(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】車両における勾配信号を決定する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01C 9/00 20060101AFI20230403BHJP
G01C 7/04 20060101ALI20230403BHJP
G01S 17/88 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
G01C9/00 A
G01C7/04
G01S17/88
(21)【出願番号】P 2019550693
(86)(22)【出願日】2018-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2018053020
(87)【国際公開番号】W WO2018166718
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-01-18
(31)【優先権主張番号】102017204306.7
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ウォルフ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ビルク
(72)【発明者】
【氏名】マウロ セサル ザネッラ
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0336546(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0057115(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0030473(US,A1)
【文献】特開平7-229728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
5/00-15/14
G01S 7/48-7/51
17/00-17/95
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における勾配信号を決定する装置であって、
‐少なくとも1つの位置検出装置(1)を備え、前記位置検出装置(1)が、少なくとも1つの第1時点(t=0)及び1つの第2時点(t=1)に対して、絶対系(XYZ)における前記車両の位置を決定し、そこから前記車両の移動距離(L)を地形に近似させた直線を描写する動きベクトル(Ga
0、Ga
1)として決定するよう構成され、
‐少なくとも1つの第1レーザ距離センサ(2)を備え、前記第1レーザ距離センサ(2)が、前記車両のフロントサイドに車両長手方向軸線(X)に対して所定の角度(α)で傾斜して配置され、少なくとも前記第1時点及び前記第2時点(t=0;t=1)に対して、少なくとも1つの第1レーザビームを前記車両の前方の第1測定点(Pa)の方向に前記所定の角度(α)で放射するよう構成され、
‐少なくとも1つの手段を備え、前記手段が、少なくとも1つのレーザビーム(La)の長さ、及び少なくとも前記第1時点と前記第2時点(t=0;t=1)のそれぞれに対する、前記レーザビームの少なくとも1つの関連するベクトル、を決定するよう構成され、
‐少なくとも1つの決定装置を備え、前記決定装置が、前記動きベクトル(Ga
0、Ga
1)及び前記レーザビームの決定した前記ベクトルのそれぞれから、差分ベクトル(Ga
0,1)を決定し、そこから勾配信号を形成するよう構成されている、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記第1レーザ距離センサ(2)が、少なくとも前記第1時点及び前記第2時点(t=0;t=1)に対して、車両長手方向軸線(X)及び車両横方向(Y)に広がる2つのレーザビームを放射し、広がった前記レーザビームのうちの1つは、前記第1測定点(Pa)の方向に放射する前記第1レーザビームであり、広がった前記レーザビームのうちの第2レーザビームを、前記第1測定点(Pa)から離れたさらなる測定点(Pb)の方向に放射する、装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、前記2つのレーザビームの放射は、前記レーザ距離センサ(2)の回転又は前記レーザ距離センサ(2)の光学機器の切り替えを含む連続切り替えによって行われる、装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の装置であって、第2レーザ距離センサ(2b)を備え、前記第2レーザ距離センサ(2b)が、車両のフロントサイドに車両長手方向軸線(X)に対して所定の角度(α-β)で傾斜して配置され、少なくとも前記第1時点及び前記第2時点(t=0;t=1)に対して、少なくとも1つの第2レーザビームを前記車両の前方の第2測定点(Pb)に向けるよう構成され、前記少なくとも1つの手段が、さらに、両方のレーザ距離センサ(2;2b)のレーザビーム(La;Lb)の長さ、及びそれぞれのレーザビームの少なくとも1つの関連するベクトル、を決定するよう構成され、
