(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】自動車の閉鎖エレメントのための駆動装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/622 20150101AFI20230403BHJP
F16F 7/12 20060101ALI20230403BHJP
F16F 7/09 20060101ALI20230403BHJP
F16H 25/20 20060101ALI20230403BHJP
B60J 5/10 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
E05F15/622
F16F7/12
F16F7/09
F16H25/20 H
B60J5/10 K
B60J5/10 B
(21)【出願番号】P 2020528318
(86)(22)【出願日】2018-11-08
(86)【国際出願番号】 EP2018080614
(87)【国際公開番号】W WO2019101538
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】102017127859.1
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508072408
【氏名又は名称】ブローゼ ファールツォイクタイレ エスエー ウント コンパニ コマンディートゲゼルシャフト バンベルク
【氏名又は名称原語表記】BROSE FAHRZEUGTEILE SE & CO.KG,BAMBERG
【住所又は居所原語表記】Berliner Ring 1, 96052 Bamberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ヴィッテルスビュアガー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シュテーア
(72)【発明者】
【氏名】ライナー ヤーラント
(72)【発明者】
【氏名】マルコ シュラム
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヴァイガント
(72)【発明者】
【氏名】アルヴィン マハト
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト クリューガー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス フィッシャー
【審査官】素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-532036(JP,A)
【文献】特開2014-101637(JP,A)
【文献】特開2016-065372(JP,A)
【文献】特開2010-172075(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0177612(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00 - 15/79
B60J 5/00 - 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の閉鎖エレメント(2)のための駆動装置であって、
前記駆動装置は、それぞれ1つの駆動接続部(8,9)を有している2つの駆動区分(15a,15b)を有する駆動系(15)を有しており、前記駆動区分(15a,15b)は、走入位置と走出位置との間で、幾何学的な軸線(7)に沿って前記駆動接続部(8,9)の間で直線的な駆動運動を行うために、互いに直線運動可能であって、前記駆動区分(15a,15b)は、ばね装置(17)によって互いに
前記走出位置に向かって予荷重をかけられており、前記走出位置へ向かう、前記駆動接続部(8,9)の間の駆動運動を制限するために、端部ストッパ(19)が設けられており、前記端部ストッパ(19)は、前記駆動区分(15a,15b)における、互いに接近するように移動可能な端部ストッパ面(19a,19b)と、前記端部ストッパ(19)への駆動運動の間、前記駆動運動をその速度に依存して減衰する減衰装置(20)と、を含む、駆動装置において、
前記減衰装置(20)は、前記走入位置においては、両端部ストッパ面(19a,19b)から離間された減衰エレメント(21)を有していて、前記減衰エレメントは、前記駆動運動中に、前記端部ストッパ面(19a,19b)のうちの一方との軸方向の衝突により塑性変形可能であって、さらに当該端部ストッパ面(19a)によって、塑性変形された状態で、それぞれ他方の端部ストッパ面(19b)まで一緒に動かされ
