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  • 特許-試薬分布の温度ベース制御 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】試薬分布の温度ベース制御
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20230403BHJP
   F01N 3/00 20060101ALI20230403BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
F01N3/08 G
F01N3/00 F
B01D53/94 222
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019569221
(86)(22)【出願日】2018-06-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-13
(86)【国際出願番号】 US2018037835
(87)【国際公開番号】W WO2018232293
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-05-17
(31)【優先権主張番号】62/520,959
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501162454
【氏名又は名称】ワットロー・エレクトリック・マニュファクチャリング・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エヴァリー、マーク、デニス
(72)【発明者】
【氏名】フリー、ポール、ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】ディーステルマイヤー、ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】セルビー、アンドリュー、デー
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-332827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
F01N 3/00
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬をディーゼル排気流に注入する前に、前記試薬が部分的に気相へと加熱されるような温度に液体の前記試薬を加熱すること、
触媒の上流のディーゼル排気流に加熱された部分的に気相の前記試薬を注入すること、及び、
NOをNとHOに変換するように、前記触媒を覆う加熱された前記試薬とディーゼル排気を反応させることを含み、
前記加熱は、前記試薬の物質の状態を部分的に気相に変換することにより、前記試薬の質量流量を調整するように、前記試薬の品質に基づいて制御される
ディーゼル排気システムの処理方法。
【請求項2】
前記加熱は、ヒータ、ディーゼルエンジンからの熱、エンジン冷却剤からの熱、及び、ディーゼル排気流からの熱のうちの少なくとも1つにより実行される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱は、ヒータにより実行され、前記ヒータは、2線式ヒータ、管状ヒータ、カートリッジヒータ、及び、層状ヒータからなるグループから選択される、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記加熱は、ヒータにより実行され、前記試薬品質に基づいて前記試薬を加熱するように、前記ヒータへの電力を制御すること、
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ヒータへの前記電力の制御は、エンジン制御ユニット及び車両コントローラの少なくとも1つと通信するコントローラにより実行され、加熱された前記試薬の蒸気品質は、前記エンジン制御ユニットにより制御されるエンジンパラメータと前記車両コントローラにより制御される車両パラメータの少なくとも1つの関数として制御される、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記液体の試薬は、注入前に、前記ディーゼル排気流内の圧力に対する前記試薬の沸点以上に加熱される、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記試薬の質量流量は、少なくとも1つのノズルにより調整され、前記ノズルは、前記触媒の上流にある、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記試薬の低質量流量用の第1段ノズルと、前記試薬の高質量流量用の第2段ノズルとをさらに含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
