(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】調整可能な根元成長多層カーボンナノチューブ用の触媒とプロセス
(51)【国際特許分類】
B01J 23/755 20060101AFI20230403BHJP
B01J 23/745 20060101ALI20230403BHJP
B01J 23/75 20060101ALI20230403BHJP
B01J 23/90 20060101ALI20230403BHJP
B01J 29/46 20060101ALI20230403BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20230403BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20230403BHJP
B01J 37/03 20060101ALI20230403BHJP
B01J 38/12 20060101ALI20230403BHJP
B01J 38/22 20060101ALI20230403BHJP
C01B 3/26 20060101ALI20230403BHJP
C01B 32/162 20170101ALI20230403BHJP
【FI】
B01J23/755 M
B01J23/745 M
B01J23/75 M
B01J23/90 M
B01J29/46 M
B01J35/10 301G
B01J37/02 101C
B01J37/03 A
B01J38/12 Z
B01J38/22
C01B3/26
C01B32/162
(21)【出願番号】P 2020536932
(86)(22)【出願日】2018-09-18
(86)【国際出願番号】 US2018051545
(87)【国際公開番号】W WO2019055998
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-09-10
(32)【優先日】2017-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513041141
【氏名又は名称】ウェスト バージニア ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジエンリ・フ
(72)【発明者】
【氏名】ディーパ・アイラス・クッテリ
(72)【発明者】
【氏名】イ-ウェン・ワン
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-513466(JP,A)
【文献】特開平11-335106(JP,A)
【文献】特開2006-315891(JP,A)
【文献】特表2016-522083(JP,A)
【文献】国際公開第2014/188439(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/030821(WO,A1)
【文献】特表2009-508667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C01B 3/00 - 3/58
C01B 32/00 - 32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低級炭化水素を分解する方法であって、
略1℃/minから略20℃/minの間の加熱率で略500℃から略1000℃の間の温度に触媒床を加熱するステップであって、
前記触媒床が金属担持触媒を備え、
前記金属担持触媒が、NiとFeとCoとMnとCrとMoから選択された3d遷移金属、及び、シリカとアルミナとゼオライトと二酸化チタンとこれらの混合物から選択された担体物質を備え、
前記3d遷移金属が、前記3d遷移金属と前記担体物質の全重量に基づいて略5wt%から略70wt%の量で存在し、
前記担体物質が、前記3d遷移金属と前記担体物質の全重量に基づいて略95wt%から略30wt%の量で存在し、
前記金属担持触媒が固定床又は移動床の流通反応器の構成内に配置され、
前記流通反応器がガス流用の流入端と流出端を備える、ステップと、
略0分から略240分のタイムオンストリーム(TOS)で略5000h
-1から略60000h
-1の空間速度に相当する反応ガス流量で前記流入端を介して反応ガスの流れを提供するステップであって、
前記反応ガスの流れが前記触媒床に接触し、
前記反応ガスが低級炭化水素と不活性ガスを備える、ステップと、
前記流出端において水素を備える流出ガスを収集するステップ
と、
前記反応ガスの流れを停止すること及び前記触媒床に再生ガスを提供することで前記金属担持触媒を再生するステップであって、
前記再生ガスが略5分から略240分の接触期間にわたって前記触媒床に接触し、前記触媒床の温度が略250℃から略750℃であり、前記再生ガスが酸素を備える、ステップと、
前記加熱するステップと、前記反応ガスの流れを提供するステップと、前記流出ガスを収集するステップと、前記金属担持触媒を再生するステップとを1サイクルから10サイクルにわたって繰り返すステップと、を備える方法。
【請求項2】
前記金属担持触媒がインシピエントウェットネス法によって調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属担持触媒が、ゾルゲル法によって調製されたエアロゲル触媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エアロゲル触媒が略50m
2/gから略500m
2/gのBET表面積を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記エアロゲル触媒が、略0.3cm
3/gから略1.6cm
3/gの触媒細孔容積を有する請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記反応ガスが、略10%から略100%の低級炭化水素と、略90%から略0%の不活性ガスを備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記低級炭化水素がメタン、エタン、プロパン、ブタン、又はこれらの組み合わせを備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記不活性ガスが窒素と、アルゴンと、これらの混合物から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応ガスが、略5000h
-1から略50000h
-1の空間速度に相当する流量を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記タイムオンストリームが略0分から略90分である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記低級炭化水素の分解が略30%から略90%の変換効率で水素を生じさせる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記低級炭化水素の分解が炭素物質を生じさせる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記炭素物質がカーボンナノチューブを備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記カーボンナノチューブが略5nmから略150nmの平均直径を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記カーボンナノチューブが、先端成長カーボンナノチューブ、根元成長カーボンナノチューブ、又はこれらの混合物を備える、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
現状では、水素は、汚染がほとんどなく高効率で電気や他のエネルギー形態に変換可能であるので、最も有望で環境に優しいエネルギー源であるように思われる。水素生成の多様な方法の中でも、天然ガスの水蒸気改質が最も一般的で経済的な技術であり、世界の水素消費の50%に寄与している(非特許文献1)。しかし、そのプロセスは高吸熱性であり(68.7kJmol-1H2)、多量のCOxを生成する。結果として、水蒸気改質には水性ガスシフト反応、分離及び精製ステップが伴うので、プロセスのコストが上昇する。最近では、シェールガスが米国における非常に重要な天然ガス源になっていて、2005年では米国の天然ガス生産の僅か3%に寄与しているだけであったが、2012年までに35%に増加していて、2035年にはほぼ50%にまで成長すると予測されている(非特許文献2)。COxフリーの水素に対する需要の増加と多量なシェールガス資源が、その主成分であるメタンをより有益な燃料や化学物質に変換する新規化学プロセスを開発することの好機を与えている。
【0002】
メタンの直接変換は、水蒸気改質と比較するとそれほど吸熱過程ではないので(37.4kJmol-1H2、非特許文献3、非特許文献4を参照)、魅力的な代替プロセスである。このプロセスは、COxフリーの水素を発生させ、低温燃料電気に有力な応用を有し、また、有益なカーボンナノチューブ(CNT)やナノファイバを発生させる。メタン(線状炭化水素)は原子状炭素に熱分解し、最終的には、以下の反応式により直線状で中空のカーボンナノチューブを形成する:
CH4←→C(CNT)+2H2
【0003】
メタン分解によってカーボンナノチューブを生成するためのプロセスを特定するために大々的に研究が行われてきたが、現状では、それらプロセスはいずれも工業規模での生産に適したものではない。用いられる金属触媒の中で多くの研究者が着目しているのはNi系触媒であるが、これはその高い触媒活性とカーボンナノチューブ生成能によるものである(非特許文献5、非特許文献6)。Ni触媒は優れた性能を示しているが、600℃を超える温度で直ちに不活性になる(非特許文献7、非特許文献8)。反応温度における触媒の耐久性を改善し、不活性化を減らすために、多様な金属や金属酸化物がNi系触媒に導入されている(非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13、非特許文献14)。鉄系触媒も研究されているが、Ni触媒よりも寿命が短く、活性が低いことが分かっている(非特許文献15)。また、Fe系触媒を用いる場合には、効率的な工程のためにより高い温度範囲が要求される。Co触媒は、NiやFeを含有する触媒よりも注目されてこなかったが、そのメタン分解に対する活性を示す文献はいくつか存在している(非特許文献16、非特許文献17、非特許文献18)。以前の文献に基づくと、鉄族金属の触媒活性は、Ni>Co>Feの順であるとまとめることができる(非特許文献17)。触媒の活性は、残念乍ら、活性サイトに形成される炭素による被覆に起因して、反応過程中に徐々に失われていく。
【0004】
触媒によるメタン分解の現状利用可能な方法は、「先端成長」によってカーボンナノチューブを形成する。しかしながら、先端成長カーボンナノチューブの大きな欠点は、酸塩基処理を用いて触媒からカーボンナノチューブを収穫するプロセス中に、金属ナノ粒子が溶解して、触媒が犠牲になることである。また、先端成長カーボンナノチューブでは、先端に付着した触媒ナノ粒子がカーボンナノチューブ中の不純物となる。そこで、触媒を完全に回復させてカーボンナノチューブを抽出することが最も求められている。この問題を克服するため、「根元成長」カーボンナノチューブを生成するような触媒と反応過程が設計されている。根元成長カーボンナノチューブは簡単に収穫可能であり、抽出プロセス中に触媒を消費せずに再生可能であると考えられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】J. Holladay, et al., Catal. Today, 2009, 139, 244-260
【文献】R. W. Howarth, Energy Sci. Eng., 2014, 2, 47-60
【文献】J. N. Armor, Appl. Catal. A Gen., 1999, 176, 159-176
【文献】Q. Weizhong, et al., Appl. Catal. A Gen., 2004, 260, 223-228
【文献】T. Zhang and M. D. Amiridis, Appl. Catal. A Gen., 1998, 167, 161-172
【文献】A. M. Amin, et al., Int. J. Hydrogen Energy, 2011, 36, 2904-2935
【文献】S. T. Hussain, et al., J. Nat. Gas Chem., 2008, 17, 374-382
【文献】Y. Wang, et al., Int. J. Hydrogen Energy, 2014, 39, 778-787
【文献】G. Wang, et al., Energy & Fuels, 2013, 27, 4448-4456
【文献】Y. Li, et al., Chem. Commun., 1999, 1141-1142
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【文献】Sanchez-Paradinas S, et al. Adv Mater 2015; 27: 6152-6
【文献】Sorensen L, Strouse GF, and Stiegman AE. Adv Mater 2006; 18: 1965-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カーボンナノチューブを付随的に生成しながらCOxフリーで水素を生成することを対象とした研究の進展にもかかわらず、特に使用した触媒から生産されたカーボンナノチューブを容易に分離するようにして、その生産を成し遂げるための組成物と方法が欠けている。こうした要求と他の要求が本開示によって満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願で実現され広範に記載される本開示の目的によると、本開示は、一態様において、本開示の触媒を利用してメタン、エタン、プロパン、ブタン、又はこれらの組み合わせを備える低級炭化水素からカーボンナノチューブと水素ガスを同時に生成するための方法と組成物に関する。多様な態様において、本開示は、カーボンナノチューブを生成するのと同時に水素をCOxフリーで生成するための方法に関する。また、開示されるのは、本開示の触媒組成物上の選択的な根元成長カーボンナノチューブのための方法と組成物である。更なる態様において、本開示は、シリカと、アルミナと、ゼオライトと、二酸化チタンと、これらの組み合わせから選択された担体物質上の3d遷移金属(例えば、Ni、Fe、Co、Mn、Cr、Mo、これらの組み合わせ)を備える一元、二元金属、三元金属触媒に関する。また、開示されるのは、本開示の触媒を調製するための方法である。
【0008】
開示されるのは、二種の3d遷移金属と担体物質を備える組成物であり、その組成物が備える二種の3d遷移金属は式xM:yNで表され、MとNの各々は3d遷移金属から独立的に選択され、MとNは同じではなく、xとyはM:Nのモル比を表し、xは略1から略20の間の値を有する数字であり、yは略1から略10の間の値を有する数字であり、担体物質は、シリカと、アルミナと、ゼオライトと、これらの混合物から選択される。
【0009】
開示されるのは、二種の3d遷移金属と担体物質を備える組成物であり、その組成物が備える二種の3d遷移金属は式xM:yNで表され、MとNの各々はNiと、Feと、Coと、Mnと、Crと、Moと、これらの組み合わせから独立的に選択され、MとNは同じではなく、xとyはM:Nのモル比を表し、xは略1から略20の間の値を有する数字であり、yは略1から略10の間の値を有する数字であり、担体物質は、シリカと、アルミナと、ゼオライトと、これらの混合物から選択される。
【0010】
また、開示されるのは、二種の3d遷移金属と担体物質を備える組成物であり、その組成物が備える二種の3d遷移金属は式xM:yNで表され、MとNの各々は3d遷移金属から独立的に選択され、MとNは同じではなく、xとyはM:Nのモル比を表し、xは略1から略20の間の値を有する数字であり、yは略1から略10の間の値を有する数字であり、担体物質は、シリカと、アルミナと、ゼオライトと、これらの混合物から選択される。
【0011】
また、開示されるのは、3d遷移金属と担体物質を備える組成物であり、その3d遷移金属はNiと、Feと、Coと、Mnと、Crと、Moと、これらの組み合わせから選択され、担体物質は、シリカと、アルミナと、ゼオライトと、二酸化チタンと、これらの混合物から選択され、3d遷移金属は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略40wt%から略70wt%までの量で存在し、担体物質は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略60wt%から略30wt%までの量で存在する。
【0012】
また、開示されるのは、3d遷移金属と担体物質を備える組成物であり、その3d遷移金属はNiと、Feと、Coから選択され、担体物質は、シリカと、アルミナと、ゼオライトと、これらの混合物から選択され、3d遷移金属は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略40wt%から略70wt%までの量で存在し、担体物質は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略60wt%から略30wt%までの量で存在する。
【0013】
また、開示されるのは、インシピエントウェットネス法を備える本開示の触媒組成物の作製方法である。
【0014】
また、開示されるのは、ゾルゲル法を備える本開示の触媒組成物の作製方法である。
【0015】
また、開示されるのは、本開示の組成物を作製する方法であり、その方法は、第一3d遷移金属塩及び第二3d遷移金属を備える水溶液に担体物質を接触させて、第一3d遷移金属塩及び第二3d遷移金属を備える水溶液と担体物質を備える混合物を形成するステップ(担体物質はシリカと、アルミナと、ゼオライトと、二酸化チタンと、これらの混合物とから選択され、第一3d遷移金属塩と第二3d遷移金属塩は同じではない)と、混合物を乾燥させて、乾燥混合物を形成するステップと、乾燥混合物をか焼して、か焼混合物を形成するステップと、か焼混合物を還元することによって、二種の3d遷移金属と担体物質を備える組成物を提供するステップとを備え、組成物が備える二種の3d遷移金属は式xM:yNによって表され、MとNの各々は3d遷移金属から独立して選択され、MとNは同じでなく、xとyはM:Nのモル比を表し、xは略1から略20の間の値を有する数字であり、yは略1から略10の間の値を有する数字であり、担体物質は、シリカと、アルミナと、ゼオライトと、これらの混合物から選択される。
【0016】
また、開示されるのは、本開示の組成物を作製する方法であり、その方法は、第一3d遷移金属塩及び第二3d遷移金属を備える水溶液に担体物質を接触させて、第一3d遷移金属塩及び第二3d遷移金属を備える水溶液と担体物質を備える混合物を形成するステップ(担体物質はシリカと、アルミナと、ゼオライトと、二酸化チタンと、これらの混合物とから選択され、第一3d遷移金属塩と第二3d遷移金属塩は同じではない)と、混合物を乾燥させて、乾燥混合物を形成するステップと、乾燥混合物をか焼して、か焼混合物を形成するステップと、か焼混合物を還元することによって、二種の3d遷移金属と担体物質を備える組成物を提供するステップとを備え、組成物が備える二種の3d遷移金属は式xM:yNによって表され、MとNの各々はNiと、Feと、Coと、Mnと、Crと、Moと、これらの組み合わせから独立して選択され、MとNは同じでなく、xとyはM:Nのモル比を表し、xは略1から略20の間の値を有する数字であり、yは略1から略10の間の値を有する数字であり、担体物質は、シリカと、アルミナと、ゼオライトと、これらの混合物から選択される。
【0017】
また、開示されるのは、3d遷移金属と担体物質を備える組成物を作製する方法であり、3d遷移金属は、Niと、Feと、Coと、Mnと、Crと、Moと、これらの組み合わせから選択され、担体物質は、シリカと、アルミナと、ゼオライトと、二酸化チタンと、これらの混合物から選択され、3d遷移金属は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略40wt%から略70wt%の量で存在し、担体物質は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略60wt%から略30wt%の量で存在し、本方法は、ニッケル塩と、鉄塩と、コバルト塩と、マンガン塩と、クロム塩と、モリブデン塩と、これらの組み合わせから選択された3d遷移金属塩を備える水溶液に担体物質を接触させて、3d遷移金属塩を備える水溶液と担体物質を備える混合物を形成するステップを備え、担体物質は、シリカと、アルミナと、ゼオライトと、二酸化チタンと、これらの混合物から選択され、3d遷移金属塩は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略40wt%から略70wt%の量で存在し、担体物質は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略60wt%から略30wt%の量で存在する。
【0018】
また、開示されるのは、3d遷移金属と担体物質を備える組成物を作製する方法であり、3d遷移金属は、Niと、Feと、Coから選択され、担体物質は、シリカと、アルミナと、ゼオライトと、これらの混合物から選択され、3d遷移金属は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略40wt%から略70wt%の量で存在し、担体物質は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略60wt%から略30wt%の量で存在し、本方法は、ニッケル塩と、鉄塩と、コバルト塩から選択された3d遷移金属塩を備える水溶液に担体物質を接触させて、3d遷移金属塩を備える水溶液と担体物質を備える混合物を形成するステップを備え、担体物質は、シリカと、アルミナと、ゼオライトと、これらの混合物から選択され、3d遷移金属塩は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略40wt%から略70wt%の量で存在し、担体物質は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略60wt%から略30wt%の量で存在する。
【0019】
また、開示されるのは、低級炭化水素を分解する方法であり、本方法は、略1℃/minから略20℃/minの加熱率で略500℃から略1000℃の温度に触媒床を加熱するステップ(触媒床は本開示の組成物を備え、本開示の組成物は二種の3d遷移金属と担体物質を備え、組成物が備える二種の3d遷移金属は式xM:yNで表され、MとNの各々は3d遷移金属から独立して選択され、MとNは同じではなく、xとyはM:Nのモル比を表し、xは略1から略20の間の値を有する数字であり、yは略1から略10の間の値を有する数字であり、担体物質はシリカと、アルミナと、ゼオライトと、二酸化チタンと、これらの混合物から選択され、触媒床は固定流通反応器の反応器床に配置され、固定流通反応器はガス流用の流入端と流出端を備える)と、略0.1グラムの触媒充填量に基づいて略25ml/minから略200ml/minの不活性ガス流量で流入端を介して第一不活性ガスの流れを提供するステップ(特に断らない限り本願で与えられている全てのガス流量は0.1gの触媒充填量に基づく)(第一不活性ガスの流れは触媒床と接触している)と、流入端を介する第一不活性ガスの流れを停止するステップと、略0分から略240分のタイムオンストリーム(TOS,time‐on‐stream)で略5000h-1から略60000h-1の空間速度に相当する反応ガス流量で流入端を介して反応ガスの流れを提供するステップ(反応ガスの流れは触媒床に接触していて、反応ガスは低級炭化水素と第二不活性ガスを備える)と、流出端において流出ガスを収集するステップ(流出ガスは水素を備える)を備える。
【0020】
また、開示されるのは、低級炭化水素を分解する方法であり、本方法は、略1℃/minから略20℃/minの加熱率で略500℃から略1000℃の温度に触媒床を加熱するステップ(触媒床は本開示の組成物を備え、本開示の組成物は二種の3d遷移金属と担体物質を備え、組成物が備える二種の3d遷移金属は式xM:yNで表され、MとNの各々はNiと、Feと、Coと、Mnと、Crと、Moと、これらの組み合わせから独立して選択され、MとNは同じではなく、xとyはM:Nのモル比を表し、xは略1から略20の間の値を有する数字であり、yは略1から略10の間の値を有する数字であり、担体物質はシリカと、アルミナと、ゼオライトと、二酸化チタンと、これらの混合物から選択され、触媒床は固定流通反応器の反応器床に配置され、固定流通反応器はガス流用の流入端と流出端を備える)と、略0.1グラムの触媒充填量に基づいて略25ml/minから略200ml/minの不活性ガス流量で流入端を介して第一不活性ガスの流れを提供するステップ(特に断らない限り本願で与えられている全てのガス流量は0.1gの触媒充填量に基づく)(第一不活性ガスの流れは触媒床と接触している)と、流入端を介する第一不活性ガスの流れを停止するステップと、略0分から略240分のタイムオンストリーム(TOS,time‐on‐stream)で略5000h-1から略60000h-1の空間速度に相当する反応ガス流量で流入端を介して反応ガスの流れを提供するステップ(反応ガスの流れは触媒床に接触していて、反応ガスは低級炭化水素と第二不活性ガスを備える)と、流出端において流出ガスを収集するステップ(流出ガスは水素を備える)を備える。