‐前記少なくとも1つの決定装置が、さらに、前記動きベクトル(Ga
0、Ga
1)及び前記レーザビームの決定した前記ベクトルから、差分ベクトル(Ga
0,1、Gb
0)を決定し、そこから勾配信号を形成するよう構成されている、装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、前記第1及び第2レーザ距離センサ(2;2b)が、車両横方向(Y)に並置されている、装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の装置であって、前記装置が、さらに、勾配信号のさらなる処理を実行するよう構成された、さらなる処理装置を備え、
前記さらなる処理は、車両内で既存の調整装置へ前記勾配信号を送信することによって行い、前記調整装置が、前記勾配信号をさらに処理し、受信して処理した勾配信号に基づいて動的パラメータの適合を実行するよう構成され、又は、
前記さらなる処理は、外部処理装置へ前記勾配信号を送信することによって行い、前記外部処理装置が、前記勾配信号を、さらに処理して制御信号とし、車両の動的パラメータの適合を実施すべく前記車両内の前記さらなる処理装置へ返送するよう構成されている、装置。
【請求項7】
車両における勾配信号を決定する方法であって、
少なくとも第1時点(t=0)及び第2時点(t=1)に対して、絶対系(XYZ)における車両の位置を決定し、そこから移動距離(L)を地形に近似させた直線を描写する動きベクトル(Ga
0、Ga
1)として決定する第1ステップ(S1)と、
前記動きベクトル(Ga
0、Ga
1)、及び前記第1時点と前記第2時点(t=0;t=1)に対して決定したレーザビームのベクトルから、差分ベクトル(Ga
0,1
)を決定する第2ステップ(S2)と、を含み、前記レーザビームは、前記車両のフロントサイドに車両長手方向軸線(X)に対して所定の角度(α)で傾斜して配置された、少なくとも1つの第1レーザ距離センサ(2)から放射され、前記第1レーザ距離センサ(2)が、少なくとも前記第1時点及び前記第2時点(t=0;t=1)に対して、少なくとも1つの第1レーザビームを前記車両の前方の第1測定点(Pa)の方向に前記所定の角度(α)で放射し、そこから勾配信号を決定する、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
決定した前記勾配信号のさらなる処理を行う第3ステップ(S3)を含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記さらなる処理は、
‐車両の動的パラメータを適合させる制御信号を内部計算し、適合を実行することによって、又は、
‐前記勾配信号を外部処理へ送信し、前記勾配信号から決定された、車両の動的パラメータを適合させる少なくとも1つの制御信号を受信し、適合を実行することによって行われる、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、さらに処理された勾配信号及び/又は制御信号を、地形をデジタル化するために使用する、及び/又は他の車両に提供する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の、車両における勾配信号を決定する装置、及び対応する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
傾斜を測定するために、産業の異なる部門において、多様な方法が知られている。測定対象物上のマーカ及び/又はリフレクタを使用及び測定して角度を決定するセンサ装置及び構造は、例えば、欧州登録特許第2 910 512号、及び米国特許出願公開第2011/260 033号、又は米国特許出願公開第2016/128 783号から既知である。レーザスキャナを介する角度決定は、例えば、米国特許出願公開第2016/076 228号から既知である。さらに、レーザ距離計を使用した2回の測定により、角度を決定することができる。
【0003】
そうしたデジタル又はアナログの傾斜計は、センサの位置のみで、又は移動距離の勾配を複数回測定すること、直線状にレーザスキャンした後に評価すること、若しくは固定された対象物上のリフレクタによって、角度を決定する。こうした目的のためには、光学的方法、すなわち、例えば画像評価方法も既知である。
【0004】
測定対象である地形が未知であるため、移動する基準系における傾斜を決定するために固定マーカを使用することができない。さらに、タイムシフト測定を行う必要がある。既知の従来技術によれば、例えば車両におけるような、移動する、すなわち変位の影響も受ける基準系のためには、ドイツ特許出願公開第10 2007 037 162号が開示する、極めて複雑な方法のみが、これまで既知である。この方法では、レーザスキャナでスキャンされた測定点、及び各測定点に属するレーザスキャナの位置を、少なくとも含む測定情報が記録される。これらの測定情報は、レーザスキャナによって事前に決められて標準時で与えられた時間であるトリガ時間に対するものである。