同心円状に配置された複数の噴射ノズルをさらに含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのノズルは、前記試薬流の一部を気体状態に変換するか、ノズルを流れる前記試薬の特性を変化させることにより、前記試薬の質量流量の調整に対応するサイズの少なくとも1つのオリフィスを備え、前記試薬の質量流量の調整は、エンジンパラメータ又は車両パラメータの少なくとも1つの関数である、
請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記ノズルは、環状オリフィス及び前記試薬のチョーク流れを生成するための臨界流オリフィスからなるグループから選択されるオリフィスを含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項12】
試薬源に接続されたポンプを使用して前記試薬の質量流量を制御することをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法に従って動作するディーゼル駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2017年6月16日に出願された米国仮出願第62/520,959号に対する優先権及び利益を主張する。上記出願の開示は、その全体の参照によりここに組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、ディーゼルエンジン排気後処理システムに関し、より詳細には、有害な排出物を低減するためにディーゼル排気流の触媒の上流に尿素を注入するシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
このセクションの記述は、単に本開示に関連する背景情報を提供するものであり、先行技術を構成しないことがある。
【0004】
多くのディーゼル排気後処理システムは、NO(窒素酸化物)排出を削減するために、SCR(選択的触媒還元)を利用する。SCRシステムは、触媒を使用して、NOとアンモニアの反応を促進し、NとHOを生成する。通常、アンモニアは、触媒の上流の排気での注入とそれに続く尿素の分解(水にある尿素水溶液の形で)を通して触媒に供給される。排気からNOを除去するシステムの有効性は、触媒中のアンモニアの適切な分布に依存し、かつ、アンモニアの分布は、注入プロセスから生じる尿素の分布に依存するため、尿素の分布の制御は、SCRシステムの変換効率を向上させる要因である。
【0005】
触媒中のアンモニアの分布に対するそれらの感度に加えて、SCRシステムは、尿素の注入に関連する堆積物形成に伴う問題にさらされている。十分に暖かくない表面に衝突する注入された尿素は、排気システムの内部に持続的な堆積物を形成する可能性があり、これはシステムが役に立たなくなる原因になる可能性がある。これらの堆積物を防ぐために、尿素の注入は、排気流が堆積物の形成を防ぐのに十分に温かい動作条件にしばしば制限される。排気流が十分に温かい場合にのみ尿素を注入すると、システムの全体的な効果が低下する(一部の動作条件では効果的に作用しないため)。NO変換効率の低下を緩和するために、システム設計者はさまざまな方法を使用して、排気の温度を上げる(通常は燃費を犠牲にして)か、注入部位周辺の排気構造を加熱する。さらに、システム設計者は、常にシステムに注入する必要があるDEF(ディーゼル排気液)、即ち尿素の量も考慮する必要がある。通常より高いレベルのNOによく関連するような、より多くの量のDEFを注入する必要がある条件下では、システム設計者は、さまざまな方法を採用して、DEFスプレープルームと排気システム内部の表面との接触を低減又は最小限にする。これは、注入プロセスを振動させることやDEFの噴射圧力の変更など、堆積物の形成を低減するのに役立つ。これらの方法は、しばしば堆積物の形成を防ぐのに辛うじて成功している。
【発明の概要】
【0006】
本開示の1つの形態では、試薬の少なくとも一部が気相へと加熱されるような温度に試薬を加熱すること、触媒の上流のディーゼル排気流に試薬を注入すること、及び、NOをNとHOに変換するように、触媒を覆う加熱された試薬とディーゼル排気を反応させること、を含むディーゼル排気システムの処理方法が提供される。加熱ステップは、試薬の物質の状態を少なくとも部分的に気相に変換することにより、試薬の質量流量を調整し、ガス状の加熱された試薬は、ディーゼル排気システム内の堆積物の形成を減らす。
【0007】
別の形態では、加熱は、ヒータ、ディーゼルエンジンからの熱、エンジン冷却剤からの熱、及び、ディーゼル排気流からの熱のうちの少なくとも1つにより実行される。ヒータは、2線式ヒータ、管状ヒータ、カートリッジヒータ、及び、層状ヒータからなるグループから選択されてもよい。
【0008】