【0021】
また、開示されるのは、低級炭化水素を分解する方法であり、本方法は、略1℃/minから略20℃/minの加熱率で略500℃から略1000℃の温度に触媒床を加熱するステップ(触媒床は本開示の組成物を備え、本開示の組成物は3d遷移金属と担体物質を備え、3d遷移金属はNiと、Feと、Coと、Mnと、Crと、Moと、これらの組み合わせから選択され、担体物質はシリカと、アルミナと、ゼオライトと、二酸化チタンと、これらの混合物から選択され、3d遷移金属は、3d遷移金属及び担体物質の全重量に基づいて略40wt%から略70wt%の量で存在し、担体物質は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略60wt%から略30wt%の量で存在し、担体物質はシリカと、アルミナと、ゼオライトと、これらの混合物から選択され、触媒床は固定流通反応器の反応器床に配置され、固定流通反応器はガス流用の流入端と流出端を備える)と、略25ml/minから略200ml/minの不活性ガス流量で流入端を介して第一不活性ガスの流れを提供するステップ(第一不活性ガスの流れは触媒床と接触している)と、流入端を介する第一不活性ガスの流れを停止するステップと、略0分から略240分のタイムオンストリーム(TOS,time‐on‐stream)で略5000h-1から略60000h-1の空間速度に相当する活性ガス流量で流入端を介して反応ガスの流れを提供するステップ(反応ガスの流れは触媒床に接触していて、反応ガスは低級炭化水素と第二不活性ガスを備える)と、流出端において流出ガスを収集するステップ(流出ガスは水素を備える)を備える。
【0022】
また、開示されるのは、低級炭化水素を分解する方法であり、本方法は、略1℃/minから略20℃/minの加熱率で略500℃から略1000℃の温度に触媒床を加熱するステップ(触媒床は本開示の組成物を備え、本開示の組成物は3d遷移金属と担体物質を備え、3d遷移金属はNiと、Feと、Coから選択され、担体物質はシリカと、アルミナと、ゼオライトと、これらの混合物から選択され、3d遷移金属は、3d遷移金属及び担体物質の全重量に基づいて略40wt%から略70wt%の量で存在し、担体物質は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略60wt%から略30wt%の量で存在し、担体物質はシリカと、アルミナと、ゼオライトと、これらの混合物から選択され、触媒床は固定流通反応器の反応器床に配置され、固定流通反応器はガス流用の流入端と流出端を備える)と、略25ml/minから略200ml/minの不活性ガス流量で流入端を介して第一不活性ガスの流れを提供するステップ(第一不活性ガスの流れは触媒床と接触している)と、流入端を介する第一不活性ガスの流れを停止するステップと、略0分から略240分のタイムオンストリーム(TOS,time‐on‐stream)で略20000h-1から略60000h-1の空間速度で略25ml/minから略200ml/minの反応ガス流量で流入端を介して反応ガスの流れを提供するステップ(反応ガスの流れは触媒床に接触していて、反応ガスは低級炭化水素と第二不活性ガスを備える)と、流出端において流出ガスを収集するステップ(流出ガスは水素を備える)を備える。
【0023】
本開示の態様は、特定の法定カテゴリー、例えばシステムの法定カテゴリーで記載及び特許請求可能なものであるが、これは単に便宜的なものであって、当業者は、本開示の各態様がいずれの法定カテゴリーでも記載及び特許請求可能なものであることを理解するものである。特に断らない限り、本願に与えられているいずれの方法や態様も、そのステップが特定の順序で行われることを要するとして解釈されるものではない。従って、方法の請求項について、特許請求の範囲や明細書にステップが特定の順序に限定されると具体的に記載されていない場合には、いかなる関係においても順序が推論されるものではない。このことは、ステップや動作の流れの構成、文法構成や句読点から導き出される自明な意味合い、明細書に記載されている態様の数や種類に関する論理事項を含む解釈について想定されるあらゆる明示されていない根拠に当てはまる。
【0024】
添付図面は、明細書に組み込まれて、明細書の一部を成すものであって、本開示の原理を説明するために明細書と共に複数の態様を例示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】T=650℃、TOS=0~60分、GHSV=42000h
-1の条件下の例において記載されているとおりに行われた多様なモル比での本開示の代表的なNi‐Fe/SiO
2触媒に対するメタン分解の代表的なデータを示す。
【
図2】T=650℃、TOS=0~60分、GHSV=42000h
-1の条件下の例において記載されているとおりに行われた多様なモル比での本開示の代表的なNi‐Co/SiO
2触媒に対するメタン分解の代表的なデータを示す。
【
図3】T=650℃、TOS=0~60分、GHSV=42000h
-1の条件下の例において記載されているとおりに行われた多様なモル比での本開示の代表的なFe‐Co/SiO
2触媒に対するメタン分解の代表的なデータを示す。
【
図4A】
図4A~
図4Cは、本開示の代表的な一元又は二元金属触媒上のカーボンナノチューブのX線回折パターンの代表的なデータを示す。具体的には、
図4Aは、本開示の代表的なNi‐Fe触媒上のカーボンナノチューブのX線回折パターンの代表的なデータを示す。
【
図4B】
図4A~
図4Cは、本開示の代表的な一元又は二元金属触媒上のカーボンナノチューブのX線回折パターンの代表的なデータを示す。具体的には、
図4Bは、本開示の代表的なNi‐Co触媒上のカーボンナノチューブのX線回折パターンの代表的なデータを示す。
【
図4C】
図4A~
図4Cは、本開示の代表的な一元又は二元金属触媒上のカーボンナノチューブのX線回折パターンの代表的なデータを示す。具体的には、
図4Cは、本開示の代表的なFe‐Co触媒上のカーボンナノチューブのX線回折パターンの代表的なデータを示す。
【
図5】本開示の代表的な9Ni‐1Fe/SiO
2触媒、9Ni‐1Co/SiO
2触媒、1Fe‐2Co/SiO
2触媒上に堆積した炭素の代表的な熱安定性データを示す。
【
図6】図中のラベル毎に本開示の代表的な一元及び二元金属Ni‐Fe触媒上のカーボンナノチューブの代表的なラマンスペクトルデータを示す。
【
図7】図中のラベル毎に本開示の代表的な一元及び二元金属Ni‐Co触媒上のカーボンナノチューブの代表的なラマンスペクトルデータを示す。
【
図8】図中のラベル毎に本開示の代表的な一元及び二元金属Fe‐Co触媒上のカーボンナノチューブの代表的なラマンスペクトルデータを示す。
【
図9】
図9A~
図9Fは、本開示の代表的な触媒上の炭素フィラメントの成長の代表的な画像を示す。具体的には、
図9Aと
図9Bは、本開示の代表的な9Ni‐1Fe/SiO
2触媒上の炭素フィラメントの成長の代表的な画像を異なる倍率で示す(図の縮尺バーを参照)。
図9Cと
図9Dは、本開示の代表的な9Ni‐1Co/SiO
2触媒上の炭素フィラメントの成長の代表的な画像を異なる倍率で示す(図の縮尺バーを参照)。
図9Eと
図9Fは、本開示の代表的な1Fe‐2Co/SiO
2触媒上の炭素フィラメントの成長の代表的な画像を異なる倍率で示す(図の縮尺バーを参照)。全ての画像は、T=650℃、TOS=60分、GHSV=42000h
-1の条件下の例において記載されているとおりに行われたメタン分解後に得られたものである。
【
図10】図示の温度、TOS=60分、GHSV=42000h
-1でのFe/SiO
2触媒上の炭素フィラメントの根元成長の代表的なデータを示す。
【
図11】
図11Aと
図11Bは、T=700℃、TOS=60分、GHSV=42000h
-1の条件下の例において記載されているとおりに行われた本開示の代表的なFe/SiO
2触媒上の根元成長カーボンナノチューブの代表的な透過型電子顕微鏡写真を示す。
【
図12】T=650℃、TOS=60分、GHSV=42000h
-1の条件下の例において記載されているとおりに行われた本開示の代表的なFe/SiO
2触媒に対する触媒再生の研究から得られたメタンから水素への変換の代表的なデータを示す。
【
図13】
図13Aと
図13Bは、T=700℃、TOS=60分、GHSV=42000h
-1の条件下の例において記載されているとおりに行われたFe/SiO
2触媒の2回目のサイクルでの根元成長カーボンナノチューブの代表的な透過型電子顕微鏡写真を示す。
【
図14】Fe/SiO
2触媒上に調製された根元成長カーボンナノチューブから得られた代表的なラマンスペクトルデータを示す。線(a)は一回目の反応サイクル中に調製されたカーボンナノチューブから得られたデータを示す。線(b)は再生後の二回目の反応サイクル中に調製されたカーボンナノチューブから得られたデータを示す。反応条件はT=700℃、TOS=60分、GHSV=42000h
-1であった。
【
図15】
図15Aと
図15Bは、図示のとおりの未使用の本開示の代表的な一元及び二元金属Ni‐Fe触媒の代表的なX線回折データを示す。
【
図16】図示のとおりの使用済みの本開示の代表的な一元及び二元金属Ni‐Fe触媒の代表的なX線回折データを示す。
【
図17】
図17Aと
図17Bは、図示のとおりの未使用の本開示の代表的な一元及び二元金属Ni‐Co触媒の代表的なX線回折データを示す。
【
図18】図示のとおりの使用済みの本開示の代表的な一元及び二元金属Ni‐Co触媒の代表的なX線回折データを示す。
【
図19】
図19Aと
図19Bは、図示のとおりの未使用の本開示の代表的な一元金属及び二元金属Fe‐Co触媒の代表的なX線回折データを示す。
【
図20】図示のとおりの使用済みの本開示の代表的な一元及び二元金属Fe‐Co触媒の代表的なX線回折データを示す。
【
図21】図示のとおりの未使用のNi‐Fe触媒の温度プログラム還元分析から得られた代表的なデータを示す。
【
図22】図示のとおりの未使用のNi‐Co触媒の温度プログラム還元分析から得られた代表的なデータを示す。
【
図23】図示のとおりの未使用のFe‐Co触媒の温度プログラム還元分析から得られた代表的なデータを示す。
【
図24】T=650℃、TOS=0~60分、GHSV=42000h
-1の条件下の例において記載されているとおりに行われた(図示のとおりの)多様なモル比での本開示の代表的なNi‐Fe/SiO
2触媒に対するH
2収率の代表的なデータを示す。
【
図25】T=650℃、TOS=0~60分、GHSV=42000h
-1の条件下の例において記載されているとおりに行われた(図示のとおりの)多様なモル比での本開示の代表的なNi‐Fe/SiO
2触媒上に形成された炭素の量の代表的なデータを示す。
【
図26】T=650℃、TOS=0~60分、GHSV=42000h
-1の条件下の例において記載されているとおりに行われた(図示のとおりの)多様なモル比での本開示の代表的なNi‐Co/SiO
2触媒に対するH
2収率の代表的なデータを示す。
【
図27】T=650℃、TOS=0~60分、GHSV=42000h
-1の条件下の例において記載されているとおりに行われた(図示のとおりの)多様なモル比での本開示の代表的なNi‐Co/SiO
2触媒上に形成された炭素の量の代表的なデータを示す。
【
図28】T=650℃、P=1bar、TOS=0~60分、GHSV=42000h
-1の条件下の例において記載されているとおりに行われた(図示のとおりの)多様なモル比での本開示の代表的なFe‐Co/SiO
2触媒に対するH
2収率の代表的なデータを示す。
【
図29】T=650℃、P=1bar、TOS=0~60分、GHSV=42000h
-1の条件下の例において記載されているとおりに行われた(図示のとおりの)多様なモル比での本開示の代表的なFe‐Co/SiO
2触媒上に形成された炭素の量の代表的なデータを示す。
【
図30】T=650℃、TOS=0~60分、GHSV=42000h
-1の条件下の例において記載されているとおりに行われた本開示の代表的な9Ni‐1Fe/SiO
2触媒の還元状態及び酸化状態でのメタン分解の代表的なデータを示す。
【
図31】T=650℃、P=1bar、TOS=0~60分、GHSV=42000h
-1の条件下の例において記載されているとおりに行われた本開示の代表的な9Ni‐1Fe/SiO
2触媒上の先端成長カーボンナノチューブ及び根元成長カーボンナノチューブの代表的な画像を示す。縮尺バーが図に示されている。
【
図32】T=650℃、P=1bar、TOS=60分、GHSV=42000h
-1の条件下の例において記載されているとおりに行われた本開示の代表的な1Fe‐2Co/SiO
2触媒上の先端成長カーボンナノチューブ及び根元成長カーボンナノチューブの代表的な画像を示す。縮尺バーが図に示されている。
【
図33】
図33Aと
図33Bは、T=650℃、P=1bar、TOS=0~60分、GHSV=42000h
-1の条件下の例において記載されているとおりに行われた本開示の代表的なFe/Al
2O
3触媒(60wt%のFe/40wt%のAl
2O
3)上のカーボンナノチューブの代表的な画像を示す。縮尺バーが図に示されている。
【
図34】図示されている代表的な触媒/担体サンプルのメタン変換効率の代表的なデータを示す。「700℃ 60Fe/Al2O3」が示すのは、触媒/担体系が60wt%のFe/40wt%のAl
2O
3で、T=700℃、P=1bar、TOS=0~60分、GHSV=42000h
-1の条件下の例において記載されているとおりに行われたメタン分解のものである。「650℃ 60Fe/Al2O3」が示すのは、触媒/担体系が60wt%のFe/40wt%のAl
2O
3で、T=650℃、P=1bar、TOS=0~60分、GHSV=42000h
-1の条件下の例において記載されているとおりに行われたメタン分解のものである。「700℃ 60Fe/SiO2」が示すのは、触媒/担体系が60wt%のFe/40wt%のSiO
2で、T=700℃、P=1bar、TOS=0~60分、GHSV=42000h
-1の条件下の例において記載されているとおりに行われたメタン分解のものである。「700℃ 60Fe/ゼオライト」が示すのは、触媒/担体系が60wt%のFe/40wt%のゼオライトで、T=700℃、P=1bar、TOS=0~60分、GHSV=42000h
-1の条件下の例において記載されているとおりに行われたメタン分解のものである。
【
図35】T=700℃、TOS=0~60分における多様な担体上の本開示のFe触媒に対するメタン分解の代表的なデータを示す。
【
図36】T=700℃、TOS=0~60分における多様なFe充填量での本開示のFe/Al
2O
3に対するメタン分解の代表的なデータを示す。
【
図37A】
図37A~
図37Dは、本開示のカーボンナノチューブの分離及び精製のための酸還流法の効果に関する代表的なデータを示す。
図37Aは、使用済みの本開示の9Ni:1Fe/SiO
2触媒及びFe/SiO
2触媒と、酸還流後に精製されたカーボンナノチューブの代表的なXRDパターンデータを示す。
【
図37B】
図37A~
図37Dは、本開示のカーボンナノチューブの分離及び精製のための酸還流法の効果に関する代表的なデータを示す。
図37Bは、使用済みの本開示の9Ni:1Fe/SiO
2触媒及びFe/SiO
2触媒と、酸還流後に精製されたカーボンナノチューブの代表的なラマンスペクトルデータを示す。
【
図37C】
図37A~
図37Dは、本開示のカーボンナノチューブの分離及び精製のための酸還流法の効果に関する代表的なデータを示す。
図37Cは、酸還流前の本開示のカーボンナノチューブの代表的な透過型電子顕微鏡写真を示す。
【
図37D】
図37A~
図37Dは、本開示のカーボンナノチューブの分離及び精製のための酸還流法の効果に関する代表的なデータを示す。
図37Dは、酸還流後の本開示のカーボンナノチューブの代表的な透過型電子顕微鏡写真を示す。
【
図38】
図38A~
図38Bは、本開示のメソポーラスエアロゲル触媒の提案される形成メカニズムを概略的に示す。
図38Aは、本開示のメソポーラスエアロゲル触媒Ni/Al
2O
3の提案される形成メカニズムを示す。
図38Bは、本開示のメソポーラスエアロゲル触媒Co/Al
2O
3の提案される形成メカニズムを示す。
【
図39A】
図39A~
図39Dは、本開示の金属酸化物エアロゲル触媒に対するメタン分解の代表的なデータを示す。図示されているデータについて、T=650℃、P=0.1MPa、GHSV=42000h
-1である。
図39Aは、図に記載されているとおりのNiのwt%量を有する本開示のNi/Al
2O
3エアロゲル触媒に対するメタン変換率を示す。
【
図39B】
図39A~
図39Dは、本開示の金属酸化物エアロゲル触媒に対するメタン分解の代表的なデータを示す。図示されているデータについて、T=650℃、P=0.1MPa、GHSV=42000h
-1である。
図39Bは、図に記載されているとおりのNiのwt%量を有する本開示のNi/Al
2O
3エアロゲル触媒に対するH
2収率を示す。
【
図39C】
図39A~
図39Dは、本開示の金属酸化物エアロゲル触媒に対するメタン分解の代表的なデータを示す。図示されているデータについて、T=650℃、P=0.1MPa、GHSV=42000h
-1である。
図39Cは、図に記載されているとおりのCoのwt%量を有する本開示のCo/Al
2O
3エアロゲル触媒に対するメタン変換率を示す。
【
図39D】
図39A~
図39Dは、本開示の金属酸化物エアロゲル触媒に対するメタン分解の代表的なデータを示す。図示されているデータについて、T=650℃、P=0.1MPa、GHSV=42000h
-1である。
図39Dは、図に記載されているとおりのCoのwt%量を有する本開示のCo/Al
2O
3エアロゲル触媒に対するH
2収率を示す。
【
図40】
図40A~
図40Fは、インシピエントウェットネス法によって調製された金属酸化物触媒と比較して本開示の金属酸化物エアロゲル触媒に対するメタン分解の代表的なデータを示す。図示されているデータについて、T=650℃、P=0.1MPaである。図中の本開示のエアロゲル触媒を用いて得られたデータは、50wt%Ni/Al
2O
3、60wt%Ni/Al
2O
3、70wt%Ni/Al
2O
3に関する線に対応している。図中に示されている他の一元又は二元金属の金属酸化物触媒はインシピエントウェットネス法によって調製されたものである。
図40A、
図40B、
図40C、
図40D、
図40E、
図40Fの各々は、インシピエントウェットネス法によって調製された図示の金属酸化物触媒と比較して本開示の金属酸化物エアロゲル触媒(50wt%Ni/Al
2O
3、60wt%Ni/Al
2O
3、70wt%Ni/Al
2O
3に)に対するメタン変換データを示す。
【
図41A】
図41A~
図41Bは、図示されるとおりの未使用と使用済みの本開示のエアロゲル触媒に対して得られた代表的なX線回折(XRD)分析データを示す。
図41Aは、未使用と使用済みの本開示のエアロゲル触媒Ni/Al
2O
3に対して得られたXRDデータを示す。
【
図41B】
図41A~
図41Bは、図示されるとおりの未使用と使用済みの本開示のエアロゲル触媒に対して得られた代表的なX線回折(XRD)分析データを示す。
図41Bは、未使用と使用済みの本開示のエアロゲル触媒Co/Al
2O
3に対して得られたXRDデータを示す。
【
図42A】
図42A~
図42Dは、使用後の本開示のエアロゲル触媒の代表的なデータを示す。
図42Aは使用後の本開示のNi/Al
2O
3エアロゲル触媒から得られた代表的なラマン分光データを示す。
【
図42B】
図42A~
図42Dは、使用後の本開示のエアロゲル触媒の代表的なデータを示す。
図42Bは使用後の本開示のCo/Al
2O
3エアロゲル触媒から得られた代表的なラマン分光データを示す。
【
図42C】
図42A~
図42Dは、使用後の本開示のエアロゲル触媒の代表的なデータを示す。
図42Cは使用後の本開示のNi/Al
2O
3エアロゲル触媒から得られた代表的なX線光電子分光(XPS)データを示す。
【
図42D】
図42A~
図42Dは、使用後の本開示のエアロゲル触媒の代表的なデータを示す。
図42Dは使用後の本開示のCo/Al
2O
3エアロゲル触媒から得られた代表的なX線光電子分光(XPS)データを示す。
【
図43】
図43A~
図43Dは、使用後の本開示のエアロゲル触媒(60wt%のNi/Al
2O
3とCo/Al
2O
3エアロゲル触媒)の特性評価に関する代表的なデータを示す。
図43Aは、図示されている本開示のエアロゲル触媒のN
2吸着脱着等温線のBET(Brunauer‐Emmett‐Teller)分析を示す。
図43Bは、図示されている本開示のエアロゲル触媒の細孔径分布データを示す。
図43Cと
図43Dの各々は、本開示のエアロゲル触媒60wt%のNi/Al
2O
3の代表的な走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図43と
図43Dの画像は、各画像に示されている縮尺バーの通りに倍率が異なるものである。
【
図44】
図44A~
図44Fは、本開示のエアロゲル触媒の代表的な透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す。
図44A、
図44B、
図44Cの各々は、本開示の60wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒の代表的なTEM画像を示し、
図44D、
図44E、
図44Fの各々は、本開示の70wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒の代表的なTEM画像を示す。各図面の左下には縮尺バーが示されていて、カーボンナノチューブの先端構造が破線の円で強調されている。
【
図45】
図45A~
図45Fは、本開示のエアロゲル触媒の代表的な透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す。
図45A、
図45B、
図45Cの各々は、本開示の60wt%Co/Al
2O
3エアロゲル触媒の代表的なTEM画像を示し、
図45D、
図45E、
図45Fの各々は、本開示の70wt%Co/Al
2O
3エアロゲル触媒の代表的なTEM画像を示す。各図面の左下には縮尺バーが示されていて、カーボンナノチューブの先端構造が破線の円で強調されている。
【
図46】
図46A~
図46Bは、多様な再生サイクル後の本開示の再生エアロゲル触媒の代表的なデータを示す。
図46Aは、650℃、TOS=60分、GHSV=42000h
-1での本開示の60wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒に対する触媒再生の研究におけるメタン変換の結果を示す。触媒再生の研究においては、各サイクル後に、650℃で45分にわたって10%O
2で触媒を処理することによって触媒を再生させた。
図46Bは、650℃、TOS=60分、GHSV=42000h
-1での本開示の60wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒に対する触媒再生の研究におけるH
2収率の結果を示す。触媒再生の研究においては、各サイクル後に、650℃で45分にわたって10%O
2で触媒を処理することによって触媒を再生させた。
【
図47】
図47A~
図47Dは、本開示のエアロゲル触媒の代表的な透過型電子顕微鏡(TEM)画像の代表的なデータを示す。
図47A、
図47B、
図47C、
図47Dの各々は、
図46A~
図46Bで説明される研究の二回目のサイクル後の60wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒の代表的なTEM画像を示す。各画像の左下には縮尺バーが示されていて、カーボンナノチューブの先端構造が破線の丸で強調されている。
【
図48】
図48A~
図48Dは、本開示のエアロゲル触媒の代表的な透過型電子顕微鏡(TEM)画像の代表的なデータを示す。
図48A、
図48B、
図48C、
図48Dの各々は、
図46A~
図46Bで説明される研究の五回目のサイクル後の60wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒の代表的なTEM画像を示す。各画像の左下には縮尺バーが示されていて、カーボンナノチューブの先端構造が破線の丸で強調されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示の追加的な利点については、一部が以下の明細書の説明において一部が与えられ、一部が明細書から自明なものであり、本開示の実践によって理解可能なものである。本開示の利点は、添付の特許請求の範囲において具体的に指摘されている要素及び組み合わせによって実現され達成されるものである。上記の一般的な説明と以下の詳細な説明とはいずれも単に例示的で説明目的のものであって、記載のとおりに本開示を限定するものではない。
【0027】
以下、添付図面を参照して本開示をより完全に説明するが、添付図面に示されているのは、全ての実施形態ではなくて、想定される一部の実施形態である。実際のところ、本開示は多種多様な形態において実施可能であって、本願に与えられている実施形態に限定して解釈されるものではない。むしろ、そうした実施形態は、適用される法定要件を本開示が満たすように与えられているものである。本願全体にわたって、同様の番号は同様の要素を指称する。
