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特許7254800遷移金属ベースの顔料を考慮したテキスタイル基材の橙色着色
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】遷移金属ベースの顔料を考慮したテキスタイル基材の橙色着色
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20230403BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230403BHJP
   C09J 7/21 20180101ALI20230403BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230403BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20230403BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
C09J7/21
B32B27/00 M
B32B27/12
B32B27/20 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020528207
(86)(22)【出願日】2018-08-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2018072652
(87)【国際公開番号】W WO2019101377
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】202017107156.1
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517007312
【氏名又は名称】サートプラスト・テヒニシェ・クレーベベンダー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】certoplast Technische Klebebaender GmbH
【住所又は居所原語表記】Muengstener Strasse 10, 42285 Wuppertal, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ティーモ レーアマン
(72)【発明者】
【氏名】ルネ ランブッシュ
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0017746(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0253889(US,A1)
【文献】米国特許第06040255(US,A)
【文献】特開2004-331921(JP,A)
【文献】特開2000-108686(JP,A)
【文献】特開2001-294830(JP,A)
【文献】特開平03-293410(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0129650(US,A1)
【文献】特開2017-179340(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0169916(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テキスタイル基材と、前記基材の片面または両面に施与されている少なくとも1つの接着層とを有しており、前記基材が着色剤により着色されている接着テープにおいて、前記着色剤が、黄色無機鉱物顔料と赤色有機顔料との混合物であり、前記赤色有機顔料は、ペリレンの分類からのものであることを特徴とする、接着テープ。
【請求項2】
前記無機鉱物顔料が、酸化物および水酸化物の鉱物群の顔料、ならびに/またはリン酸塩、ヒ酸塩もしくはバナジン酸塩の鉱物群の顔料であることを特徴とする、請求項1記載の接着テープ。
【請求項3】
酸化物および水酸化物の鉱物群の顔料として、パイロクロアまたはルチルが使用されることを特徴とする、請求項1または2記載の接着テープ。
【請求項4】
リン酸塩、ヒ酸塩またはバナジン酸塩の鉱物群の顔料として、クリノビスバナイトが使用されることを特徴とする、請求項2または3記載の接着テープ。
【請求項5】
前記テキスタイル基材の個別の糸が、前記着色剤により着色されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の接着テープ。
【請求項6】
前記基材が、少なくとも部分的に、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維またはポリアミド繊維からなることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の接着テープ。
【請求項7】
接着被覆が、天然ゴム、合成ゴム、アクリレートをベースとする接着材料であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の接着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テキスタイル基材と、基材の片面または両面に施与されている少なくとも1つの接着層とを有しており、基材が着色剤により着色されている接着テープ、殊に自動車における電線を被覆するための巻き付けテープに関する。
【0002】
接着テープにおけるテキスタイル基材の着色は、何年も前から行われており、これまでは特に、例えばカーボンブラックベースの、押出成形物の添加剤として考慮される無機顔料を用いて作業が行われてきた。この押出成形物から、例えばフィラメントおよびフィラメント織物を製造することができる。使用される無機顔料のさらなる詳細については記載されていない(国際公開第03/033611号参照)。