別の形態では、この方法は、試薬を所望の設定点温度まで加熱することと、運用データに基づいて試薬を加熱することの少なくとも一方を達成するように、電力を制御することを含む。
【0009】
試薬が所望の設定点温度まで加熱される場合、設定点温度は、エンジン速度、エンジン負荷、エンジンへの燃料流量、排気ガス温度(EGT)、排気流量、EGT及び排気流量の履歴値、触媒温度、試薬注入導管温度、試薬圧力、試薬質量流量、試薬品質、周囲温度、高度、NOセンサデータ、排気ガス圧力、及び、エンジン制御ユニットと車両コントローラの少なくとも1つから予想されるエンジン状態、並びに、これらの組合せの少なくとも1つに基づいている。
【0010】
運用データに基づいて試薬が加熱される場合、運用データは、温度、エンジン速度、エンジン負荷、エンジンへの燃料流量、排気ガス温度(EGT)、排気流量、触媒温度、試薬注入導管温度、試薬圧力、試薬質量流量、試薬品質、周囲温度、高度、NOセンサデータ、排気ガス圧力、及び、これらの組合せからなるグループから選択される。
【0011】
別の形態では、ヒータへの電力の制御は、エンジン制御ユニット及び車両コントローラの少なくとも1つと通信するコントローラにより実行され、試薬の温度は、エンジン制御ユニットにより制御されるエンジンパラメータと車両コントローラにより制御される車両パラメータの少なくとも1つの関数として制御される。
【0012】
さらに別の形態では、試薬の状態の変換は、試薬がディーゼル排気流に注入される前又は後に行われる。
【0013】
別の形態では、試薬の質量流量は、触媒の上流に配置された少なくとも1つのノズルにより調整される。一形態のノズルは、試薬の低質量流量用の第1段ノズルと、試薬の高質量流量用の第2段ノズルとを含む。ノズルの別の変形例では、複数の噴射ノズルが同心円状に配置される。さらに別のノズルのバリエーションでは、試薬流の一部を気体状態に変換するか、ノズルを流れる試薬の特性を変化させることにより、試薬の質量流量の調整に対応するサイズの少なくとも1つのオリフィスがあり、試薬の質量流量の調整は、エンジンパラメータ又は車両パラメータの少なくとも1つの関数である。ノズルは、環状オリフィス及び試薬のチョーク流れを生成するための臨界流オリフィスからなるグループから選択されるオリフィスをさらに備えてもよい。
【0014】
さらに別の形態では、この方法は、試薬源に接続されたポンプを使用して試薬の質量流量を制御することをさらに含む。
【0015】
本開示の様々な方法のうちの少なくとも1つに従って動作するディーゼル駆動装置も提供される。
【0016】
さらなる適用範囲は、ここで提供される説明から明らかになる。説明及び具体例は、例示の目的のみを意図しており、本開示の範囲を制限する意図ではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本明細書に組み込まれ、その一部を形成する添付図面は、本開示のいくつかの態様を図示し、説明とともに、本開示の原理を説明する役目を果す。図の構成要素は必ずしも縮尺どおりではない。
図1図1は、本開示の教示による、試薬源に動作可能に接続されたヒータを有するディーゼル排気後処理システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の説明は、本質的に単なる例示であり、本開示、その適用、又は使用を制限することを意図するものでは決してない。また、本開示の原理を変更することなく、方法内のステップを異なる順序で実行してもよいことも理解されたい。
【0019】
図1を参照すると、本開示の教示によるディーゼル排気後処理システムが図示され、参照番号20により全体が示されている。ディーゼル排気後処理システム20は、触媒16(この形式では選択触媒還元(SCR)である)の上流に、試薬の源18とディーゼル排気流12に連結された流体注入導管24を備える。システム20は、注入導管24に動作可能に接続されたヒータ26も含み、一形態では、ヒータ26は、ディーゼル排気流に注入される前に試薬の物質の状態を少なくとも部分的にガス状態に変換するために、注入導管24を流れる試薬を加熱する。ここで使用する用語「試薬」は、ディーゼル排気流12内のNOの量を減少させる化学反応をもたらすために触媒16と組合せることができる任意の物質/材料を意味すると解釈されるべきである。例えば、そのような材料は、NOを低減するために触媒16で使用される任意のディーゼル排気液(DEF)又は尿素水溶液を含んでもよい。
【0020】
ヒータ26は、特に、管状ヒータ、カートリッジヒータ、又は、層状ヒータを含むがこれらに限定されず、任意のタイプのヒータ構造にしてよい。さらに、ヒータ26は、ここに記載されている他の形態の内で、自己調整式にしてもよい。
【0021】