【0028】
本開示の説明及び関連図面に示されている教示の恩恵を受ける本開示の組成物及び方法に関する分野の当業者には、多くの修正や、本願に開示されている以外の他の実施形態が想起されるものである。従って、本開示は開示されている具体的な実施形態に限定されず、修正や他の実施形態も添付の特許請求の範囲内に含まれるとして理解されるものである。本願では特定の用語が採用されているが、それらの用語は一般的な説明通りにおいてのみ使用されているものであって、限定目的のものではない。
【0029】
また、本願で用いられている専門用語は、特定の態様を説明することのみを目的とするものであって、限定的なものとして解釈されるものではないことを理解されたい。明細書及び特許請求の範囲で使用されている「備える」との用語は、「から成る」との態様を含むことができるものである。特に断らない限り、本願で用いられている全ての科学技術用語は、本開示の組成物及び方法が属する分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有するものである。明細書及び添付の特許請求の範囲においては、本願において定義されるものとする多数の用語を参照する。
【0030】
本開示を読むことで当業者には明らかとなるように、本願で説明され図示されている各実施形態は個別の構成要素と特徴を有するものであって、そうした構成要素と特徴は、本開示の範囲や要旨から逸脱せずに、容易に分離可能であり、他の複数の実施形態のうちのいずれかの特徴と組み合わせ可能である。記載されている方法は、記載されている事象の順序で実施可能であり、又は論理的に可能であるあらゆる他の順序で実施可能である。
【0031】
本願で言及されている全ての文献は参照として本願に組み込まれ、それらの文献に記載されている方法及び/又は物質を本願において開示及び説明しているものとする。本願で述べられている文献は、本願の出願日前の開示のためだけに与えられている。本願のいかなる記載も、従来の発明を理由としてそのような文献に先行して本発明に権利が与えられないことを認めるものではない。また、本願で与えられている発行日は実際の発行日とは異なるものであるかもしれないが、その点は個別に確認可能である。
【0032】
多様な実施形態を説明する前に、以下で定義を与え、特に断らない限りは以下の定義が用いられるものである。
【0033】
特に断らない限り、本願で用いられている全ての科学技術用語は、本開示が属する分野の当業者が一般的に理解しているのと同じ意味を有する。更に、一般的に使用されている辞書において定義されているような用語は、特に断らない限り、本明細書及び関連記述の文脈における意味と矛盾しない意味を有するものとして解釈されるものであって、理想的又は過度に形式的に解釈されるものではない。
【0034】
本願において、有機化合物を含む化合物の命名法は、一般名称、IUPAC(国際純正・応用化学連合)やIUBMB(国際生化学・分子生物学連合)やCAS(米国化学情報検索サービス機関)の命名法を用いて与えられ得る。一つ以上の立体化学的特性が存在する場合、立体化学のカーン・インゴルド・プレローグ則を採用して、立体化学的順位やE/Z表示等を指定し得る。当業者は、名称が与えられていれば、化合物の構造を、命名規則を用いたその化合物の構造の系統的な還元によって、又はCHEMDRAW(登録商標)(米国ケンブリッジソフト社)等の市販のソフトウェアによって、容易に確かめることができるものである。
【0035】
本願において、「備える」とは、それに関して記載されている特徴や整数やステップや構成要素の存在を特定するものとして解釈されるものであって、一つ以上の特徴や整数やステップや構成要素の追加、又はそれらの組の存在を排除するものではない。また、「備える」との用語は、「から実質的に成る」と「から成る」との用語によって包含される例を含むものである。同様に、「から実質的に成る」との用語は、「から成る」との用語によって包含される例を含むものである。
【0036】
明細書及び添付の特許請求の範囲において、単数形での表記形式は、特に断らない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「カーボンナノチューブ」、「触媒」又は「塩基」への言及は、二つ以上のカーボンナノチューブ、触媒又は塩基等を含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0037】
「一つの」化合物への言及は、単一分子の化合物に限定されるものではなくて、むしろ一つ以上の分子の化合物を称するものである。更に、一つ以上の分子は、そのカテゴリーの化合物に含まれる限りにおいて、同一であってもなくてもよい。従って、例えば、「一つの」Fe‐Co触媒は、一つ以上の触媒組成物を含むものであって、それら触媒組成物は同じであってもなくてもよい(例えば、Fe‐Coの比率が異なる)。
【0038】
比率や濃度や量や他の数値データが範囲の形式で表され得ることを理解されたい。記載されている範囲が一方又は両方の限界を記載している場合、それに含まれる限界の一方又は両方を除外する範囲も本開示に含まれるものであって、例えば、「xからy」との記載は、「x」から「y」までの範囲を含むと共に、「x」よりも大きな範囲や「y」よりも小さな範囲も含む。また、範囲が上限として、例えば、「略x、y、z以下」として表され得て、「略x」、「略y」及び「略z」との特定の範囲を含むと共に、「x未満」、「y未満」及び「z未満」との範囲を含むものである。同様に、「略x、y、z以上」との記載は、「略x」、「略y」、「略z」との特定の範囲を含むと共に、「x超」、「y超」及び「z超」との範囲を含むものである。また、『略「x」から「y」』との記載(「x」と「y」は数値)は、『略「x」から略「y」』を含む。こうした範囲の形式は、利便性と簡潔性のために用いられているものであって、その範囲の限界として明示的に記載されている数値だけではなくて、その範囲内に含まれる全ての個々の数値やサブ範囲も、各数値やサブ範囲が明示的に記載されているものとして含まれるように柔軟に解釈されるものであることを理解されたい。例えば、「略0.1%から5%」との数値範囲は、略0.1%から略5%の明示的に記載されている値だけではなくて、示されている範囲内の個々の値(例えば、1%、2%、3%、4%)やサブ範囲(例えば、0.5%、1.1%、2.4%、3.2%、4.4%)も含むとして解釈されるものである。
【0039】
本願において、「略」、「近似的」、「およそ」、「実質的に」との用語は、対象の量や値が、正確な値であるか、又は、特許請求の範囲に記載されているか又は本願に教示されているのと等価な結果や効果を提供する値となり得ることを意味する。つまり、量、サイズ、組成、パラメータ、他の量や特性は厳密でなく、厳密である必要はなく、近似的であり得て、及び/又は、所望のとおりに大きくなったり小さくなったりし得て、等価な結果や効果が得られるように公差、変換係数、四捨五入、測定誤差や、当業者に知られている他の要因等を反映したものであることを理解されたい。場合によっては、等価な結果や効果を与える値を合理的に決定することができないこともある。そのような場合には、「略」や「およそ」は、特に断らない限り、記されている公称値から±10%の変動を意味するものとして一般的には理解される。一般的に、量、サイズ、組成、パラメータ、他の量や特性は、明示的に記載されていようがなかろうが「略」、「近似的」、又は「およそ」のものである。定量的な値の前に「略」、「近似的」、又は「およそ」が用いられている場合、そのパラメータは、特に断らない限り、その特定の定量的な値そのものも含むことを理解されたい。
【0040】
[金属担持触媒]
多様な態様において、本開示は、開示される触媒を利用してメタンからカーボンナノチューブと水素ガスを同時に生成するための有用性を有する金属担持触媒組成物に関する。
【0041】
多様な態様において、本開示は、シリカ、アルミナ、ゼオライト、又はこれらの混合物から選択された担体物質上に3d遷移金属(例えば、Ni、Fe、Co、Mn、Cr、Mo、これらの組み合わせ)を備える三元金属触媒に関する。
【0042】
多様な態様において、本開示は、シリカ、アルミナ、ゼオライト、又はこれらの混合物から選択された担体物質上に3d遷移金属(例えば、Ni、Fe、Co、Mn、Cr、Mo、これらの組み合わせ)を備える二元金属触媒に関する。
【0043】
多様な態様において、本開示は、シリカ、アルミナ、ゼオライト、又はこれらの混合物から選択された担体物質上に3d遷移金属(例えば、Ni、Fe、Co、Mn、Cr、Mo)を備える一元金属触媒に関する。
【0044】
多様な態様において、本願で開示されるのは、二種の3d遷移金属と担体物質を備える触媒組成物であり、その組成物が備える二種の3d遷移金属は式xM:yNで表され、MとNの各々は3d遷移金属から独立的に選択され、MとNは同じではなく、xとyはM:Nのモル比を表し、xは略1から略20の間の値を有する数字であり、yは略1から略10の間の値を有する数字であり、担体物質は、シリカと、アルミナと、ゼオライトと、これらの混合物から選択される。
【0045】
多様な態様において、本願で開示されるのは、二種の3d遷移金属と担体物質を備える触媒組成物であり、その組成物が備える二種の3d遷移金属は式xM:yNで表され、MとNの各々はNiと、Feと、Coと、Mnと、Crと、Moと、これらの組み合わせから独立的に選択され、MとNは同じではなく、xとyはM:Nのモル比を表し、xは略1から略20の間の値を有する数字であり、yは略1から略10の間の値を有する数字であり、担体物質は、シリカと、アルミナと、ゼオライトと、これらの混合物から選択される。
【0046】
多様な態様において、本願で開示されるのは、二種の3d遷移金属と担体物質を備える触媒組成物であり、その組成物が備える二種の3d遷移金属は式xM:yNで表され、MとNの各々は3d遷移金属から独立的に選択され、MとNは同じではなく、xとyはM:Nのモル比を表し、xは略1から略20の間の値を有する数字であり、yは略1から略10の間の値を有する数字であり、担体物質は、シリカと、アルミナと、ゼオライトと、これらの混合物から選択される。
【0047】
多様な態様において、本願で開示されるのは、3d遷移金属と担体物質を備える触媒組成物であり、その3d遷移金属はNiと、Feと、Coと、Mnと、Crと、Moと、これらの組み合わせから選択され、担体物質は、シリカと、アルミナと、ゼオライトと、二酸化チタンと、これらの混合物から選択され、3d遷移金属は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略40wt%から略70wt%までの量で存在し、担体物質は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略60wt%から略30wt%までの量で存在する。
【0048】
多様な態様において、本願で開示されるのは、3d遷移金属と担体物質を備える触媒組成物であり、その3d遷移金属はNiと、Feと、Coから選択され、担体物質は、シリカと、アルミナと、ゼオライトと、これらの混合物から選択され、3d遷移金属は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略40wt%から略70wt%までの量で存在し、担体物質は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略60wt%から略30wt%までの量で存在する。
【0049】
多様な態様において、本開示の触媒は、当業者に知られているインシピエントウェットネス(incipient wetness)法を用いて調製される。他の態様において、本開示の触媒は、本願で説明されているような又は当業者に一般的に理解されているようなゾルゲル法を用いて調製されたエアロゲル触媒である。
【0050】
本願において、「インシピエントウェットネス」との用語は、一般的に、自由に流れている多孔質粉末を点で湿潤させて、その点において、少量の液体の追加が流動性の顕著な低下をもたらすもののことを称する(例えば、参照として本願に組み込まれる非特許文献19を参照)。
【0051】
本願において、「エアロゲル触媒」は、少なくとも一種の3d遷移金属と担体物質を低密度で備える触媒組成物である。エアロゲル触媒は、ゾルゲル法で得られる、例えば、ゲルから液体を真空抽出又は超臨界抽出して得られる物質であり、それ自体は固体の三次元ネットワークから成ると理解されるものである。液体抽出からゲル形成段階への移行による乾燥が、蒸発に作用して細孔ネットワークの部分的又は完全な崩壊を生じさせる毛細管力を排除する。従って、真空乾燥又は超臨界乾燥が、低密度で、高比表面積で、大細孔体積で、多用途の細孔サイズを有する物質をもたらす。
【0052】
一態様において、担体物質は、金属酸化物物質であり、例えば、遷移金属酸化物であり、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、ゼオライト等であるが、これらに限定されない。多様な態様において、担体物質はシリカ、アルミナ、又はゼオライトである。
【0053】
更なる態様において、アルミナはγ‐Al2O3である。代わりに、アルミナはヒュームドアルミナであり得る。また更なる態様において、ゼオライトは、ZSM‐5、ゼオライトβ、USYである。
【0054】
また更なる態様において、シリカはヒュームドシリカである。特定の態様において、担体物質は、複数の担体物質の組み合わせであり得て、例えば、シリカとゼオライト、シリカとアルミナ、シリカとシリカ、アルミナとシリカ、アルミナとゼオライトであり得る。
【0055】
[本開示の金属担持触媒を調製するための方法]
本願で実現され広範に記載される本開示の目的によると、本開示は、一態様において、本開示の触媒を調製するための方法に関する。多様な態様において、本開示の組成物を作製する方法はインシピエントウェットネス法を備える。更なる態様において、開示されるのは、ゾルゲル法を備える本開示の組成物の作製方法である。
【0056】
多様な態様において、開示されるのは、本開示の組成物を作製する方法であり、その方法は、第一3d遷移金属塩及び第二3d遷移金属を備える水溶液に担体物質を接触させて、第一3d遷移金属塩及び第二3d遷移金属を備える水溶液と担体物質を備える混合物を形成するステップ(担体物質はシリカと、アルミナと、ゼオライトと、二酸化チタンと、これらの混合物とから選択され、第一3d遷移金属塩と第二3d遷移金属塩は同じではない)と、混合物を乾燥させて、乾燥混合物を形成するステップと、乾燥混合物をか焼して、か焼混合物を形成するステップと、か焼混合物を還元することによって、二種の3d遷移金属と担体物質を備える組成物を提供するステップとを備え、組成物が備える二種の3d遷移金属は式xM:yNによって表され、MとNの各々は3d遷移金属から独立して選択され、MとNは同じでなく、xとyはM:Nのモル比を表し、xは略1から略20の間の値を有する数字であり、yは略1から略10の間の値を有する数字であり、担体物質は、シリカと、アルミナと、ゼオライトと、これらの混合物から選択される。
【0057】
多様な態様において、開示されるのは、本開示の組成物を作製する方法であり、その方法は、第一3d遷移金属塩及び第二3d遷移金属を備える水溶液に担体物質を接触させて、第一3d遷移金属塩及び第二3d遷移金属を備える水溶液と担体物質を備える混合物を形成するステップ(担体物質はシリカと、アルミナと、ゼオライトと、二酸化チタンと、これらの混合物とから選択され、第一3d遷移金属塩と第二3d遷移金属塩は同じではない)と、混合物を乾燥させて、乾燥混合物を形成するステップと、乾燥混合物をか焼して、か焼混合物を形成するステップと、か焼混合物を還元することによって、二種の3d遷移金属と担体物質を備える組成物を提供するステップとを備え、組成物が備える二種の3d遷移金属は式xM:yNによって表され、MとNの各々はNiと、Feと、Coと、Mnと、Crと、Moと、これらの組み合わせから独立して選択され、MとNは同じでなく、xとyはM:Nのモル比を表し、xは略1から略20の間の値を有する数字であり、yは略1から略10の間の値を有する数字であり、担体物質は、シリカと、アルミナと、ゼオライトと、これらの混合物から選択される。
【0058】
多様な態様において、開示されるのは、3d遷移金属と担体物質を備える組成物を作製する方法であり、3d遷移金属は、Niと、Feと、Coと、Mnと、Crと、Moと、これらの組み合わせから選択され、担体物質は、シリカと、アルミナと、ゼオライトと、二酸化チタンと、これらの混合物から選択され、3d遷移金属は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略40wt%から略70wt%の量で存在し、担体物質は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略60wt%から略30wt%の量で存在し、本方法は、ニッケル塩と、鉄塩と、コバルト塩と、マンガン塩と、クロム塩と、モリブデン塩と、これらの組み合わせから選択された3d遷移金属塩を備える水溶液に担体物質を接触させて、3d遷移金属塩を備える水溶液と担体物質を備える混合物を形成するステップを備え、担体物質は、シリカと、アルミナと、ゼオライトと、二酸化チタンと、これらの混合物から選択され、3d遷移金属塩は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略40wt%から略70wt%の量で存在し、担体物質は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略60wt%から略30wt%の量で存在する。
【0059】
多様な態様において、開示されるのは、3d遷移金属と担体物質を備える組成物を作製する方法であり、3d遷移金属は、Niと、Feと、Coから選択され、担体物質は、シリカと、アルミナと、ゼオライトと、これらの混合物から選択され、3d遷移金属は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略40wt%から略70wt%の量で存在し、担体物質は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略60wt%から略30wt%の量で存在し、本方法は、ニッケル塩と、鉄塩と、コバルト塩から選択された3d遷移金属塩を備える水溶液に担体物質を接触させて、3d遷移金属塩を備える水溶液と担体物質を備える混合物を形成するステップを備え、担体物質は、シリカと、アルミナと、ゼオライトと、これらの混合物から選択され、3d遷移金属塩は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略40wt%から略70wt%の量で存在し、担体物質は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略60wt%から略30wt%の量で存在する。
【0060】
[カーボンナノチューブと水素ガスを調製するための方法]
本願で実現され広範に記載される本開示の目的によると、本開示は、一態様において、本開示の触媒の存在下においてメタン、エタン、プロパン、ブタン、又はこれらの組み合わせを備える低級炭化水素を備える反応ガスからカーボンナノチューブと水素ガスを同時に生成するための方法及び組成物に関する。多様な態様において、本開示は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、又はこれらの組み合わせを備える低級炭化水素を反応ガスとして用いてカーボンナノチューブを生成するのと同時に水素をCOxフリーで生成するための方法に関する。多様な態様において、本開示は、本開示の触媒を利用してメタン、エタン、プロパン、ブタン、又はこれらの組み合わせを備える低級炭化水素からカーボンナノチューブと水素ガスを同時に生成するための方法及び組成物に関する。
【0061】
また、開示されるのは、本開示の触媒を利用して低級炭化水素、例えばメタンからカーボンナノチューブを生成するのと同時に水素を効率的にCOxフリーで生成するための方法である。多様な態様において、生成されるカーボンナノチューブは、根元成長カーボンナノチューブと先端成長カーボンナノチューブの混合物である。一部態様では、本方法は、本開示の触媒上に選択的に根元成長カーボンを提供する。「低級炭化水素」は、一般的に、あらゆるガス状又は揮発性の炭化水素含有化合物であり、C1~C4のアルカン、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタンであるが、これらに限定されない。特定の態様では、低級炭化水素はメタンである。
【0062】
また、開示されるのは、低級炭化水素を分解する方法であり、本方法は、略1℃/minから略20℃/minの加熱率で略500℃から略1000℃の温度に触媒床を加熱するステップ(触媒床は本開示の組成物を備え、本開示の組成物は二種の3d遷移金属と担体物質を備え、組成物が備える二種の3d遷移金属は式xM:yNで表され、MとNの各々は3d遷移金属から独立して選択され、MとNは同じではなく、xとyはM:Nのモル比を表し、xは略1から略20の間の値を有する数字であり、yは略1から略10の間の値を有する数字であり、担体物質はシリカと、アルミナと、ゼオライトと、二酸化チタンと、これらの混合物から選択され、触媒床は固定流通反応器の反応器床に配置され、固定流通反応器はガス流用の流入端と流出端を備える)と、略0.1グラムの触媒充填量に基づいて略25ml/minから略200ml/minの不活性ガス流量で流入端を介して第一不活性ガスの流れを提供するステップ(特に断らない限り本願で与えられている全てのガス流量は0.1gの触媒充填量に基づく)(第一不活性ガスの流れは触媒床と接触している)と、流入端を介する第一不活性ガスの流れを停止するステップと、略0分から略240分のタイムオンストリーム(TOS,time‐on‐stream)で略5000h-1から略60000h-1の空間速度に相当する反応ガス流量で流入端を介して反応ガスの流れを提供するステップ(反応ガスの流れは触媒床に接触していて、反応ガスは低級炭化水素と第二不活性ガスを備える)と、流出端において流出ガスを収集するステップ(流出ガスは水素を備える)を備える。
【0063】
また、開示されるのは、低級炭化水素を分解する方法であり、本方法は、略1℃/minから略20℃/minの加熱率で略500℃から略1000℃の温度に触媒床を加熱するステップ(触媒床は本開示の組成物を備え、本開示の組成物は二種の3d遷移金属と担体物質を備え、組成物が備える二種の3d遷移金属は式xM:yNで表され、MとNの各々はNiと、Feと、Coと、Mnと、Crと、Moと、これらの組み合わせから独立して選択され、MとNは同じではなく、xとyはM:Nのモル比を表し、xは略1から略20の間の値を有する数字であり、yは略1から略10の間の値を有する数字であり、担体物質はシリカと、アルミナと、ゼオライトと、二酸化チタンと、これらの混合物から選択され、触媒床は固定流通反応器の反応器床に配置され、固定流通反応器はガス流用の流入端と流出端を備える)と、略0.1グラムの触媒充填量に基づいて略25ml/minから略200ml/minの不活性ガス流量で流入端を介して第一不活性ガスの流れを提供するステップ(特に断らない限り本願で与えられている全てのガス流量は0.1gの触媒充填量に基づく)(第一不活性ガスの流れは触媒床と接触している)と、流入端を介する第一不活性ガスの流れを停止するステップと、略0分から略240分のタイムオンストリーム(TOS,time‐on‐stream)で略5000h-1から略60000h-1の空間速度に相当する反応ガス流量で流入端を介して反応ガスの流れを提供するステップ(反応ガスの流れは触媒床に接触していて、反応ガスは低級炭化水素と第二不活性ガスを備える)と、流出端において流出ガスを収集するステップ(流出ガスは水素を備える)を備える。
【0064】
また、開示されるのは、低級炭化水素を分解する方法であり、本方法は、略1℃/minから略20℃/minの加熱率で略500℃から略1000℃の温度に触媒床を加熱するステップ(触媒床は本開示の組成物を備え、本開示の組成物は3d遷移金属と担体物質を備え、3d遷移金属はNiと、Feと、Coと、Mnと、Crと、Moと、これらの組み合わせから選択され、担体物質はシリカと、アルミナと、ゼオライトと、二酸化チタンと、これらの混合物から選択され、3d遷移金属は、3d遷移金属及び担体物質の全重量に基づいて略40wt%から略70wt%の量で存在し、担体物質は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略60wt%から略30wt%の量で存在し、担体物質はシリカと、アルミナと、ゼオライトと、これらの混合物から選択され、触媒床は固定流通反応器の反応器床に配置され、固定流通反応器はガス流用の流入端と流出端を備える)と、略25ml/minから略200ml/minの不活性ガス流量で流入端を介して第一不活性ガスの流れを提供するステップ(第一不活性ガスの流れは触媒床と接触している)と、流入端を介する第一不活性ガスの流れを停止するステップと、略0分から略240分のタイムオンストリーム(TOS,time‐on‐stream)で略5000h-1から略60000h-1の空間速度に相当する活性ガス流量で流入端を介して反応ガスの流れを提供するステップ(反応ガスの流れは触媒床に接触していて、反応ガスは低級炭化水素と第二不活性ガスを備える)と、流出端において流出ガスを収集するステップ(流出ガスは水素を備える)を備える。
【0065】