【0003】
欧州特許出願公開第2546317号明細書に記載の別の接着テープの場合、テキスタイル基材の着色は、着色剤および/または顔料の混合物により行われる。この混合物自体は、黄色および赤色の着色剤または顔料からなる。黄色着色剤はアントラキノンをベースとし、赤色着色剤はアゾ化合物からなる。しかしながら、代替的には、赤色着色剤は、アントラキノン化合物とアゾ化合物との混合物であってもよい。
【0004】
一般的に、「Farbstoff」(染料もしくは着色剤)という用語は、「Roempp Chemie Lexikon、第9版、1993、1301頁」に記載のように、溶媒および/またはバインダーに可溶の着色物質の総称的用語または総称的名称を表す。すなわち、染料もしくは着色剤とは、不溶性顔料と対比されており、不溶性顔料は、数、構造の多様性、およびたいていの場合は輝度について染料よりも劣っている。
【0005】
顔料とは、「Roempp Chemie Lexikon、第9版、1995、3439頁」の説明に相応して、使用媒体中で実質的に不溶性の、無機または有機の、有彩色または無彩色の着色物質であると理解される。よって、以下で、一方では染料と、他方では顔料とを、これらの定義に相応して区別するものとする。
【0006】
最終的に、着色されたテープ型のテキスタイル基材を有する工業用接着テープは、欧州特許出願公開第1607459号明細書の対象である。ここで詳細には、テキスタイル基材は、原液着色糸または繊維からなる。たいていの場合、黒色着色は、カーボンブラックベースの材料を用いて行われる。
【0007】
接着テープの着色、すなわち着色剤によるその基材の着色は、ますます重要になってきている。というのも、自動車における電線を被覆するための巻き付けテープとしてそのような接着テープを使用する際に、これらの巻き付けテープが、電線をまとめて束ねるその本来の機能のみならず、追加的な警告機能または指示機能を担うことが、ますます必要とされているからである。
【0008】
例えば、ハイブリッド自動車および電気自動車の場合、60ボルト超の電圧がかかるすべての電線または電線束に、橙色の色調で印を付けなくてはならないことが知られている。これについては、2010年に、RAL2003の色調(パステルオレンジ)が標準の色調として規定された。特に欧州特許出願公開第2546317号明細書は、先にすでに言及した、黄色顔料と赤色顔料との混合物であって、黄色顔料がアントラキノンをベースとしており、赤色顔料がアゾ化合物をベースとしている混合物を使用することで、この点を考慮している。
【0009】
欧州特許出願公開第2546317号明細書に記載の公知のアプローチには、欠点がないわけではない。よって、公知の有機着色剤では、熱暴露を理由に、および/またはエージング現象により、着色、結果的には基材、ひいては接着テープの脱色または色落ちが全体的に生じる問題が依然として存在する。この問題は、特に長い時間尺度で見た場合に、それにより警告効果が低減する可能性がある点、またはこの領域における不可避の汚れの関連で完全に消失しさえする可能性がある点で不利である。これより本発明について記載する。
【0010】
本発明は、殊に長時間安定性および温度安定性が改善されており、かつ持続的な警告効果が実現可能であるように、このような接着テープ、殊に自動車における電線を被覆するための巻き付けテープをさらに開発するという技術的な課題に基づいている。
【0011】
この技術的な課題を解決するために、本発明では、冒頭で述べた形式の接着テープ、殊に自動車における電線を被覆するための巻き付けテープにおいて、着色剤として、完全に、または部分的に無機鉱物顔料を使用することが提案されている。
【0012】
着色剤を完全に、または部分的に構成する本発明により意図される無機鉱物顔料は、酸化物および水酸化物の鉱物群のものであることが有利である。あるいはまたはさらに、無機鉱物顔料として、リン酸塩、ヒ酸塩またはバナジン酸塩の鉱物群のものを使用してもよい。ここで、鉱物群の分類および命名は、Strunzによる「Systematik der Minerale」(第8版)に即して行われる。
【0013】
酸化物および水酸化物の鉱物群の顔料としては、パイロクロアまたはルチルを使用することが一般的である。パイロクロアは、実際には立方晶系で結晶化することが一般的であるが、しばしば、茶色、赤色、橙色または黄色がかった色も有する八面体結晶を形成する。ルチルは、一般的に正方晶系で結晶化する鉱物である。
【0014】
パイロクロアまたはルチルとしては、金属ベースのパイロクロアまたはルチル、ここでは殊に遷移金属ベースのパイロクロアまたはルチルを使用することが極めて特に好ましい。すなわち、この場合、当該鉱物、すなわちパイロクロアまたはルチルは、その結晶格子に、遷移金属、例えばニオブまたは亜鉛をベースとするものが組み込まれた状態で使用される。すなわち、遷移金属ベースのパイロクロアまたはルチルとしては、ニオブ-スズまたはスズ-亜鉛をベースとするものを使用することが好ましい。
【0015】
リン酸塩、ヒ酸塩またはバナジン酸塩の鉱物群の顔料としては、クリノビスバナイト(Klinobisvanite)を使用することが特に有利である。そのようなクリノビスバナイトは、不純物アニオンなしの水不含リン酸塩の群に該当し、一般的には黄色~橙黄色を有する。無機鉱物顔料は、全体として黄色を有することが好ましい。
【0016】