さらに示すように、ディーゼル排気後処理システム20は、ヒータ26と通信するコントローラ28をさらに備え、コントローラ28は、試薬を所望の設定点温度に加熱するようにヒータ26への電力を調整する動作をすることができる。設定点温度は、エンジン速度、エンジン負荷、エンジンへの燃料流量、排気ガス温度(EGT)、排気流量、EGT及び排気流量の履歴値、触媒温度、試薬注入導管温度、試薬圧力、試薬質量流量、試薬品質、周囲温度、高度、NOセンサデータ、排気ガス圧力、及び、エンジン制御ユニットと車両コントローラの少なくとも1つから予想されるエンジン状態、並びに、これらの組合せの少なくとも1つに基づいている。
【0022】
ディーゼル排気後処理システム20は、試薬源18に接続されたポンプ22も含み、コントローラ28は、試薬の質量流量を制御するためにポンプ22と通信する。
【0023】
少なくとも1つの温度センサ25は、試薬の温度を感知するためにヒータ26に近接して配置されてもよい。あるいは、ヒータ26は、「2線式」ヒータでもよく、ヒータは、ヒータと温度センサの両方として機能し、これにより、別個の温度センサの必要性をなくす。そのような2線式ヒータは、本出願と共通に所有され、その内容は、全体の参照によりここに組み込まれる米国特許第7,196,295号に示され説明されている。
【0024】
一形態では、コントローラ28は、温度センサ25(又は、2線式ヒータ)から温度データを受信し、それに応じてヒータ26への電力を調整する。また、コントローラ28は、温度センサ25から温度データを受信し、それに応じて試薬の質量流量を調整してもよい。さらに別の形態では、少なくとも1つの温度センサ(図示せず)がヒータ26の上流又は下流に配置され、コントローラ28は、温度センサ及びヒータ26から受信した温度データに基づいて、試薬の質量流量及びヒータ26に供給される電力の少なくとも一方を調整する。ディーゼル排気後処理システム20は、別のヒータ(図示せず、排気導管14内又は注入導管24内)を備えてもよく、コントローラ28は、2つのヒータから受信した温度データに基づいて、試薬の質量流量及びヒータ26に供給される電力の少なくとも一方を調整する。
【0025】
ヒータ26は、少なくとも2つのゾーンを規定してもよく、コントローラ28は、少なくとも2つのヒータゾーンから受信した温度データに基づいて、試薬の質量流量及びヒータ26に供給される電力の少なくとも一方を調整する。そのような区画化されたヒータは、本出願と共通に所有され、その内容は、全体の参照によりここに組み込まれる米国特許第9,113,501号に開示された構成を含めてもよい。
【0026】
さらに別の形態では、第1の温度センサがヒータ26の下流に配置され、第2の温度センサがヒータ26の上流に配置され、コントローラ28は、第1及び第2の温度センサから受信した温度データに基づいて、試薬の質量流量及びヒータ26に供給される電力の少なくとも一方を調整する。
【0027】
一形態のコントローラ28は、エンジン制御ユニット30及び車両コントローラ32の少なくとも一方と通信し、試薬の温度は、エンジン制御ユニット30及び車両コントローラの少なくとも1つによりそれぞれ制御されるエンジンパラメータ又は車両パラメータの関数として制御される。
【0028】
さらに示すように、ディーゼル排気後処理システム20は、加熱された試薬をディーゼル排気流に送り届けるための少なくとも1つの噴射ノズル40を触媒16の上流にさらに備える。ノズル40は、試薬の低質量流量用の第1段ノズルと試薬の高質量流量用の第2段ノズルとを有する多段ノズルを含む任意の形態又は複数形態の組合せを採用してもよい。本開示の別の形態では、同心円状に配置された複数の噴射ノズルがあってもよい。
【0029】
各ノズルは、オリフィスを有し、オリフィスは、環状オリフィス及び試薬のチョーク流れを生成するための臨界流オリフィスからなるグループから選択されてもよい。さらに、ノズルは、調整可能なオリフィスサイズを備える。
【0030】
一般に、ノズル40は、試薬流の一部を気体状態に変換することにより、又は、ノズルを流れる試薬の特性を変えることにより、試薬の質量流量の調整に適応する大きさの少なくとも1つのオリフィスを含み、試薬の質量流量の調整は、エンジンパラメータ又は車両パラメータの少なくとも1つの関数である。
【0031】
また、本開示は、例えば自動車又は発電セットなど、ここに記載のディーゼル排気後処理システム20を有するディーゼル駆動装置を含む。
【0032】
ヒータ26と通信するコントローラ28は、運用データに基づいて、試薬を加熱するように、ヒータへの電力を調整することもできる。運用データは、温度、エンジン速度、エンジン負荷、エンジンへの燃料流量、排気ガス温度(EGT)、排気流量、触媒温度、試薬注入導管温度、試薬圧力、試薬質量流量、試薬品質、周囲温度、高度、NOセンサデータ、排気ガス圧力、及び、これらの組合せからなるグループから選択される。
【0033】