また、開示されるのは、低級炭化水素を分解する方法であり、本方法は、略1℃/minから略20℃/minの加熱率で略500℃から略1000℃の温度に触媒床を加熱するステップ(触媒床は本開示の組成物を備え、本開示の組成物は3d遷移金属と担体物質を備え、3d遷移金属はNiと、Feと、Coから選択され、担体物質はシリカと、アルミナと、ゼオライトと、これらの混合物から選択され、3d遷移金属は、3d遷移金属及び担体物質の全重量に基づいて略40wt%から略70wt%の量で存在し、担体物質は、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略60wt%から略30wt%の量で存在し、担体物質はシリカと、アルミナと、ゼオライトと、これらの混合物から選択され、触媒床は固定流通反応器の反応器床に配置され、固定流通反応器はガス流用の流入端と流出端を備える)と、略25ml/minから略200ml/minの不活性ガス流量で流入端を介して第一不活性ガスの流れを提供するステップ(第一不活性ガスの流れは触媒床と接触している)と、流入端を介する第一不活性ガスの流れを停止するステップと、略0分から略240分のタイムオンストリーム(TOS,time‐on‐stream)で略20000h-1から略60000h-1の空間速度で略25ml/minから略200ml/minの反応ガス流量で流入端を介して反応ガスの流れを提供するステップ(反応ガスの流れは触媒床に接触していて、反応ガスは低級炭化水素と第二不活性ガスを備える)と、流出端において流出ガスを収集するステップ(流出ガスは水素を備える)を備える。
【0066】
本願において、「カーボンナノチューブ」とは、特に断らない限り、多様なカーボンナノチューブを集合的に称するものであり、ヘリカルカーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブを含む。カーボンナノチューブとして称される物質や組成物は、特に断らない限り、これらのサブタイプのカーボンナノチューブを多様な割合で含み得ることを理解されたい。一部態様では、言及されているカーボンナノチューブは、実質的にその全てが特定のサブタイプ、例えば多層カーボンナノチューブを備える。
【0067】
本願において、「炭素物質」とは、カーボンナノチューブ、炭素繊維、炭素ナノ粒子、アモルファスカーボン、熱分解炭素、煤を多様な重量比で称する。
【0068】
[態様]
以下列挙されている例示的な態様は、本開示をサポートし、また本開示によってサポートされるものである。
【0069】
態様1
二種の3d遷移金属と担体物質を備える組成物であって、組成物が備える二種の3d遷移金属は式xM:yNで表され、MとNの各々が3d遷移金属から独立して選択され、MとNが同じではなく、xとyがM:Nのモル比を表し、xが略1から略20の間の値を有する数字であり、yが略1から略10の間の値を有する数字であり、担体物質がシリカと、アルミナと、ゼオライトと、二酸化チタンと、これらの混合物から選択されている、組成物。
【0070】
態様2
MとNがNiと、Feと、Coと、Mnと、Crと、Moから独立して選択され、MとNが同じではない、態様1に記載の組成物。
【0071】
態様3
MがNiであり、NがFe又はCoである、態様1に記載の組成物。
【0072】
態様4
MがFeであり、NがCoである、態様1に記載の組成物。
【0073】
態様5
xが略1から略10の間の値を有する数字である、態様1から態様4のいずれか一つに記載の組成物。
【0074】
態様6
xが略4から略9の間の値を有する数字である、態様1から態様4のいずれか一つに記載の組成物。
【0075】
態様7
xが略9の値を有する数字である、態様1から態様4のいずれか一つに記載の組成物。
【0076】
態様8
yが略1から略5の間の値を有する数字である、態様1から態様7のいずれか一つに記載の組成物。
【0077】
態様9
yが略1から略3の間の値を有する数字である、態様1から態様7のいずれか一つに記載の組成物。
【0078】
態様10
yが略1の値を有する数字である、態様1から態様7のいずれか一つに記載の組成物。
【0079】
態様11
xとyが整数である、態様1から態様4のいずれか一つに記載の組成物。
【0080】
態様12
xが1から10の間の整数値を有する数字である、態様11に記載の組成物。
【0081】
態様13
xが4から9の間の整数値を有する数字である、態様11に記載の組成物。
【0082】
態様14
xが9の整数値を有する数字である、態様11に記載の組成物。
【0083】
態様15
yが1から5の間の整数値を有する数字である、態様11から態様14のいずれか一つに記載の組成物。
【0084】
態様16
yが1から3の間の整数値を有する数字である、態様11から態様14のいずれか一つに記載の組成物。
【0085】
態様17
yが1の整数値を有する数字である、態様11から態様14のいずれか一つに記載の組成物。
【0086】
態様18
担体物質がゼオライトである、態様1から態様17のいずれか一つに記載の組成物。
【0087】
態様19
ゼオライトが、ZSM‐5と、ゼオライトβと、USYゼオライトから選択されている、態様18に記載の組成物。
【0088】
態様20
ゼオライトが略5から略25のSiO2/Al2O3モル比を有する、態様18又は態様19に記載の組成物。
【0089】
態様21
ゼオライトが略7.5から略15のSiO2/Al2O3モル比を有する、態様18又は態様19に記載の組成物。
【0090】
態様22
ゼオライトが略10から略15のSiO2/Al2O3モル比を有する、態様18又は態様19に記載の組成物。
【0091】
態様23
ゼオライトが略11.5のSiO2/Al2O3モル比を有する、態様18又は態様19に記載の組成物。
【0092】
態様24
ゼオライトが略250m2/gから略600m2/gの表面積を有する、態様18から態様28のいずれか一つに記載の組成物。
【0093】
態様25
ゼオライトが略350m2/gから略500m2/gの表面積を有する、態様18から態様28のいずれか一つに記載の組成物。
【0094】
態様26
ゼオライトが略400m2/gから略450m2/gの表面積を有する、態様18から態様28のいずれか一つに記載の組成物。
【0095】
態様27
ゼオライトが略425m2/gの表面積を有する、態様18から態様28のいずれか一つに記載の組成物。
【0096】
態様28
担体物質がアルミナである、態様1から態様17のいずれか一つに記載の組成物。
【0097】
態様29
アルミナがγ‐Al2O3又はヒュームドアルミナである、態様28に記載の組成物。
【0098】
態様30
アルミナがγ‐Al2O3である、態様28に記載の組成物。
【0099】
態様31
アルミナの表面積が略50m2/gから略500m2/gである、態様28から態様30のいずれか一つに記載の組成物。
【0100】
態様32
アルミナの表面積が略75m2/gから略250m2/gである、態様28から態様30のいずれか一つに記載の組成物。
【0101】
態様33
アルミナの表面積が略100m2/gから略200m2/gである、態様28から態様30のいずれか一つに記載の組成物。
【0102】
態様34
担体物質がシリカである、態様1から態様17のいずれか一つに記載の組成物。
【0103】
態様35
シリカが、沈降シリカと、シリカゲルと、ヒュームドシリカから選択されている、態様34に記載の組成物。
【0104】
態様36
シリカがヒュームドシリカである、態様34に記載の組成物。
【0105】
態様37
シリカが略50kg/m3から略450kg/m3のかさ密度を有する、態様36に記載の組成物。
【0106】
態様38
シリカが略90kg/m3から略380kg/m3のかさ密度を有する、態様36に記載の組成物。
【0107】
態様39
シリカが略350kg/m3から略450kg/m3のかさ密度を有する、態様36に記載の組成物。
【0108】
態様40
シリカが略380kg/m3±略30kg/m3のかさ密度を有する、態様36に記載の組成物。
【0109】
態様41
シリカが略1nmから略20nmの平均粒径を有する、態様36から態様40のいずれか一つに記載の組成物。
【0110】
態様42
シリカが略5nmから略15nmの平均粒径を有する、態様41に記載の組成物。
【0111】
態様43
シリカが略5nmから略10nmの平均粒径を有する、態様41に記載の組成物。
【0112】
態様44
態様1から態様43のいずれか一つに記載の組成物を作製する方法であって、第一3d遷移金属塩と第二3d遷移金属を備える水溶液に担体物質を接触させて、第一3d遷移金属塩と第二3d遷移金属を備える水溶液と担体物質を備える混合物を形成するステップ(担体物質はシリカと、アルミナと、ゼオライトと、二酸化チタンと、これらの混合物から選択され、第一3d金属塩と第二2d金属塩は同じではない)と、混合物を乾燥させて、乾燥混合物を形成するステップと、乾燥混合物をか焼して、か焼混合物を形成するステップと、か焼混合物を還元することによって、態様1から態様43のいずれか一つに記載の組成物を提供するステップを備える方法。
【0113】
態様45
担体物質がシリカである、態様44に記載の方法。
【0114】
態様46
シリカが、沈降シリカと、シリカゲルと、ヒュームドシリカから選択されている、態様45に記載の方法。
【0115】
態様47
シリカがヒュームドシリカである、態様45に記載の方法。
【0116】
態様48
シリカが略50kg/m3から略450kg/m3のかさ密度を有する、態様47に記載の方法。
【0117】
態様49
シリカが略90kg/m3から略380kg/m3のかさ密度を有する、態様47に記載の方法。
【0118】
態様50
シリカが略350kg/m3から略450kg/m3のかさ密度を有する、態様47に記載の方法。
【0119】
態様51
シリカが略380kg/m3±略30kg/m3のかさ密度を有する、態様47に記載の方法。
【0120】
態様52
シリカが略1nmから略20nmの平均粒径を有する、態様47から態様51のいずれか一つに記載の方法。
【0121】
態様53
シリカが略5nmから略15nmの平均粒径を有する、態様52に記載の方法。
【0122】
態様54
シリカが略5nmから略10nmの平均粒径を有する、態様52に記載の方法。
【0123】
態様55
第一3d金属塩と第二3d金属塩がニッケル塩と、鉄塩と、コバルト塩と、モリブデン塩と、クロム塩と、マンガン塩と、これらの組み合わせから独立して選択され、第一3d金属塩と第二3d金属塩が同じではない、態様44から態様54のいずれか一つに記載の方法。
【0124】
態様56
第一3d金属塩がニッケル塩であり、第二3d金属塩が鉄塩又はコバルト塩である、態様55に記載の方法。
【0125】
態様57
第一3d金属塩が鉄塩であり、第二3d金属塩がコバルト塩である、態様55に記載の方法。
【0126】
態様58
ニッケル塩がNi(NO3)2・6H2Oである、態様55から態様57のいずれか一つに記載の方法。
【0127】
態様59
鉄塩がFe(NO3)2・9H2Oである、態様55から態様57のいずれか一つに記載の方法。
【0128】
態様60
コバルト塩がCo(NO3)2・6H2Oである、態様55から態様57のいずれか一つに記載の方法。
【0129】
態様61
混合物を乾燥させることが、100℃超から略200℃の温度に混合物を加熱することを備える、態様44から態様60のいずれか一つに記載の方法。
【0130】
態様62
混合物を乾燥させることが、略120℃から略150℃の温度に混合物を加熱することを備える、態様44から態様60のいずれか一つに記載の方法。
【0131】
態様63
混合物を乾燥させることが、略120℃から略140℃の温度に混合物を加熱することを備える、態様44から態様60のいずれか一つに記載の方法。
【0132】
態様64
乾燥が、オーブン内で混合物を加熱することを備える、態様44から態様63のいずれか一つに記載の方法。
【0133】
態様65
乾燥が、略4時間から略36時間の期間にわたってオーブン内で加熱することを備える、態様64に記載の方法。
【0134】
態様66
乾燥が、略12時間から略24時間の期間にわたってオーブン内で加熱することを備える、態様64に記載の方法。
【0135】
態様67
か焼が、略1℃/minから略10℃/minの加熱率で略400℃から略900℃の温度で行われる、態様44から態様66のいずれか一つに記載の方法。
【0136】
態様68
第一3d金属塩がニッケル塩であり、第二3d金属塩が鉄塩である場合に、前記温度が略450℃から略550℃であり、前記加熱率が略3℃/minから略7℃/minである、態様67に記載の方法。
【0137】
態様69
前記温度が略500℃であり、前記加熱率が略5℃/minである、態様68に記載の方法。
【0138】
態様70
第一3d金属塩がニッケル塩であり、第二3d金属塩がコバルト塩である場合に、前記温度が略700℃から略800℃であり、前記加熱率が略3℃/minから略7℃/minである、態様67に記載の方法。
【0139】
態様71
前記温度が略750℃であり、前記加熱率が略5℃/minである、態様70に記載の方法。
【0140】
態様72
第一3d金属塩が鉄塩であり、第二3d金属塩がコバルト塩である場合に、前記温度が略400℃から略500℃であり、前記加熱率が略3℃/minから略7℃/minである、態様67に記載の方法。
【0141】
態様73
前記温度が略450℃であり、前記加熱率が略5℃/minである、態様72に記載の方法。
【0142】
態様74
か焼がマッフル炉で行われる、態様44から態様73のいずれか一つに記載の方法。
【0143】
態様75
還元が、略50ml/minから略150ml/minの流用で還元ガス混合物を提供し、略1時間から略12時間にわたって略1℃から略20℃の加熱率で略400℃から略900℃の温度に加熱することによって行われ、還元ガス混合物が略5%から略20%の水素と略95%から略80%のアルゴンを備える、態様44から態様74のいずれか一つに記載の方法。
【0144】
態様76
前記流量が略50ml/minから略100ml/minであり、還元ガス混合物が略5%から略15%の水素を備える、態様75に記載の方法。
【0145】
態様77
前記流量が略70ml/minであり、還元ガス混合物が略10%の水素を備える、態様75に記載の方法。
【0146】
態様78
第一3d金属塩がニッケル塩であり、第二3d金属塩が鉄塩である場合に、還元が、略3時間から略5時間にわたって略7℃/minから略12℃/minの加熱率で略650℃から略750℃の温度で行われる、態様44から態様77のいずれか一つに記載の方法。
【0147】
態様79
略4時間にわたって前記温度が略700℃であり、前記加熱率が略10℃/minである、態様62に記載の方法。
【0148】
態様80
第一3d金属塩がニッケル塩であり、第二3d金属塩がコバルト塩である場合に、還元が、略1時間から略3時間にわたって略7℃/minから略12℃/minの加熱率で略650℃から略750℃の温度で行われる、態様44から態様77のいずれか一つに記載の方法。
【0149】
態様81
略2時間にわたって前記温度が略700℃であり、前記加熱率が略10℃/minである、態様62に記載の方法。
【0150】
態様82
第一3d金属塩が鉄塩であり、第二3d金属塩がコバルト塩である場合に、還元が、略3時間から略5時間にわたって略7℃/minから略12℃/minの加熱率で450℃から略550℃の温度で行われる、態様44から態様77のいずれか一つに記載の方法。
【0151】
態様83
略4時間にわたって前記温度が略580℃であり、前記加熱率が略10℃/minである、態様80に記載の方法。
【0152】
態様84
態様44から態様83のいずれか一つに記載の方法によって作製された組成物。
【0153】
態様85
低級炭化水素を分解する方法であって、略1℃/minから略20℃/minの加熱率で略500℃から略1000℃の温度に触媒を加熱するステップ(触媒床が態様1から態様43のいずれか一つに記載の組成物、又は態様44から態様83のいずれか一つに記載の方法によって作製された組成物を備え、触媒が反応器内に配置され、反応器が固定床反応器又は移動床流通反応器の構成であり、反応器がガス流用の流入端と流出端を備える)と、任意選択的に、(a)略25ml/minから略200ml/minの不活性ガス流量で流入端を介して第一不活性ガスの流れを提供するステップ(第一不活性ガスの流れが触媒と接触している)と、(b)流入端を介した第一不活性ガスの流れを停止するステップと、略0分から略240分のタイムオンストリーム(TOS)で略5000h-1から略60000h-1の空間速度に相当する反応ガス流で流入端を介して反応ガスの流れを提供するステップ(反応ガスの流れが触媒床と接触していて、反応ガスが低級炭化水素と第二不活性ガスを備える)と、流出端において流出ガスを収集するステップ(流出ガスが水素を備える)を備える方法。
【0154】
態様86
第一不活性ガスが窒素、アルゴン、又はこれらの混合物を備える、態様85に記載の方法。
【0155】
態様87
第一不活性ガスが窒素を備える、態様85に記載の方法。
【0156】
態様88
不活性ガス流量が略50ml/minから略150ml/minである、態様85から態様87のいずれか一つに記載の方法。
【0157】
態様89
不活性ガス流量が略50ml/minから略100ml/minである、態様85から態様87のいずれか一つに記載の方法。
【0158】
態様90
不活性ガス流量が略60ml/minから略80ml/minである、態様85から態様87のいずれか一つに記載の方法。
【0159】
態様91
不活性ガス流量が略70ml/minである、態様85から態様87のいずれか一つに記載の方法。
【0160】
態様92
反応ガスが、略10%から約60%の低級炭化水素と、略90%から略40%の第二不活性ガスを備える、態様85から態様91のいずれか一つに記載の方法。
【0161】
態様93
反応ガスが、略20%から約50%の低級炭化水素と、略80%から略50%の第二不活性ガスを備える、態様92に記載の方法。
【0162】
態様94
低級炭化水素がメタンである、態様85から態様93のいずれか一つに記載の方法。
【0163】
態様95
第二不活性ガスが窒素と、アルゴンと、これらの混合物から選択されている、態様85から態様94のいずれか一つに記載の方法。
【0164】
態様96
第二不活性ガスが窒素である、態様85から態様95のいずれか一つに記載の方法。
【0165】
態様97
反応ガス流量が略50ml/minから略150ml/minである、態様85から態様96のいずれか一つに記載の方法。
【0166】
態様98
反応ガス流量が略50ml/minから略100ml/minである、態様85から態様96のいずれか一つに記載の方法。
【0167】
態様99
反応ガス流量が略60ml/minから略80ml/minである、態様85から態様96のいずれか一つに記載の方法。
【0168】
態様100
反応ガス流量が略70ml/minである、態様85から態様96のいずれか一つに記載の方法。
【0169】
態様101
空間速度が略35000h-1から略50000h-1である、態様85から態様100のいずれか一つに記載の方法。
【0170】
態様102
空間速度が略40000h-1から略45000h-1である、態様85から態様100のいずれか一つに記載の方法。
【0171】
態様103
空間速度が略42000h-1である、態様85から態様100のいずれか一つに記載の方法。
【0172】
態様104
タイムオンストリームが略0分から略90分である、態様85から態様103のいずれか一つに記載の方法。
【0173】
態様105
タイムオンストリームが略0分から略75分である、態様85から態様103のいずれか一つに記載の方法。
【0174】
態様106
タイムオンストリームが略0分から略60分である、態様85から態様103のいずれか一つに記載の方法。
【0175】
態様107
低級炭化水素の分解が略10%から略90%の変換効率で水素を生じさせる、態様85から態様106のいずれか一つに記載の方法。
【0176】
態様108
低級炭化水素の分解が略30%から略90%の変換効率で水素を生じさせる、態様85から態様106のいずれか一つに記載の方法。
【0177】
態様109
低級炭化水素の分解が少なくとも略35%から略70%の変換効率で水素を生じさせる、態様85から態様106のいずれか一つに記載の方法。
【0178】
態様110
低級炭化水素の分解が炭素を生じさせる、態様85から態様109のいずれか一つに記載の方法。
【0179】
態様111
炭素がアモルファスカーボンを実質的に含まない、態様110に記載の方法。
【0180】
態様112
炭素が触媒床に接触して蓄積する、態様111に記載の方法。
【0181】
態様113
炭素がカーボンナノチューブを備える、態様110から態様112のいずれか一つに記載の方法。
【0182】
態様114
カーボンナノチューブが略0.600から略0.880のID/IG値を有する、態様113に記載の方法。
【0183】
態様115
カーボンナノチューブが略0.760から略0.875のID/IG値を有する、態様113に記載の方法。
【0184】
態様116
カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブを備える、態様113から態様115のいずれか一つに記載の方法。
【0185】
態様117
カーボンナノチューブが略1nmから略150nmの平均直径を有する、態様113から態様116のいずれか一つに記載の方法。
【0186】
態様118
カーボンナノチューブが略5nmから略70nmの平均直径を有する、態様113から態様116のいずれか一つに記載の方法。
【0187】
態様119
カーボンナノチューブが略5nmから略30nmの平均直径を有する、態様113から態様116のいずれか一つに記載の方法。
【0188】
態様120
カーボンナノチューブが略40nmから略150nmの平均直径を有する、態様113から態様116のいずれか一つに記載の方法。
【0189】
態様121
カーボンナノチューブが略40nmから略70nmの平均直径を有する、態様113から態様116のいずれか一つに記載の方法。
【0190】
態様122
カーボンナノチューブが略100nmから略140nmの平均直径を有する、態様113から態様116のいずれか一つに記載の方法。
【0191】
態様123
カーボンナノチューブが、カーボンナノチューブのチューブ軸に対して斜めに積層したグラフェン層を備える、態様113から態様122のいずれか一つに記載の方法。
【0192】
態様124
カーボンナノチューブが、カーボンナノチューブのチューブ軸に対して平行に積層したグラフェン層を備える、態様113から態様122のいずれか一つに記載の方法。
【0193】
態様125
カーボンナノチューブが、先端成長カーボンナノチューブ、根元成長カーボンナノチューブ、これらの混合物を備える、態様113から態様124のいずれか一つに記載の方法。
【0194】
態様126
触媒床からカーボンナノチューブを精製することを更に備える態様113から態様125のいずれか一つに記載の方法。
【0195】
態様127
反応ガスの流れを停止して、触媒床に再生ガスを提供することを備える再生サイクルを更に備え、再生ガスが略5分から略240分の接触期間にわたって触媒床に接触し、触媒床の温度が略250℃から略750℃であり、再生ガスが酸素を備える、態様113から態様126のいずれか一つに記載の方法。
【0196】
態様128
再生ガスが略5%から略25%の酸素を備える、態様127に記載の方法。
【0197】
態様129
再生ガスが略7.5%から略15%の酸素を備える、態様127に記載の方法。
【0198】
態様130
再生ガスが略10%の酸素を備える、態様127に記載の方法。
【0199】
態様131
接触期間が略15分から略60分である、態様127から態様130のいずれか一つに記載の方法。
【0200】
態様132
接触期間が略20分から略40分である、態様127から態様130のいずれか一つに記載の方法。
【0201】
態様133
接触期間が略30分である、態様127から態様130のいずれか一つに記載の方法。
【0202】
態様134
触媒床が略400℃から略600℃の温度にある、態様127から態様133のいずれか一つに記載の方法。
【0203】
態様135
触媒床が略450℃から略550℃の温度にある、態様127から態様133のいずれか一つに記載の方法。
【0204】
態様136
触媒床が略500℃の温度にある、態様127から態様135のいずれか一つに記載の方法。
【0205】
態様137
更なる反応サイクルを更に備え、更なる反応サイクルが、触媒床を再生ガスに接触させることを停止することと、任意選択的に、略25ml/minから略200ml/minの不活性ガス流量で流入端を介して第一不活性ガスの流れを提供すること(第一不活性ガスの流れが触媒床に接触している)と、流入端を介する第一不活性ガスの流れを停止することと、略10分から略240分のタイムオンストリーム(TOS)で略20000h-1から略60000h-1の空間速度に対して略25ml/minの反応ガス流量で流入端を介して反応ガスの流れを提供することを備える、態様127から態様136のいずれか一つに記載の方法。
【0206】
態様138
低級炭化水素の変換効率が更なる反応サイクル毎に10%を超えて変化しない、態様314に記載の方法。
【0207】
態様139
再生サイクルと更なる反応サイクルを1から10サイクルにわたって繰り返すことを更に備える態様304から態様314のいずれか一つに記載の方法。
【0208】
態様140
態様85から態様139のいずれか一つに記載の方法によって作製されたカーボンナノチューブ。
【0209】
態様141
3d遷移金属と担体物質を備える組成物であって、
3d遷移金属がNiと、Feと、Coと、Mnと、Crと、Moから選択され、
担体物質がシリカと、アルミナと、ゼオライトと、二酸化チタンと、これらの混合物から選択され、
