材5A、第2フレーム材5B、第3フレーム材5C、第4フレーム材5Dを有する。第1フレーム材5Aは、支持枠5の左部に配置されている。第2フレーム材5Bは、支持枠5の右部に配置されている。第3フレーム材5Cは、支持枠5の前部に配置されている。第4フレーム材5Dは、支持枠5の後部に配置されている。
第1フレーム材5Aと第2フレーム材5Bは、互いに平行に前後方向に延びている。第3フレーム材5Cと第4フレーム材5Dは、互いに平行に機枠幅方向に延びている。
【0015】
図4に示すように、第1フレーム材5A、第2フレーム材5B、第3フレーム材5C、第4フレーム材5Dは、平面視四角形となるように組み合わされている。また、支持枠5は、第1フレーム材5Aと第2フレーム材5Bとを接続する第1接続フレーム材5Eと、第3フレーム材5Cと第4フレーム材5Dとを接続する第2接続フレーム材5Fを有する。第2接続フレーム材5Fは、左接続フレーム材5FLと右接続フレーム材5FRとを含む。左接続フレーム材5FLは、第3フレーム材5Cの左部と第4フレーム材5Dの左部とを接続している。右接続フレーム材5FRは、第3フレーム材5Cの右部と第4フレーム材5Dの右部とを接続している。
【0016】
図3、
図5に示すように、支持脚6は、支持枠5から下方に向けて直線状に延びている。支持脚6は、第1支持脚6A、第2支持脚6B、第3支持脚6C、第4支持脚6Dを含む。第1支持脚6Aは、支持枠5の左前部の角から下方に向けて延びている。第2支持脚6Bは、支持枠5の右前部の角から下方に向けて延びている。第3支持脚6Cは、支持枠5の左後部の角から下方に向けて延びている。第4支持脚6Dは、支持枠5の右後部の角から下方に向けて延びている。
【0017】
図3、
図5に示すように、機枠2は、支持脚6の下端部同士を連結する下フレーム7を有する。下フレーム7は、第1下フレーム材7A、第2下フレーム材7B、第3下フレーム材7C、第4下フレーム材7Dを有する。
図3~
図5において、他のフレーム材と重なって隠れている第1下フレーム材7A、第2下フレーム材7B、第3下フレーム材7C、第4下フレーム材7Dには、破線の引き出し線を付している。第1下フレーム材7A、第2下フレーム材7B、第3下フレーム材7C、第4下フレーム材7Dは、平面視四角形となるように組み合わされている。支持枠5と下フレーム7とは、同じ形状及び大きさを有しており、上下方向に間隔をあけて互いに平行に配置されている。
【0018】
第1下フレーム材7Aは、第1支持脚6Aと第3支持脚6Cとを接続している。第2下フレーム材7Bは、第2支持脚6Bと第4支持脚6Dとを接続している。第3下フレーム材7Cは、第1支持脚6Aと第2支持脚6Bとを接続している。第4下フレーム材7Dは、第3支持脚6Cと第4支持脚6Dとを接続している。
天板3は、機枠2上(具体的には、支持枠5上)に支持されている。天板3は、支持枠5の上方を覆うように、支持枠5にボルト等により固定されている。天板3は、上面が平坦又は概ね平坦な板であって、少なくともマルチコプターが離着陸可能な面積を有する。天板3の平面視形状は、支持枠5の平面視形状に合わせて設定される。本実施形態の場合、支持枠5の平面視形状が四角形であるため、天板3の平面視形状も四角形である。但し、天板3の形状及び支持枠5の平面視形状は、四角形には限定されず、三角形、六角形、八角形、円形、楕円形等の他の形状であってもよい。
【0019】
<マルチコプター>
図6~
図8は、マルチコプター60の一例を示している。尚、マルチコプター60の構成は、図示した構成には限定されない、
マルチコプター60は、複数の回転翼により無人で飛行可能な回転翼機であって、例えば、ドローンと呼ばれる飛行体である。マルチコプター60は、無線または有線通信による遠隔操作により飛行するものであってもよいし、遠隔装置に依らずに自律制御により飛行するものであってもよい。
【0020】
マルチコプター60は、機体61と、作業装置66とを備えている。
まず、機体61について説明する。機体61は、本体62と、アーム63と、回転翼64と、脚部(スキッド)65を有する。
本体62は、ケース67(以下、「第1ケース67」という)と、電装品68(以下、「第1電装品68」という)と、を備えている。
【0021】
第1ケース67は、本体62の外殻を構成する箱体であって、密閉可能な内部空間を有する。第1ケース67の内部空間には、第1電装品68が収容されている。つまり、第1電装品68の周囲は、第1ケース67により覆われている。
第1電装品68は、マルチコプター60の飛行に関する制御を行う電装品であって、例えば、GPSアンテナ、制御装置90、各種センサ(ジャイロセンサ、加速度センサ等)等である。制御装置90は、CPUや記憶部90a等を備えたコンピュータであって、高度検出装置91により検出された機体61の高度等に基づいて飛行を制御する。
【0022】
本体62には、複数本のアーム63が取り付けられている。本実施形態の場合、4本のアーム63が本体62に取り付けられている。4本のアーム63は、本体62の中心から水平面(着地状態で地面と平行な面)内で放射状に延びている。但し、アーム63の本数は、4本に限定されず、5本以上であってもよいし、3本以下であってもよい。また、アーム63は、本体62側に向けて折り畳み可能な構造としてもよい。
【0023】
アーム63の基端側は、本体62に取り付けられている。アーム63の先端側は、中途部で二股状(Y字状)に分岐している。複数のアーム63の先端側には、夫々回転翼64が取り付けられている。
回転翼64は、マルチコプター60が飛行するための揚力を発生させる。回転翼64は、ロータ69及びブレード(プロペラ)70から構成されている。ロータ69は、電動モータから構成されている。ロータ69は、後述するバッテリ71から供給される電力により駆動される。ロータ69の回転軸の上部には、ブレード70が取り付けられている。隣り合う回転翼64は、互いに逆方向に回転する。回転翼64の数は、特に限定はされず、必要な揚力等に応じて変更することができる。例えば、マルチコプター60は、3つの回転翼64を有するトリコプターであってもよいし、4つの回転翼64を有するクアッドコプターであってもよいし、6つの回転翼64を有するヘキサコプターであってもよいし、8つの回転翼64を有するオクトコプターであってもよい。
【0024】
脚部65は、マルチコプター60が着地した時に接地して本体62を着地面の上方に支持する。脚部65は、一対の脚部65L,65Rを含む。具体的には、脚部65は、本体62の左側に設けられた脚部65Lと、本体62の右側に設けられた脚部65Rとを含む。脚部65L,65Rは、本体62から下方に延びる下延部65aと、下延部65aの下端に設けられた接地部65bとを有する。脚部65Lの接地部65bと脚部65Rの接地部65bは、互いに平行に前後方向に延びている。
【0025】
本体62の下方には装着部72が設けられている。装着部72は、作業装置66を脚部65Lと脚部65Rの間で着脱可能に支持する。
次に、作業装置66について説明する。
作業装置66は、農業に関する作業を行う装置である。本実施形態の場合、作業装置66は、散布装置であって、散布液を収容するタンク73を有する。
【0026】
図7、
図8に示すように、タンク73は、本体62の下方に設けられた装着部72に装着される。タンク73は、装着部72に対して着脱可能である。なお、タンク73は、装着部72に対して一体成形されていてもよい。装着部72は、断面がL字形状のレールである。装着部72には、タンク73の側方から幅方向外方に向かって夫々突出した被装着部73aが懸架される。
図8において、タンク73の装着状態を実線で示し、タンク73を装着部72から離脱させる方向(矢印Bで示す)にスライド移動させた状態を仮想線で示している。
【0027】
タンク73は、容器74と、蓋75と、を有する。
容器74は、圃場に散布される散布液が収容される内部空間を形成している。容器74は、当該容器74の上面に、液体を内部空間に供給するための供給部76を有する。供給部76は、容器74の上面から円筒状に突出する筒状体76aを有する。筒状体76aには、蓋75がネジ等により着脱可能に装着される。なお、タンク73に収容されている散布液はタンク73からポンプ77に供給される。
【0028】