他の形態では、制御部28は、様々な制御及び診断機能のための2線式ヒータとして、個々のセンサ又はヒータからの温度入力を使用することができる。例えば、温度データは、予想される質量流量が実際に存在することを検証するように、システムモデル又は設定点と比較するために使用されてもよい。診断は、流れの欠如(より高い上昇率)の検出、又は、コントローラ28が動作不能である可能性があること、ヒータ26が劣化している可能性があること、若しくは、センサが動作不能であること(例えば、温度の差がシステムモデルと合致しない)を含めてもよい。
【0034】
また、コントローラ28は、センサが別個及び/又はヒータ26を伴う2線式であるか否かに関係なく、「カスケード制御」、又は、2つのコントローラ及び関連するセンサの使用、を備えるように構成されてもよい。
【0035】
さらに、温度データは、異常状態でのヒータ26の損傷/故障を防ぐための上限設定点機能を与えるように使用されてもよい。
【0036】
本開示は、ディーゼル排気流12に注入された後、試薬の物質の状態を少なくとも部分的に気体状態に変換するように、ヒータ26が注入導管24を流れる試薬を加熱する形態も含むことを理解されたい。別の形態では、ヒータ26は、注入導管を流れている状態の試薬を加熱し、試薬の物質の状態を少なくとも部分的に気相に変換することにより、試薬の質量流量を調整することができる。この変換は、ディーゼル排気流12に注入される前又は後に行ってもよい。熱源は、ヒータ26、ディーゼルエンジンからの熱、及び、エンジン冷却剤からの熱、のうちの少なくとも1つでもよい。
【0037】
さらに、別の形態では、比例弁50は、試薬の気体状態又は蒸気品質対気体状態の所望の割合を達成するように、加熱試薬流と非加熱試薬流を混合する加熱試薬流及び/又は非加熱試薬流に動作可能に接続されている。
【0038】
さらにまた、別の形態では、排気導管14は、加水分解触媒である材料で被覆されている。例えばTiOなどのこのような材料は、疎水性材料であり、したがって、水溶液、すなわち試薬をはじくであろう。排気導管14のコーティングは、ここでの教示による試薬の物質状態の少なくとも部分的な気体状態への変換に加えて、排気導管14内の堆積物の形成をさらに抑制する。
【0039】
ディーゼル排気システムからのNOを低減する方法も提供され、この方法は、以下のステップであって、
試薬の少なくとも一部が気相に加熱されるような温度に試薬を加熱すること、
触媒の上流のディーゼル排気流に試薬を注入すること、及び、
NOをNとHOに変換するように、ディーゼル排気と触媒を覆う(over)加熱された試薬を反応させること、を含み
加熱は、試薬の物質の状態を少なくとも部分的に気相に変換することにより、試薬の質量流量を調整し、加熱された気体形態の試薬は、ディーゼル排気システム内の堆積物形成を低減する。
【0040】
本開示は、試薬の熱源として機能するように(部分的又は全体的に電気的熱を置き換える)、排気流からの熱(触媒の下流からの熱など)を任意で使用することができる。電気ヒータの無いシステムでは、流量比例弁は、所望の温度又は蒸気品質を得るように、加熱された流れと加熱されていない流れを混合するのに用いることができる。
【0041】
排気への熱の付加(特にエンジン制御を介して)は、暖機を早め、低いアイドル温度を緩和するために使用される。本開示は、起動/暖機状態中に尿素を注入する時間の短縮を可能にするのに適し、排気への熱の追加を含むシステムを含み、それにより暖機時間中のNO排出を低減する。ピーク燃料(又は流体)経済のために制御されたエンジンにとって、排気ガス温度が好ましくないほど低くなる時の暖機中及びアイドルの両方で、排気に熱を加える傾向を減らすことができるため、エンジン効率及び燃費を改善する。
【0042】
本開示は、試薬スプレープルームの長さの管理における強力で新しい自由度を提供する。それは、蒸発時間を短縮するように試薬を温める能力であり、スプレープルームの長さを短縮する。スプレープルームの過度の長さが現在のシステムでは問題となる軽負荷及び低エンジン速度で、本開示は、ノズルを出た直後に試薬を沸騰するまで加熱する。これにより、スプレープルームの長さが大幅に短縮され、混合することが大幅に強化される。
【0043】
一形態では、本開示は、排出流体フローシステムへの注入前に試薬の加熱を与える。排気流体フローシステムは、ディーゼルエンジンシステムの一部とすることができる。噴射ノズルの上流とポンプの下流の試薬が高圧になることを認識して、排気管の内部に存在する圧力で沸点を超える温度に試薬を加熱することが可能である。
【0044】
一形態では、加熱された試薬は、結果として生じる液滴のその外形のサイズに影響を及ぼす注入の際に、少なくとも部分的に蒸気にフラッシュ(flash)してもよい。ある排気後処理システムでは、ノズル先端からの液滴の移動距離は、排気ガスの温度と流量に加えて、それらのサイズと速度に依存する。排気ガスの温度と流量はほとんどの用途で変化するため(耐用年数の間、同じ速度と負荷で動作するエンジンはほとんどない)、液滴の移動距離、したがって触媒内の試薬の分布は、エンジンの動作条件により変化する。
