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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】ヘルメット
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/12 20060101AFI20230403BHJP
【FI】
A42B3/12
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020537584
(86)(22)【出願日】2019-01-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2019050171
(87)【国際公開番号】W WO2019134973
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】1800256.8
(32)【優先日】2018-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520140785
【氏名又は名称】エムアイピーエス エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハルディン、ペーテル
(72)【発明者】
【氏名】リンドブロム、キム
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0112220(US,A1)
【文献】国際公開第2017/148958(WO,A1)
【文献】特表2015-513008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B3/00-3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側シェルと、
外側シェルと、
前記内側シェルと前記外側シェルとの間の摺動境界面と、
第1及び第2の個別のモード間で選択的に切り替え可能であるように構成されたスイッチであって、前記第1のモードは、ヘルメットへの衝撃に応じた、前記摺動境界面での前記内側シェルと前記外側シェルとの間の相対的な摺動を可能にし、前記第2のモードは、前記摺動境界面での前記内側シェルと前記外側シェルとの間の相対的な摺動を防止する、スイッチと
を備える、ヘルメット。
【請求項2】
前記スイッチが可動ロックを備え、
前記第1及び前記第2のモードが、前記可動ロックの第1及び第2の位置にそれぞれ対応し、
前記第1の位置では、前記ロックは、前記内側シェル及び前記外側シェルのうちの少なくとも1つと係合せず、
前記第2の位置では、前記内側シェルと前記外側シェルとの間の相対的な摺動を防止するために、前記ロックのそれぞれの部品が、前記内側シェル及び前記外側シェルに係合する、請求項1に記載のヘルメット。
【請求項3】
前記可動ロックが、前記内側シェル及び前記外側シェルのうちの一方に取り付けられ、前記可動ロックが前記第2の位置にあるとき、前記可動ロックの一部が、前記内側シェル及び前記外側シェルのうちの他方の凹部に挿入されている、請求項2に記載のヘルメット。
【請求項4】
前記可動ロックの端部が、前記内側シェル及び前記外側シェルのうちの1つに回転可能に装着され、
前記第1の位置及び前記第2の位置から移動する際に、前記可動ロックが、前記可動ロックの前記端部の周りで回転される、請求項3に記載のヘルメット。
【請求項5】
前記可動ロックは、前記ロックが前記第1の位置から前記第2の位置に移動することが可能となるように、前記内側シェル及び前記外側シェルのうちの前記一方に摺動可能に取り付けられる、請求項3に記載のヘルメット。
【請求項6】
前記可動ロックは、前記第1の位置から前記第2の位置まで摺動する際に、前記可動ロックの突出部が、前記可動ロックが摺動する方向に対して、ある角度で延在し得るように構成され、
前記第2の位置では、前記突出部が前記凹部に挿入されている、請求項5に記載のヘルメット。
【請求項7】
前記可動ロックが突出部を備え、前記突出部は、前記可動ロックが前記第1の位置にあるとき、前記突出部が前記凹部と整列しないように配置され、前記可動ロックは、前記可動ロックが前記第2の位置に摺動するとき、前記突出部が前記凹部と整列し、前記凹部に入るよう付勢されるように構成される、請求項5に記載のヘルメット。