図8に示すように、機体61には、第1電装品68とは別の電装品78(以下、「第2電装品78」という)が装着されている。第2電装品78は、本体62の下方であって且つ回転翼64の下方に着脱可能に配置されている。第2電装品78は、回転翼64のロータ69にエネルギーを供給するエネルギー供給部71を含む。本実施形態において、エネルギー供給部71は、電力を供給するバッテリ71を含んでいる。なお、回転翼64のロータ69の代わりにエンジンでブレード70を回転させる場合には、エネルギー供給部71は、ガソリンを収納したガソリンタンクである。
図7、
図8に示すように、第2電装品78は、第1ケース67とは別のケース79(以下、「第2ケース79」という)に一部又は全部が収容されている。第2ケース79は、本体62の下方に設けられている。
【0029】
<離着陸部(固定部)>
図3に示すように、離着陸部1の固定部4は、天板3上に着陸したマルチコプター60の一対の脚部65L,65Rを固定可能である。
図3~
図5、
図9に示すように、固定部4は、一方固定部4L、他方固定部4R、調整機構8を有する。一方固定部4Lは、マルチコプター60の一方の脚部65Lを固定可能である。他方固定部4Rは、マルチコプター60の他方の脚部65Rを固定可能である。調整機構8は、一方固定部4Lと他方固定部4Rとの間隔を調整可能な機構である。
【0030】
図9に示すように、一方固定部4Lは、取付部4Laと押さえ部4Lbとを有する。取付部4Laは、筒状に形成されている。押さえ部4Lbは、取付部4Laの下方に設けられている、押さえ部4Lbは、下面に前後方向に延びる溝部4Lcを有しており、下向き凹状に形成されている。溝部4Lcには、脚部65Lの接地部65bを嵌め入れることができる。
【0031】
他方固定部4Rは、取付部4Raと押さえ部4Rbとを有する。取付部4Raは、筒状に形成されている。押さえ部4Rbは、取付部4Raの下方に設けられている、押さえ部4Rbは、下面に前後方向に延びる溝部4Rcを有しており、下向き凹状に形成されている。溝部4Rcには、脚部65Rの接地部65bを嵌め入れることができる。
図4、
図5に示すように、調整機構8は、第1調整部9と第2調整部10とを有する。第1調整部9の左部及び第2調整部10の左部にそれぞれ一方固定部4Lが設けられている。第1調整部9の右部及び第2調整部10の右部にそれぞれ他方固定部4Rが設けられている。第1調整部9と第2調整部10とは前後方向に間隔をあけて配置されている。第1調整部9は、天板3の前後方向中心よりも前方に配置されている。第2調整部10は、天板3の前後方向中心よりも後方に配置されている。第1調整部9の構成と第2調整部10の構成は同じである。
【0032】
図9に示すように、第1調整部9及び第2調整部10は、天板3に固定される固定部材11と、この固定部材11に取り付けられる支持杆12とを有する。固定部材11は、天板3の上面にボルトや溶接等によって固定される。支持杆12は、固定部材11に対して取付具(ボルト13、蝶ナット14)により取り付けられている。具体的には、支持杆12には、上下方向に延びる貫通孔が形成されており、当該貫通孔にボルト13が下方から挿通されている。ボルト13の先端(上端)は支持杆12から上方に突出し、当該突出部分に蝶ナット14が螺合されている。支持杆12は、固定部材11から一方側(左側)と他方側(右側)にそれぞれ延びている。支持杆12は、天板3の上面から上方に離間して配置されている。
【0033】
支持杆12の一方側(左側)には、一方固定部4Lの取付部4Laが取り付けられる。支持杆12の他方側(右側)には、他方固定部4Rの取付部4Raが取り付けられる。具体的には、筒状に形成された取付部4La及び取付部4Raに支持杆12が挿通されている。これにより、
図9に矢印Cで示すように、一方固定部4L及び他方固定部4Rは、支持杆12に沿ってスライド移動可能となる。
【0034】
図3、
図9に示すように、押さえ部4Lbの溝部4Lcに脚部65Lの接地部65bを嵌め入れ、押さえ部4Rbの溝部4Rcに脚部65Rの接地部65bを嵌め入れ、蝶ナット14をボルト13に対して締め付けることにより、脚部65L,65Rを固定部4に固定することができる。
一方固定部4Lは、支持杆12に対する一方固定部4Lの位置を固定する位置決め部4Ldを有する。他方固定部4Rは、支持杆12に対する他方固定部4Rの位置を固定する位置決め部4Rdを有する。位置決め部4Ldの構成と位置決め部4Rdの構成は同じであるため、代表して位置決め部4Ldの構成について説明する。
【0035】
位置決め部4Ldは、取付部4Laの上部に形成された雌ねじ部4aと、この雌ねじ部4aに螺合された止めねじ4bとを有する。止めねじ4bを回転させて雌ねじ部4aに対して下方に移動させ、止めねじ4bの先端(下端)を支持杆12に圧接させることにより、一方固定部4Lが支持杆12に沿ってスライド移動不能となる。これにより、一方固定部4Lを支持杆12に対して位置決めすることができる。同様に、位置決め部4Rdによって、他方固定部4Rを支持杆12に対して位置決めすることができる。
【0036】
上記した調整機構8によれば、一方固定部4L及び他方固定部4Rを支持杆12に沿ってスライド移動させることにより、一方固定部4Lと他方固定部4Rとの間隔を調整することができる。また、一方固定部4Lと他方固定部4Rとを間隔を調整した状態で位置決めすることができる。そのため、マルチコプター60の脚部65Lと脚部65Rとの間隔に合わせて一方固定部4Lと他方固定部4Rとの間隔を調整することによって、一対の脚部の間隔(脚部65Lと脚部65Rとの間隔)が異なる様々な大きさのマルチコプター60の脚部を確実に固定することができる。
【0037】
<装備品の固定等>
図1、
図2、
図10に示すように、複数の支持脚6の間(複数の支持脚6により囲まれる領域)には、マルチコプター60の飛行に必要な装備品80を収容可能な収容スペースS1が形成される。
図10は、機枠2上の天板3の下方に形成される収容スペースS1を平面視で示している。
【0038】
装備品80は、少なくとも、散布剤を収容する散布剤容器81と、散布剤を希釈するための希釈液を収容する希釈液容器82を含む。
図10等に示すように、本実施形態の場合、装備品80は、散布剤容器81と希釈液容器82に加えて、マルチコプター60に搭載されるバッテリ83(バッテリ71との交換用のバッテリ)、バッテリ83(又はバッテリ71)に電力を充電可能な充電器84、充電器84に充電する電力を発生する発電機85、発電機85を駆動するための燃料を収容した燃料タンク86を含んでいる。
【0039】
収容スペースS1は、機枠幅方向Wにおいては、第1支持脚6A及び第2支持脚6Bと、第3支持脚6C及び第4支持脚6Dとの間に形成される。収容スペースS1は、前後方向においては、第1支持脚6A及び第3支持脚6Cと、第2支持脚6B及び第4支持脚6Dとの間に形成される。収容スペースS1は、上下方向においては、機枠2の設置面G1と天板3との間に形成される。設置面G1は、荷台52(
図1参照)の上面や載置台40(
図2参照)の上面等であり、地面であってもよい。収容スペースS1は、平面視においては、第1下フレーム材7A、第2下フレーム材7B、第3下フレーム材7C、第4下フレーム材7Dにより囲まれる領域に形成される。
【0040】
図2に示すように、天板3は、装備品80を載置可能な領域R1を有する。領域R1は、装備品80の少なくとも一部を載置可能な面積を有する。この領域R1は、
図1に示すように、可動部16を第2位置(仮想線で示す)に移動することにより拡大することができる。領域R1に載置される装備品80は、収容スペースS1に収容される装備品80の一部であってもよいし、収容スペースS1に収容される装備品80とは異なる装備品であってもよい。領域R1に載置される装備品80は、例えば、アンテナ97、液体容器98(バケツ)、三脚99等である。
【0041】
図4、
図5に示すように、機枠2は、装備品80を天板3上の領域R1に固定するための固定機構87を有する。固定機構87は、装備品80を領域R1に固定するための紐状体89(
図4参照)を係止可能な係止部88を有する。紐状体89は、弾性(伸縮性)を有することが好ましく、例えばゴムバンドが好適に使用される。係止部88は、支持枠5の上部又は下部に固定された枠体から構成されており、当該枠体に紐状体89を挿通して係止することができる。係止部88は、支持枠5の複数箇所に設けられている。本実施形態の場合、係止部88は、支持枠5の第1フレーム材5Aと第2フレーム材5Bに、前後方向に間隔をあけて複数箇所に設けられている。