、
前記減衰エレメントは、変形されていない状態で、前記両駆動区分(15a,15b)のうちの一方に軸方向不動に接続されており、前記一方の端部ストッパ面(19a,19b)との軸方向の衝突により、前記軸方向不動の接続が解除されるように塑性変形される、
ことを特徴とする、駆動装置。
【請求項2】
塑性変形状態にある前記減衰エレメント(21)は、前記一方の端部ストッパ面(19a)によってそれぞれ他方の前記端部ストッパ面(19b)へと動かされる間に、前記駆動区分(15a,15b)の間に摩擦力を発生させ
る、請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記減衰エレメント(21)は変形されていない状態で運動する間には、前記駆動区分(15a,15b)の間に摩擦力を発生させない、請求項2記載の駆動装置。
【請求項4】
一方の駆動区分(15b)は管を含んでいて、他方の駆動区分(15a)はロッドを含んでおり、前記ロッドは、前記管の内面に滑り係合および/または螺合して
いる、請求項1
から3までのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項5】
前記ロッドは、スピンドル・スピンドルナット伝動装置(6)のスピンドル(10)である、請求項4記載の駆動装置。
【請求項6】
前記管は、前記スピンドル・スピンドルナット伝動装置(6)のスピンドルナット(12)に軸方向不動に接続されたスピンドルナット管(16)である、請求項5記載の駆動装置。
【請求項7】
前記一方の端部ストッパ面(19a)は、前記管の前記内面に形成されて
いる、請求項
4から
6までのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項8】
前記一方の端部ストッパ面(19a)は、半径方向内側に向けられた少なくとも1つの突起によって形成されている、請求項7記載の駆動装置。
【請求項9】
前記突起は、前記スピンドルナット(12)の軸方向端部を形成しており、かつ/または前記スピンドルナット(12)の軸方向端部に接触している、請求項6を引用する請求項8記載の駆動装置。
【請求項10】
前記減衰エレメントは、変形されていない状態で、前記管に軸方向不動に接続されており、
半径方向外側に向けられた突起との軸方向の衝突により塑性変形される、請求項
4から
9までのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項11】
前記他方の端部ストッパ面(19b)は、前記ロッド
の外面に形成されて
いる、請求項
4から
10までのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項12】
前記他方の端部ストッパ面(19b)は、スピンドル(10)の外面に形成されている、請求項11記載の駆動装置。
【請求項13】
前記他方の端部ストッパ面(19b)は、半径方向外側に向けられた少なくとも1つの突起によって形成されている、請求項12記載の駆動装置。
【請求項14】
前記突起は、残りのロッドに形成されている、請求項13記載の駆動装置。
【請求項15】
前記突起は、スピンドル(10)に軸方向不動に接続されたストッパナット(23)に形成されている、請求項14記載の駆動装置。
【請求項16】
前記減衰エレメントは、変形されていない状態で、前記ロッドに
接続されており、
半径方向内側に向けられた
前記突起との軸方向の衝突により塑性変形される、請求項
8または9記載の駆動装置。
【請求項17】
前記減衰エレメントは、スピンドル(10)に軸方向不動に接続されている、請求項16記載の駆動装置。
【請求項18】
前記減衰エレメントは、
スピンドル(10)に軸方向不動に接続されたストッパナット(23)とは別のストッパナットによって形成される、請求項1から
17までのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項19】
前記減衰エレメントは、各端部ストッパ面(19b)を形成する前記ストッパナット(23)と同じ構造の別のストッパナットによって形成される、請求項18記載の駆動装置。
【請求項20】
前記別のストッパナットおよび/または各端部ストッパ面(19b)を形成する前記ストッパナット(23)は、ロッド
に圧着固定されている、請求項
18または19記載の駆動装置。
【請求項21】
前記別のストッパナットおよび/または各端部ストッパ面(19b)を形成する前記ストッパナット(23)は、前記スピンドル(10)に圧着固定されている、請求項20記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の形式の、自動車の閉鎖エレメントのための駆動装置に関する。