【請求項8】
前記可動ロックの第1の部品が、前記可動ロックが取り付けられている、前記内側シェル及び前記外側シェルのうちの前記一方に確実に固定され、前記可動ロックの第2の部品が、前記可動ロックの一部を変形することによって、前記内側シェル及び前記外側シェルのうちの前記他方の前記凹部に挿入され得る、請求項3に記載のヘルメット。
【請求項9】
前記可動ロックが、前記内側及び前記外側シェルの縁部に取り付けられる、請求項2から8までのいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項10】
複数の前記可動ロックを備える、請求項2から9までのいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項11】
前記複数の前記可動ロックの第1のロックが、前記外側シェルに対する前記内側シェルの第1の方向への動きを制限し、
前記複数の前記可動ロックの第2のロックが、前記外側シェルに対する前記内側シェルの、前記第1の方向とは異なる第2の方向への動きを制限する、請求項10に記載のヘルメット。
【請求項12】
前記スイッチが、境界面係合ロックを備え、前記境界面係合ロックは、前記第2のモードでは、前記境界面係合ロックが、前記内側シェルの外面の一部分を前記外側シェルの内面の一部分に固定し、前記境界面係合ロックが、前記内側シェルの前記面の前記一部分と前記外側シェルの前記面の前記一部分との間の相対的な摺動を防止するように構成される、請求項1に記載のヘルメット。
【請求項13】
前記境界面係合ロックが、前記内側シェル及び前記外側シェルのうちの一方に取り付けられた摩擦パッドを備え、
前記境界面係合ロックは、前記第2のモードでは、前記摩擦パッドが、摩擦によって前記内側シェルと前記外側シェルとの間の相対的な摺動を防止するのに十分な力で、前記内側シェル及び前記外側シェルのうちの他方と接触するように構成される、請求項12に記載のヘルメット。
【請求項14】
前記境界面係合ロックが回転式アクチュエーターを備え、前記回転式アクチュエーターは、第1及び第2の方向に回転するとき、前記摩擦パッドをそれぞれ後退及び前進させ、前記境界面係合ロックを、前記第1及び前記第2のモード間でそれぞれ切り替える、請求項13に記載のヘルメット。
【請求項15】
前記境界面係合ロックが押しボタンスイッチを備え、前記押しボタンスイッチは、押されたときに、前記摩擦パッドを前進させ、前記境界面係合ロックを前記第2のモードに設定する、請求項13に記載のヘルメット。
【請求項16】
前記スイッチが、前記内側シェルと前記外側シェルとを連結するための連結具を備え、前記連結具は、前記第1のモードでは、前記連結具が、前記内側シェルと前記外側シェルとの間の相対的な摺動を許容するように構成される、請求項1に記載のヘルメット。
【請求項17】
前記スイッチが、取り外し可能なインサート部材を更に備え、
前記第1のモードでは、前記インサート部材は、前記インサート部材のどの部分も前記連結具と係合しないように位置し、
前記第2のモードでは、前記インサート部材は、前記連結具が、前記摺動境界面での前記内側シェルと前記外側シェルとの間の相対的な摺動を許容しないように、前記連結具と係合する、請求項16に記載のヘルメット。
【請求項18】
前記スイッチが、前記第1及び前記第2のモード間で、前記ヘルメットの着用者により手動にて切り替え可能であるように構成される、請求項1から17までのいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項19】
前記スイッチが、道具を使用する必要なく切り替え可能であるように構成される、請求項1から18までのいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項20】
前記内側シェルが、着用者の頭部に接触するように構成され、前記外側シェルが、衝撃エネルギーを吸収するためのエネルギー吸収シェルである、請求項1から19までのいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項21】