【0042】
本実施形態の場合、係止部88は、前後方向において第1調整部9と第2調整部10との間に配置された中間係止部88Aと、第1調整部9よりも前方に配置された前係止部88Bと、第2調整部10よりも後方に配置された後係止部88Cとを有する。中間係止部88Aは、天板3の前後方向中心よりも前方に配置された第1中間係止部88A1と、天板3の前後方向中心よりも後方に配置された第2中間係止部88A2とを含む。
【0043】
図4に仮想線で示すように、第1フレーム材5Aに設けられた前係止部88Bと第2フレーム材5Bに設けられた前係止部88Bとに紐状体89を係止することにより、紐状体89を天板3上の前部の領域R11において機枠幅方向Wに延ばすことができる。そのため、この紐状体89によって、天板3上の前部の領域R11に載置された装備品を上から押さえて固定することができる。
【0044】
図4に仮想線で示すように、第1フレーム材5Aに設けられた後係止部88Cと第2フレーム材5Bに設けられた後係止部88Cとに紐状体89を係止することにより、紐状体89を天板3上の後部の領域R12において機枠幅方向に延ばすことができる。そのため、この紐状体89によって、天板3上の後部の領域R12に載置された装備品を上から押さえて固定することができる。
【0045】
また、第1フレーム材5Aに設けられた第1中間係止部88A1と第2フレーム材5Bに設けられた第1中間係止部88A1とに係止された紐状体89によって、マルチコプター60の脚部65L,65Rの前部を上方から押さえて固定することができる。第1フレーム材5Aに設けられた第2中間係止部88A2と第2フレーム材5Bに設けられた第2中間係止部88A2とに係止された紐状体89によって、マルチコプター60の脚部65L,65Rの後部を上方から押さえて固定することができる。
【0046】
固定部4によりマルチコプター60の脚部65を天板3上に固定し、固定機構87により装備品80を天板3上に固定した状態で、マルチコプター60を上昇させることにより、機枠2及び天板3と共に装備品80を上昇させることができる。ここで、機枠2は、マルチコプター60が上昇したときに、収容スペースS1に侵入する(収容スペースS1を通過する)部位を有していない。具体的には、支持脚6が支持枠5から下方に向けて直線状に延びているため、マルチコプター60と共に機枠2が上昇する際に、収容スペースS1に収容された装備品80が支持脚6に当たって上昇の妨げになることがない。
【0047】
このように、離着陸部1が固定部4と固定機構87を備えることにより、マルチコプター60によって装備品80を機枠2と共に移動(上昇)させることができる。そのため、装備品80を移動させる(降ろす)作業を人力に依らずにマルチコプター60で行うことができ、作業者の労力を軽減することが可能となる。特に、機枠2を荷台52に搭載している場合、天板3上に載置された装備品80は地面から高い位置にあるため、人力で降ろすのには大変な労力を要するが、マルチコプター60によって機枠2と共に降ろすことにより労力を低減できる。また、マルチコプター60の脚部65を固定部4に加えて固定機構87も使用して天板3上に固定することにより、マルチコプター60と天板3とが強固に固定されるため、マルチコプター60を上昇させたときに天板3が外れて機枠2及び装備品80と共に落下することを確実に防止できる。そのため、装備品80の重量が重い場合であっても、確実に装備品80をマルチコプター60と共に上昇させて荷台等から降ろすことができる。
【0048】
<離着陸部(可動部)>
図11~
図13に示すように、機枠2は、天板3に対して移動可能な可動部16を有することが好ましい。可動部16は、マルチコプター60が離着陸可能な面積を第1面積とする第1位置P1と、マルチコプター60が離着陸可能な面積を第1面積よりも大きい第2面積とする第2位置P2とに移動可能である。つまり、可動部16を移動させることにより、天板3の面積を変化させることができる。
図4はマルチコプター60が離着陸可能な面積を第1面積とした状態を示し、
図12はマルチコプター60が離着陸可能な面積を第2面積とした状態を示している。
【0049】
図12に示すように、可動部16は、ヒンジ53によって機枠2の縁部と接続されている。可動部16は、水平方向を向くヒンジ軸を中心に回動可能であって、回動することにより第1位置P1と第2位置P2とに移動することができる。可動部16は、第1位置P1と第2位置P2とに移動することによって、天板3に対する位置を変更する。
可動部16は、フレーム材を組み合わせて構成された可動枠16Aと、この可動枠16Aの表面(上面)に固定された可動板16Bとを有する。可動板16Bは、第2位置P2にあるとき、機枠2上に設けられた天板3と並んで配置される。
【0050】
本実施形態の場合、可動部16の形状は、平面視にて四角形であるが、三角形、半円形等の任意の形状とすることができる。可動板16Bの上面は、可動部16が第2位置P2にあるとき、天板3と面一な面(水平面)を構成する。
図11に示すように、可動部16は、第2位置P2にあるとき、補強部材17により下方から支えられる。
図12に示すように、可動部16は、第1可動部161、第2可動部162、第3可動部163を含む。第1可動部161は、機枠2(支持枠5)の後部と接続されている。第2可動部162は、機枠2(支持枠5)の左部と接続されている。第3可動部163は、機枠2(支持枠5)の右部と接続されている。
図11~
図13に示すように、第1可動部161、第2可動部162、第3可動部163は、第2位置P2から第1位置P1に向けて折り畳み可能である。本実施形態の場合、第1可動部161は下方に向けて折り畳み可能であり、第2可動部162及び第3可動部163は上方に向けて折り畳み可能である。
【0051】
図14は、可動部16の別の実施形態を示している。この実施形態では、可動部16は、第1位置P1と第2位置P2との間でスライド移動可能である。機枠2には可動部16のスライド移動を案内するレール(図示略)が取り付けられており、可動部16はこのレールに沿って移動することにより第1位置P1と第2位置P2との間で移動可能である。
【0052】
<離着陸部(幌構造体)>
図15に示すように、離着陸部1は、幌構造体18を取り付け可能であることが好ましい。幌構造体18は、天板3上に着陸したマルチコプター60の上方を覆うカバー部材18Aと、カバー部材18Aをマルチコプター60の上方に支持する支持部材18Bとを有する。支持部材18Bは、支柱18B1と上枠体18B2とを有する。
【0053】
支柱18B1は、機枠2又は天板3に設けられた取付部19に着脱可能に取り付けられている。取付部19は、例えば、機枠2又は天板3の四つの角に夫々設けられた筒体であり、当該筒体に支柱18B1の下端部が挿入されて固定される。これにより、支柱18B1は、機枠2又は天板3の4つの角(左前部、右前部、左後部、右後部)にそれぞれ立設される。
【0054】
上枠体B2は、支柱18B1の上部同士を連結して構成されており、平面視にて四角形に構成されている。但し、上枠体B2の平面視形状は、天板3の平面視形状と合わせることが好ましい。本実施形態の場合、天板3の平面視形状が四角形であるため、上枠体B2の平面視形状も四角形とされている。
カバー部材18Aは、上枠体B2を上方から覆うように、上枠体B2に対して取り付けられる。カバー部材18Aは、例えば、合成樹脂や布等から構成されるシート材である。カバー部材18Aは、少なくとも天板3上に着陸したマルチコプター60の上方を覆うことができる大きさ(面積)を有していればよいが、天板3の上方の全域を覆う大きさであることが好ましい。
【0055】
カバー部材18Aは、天板3上に着陸したマルチコプター60の上方だけでなく周囲(側方)も覆うことができるものとしてもよい。この場合、カバー部材18Aは、上枠体B2の上部を覆うだけでなく、隣り合う支柱18B1の間(例えば、左前部の支柱と左後部の支柱との間、右前部の支柱と右後部の支柱との間、左前部の支柱と右前部の支柱との間、左後部の支柱と右後部の支柱との間)も覆うことができる大きさのものが使用される。
カバー部材18Aは、天板3上に着陸したマルチコプター60及び装備品80を風雨から保護する機能を有する。
【0056】
<走行体>
図1は、走行体20の実施形態の一例を示す図である。