3d遷移金属が、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略5wt%から略70wt%の量で存在し、
担体物質が、3d遷移金属と担体物質の全重量に基づいて略95wt%から略30wt%の量で存在する、組成物。
【0210】
態様142
担体物質がゼオライトである、態様141に記載の組成物。
【0211】
態様143
ゼオライトがZSM‐5と、ゼオライトβと、USYゼオライトから選択されている、態様142に記載の組成物。
【0212】
態様144
ゼオライトが、略5から略25のSiO2/Al2O3モル比を有する、態様142又は態様143に記載の組成物。
【0213】
態様145
ゼオライトが、略7.5から略15のSiO2/Al2O3モル比を有する、態様142又は態様143に記載の組成物。
【0214】
態様146
ゼオライトが、略10から略15のSiO2/Al2O3モル比を有する、態様142又は態様143に記載の組成物。
【0215】
態様147
ゼオライトが、略11.5のSiO2/Al2O3モル比を有する、態様142又は態様143に記載の組成物。
【0216】
態様148
ゼオライトが、略250m2/gから略600m2/gの表面積を有する、態様142から態様147のいずれか一つに記載の組成物。
【0217】
態様149
ゼオライトが、略350m2/gから略500m2/gの表面積を有する、態様142から態様147のいずれか一つに記載の組成物。
【0218】
態様150
ゼオライトが、略400m2/gから略450m2/gの表面積を有する、態様142から態様147のいずれか一つに記載の組成物。
【0219】
態様151
ゼオライトが、略425m2/gの表面積を有する、態様142から態様147のいずれか一つに記載の組成物。
【0220】
態様152
担体物質がアルミナである、態様141に記載の組成物。
【0221】
態様153
アルミナがγ‐Al2O3又はヒュームドアルミナである、態様152に記載の組成物。
【0222】
態様154
アルミナがγ‐Al2O3である、態様152に記載の組成物。
【0223】
態様155
アルミナの表面積が略50m2/gから略500m2/gである、態様141と態様152から態様154のいずれか一つに記載の組成物。
【0224】
態様156
アルミナの表面積が略75m2/gから略250m2/gである、態様141と態様152から態様154のいずれか一つに記載の組成物。
【0225】
態様157
アルミナの表面積が略100m2/gから略200m2/gである、態様141と態様152から態様154のいずれか一つに記載の組成物。
【0226】
態様158
担体物質がシリカである、態様141に記載の組成物。
【0227】
態様159
シリカが沈降シリカと、シリカゲルと、ヒュームドシリカから選択されている、態様158に記載の組成物。
【0228】
態様160
シリカがヒュームドシリカである、態様159に記載の組成物。
【0229】
態様161
シリカが略50kg/m3から略450kg/m3のかさ密度を有する、態様160に記載の組成物。
【0230】
態様162
シリカが略90kg/m3から略380kg/m3のかさ密度を有する、態様160に記載の組成物。
【0231】
態様163
シリカが略350kg/m3から略450kg/m3のかさ密度を有する、態様160に記載の組成物。
【0232】
態様164
シリカが略380kg/m3±略30kg/m3のかさ密度を有する、態様160に記載の組成物。
【0233】
態様165
シリカが略1nmから略200nmの平均粒径を有する、態様141から態様164のいずれか一つに記載の組成物。
【0234】
態様166
シリカが略5nmから略150nmの平均粒径を有する、態様165に記載の組成物。
【0235】
態様167
シリカが略5nmから略100nmの平均粒径を有する、態様165に記載の組成物。
【0236】
態様168
シリカが略5nmから略50nmの平均粒径を有する、態様165に記載の組成物。
【0237】
態様169
シリカが略5nmから略40nmの平均粒径を有する、態様165に記載の組成物。
【0238】
態様170
シリカが略5nmから略30nmの平均粒径を有する、態様165に記載の組成物。
【0239】
態様171
シリカが略5nmから略20nmの平均粒径を有する、態様165に記載の組成物。
【0240】
態様172
シリカが略5nmから略15nmの平均粒径を有する、態様165に記載の組成物。
【0241】
態様173
シリカが略5nmから略10nmの平均粒径を有する、態様165に記載の組成物。
【0242】
態様174
組成物が略55%から略65%のFeと、略45%から略35%の担体物質を備える、態様141から態様173のいずれか一つに記載の組成物。
【0243】
態様175
組成物が略5%から略65%のNiと、略95%から略35%の担体物質を備える、態様141から態様173のいずれか一つに記載の組成物。
【0244】
態様176
組成物が略25%から略65%のCoと、略75%から略35%の担体物質を備える、態様141から態様173のいずれか一つに記載の組成物。
【0245】
態様177
組成物が略35%から略65%のNiと、略65%から略35%の担体物質を備える、態様141から態様173のいずれか一つに記載の組成物。
【0246】
態様178
組成物が略35%から略65%のCoと、略65%から略35%の担体物質を備える、態様141から態様173のいずれか一つに記載の組成物。
【0247】
態様179
組成物がエアロゲル構造を有する、態様141から態様178のいずれか一つに記載の組成物。
【0248】
態様180
組成物がメソポーラス構造を有する、態様141から態様179のいずれか一つに記載の組成物。
【0249】
態様181
組成物が略50m2/gから略500m2/gのBET表面積を有する、態様141から態様180のいずれか一つに記載の組成物。
【0250】
態様182
組成物が略100m2/gから略400m2/gのBET表面積を有する、態様181に記載の組成物。
【0251】
態様183
組成物が略150m2/gから略350m2/gのBET表面積を有する、態様181に記載の組成物。
【0252】
態様184
組成物が略220m2/gから略380m2/gのBET表面積を有する、態様181に記載の組成物。
【0253】
態様185
組成物が略230m2/gから略370m2/gのBET表面積を有する、態様181に記載の組成物。
【0254】
態様186
組成物が略240m2/gから略360m2/gのBET表面積を有する、態様181に記載の組成物。
【0255】
態様187
組成物が略250m2/gから略350m2/gのBET表面積を有する、態様181に記載の組成物。
【0256】
態様188
組成物が略260m2/gから略340m2/gのBET表面積を有する、態様181に記載の組成物。
【0257】
態様189
組成物が略265m2/gから略335m2/gのBET表面積を有する、態様181に記載の組成物。
【0258】
態様190
組成物が略1nmから略50nmのBJH(Barrett‐Joyner‐Halenda)細孔径を有する、態様141から態様180のいずれか一つに記載の組成物。
【0259】
態様191
組成物が略5nmから略45nmのBJH(Barrett‐Joyner‐Halenda)細孔径を有する、態様190に記載の組成物。
【0260】
態様192
組成物が略5nmから略40nmのBJH(Barrett‐Joyner‐Halenda)細孔径を有する、態様190に記載の組成物。
【0261】
態様193
組成物が略5nmから略35nmのBJH(Barrett‐Joyner‐Halenda)細孔径を有する、態様190に記載の組成物。
【0262】
態様194
組成物が略5nmから略30nmのBJH(Barrett‐Joyner‐Halenda)細孔径を有する、態様190に記載の組成物。
【0263】
態様195
組成物が略5nmから略25nmのBJH(Barrett‐Joyner‐Halenda)細孔径を有する、態様190に記載の組成物。
【0264】
態様196
組成物が略5nmから略20nmのBJH(Barrett‐Joyner‐Halenda)細孔径を有する、態様190に記載の組成物。
【0265】
態様197
組成物が略5nmから略15nmのBJH(Barrett‐Joyner‐Halenda)細孔径を有する、態様190に記載の組成物。
【0266】
態様198
組成物が略5nmから略10nmのBJH(Barrett‐Joyner‐Halenda)細孔径を有する、態様190に記載の組成物。
【0267】
態様199
組成物が略10nmから略50nmのBJH(Barrett‐Joyner‐Halenda)細孔径を有する、態様190に記載の組成物。
【0268】
態様200
組成物が略10nmから略45nmのBJH(Barrett‐Joyner‐Halenda)細孔径を有する、態様190に記載の組成物。
【0269】
態様201
組成物が略10nmから略40nmのBJH(Barrett‐Joyner‐Halenda)細孔径を有する、態様190に記載の組成物。
【0270】
態様202
組成物が略10nmから略35nmのBJH(Barrett‐Joyner‐Halenda)細孔径を有する、態様190に記載の組成物。
【0271】
態様203
組成物が略10nmから略30nmのBJH(Barrett‐Joyner‐Halenda)細孔径を有する、態様190に記載の組成物。
【0272】
態様204
組成物が略10nmから略25nmのBJH(Barrett‐Joyner‐Halenda)細孔径を有する、態様190に記載の組成物。
【0273】
態様205
組成物が略10nmから略20nmのBJH(Barrett‐Joyner‐Halenda)細孔径を有する、態様190に記載の組成物。
【0274】
態様206
組成物が略10nmから略15nmのBJH(Barrett‐Joyner‐Halenda)細孔径を有する、態様190に記載の組成物。
【0275】
態様207
組成物が略0.3cm3/gから略1.6cm3/gの細孔容積を有する、態様141から態様206のいずれか一つに記載の組成物。
【0276】
態様208
組成物が略0.4cm3/gから略1.4cm3/gの細孔容積を有する、態様207に記載の組成物。
【0277】
態様209
組成物が略0.5cm3/gから略1.4cm3/gの細孔容積を有する、態様207に記載の組成物。
【0278】
態様210
組成物が略0.6cm3/gから略1.4cm3/gの細孔容積を有する、態様207に記載の組成物。
【0279】
態様211
組成物が略0.7cm3/gから略1.4cm3/gの細孔容積を有する、態様207に記載の組成物。
【0280】
態様212
組成物が略0.8cm3/gから略1.4cm3/gの細孔容積を有する、態様207に記載の組成物。
【0281】
態様213
組成物が略0.9cm3/gから略1.4cm3/gの細孔容積を有する、態様207に記載の組成物。
【0282】
態様214
組成物が略1.0cm3/gから略1.4cm3/gの細孔容積を有する、態様207に記載の組成物。
【0283】
態様215
組成物が略0.3cm3/gから略1.2cm3/gの細孔容積を有する、態様207に記載の組成物。
【0284】
態様216
組成物が略0.4cm3/gから略1.2cm3/gの細孔容積を有する、態様207に記載の組成物。
【0285】
態様217
組成物が略0.5cm3/gから略1.2cm3/gの細孔容積を有する、態様207に記載の組成物。
【0286】
態様218
組成物が略0.6cm3/gから略1.2cm3/gの細孔容積を有する、態様207に記載の組成物。
【0287】
態様219
組成物が略0.7cm3/gから略1.2cm3/gの細孔容積を有する、態様207に記載の組成物。
【0288】
態様220
組成物が略0.8cm3/gから略1.2cm3/gの細孔容積を有する、態様207に記載の組成物。
【0289】
態様221
組成物が略0.9cm3/gから略1.2cm3/gの細孔容積を有する、態様207に記載の組成物。
【0290】
態様222
組成物が略1.0cm3/gから略1.2cm3/gの細孔容積を有する、態様207に記載の組成物。
【0291】
態様223
3d遷移金属が、担体物質内に分布しているか、担体物質の外面上に分布しているか、担体物質の内面上に分布しているか、又はこれらの組み合わせである、態様141から態様222のいずれか一つに記載の組成物。
【0292】
態様224
態様141から態様223のいずれか一つに記載の組成物を作製する方法であって、ニッケル塩と鉄塩とコバルト塩とマンガン塩とクロム塩とモリブデン塩とこれらの組み合わせから選択された3d遷移金属塩を備える水溶液に担体物質を接触させることによって、3d遷移金属塩を備える水溶液と担体物質を備える混合物を形成するステップ(担体物質がシリカとアルミナとゼオライトと二酸化チタンとこれらの混合物から選択され、3d遷移金属塩が、3d遷移金属塩と担体物質の全重量に基づいて略5wt%から略70wt%の量で存在し、担体物質が、3d遷移金属塩と担体物質の全重量に基づいて略95wt%から略30wt%の量で存在する)と、混合物を乾燥させて、乾燥混合物を形成するステップと、乾燥混合物をか焼して、か焼混合物を形成するステップと、か焼混合物を還元することによって、態様141から態様223のいずれか一つに記載の組成物を提供するステップを備える方法。
【0293】
態様225
3d遷移金属塩が鉄塩である、態様224に記載の方法。
【0294】
態様226
鉄塩がFe(NO3)2・9H2Oである、態様224に記載の方法。
【0295】
態様227
態様224から態様226のいずれか一つに記載の方法によって作製された組成物。
【0296】
態様228
態様141から態様223のいずれか一つに記載の組成物を作製する方法であって、ニッケル塩と鉄塩とコバルト塩とマンガン塩とクロム塩とモリブデン塩とこれらの組み合わせから選択された少なくとも一種の3d遷移金属塩と、アルミニウム塩とチタン塩とシリコン塩とこれらの組み合わせから選択されたエアロゲル担体塩と、水と、有機溶媒とを備えるエアロゲル前駆体溶液を提供するステップと、エアロゲル前駆体溶液を加熱するステップと、エアロゲル前駆体をゲル化剤と混合することによって、エアロゲルゾルゲル混合物を形成するステップと、エアロゲルゾルゲル混合物を乾燥させるステップと、か焼エアロゲルゾルゲル混合物を形成するようにか焼を行うステップと、か焼エアロゲルゾルゲル混合物を還元することによって、態様141から態様223のいずれか一つに記載の組成物を提供するステップを備える方法。
【0297】
態様229
3d遷移金属塩がニッケル塩である、態様228に記載の方法。
【0298】
態様230
ニッケル塩がハロゲン化ニッケル塩、硝酸ニッケル塩、硫酸ニッケル塩、又はこれらの組み合わせを備える、態様229に記載の方法。
【0299】
態様231
ニッケル塩がNi(II)を備える、態様229又は態様230に記載の方法。
【0300】
態様232
3d遷移金属塩がコバルト塩である、態様228に記載の方法。
【0301】
態様233
コバルト塩がハロゲン化コバルト塩、硝酸コバルト塩、硫酸コバルト塩、又はこれらの組み合わせを備える、態様232に記載の方法。
【0302】
態様234
コバルト塩がCo(II)を備える、態様232又は態様233に記載の方法。
【0303】
態様235
エアロゲル担体塩がアルミニウム塩である、態様228から態様234のいずれか一つに記載の方法。
【0304】
態様236
アルミニウム塩が塩化アルミニウム塩を備える、態様235に記載の方法。
【0305】
態様237
アルミニウム塩がAlCl3を備える、態様236に記載の方法。
【0306】
態様238
有機溶媒がC1~C6アルコールである、態様228から態様237のいずれか一つに記載の方法。
【0307】
態様239
有機溶媒がメタノール、エタノール、プロパノール、又はこれらの組み合わせである、態様238に記載の方法。
【0308】
態様240
ゲル化剤が酸化プロピレンである、態様228から態様239のいずれか一つに記載の方法。
【0309】
態様241
か焼が、エアロゲルか焼期間にわたるエアロゲルか焼温度での加熱を備え、エアロゲルか焼温度が略300℃から略1000℃であり、エアロゲルか焼期間が略1分から略48時間である、態様228から態様240のいずれか一つに記載の方法。
【0310】
態様242
エアロゲルか焼温度が略300℃から略900℃である、態様241に記載の方法。
【0311】
態様243
エアロゲルか焼温度が略300℃から略800℃である、態様241に記載の方法。
【0312】
態様244
エアロゲルか焼温度が略300℃から略700℃である、態様241に記載の方法。
【0313】
態様245
エアロゲルか焼温度が略300℃から略600℃である、態様241に記載の方法。
【0314】
態様246
エアロゲルか焼温度が略300℃から略500℃である、態様241に記載の方法。
【0315】
態様247
エアロゲルか焼温度が略400℃から略1000℃である、態様241に記載の方法。
【0316】
態様248
エアロゲルか焼温度が略400℃から略900℃である、態様241に記載の方法。
【0317】
態様249
エアロゲルか焼温度が略400℃から略800℃である、態様241に記載の方法。
【0318】
態様250
エアロゲルか焼温度が略400℃から略700℃である、態様241に記載の方法。
【0319】
態様251
エアロゲルか焼温度が略400℃から略600℃である、態様241に記載の方法。
【0320】
態様252
エアロゲルか焼温度が略400℃から略500℃である、態様241に記載の方法。
【0321】
態様253
エアロゲルか焼期間が略30分から略24時間である、態様241から態様252のいずれか一つに記載の方法。
【0322】
態様254
エアロゲルか焼期間が略1時間から略18時間である、態様253に記載の方法。
【0323】
態様255
エアロゲルか焼期間が略1時間から略16時間である、態様253に記載の方法。
【0324】
態様256
エアロゲルか焼期間が略1時間から略14時間である、態様253に記載の方法。
【0325】
態様257
エアロゲルか焼期間が略1時間から略12時間である、態様253に記載の方法。
【0326】
態様258
エアロゲルか焼期間が略1時間から略10時間である、態様253に記載の方法。
【0327】
態様259
エアロゲルか焼期間が略1時間から略9時間である、態様253に記載の方法。
【0328】
態様260
エアロゲルか焼期間が略1時間から略8時間である、態様253に記載の方法。
【0329】
態様261
エアロゲルか焼期間が略1時間から略7時間である、態様253に記載の方法。
【0330】
態様262
エアロゲルか焼期間が略1時間から略6時間である、態様253に記載の方法。
【0331】
態様263
エアロゲルか焼期間が略1時間から略5時間である、態様253に記載の方法。
【0332】
態様264
エアロゲルか焼期間が略1時間から略4時間である、態様253に記載の方法。
【0333】
態様265
エアロゲルか焼期間が略1時間から略3時間である、態様253に記載の方法。
【0334】
態様266
エアロゲルか焼期間が略1時間から略2時間である、態様253に記載の方法。
【0335】
態様267
態様228から態様266のいずれか一つに記載の方法によって作製された組成物。
【0336】
態様268
低級炭化水素を分解する方法であって、略1℃/minから略20℃/minの加熱率で略500℃から略1000℃の温度に触媒床を加熱するステップ(触媒床が態様141から態様223のいずれか一つに記載の組成物、態様224から態様226のいずれか一つに記載の方法によって作製された組成物、態様228から態様266のいずれか一つに記載の方法によって作製された組成物を備え、触媒が反応器内に配置され、反応器が固定床又は移動床の流通反応器の構成であり、反応器がガス流用の流入端と流出端を備える)と、任意選択的に、(a)略25ml/minから略200ml/minの不活性ガス流量で流入端を介して第一不活性ガスの流れを提供するステップ(第一不活性ガスの流れが触媒床と接触している)と、(b)存在している場合には流入端を介する第一不活性ガスの流れを停止するステップと、略0分から略240分のタイムオンストリーム(TOS)で略5000h-1から略60000h-1の空間速度に対して略25ml/minの反応ガス流量で流入端を介する反応ガスの流れを提供するステップ(反応ガスの流れが触媒に接触し、反応ガスが低級炭化水素と第二不活性ガスを備える)と、流出端において流出ガスを収集するステップ(流出ガスが水素を備える)を備える方法。
【0337】
態様269
第一不活性ガスが窒素、アルゴン、又はこれらの混合物を備える、態様268に記載の方法。
【0338】
態様270
第一不活性ガスが窒素を備える、態様268に記載の方法。
【0339】
態様271
不活性ガス流量が略50ml/minから略150ml/minである、態様268から態様270のいずれか一つに記載の方法。
【0340】
態様272
不活性ガス流量が略50ml/minから略100ml/minである、態様268から態様271のいずれか一つに記載の方法。
【0341】
態様273
不活性ガス流量が略60ml/minから略80ml/minである、態様268から態様271のいずれか一つに記載の方法。
【0342】
態様274
不活性ガス流量が略70ml/minである、態様268から態様271のいずれか一つに記載の方法。
【0343】
態様275
反応ガスが、略10%から略60%の低級炭化水素と、略90%から略40%の第二不活性ガスを備える、態様268から態様274のいずれか一つに記載の方法。
【0344】
態様276
反応ガスが、略20%から略50%の低級炭化水素と、略80%から略50%の第二不活性ガスを備える、態様275に記載の方法。
【0345】
態様277
低級炭化水素がメタンである、態様268から態様276のいずれか一つに記載の方法。
【0346】
態様278
第二不活性ガスが窒素と、アルゴンと、これらの混合物から選択されている、態様268から態様277のいずれか一つに記載の方法。
【0347】
態様279
第二不活性ガスが窒素である、態様268から態様277のいずれか一つに記載の方法。
【0348】
態様280
反応ガス流量が略50ml/minから略150ml/minである、態様268から態様279のいずれか一つに記載の方法。
【0349】
態様281
反応ガス流量が略50ml/minから略100ml/minである、態様268から態様279のいずれか一つに記載の方法。
【0350】
態様282
反応ガス流量が略60ml/minから略80ml/minである、態様268から態様279のいずれか一つに記載の方法。
【0351】
態様283
反応ガス流量が略70ml/minである、態様268から態様279のいずれか一つに記載の方法。
【0352】
態様284
空間速度が略35000h-1から略50000h-1である、態様268から態様283のいずれか一つに記載の方法。
【0353】
態様285
空間速度が略40000h-1から略45000h-1である、態様268から態様283のいずれか一つに記載の方法。
【0354】
態様286
空間速度が略42000h-1である、態様268から態様283のいずれか一つに記載の方法。
【0355】
態様287
タイムオンストリームが略0分から略90分である、態様268から態様286のいずれか一つに記載の方法。
【0356】
態様288
タイムオンストリームが略0分から略75分である、態様268から態様286のいずれか一つに記載の方法。
【0357】
態様289
タイムオンストリームが略0分から略60分である、態様268から態様286のいずれか一つに記載の方法。
【0358】
態様290
低級炭化水素の分解が略10%から略90%の変換効率で水素を生じさせる、態様268から態様289のいずれか一つに記載の方法。
【0359】
態様291
低級炭化水素の分解が略30%から略90%の変換効率で水素を生じさせる、態様268から態様289のいずれか一つに記載の方法。
【0360】
態様292
低級炭化水素の分解が略35%から略70%の変換効率で水素を生じさせる、態様268から態様289のいずれか一つに記載の方法。
【0361】
態様293
触媒床が、略55%から略65%のFeと略45%から略35%の担体物質の組成物を備える、態様268から態様292のいずれか一つに記載の方法。
【0362】
態様294
低級炭化水素がメタンである、態様268から態様293のいずれか一つに記載の方法。
【0363】
態様295
低級炭化水素の分解が炭素物質を生じさせる、態様268から態様294のいずれか一つに記載の方法。
【0364】
態様296
炭素物質がアモルファスカーボンを実質的に含まない、態様295に記載の方法。
【0365】
態様297
炭素が触媒床に接触して蓄積する、態様295又は態様296に記載の方法。
【0366】
態様298
炭素がカーボンナノチューブを備える、態様295から態様297のいずれか一つに記載の方法。
【0367】
態様299
カーボンナノチューブが略40nmから略150nmの平均直径を有する、態様298に記載の方法。
【0368】
態様300
カーボンナノチューブが略40nmから略70nmの平均直径を有する、態様298に記載の方法。
【0369】
態様301
カーボンナノチューブが略100nmから略140nmの平均直径を有する、態様298に記載の方法。
【0370】
態様302
カーボンナノチューブが、先端成長カーボンナノチューブ、根元成長カーボンナノチューブ、これらの混合物を備える、態様298から態様301のいずれか一つに記載の方法。