【0045】
エンジン運転条件の変化を補償するように試薬の温度(及び/又は注入された試薬の蒸気品質)を制御することにより、触媒中のアンモニア分布を改善することができ、したがって、広範囲のエンジン運転条件に渡りシステムNO変換効率の改善を向上させることができる。この制御方法は、排気ガスの流れに入る試薬の流れに熱を加えるので、堆積物形成のリスクを冒すことなく、より低い排気ガス温度での注入を可能にすることもできる。これにより、試薬を安全に注入できるエンジン動作条件が増え、それにより、多くのディーゼルエンジンについて、NOの全体的な変換が増加する。また、排気システムの表面への試薬スプレープルームの衝突を減らし、それにより、より高いNO条件下での堆積物形成のリスクを低減しながら、より高い試薬注入割合にすることもできる。
【0046】
本開示の説明は、本質的に単なる例示であり、したがって、本開示の本質から逸脱しない変形は本開示の範囲内にあるものとする。そのような変形は、本開示の精神及び範囲からの逸脱とはみなされない。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
試薬の少なくとも一部が気相へと加熱されるような温度に前記試薬を加熱すること、
触媒の上流のディーゼル排気流に前記試薬を注入すること、及び、
NO をN とH Oに変換するように、前記触媒を覆う加熱された前記試薬とディーゼル排気を反応させることを含み、
前記加熱は、前記試薬の物質の状態を少なくとも部分的に気相に変換することにより、前記試薬の質量流量を調整し、ガス状の加熱された前記試薬は、ディーゼル排気システム内の堆積物の形成を減らす、
ディーゼル排気システムの処理方法。
[2]
前記加熱は、ヒータ、ディーゼルエンジンからの熱、エンジン冷却剤からの熱、及び、ディーゼル排気流からの熱のうちの少なくとも1つにより実行される、
[1]に記載の方法。
[3]
前記加熱は、ヒータにより実行され、前記ヒータは、2線式ヒータ、管状ヒータ、カートリッジヒータ、及び、層状ヒータからなるグループから選択される、
[2]に記載の方法。
[4]
前記試薬を所望の設定点温度まで加熱することと、運用データに基づいて前記試薬を加熱することの少なくとも一方を達成するように、電力を制御すること、
をさらに含む[1]に記載の方法。
[5]
前記試薬が所望の前記設定点温度まで加熱される場合、前記設定点温度は、エンジン速度、エンジン負荷、エンジンへの燃料流量、排気ガス温度(EGT)、排気流量、EGT及び排気流量の履歴値、触媒温度、試薬注入導管温度、試薬圧力、試薬質量流量、試薬品質、周囲温度、高度、NO センサデータ、排気ガス圧力、及び、エンジン制御ユニットと車両コントローラの少なくとも1つから予想されるエンジン状態、並びに、これらの組合せの少なくとも1つに基づいている、
[4]に記載の方法。
[6]
運用データに基づいて前記試薬が加熱される場合、前記運用データは、温度、エンジン速度、エンジン負荷、エンジンへの燃料流量、排気ガス温度(EGT)、排気流量、触媒温度、試薬注入導管温度、試薬圧力、試薬質量流量、試薬品質、周囲温度、高度、NO センサデータ、排気ガス圧力、及び、これらの組合せからなるグループから選択される、
[4]に記載の方法。
[7]
ヒータへの前記電力の制御は、エンジン制御ユニット及び車両コントローラの少なくとも1つと通信するコントローラにより実行され、前記試薬の温度は、前記エンジン制御ユニットにより制御されるエンジンパラメータと前記車両コントローラにより制御される車両パラメータの少なくとも1つの関数として制御される、
[4]に記載の方法。
[8]
前記試薬の状態の変換は、前記試薬が前記ディーゼル排気流に注入される前又は後に行われる、
[1]に記載の方法。
[9]
前記試薬の質量流量は、少なくとも1つのノズルにより調整され、前記ノズルは、前記触媒の上流にある、
[1]に記載の方法。
[10]
前記試薬の低質量流量用の第1段ノズルと、前記試薬の高質量流量用の第2段ノズルとをさらに含む、
[9]に記載の方法。
[11]
同心円状に配置された複数の噴射ノズルをさらに含む、
[9]に記載の方法。
[12]
前記少なくとも1つのノズルは、前記試薬流の一部を気体状態に変換するか、ノズルを流れる前記試薬の特性を変化させることにより、前記試薬の質量流量の調整に対応するサイズの少なくとも1つのオリフィスを備え、前記試薬の質量流量の調整は、エンジンパラメータ又は車両パラメータの少なくとも1つの関数である、
[9]に記載の方法。
[13]
前記ノズルは、環状オリフィス及び前記試薬のチョーク流れを生成するための臨界流オリフィスからなるグループから選択されるオリフィスを含む、
[9]に記載の方法。
[14]
試薬源に接続されたポンプを使用して前記試薬の質量流量を制御することをさらに含む、
[1]に記載の方法。
[15]
[1]に記載の方法に従って動作するディーゼル駆動装置。
図1