【0005】
しかしながら、これまでのところ、車両の先読み領域、すなわち移動する基準系における地形の勾配角度を、レーザスキャナを使用せずに簡単な方法で動的に決定できる方法は知られていない。レーザスキャナは、定義された角度グリッドにおいて、レーザビームによって物体表面を三次元走査するよう機能する。したがって、物体表面を高い点密度でスキャン、すなわち走査することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州登録特許第2 910 512号
【文献】米国特許出願公開第2011/260 033号
【文献】米国特許出願公開第2016/128 783号
【文献】米国特許出願公開第2016/076 228号
【文献】ドイツ特許出願公開第10 2007 037 162号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、レーザスキャナなしでそうした決定を可能にする装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明により、独立請求項の特徴によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0009】
車両における勾配信号を決定する装置を提案する。装置が、少なくとも1つの位置検出装置を備える。位置検出装置が、少なくとも1つの第1時点及び1つの第2時点に対して、絶対系における車両の位置を決定し、そこから車両の移動距離を動きベクトルとして決定するよう構成されている。さらに装置が、少なくとも1つの第1レーザ距離センサと、少なくとも1つの手段と、少なくとも1つの決定装置と、を備える。少なくとも1つの第1レーザ距離センサが、車両のフロントサイドに車両長手方向軸線に対して所定の角度で傾斜して配置され、少なくとも第1時点及び第2時点に対して、少なくとも1つの第1レーザビームを車両の前方の第1測定点の方向に放射するよう構成されている。少なくとも1つの手段が、少なくとも1つのレーザビームの長さ、及び少なくとも第1時点と第2時点のそれぞれに対する、レーザビームの少なくとも1つの関連するベクトル、を決定するよう構成されている。少なくとも1つの決定装置が、動きベクトル及びレーザビームの決定したベクトルのそれぞれから、差分ベクトルを決定し、そこから勾配信号を形成するよう構成されている。
【0010】
提案する装置によって、レーザスキャナを使用せずに、移動する基準系における傾斜データを、簡単かつ費用対効果に優れて、動的に決定することができる。
【0011】
一実施形態において、第1レーザ距離センサは、少なくとも第1時点及び第2時点に対して、車両長手方向軸線及び車両横方向に広がる2つのレーザビームを放射する。広がったレーザビームのうちの1つは、第1測定点の方向に放射する第1レーザビームである。広がったレーザビームのうちの第2レーザビームを、第1測定点から離れたさらなる測定点の方向に放射する。
【0012】
一実施形態において、2つのレーザビームの放射は、レーザ距離センサの回転又はレーザ距離センサの光学機器の切り替えを含む連続切り替えによって行われる。
【0013】
一実施形態において、装置は第2レーザ距離センサを備える。第2レーザ距離センサが、車両のフロントサイドに車両長手方向軸線に対して所定の角度で傾斜して配置され、少なくとも第1時点及び第2時点に対して、少なくとも1つの第2レーザビームを車両の前方の第2測定点に向けるよう構成されている。少なくとも1つの手段が、さらに、両方のレーザ距離センサのレーザビームの長さ、及びそれぞれのレーザビームの少なくとも1つの関連するベクトル、を決定するよう構成されている。少なくとも1つの決定装置が、さらに、動きベクトル及びレーザビームの決定したベクトルから、差分ベクトルを決定し、そこから勾配信号を形成するよう構成されている。
【0014】
複数のレーザビーム、又は複数のレーザ距離センサさえ使用することによって、測定の際の精度がより高まる。
【0015】
一実施形態において、第1及び第2レーザ距離センサは、車両横方向に並置されている。並置することによって、道路の横方向傾斜も検出することができる。
【0016】
一実施形態において、装置は、さらに、勾配信号のさらなる処理を実行するよう構成された、さらなる処理装置を備える。さらなる処理は、車両内で既存の調整装置へ勾配信号を送信することによって行う。調整装置が、勾配信号をさらに処理し、受信して処理した勾配信号に基づいて動的パラメータの適合を実行するよう構成されている。代替的な実施形態において、装置は、さらに、勾配信号のさらなる処理を実行するよう構成された、さらなる処理装置を備える。さらなる処理は、外部処理装置へ勾配信号を送信することによって行う。外部処理装置が、勾配信号を、さらに処理して制御信号とし、車両の動的パラメータの適合を実施すべく車両内のさらなる処理装置へ返送するよう構成されている。