前記内側シェルが、衝撃エネルギーを吸収するための第1のエネルギー吸収シェルであり、前記外側シェルが、衝撃エネルギーを吸収するための第2のエネルギー吸収シェルである、請求項1から19までのいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項22】
前記内側シェルが、衝撃エネルギーを吸収するためのエネルギー吸収シェルであり、前記外側シェルが、前記エネルギー吸収シェルを形成する材料に比べて硬い材料から形成された硬いシェルである、請求項1から19までのいずれか一項に記載のヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルメットは、様々な活動で使用されることが知られている。これらの活動は、兵士のための保護用ヘルメット、及び、例えば、建築業者、鉱山労働者、又は産業機械のオペレーターが使用する安全帽又はヘルメットなど、戦闘目的及び産業目的のものを含む。ヘルメットは、スポーツ活動でも一般的である。例えば、保護用ヘルメットは、アイスホッケー、サイクリング、モーターサイクリング、自動車レース、スキー、スノーボード、スケート、スケートボード、乗馬、アメリカンフットボール、野球、ラグビー、クリケット、ラクロス、クライミング、ゴルフ、サバイバルゲーム、及びペイントボールで使用され得る。
【0003】
ヘルメットは固定サイズであり得、又は、サイズ及び形状の異なる頭部に適合するように調節可能とすることができる。いくつかのタイプのヘルメット、例えば一般にアイスホッケー用ヘルメットでは、ヘルメットの部品を移動させ、ヘルメットの外寸及び内寸を変更することによって、調節性が提供され得る。これは、互いに対して移動することができる2つ以上の部品をヘルメットに与えることよって達成され得る。その他の場合、例えば一般にサイクリング用ヘルメットでは、ヘルメットには、ヘルメットを使用者の頭部に固定するための装着デバイスが備わり、それは、ヘルメットの本体又はシェルは同じサイズのままで、使用者の頭部に適合するように寸法が変化し得る装着デバイスである。場合によっては、ヘルメットの中のコンフォートパディングが、装着デバイスとして機能することができる。装着デバイスは、複数の物理的に分離した部品の形態、例えば互いに相互連結されていない複数のコンフォートパッドで提供されることもできる。使用者の頭部にヘルメットを定着させるためのそのような装着デバイスは、ヘルメットを適所に更にしっかりと固定する追加的なストラップ(あごひもなど)と共に使用され得る。これらの調節機構を組み合わせることも可能である。
【0004】
ヘルメットは、多くの場合、通常はプラスチック製又は複合材料製の硬い外側シェルと、ライナーと呼ばれるエネルギー吸収層とから作製される。今日では、保護用ヘルメットは、特に、規定荷重において脳の重心に生じ得る最大加速度に関する特定の法的要件を満たすように設計されなければならない。一般的には、ヘルメットを装備したダミーの頭蓋骨として知られているものが、頭に対して半径方向の打撃を受ける試験が遂行される。これにより、頭蓋骨に対する半径方向の打撃に対し、優れたエネルギー吸収能力を有する最新のヘルメットがもたらされた。斜めの打撃(即ち、接線方向の成分及び半径方向の成分の両方が組み合わさったもの)から伝達されるエネルギーを、回転エネルギーを吸収する又は消散させることにより、及び/又は、回転エネルギーではなく並進運動エネルギーに方向転換することによって小さくする、ヘルメットの開発における進歩もあった(例えば、国際公開第2001/045526号及び国際公開第2011/139224号があり、どちらもその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0005】
(保護がない場合は)そのような斜めの衝撃によって、脳には並進方向加速度及び角加速度の両方が生じる。角加速度によって頭蓋骨の中で脳が回転し、脳を頭蓋骨に接続する身体の部位、及び脳自体にも傷害を引き起こす。
【0006】
回転傷害の実例には、脳震とう、硬膜下血腫(SDH:subdural haematomas)、血管破裂が引き起こす出血、及び、びまん性軸索損傷(DAI:diffuse axonal injuries)が含まれ、びまん性軸索損傷は、脳組織内の大きな剪断変形の結果として神経線維が過度に引き延ばされるものとして要約され得る。
【0007】