図1に示す走行体20は、少なくとも離着陸部1と散布剤容器81と希釈液容器82と供給装置102を搭載可能な荷台52を有する車両51である。車両51は、例えばトラックであり、好ましくは軽トラック(軽自動車の規格に合わせて製造されたトラック)である。離着陸部1と散布剤容器81と希釈液容器82と供給装置102は、走行体20の荷台52に搭載されることにより、走行体20と共に移動することができる。
【0057】
図2は、走行体20の実施形態の他の例を示す図である。
図2に示す実施形態の場合、走行体20は、少なくとも離着陸部1と散布剤容器81と希釈液容器82と供給装置102を搭載可能な台車21である。台車21は、牽引車両30に牽引されることにより走行可能である。
牽引車両30は、台車21を牽引可能な車両であれば特に限定されないが、本実施形態の場合はトラクタである。牽引車両(トラクタ)30は、車体31、前輪32、後輪33、運転席34、連結機構35を備えている。車体31は、原動機(エンジン)36、クラッチを有するクラッチハウジング37、変速装置を有するミッションケース38等を連結して構成されている。
【0058】
原動機36は、車体31に搭載されて当該車体31の前部に配置されている。クラッチハウジング37は、エンジン36の後部に連設されており、クラッチを収容している。ミッションケース38は、クラッチハウジング37の後部に連結されて後方に延びている。ミッションケース38は、変速装置や後輪差動装置等を収容している。ミッションケース38の後方には、PTO軸39が突出している。
【0059】
連結機構35は、牽引車両30の後部に設けられている。連結機構35は、台車21を牽引車両30の後部に連結するための機構である。連結機構35は、圃場等に対して作業を行う作業装置(耕耘機等)を連結することもできる。
図16に示すように、連結機構35は、3点リンク機構等のリンク機構から構成されており、台車21や作業装置を昇降可能に連結することができる。
【0060】
連結機構35を構成するリンク機構は、トップリンク35aと、左側及び右側のロアリンク35bと、左側及び右側のリフトアーム35cと、左側及び右側のリフトロッド35dを有する。リフトアーム35cの前端部は、ミッションケース38の後上部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトアーム35cは、リフトシリンダ35eの駆動によって揺動(昇降)する。リフトシリンダ35eは、油圧シリンダから構成されている。リフトシリンダ35eは、制御弁を介して、油圧システムのポンプと接続されている。制御弁は、制御装置によって制御される電磁弁である。
【0061】
ロアリンク35bの前端部は、ミッションケース38の後下部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。トップリンク35aの前端部は、ロアリンク35bよりも上方において、ミッションケース38の後部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトロッド35dは、リフトアーム35cとロアリンク35bとを連結している。ロアリンク35bの後部及びトップリンク35aの後部には、台車21が連結される。リフトシリンダ35eが駆動(伸縮)すると、リフトアーム35cが昇降するとともに、リフトロッド35dを介してリフトアーム35cと連結されたロアリンク35bが昇降する。これにより、台車21がロアリンク35bの前部を支点として、上方又は下方に揺動(昇降)する。連結機構35が台車21を昇降したとき、台車21に搭載された機枠2上の天板3は水平に維持される。
【0062】
原動機36からの回転動力は、PTO軸39を介して牽引車両30の外部に取り出すことができる。PTO軸39を介して牽引車両30の外部に取り出された回転動力は、装備品80の発電機85の駆動や、連結機構35に連結された作業装置の駆動等に用いることができる。
図17~
図19に示すように、台車21は、載置台40、車輪41、連結部42を有する。
【0063】
載置台40は、下枠体43と前枠体44とを有する。下枠体43は、平面視四角形状に組み合わされた第1下枠材43A、第2下枠材43B、第3下枠材43C、第4下枠材43Dを有する。第1下枠材43Aと第2下枠材43B、第3下枠材43Cと第4下枠材43Dは、それぞれ下接続材43Eにより接続されている。下枠体43の上部には、載置板45が固定されている。載置板45の上面には、機枠2を載置することが可能である。
【0064】
前枠体44は、下枠体43の前部から上方に延びている。前枠体44は、前面視四角形状に組み合わされた第1前枠材44A、第2前枠材44B、第3前枠材44C、第4前枠材44Dを有する。第1前枠材44Aは、下枠体43の左前部から上方に延びている。第2前枠材44Bは、下枠体43の右前部から上方に延びている。第3前枠材44Cは、第1前枠材44Aの上端部と第2前枠材44Bの上端部とを接続している。第4前枠材44Dは、第1前枠材44Aの下端部と第2前枠材44Bの下端部とを接続している。第3前枠材44Cと第4前枠材44Dは、縦接続材46L,46Rにより接続されている。縦接続材46Lと縦接続材46Rは、互いに平行に配置され、横接続材47により接続されている。
【0065】
図17、
図18に示すように、載置台40は、第1下枠材43Aの前後方向中途部と第1前枠材44Aの上部、第2下枠材43Bの前後方向中途部と第2前枠材44Bの上部をそれぞれ接続する斜め材48を有していてもよい。
車輪41は、ブラケット49を介して下枠体43の下部に取り付けられている。ブラケット49は、車輪41を縦軸回りに回動可能に支持している。車輪41及びブラケット49は、キャスタを構成している。
【0066】
連結部42は、牽引車両30の連結機構35に連結される部分である。連結部42は、前枠体44の上部に設けられている。連結部42は、トップリンク35aに連結される上連結部42Aと、左側のロアリンク35bに連結される左連結部42Bと、右側のロアリンク35bに連結される右連結部42Cとを有する。
上連結部42Aは、左部材42A1、右部材42A2、連結軸42A3を有する。左部材42A1と右部材42A2とは互いに平行に配置され、前枠体44から上前方に延びている。連結軸42A3は、左部材42A1と右部材42A2とを連結している。
【0067】
左連結部42Bは、左板42B1と左軸42B2を有する。右連結部42Cは、右板42C1と右軸42C2を有する。左板42B1は、縦接続材46Lに接続されている。右板42C1は、縦接続材46Rに接続されている。左板42B1及び右板42C1は、縦接続材46L,46Rから前方に突出している。左軸42B2は、左板42B1から左方に突出している。右軸42C2は、右板42C1から右方に突出している。左板42B1と左部材42A1とは、左接続体50Lにより接続されている。右板42C1と右部材42A2とは、右接続体50Rにより接続されている。
【0068】
図16に示すように、連結部42は、上連結部42Aがトップリンク35aに連結される。左連結部42Bは、左軸42B2が左側のロアリンク35bに連結される。右連結部42Cは、右軸42C2が右側のロアリンク35bに連結される。これにより、連結部42が牽引車両30の連結機構35に連結され、台車21は牽引車両30の走行に伴って走行可能となる。牽引車両30の連結機構35のリフトシリンダ35eを駆動することにより、台車21を昇降することができる。機枠2は、台車21の載置台40に搭載されることにより、走行体20と共に移動することができる。
【0069】
<供給装置>
図1に示すように、離着陸装置100は、散布剤容器81に収容された散布剤及び希釈液容器82に収容された希釈液をマルチコプター60に供給する供給装置102を備えている。本実施形態では、供給装置102はポンプである。供給装置102は、離着陸部1に取り付けられている。詳しくは、供給装置102は、機枠2に取り付けられている。より詳しくは、供給装置102は、機枠2の天板3又は支持枠5の下部に取り付けられている。
【0070】
供給装置102には、第1ホース103と第2ホース104とが接続されている。第1ホース103は、散布剤容器81に収容された散布剤及び希釈液容器82に収容された希釈液を取り出す(吸い上げる)ためのホースである。散布剤容器81から取り出す散布剤の量と希釈液容器82から取り出す希釈液の量は、液体の流量を調整可能なバルブ等の調整装置54により調整される。散布剤と希釈液とは混合された液体(散布液)の状態で第1ホース103に導かれる。第2ホース104は、第1ホース103により取り出された散布剤及び希釈液の混合液(散布液)をマルチコプター60のタンク73に送るためのホースである。