【0002】
「閉鎖エレメント」という概念は広く理解されてよい。このような閉鎖エレメントには、自動車のテールゲート、トランクルームカバー、ボンネット、ドア、特にサイドドア、トランク底面等が含まれる。
【0003】
上述した駆動装置は、使用者に高度の快適性を提供するために、近年ますます重要となっている。これは特に、閉鎖エレメントの重量のために、閉鎖エレメントの手動での開閉運動が困難となる、自動車の大型の閉鎖エレメントについて該当する。このような場合に、駆動装置によって開放過程および/または閉鎖過程を行うことができ、さらには駆動装置により開放位置または中間位置に閉鎖エレメントを保持することができる。
【0004】
本発明の起点である公知の駆動装置(国際公開第2015/032554号)は、スピンドル駆動装置として構成されている。スピンドル駆動装置は、上記で定義したような自動車の閉鎖エレメントを動かすために用いられる。このためにこのスピンドル駆動装置は、駆動モータと、駆動モータに続いて接続された、駆動運動を発生させるためのスピンドル・スピンドルナット伝動装置とを備えている。駆動運動を行うために、スピンドル駆動装置は、それぞれ1つの駆動接続部を備えた2つの駆動区分を有しており、この場合、駆動接続部は、スピンドル駆動装置の走出の際に、軸方向で互いに離れるように動かされ、スピンドル駆動装置の走入の際に、軸方向で互いに接近するように動かされる。
【0005】
公知の駆動装置には、ばね装置が組み込まれており、このばね装置は、互いに可動な両駆動区分を、駆動装置の走出位置に向かって互いに予荷重をかける。ばね装置はこの場合、極めて大きなばね力を提供する。
【0006】
したがって、作動安全性を高めるために、公知のスピンドル駆動装置では、駆動装置の走出位置への運動の際に、互いに接近するように動く端部ストッパ面の間に、端部ストッパへの駆動運動の間、駆動運動を、駆動運動の速度に依存して減衰する減衰装置が設けられている。公知の減衰装置は、エラストマから成るブシュの形態の減衰エレメントを有しており、端部ストッパ面の間の衝突の減衰は、この減衰エレメントが、端部ストッパ面間で、軸方向で圧縮されることにより行われる。しかしながら減衰作用をさらに改善することができる。
【0007】
本発明の根底を成す課題は、公知の駆動装置を改良して、上述した場合における減衰作用をさらに改善するように設計することである。
【0008】
上記課題は、請求項1の上位概念に記載の形式の自動車の閉鎖エレメントのための駆動装置において、請求項1の特徴部に記載の特徴を備えた駆動装置により解決される。
【0009】
互いに可動な駆動区分にそれぞれ設けられている2つの端部ストッパ面の間に、減衰エレメントを配置するという基本的な考えが重要であり、減衰エレメントは一方では、この減衰エレメントが塑性変形可能であり、従ってそれ自体、衝突エネルギの一部を吸収することにより減衰作用を得る。他方では減衰エレメントは、端部ストッパ面の一方との衝突の際に、減衰エレメントのもともとの位置から変位し、変形した状態で、この一方の端部ストッパ面によって、他方の端部ストッパ面の方向に動かされ、これにより衝突エネルギのさらなる部分が吸収される。
【0010】
上述の減衰作用は、好適には駆動装置の通常作動時には生じず、例えば使用者が、閉鎖エレメントを手動で開放する際に、大きすぎる開放力を加えたときの誤使用状態の場合にのみ、または例えば不都合にも、駆動装置の駆動接続部が、閉鎖エレメントから、または閉鎖エレメント開口の縁部領域から外れたときの構成部分の故障の場合にのみ生じることを補足しておく。すなわち、一方では減衰エレメントの塑性変形、他方では、塑性変形された減衰エレメントの、それぞれ他方の端部ストッパ面への所定の距離にわたる運動は、比較的大きな物損、または人的損害を回避するために、上述した特別な状況でのみ生じる。
【0011】
具体的には、減衰装置が、走入位置においては、両端部ストッパ面から離間された減衰エレメントを有していて、この減衰エレメントは、駆動運動中に、端部ストッパ面のうちの一方との軸方向の衝突により塑性変形可能であって、さらにこの端部ストッパ面によって、塑性変形された状態で、それぞれ他方の端部ストッパ面まで一緒に動かされることが提案される。
【0012】
請求項2の構成では、塑性変形状態にある減衰エレメントは、それぞれ他方の端部ストッパ面へと動かされる間に、両駆動区分の間に摩擦力を発生させる。変形されていない状態で減衰エレメントが運動する際には、好適にはこのような摩擦力は発生しない。換言すると、減衰エレメントは塑性変形された状態では、互いに相対的に動く両駆動区分の間にクランプされ、またはひっかかり、これにより、駆動区分間の運動はさらに減衰もしくは制動される。