継続時間、振幅、及び増加率などの回転力の特性に応じて、SDH、DAI、又はこれらの損傷の組み合わせのいずれかを被る恐れがある。一般的に言えば、SDHは、短期間及び振幅が大きい加速度によって生じ、DAIは、より長く、より広範囲の加速度荷重によって生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2001/045526号
【文献】国際公開第2011/139224号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記で参照した特許出願で論じられているように、斜めの衝撃を処理することを補助するために、ヘルメットの2つのシェル間に摺動境界面が提供され得るヘルメットが開発されている。しかしながら、本発明者は、ある状況の場合、特に、ヘルメットの着用者が、ヘルメットが設計されている、より深刻なリスクに晒されていない状況の場合、ヘルメットの1つの部品がもう1つの部品に対して摺動することは、特に、1つの部品がもう1つの部品に対して摺動する程度が大きくなりすぎる場合に、使用者に不便が生じる可能性があることを特定した。
【0010】
本発明は、少なくとも部分的にこの問題に対処することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、内側シェルと、外側シェルと、内側シェルと外側シェルとの間の摺動境界面とを備えるヘルメットが提供される。ヘルメットは、第1及び第2の個別のモード間で選択的に切り替え可能であるように構成されたスイッチを更に含む。第1のモードでは、ヘルメットへの衝撃に応じた、摺動境界面での内側シェルと外側シェルとの間の相対的な摺動が許容され得る。第2のモードでは、ヘルメットへの衝撃に応じた、摺動境界面での内側シェルと外側シェルとの間の摺動は防止され得る。
【0012】
本発明が、添付図面を参照し、非限定的な実例によって以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】斜めの衝撃に対する保護を提供するためのヘルメットの断面図である。
図2図1のヘルメットが機能する原理を示す図である。
図3A図1のヘルメットの構造の変形形態を示す図である。
図3B図1のヘルメットの構造の変形形態を示す図である。
図3C図1のヘルメットの構造の変形形態を示す図である。
図4】別の保護用ヘルメットの概略図である。
図5図4のヘルメットの装着デバイスを連結する代替え方法を示す図である。
図6】可動ロックの配置構成を示す図である。
図7】可動ロックの配置構成を示す図である。
図8】可動ロックの配置構成を示す図である。
図9】可動ロックの配置構成を示す図である。
図10】可動ロックの配置構成を示す図である。
図11】可動ロックの配置構成を示す図である。
図12】境界面係合ロックの配置構成を示す図である。
図13】境界面係合ロックの配置構成を示す図である。
図14】ロックが、ヘルメットの2つのシェル間の連結具と共に提供される配置構成を示す図である。
図15】ヘルメットの2つのシェル間の連結具が、一体的に形成されたスイッチを含む配置構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面に描写されたヘルメットの様々な層の厚さの比率は、明瞭にするために図では誇張されており、当然ながら、必要性及び要件に応じて適合され得る。
【0015】
図1は、斜めの衝撃に対する保護を提供することが意図された、国際公開第01/45526号で論じられている種類の第1のヘルメット1を描写する。このタイプのヘルメットは、上述のいずれかのタイプのヘルメットであり得る。
【0016】
保護用ヘルメット1は、外側シェル2と、外側シェル2の内側に配置され、着用者の頭部と接触することが意図された内側シェル3とから構築される。
【0017】
外側シェル2と内側シェル3との間に摺動層4又は摺動促進材が配置され、外側シェル2と内側シェル3との間の変位を可能にする。詳細には、以下に論じられるように、摺動層4又は摺動促進材は、衝撃の間に2つの部品間で摺動が発生し得るように構成され得る。例えば、摺動促進材は、ヘルメット1の着用者が生存できると予期される、ヘルメット1への衝撃に関連する力の下で摺動可能となるように構成され得る。いくつかの配置構成では、摩擦係数が0.001から0.3の間、及び/又は、0.15未満になるように、摺動層又は摺動促進材を構成することが望ましいことであり得る。