【0071】
供給装置(ポンプ)102を駆動すると、散布剤容器81に収容された散布剤及び希釈液容器82に収容された希釈液が吸い上げられる。散布剤の量及び希釈液の量は、調整装置54により調整される。量が調整された散布剤と希釈液とは混合され、混合された混合液(散布液)が第1ホース103を通って取り出され、第2ホース104を通ってマルチコプター60のタンク73に送られる。これにより、離着陸部1に着陸したマルチコプター60のタンク73に対して散布液を円滑に補給することができる。
【0072】
供給装置102は、散布剤と希釈液とが別途調製されて散布液として貯留されているタンクから散布液を吸い出し、マルチコプター60のタンク73に送るように構成されていてもよい。
【0073】
<散布剤供給システム>
離着陸装置100は、
図20に示す散布液の供給システム101を備えることができる。この供給システム101は、走行体20に搭載することができる。供給システム101は、離着陸部1に着陸したマルチコプター60に散布液を供給(補給)することができる。以下、供給システム101について説明する。
【0074】
図20に示すように、供給システム101は、第1貯留装置110を備えている。第1貯留装置110は、散布する第1液体を貯留する装置である。第1液体は、散布剤(農薬等の薬剤や肥料)が含まれる液体であって、例えば、農薬の場合は、当該農薬を構成する化学成分を有する液体である。第1液体は、農薬の原液であってもよいし、農薬の原液を希釈した希釈液であってもよく限定されない。
【0075】
本実施形態の場合、第1貯留装置110は、第1液体を貯留する複数の貯留タンク111を含んでいる。複数の貯留タンク111は、それぞれ化学成分の異なる第1液体を貯留している。この実施形態では、第1貯留装置110は、3台の貯留タンク111a、111b、111cを有する。貯留タンク111a、111b、111cのそれぞれに、化学成分の異なる農薬が貯留されている。但し、貯留タンクの台数は限定されず、1台であってもよいし、2台であってもよいし、4台以上であってもよい。貯留タンク111は、上述した散布剤容器81に相当する。
【0076】
供給システム101は、第2貯留装置113を備えている。第2貯留装置113は、第2液体を貯留する装置であり、例えば、貯留タンク111a、111b、111cのそれぞれよりも貯留量が大きいタンクで構成されている。第2液体は、第1液体を希釈する液体、即ち、第1液体の濃度を下げる液体(希釈液)であって、例えば、水(希釈水)である。第2貯留装置113は、上述した希釈液容器82に相当する。
【0077】
供給システム101は、生成装置120を備えている。生成装置120は、第1貯留装置110の第1液体と、第2貯留装置113の第2液体とを混合して散布液を生成する装置である。生成装置120は、送出ポンプ121と、第1混合室122と、第2混合室123とを有する。送出ポンプ121は、第1貯留装置110の第1液体を第2混合室123に送出する装置である。第1混合室122は、第1液体と第2液体とを混合する室である。第2混合室123は、複数の第1液体を混合する室である。
【0078】
詳しくは、送出ポンプ121は、第1貯留装置110が有する貯留タンク111a、111b、111cのそれぞれに対応した3つのポンプ、即ち、第1ポンプP11、第2ポンプP12、第3ポンプP13を有する。第1ポンプP11と貯留タンク111aとは流路124aにより接続されている。第2ポンプP12と貯留タンク111bとは流路124bにより接続されている。第3ポンプP13と貯留タンク111cとは流路124cにより接続されている。
【0079】
第1ポンプP11と第2混合室123とは流路125aにより接続されている。第2ポンプP12と第2混合室123とは流路125bにより接続されている。第3ポンプP13と第2混合室123とは流路125cにより接続されている。即ち、流路125a、125b、125cによって、送出ポンプ121と第2混合室123とを接続する第1流路125が構成されている。
【0080】
第1ポンプP11は、貯留タンク111aの第1液体を第2混合室123に送出する。第2ポンプP12は、貯留タンク111bの第1液体を第2混合室123に送出する。第3ポンプP13は、貯留タンク111cの第1液体を第2混合室123に送出する。
第2混合室123は、複数の貯留タンク111a、111b、111cの第1液体が供給され、内部でそれぞれの第1液体を混合した混合液を生成する室である。第2混合室123と、第1混合室122とは、第2流路127により接続されている。
【0081】
生成装置120は、調整部128を有する。調整部128は、第2流路127に設けられて且つ開度が変更可能な電磁弁である。調整部128は、開度を変更することによって、複数の貯留タンク111a、111b、111cの第1液体を合わせた混合液の第1混合室122への供給量(第2混合室123で混合された混合液の第1混合室122への供給量)を調整する。なお、第2混合室123内部の圧力を一定にする圧力調製機129が当該第2混合室123へ接続されていてもよい。
【0082】
生成装置120は、第3流路130を備えている。第3流路130は、第2貯留装置113と第1混合室122とを接続している。第3流路130には、全開又は全閉可能な開閉弁135が接続されている。したがって、開閉弁135を全開にすることで、第2貯留装置113の第2液体は、第3流路130を通過して第1混合室122に供給され、当該第1混合室122に供給された第1液体と混合することで、第1液体を希釈する。このように、第1液体を第2液体で希釈した希釈液が第1混合室122で生成され、生成された希釈液、即ち、散布液は、第1混合室122に一時的に貯留される。
【0083】
供給システム101は、供給ポンプP14を有する。供給ポンプP14は、第1混合室122で一時的に貯留された散布液をマルチコプター60のタンク73に供給するポンプである。詳しくは、第1混合室122と供給ポンプP14とが第4流路131により接続され、供給ポンプP14には第5流路132が接続されている。
供給ポンプP14、第4流路131、第5流路132、「調整部128及び開閉弁135」は、それぞれ上述した供給装置102、第1ホース103、第2ホース104、調整装置54に相当する。
【0084】
供給ポンプP14を駆動すると、第1混合室122の散布液が第4流路131(第1ホース103)及び第5流路132(第2ホース104)を通過して離着陸部1に着陸したマルチコプター60のタンク73に供給される。
供給システム101は、制御装置140と、第1測定装置141と、第2測定装置142とを備えている。制御装置140には、第1測定装置141及び第2測定装置142が接続されている。制御装置140は、供給システム101の各種制御を行うことができる装置であって、CPUや記憶部等から構成されている。第1測定装置141は、例えば、第2流路127において、調整部128と第1混合室122との区間に設けられている。第1測定装置141は、調整部128から第1混合室122へ供給された第1液体の供給量を測定する。第2測定装置142は、第3流路130において、開閉弁135から第1混合室122との区間に設けられている。第2測定装置142は、第2貯留装置113から第1混合室122へ供給された第2液体の供給量を測定する。
【0085】
制御装置140は、第1混合室122における散布剤の希釈倍率が所定値になるよう生成装置120を制御する。例えば、制御装置140は、散布剤の希釈倍率を取得すると、希釈倍率に応じて調整部128の開度を設定することで、当該調整部128から第1混合室122へ供給される供給量を設定する。
<離着陸部の変更例>
図21~
図31は、離着陸部1の変更例を示している。
【0086】
以下、説明の便宜上、変更例に係る離着陸部1を「第2離着陸部1A」という。
第2離着陸部1Aは、機枠221と、機枠221に設けられ且つ液体を貯蔵するタンク222と、タンク222の上面に設けられ且つマルチコプター60が離着陸する離着陸スペース(平面視領域)223と、を備えている。
また、
図25~