【0371】
態様303
50%を超えるカーボンナノチューブが根元成長カーボンナノチューブを備える、態様302に記載の方法。
【0372】
態様304
反応ガスの流れを止めること及び触媒床に再生ガスを提供することを備える再生サイクルを更に備え、再生ガスが略5分から略240分の接触期間にわたって触媒床に接触し、触媒床の温度が略250℃から略750℃であり、再生ガスが酸素を備える、態様268から態様303のいずれか一つに記載の方法。
【0373】
態様305
再生ガスが略5%から略25%の酸素を備える、態様304に記載の方法。
【0374】
態様306
再生ガスが略7.5%から略15%の酸素を備える、態様304に記載の方法。
【0375】
態様307
再生ガスが略10%の酸素を備える、態様304に記載の方法。
【0376】
態様308
接触期間が略15分から略60分である、態様304から態様307のいずれか一つに記載の方法。
【0377】
態様309
接触期間が略20分から略40分である、態様304から態様307のいずれか一つに記載の方法。
【0378】
態様310
接触期間が略30分である、態様304から態様307のいずれか一つに記載の方法。
【0379】
態様311
触媒床が略400℃から略600℃の温度にある、態様304から態様310のいずれか一つに記載の方法。
【0380】
態様312
触媒床が略450℃から略550℃の温度にある、態様304から態様310のいずれか一つに記載の方法。
【0381】
態様313
触媒床が略500℃の温度にある、態様304から態様310のいずれか一つに記載の方法。
【0382】
態様314
更なる反応サイクルを更に備え、更なる反応サイクルが、触媒床に再生ガスを接触させることを停止することと、任意選択的に、略25ml/minから略200ml/minの不活性ガス流量で流入端を介して第一不活性ガスの流れを提供すること(第一不活性ガスの流れは触媒床に接触している)と、流入端を介する第一不活性ガスの流れを停止することと、略10分から略240分のタイムオンストリーム(TOS)で略20000h-1から略60000h-1の空間速度に対して略25ml/minの反応ガス流量で流入端を介して反応ガスの流れを提供することを備える、態様304から態様313のいずれか一つに記載の方法。
【0383】
態様315
低級炭化水素の変換効率が、更なる反応サイクルで10%を超えて変化しない、態様314に記載の方法。
【0384】
態様316
再生サイクルと更なる反応サイクルを1から10サイクルにわたって繰り返すことを更に備える態様304から態様314のいずれか一つに記載の方法。
【0385】
態様317
態様268から態様316のいずれか一つに記載の方法によって作製されたカーボンナノチューブ。
【0386】
態様318
多層カーボンナノチューブを生成する方法であって、金属系触媒の存在下でメタンを分解するステップ(金属系触媒は少なくとも一度再生される)と、先端と根元を有する多層カーボンナノチューブを成長させるステップ(ナノチューブの根元が金属系触媒に付着していて、ナノチューブが根元から成長する)と、成長したナノチューブの根元付近の金属系触媒から成長した多層カーボンナノチューブを分離して、新たなナノチューブを成長させるために金属系触媒を残すステップを備える方法。
【0387】
態様319
多層カーボンナノチューブの生成の副産物として実質的にCOxフリーの水素ガスを生成することを更に備える態様318に記載の方法。
【0388】
態様320
態様318又は態様319に記載の方法によって作製されたカーボンナノチューブ。
【0389】
以上から、本願の態様が、上記で与えられている目標と目的を、自明であって構造に固有の他の利点と共に得るように良好に適合されていることが分かる。
【0390】
特定の要素やステップが互いに関連して説明されているが、本願に与えられているあらゆる要素及び/又はステップが他の要素及び/又はステップと組み合わせ可能であることが想定され、これは明示的に提供されているかどうかにかかわらず当てはまるものであり、それでも本願で与えられている範囲にある。
【0391】
特定の特徴やサブコンビネーションが有用なものとなり、他の特徴やサブコンビネーションを参照せずに採用され得ることを理解されたい。これは、特許請求の範囲によって想定されるものであって、特許請求の範囲内にある。
【0392】
多くの可能な態様がその範囲から逸脱せずに為され得るものであるので、添付図面に示され詳細な説明に与えられている本願の全ての事項は、例示的であって限定的に解釈されるものではないことを理解されたい。
【0393】
また、本願で用いられている専門用語は、特定の態様を説明することだけを目的とするものであって、限定的なものではないことを理解されたい。当業者は本願で説明されている態様の多様な変更や修正を認識するものである。そうした変更や修正は本開示の教示に含まれて、本願の特許請求の範囲に含まれるものである。
【0394】
以上、本開示の態様を一般的に説明してきたが、以下の例は、本開示のいくつかの追加的な態様を説明する。本開示の態様は以下の例及び対応する文章と図面に関して説明されるが、その説明に本開示に態様を限定するものではなく、本開示の要旨及び範囲内に含まれる全ての代替例、修正及び等価物をカバーするものである。
【0395】
[例]
以下の例は、本願で特許請求される化合物、組成物、物体、デバイス及び/又は方法がどのように為されるのかについての完全な開示及び説明を当業者に提供するものであって、本開示の純粋な例であり、発明者が何が本開示であると考えているかの範囲を限定するものではない。数字(例えば、量、温度等)に関しては精度を保証しようとしているが、ある程度の誤差や偏差は容赦されたい。特に断らない限り、割合は重量での割合であり、温度は℃単位又は大気温度であり、圧力は大気圧であるか又はおよそ大気圧である。
【0396】
[例1]
[触媒調製]
一元系と二元金属系のNi、Fe、Co触媒を乾燥含侵法、つまりインシピエントウェットネス含侵法によって調製した。Ni(NO3)2・6H2O(アクロスオーガニクス社)、Fe(NO3)2・9H2O(アルファエイサー社)、Co(NO3)2・6H2O(アクロスオーガニクス社)を前駆体として用いた。フュームドシリカ(CAB‐O‐SIL‐EH‐5、未処理SiO2、キャボット社)、アルミナ(100~200m2/gの表面積を有するγ相のAl2O3、アルファエイサー社)、ゼオライト(SiO2/Al2O3モル比=11.5、略425m2/gの表面積のCBV2314又はH‐ZSM‐5、ゼオリストインターナショナル社)を担体物質として用いた。金属前駆体の水溶液(60wt%の金属充填量に相当する)を担体上に含侵させた。サンプルをオーブン内で130℃で一晩(16h)乾燥させた。合成したままの触媒をマッフル炉でか焼し、次いで、Ar流(70ml/min)中の10%のH2で還元した。一元金属Ni/SiO2を5℃/minで500℃にして10h(時間)にわたってか焼し、10℃/minで450℃にして4hにわたって還元した。Fe/SiO2を5℃/minで500℃にして10hにわたってか焼し、10℃/minで700℃にして4hにわたって還元した。Co/SiO2を5℃/minで450℃にして3hにわたってか焼し、10℃/minで580℃にして4hにわたって還元した。二元金属Ni‐Fe/SiO2を5℃/minで500℃にして10hにわたってか焼し、10℃/minで700℃にして4hにわたって還元した。Ni‐Co/SiO2を5℃/minで750℃にして5hにわたってか焼し、10℃/minで700℃にして2hにわたって還元した。Fe‐Co/SiO2を5℃/minで450℃にして3hにわたってか焼し、10℃/minで580℃にして4hにわたって還元した。本研究は一元金属のNi、Fe、Co触媒と、二元金属のNi‐Fe、Ni‐Co、Fe‐Co触媒に関する。二元金属触媒は、共含侵法を多様なモル比、例えば1:1、1:2、2:1、9:1、4:1、1:9等で用いて調製された。触媒はxM‐yNとして記され、M、Nは金属を表し、x、yはモル数を表す。
【0397】
[反応器装置]
触媒メタン分解を固定床流通反応器(内径10mmで長さ44.5cmの石英管)内で大気圧で行った。典型的な試験において、0.1gの触媒を反応器床に配置して、触媒床に固定されたKタイプのサーモカップルで反応温度を測定した。活性試験の前に、触媒を各温度で還元して、次いでN2で30分間にわたってパージした。次いで、N2(70ml/min)中で指示温度、典型的には略650℃から略750℃(10℃/min)に温度を上げ、フィードを反応ガス(30%CH4/H2、70ml/mol)に切り替え、42000h-1の空間速度を達成した。HayeSep N 60/80、HayeSep T 60/80、モレキュラーシーブ5A 45/60、モレキュラーシーブ13x 45/60充填塔を有する熱伝導率検出器(TCD)を備えたオンラインガスクロマトグラフィー(GC)(パーキンエルマーアーネル社のClarus500)によって、流出ガスの組成を決定した。TotalChromワークステーションソフトウェアを用いて、GCデータを処理した。分析前にGCを標準ガスで十分に較正した。触媒の再現性を試験し、その結果は±5%の誤差のものであった。メタン分解反応(1h)後に、使用後の触媒を120℃で2hにわたって乾燥させて特性評価した。形成されたカーボンナノチューブは触媒上に堆積していて、複数の特性評価法を用いて特性評価した。
【0398】
[分析方法]
TCD検出器を備えたマイクロメリティクス社のAutoChem HP化学吸着分析器を用いて、触媒に対して温度プログラム還元(TPR,temperature programmed reduction)を行った。触媒を200℃で1hにわたって脱ガスした。RTに冷却後、10vol%のH2/Ar(50ml/min)中で10℃/minの線形加熱率の傾斜で温度を850℃まで上げて、TCD信号を記録した。700℃での反応後に得られた炭素堆積物を備える触媒をX線回折(XRD,X‐Ray Diffraction)で特性評価した。XRD測定を、Cu Kα放射を用いたパナリティカル社のX’pert PROで行った。10~90°の範囲にわたってステップ走査を行い、走査速度は5°/minであった。炭素物質の形態とマイクロ構造をJEOL(日本電子)社のTEM‐2100での透過型電子顕微鏡法(TEM,transmission electron microscopy)によって特性評価した。イソプロパノール中で使用済みの触媒を超音波処理することによってサンプルを準備して、懸濁液を分析用のCu‐TEMグリッド上に滴下した。レニショー社のinViaラマン分光計において大気雰囲気で室温でラマン実験を行った。532nmの緑色励起線を用いてスペクトルを記録した。熱重量分析を、5%O2/He雰囲気において2℃/minの加熱率で150~700℃でTA SDT‐650 Discoveryモデルの機器を用いて行った。
【0399】
[未使用と使用済みの一元と二元金属の担持金属触媒の特性]
本願で説明されているとおりにXRDとTPR法を用いて触媒特性を調べた。全ての金属(Ni、Fe、Co)の特性ピークをXRD分析を用いて特定した(
図15~
図21)。SiO
2担体のアモルファスピークは、充填金属(40%のSiO
2担体上の60%の金属)の強力なピークのためディフラクトグラムに見て取れなかった。金属の鋭いピークで活性元素(Ni/Fe/Co)の結晶相が確かめられ、対応する2θ値がそれらの金属状態を表していた。Niの特性ピークが2θ°=44.6°、52.0°、76.6°で観測され(JCPDS No.04-850)、Feの特性ピークが2θ°=45.1°、65.5°、82.8°であり(JCPDS No.65-4899)、Coについてピークは2θ=44.4°、51.6°、76°であった(JCPDS No.15-0806)。比率が異なる二元金属Ni‐Fe触媒についてのデータは、合金形成を示すピークシフトを示している(
図15B)。Ni‐Feバルク合金についてはFe含有量の関数としてfcc相からbcc相への転移が観測された(非特許文献20、非特許文献21)。一元金属Ni触媒については(111)面がfcc相を表し、一元金属Fe触媒については(110)面がbcc相を表す。FeがNiリッチな系に導入された二元金属触媒(9Ni‐1Fe)では、Ni‐Fe合金のfcc相に対応する一組の回折パターンのみが観測された。このピークは、より低い2θ値に向かってシフトしていて、Niのfcc相の回折パターンに近づいていることも分かった。4Ni‐1Fe触媒については、bcc合金相(110)よりも高強度でfcc合金相(111)がより支配的である。Fe含有量が更に増えた2Ni‐1Feと1Ni‐1Feでは、fcc合金相がより低い2θ値にシフトしていることが分かった。1Ni‐2Feについては、Ni原子がFe格子に導入され、より低い2θ値にシフトし、Ni‐Fe合金のbcc相における合金形成の結果としての格子膨張を示した(非特許文献22)。同様に、Ni‐Co二元金属触媒については、XRD分析を用いて合金形成が確かめられ(
図17)、一元金属Coのfcc相(111)が2θ°=44.4°に観測され、より開2θ値(Ni)相に向かって僅かにシフトしていて、Ni‐Co合金形成を表していた。また、Fe‐Co金属系についても、合金形成が観測され、Feのbcc相がより低い2θ値にシフトし、Coのfcc相と、Fe‐Co合金形成を示していた(
図19)。1Fe‐2Coと1Fe‐9Co以外の他の全ての触媒は単一の合金相のみを示した。1Fe‐2Coと1Fe‐9Coのデータは、Coのfcc相とFeのbcc相の両方を示している。XRD分析で、調製された二元金属Ni/Fe/Co触媒における合金形成を確かめることができたが、これは、反応条件下での触媒の安定性を増加する。
【0400】
反応後に、使用後の触媒をXRD分析によってもう一度特性評価した(
図16、
図18、
図20)。大抵の触媒は金属形態において安定であったが、一元金属Fe触媒(
図16)は酸化を受けていて、Feが空気に晒された際に酸化し易いことは自明である。しかしながら、二元金属触媒については、合金形成が金属の酸化防止に役立つことによって、寿命や安定性を増大させることが観測された。XRDデータから、シェラーの式を用いて、反応前後の金属ナノ粒子の平均結晶子サイズを計算した(表1、2、3)。未使用のNi触媒の平均結晶子サイズは25nmであり、未使用のFe触媒の平均結晶子サイズは29nmであった。Ni‐Fe二元金属触媒を調製した際のデータは、結晶子サイズの顕著な減少を示し、2Ni‐1Fe触媒については9nmに減少していた。未使用のCo触媒の場合には、結晶子サイズは21nmであった。未使用のNi‐Co二元金属触媒については、結晶子サイズはNi触媒とCo触媒の間で22~25nmであった。また、Fe‐Co触媒のデータは、17~28nmの結晶子サイズを示し、Fe一元金属触媒とCo一元金属触媒の範囲内であった。メタン分解の後であっても、使用済みのNi‐Fe/Ni‐Co、Fe‐Co触媒の結晶子サイズの増大は極僅かであった。ナノ粒子の凝集は多くなく、これは触媒の安定性を示している。奇妙なことに、一元金属Fe触媒の結晶子サイズは29nmから13nmに減少したが、この理由は、Feサイトの一部が、空気に晒された際に酸化して、酸化鉄になったからであり得る。
【0401】
合成した触媒の還元性を調べるため、H
2‐TPR実験を行い、結果を
図21~
図23に示す。TPRの結果も、二元金属触媒における合金形成のXRDのデータを支持している。一元金属Ni触媒では、二つの還元ピークが観測され、一つは367℃付近、もう一つは470℃であった(
図20)。一つ目のピークは、SiO
2担体と弱く相互作用していたバルクNiOの還元に対応し、二つ目の弱い還元ピークは、SiO
2担体と非常に強く相互作用していたNiO種の還元に対するものである(非特許文献23)。一元金属FE触媒の典型的なTPRプロファイルは、略470℃、576℃、727℃に三つのピークを有する(
図21)。これは、三つの連続的な還元段階、α‐Fe
2O
3→Fe
3O
4→FeO→Feに対応している(非特許文献24、非特許文献25)。一元金属Co触媒では、306℃に中心がある低温還元ピークと、360℃の二つ目のピークが、スピネルの二段階還元、Co
3O
4→CoO→Coに割り当てられた(
図23)。追加のショルダーピークも433℃付近に観測された(非特許文献26)。しかしながら、高還元温度ピークが存在しないことが、SiO
2担体とコバルトの相互作用が強くないことを示している。二元金属Ni‐Fe触媒のTPRの研究は、Ni含有量の増加と共に、Feの高温還元ピークがNi種の還元温度に向けてシフトすることを示している(
図21)。Fe‐Co触媒について示されたのは、Co含有量の増加が触媒の還元温度を低下させることであり、つまり、CoがFeの還元を促進する(
図23)。Feが高濃度で存在していると、触媒はFeの性質を示すので、Coの還元温度の上昇が観測された(非特許文献27、非特許文献28)。Ni‐Co触媒のTPRプロファイル(
図22)が示すのは、Co
3O
4がNiOよりも還元し易く、Ni含有量の増加がCo
3O
4の還元を妨げることであるので、Coの取り込みがNiOの還元性を改善する。
【0402】
[メタン分解に対する触媒組成の影響と一元金属触媒]
本願に記載のとおりに調製した一元金属触媒を用いて研究を行った。データは、Ni/SiO
2は50%の高いCH
4変換率を示したが、不活性化し始めて、60分の反応で40%の変換率に達したことを示した(
図1)。同様に、一元金属Fe/SiO
2を試験したが、11%の非常に低い初期活性を示し、徐々に4%のCH
4変換率に不活性化した。一元金属Ni/SiO
2は極めて活性な触媒であるが、不活性化が比較的直ぐ急速に生じる。一元金属触媒の性能に対する多様な担体物質の影響を試験した。シリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、ゼオライトに対するFe系触媒からの水素生成の効率を
図33に示す(60wt%のFeと、40wt%の図示の担体物質)。データは、担体物質が水素生成の効率に顕著な影響を有することを示し、最も効率的な水素生成がFe/Al
2O
3組成の存在下で見られた。また、根元成長カーボンナノチューブの効率が担体物質の種類によって変更され得ることが分かり、例えば、本開示の二元金属触媒組成物と比較すると本開示の一元金属触媒組成物を用いると最も効率的に根元生成カーボンナノチューブが生じた。本開示の一元金属触媒組成物の中では、Fe/Al
2O
3組成物がFe/SiO
2組成物よりも高品質の根元成長カーボンナノチューブを提供することも分かった。Fe/Al
2O
3組成物を用いて形成されたカーボンナノチューブの代表的な画像が
図32A~
図32Bに示されている。
【0403】
[メタン分解とカーボンナノチューブ成長に対する触媒組成の影響 ‐ Ni‐Fe二元金属触媒]
ここでは、メタン分解反応についてのNi/SiO
2触媒の活性に対するFe促進剤の追加の影響を説明する。いくつかのNi‐Feモル比(9:1、4:1、2:1、1:1、1:2)を調べた。4Ni‐1Fe/SiO
2、2Ni‐1Fe/SiO
2は、TOS=30minにおいて一元金属Ni/SiO
2触媒と同様の活性(略50%のCH
4変換率)を示した。しかしながら、その後、4Ni‐1Fe/SiO
2触媒はTOS=60min後であってもその活性を維持していた一方で、2Ni‐1Fe/SiO
2はNi/SiO
2触媒と同様に不活性化したことが観測された。1Ni‐1Fe/SiO
2と1Ni‐2Fe/SiO
2でも反応を行ったところ、上記触媒と比較して非常に低いCH
4変換率(16~20%)を示したが、反応時間全体にわたって活性を維持していた。よって、Ni‐Fe二元金属触媒中の高Ni含有量が高い変換率を示し、触媒の安定性や寿命を向上させるのに役立っていると結論付けられる。そこで、9Ni‐1Fe/SiO
2を調製したところ、ここで調べた全てのNiとFe触媒の中で最も高い60%の優れた変換率を示し、その活性は60分の反応後でも非常に安定していた。H
2収率は、9Ni‐1Fe/SiO
2、4Ni‐1Fe/SiO
2、2Ni‐1Fe/SiO
2等の高Ni含有量の触媒について30~40%の範囲内にあり、残りの触媒は5~12%のH
2収率を示しただけであった(
図24)。触媒1グラム当たりに形成された炭素の量を計算したところ、9Ni‐1Fe/SiO
2、4Ni‐1Fe/SiO
2、2Ni‐1Fe/SiO
2に対して略2.3~2.5gであり、残りの触媒については0.4g未満であった(
図25)。
【0404】
[メタン分解とカーボンナノチューブ成長に対する触媒組成の影響 ‐ Ni‐Co二元金属触媒]
ここでは、一元と二元金属のNiとCo触媒に対するメタン変換を調べた。反応条件下において、Co/SiO
2は37%のCH
4変換率を示したが、5分間の反応以内に不活性化した(
図2)。Ni/SiO
2は良好な初期活性を示していたが、反応過程中に徐々に不活性化した。そこで、Co/SiO
2の活性を改善して、Ni/SiO
2触媒の安定性を増大させるために、本願で開示されるのは、SiO
2担体上の多様なNi:Coモル比、例えば、9Ni‐1Co、4Ni‐1Co、2Ni‐1Co、1Ni‐1Co、1Ni‐2Co、1Ni‐9Coの二元金属の組み合わせのNi‐Co触媒である。Ni‐Fe触媒と同様に、Ni‐Coの組み合わせも55%の最大変換率を示した。9Ni‐1Co、4Ni‐1Co、2Ni‐1Co、1Ni‐1Co等のNi‐Co触媒は50~55%の同様の初期変換率を示し、反応全体にわたってその活性を維持していた。より高いCo含有量の触媒も試験したところ、1Ni‐9Coは53%の初期変換率を示したが、それは15分の反応以内のものであった。Ni‐Co二元金属触媒中の高いNi含有量が高い変換率を示し、促進剤としてのCoの存在が触媒寿命の増大に寄与していることが観測された。
【0405】
9Ni‐1Co/SiO
2、4Ni‐1Co/SiO
2、2Ni‐1Co/SiO
2等の高Ni含有量の触媒についてはH
2収率が38~40%の範囲内であることが分かった。Co/SiO
2と1Ni‐9Co/SiO
2は僅か28~33%の初期H
2収率を示したが、5分の反応以内に6%に減少した(
図26)。触媒1グラム当たりに形成された炭素の量を計算したところ、9Ni‐1Co/SiO
2、4Ni‐1Co/SiO
2、2Ni‐1Co/SiO
2に対しては略2.3~2.5gであり、Co/SiO
2と1Ni‐9Co/SiO
2触媒については0.15~0.27gであることが分かった(
図27)。
【0406】
[メタン分解とカーボンナノチューブ成長に対する触媒組成の影響 ‐ Fe‐Co二元金属触媒]
ここでは、一元と二元金属のFe‐Co触媒に対するメタン分解反応について説明する(
図3)。SiO
2担体上の9Fe‐1Co、2Fe‐1Co、1Fe‐1Co、1Fe‐2Co、1Fe‐9Co等の多様なFe:Coモル比で二元金属Fe‐Co/SiO
2触媒を調製した。1Fe‐2Co/SiO
2が51%の最高CH
4変換率を示したが、顕著に不活性化して、60分で僅か15%の変換率を示すことが観測された。ここで調べた触媒の中では9Fe‐1Co/SiO
2と4Fe‐1Co/SiO
2については活性は優れていなかったが、安定性は良好であった。29%の最大H
2収率(
図28にサポート情報)と0.8gの炭素収率(
図29)が1Fe‐2Co/SiO
2で観測された。
【0407】
[還元触媒と酸化触媒の活性の比較]
一般的な遷移金属触媒(Ni/Fe/Co)を還元状態(Ni
0/Fe
0/Co
0)でメタン分解によるカーボンナノチューブ合成に用いた。いくつかの文献では、反応のために触媒を予め還元することが必要ではないものとなり得ることを示したことが報告されている(非特許文献29)。本開示の研究では、メタン分解反応に非常に優れた活性を示していたので、9Ni‐1Fe/SiO
2触媒を酸化状態と還元状態で用いた(
図30)。どちらの触媒も反応の開始時点では同様の活性を示した(略60%)。酸化触媒が示す活性は、吸熱過程であるメタン分解のためのエネルギーを供給する格子酸素のその場(in‐situ)還元によるものであり得る。これに加えて、形成されたH
2がその場で消費され得て、これがメタン分解段階や炭素形成に向けた平衡状態のシフトを促進した(非特許文献29)。
図1に示されるように、還元された9Ni‐1Fe/SiO
2触媒の活性は、反応の最後まで一定の活性を示したが、酸化状態の触媒は、60分で60%の変換率から41%の変換率に不活性化した。どちらの触媒についても、触媒1グラム当たりに形成された炭素の量は2.2~2.5gの範囲内であった。まとめると、本願の場合では、酸化状態の触媒がメタンを炭素とH
2に分解することに触媒作用したが、その触媒の安定性は還元状態のものよりも劣っていた。その理由は、還元状態はその合金相に起因して安定化されていて、それが寿命と安定性の向上に役立つからであり得る。
【0408】
[カーボンナノチューブの特性 ‐ XRD分析]
使用された触媒の全てのXRDパターンは、2θ=26.2°において非常に強いピーク(002)でグラファイト状炭素の存在を示した(
図15、
図17、
図19)。全ての特性金属及び合金ピークも特定されたが、これらの触媒に金属炭化物の形成を示す明確な証拠は無かった。XRDパターンからでは、特性ピークが重なっているので、カーボンナノチューブと同様のグラファイト状構造との間のマイクロ構造の特徴を区別することは難しい(非特許文献30)。また、グラファイト状ピークについてブラッグの式(d=λ/2sinθ)を用いて、カーボンナノチューブのd間隔を計算したところ、0.34nmであると分かり、これは二枚のグラファイト層の間隔(0.3354nm)に相当していて、全ての触媒上に成長した炭素の高い結晶化度を示唆している。(002)回折ピークの強度はグラファイト化度に関係している(