【0018】
図1の描写では、ヘルメット1の縁部分に、外側シェル2と内側シェル3とを相互連結する1つ又は複数の連結部材5が配置され得る。いくつかの配置構成では、この連結具は、エネルギーを吸収することによって、外側シェル2と内側シェル3との間の相互変位を打ち消すことができる。しかしながら、これは必須ではない。更に、この特徴が存在する場合でも、吸収されるエネルギーの量は、通常、衝撃の間に内側シェル3によって吸収されるエネルギーと比較して極小である。他の配置構成では、連結部材5は、全く存在しなくてもよい。
【0019】
更に、これらの連結部材5の場所は多様であり得る(例えば、縁部分から離れて位置し、外側シェル2と内側シェル3とを摺動層4を通って連結する)。
【0020】
外側シェル2は、好ましくは、様々なタイプの衝撃に耐えるために相対的に薄く強固である。外側シェル2は、例えば、ポリカーボネート(PC:polycarbonate)、ポリ塩化ビニル(PVC:polyvinylchloride)、又はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS:acrylonitrile butadiene styrene)などのポリマー材料から作製され得る。有利には、ポリマー材料は、ガラス繊維、アラミド、トワロン(登録商標)、炭素繊維、又はケブラー(登録商標)などの材料を使用して繊維強化され得る。
【0021】
内側シェル3は、かなり厚く、エネルギー吸収層として機能する。そのため、内側シェル3は、頭部に対する衝撃を減衰又は吸収することができる。内側シェル3は、有利には、発泡スチロール(EPS:expanded polystyrene)、発泡ポリプロピレン(EPP:expanded polypropylene)、発泡ポリウレタン(EPU:expanded polyurethane)、ビニル・ニトリル発泡体のような発泡材料、又は、例えばハニカム状構造を形成する他の材料、又は、商標名Poron(登録商標)及びD3O(登録商標)で販売されているものなどのひずみ速度感受性発泡体から作製され得る。構築は、例えば、以下で見られるように、異なる材料の複数の層を用いて様々なやり方で多様にすることができる。
【0022】
内側シェル3は、衝撃のエネルギーを吸収するように設計される。ヘルメット1の他の要素(例えば、硬い外側シェル2、又は、内側シェル3の中に設けられたいわゆる「コンフォートパディング」)は、衝撃のエネルギーをいくぶん吸収するが、それはそれらの主目的ではなく、エネルギー吸収に対するそれらの寄与は、内側シェル3のエネルギー吸収と比較して極小である。実際には、コンフォートパディングなどのいくつかの他の要素は「圧縮可能な」材料で作製され得、そのため他の状況では「エネルギーを吸収する」と考えられるが、ヘルメットの分野では、圧縮可能な材料が、ヘルメットの着用者に対する害を低減する目的のために、衝撃の間に有意義な量のエネルギーを吸収するという意味において、必ずしも「エネルギーを吸収する」わけではないということが十分認識されている。
【0023】
例えば、オイル、テフロン(登録商標)、ミクロスフェア、空気、ゴム、ポリカーボネート(PC)、フェルトなどの布地材料など、複数の異なる材料及び実施例が、摺動層4又は摺動促進材として使用され得る。そのような層は、およそ0.1から5mmの厚さを有し得るが、選択された材料及び所望の性能に応じて、他の厚さも使用され得る。摺動層の数及びそれらの配置も多様であり得、この実例は以下で(図3Bを参照しながら)論じられる。
【0024】
連結部材5として、例えば、プラスチック又は金属の変形可能な細片が使用され得、これらは、適切な様式で外側シェル及び内側シェルにしっかりと固定される。
【0025】
図2は、保護用ヘルメット1が機能する原理を示し、ヘルメット1及び着用者の頭蓋骨10は、半円筒状であって、頭蓋骨10は、長手方向軸11に載っていると仮定される。ヘルメット1が斜めの衝撃Kを受けたとき、ねじり力及びトルクが頭蓋骨10に伝達される。衝撃力Kにより、保護用ヘルメット1に対し、接線方向の力K及び半径方向の力Kの両方が生じる。本明細書の特定の文脈中では、ヘルメットを回転させる接線方向の力K及びその影響のみが重要である。
【0026】