【0017】
さらなる処理及び/又は結果を提供することによって、自車両と他の車両の両方が、情報、すなわち決定された勾配信号から利益を得ることができる。データ及び結果は、勾配又は傾斜のための車両パラメータを最適化すべく、内部装置又は外部装置を介してさらなる処理のために使用することができる。利益を得る、とは、情報をさらなる処理のための生データとして車両間で交換可能であることも意味する。そのため、先読みするストラテジを計画できる。データを、動的パラメータの設定を指定する既に処理済みのデータとして、交換することもできる。これにより、地形の勾配又は傾斜に対する、迅速で先読みする適合が可能になる。また、独自で計算を実行できない車両も、この情報から利益を得ることができる。したがって、例えばブレーキングによる摩耗を削減し、燃料をも節約することができる。
【0018】
さらに、車両における勾配信号を決定する方法を提供する。方法は、少なくとも1つの第1時点及び1つの第2時点に対して、絶対系における車両の位置を決定し、そこから移動距離を動きベクトルとして決定する第1ステップと、動きベクトル、及び第1時点と第2時点に対して決定したレーザビームのベクトルから、差分ベクトルを決定する第2ステップと、を含む。レーザビームは、車両のフロントサイドに車両長手方向軸線に対して所定の角度で傾斜して配置された、少なくとも1つの第1レーザ距離センサから放射される。第1レーザ距離センサが、少なくとも第1時点及び第2時点に対して、少なくとも1つの第1レーザビームを車両の前方の第1測定点の方向に放射し、そこから勾配信号を決定する。
【0019】
一実施形態において、第3ステップでは、決定した勾配信号のさらなる処理を行う。
【0020】
一実施形態において、さらなる処理は、車両の動的パラメータを適合させる制御信号を内部計算し、適合を実行することによって、又は勾配信号を外部処理へと送信し、勾配信号から決定された、車両の動的パラメータを適合させる少なくとも1つの制御信号を受信し、適合を実行することによって行われる。
【0021】
一実施形態において、さらに処理された制御信号及び/又は制御信号を、地形をデジタル化するために使用する、及び/又は他の車両に提供する。
【0022】
本発明のさらなる特徴及び利点は、本発明の詳細を示す図面を参照する、本発明の実施形態に関する以下の記載、及び請求項から明らかとなる。個々の特徴は、それ自体で個別に、又は複数の特徴を本発明の変更実施形態において任意に組み合わせて、実現されてよい。
【0023】
本発明の好適な実施形態を、以下に、添付の図面を参照して詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】従来技術による、地形の勾配の静止計算の図である。
【
図2】本発明の実施形態による、先読み領域内の道路傾斜を決定すべく、2つの異なる時点でレーザ距離測定される車両の図である。
【
図3】本発明の実施形態による
図1の車両の平面図である。
【
図4】本発明の実施形態による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の図面に関する説明において、同一の要素又は機能には、同一の符号が付記されている。
【0026】
図中で使用されているインデックス0乃至1は、時点t=0又はt=1を示す。この時点で、各パラメータ、すなわち、例えばLa、Lb、Pa、Pb、Ga又はφが、決定又は測定される。
【0027】
図1は、従来技術による、地形の勾配又は傾斜の静止計算の図である。この計算は、本発明による傾斜の決定のための基礎として機能する。そのため、本発明の説明において、この計算について詳説する。
【0028】
以下に
図2及び
図3を参照し、一実施形態による、傾斜、この場合車両のための地形の傾斜を決定する装置及び方法の両方について記載する。この決定に基づいて、さらなる処理によって、異なるパラメータ、特に長手方向、垂直方向、及び横方向のダイナミクスを最適化することができる。
【0029】
移動する基準系は、慣性系でない基準系である。つまり移動する基準系は、特に加速又は移動及び変位の影響を受ける。
【0030】
車両の先読み領域(移動する基準系)における地形傾斜又は道路傾斜を決定する装置は、少なくとも1つの点測定レーザ距離センサ2及び1つの傾斜計1から構成される。傾斜計1は、角度センサ、好適にはデジタル角度センサとして設計されてよい。これらは、車内又は車上に配置されている。角度センサは、車両の、より厳密には車両の長手方向軸線の、静止慣性系、すなわち地球固定の慣性系又は絶対系に対する角度φを出力する。
図1及び
図2の上図において、この角度はφ
0と示されている。つまり、φ
0は時点t
0に対する角度φである。
図2の下図において、この角度はφ
1と示されている。つまり、φ
1は時点t
1に対する角度φである。
【0031】
レーザ距離センサ2は、