このようにして、本発明はまず、そのような無機鉱物顔料が、その結晶構造を理由に一般的には高い温度安定性、さらには高い染色堅牢度を有することを利用している。これは、ここで使用される結晶または鉱物の特別な構造および安定性に起因する。当該顔料、およびこれを用いて製造される基材または接着テープは、実際には、規格LV312(「Schutzsysteme fuer Leitungssaetze in Kraftfahrzeugen, Klebebaender; Pruefrichtlinie」(10/2009))に相応する試験において、3000時間の期間にわたり温度安定性を示し、150℃を大きく上回る温度、基本的には200℃または250℃でさえあり得る温度が考慮される。すなわち、本発明により無機鉱物顔料が基材のための着色剤として使用されることを考慮して、規格LV312に相応する温度分類T4が少なくとも達成され、このことは、基本的には、先にすでに参照した欧州特許出願公開第2546317号明細書に説明されている。
【0017】
特にニオブ-スズ-パイロクロア(Niobium Tin Pyrochlore;NTP)の形態の、適切な無機鉱物顔料の例は、特に「The Shepard Color Company」社により販売されており、黄色のものが提供されている。これに関して、米国特許第8192541号明細書を補足的に参照する。
【0018】
ルチルに分類されるさらなる適切な顔料としては、いわゆる「ピグメントイエロー53、チタン酸ニッケル」が特に有利であることが判明した。パイロクロアの場合、例えば「ピグメントイエロー227」を用いて作業し、クリノビスバナイトの場合、例えば「ピグメントイエロー184、バナジン酸ビスマス」を用いて作業する。前述の顔料は、例えばA-3652 LeibenのHabich GmbH社により、「Duropal」という商標で販売されている。
【0019】
着色剤が黄色無機鉱物顔料と赤色有機顔料との混合物として形成されている本発明の形態が極めて特に好ましい。これに関して、着色剤は代替的に、黄色無機鉱物顔料と赤色無機顔料との混合物としても設計されていてもよい。赤色有機顔料は、ペリレンの分類からのものであると有利であるが、当然のことながら、別の分類も考えられる。赤色無機顔料を使用する場合、本発明では、パイロクロアの群からのものを用いることがさらに推奨される。前述の赤色顔料も同様に、先にすでに記載のHabich社により前述の商品名Duropalで販売されている。
【0020】
黄色着色剤は、例えば黄色のニオブ-スズ-パイロクロア-鉱物を用いて無機鉱物顔料をベースとして実現することが可能である。一般的には黄色の無機鉱物顔料が存在し、使用される一方で、着色剤が黄色無機鉱物顔料と赤色有機顔料との混合物である場合、さらに赤色有機顔料を使用することもできる。先にすでに言及したペリレンの分類からの赤色有機顔料の代わりに、アゾ化合物からの赤色顔料も使用してもよい。
【0021】
いずれの場合でも、黄色無機鉱物顔料と赤色有機または無機鉱物顔料との混合物としてこの手法で実現された着色剤により、基材、ひいては接着テープの橙色着色が全体的に達成される。
【0022】
殊に、先に記載の用途に必要な色RAL2003(パステルオレンジ)が設定および調整される。アゾ化合物をベースとする有機顔料は、基本的にすでに欧州特許出願公開第2546317号明細書に記載された化合物であり、ここではこれを援用する。
【0023】
ここで基本的に、基材の着色は、着色剤が、押出成形物に添加され、押出成形時にこれにより製造される繊維内に入り込み、そのようにして繊維の着色をもたらすように原液着色で行われる。
【0024】
ここで、好ましく使用される原液着色の場合、着色剤または顔料が、基本的に0.5mm未満、殊に100μm未満、好適には50μm未満の粒径を有するように実施する。さらに、混合比が、20:80~80:20の範囲の無機顔料:有機顔料の質量割合に設定されていると、無機鉱物顔料と有機顔料との混合物にとって有利であることが判明した。最終的に、押出成形物中の顔料が、原液着色時に、たいていは、ポリマー紡績材料を基準として0.2~3.0質量%の濃度で存在し、ポリマー紡績材料と一緒に押出成形されるように実施する。
【0025】
それだけでなく、基本的には、基材を例えば分散液中で着色することにより、いわゆる後染めも可能である。ここで、着色は、顔料の水溶液から出発して、場合によってさらに助剤を用いて行うことが可能であり、このことは例えば、基本的に欧州特許出願公開第2546317号明細書においてこの文脈で記載されている。しかしながら、本発明は、通常は原液着色を参照する。
【0026】
基材は、少なくとも部分的に、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維またはポリアミド繊維から構成されている。基材は、完全にポリエステル繊維からなることが極めて特に好ましい。ここで、基本的には、あらゆる種類のテキスタイル基材、例えば、不織布、織物または層状布も有利であることが判明した。それだけでなく、この手法では、基本的に、例えば不織布または織物からの複数層の基材も考えられ、記載のやり方で製造および着色することが可能である。
【0027】
基材の重量は、基本的に200g/mまで、好適には500g/mまでであってもよい。接着材料またはこの手法で実現される接着剤層の場合、通常、20g/m~200g/mの範囲の塗布重量が特に有利であると思われる。
【0028】
接着層を実現するために、本発明では、天然ゴムまたは合成ゴムをベースとする接着材料が推奨される。アクリレート系の接着材料、ここでは殊に、例えばUV架橋可能なアクリレート溶融感圧接着材料が極めて特に好ましい。
【0029】
この手法で実現される接着テープは、自動車における電線を被覆するための巻き付けテープとして使用することが特に有利である。そのために、当該巻き付けテープを、まっすぐに伸ばされた電線に螺旋状に巻く。また基本的に、この手法により、当該電線について軸状の保護被覆も実現することができる。この場合、まっすぐに伸ばされた電線の被覆は、軸方向で、接着テープまたはこの手法で実現される保護被覆を用いて行われる。