図31に示すように、第2離着陸部1Aは、離着陸スペース223を拡張させる拡張部材224を備えている。その他、第2離着陸部1Aは、予備タンク225、発電機226を少なくとも積載する積載スペース227、脚部材228、キャスタ229、当該第2離着陸部1Aを牽引車両30に連結させる連結部42を備えている。
【0087】
図21~
図27に示すように、機枠221は、タンク222、積載スペース227、連結部42等を支持する枠材である。機枠221には、脚部材228が設けられている。
機枠221は、前枠材231と、前枠材231の左右端部それぞれに接続された左枠材232L及び右枠材232Rと、この左枠材232Lと右枠材232Rの後端部に接続された後枠材233とを有する。本実施形態の場合、機枠221の平面視形状は、長方形であるが、正方形や円形等の他の形状であってもよい。また、機枠221は、前枠材231、左枠材232L、右枠材232R及び後枠材233の下面が板材により覆われていてもよい。
【0088】
前枠材231、左枠材232L、右枠材232R及び後枠材233は、棒材やパイプ材等によって形成されている。前枠材231には、連結部42が設けられている。連結部42は、前枠材231から前上方に延びており、牽引車両30の連結機構35に対して装着可能である。前枠材231及び左枠材232L、右枠材232Rの前部には、積載スペース227を構成する箱体が支持されている。積載スペース227には、後述する予備タンク225や発電機226が積載される。左枠材232L、右枠材232Rの中途部から後部にかけての部分と後枠材233は、タンク222を支持するタンク支持部234を構成している。タンク支持部234は、左枠材232L、右枠材232Rの中途部から上方に突出した左右の前支持材234aと、後枠材233の左右端部から上方に突出した左右の後支持材234bを有する。タンク支持部234は、前支持材234aと後支持材234bとの間に、タンク222の下部を嵌め入れて支持することができる。
【0089】
タンク222は、マルチコプター60により散布される散布液を貯留するものである。タンク222は、希釈液を収容するタンク(希釈液容器82)とすることもできるし、散布剤を収容するタンク(散布剤容器81)と希釈液を収容するタンク(希釈液容器82)の2つとすることもできる。また、1つのタンク222の内部を、散布剤を収容する空間(散布剤容器81)と希釈液を収容する空間(希釈液容器82)の2つに仕切ってもよい。また、図示していないが、タンク222には、上述した第1ホース103、第2ホース104、供給装置(ポンプ)102、調整装置(バルブ等)54を接続することができる。タンク222に貯留された散布液は、マルチコプター60のタンク73に供給(補充)される。
【0090】
図23~
図27等に示すように、タンク222は、容器235と蓋236とを有する。
容器235は、液体が収容される内部空間を形成している。本実施形態の場合、容器235は、直方体形状である。容器235は、当該容器235の上面に、液体を内部空間に供給するための供給部237を有する。供給部237は、容器235の上面から円筒状に突出する筒状体237aを有する。筒状体237aには、蓋236がネジ等により着脱可能に装着される。
【0091】
本実施形態の場合、タンク222の平面視形状は、長方形であるが、正方形や円形等の他の形状であってもよい。タンク222の上面には、マルチコプター60が離着陸する離着陸スペース(平面視領域)223が設けられている。離着陸スペース223を構成しているタンク222の上面は、平面又は略平面である。離着陸スペース223は、平面視にてマルチコプター60が離着陸することが可能な面積(形状)を有する。
【0092】
タンク222の上面には、フックやバンド等の固定具を引っ掛けてマルチコプター60を固定することが可能な固定部238が設けられている。固定部238は、タンク222の上面の複数箇所に設けられている。固定部238は、タンク222の側面に設けてもよい。
タンク222の側面には、把持部239が設けられている。把持部239は、タンク222を持ち運ぶとき等に作業者が把持する部分である。本実施形態の場合、把持部239は、取っ手から構成されているが、作業者が指を引っ掛けることができる窪みであってもよい。また、タンク222の側面には、拡張部材224が取り付けられてもよい。
【0093】
タンク222の下部の側面には、内部の液体を放出するために、蛇口などの放出部240が設けられている。放出部240は、タンク222の下面に設けてもよい。タンク222の下部222aは、上部222bに比べて平面視の面積が小さくなっている。また、タンク222の下部222aの4つの角部には凹部222cが設けられている。
図23に矢印A1で示すように、タンク222は、上方からタンク支持部234に装着される。このとき、タンク支持部234の前支持材234aと後支持材234bがタンク222の凹部222cに嵌まることにより、タンク222が位置決めされて確実に支持される。また、タンク222を上方に持ち上げれば、タンク支持部234からタンク222を取り外すことができる。タンク222をタンク支持部234から取り外すことにより、タンク222を容易に洗浄することができる。
【0094】
図21~
図31に示す離着陸スペース(平面視領域)223は、タンク222の上面に設けられたマルチコプター60が離着陸するスペース(領域)である。離着陸スペース223の平面視形状は、タンク222の平面視形状と略同じである。但し、後述するように、拡張部材224を用いることによって、離着陸スペース223を拡張することができる。
【0095】
離着陸スペース223の上面(離着陸面)223aには、マルチコプター60が着陸時に画像認識するマーク(Hマークなど)が描かれていてもよい。また、離着陸スペース223の上面223aに、拡張部材224が取り付けられてもよい。
離着陸スペース223は、マルチコプター60が離着陸することができる領域を有していればよく、タンク222の上面223aの全域であってもよいし、タンク222の上面223aの一部であってもよい。例えば、固定部238が、離着陸スペース223となるタンク222の上面223aに設けられている場合は、タンク222の上面223aのうち、固定部238が設けられていない領域が離着陸スペース223となる。
【0096】
図23、
図25~
図31に示すように、拡張部材224は、離着陸スペース223を拡張させる部材である。具体的には、拡張部材224は、離着陸スペース223をタンク222の外方(前方、後方、左方、右方の少なくともいずれか一方向)に拡張させる部材である。拡張部材224は、タンク222に後付け可能な板体241(以下、「第1板体241」という)、又は、タンク222に取り付けられ且つ折り畳み可能な複数の板体242(以下、「第2板体242」という)である。
【0097】
先ず、拡張部材224が第1板体241である場合について説明する。
図23及び
図25~
図29は、拡張部材224が第1板体241である場合を示している。
第1板体241は、タンク222に対して後付け可能である。第1板体241がタンク222に対して取り付けられたとき、第1板体241の上面はタンク222の上面(離着陸面223a)と略面一となる。第1板体241の平面視形状は、長方形、正方形、半円形、扇形等の任意の形状とすることができる。
【0098】
タンク222には、第1板体241をタンク222に後付け可能とする取付部材280が設けられている。取付部材280は、ボルト等の取り付け具によってタンク222に取り付けられる。取付部材280は、タンク222に予め取り付けられていてもよいし、必要時にタンク222に取り付けてもよい。取付部材280は、タンク222の側面に取り付けられる第1部位280aと、第1部位280aによって支持され且つタンク222の側面から水平に延びる第2部位280bとを有する。第2部位280bの上面には、第1板体241を載置することができる。第2部位280bの上面に載置された第1板体241の上面は、タンク222の上面と繋がる面となり且つタンク222の上面(離着陸面223a)と略面一となる。
【0099】
第1板体241は、取付部材280の上面(第2部位280bの上面)に載置するのみであってもよいが、ボルト等の固定具や嵌め込み等の手段によって取付部材280の上面に固定することが好ましい。
第1板体241は、複数の板体から構成されていてもよいし、1つの板体だけで構成されていてもよい。
図28、