図4)。そのため、低い強度は、低グラファイト化物質を表す(非特許文献31)。Ni‐Fe二元金属触媒の場合、データは、9Ni‐1Fe/SiO
2、つまり最高のNi含有量の二元金属触媒が最高のグラファイト化度のカーボンナノチューブを生成し、グラファイト化度は触媒中のFeの量が増えると共に減少する。
【0409】
Ni‐Fe触媒でのグラファイト化度は、9Ni‐1Fe>Ni>4Ni‐1Fe>2Ni‐1Fe>1Ni‐2Fe>Feの順であった。Ni‐Co二元金属触媒については、4Ni‐1Co/SiO2が最高のグラファイト化度のカーボンナノチューブを生成し、順序は、4Ni‐1Co>2Ni‐1Co>Ni>1Ni‐1Co=9Ni‐1Co>1Ni‐9Co>Coであった。Fe‐Co触媒については、カーボンナノチューブピークの全体的な強度がNi系触媒と比較して非常に低く、全ての組み合わせのFe‐Co触媒は、低グラファイト化のカーボンナノチューブを生成した。従って、一般的には、二元金属触媒中のNi含有量が、メタン分解反応中に形成される炭素のグラファイト化度に影響している。
【0410】
[カーボンナノチューブの特性 ‐ 熱重量分析(TGA)]
カーボンナノチューブの熱安定性を熱重量分析(thermogravimetric analysis,TGA)を用いて調べた。9Ni‐1Fe/SiO
2、9Ni‐1Co/SiO
2、1Fe‐2Co/SiO
2等の使用された触媒を、残りの触媒よりも良好な活性を示したので調べた(
図5)。これらの触媒を2%O
2/He雰囲気で分析した。触媒上に堆積した炭素、アモルファスやカーボンナノチューブは、O
2雰囲気においてCOやCO
2に分解する。特定の場合には、こうした条件では触媒種も酸化する可能性がある。アモルファスカーボンに対応する200~350℃の温度範囲内では熱劣化(熱分解)は観測されなかった。従って、これらの触媒上に堆積した炭素はアモルファス的な性質のものではないことが確かめられた。これら全ての触媒において観測された重量減少は、触媒上に堆積したカーボンナノチューブに対応している。カーボンナノチューブのTGA分析から、炭素の劣化温度が高いほど、安定性が高いことが理解できる。9Ni‐1Fe/SiO
2については、熱劣化が500℃付近で始まり、75%の重量減少があった。9Ni‐1Co/SiO
2については、劣化が450℃から始まり、70%の重量減少があった。1Fe‐2Co/SiO
2触媒については、350℃付近の温度で2%の僅かな重量の増加があり、これは、触媒中に存在するFeの酸化によるものであり得る。410℃付近において、9Ni‐1Fe/SiO
2触媒や9Ni‐1Co/SiO
2触媒よりも低い45~50%の重量減少が観測された。9Ni‐1Fe/SiO
2、9Ni‐1Co/SiO
2、1Fe‐2Co/SiO
2についての開始温度はそれぞれ500~660℃、450~650℃、410~640℃であり、これは、9Ni‐1Fe/SiO
2上に形成されたカーボンナノチューブがより高いグラファイト化度を有し、カーボンナノチューブに欠陥が少ないことを示している。従って、開始温度と終了温度の差が小さいことが、高度にグラファイト化したカーボンナノチューブの形成を示すと結論付けられる。また、これらの触媒に対してメタン分解中にアモルファスカーボンの形成は無く、9Ni‐1Fe/SiO
2触媒と9Ni‐1Co/SiO
2触媒と比較すると1Fe‐2Co/SiO
2触媒上に形成された炭素の量が最小であることが理解できる。
【0411】
[カーボンナノチューブの特性 ‐ ラマン分析]
炭素の質と結晶化度を理解するためにラマン分光法での研究を行った(
図6、
図7、
図8)。全ての触媒について、1336cm
-1のDバンドと1570cm
-1のGバンドという二つの顕著なバンドが観測された。Dバンドは無秩序な炭素やアモルファスカーボンを表し、Gバンドは結晶性炭素を表す(非特許文献4)。TGA分析から、触媒上に堆積したアモルファスカーボンは存在しないことが確かめられている(
図5)。従って、強度比I
D/I
Gは、カーボンナノチューブのグラファイト化度と結晶化度を説明する(非特許文献32)。I
D/I
Gが低いほど、結晶化度の高い炭素となる。Ni‐Fe触媒(
図6)について、データは、9Ni‐1Fe、4Ni‐1Fe、Ni、1Ni‐2FeについてI
D/I
G値が低く、同様のI
D/I
G値(0.829~0.874)を示し、高いI
D/I
G値(0.944~1.26)を有する2Ni‐1Fe、1Ni‐1Fe、Fe触媒よりも良好な結晶化度を有することを示している。
【0412】
Ni‐Co触媒のラマンスペクトル(
図7)は、9Ni‐1Coが、最低のI
D/I
G(0.765)で最も結晶性のカーボンナノチューブを与えることを示し、Ni、4Ni‐1Co、1Ni‐1Coが同様のI
D/I
G(0.868~0.883)を示した。データは、Co触媒と1Ni‐9Co触媒については顕著なバンドを示さなかったが、これは、これらの触媒で形成されたカーボンナノチューブの量が検出限界未満であったからである。4Fe‐1Coで計算された結晶化度が最も高く(I
D/I
G=0.896)、Fe、9Fe‐1Co、2Fe‐1Coは同様のI
D/I
G(0.983~0.99)を示した。1Fe‐1Co、1Fe‐2Co、1Fe‐9Coといった残りの触媒では、形成されたカーボンナノチューブの結晶化度が低いので、高いI
D/I
G(1.019~1.042)を有するカーボンナノチューブが形成された。
【0413】
[カーボンナノチューブの特性 ‐ TEM分析]
TEM法を用いて、カーボンナノチューブの構造形態、粒子サイズ、直径、成長を調べた。この分析は、メタン分解反応において良好な性能と安定性を示した各組み合わせの二元金属触媒(Ni‐Fe、Ni‐Co、Fe‐Co)のうちの特定の触媒に限定した(
図9)。ここでは、使用された9Ni‐1Fe/SiO
2触媒、9Ni‐1Co/SiO
2触媒、1Fe‐2Co/SiO
2触媒に対してTEM分析を行った。本実験で形成されたカーボンナノチューブは、XRD法で確かめられたように活性サイトの金属ナノ粒子の大きな結晶サイズに起因して多層カーボンナノチューブであることが観測された。全ての触媒上に形成されたカーボンナノチューブは、極めて密集した分布で絡まった繊維の様子を示した。カーボンナノチューブは、成長の空間的競争関係に起因してランダムな方向に成長していた(非特許文献9)。カーボンナノチューブの長さは、プロセスの持続時間に依存するので、より長い繊維を得るためには、反応の持続時間を延ばす必要がある。
【0414】
9Ni‐1Fe/SiO
2触媒については、形成された大抵のカーボンナノチューブは100~120nmのものであることが観測された。チューブの壁は、グラファイト層が密に積層して非常に厚かった。驚くべきことに、Ni‐Fe触媒は、カーボンナノチューブの「先端成長」を示し、カーボンナノチューブが成長する際に、カーボンナノチューブは金属ナノ粒子を伴い、金属ナノ粒子がカーボンナノチューブの先端に位置する。金属ナノ粒子の形状は、端部に向けて先細りになった「円錐又は洋梨形状」であって、チューブ軸と或る角度を成す。HR‐TEMから、形成されたカーボンナノチューブの壁が「フィッシュボーン又はヘリングボーン」構造であって、グラファイト層が繊維軸に対して斜めに積層していることが観測された。こうしたタイプのカーボンナノチューブでは、グラファイト面がナノチューブの軸と或る角度を成すので、カーボンナノチューブのエッジ面サイト/欠陥の可能性が高い(非特許文献33)。9Ni‐1Co触媒でも、直径50~60nmの多層カーボンナノチューブが先端に金属ナノ粒子を有して形成された。しかしながら、HR‐TEMから、カーボンナノチューブの壁が平行な形態を有すること(グラファイト面がチューブ軸に平行に位置すること)が観測された。この触媒で形成された一部の特定の繊維は先端に金属ナノ粒子を有していなかったので(
図31)、カーボンナノチューブは根元に金属を有して成長している(根元成長)。よって、9Ni‐1Co/SiO
2は先端成長カーボンナノチューブと根元成長カーボンナノチューブの混合物を与えていた。
【0415】
Fe‐Co触媒の場合でも、多層カーボンナノチューブが直径100~125nmで形成され、先端成長カーボンナノチューブと根元成長カーボンナノチューブの混合物を示していた(
図9と
図31)。HR‐TEMで、この触媒でのカーボンナノチューブの壁の平行な形態が確かめられた。
【0416】
[根元成長カーボンナノチューブの合成]
触媒スクーリング研究からのデータは、一元と二元金属のNi/Fe/Co触媒を用いた場合、60%Fe/SiO2組成物が、メタン分解中の根元成長カーボンナノチューブの選択的な形成を与えていたことを示している。従って、次の研究ではFe/SiO2触媒を利用した。本開示のデータは、T=650℃、TOS=60分、GHSV=42000h-1においてFe/SiO2が11%の非常に低いメタン変換率を有し、徐々に4%に減少していったことを示している。従って、H2とカーボンナノチューブの良好な変換と収率を得るためには、反応条件の革新的な変更が必要とされていた。
【0417】
カーボンナノチューブの根元成長に対する温度の影響を、Fe/SiO
2触媒について多様な温度T=650、700、750、800℃で調べた(
図10)。T=750℃においてメタン変換率が50%であって、T=700℃における47%よりも良好であることが観測された。しかしながら、15分の反応後に、メタン変換率はどちらの場合でも同様なものとなった。将来的な研究にとってはT=700℃が好ましかった。TEM分析を用いて根元成長カーボンナノチューブの形成を確かめた。金属ナノ粒子が担体上に残存していて、カーボンナノチューブが根元から成長したことが観測された(
図11)。
【0418】
よって、60%Fe/SiO
2触媒が、メタン分解によって根元成長カーボンナノチューブを合成することができることが確かめられた。Fe/SiO
2触媒のこの特性を確かめるために、本願に開示されているように触媒再生の研究を行った。T=650℃、TOS=60分、GHSV=42000h
-1での一回目のサイクルのメタン分解後に、使用済みの触媒を10%O
2を用いて500℃で30分にわたって再生した。触媒上に堆積した炭素がCO
2として焼失したことをGC分析を用いて確かめた。二回目のサイクルの実験を同じ条件下で行い、両サイクルにおいて活性が同じであることが分かった(
図12)。2回目のサイクルで形成されたカーボンナノチューブをTEMを用いて特性評価して、2回目のサイクルであってもカーボンナノチューブの根元成長での形成を確かめた(
図13)。この理由は、活性サイトであるFeナノ粒子の粒子が反応過程中に凝集しなかったからであり得る。1回目と2回目のサイクル両方のカーボンナノチューブのラマン分析を行ったところ、2回目のサイクルにおいて、無秩序なカーボンナノチューブに対応するDバンドの強度が、カーボンナノチューブの結晶化に対応するGバンドよりも高かった(
図14)。再生の研究の後であってもFe/SiO
2の活性は減少していなかったが、カーボンナノチューブ形成に向かうこの触媒の選択性は再生後に減少することが分かった。
【0419】
本願の主題は、シェールガスの主成分であるメタンをCOxフリーなH2とカーボンナノチューブ等の有用な炭素に触媒作用で分解することである。しかしながら、この目標を達成するためには、反応条件、触媒特性、プロセスによって生成される炭素の徹底的な調査を行わなければならない。
【0420】
まとめると、メタン分解研究について、一元と二元金属のNi/Fe/Co系触媒の触媒活性、選択性、及び安定性を実証した。本願で開示されるのは、メタン分解による先端成長カーボンナノチューブと根元成長カーボンナノチューブの両方の剛性を与える遷移金属触媒(Ni/Fe/Co)である。本願で開示されるのは、SiO2担体に対する乾燥含侵によって調製された新規合成の一元と二元金属のNi/Fe/Co触媒である。XRDとH2‐TPR分析で、二元金属触媒中の合金の形成を確かめた。メタン分解とカーボンナノチューブ成長に対する触媒組成の影響を多様なモル比のNi、Fe、Co系触媒に対して調べた。Ni‐Fe二元金属触媒中の高Ni含有量が、高い変換率を示し、また、触媒の安定性の増大にも寄与した。Ni‐Co二元金属触媒の場合も、高Ni含有量が高い変換率を示し、触媒中のCoの存在が触媒の寿命を延ばすのに寄与した。Fe‐Co触媒のメタン変換に向かう活性は、Ni‐Fe触媒とNi‐Co触媒よりも比較的低かった。触媒上に形成されたカーボンナノチューブの質をXRD、TGA、ラマン、TEMの手法を用いて分析した。XRD分析から、二元金属触媒中のNi含有量が、形成される炭素のグラファイト化度を制御することが分かった。TGA分析から、触媒上でのメタン分解中にアモルファスカーボンが形成されないことが結論付けられた。炭素の質、つまり結晶化度をラマン分析を用いて計算した。TEM分析が、カーボンナノチューブの多様な形態、直径、壁のタイプ(平行型やフィッシュボーン型)、多様な触媒上での先端成長や根元成長等の成長メカニズムを理解するのに役立った。Ni‐Fe触媒が、フィッシュボーン型の壁パターンの先端成長カーボンナノチューブを選択的に生成し、Ni‐Co触媒とFe‐Co触媒が、平行型の壁パターンの先端成長カーボンナノチューブと根元成長カーボンナノチューブの混合物を形成したことが分かった。
【0421】
メタン分解に対する以前の触媒研究では、主に、カーボンナノチューブ形成と水素生成のための触媒としてこれらの金属に個別に着目していた。また、メタン分解中に形成されるカーボンナノチューブの特性と金属の種類との間の関係性に関する情報が欠けていた。本研究は、メタン分解用の同じ反応条件下で多様な組み合わせでNi/Fe/Co触媒を用いた極めて全般的なものである。更に、本願で開示されるのは、Fe/SiO2上での選択的な根元成長カーボンナノチューブの合成であり、触媒サイトを犠牲にせずに簡単に収穫可能であると考えられる。本開示の組成物と方法は、メタンの触媒分解によるカーボンナノチューブとCOxフリーのH2の新規合成法を提供する。
【0422】
[例2]
[触媒調製]
Fe系触媒を乾燥含侵法、つまりインシピエントウェットネス法によって調製した。Fe(NO3)2・9H2O(アルファエイサー社)を金属前駆体として用いた。ガンマ(γ)Al2O3(アルファエイサー社)、フュームドSiO2(CAB‐O‐SIL‐EH‐5、未処理SiO2、キャボット社)、H‐ZSM‐5ゼオライト(CBV‐5524G、SiO2/Al2O3モル比=50、ゼオリストインターナショナル社)を触媒担体として用いた。金属前駆体の水溶液(60wt%の金属充填量)を担体(40wt%)上に含侵させ、乾燥用オーブン内において130℃で一晩(16h)乾燥させた。更に、合成されたままのサンプルを500℃で10hにわたってか焼し、Ar流中の10%H2(70ml/min)で還元した。得られた触媒をFe/Al2O3、Fe/SiO2、Fe/H‐ZSM‐5と名付けた。60wt%Fe/Al2O3の他に、10wt%と30wt%のFe/Al2O3も調製した。これらの触媒をxFe/担体と記すことにした(xはFeの重量%での充填量を意味する)。
【0423】
[反応器装置]
触媒メタン分解反応を固定床流通反応器(内径10mmで長さ44.5cmの石英管)内で大気圧(1bar)で行った。実験を、反応器床に0.1gの触媒を配置して行い、N2で30分にわたってパージした。活性試験の前に、か焼触媒を10%H2/N2流(70ml/min)で700℃(10℃/min)において4hにわたって還元した。触媒をN2で30minにわたってパージして、温度をN2(70ml/min)中で700℃(10℃/min)に上げた。更に、供給を、42000h-1の空間速度で反応ガス(30%CH4/N2、70ml/min)に切り替えた。熱伝導率検出器と一組の充填塔(HayeSep N 60/80、HayeSep T 60/80、モレキュラーシーブ5A 45/60、モレキュラーシーブ13x 45/60)を備えたオンラインガスクロマトグラフィー(GC)(パーキンエルマーアーネル社のClarus500)によって、流出ガスの組成を分析した。TotalChromワークステーションソフトウェアを用いて、GCデータを処理した。分析前にGCを標準ガスで十分に較正した。触媒の再現性を試験し、その結果は±5%の誤差のものであった。触媒上に形成されたCNTを重量を測ることによって定量化した。
【0424】
[特性評価法]
触媒サンプルを複数の設備で特性評価した。700°での反応後に得られた炭素堆積物を有する触媒をX線回折(XRD)で特性評価した。XRD測定を、Cu Kα放射を用いたパナリティカル社のX’pert PROで行った。レニショー社のinViaラマン顕微鏡を532nmの励起波長と5mWのレーザーパワーで用いたラマン分光法でカーボンナノチューブのラマンスペクトルを得て、各スペクトルについて三回の走査を累算した。オックスフォード社のINCA EDSを備えたJEOL(日本電子)社のJSM‐7600F SEMによる走査型電子顕微鏡法(SEM,scanning electron microscopy)画像を観察した。透過型電子顕微鏡法(TEM)の研究をJEOL(日本電子)社のJEM‐2100 TEMで行い、動作電圧は200kVであった。使用済みの触媒と精製触媒の熱重量分析(TGA)をSDT650機器(TAインスツルメント社)で行った。サンプルを5%O2/N2において5℃/minの一定の加熱率で900℃に加熱した。重量減少と酸化温度を記録した。X線光電子分光法(XPS,X‐ray photoelectron spectroscopy)を行った。
【0425】
[担体の影響]
多様な担体(Fe/Al
2O
3、Fe/H‐ZSM‐5、Fe/SiO
2)上のFe触媒の触媒活性を700℃でのメタン分解について調べた。メタン分解からの主な生成物は水素ガスとカーボンナノチューブ(CNT)である。H
2の定量化をGC分析を用いて行い、触媒上に堆積した炭素を反応後の触媒の重量増加に基づいて計算し、色々な手法を用いて特性評価した。二種の担体上へのCNTの成長率は、触媒の形態が触媒の活性に大きく影響し得ることを示唆している。何故ならば、CCVDにおいては、その率を決定するのは、触媒粒子による炭化水素の吸着と分解だからである。本研究では、CH
4の変換率が、Al
2O
3、SiO
2、H‐ZSM‐5といった担体の種類に依存することが観測された。Fe/ZSM‐5とFe/Al
2O
3の初期変換率はそれぞれ50%と36%であった(
図35を参照)。Fe/Al
2O
3はより高い初期変換率(58%)を有していたが、1時間の反応以内で活性が減少した(20%)。Fe/H‐ZSM‐5触媒でも、初期変換率は高かったが(50%)、15分で活性が15%に減少したが、その変換率を反応時間全体にわたって維持していた。同様に、Fe/SiO
2では、初期変換率は36%であり、9%に減少した。各触媒の水素収率はメタン変換率と同様であり、同様の傾向に従っていた。
図35に示されるように、Fe/Al
2O
3が略26%で最も高い初期水素収率を示し、Fe/ZSM‐5とFe/SiO
2ではそれぞれ24%と20%であった。触媒1グラム当たりに形成された炭素の量を計算したところ、Fe/Al
2O
3では、触媒1g当たり略0.785gであり、Fe/ZSM‐5とFe/SiO
2では、触媒1g当たり僅か0.1gであることが分かった。
【0426】
[Al
2O
3担体上のFe充填量の影響]
Fe/Al
2O
3のメタン変換の触媒活性を、多様なFe充填量でのタイムオンストリームで調べた。Fe充填量は10wt%、30wt%、60wt%で、それぞれ18%、40%、58%の初期変換率に関連していた。Fe充填量が増えると変換率が上昇したが、15分後に全ての触媒が徐々に不活性化し始めた。30%Fe/Al
2O
3触媒の変換率は40%から18%に低下し、10%Fe/Al
2O
3では10%に低下した。また、60wt%Fe/SiO
2と30wt%Fe/Al
2O
3が同様のメタン変換率を有していたので、明らかに担体が触媒の活性に影響している。また、
図36に示されるように、Feの充填量が違うと、30%Fe/Al
2O
3と10%Fe/Al
2O
3でそれぞれ16%と2%であった。また、別の研究において、30%Fe/Al
2O
3と10%Fe/Al
2O
3の炭素収率が触媒1g当たり略0.38gと0.07gであると求められた。
【0427】
[鉱酸を用いたCNTの酸還流分離と精製]
報告されている多様な精製方法の中では、多様な種類の鉱酸を用いた還流が最も採用されている処理である。本実験では、以前の研究でメタン分解用に用いたNi‐Fe二元金属(60%9Ni:1Fe/SiO2)触媒上に形成されたCNTを収集した。この触媒からのCNTを精製の研究用に選択した理由は、本実験の限りにおいてはその触媒の優れた性能と非常に高い炭素収率のためである。また、本研究で採用されたFe/Al2O3触媒上のCNTも用いた。触媒上に堆積したCNTの酸還流で、化学的表面改質を伴って金属粒子と炭素不純物を除去する。還流の温度、時間、酸の強度等の複数の要因が精製プロセスの効率を決める(非特許文献34、非特許文献35を参照)。強酸を用いた高温での長い還流時間が金属粒子の完全な除去をもたらし、酸がCNTの欠陥サイトを攻撃する。一方、低い温度と酸濃度を用いた短期間の還流は、CNTからの触媒粒子の不完全な除去をもたらす。
【0428】
例2では、CNTの分離と精製に以下の手順を採用した。重さ0.3gの使用済みの触媒(9Ni:1Fe/SiO2、Fe/SiO2)を、120℃で45mlの3M HNO3溶液中で連続的な磁気攪拌の下で24hと48hにわたって還流した。その後得られた残留物を濾過して、pHが中性になるまで脱イオン水で洗浄した。還流後に残った酸溶液が、使用済み触媒の溶解した金属粒子と担体を含むと考えられる。次いで、残った固体炭素(CNT)を120℃で一晩(16h)乾燥させて、その純度を分析するために多様な物理化学的手法を用いて特性評価した。
【0429】
[分離CNTのXRDとラマン分析]
酸還流後に9Ni:1Fe/SiO
2触媒とFe/SiO
2触媒から分離された炭素をXRDとラマン法を用いて分析した。
図37Aは、24hと48hの還流後の分離されたCNTと使用済みの9Ni‐1Fe/SiO
2のXRDパターンの比較を表す。Fe/SiO
2触媒についても同様である。どちらの場合でも、酸還流の前には、グラファイト状炭素と共に金属特性ピーク(Ni又はFe)が使用済み触媒のXRDパターンにはっきりと見て取れた。
【0430】
こうした金属ピークの強度は24hの酸還流後に減少して、48hの還流後に完全に消えた。48h後のサンプルでは、2θ=26.2と42.9のグラファイト状炭素の特性ピークのみが検出可能であり、本願で採用された精製プロセス後の分離炭素の純度が確かめられた。
【0431】
24hと48hの還流後の分離されたCNTと使用済み9Ni‐1Fe/SiO
2のラマン分析を
図37Bに示す。使用済みFe/Al
2O
3のI
D/I
G比は0.755であり、精製されたFe/Al
2O
3では0.758(24h)、0.73(48h)であった。使用済み9Ni:1Fe/SiO
2のI
D/I
G比は0.822であり、精製された9Ni:1Fe/SiO
2では0.834(24h)と0.804(48h)であった。これらの結果は、精製前後の炭素のI
D/I
G値が変化しておらず、精製用のHNO
3処理が、分離されたCNTの結晶構造に影響していないことを示している。どちらの結果も、48hの酸処理がCNTから使用済み触媒の金属と担体の残留物を効果的に除去し、精製後に得られたCNTの結晶性を維持していることを明らかにしている。
【0432】
[TEM分析]
図37Cは、触媒メタン分解後に形成されたCNTの代表的なTEM画像を示す。触媒(9Ni‐1Fe/SiO
2)からの円錐状の金属ナノ粒子が、形成されたCNTの先端においてカプセル化されていることが観測された。酸還流を用いた精製後に、金属ナノ粒子がCNTから除去され、ナノチューブの先端に開口を残している(
図37D)。従って、TEM分析で、酸還流後の金属ナノ粒子の除去が確かめられた。
【0433】
[例3]
[物質]
AlCl3・6H2O、Ni(NO3)2・6H2O、Co(NO3)2・6H2O、エタノール(無水)、酸化プロピレン(PO,propylene oxide)等の分析用グレードの化学物質をアクロスオーガニクス社から購入して、更に精製せずに受け取ったままで使用した。金属溶液を調製するのに脱イオン水を用いた。
【0434】
[Ni/Al2O3とCo/Al2O3エアロゲル触媒の合成]
Ni/Al2O3エアロゲル触媒とCo/Al2O3エアロゲル触媒をゾルゲル法によって合成した。ここでは、具体的な例として、50wt%Ni/Al2O3エアロゲル触媒(50wt%のAl2O3担体上の50wt%の金属)を2g調製した。調製では、4.74gのAlCl3・6H2Oを4.95のNi(NO3)2・6H2Oと混合し、次いで、30分間にわたって激しく攪拌しながら10mLの脱イオン水と15.5mLの無水エタノールを加えた。その溶液を含むビーカーを密閉して、80℃の油浴で1hにわたって加熱した。溶液を室温に冷却して、氷浴に移し、16mLの酸化プロピレン(アクロスオーガニクス社から購入)を加えた。溶液を攪拌せずに室温で35分間置いて、アエロゲルを形成した。その後、ウェットゲルを脱イオン水で三回洗浄して、無水エタノールに一晩漬けて、細孔内にエタノールを浸透させた。ウェットゲルを9hにわたって真空乾燥させて、次いで、8hにわたって600℃でか焼した。触媒メタン分解の試験の前に、Ni/Al2O3エアロゲル触媒を450℃で2.5hにわたって還元した。Co/Al2O3エアロゲル触媒について、その調製方法は、Ni/Al2O3エアロゲル触媒で用いたのと実質的に同じであるが、異なるのは、Co/Al2O3エアロゲル触媒を500℃で3hにわたってか焼し、600℃で2.5hにわたって還元した点である。
【0435】
[触媒特性評価]