図2の上図及び
図3に示すパラメータL1、h1及びb1から決定される幾何学的に既知の位置にある。L1は、傾斜計又は角度センサ1と、レーザ距離センサ2との間の(X方向の)間隔である。h1は、レーザ距離センサ2の高さの車両長手方向軸線Xと、地形との間の(Z方向の)高さである。高さh1の直線は、車両の長手方向軸線と90度の角度を構成し、すなわち長手方向軸線に対して垂直である。b1は、レーザ距離センサ2から車両長手方向軸線(X方向)までの(Y方向の)間隔である。又は、
図3に示すように、レーザ距離センサ2からオプショナル第2距離センサ2bまでの(Y方向の)間隔を示す。
図1及び
図2に示すように、レーザ距離センサ2は、車両の先読み領域において明確な視野を有して、前方車両領域に配置されることが好適である。またレーザ距離センサ2は、車両長手方向軸線Xに対して道路又は地形の方向に傾斜角度αで傾斜する。
【0032】
図1に示すように、車両における幾何学的に既知の位置L1、h1、b1、レーザ距離センサ2の角度α、及びレーザ距離センサ2(すなわちビームの源)と地形の(この場合時点t=0に対する)測定点Paとの間のレーザ距離センサ2のビームの測定された長さLa0から、地形に近似させた直線Gaの、車両固定基準系X、Y、Zに対する勾配又は角度ξ又はΨが決定される。傾斜計1の角度信号で変換することにより、絶対系における勾配角度が、例えば従来技術から既知の方法によって、例えば米国特許出願公開第2015/355328号で提案された方法によって計算される。絶対系に対する角度を決定する傾斜計1の測定原理として、重力を使用できる。例えば、偏差又は重力加速度の影響から角度偏差を決定する加速センサクラスタ、ジャイロスコープ、又は、例えば水準器等のような既知の原理を使用することができる。
【0033】
角度ξは絶対傾斜を示し、この場合、車両の、より厳密には車両の長手方向軸線の、静止慣性系、すなわち地球固定の慣性系又は絶対系に対する角度φ、並びに車両長手方向軸線Xに対する傾斜角度α及び直線GaとレーザビームLaとの間の角度である
図1に示す角度δから、決定できる。角度Ψは相対傾斜を示し、この場合、車両長手方向軸線Xに対する傾斜角度αの差、及び直線GaとレーザビームLaとの間の角度である
図1に示す角度δから、決定できる。
【0034】
したがって、
図1から、絶対傾斜を以下の数式から計算できることがわかる。
【0035】
【0036】
図1から、相対傾斜を以下の数式から計算できることがわかる。
【0037】
【0038】
三角法、つまり形成された各三角形から、角度を決定するために以下が成り立つ。
【0039】
【0040】
その際、以下が成り立つ。
【0041】
【0042】
ここで、本発明による方法は、2つの離散時間ステップの間、例えばt=0及びt=1の間で、動的計算を提供する。
【0043】
第1ステップS1では、絶対系における車両の位置、又は車両の移動距離Lを決定する。そこから、各時点t=0及びt=1に対応する動きベクトルGa0、Ga1を決定する。既述のように、この場合Ga0、Ga1は、それぞれ、地形に近似させた直線を描写する。この決定は、GPS、又は傾斜計1若しくは他の方法を用いて行うことができる。
【0044】
GPSを用いて決定する場合、傾斜計1を省略できる。これは、GPSの位置から、時点t=0及びt=1に対する絶対系における座標X、Y、Zが既知であり、車両の移動距離Lを、ベクトル的に決定可能なため、つまり動きベクトルが決定されるためである。したがって、十分に小さい時間ステップでの、オーバーランした実際の勾配も既知である。それによって、GPS信号で良好にカバーされるエリア又は用途に対して、傾斜計1を省略できるのである。
【0045】
代替的に、距離L又は動きベクトルを、走行速度から、或いは既知の又は検出した車輪回転数若しくは出力回転数から、決定することもできる。車両のX‐Z面におけるベクトル方向は、既存の傾斜計1から既知である。
【0046】
第2ステップS2では、現在既知の動きベクトルGa
0、Ga
1、及び時点t=0及びt=1に対するレーザビームのベクトル、すなわち長さLa及び角度αから、差分ベクトルGa
0,1を決定する。
図2の下図に示すように、これは、小さな時間ステップに対して、明らかにベクトルGaよりも良好に地形の勾配に近似する。
【0047】
代替的な実施形態では、第2レーザ距離センサ2bが備えられる。第2レーザ距離センサは、道路又は地形の方向に、車両長手方向軸線Xに対して角度α-βで傾斜している。両方のレーザ距離センサ2及び2bのビームLa及びLbは、角度βを囲む。両方のレーザ距離センサ2及び2bの傾斜角度が異なるために、測定点Pa及びPbは、各レーザビームLa又はLbが当たる地形において、相互に離間する。そのため、各時点に対して、レーザビームLa及びLbの両方のベクトル、つまり長さ及び角度も既知である。そして、差分ベクトルGa0,1、つまり地形勾配を、各時点t=0、t=1等に対して、そして静止時にも計算することができる。
【0048】