理解され得るように、力Kによって内側シェル3に対する外側シェル2の変位12が生じ、連結部材5が変形される。このような配置構成により、頭蓋骨10に伝達されるねじり力を、およそ25%低減することができる。これは、内側シェル3と外側シェル2との間の滑り運動が、半径方向の加速度に変換されるエネルギーの量を低減させることによる結果である。
【0027】
描写されていないが、保護用ヘルメット1の円周方向にも滑り運動が生じ得る。これは、外側シェル2と内側シェル3との間の円周方向の角回転の結果であり得る(即ち、衝撃の間に、外側シェル2は、内側シェル3に対して円周方向の角度だけ回転され得る)。
【0028】
保護用ヘルメット1の他の配置構成も可能である。いくつかの可能な変形例が図3に示される。図3aでは、内側シェル3は、相対的に薄い外側層3”と、相対的に厚い内側層3’とから構築される。外側層3”は、好ましくは、外側シェル2に対する摺動を促進する助けとなるように内側層3’よりも硬い。図3bでは、内側シェル3は、図3aと同様に構築される。この場合、しかしながら、2つの摺動層4が存在し、それらの間には、中間シェル6が存在する。2つの摺動層4は必要に応じて、異なる方法で具現化され得、異なる材料で作製され得る。可能性の1つは、例えば、内側よりも外側の摺動層の摩擦を小さくすることである。図3cでは、外側シェル2が、前述のものとは異なる方法で具現化される。この場合、より硬い外側層2”が、より柔軟な内側層2’を覆う。内側層2’は、例えば、内側シェル3と同じ材料とすることができる。
【0029】
図4は、国際公開第2011/139224号で論じられている種類の第2のヘルメット1を描写し、これも又、斜めの衝撃に対する保護を提供することが意図されている。このタイプのヘルメットも、上述のいずれかのタイプのヘルメットであってよい。
【0030】
図4では、ヘルメット1は、図1のヘルメットの内側シェル3と類似したエネルギー吸収層3を備える。エネルギー吸収層3の外面は、エネルギー吸収層3と同じ材料から提供され得(即ち、追加の外側シェルはなくてよく)、又は、外面は、図1で示されるヘルメットの外側シェル2と等しい剛性のシェル2(図5参照)とすることができる。その場合、剛性のシェル2は、エネルギー吸収層3とは異なる材料から作製され得る。図4のヘルメット1は、複数の通気孔7を有し、これらは、任意選択であり、エネルギー吸収層3及び外側シェル2の両方を通って延在し、それにより、ヘルメット1の通気を可能にする。
【0031】
着用者の頭部にヘルメット1を装着するために、装着デバイス13が提供される。上記で論じられるように、装着デバイス13のサイズを調節することによって、異なるサイズの頭部を収容することが可能となるため、エネルギー吸収層3及び剛性のシェル2のサイズを調節することができないとき、これは望ましいことであり得る。装着デバイス13は、PC、ABS、PVC、若しくはPTFEなどの弾性若しくは半弾性のポリマー材料、又は、綿布などの天然繊維材料で作製され得る。例えば、織物のキャップ又はネットが装着デバイス13を形成し得る。
【0032】
装着デバイス13は、前側、後側、左側、及び右側から延在する更なるストラップ部分を有するヘッドバンド部分を備えるものとして示されているが、装着デバイス13の特定の構成は、ヘルメットの構成に応じて様々であり得る。場合によっては、装着デバイスは、むしろ、ヘルメットの通気を可能にするために、例えば通気孔7の位置に対応して恐らく穴又は隙間を有する、連続した(成形された)シートのようなものであってもよい。
【0033】
図4は、特定の着用者用に装着デバイス13のヘッドバンドの直径を調節するための、任意選択の調節デバイス6も描写する。他の配置構成では、ヘッドバンドは、弾性のヘッドバンドであり得、その場合、調節デバイス6は除外され得る。
【0034】
摺動促進材4が、エネルギー吸収層3の半径方向内側に設けられる。摺動促進材4は、エネルギー吸収層に対して、又は、ヘルメットを着用者の頭部に装着するために提供された装着デバイス13に対して摺動するように適合されている。
【0035】
摺動促進材4は、上述されたのと同様に、エネルギー吸収層3が装着デバイス13に対して摺動することを補助するために設けられる。摺動促進材4は、低摩擦係数の材料であり得、又は、そのような材料でコーティングされ得る。
【0036】