図29に示す例では、第1板体241は、複数(3つ)の板体から構成されている。複数の第1板体241は、供給部237が無い複数の側面からそれぞれ水平に延びるように取り付けられている。この場合、複数の第1板体241は、供給部237が無い複数の側面に取り付けられた取付部材280にそれぞれ載置される。但し、複数の第1板体241は、タンク222の全ての側面から水平に延びるように取り付けてもよい。第1板体241が1つの板体から構成されている場合、第1板体241は、供給部237が無い1つの側面から水平に延びるように取り付けられることが好ましい。
【0100】
図28に示すように、第1板体241は、取付部材280に載置されない板体241aを含んでいてもよい。板体241aは、隣り合う第1板体241の間を埋めるための板体であって、連結具280cにより隣り合う第1板体241と連結される。
第1板体241は、取付部材280の代わりに、把持部239を介して後付けしてもよい。第1板体241の板体や取付部材280は、タンク222に取り付けられていない際には、第2離着陸部1Aの積載スペース227に積載されていてもよい。取付部材280は、1つの第1板体241に対して複数用いられていてもよい。
【0101】
第1板体241は、タンク222に取り付けられていないときには、第2離着陸部1Aの積載スペース227に積載することができる。
次に、拡張部材224が第2板体242である場合について説明する。
図30及び
図31は、拡張部材224が第2板体242である場合を示している。
拡張部材224が第2板体242である場合、拡張部材224は折り畳まれた状態(非展開状態)と開いた状態(展開状態)とに変更可能である。
図30及び
図31において、拡張部材224が折り畳まれた状態(非展開状態)を破線で示し、開いた状態(展開状態)を実線で示している。拡張部材224は、折り畳まれた状態(非展開状態)から開いた状態(展開状態)に変更されることにより、平面視面積が増加し、離着陸スペース223が拡張する。
【0102】
拡張部材224は、開いた状態(展開状態)において、第2板体242の上面がタンク222の上面(離着陸面223a)と略面一となる。第1板体241の展開状態における平面視形状は、長方形、正方形、半円形、扇形等の任意の形状とすることができる。
第2板体242は、複数の帯状板242bをヒンジ(図示略)を介して連結した構成を有しており、ヒンジの部分で折り曲げることによって折り畳み可能である。尚、第2板体242は、1枚の板材に複数の薄肉部を平行に設けたものであってよい。この場合、第2板体242は、薄肉部で折り曲げることによって折り畳み可能となる。第2板体242は、一つの辺がタンク222の側面に対して直接的に又はボルト等を介して取り付けられている。第2板体242は、タンク222に予め取り付けられていてもよいし、必要時にタンク222に取り付けてもよい。
【0103】
第2板体242は、1つの折り畳み可能な板体だけで構成されていてもよいし、複数の折り畳み可能な板体で構成されてもよい。
図30及び
図31に示す例では、第2板体242は、複数(3つ)の折り畳み可能な板体で構成されている。
図30及び
図31において、第2板体242が折り畳まれていない状態(展開した状態)を実線で示し、折り畳まれた状態を破線で示している。複数の第2板体242は、供給部237が無い複数の側面からそれぞれ水平に展開可能に取り付けられている。但し、複数の第2板体242は、タンク222の全ての側面から水平に展開可能に取り付けてもよい。第2板体242が1つの板体から構成されている場合、第2板体242は、供給部237が無い1つの側面から水平に展開可能に取り付けられることが好ましい。
【0104】
図30に示すように、第2板体242は、タンク222の側面に取り付けられない板体242aを含んでいてもよい。板体242aは、隣り合う第2板体242の間を埋めるための板体であって、連結具280cにより隣り合う第2板体242と連結される。
第2板体242は、後付けされる場合であって、タンク222に取り付けられていないときには、第2離着陸部1Aの積載スペース227に積載することができる。
【0105】
拡張部材224は、上述した第1板体241と第2板体242の両方を組み合わせて構成されたものであってもよい。
積載スペース227は、予備タンク225と発電機226を積載するスペースである。また、図示していないが、タンク222及び予備タンク225に接続された液体をマルチコプター60のタンク73に供給するための供給装置(ポンプ)を積載することもできる。
【0106】
図21~
図27に示すように、積載スペース227は、機枠221の前部に設けられている。積載スペース227は、上部が開口した略直方体状の箱体である。積載スペース227の前部は、機枠221の前枠材231の上面に載置されている。積載スペース227の前後方向中途部から後部にかけての左右端部は、機枠221の左枠材232L、右枠材232Rの前部から中途部にかけての上面に載置されている。積載スペース227の前面は、後述する連結部42の中央ブラケット248を後方から支持している。積載スペース227の後面は、タンク支持部234の前支持材234aを前方から支持している。
【0107】
積載スペース227は、上部を閉鎖可能な蓋体を有していてもよい。積載スペース227は、その内部を仕切る仕切りが設けられていてもよい。積載スペース227は、予備タンク225や発電機226以外に、農作業具や工具など、その他の付属品を積載してもよい。
予備タンク225は、液体を貯蔵可能なタンクである。
図21、
図22及び
図24~
図27に示すように、予備タンク225は、積載スペース227に積載されている。タンク222と予備タンク225には同じ液体を貯蔵してもよいが、タンク222と予備タンク225のうち、一方のタンクを散布剤を収容するタンク(散布剤容器81)とし、他方のタンクを希釈液を収容するタンク(希釈液容器82)とすることもできる。
【0108】
予備タンク225は、予備容器244と予備蓋245とを有する。
予備容器244は、液体が収容される内部空間を形成している。予備容器244は、当該予備容器244の上面に、液体を内部空間に供給するための予備供給部246を有する。予備供給部246は、予備容器244の上面から円筒状に突出する予備筒状体246aを有する。予備筒状体246aには、予備蓋245がネジ等により着脱可能に装着される。予備タンク225の形状は、本実施形態の場合、直方体状であるが、立方体状や円柱状等の他の形状であってもよい。
【0109】
予備タンク225は、必要に応じて積載スペース227から取り出されて、散布液の調合や、マルチコプター60のタンク73への散布液の補給のために使用される。予備タンク225は、積載スペース227から取り出すことにより洗浄しやすい。予備タンク225の側面や上面には、取手や窪みなどの把持部が設けることができる。作業者は、予備タンク225を積載スペース227から取り出す際や、散布液の調合や補給などの作業を行う際に、当該把持部を把持することができる。
【0110】
発電機226は、マルチコプター60のバッテリ71を図示しない充電器を介して充電可能な機器である。
図21、
図22及び
図24~
図27に示すように、発電機226は、積載スペース227に積載されている。
発電機226は、本実施形態の場合、オルタネータである。但し、発電機226は、モータジェネレータであってもよい。発電機226は、出力電圧が60V以下であることが好ましいが、60V超であってもよい。出力電圧が60V以下の発電機226を使用することによって、消費電力を削減することができ、安全性にも優れている。したがって、マルチコプター60や、当該マルチコプター60の作業装置66は、60V以下の低電圧で作動可能なものが好適に使用される。具体的には、作業装置66として、散布装置や播種装置が好適に使用される。本実施形態の場合、作業装置66は散布装置である。なお、発電機226の動力源として、トラクタなどの牽引車両30におけるPTO軸39や油圧取出し部から取り出した動力を使用してもよい。
【0111】
図21~
図27に示すように、脚部材228は、機枠221の角部の下面に設けられている。脚部材228は、伸縮可能で且つ機枠221に対して着脱可能な部材である。