両方のレーザ距離センサ2及び2bが、車両のフロントサイドに並置され、先読み領域が明確に見渡せることが有利である。
図3に示すように、地形ベクトルGb
0は、先読み領域において道路を斜めに横切ることが有利である。このようにして、進行方向に沿った進行方向に対して横方向の勾配が、ベクトル成分から決定されるためである。横方向傾斜を検出するために、両方のレーザ距離センサ2及び2bを、車幅に亘って、すなわちY方向に備えることが有利である。この場合、上述のように、傾斜計1又は車両の絶対位置を検出する対応する装置は、両方のレーザ距離センサ用に同一である。
【0049】
1つのレーザ距離センサ2を使用する場合、レーザ距離センサ2を、車両のフロントサイドの中央に配置することが有利である。2つのレーザ距離センサ2及び2bからなる1対は、対称的に配置することが有利である。
【0050】
道路の横方向傾斜の測定は、中央に配置された1つのレーザ距離センサ2によって行うこともできる。レーザ距離センサ2が、センサ内部デュープリケーションと称して、2つのレーザビームを発する。これらは、車両のX-Y面に広がるよう配向される。つまり、これらは、
図3で測定点Pa及びPbへの矢印の間の角度として見ることのできる、車両長手方向軸線Xに対する角度を有する。
【0051】
レーザ距離センサのデュープリケーションに代わって、連続切り替えも可能である。切り替えは、センサを回転させる、又は光学機器の交換、例えばプリズムを交換することによって実行できる。切り替えは、道路幅に亘って行うこともできる。または、切り替えが、速度に応じて異なる先読み長さを含むこともできる。
【0052】
有利には、1つ以上のレーザ距離センサが、車室内でウインドシールドガラスの後ろに、ウインドシールドガラスワイパーによって清掃される領域に配置される。特にプラスチックグレージング材が存在する場合には、ヘッドライトへの統合も、特に適している。コーナリングライト及びレベル調整用の調節装置と接続することにより、積載量が変化する場合にも、正確な配向が保証される。そのため、カーブにおける先読み領域を、関連する領域に集中させることができる。
【0053】
レーザ光を、不可視域、つまり赤外域IR又は紫外域UVの波長とすることが有利である。
【0054】
さらなるステップS3では、決定した勾配信号又は決定した傾斜データを、さらに使用する、又はさらに処理する。
【0055】
例えば、今度は、決定した傾斜データ又は決定した勾配信号に基づいて、車両パラメータ、特に動的パラメータを適合させることができる。したがって、このようにして決定した勾配を、長手方向のダイナミクスを調整するため、すなわち、例えばエンジン管理、シフトストラテジ、トラクション制御、エネルギ管理等に使用することができる。例えば、登坂の前に変速機を適時にダウンシフトする。四輪駆動及びデファレンシャルロックを適時に係合又は解除させる。摩耗のないブレーキ(リターダ)を、降坂の際に最適に作動させる。始動時のスリップ制御(ASR)及び制動時のスリップ制御(ABS)を最適化する。車両の垂直方向のダイナミクス(リフティング、ピッチング、ローリング)及び横方向のダイナミクスに関する調整を改善するために、現在の勾配信号及び先読みする勾配信号を使用することができる。
【0056】
さらに、地形をデジタル化し、この決定したデータを遠隔伝送する可能性がある。複数の車両のデータを、集中的にサーバに、例えばクラウド環境で保存し、地図データとマッチさせることが有利である。さらに、長手方向、垂直方向、及び横方向のダイナミクスのための走行ダイナミクスの調整を、オンライン又はオフラインで最適化できる。該当車両と他の車両が対応する通信オプションを備える場合には、該当車両又は他の車両に、適時に又は先読み的に、最適化された走行ダイナミクスの調整を提供可能であるため、車両が先読み領域を走行する際には、最適化されたパラメータが既に調整されている。
【0057】
レーザ距離センサを使用する利点は、レーザスキャナと比較して約5乃至10倍安価であり、非常にコンパクトかつ堅固であり、十分な精度を有して利用可能なことである。提案した方法及び対応する装置によって、こうした利点を使用することができる。追加的に、極めて正確なシステム及び方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 位置検出装置
2 レーザ距離センサ
2b オプショナル/第2レーザ距離センサ
L1 角度センサからレーザ距離センサまでのX方向の間隔
h1 車両長手方向軸線から地形までのZ方向の間隔/高さ
b1 レーザ距離センサから車両長手方向軸線までのY方向の間隔
φ 車両(長手方向軸線X)の静止慣性系又は絶対系に対する角度
α 車両長手方向軸線Xに対する傾斜角度
Ga、Gb 動きベクトル(地形に近似させた直線)
δ 直線GaとレーザビームLaとの間の角度
La、Lb レーザ距離センサのビーム及び長さ
L 移動距離
Pa、Pa 地形における測定点
ξ 絶対傾斜、地形に近似させた直線Ga/Gbの車両固定基準系X、Y、Zに対する角度
Ψ 相対傾斜