そのため、図4のヘルメットでは、摺動促進材は、エネルギー吸収層3の最も内側に設けられ得、又は組み込まれ得、装着デバイス13に面する。
【0037】
しかしながら、エネルギー吸収層3と装着デバイス13との間に摺動機能を提供するという同じ目的のために、摺動促進材4が、装着デバイス13の外面に設けられる又は組み込まれ得ることも同様に考えられる。即ち、特定の配置構成では、装着デバイス13自体が、摺動促進材4として機能するように適合され得、低摩擦材料を備えることができる。
【0038】
言い換えれば、摺動促進材4は、エネルギー吸収層3の半径方向内側に設けられる。摺動促進材は、装着デバイス13の半径方向外側にも設けられ得る。
【0039】
装着デバイス13が、(上述のように)キャップ又はネットとして形成されるとき、摺動促進材4は、低摩擦材料のパッチとして提供されてもよい。
【0040】
低摩擦材料は、ΡTFΕ、ABS、PVC、PC、Nylon、PFA、EΕΡ、PE、及びUHMWPEなどのワキシー・ポリマー(waxy polymer)、又は、潤滑剤が注入され得る粉末材料とすることができる。低摩擦材料は、布地材料とすることができる。論じられているように、この低摩擦材料は、摺動促進材及びエネルギー吸収層のうちの一方又は両方に適用され得る。
【0041】
装着デバイス13は、図4の4つの固定部材5a、5b、5c、及び5dなどの固定部材5によって、エネルギー吸収層3及び/又は外側シェル2に固定され得る。これらは、弾性的、半弾性的、又は塑性的に変形することによってエネルギーを吸収するように適合され得る。しかしながら、これは必須ではない。更に、この特徴が存在する場合でも、吸収されるエネルギーの量は、通常、衝撃の間にエネルギー吸収層3によって吸収されるエネルギーと比較して極小である。
【0042】
図4に示される実施例によれば、4つの固定部材5a、5b、5c、及び5dは、第1の部分8と第2の部分9とを有するサスペンション部材5a、5b、5c、5dであり、サスペンション部材5a、5b、5c、5dの第1の部分8は、装着デバイス13に固定されるように適合され、サスペンション部材5a、5b、5c、5dの第2の部分9は、エネルギー吸収層3に固定されるように適合される。
【0043】
図5は、着用者の頭部に置かれたときの、図4のヘルメットと類似した実施例を示す。図5のヘルメット1は、エネルギー吸収層3とは異なる材料から作製された硬い外側シェル2を備える。図4とは対照的に、図5では、装着デバイス13は、弾性的、半弾性的、又は塑性的にエネルギー及び力を吸収するように適合された2つの固定部材5a、5bによって、エネルギー吸収層3に固定される。
【0044】
ヘルメットに回転力を生成させる前方斜めの衝撃Iが、図5に示される。斜めの衝撃Iは、エネルギー吸収層3を装着デバイス13に対して摺動させる。装着デバイス13は、固定部材5a、5bによってエネルギー吸収層3に固定される。明瞭にするために、そのような固定部材が2つのみ示されているが、多くのそのような固定部材が実際には存在し得る。固定部材5は、弾性的又は半弾性的に変形することによって回転力を吸収することができる。他の配置構成では、変形は、塑性的であり得、1つ又は複数の固定部材5を切断することさえもある。塑性変形の場合、少なくとも固定部材5は、衝撃後に交換される必要がある。場合によっては、固定部材5の塑性変形及び弾性変形の組み合わせが発生し得、即ち、いくつかの固定部材5は破断して塑性的にエネルギーを吸収し、他の固定部材は変形して弾性的に力を吸収する。
【0045】
一般的に、図4及び図5のヘルメットでは、衝撃の間に、エネルギー吸収層3は、図1のヘルメットの内側シェルと同様に、圧縮することによって衝撃吸収材として機能する。外側シェル2が使用される場合、外側シェル2は、衝撃エネルギーをエネルギー吸収層3にわたって分散させる助けとなる。又、摺動促進材4は、装着デバイスとエネルギー吸収層との間の摺動を可能にすることになる。これは、そうでなければ回転エネルギーとして脳に伝達されることになるエネルギーを、制御された方法で散逸させることを可能にする。エネルギーは、摩擦熱、エネルギー吸収層の変形、又は、固定部材の変形若しくは変位によって散逸され得る。エネルギー伝達が低減されるので、脳に影響を及ぼす回転加速度が低減され、従って、頭蓋骨内の脳の回転が低減される。それにより、硬膜下血腫、SDH、血管破裂、脳震とう、及びDAIなどの回転傷害のリスクが低減される。