脚部材228は、略矩形の機枠221における4つの角部の下面に対して、下方に突出するように着脱自在に取り付けられる。脚部材228は、下方に向けて徐々に直径が小さくなる複数の筒体から構成されている。脚部材228は、より直径の小さい筒体がより直径の大きい筒体の内部に入ることにより短縮し、より直径の小さい筒体がより直径の大きい筒体の内部から抜止め位置まで出ることにより伸長する。脚部材228は、伸長したときの長さを所定の長さで保持するため、より直径の小さい筒体をより直径の大きい筒体の内部から出た位置で留める留め具247を有していてもよい。この留め具247は、出退自在の円柱状の部材であり、各筒体に設けられた貫通孔に嵌入することにより、より直径の小さい筒体をより直径の大きい筒体の内部から出た位置で留める。
【0112】
脚部材228の下部にはキャスタ229が設けられている。キャスタ229は、4つの脚部材228の全ての下端部にキャスタ229が設けられていてもよいし(
図21参照)、4つの脚部材228のうち、左右の前脚部材228aの下端部にだけ設けられていてもよい(
図22参照)。後者の場合、キャスタ229が設けられていない左右の後脚部材228bは、移動を容易化するために下端部が丸くなっていることが好ましい。
【0113】
キャスタ229は、脚部材228の下端部に対して、板体を介して、首振り可能(自在式)または首振り不可能(固定式)に取り付けられている。キャスタ229は、例えば、単輪式、双輪式、球体式等の公知のキャスタを使用することができる。
図21~
図26に示すように、連結部42は、第2離着陸部1Aの前部に設けられている。連結部42は、牽引車両30の後部の連結機構35(3点リンク機構等)に連結される部分である。連結部42が牽引車両30の連結機構35に装着されることにより、第2離着陸部1Aが牽引車両30の後部に連結される。
【0114】
図23等に示すように、連結部42は、中央ブラケット248と、この中央ブラケット248の上端部に設けられた中央軸249と、左右の端ブラケット250L、250Rと、これら左右の端ブラケット250L、250Rの前端部に設けられた左右の端軸251L、251Rを有する。中央ブラケット248は、上述した上連結部42Aに相当する。端ブラケット250L及び端軸251Lは、上述した左連結部42Bに相当する。端ブラケット250R及び端軸251Rは、上述した右連結部42Cに相当する。
【0115】
中央ブラケット248は、左右2枚の板体から構成されている。中央ブラケット248を構成する左右2枚の板材は、機枠221の前枠材231における上面の左右方向略中央部から上方に延びた後に前方に若干屈曲し、斜め前方に延びている。中央軸249は、中央ブラケット248における左右の板体の上端部に挟まれ、その軸心方向が左右方向に略沿うように設けられている。
【0116】
左右の端ブラケット250L、250Rは、機枠221の前枠材231における前面の左右端部からそれぞれ前方に延びている。左右の端軸251L、251Rは、左右の端ブラケット250L、250Rの左右外方面における前端部からそれぞれ左右外方に突出し、その軸心方向が左右方向に略沿うように設けられている。
連結部42は、中央ブラケット248、中央軸249、左右の端ブラケット250L、250R及び左右の端軸251L、251Rを有することにより、牽引車両30の後部の連結機構35(3点リンク機構)に装着されるオートヒッチフレーム(Aフレーム)に取り付けることができる。
【0117】
連結部42が牽引車両30の連結機構35に連結された状態において、連結機構35を操作することで、離着陸スペース223を水平に調整できる。具体的には、連結機構35を構成する3点リンク機構の左右のロアリンク35bの高さを個別に調整することにより、離着陸スペース223を水平に調整できる。つまり、第2離着陸部1Aを牽引車両30の連結機構35を構成する3点リンク機構に装着することにより、離着陸スペース223を水平に調整することが可能となる。
【0118】
上述した変更例によれば、タンク222の上面に設けられ且つマルチコプター60が離着陸する離着陸スペース223を備えているため、タンク222の保管スペースとマルチコプター60が離着陸する離着陸スペース223とを別々に設ける必要がない。そのため、農薬等の液体を貯蔵するタンク222を備えながら、マルチコプター60が離着陸する離着陸スペース223を十分に確保することができるとともに、第2離着陸部1Aを小型化することができる。さらに、マルチコプター60にタンク222から散布液などの液体をピット式で補給しやすい。
【0119】
<効果>
上記実施形態の散布機能付きマルチコプター60の離着陸装置100によれば、以下の効果を奏する。
散布機能付きマルチコプター60の離着陸装置100は、散布剤を収容する散布剤容器81と、散布剤を希釈するための希釈液を収容する希釈液容器82と、散布剤と希釈液とを含む散布液を散布可能なマルチコプター60が離着陸可能な離着陸部1と、散布剤容器81に収容された散布剤及び希釈液容器82に収容された希釈液をマルチコプター60に供給する供給装置102と、少なくとも離着陸部1、散布剤容器81、希釈液容器82、供給装置102を搭載して走行可能な走行体20と、を備えている。
【0120】
この構成によれば、散布液を散布可能なマルチコプター60が離着陸部1に離着陸可能であるとともに、着陸したマルチコプター60に対して散布剤容器81、希釈液容器82、供給装置102を用いて散布液を円滑に補給することができるマルチコプター60の離着陸装置100を提供することができる。
また、離着陸装置100は、散布剤容器81から取り出す散布剤の量と、希釈液容器82から取り出す希釈液の量とを調整する調整装置54を備えている。
【0121】
この構成によれば、調整装置54によって散布剤容器81から取り出す散布剤の量と希釈液容器82から取り出す希釈液の量とを調整することができるため、適度な濃度に希釈された散布剤を散布液としてマルチコプター60のタンク等に供給(補給)することができる。
また、走行体20は、マルチコプター60に搭載されるバッテリ71と、バッテリ71に電力を充電可能な充電器84とを搭載している。
【0122】
この構成によれば、散布作業等の途中でマルチコプター60のバッテリ71に充電された電力が不足した場合には、マルチコプター60が離着陸部1に着陸した状態で、マルチコプター60に搭載されるバッテリ71を交換したり、バッテリ71に電力を充電したりすることによって、作業を速やかに再開することができる。
また、走行体20は、充電器84に充電する電力を発生する発電機85と、発電機85を駆動するための燃料を収容した燃料タンク86とを搭載している。
【0123】
この構成によれば、走行体20に搭載された充電器84に充電された電力が不足した場合、発電機85を駆動して発生した電力を充電器84に充電することができる。
また、走行体20は、荷台52を有する車両であり、離着陸部1、散布剤容器81、希釈液容器82、供給装置102は、荷台52に搭載されている。
この構成によれば、離着陸部1、散布剤容器81、希釈液容器82、供給装置102を車両の荷台52に搭載して、マルチコプター60による散布液の散布作業が必要な場所に容易に移動することができる。
【0124】
また、走行体20は、牽引車両30の後部に設けられた連結機構35に連結可能な連結部42を有している。
この構成によれば、トラック等の車両では入りにくい場所(舗装されていない農道や圃場等)であっても、トラクタ等の牽引車両30によって走行体20を牽引して移動させることができる。
【0125】
また、連結機構35は、トップリンク35aと、左側のロアリンク35bと、右側のロアリンク35bを有するリンク機構であって、連結部42は、トップリンク35aに連結される上連結部42Aと、左側のロアリンク35bに連結される左連結部42Bと、右側のロアリンク35bに連結される右連結部42Cとを有している。
この構成によれば、牽引車両30の後部に設けられた連結機構35に対して走行体20の連結部42を確実に連結することができるとともに、必要に応じて連結機構35により走行体20を昇降することができる。
【0126】
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0127】
1 離着陸部
20 走行体
30 牽引車両
35 連結機構
35a トップリンク
35b ロアリンク
42 連結部
42A 上連結部
42B 左連結部
42C 右連結部
52 荷台
54 調整装置
60 マルチコプター
72 バッテリ
81 散布剤容器
82 希釈液容器
84 充電器
85 発電機
86 燃料タンク
100 離着陸装置
102 供給装置