【0013】
請求項3による構成によれば、一方の駆動区分は管として、他方の駆動区分は、この管内にガイドされるロッドとして形成されており、この場合、ロッドは、好適には、スピンドル・スピンドルナット伝動装置のスピンドルであって、さらに好適には、管は、スピンドル・スピンドルナット伝動装置のスピンドルナットに軸方向不動に、特に相対回動不能に接続されたスピンドルナット管である。スピンドルは、一方の駆動接続部に、スピンドルナット管は他方の駆動接続部に接続することができ、これにより、スピンドルとスピンドルナットとの間の相対運動は、幾何学的なスピンドル軸線に沿った駆動接続部間の直線運動となる。好適には、スピンドル・スピンドルナット伝動装置の手前には、駆動モータと、場合によっては中間伝動装置とを有する駆動ユニットが接続されており、この場合、駆動ユニットは特にスピンドルを回転させる。この場合、過負荷の場合のために、スピンドル・スピンドルナット伝動装置の損傷を回避するために、スピンドルとスピンドルナットとを一時的に係合解除することも考えられる。
【0014】
請求項4および5には、端部ストッパの両端部ストッパ面が定義されている。請求項4によれば、衝突により減衰エレメントを塑性変形させる一方の端部ストッパ面を、管の内面に形成することができ、特に、半径方向内側に向けられた少なくとも1つの突起の形態で形成することができる。請求項5によれば、他方の端部ストッパ面を、ロッドの外面に形成することができ、特に、半径方向外側に向けられた少なくとも1つの突起の形態で形成することができる。これにより軸方向でこれら両端部ストッパ面の間に、上述の減衰エレメントが配置されている。
【0015】
減衰エレメントの構成および有利な配置は、請求項6から8までに記載されている。
【0016】
請求項9および10の構成によれば、減衰エレメントは特に、一方の端部ストッパ面を形成するストッパナットと同じ構造の別のストッパナットである。ストッパナットは、特に、各駆動区分に、特にロッドもしくはスピンドルに軸方向不動に接続されているスリーブ状のまたはキャップ状のエレメントを意味する。請求項10によれば、この接続は、圧着固定により形成することができる。
【0017】
以下に、1つの実施例のみを示した図面につき本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】提案による駆動装置を備えた、テールゲートを含む自動車のリヤ領域を極めて概略的に示す図である。
【
図2】
図1による装置をa)走入位置およびb)走出位置で示す断面した側面図である。
【
図3】
図1による駆動装置の減衰装置の作用原理を概略的に示す図である。
【0019】
図面に示された駆動装置1は、スピンドル駆動装置1として構成されていて、自動車の、この場合例えばテールゲートとして構成された閉鎖エレメント2をモータにより動かすために使用される。「閉鎖エレメント」の概念の広い理解に関しては、明細書の冒頭部分を参照されたい。閉鎖エレメント2の重量に起因する比較的大きな力に基づき、まさにこの場合、駆動装置の特に高い確実性が必須であるので、以下に本発明を、テールゲートとして構成された閉鎖エレメント2につき説明する。
【0020】
スピンドル駆動装置1は、この場合、好適には電気駆動ユニット3を備えており、この電気駆動ユニットは、電気駆動モータ4と、駆動モータ4に続いて接続された中間伝動装置5とを有している。全体として駆動技術的に駆動ユニット3に続いて、2つの駆動接続部8,9の間に直線的な駆動運動を発生させる幾何学的なスピンドル軸線7を有したスピンドル・スピンドルナット伝動装置6が接続されている。スピンドル・スピンドルナット伝動装置6は、それ自体通常、スピンドル雄ねじ山11を備えたスピンドル10と、スピンドルナット雌ねじ山13を備えたスピンドルナット12とを有しており、これらのねじ山は互いに螺合部14を形成する。
【0021】
スピンドル駆動装置1の形態の駆動装置は、2つの駆動区分15a,15bを有する駆動系15を有しており、各駆動区分15a,15bはそれぞれ対応配置された駆動接続部8,9を有している。両駆動区分15a,15bは、スピンドル・スピンドルナット伝動装置6によって駆動されて互いに直線的に可動である。したがって、ここで選択された実施例では、スピンドル10は、駆動区分15aに、したがって駆動接続部8に配属されていて、これに対してスピンドルナット12は、駆動区分15bに、したがって駆動接続部9に配属されている。駆動ユニット3の操作により、スピンドル10は回転させられ、スピンドルナット12はスピンドル10に対して相対的に軸方向で動く。スピンドルナット12は、この場合好適には、スピンドルナット管16に軸方向不動に接続されており、この場合、スピンドルナット管16はさらに駆動接続部9に接続されている。このようにして、スピンドル10とスピンドルナット12との間の相対運動は、スピンドルナット管16を介して駆動接続部9へと伝達され、これにより駆動接続部8,9は相応に互いに相対的に運動する。