反応後に、使用済みの触媒を複数の分析設備で特性評価した。X線回折(XRD)測定を、Cu Kα放射を用いたパナリティカル社のX’pert PRO X線回折計で行い、ステップ走査を10~80°の範囲にわたって行った。炭素物質の形態とマイクロ構造を、JEOL(日本電子)社のJEM‐2100での透過型電子顕微鏡法(TEM)によって特性評価した。TEM用サンプルを、イソプロパノール中での使用済み触媒の超音波処理によって調製し、銅グリッドを用いて懸濁液を支持した。ラマン分析を、レニショー社のinViaラマン分光計で行い、緑色励起線532nmを用いてラマンスペクトルを記録した。熱重量分析(TGA)を、TA SDT‐650 Dicoveryモデル機器を用いて5%O2/He雰囲気で行った。温度傾斜は10℃/minで150℃から900℃であった。BET分析を、77Kで窒素を用いてASAP2020機器で行った。SEM画像を日立製作所のS‐4700走査型電子顕微鏡で取得した。XPS分析を、フィジカルエレクトロニクス社のPHI 5000 Versa ProbeでのX線光電子分光法で行った。
【0436】
[反応器装置]
メタン分解を固定床反応器で行った。反応器は内径10mmの石英管製であった。各試験において、100mgのNi/Al2O3又はCo/Al2O3エアロゲル触媒を反応器内に配置した。触媒を、上述のようにして試験前に水素によって還元した。N2ガスでパージした後に、反応器の温度を650℃に上げ、次いで、反応ガス(30%CH4/N2、70ml/min)に切り替えた。メタン分解反応を42000h-1のGHSVで行った。流出ガスの組成を、熱伝導率検出器を備えたオンラインガスクロマトグラフィー(パーキンエルマーアーネル社のClarus500)によって分析した。
【0437】
メタン分解についての触媒性能に対する異なる調製方法の影響
【0438】
[Ni/Al
2O
3とCo/Al
2O
3エアロゲル触媒の合成と性能試験]
図38Aと
図38Bは、本開示の例示的なエアロゲル触媒の合成に含まれる主なステップを概略的に示す。エアロゲル触媒調製のプロセスでは、AlCl
3・6H
2Oをアルミナ酸化物用の前駆体として選択し、エタノールと脱イオン水を溶媒として用いた。水和金属種からのプロトンを消費してゾルゲル重合反応を促進するためのゲル化剤として酸化プロピレン(アクロスオーガニクス社から購入)を使用した(非特許文献36、非特許文献37を参照)。
図39Aに示されるように、最初の20minの反応時間において、60wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒は79.2%の最高のCH
4変換率を示したが、反応が進むにつれて、その変換率は、50wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒と70wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒よりも速い率で低下した。三種全てのNi/Al
2O
3エアロゲル触媒は反応の初期段階中に誘導期を有していることが認められた。誘導期の後に、50wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒が最高のメタン変換率を示した。エアロゲル触媒1グラム当たりに形成された炭素の量を計算したところ、それぞれ、50wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒に対して略0.63~0.83g、60wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒に対して3.31~3.39g、70wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒に対して0.53~0.65gであることが分かった。
図39Bは、図示の三種のNi/Al
2O
3エアロゲル触媒の水素収率を示す。
図39Aに示されるタイムオンストリームのメタン変換率と矛盾することなく、水素収率は、最初の20min中に急速な上昇し、その後、横ばいに成り始める傾向を示した。
【0439】
三種の異なる金属充填量のCo/Al
2O
3エアロゲル触媒に対してメタン分解を行った。
図39Cに示されるように、Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒と異なり、Co/Al
2O
3エアロゲル触媒では誘導期は観測されなかった。三種の触媒の初期活性は僅かに異なり、60wt%Co/Al
2O
3エアロゲル触媒で最高であった。三種全ての触媒についてメタン変換率は最初の20minの間に顕著に低下し、その後、10%のメタン変換率で横ばいになった。一時間の試験内において、Ni/Al
2O
3と比較してCo/Al
2O
3触媒のメタン変換率の減少は顕著であり、これは、以下のようにNi/Al
2O
3エアロゲルの高い細孔径分布とねじれによって説明可能である。タイムオンストリームでの水素生成収率はメタン変換率と矛盾していなかった。Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒の方が、高いメタン変換率と炭素生成率を示した。
図39Dに示されるように、Co/Al
2O
3エアロゲル触媒では、金属含有量が50wt%又は60wt%である場合に、H
2収率が相対的に高かった。しかしながら、エアロゲル触媒中の金属含有量が70wt%に達すると、H
2生成は減少し、これはおそらくは金属焼結によるものである。
【0440】
[異なる方法によって調製された触媒の触媒性能の比較]
メタン分解反応におけるNi/Al
2O
3とCo/Al
2O
3エアロゲル触媒の触媒活性を、以前に報告されている従来のインシピエントウェットネス法によって合成された触媒(非特許文献38を参照)と比較した。
図40Aと
図40Bに示されるように、Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒の触媒活性は、従来のインシピエントウェットネス法によって合成されたAl
2O
3又はSiO
2上のNi、Fe、一元、二元金属のものよりも顕著に高かった。
図40Cに示されるように、Co/Al
2O
3エアロゲル触媒の触媒活性も、インシピエントウェットネス法によって合成された他のCo触媒やCo系触媒のものよりも高かった。
図40Dと
図40Eに示されるように、三種のNi/Al
2O
3エアロゲル触媒のH
2収率は30~45%の範囲内にあると測定され、一方で、他の残りの触媒は僅か5~50%のH
2収率を示した。
図40Fに示されるように、Co/Al
2O
3エアロゲル触媒の水素収率も他のCo触媒やCo系触媒のものよりも高かった。上記全ての結果が、金属と担体との間の相互作用と、エアロゲル触媒の合成方法が、メタン分解における触媒活性に影響を与え得ることを示唆している。特定の理論に縛られるものではないが、インシピエントウェットネスによって合成された触媒は、弱いファンデルワールス力を介した金属と担体との間の結合を主に有するものと考えられる。その結合エネルギーは、表面上に金属を保持するのに十分強いものではないものとなり得て、担体表面から金属粒子が浸出して、先端成長カーボンナノチューブを形成することになり得る。本願のデータは、触媒の調製方法と、調製方法に関係する構造が、触媒の性能に影響し得ることを示唆している。
【0441】
[Ni/Al
2O
3とCo/Al
2O
3エアロゲル触媒の特性評価]
Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒とCo/Al
2O
3エアロゲル触媒の特性を調べるため、XRD、TGA、ラマン、XPS、BET、SEM等の複数の特性評価分析を行った。CNTの特性をTEMによって測定して、成長パターン及びメカニズムとの相関関係を調べた。未使用と使用済みのNi/Al
2O
3とCo/Al
2O
3エアロゲル触媒のXRDパターンが
図41Aと
図41Bに示されている。そのXRDスペクトルデータは、NiとCoとAl
2O
3担体に関連した特性ピークを示している。Al
2O
3担体に関係するいくつかのピークは、高強度の金属ピークの存在のためにXRDスペクトルには見て取れなかった。金属の鋭いピークは、活性元素(NiとCo)の結晶相の形成を示している。Ni特性ピークが2θ=37.3°、46.7°、52.8°、66.6°、76.6°において特定され(JCPDS No.04‐850)、Co特性ピークが2θ=44.8°、48.2°、77.6°において観測された(JCPDS No.15‐0806、非特許文献14、非特許文献39を参照)。反応後に、使用後の触媒をXRD分析によって再び特性評価した。
図41Aと
図41Bに示されるように、未使用の触媒と比較すると、使用済みのNi/Al
2O
3とCo/Al
2O
3エアロゲル触媒のXRDパターンは、2θ=26.2°における非常に強いピーク(002)によってグラファイト状炭素の存在を示した(非特許文献9)。XRD分析での限界のため、CNTと同様のグラファイト状構造との間のマイクロ構造の特徴を区別することは難しかったが、その理由はこれらの特性ピークが重なっているからである。グラファイトのピークついてブラッグの式(d=λ/2sinθ)を用いて、CNTのd間隔を計算した。d間隔は0.34nmであると計算され、二枚のグラファイト層の間隔(0.335nm)に相当していて、全てのエアロゲル触媒上に形成された炭素の高い結晶化度を示唆していた。(002)回折ピークの強度は、グラファイト化度に関係している。低い強度は、あまりグラファイト化していない物質の存在を示す。Co/Al
2O
3エアロゲル触媒の場合、CNTピークの全体的な強度は、Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒と比較してはるかに低く表れた。Co/Al
2O
3エアロゲル触媒は、あまりグラファイト化されていないCNTを生成した。
【0442】
ラマン分光測定を行い、炭素生成物の質と結晶化度を調べた。
図42Aと
図42Bに示されるように、1342cm
-1のDバンド(無秩序な炭素又はアモルファスカーボンを表す傾向にある)と1575cm
-1のGバンド(結晶性炭素を表す傾向にある)という二つの顕著なバンドが観測された(非特許文献4)。CNTのグラファイト化度と結晶化度はI
D/I
Gの強度比によって測定可能である。低いI
D/I
Gのエアロゲル触媒が、高い結晶化度を表す。60wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒のI
D/I
G比は、50wt%と70wt%のNi/Al
2O
3エアロゲル触媒のものよりも僅かに高い。70wt%と60wt%のCo/Al
2O
3エアロゲル触媒のI
D/I
G値についても同様である。ラマンスペクトルは、70wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒と70wt%Co/Al
2O
3エアロゲル触媒がどちらも最低のI
D/I
G(0.835と0.725)で最も結晶性のCNTを形成したことを示した。60wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒は、Co/Al
2O
3エアロゲル触媒よりも高い生産性を示したが、I
D/I
Gが低くなく、欠陥(ラマンのDバンド)のあるCNTの形成を示唆している。特定の理論に縛られるものではないが、Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒上のCNTの長さが、Co/Al
2O
3エアロゲル触媒上のものよりもはるかに長い可能性がある。電子移動の悪さが、結晶化に影響し得て、CNTの欠陥をもたらす。このデータは、以下で議論するTEM分析と矛盾していない。
【0443】
使用後のNi/Al
2O
3とCo/Al
2O
3エアロゲル触媒をTGAによって特性評価して、CNTの熱安定性を調べた。2%O
2/He雰囲気においてTGA測定を行った。
図42Cに示されるように、Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒についての150~550℃とCo/Al
2O
3エアロゲル触媒についての150~400℃の温度範囲内におけるアモルファスカーボンの分解に対応する傾向にある熱劣化(熱分解)が生じていない。エアロゲル触媒上に堆積した炭素は、アモルファスカーボンの特性を示していなかった。TGA分析で、使用済み触媒上の炭素が結晶構造を有していることが明らかになった。
図42Cに示されるように、50wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒では、熱劣化が500℃付近で始まり、84%の重量減少があった。60wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒では、劣化が500℃で始まり、87%の重量減少があった。60wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒と同様に、70wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒は78%の重量減少を示した。
【0444】
Co/Al
2O
3エアロゲル触媒のTGA曲線は、Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒のものと異なることが分かった。Co/Al
2O
3エアロゲル触媒の熱劣化温度は、Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒で生じるものよりもはるかに低かった。また、三種のCo/Al
2O
3エアロゲル触媒上に形成された炭素の量がNi/Al
2O
3エアロゲル触媒のものよりもはるかに少なく、これは触媒活性の結果と矛盾していない。XPS測定を行い、炭素、酸素、ニッケル、コバルトを含む表面元素を分析した。
図42Dに示される結果は、文献で報告されているC 1s、O 1s、Al 2p、Ni 2p3、Co sp3スペクトルに対するピークの割り当てと全体的には一致していた(非特許文献14、非特許文献40を参照)。具体的には、Ni/Al
2O
3とCo/Al
2O
3エアロゲル触媒のC 1sのピークは、それぞれ284.6eVと288.0eVにおけるピークにデコンボリューションされ得る。O 1sのコアレベルのXPSスペクトルは、Ni/Al
2O
3とCo/Al
2O
3エアロゲル触媒についてそれぞれ531.7eVと532.7eVにおいてメインピークを示した。Al 2pのコアレベルXPSスペクトルに観測された見かけの信号ピークは80eVにおけるものであった。Ni 2p3のXPSスペクトルは、531.7eVと532.7eVにおける二つのメインピークを示した。Co 2p3については、Co/Al
2O
3エアロゲル触媒のコアレベルXPSスペクトルにおいて785.6eVと800.2eVに二つのメインピークが認められた。これらの結果は、Ni/Al
2O
3とCo/Al
2O
3エアロゲル触媒におけるAl
2O
3担体とNi
2+イオンとCo
2+イオンの配位を示していた。特定の理論に縛られるものではないが、その配位が強い相互作用を形成し、触媒活性を改善するのに役立っていると考えられる。
【0445】
SEM測定とBET測定を行い、Ni/Al
2O
3とCo/Al
2O
3エアロゲル触媒のマイクロ構造、細孔径分布、吸着脱着特性を調べた。測定は、メタン分解反応において最良の性能を示した60wt%のNi/Al
2O
3とCo/Al
2O
3エアロゲル触媒に限定した。
図43Aに示されるように、60wt%のNi/Al
2O
3とCo/Al
2O
3エアロゲル触媒の等温線は極めて似ていて、これら二種のエアロゲル触媒のBET表面積はそれぞれ324m
2g
-1、271m
2g
-1であると測定された。このBET表面積は、報告されている他の結晶性金属酸化物エアロゲルのものより高かった(非特許文献36、非特許文献41、非特許文献42、非特許文献43)。
【0446】
図43Bに示されるように、BJH(Barrett‐Joyner‐Halenda)細孔径は、60wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒では略10~25nmの範囲内にあり、60wt%Co/Al
2O
3エアロゲル触媒では細孔径は略5~15nmに主に分布していた。アニーリングは表面積を減少させるが、複合エアロゲル触媒は650℃での熱処理後でも高い表面積を示し、メソポーラス範囲において広い細孔径分布を示した。メソポーラス触媒がマイクロポーラス触媒よりも高い活性を示すことは分かっている。ナノ複合メソポーラスのNi/Al
2O
3とCo/Al
2O
3エアロゲル触媒は高い表面積と優れた吸着特性を有し、触媒活性と酸化再生を改善するのに役立つ。対照的に、従来のインシピエントウェットネス法によって合成された触媒は、調製プロセス中に細孔構造を維持することができなかった。従って、これらの結果は、異なる方法によって合成された触媒がその特性に大きな影響を有していることを示している。SEM画像は、60wt%のNi/Al
2O
3とCo/Al
2O
3について、数十から数百ナノメートルのギャップ距離を有するチャネルがコロイド状粒子に形成されたことを示していた。架橋CNTがCNTと触媒粒子の間に形成された。
図43Cと
図43Dに示されるように、SEM画像は、CNTが担体粒子と交じり合って混合して、網状の構造を形成していて、この架橋構造が極めて多孔質であることを示している。触媒のねじれがCNTの成長にとって非常に重要であることが示された。
【0447】
[CNTの成長パターンに対する触媒の異なる調製方法の影響]
図44Aに示されるように、60wt%と70wt%のNi/Al
2O
3エアロゲル触媒については、XRD法によって確かめられたように、活性サイトの金属ナノ粒子の大きな結晶サイズに起因して、形成されたCNTが多層CNTであることが分かった。また、Ni/Al
2O
3とCo/Al
2O
3エアロゲル触媒上に形成されたCNTは根元成長パターンに属していて、絡み合った繊維で密集していた。SEM画像から、CNTが空間的競争関係に起因してランダムな方向に成長していることが観測できた。CNTの長さは、プロセス条件、特に滞留時間に依存していた。
図44A~
図44Fは、形成された多くのCNTの長さが50~200nmの範囲にあったことを示している。形成されたCNTの壁が線形又は湾曲した構造のものであって、グラフェン層が斜めに積層していることが観測された。こうした種類のCNTでは、グラファイト層がCNTの軸に一致していない。特定の理論に縛られるものではないが、グラフェン層が積層するので、欠陥がエッジ面とエッジ面の間に形成され得て、これが、ラマンスペクトルにおいてDバンドが観測されるが、TGA分析においてアモルファス相が特定されないことを説明し得る。
【0448】
60wt%と70wt%のCo/Al
2O
3エアロゲル触媒については、
図45A~
図45Fに示されるように、直径50~150nmの多層CNTが、根元に位置する繊維金属ナノ粒子と共に形成された。これらのCNTの壁は平行な形態を有することが観測でき、Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒上に形成されたCNTと比較すると、比較的薄くて、直径は小さかった。しかしながら、従来のインシピエントウェットネス法によって合成された触媒では、形成されたCNTは先端と根元に金属ナノ粒子を有していた。従来の触媒は、先端成長CNTと根元成長CNTの混合物を与えていた(非特許文献9を参照)。異なる方法によって調製された触媒の成長パターンは異なっている。従来の触媒と比較すると、エアロゲル触媒は、CNTの根元成長を実現するための選択的な手法を与えるものであって、これは従来の触媒において欠けているものである。
【0449】
本開示のTEM画像から、Ni/Al2O3とCo/Al2O3エアロゲル触媒上に形成されたCNTは実質的に全て根元成長で形成されていることが観測できた。特定の理論に縛られるものではないが、これは、金属ナノ粒子とエアロゲル担体との間の強い相互作用に起因するものであり得る。更に、特定の理論に縛られるものではないが、メタン分解反応の初期段階中において、エアロゲル構造に強力に固定されているNiやCoに対して炭素拡散が生じることによって、担体と金属との間に炭素が入り込むことの障壁を与え得る。結果として、金属の外面上の炭素析出が主になり得る。担体上に固定されている金属の上面からのみCNTが成長し得る。特定の理論に縛られるものではないが、エアロゲル触媒を用いて形成されたグラフェン面は、金属表面に強く化学吸着していて、金属ナノ粒子の表面エネルギーを低下させ、金属と担体の相互作用を強めていると考えられる。また、TEM分析は、金属ナノ粒子上に形成されたグラファイトキャップが、後続の炭素フラグメントの堆積中に上方に持ち上げられたことを示していた。これらの結果は、CNTが金属ナノ粒子から離れるように成長し、CNTの根元成長を成していることを明らかにしている。
【0450】
[Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒の再生試験]
エアロゲル触媒の再生試験を、60wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒を用いて行った。根元成長CNTの形成はTEM分析によって確かめられている。T=650℃、TOS=60min、GHSV=42000h
-1の条件下で行われた一回目のサイクルのCH
4分解の後に、使用済みのエアロゲル触媒を650℃での10%O
2を用いて45minにわたって再生した。式1はメタン分解を表し、式2は酸化再生プロセスを表す。全プロセスを五回繰り返して、その結果が
図46Aと
図46Bに示されている。
CH
4→C
CNT+2H
2 (式1)
C
CNT+O2←→CO
X (式2)
【0451】
60wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒を選択して、再生試験を行った。
図46Aに示されるように、このエアロゲル触媒は、二回目のサイクルにおいて、最初の15minでは67.2%のCH
4変換率を示し、61.4%のCH
4変換率へと徐々に不活性化した。三回目のサイクルでは、このエアロゲル触媒は最初の15minにおいて69.3%の比較的高い変換率を示し、その後、最後の30minで44.7%のCH
4変換率に不活性化した。四回目のサイクルでは、最初の15minにおいて68.3%のCH
4変換率で始まり、39.7%のCH
4変換率に徐々に不活性化した。四サイクル後でも、60wt%Ni/Al
2O
3エアロゲル触媒は初期活性を取り戻すことができ、最初の15minにおいて68.7%のCH
4変換率を示し、その後、34.8%のCH
4変換率に不活性化した。実質的には、本研究で開発された再生プロトコルは、初期活性を取り戻すことができるものであるが、サイクル間でのCH
4変換率の低下を更に調べる必要がある。
図46Bに示されるように、このエアロゲル触媒についてのH
2収率は、二回目と三回目のサイクルにおいて44.3~35.9%の範囲内にあることが分かった。四回目と五回目のサイクルについては、H
2収率は34.5~26.7%の範囲に減少した。
【0452】
図47A~
図47Dに示されるように、2回目のサイクルで形成されたCNTをTEMを用いて特性評価して、CNTの根元成長を確かめた。金属ナノ粒子が担体上に残っていて、CNTが根元から成長したことが観測された。五回目のサイクル後であっても、TEM分析は、
図48A~
図48Dに示されるように、形成されたCNTが根元成長したものであることを示していた。本願のデータは、本開示のエアロゲル触媒の改善された多孔性とねじれが顕著なものであって、触媒活性、安定性、再生性の向上を与えていることを示している。
【0453】
まとめると、結果が示すのは、本開示のゾルゲル法によって合成されたエアロゲル触媒が、インシピエントウェットネス法によって調製された一元と二元金属のNi、Fe、Coの従来の触媒と比較して高い性能を示すことであった。特定の理論に縛られるものではないが、本開示のエアロゲル触媒の高い性能は、エアロゲル合成プロセス中における金属と担体の界面において生じる相乗効果に起因するものであり得る。更に、特定の理論に縛られるものではないが、再生後に観測された触媒活性の僅かな変化は金属粒子の焼結に起因するものであり得て、再生プロトコルの更なる最適化が必要である。例えば、60wt%Ni/Al2O3エアロゲル触媒が79.2%の高いCH4変換率を示した。Co/Al2O3エアロゲル触媒については、メタン変換に向かう触媒活性がNi/Al2O3エアロゲル触媒のものよりも低かった。Ni/Al2O3エアロゲル触媒とCo/Al2O3エアロゲル触媒のどちらも根元成長CNTを生成したが、これは、触媒サイトを犠牲するにすることなく簡単に収穫することにとって重要であると考えられる。五サイクル後に、60wt%エアロゲル触媒は68.7%の高いCH4変換率を依然として示すと同時に、実質的に根元成長CNTのみを提供し続けていた。本開示のエアロゲル触媒は、多数の活性サイトを含み、比較的強い金属と担体の相互作用を示すことによって、根元成長CNTの形成をもたらしていると考えられる。本開示のエアロゲル触媒は、実質的に根元成長CNTのみを提供するための新たな手法を与える。
【0454】
本開示の範囲や要旨から逸脱せずに本開示に多様な修正や変更が行われ得ることは当業者に明らかである。本開示の明細書を検討して、本開示を実践することから、当業者には本開示の他の実施形態が明らかとなるものである。本明細書と例は例示目的ためだけのものであって、本開示の真の範囲と要旨は添付の特許請求の範囲によって示されるものである。