【0022】
スピンドル駆動装置1は、
図1に示した組付け状態で、駆動技術的に閉鎖エレメント2に連結されている。この場合、スピンドル駆動装置1は、前述の形式で、閉鎖エレメント2を、この場合、テールゲートを、
図1に示された開放位置と、図示されていない閉鎖位置との間で動かす。万全を期すために述べておくが、この場合、例としてスピンドル駆動装置1として示された駆動装置は、手動でも操作可能であり、すなわち、使用者が閉鎖エレメント2を手動でも開放および/または閉鎖することができる。この場合、オプションとして設けられた駆動モータ4を備えた駆動ユニット3にも関わらず、手動の移動を可能にするために、駆動装置はさらに、過負荷クラッチ(図示せず)を有していてよい。基本的には、駆動装置を手動操作のみが可能であるように構成し、上述したような駆動ユニットを省くことも考えられる。
【0023】
駆動装置もしくはスピンドル駆動装置1は、さらに、ばね装置17を有しており、このばね装置は、両駆動区分15a,15bに、互いに走出位置に向かって予荷重をかけ、したがって閉鎖エレメント2を開放位置へと推し進める。この場合、好適には、ばね装置17は、2つの圧縮ばね17a,17bを有しており、これらの圧縮ばねは、スピンドル駆動装置1が走入位置に位置している場合に、走入位置から、走出位置の方向への駆動運動の際に第1の区分でまず、さらなる駆動運動の経過におけるよりも高い押圧力が生じるように、構成されている。
【0024】
図1に示した好適な実施例では、全部で2つの駆動装置、この場合好適には2つのスピンドル駆動装置1が設けられており、これらのスピンドル駆動装置は、閉鎖エレメント開口部18の、この場合テールゲート開口部の対向する2つの縁部領域に配置されている。しかしながら基本的には、単に1つのこのような駆動装置が設けられていることも想定でき、この場合は特に、この駆動装置は、閉鎖エレメント開口部18の1つの縁部領域に配置されている。
【0025】
ここに記載した駆動装置はさらに、走出位置へ向かう、駆動接続部8,9間の駆動運動を制限するために端部ストッパ19を有している。端部ストッパ19は、それぞれ所属の駆動区分15a,15bにおける、互いに接近するように移動可能な端部ストッパ面19a,19bと、端部ストッパ19への駆動運動の間、駆動運動をその速度に依存して減衰する減衰装置20と、を有している。この場合、端部ストッパ19では過剰に大きな衝突力が生じ、これは、減衰装置20によって吸収されるべきであり、できるだけ完全に吸収されるべきである。
【0026】
この場合、減衰装置20が、走入位置においては、両端部ストッパ面19a,19bから軸方向で離間された減衰エレメント21を有していて(
図3a)、駆動運動中は、端部ストッパ面のうちの一方との、この場合は端部ストッパ面19aとの軸方向の衝突により塑性変形可能であって(
図3b)、さらにこの端部ストッパ面によって、塑性変形された状態で、それぞれ他方の端部ストッパ面19bまで一緒に動かされる(
図3c)、ということが重要である。
【0027】
提案された減衰装置20の構成により、衝突エネルギはすなわち2つの方法で減衰される。つまり一方では、減衰エレメント21の塑性変形により、衝突エネルギの一部が既に吸収される。衝突エネルギのその他の部分は、減衰エレメント21が、最初に接触する端部ストッパ面19aによって、他方の端部ストッパ面19bまで動かされることにより吸収される。このことは、減衰エレメント21が通常の状態では、すなわち衝突前もしくは変形前では、端部ストッパ面19bから間隔をおいて位置していることにより可能である。このようにして、減衰エレメント21が、衝突後に動かなければならない付加的な距離を介して、さらなる衝突エネルギを吸収することができ、好適には、端部ストッパ面19bもしくは端部ストッパ面19bを形成する構成部分が、その軸方向の位置から離れ、したがって駆動区分15a,15bを確実に結びつける。
【0028】
図3aには、上記に定義したような、望ましくない衝突前の状態もしくは通常作動の状態が示されている。両端部ストッパ面19a,19bが減衰エレメント21から軸方向で間隔を置いて位置していることが明らかである。
【0029】
図3bには、衝突開始時の状態が示されており、この場合、端部ストッパ面19aは、軸方向で減衰エレメント21に衝突しており、減衰エレメント21を塑性変形している。この場合、塑性変形は、減衰エレメントを事前に軸方向不動に、所属の駆動区分15aもしくはこの場合スピンドル10に接続しているもともとの固定部から、減衰エレメント21が裂断されることにより実現される、または少なくとも助成される。この場合、好適には、減衰エレメント21はスピンドル10に圧着固定されており、すなわち環状の溝22a内に圧入されている。溝22aから押し出すことにより、減衰エレメント21は塑性変形する。
【0030】
図3cには、
図3bに対してさらに塑性変形された減衰エレメント21が、さらに第2の端部ストッパ面19bの方向に動かされている状態が示されている。この場合、好適には、減衰エレメントは、両駆動区分15a,15bに、この場合、スピンドル10およびスピンドルナット管16の両方に接触するように著しく塑性変形されている。このようにして、駆動区分15a,15b間に、もしくはスピンドル10とスピンドルナット管16との間に、摩擦力が形成され、これにより付加的な減衰作用が得られる。しかしながら通常の作動を妨害しないように、減衰エレメント21は、
図3に示したように、もともとは、駆動区分15a,15bの間に摩擦力が生じないように成形されている。
【0031】
既に上述したように、提案による駆動装置のこの実施例では、スピンドル・スピンドルナット伝動装置6が設けられており、これによりこの場合、好適には以下の構造が生じる。すなわち、一方の駆動区分15bは、管、すなわちスピンドルナット管16を含んでいて、他方の駆動区分15aはロッド、すなわちスピンドル10含んでいる。一般的に、この実施形態では、ロッドは、管の内面に滑り係合している。基本的には、ロッドが、管の内面と螺合している構成も考えられる。しかしながらこの場合、好適には、ロッドと管との間の、もしくは駆動区分15a,15bの間の、純粋な軸方向の相対運動は行われない。
【0032】
衝突により減衰エレメント21を塑性変形させる一方の端部ストッパ面19aは、この場合、スピンドルナット管16の内面に形成されていて、この場合、特に、半径方向内側に向けられた少なくとも1つの突起によって形成される。この少なくとも1つの突起は、この場合、スピンドルナット12の軸方向端部に接触している。基本的に、この突起は、スピンドルナット12の軸方向端部にも形成することができる。塑性変形された減衰エレメント21が向かって行く対向する他方の端部ストッパ面19bは、ロッドもしくはスピンドル10の外面に形成されていて、特に、半径方向外側に向けられた少なくとも1つの突起によって形成される。端部ストッパ面19bを形成する突起は、この場合、好適には、残りのロッドもしくはスピンドル10に軸方向不動に接続されているストッパナット23に形成されている。ストッパナット23はこの場合、減衰エレメント21と同じ形式で、ロッドもしくはスピンドル10に接続されている、すなわち圧着固定されている、ストッパスリーブとして形成されている。
【0033】
減衰エレメント21も、この場合、ストッパナットとして形成されていて、この場合、好適には、端部ストッパ面19bを形成するストッパナット23と同じ構造である。
【0034】
減衰エレメント21は、上述したように、両駆動区分15a,15bのうちの一方に軸方向不動に接続されていて、この一方の端部ストッパ面19aの軸方向の衝突により塑性変形されて、これにより減衰エレメント21の軸方向不動の接続が解除されて、その結果、減衰エレメント21は、もともとの位置から離れる。この場合、好適には、減衰エレメント21は通常の状態で、すなわち変形されていない状態で、ロッドもしくはスピンドル10に軸方向不動に接続されていて、半径方向内側に向けられた突起によって形成される端部ストッパ面19aとの軸方向の衝突により塑性変形される。万全を期すためだけに述べておくが、減衰エレメント21は、他の実施形態では選択的に、管もしくはスピンドルナット管16に軸方向不動に接続されていてもよく、この場合は相応に、他方の端部ストッパ面19bとの、もしくはストッパナット23の外側に向けられた突起との軸方向の衝突により、塑性変形される。この場合、ロッドもしくはスピンドル10に形成されている端部ストッパ面19bは、減衰エレメント21を、この塑性変形された状態で、管もしくはスピンドルナット管16の端部ストッパ面19aへと動かす。しかしながら、減衰エレメント21が、ストッパナット23と同様に、1つの同じ構成部分に、すなわちこの場合スピンドル10に取り付けられている態様が好適であり、この場合、減衰エレメントと、端部ストッパ面19bを形成するストッパナット23とは、特に有利には同じ構造で形成されている。