【0046】
本発明の配置構成では、ヘルメットには、2つの個別のモード間で選択的に切り替え可能であるように構成されたスイッチが備わる。第1のモードでは、ヘルメットの内側シェルと外側シェルとの間の相対的な摺動は、ヘルメットへの衝撃に応じて可能となり得る。第2のモードでは、内側シェルと外側シェルとの間の相対的な摺動が防止される。スイッチが相対的な摺動を制御する、ヘルメットの内側及び外側シェルは、一般的には、ヘルメットの任意の2つの層とすることができ、その間には摺動境界面が提供される。詳細には、そのようなスイッチは、上述のいずれかのヘルメットの配置構成に設けられ得る。
【0047】
例えば、ある配置構成では、内側シェルは、着用者の頭部に接触するように、及び/又は、着用者の頭部に載せられるように構成された層であり得、外側シェルは、衝撃エネルギーを吸収するためのエネルギー吸収層であり得る。別の配置構成では、内側シェルは、衝撃エネルギーを吸収するための第1のエネルギー吸収層であり得、外側シェルは、衝撃エネルギーを吸収するための第2のエネルギー吸収層であり得る。更なる実例では、内側シェルは、衝撃エネルギーを吸収するためのエネルギー吸収層であり得、外側シェルは、例えばエネルギー吸収層を形成するために使用される材料よりも硬い材料から形成された相対的に硬いシェルであり得る。
【0048】
スイッチの配置構成の特定の実例に関連して以下に説明されるように、スイッチは、ヘルメットの着用者によって第1及び第2のモード間で、手動で切り替えられ得るように構成され得る。従って、第1及び第2のモード間の切り替えは、例えば製造/組み立てプロセスで設定されるのではなく、使用者がヘルメットを購入した後に実行され得る。又、使用者は、第1及び第2のモード間で前後に繰り返し切り替えることができる。
【0049】
いくつかの配置構成では、第1及び第2のモード間の切り替えを完了するために、道具が使用され得る。他の配置構成では、使用者が、第1及び第2のモード間で道具を使用する必要なく切り替えることができるようにスイッチが構成され得る。例えば、スイッチは、第1及び第2のモード間の切り替えが、使用者の手/指を使用して成し遂げられ得るように構成され得る。
【0050】
一般的に、スイッチは、ヘルメットの任意の都合のよい地点に設けられ得る。いくつかの配置構成では、スイッチは、ヘルメットの縁部に設けられ得る。これは、使用者にスイッチへのアクセスを提供するのに便利であり得る。例えば、これは、使用者が、ヘルメットを着用したまま、第1及び第2のモード間で切り替えることを許容することができる。代替え的又は追加的には、ヘルメットの縁部にスイッチを設けることは、そのようなスイッチを有するヘルメットの製造を容易にすることができる。
【0051】
図6は、ヘルメットの縁部に設けられたスイッチ20を有するヘルメットの実例を描写する。示された配置構成では、ヘルメットは、外側シェル21と内側シェル22とを含み、摺動境界面23が2つのシェル間に提供される。スイッチ20は、可動ロック25を含み、これは、スイッチ20の第1及び第2のモードに対応する第1及び第2の位置間で移動することができる。
【0052】
図6は、第1の位置にあるロック25を描写する。図示されるように、ロック25は、回転可能な取り付けポイント26によって外側シェル21に取り付けられる。第1の位置では、ロック25は内側シェル22と係合しない。その結果として、内側シェル22は、外側シェル21に対して摺動境界面で摺動することができる。
【0053】
ロック25は、回転可能な取り付けポイント26の周りでロック25を回転させることによって第2の位置に移動され得る。ロック25が第2の位置に回転されると、ロック25の端部28が、内側シェル22内の凹部27と係合する。ロック25の内側シェル22との係合は、外側シェル21に対する内側シェル22の動きを防止するように構成され得る。このようにして、摺動境界面23での内側シェル22と外側シェル21との間の相対的な摺動が防止され得、スイッチ20を第2のモードに設定する。
【0054】
図6に示された配置構成の変形形態が提供され得ることを理解されたい。例えば、ロック25は、内側シェルに回転可能に取り付けられ、外側シェルと係合し、そこから係合解除することができるように構成され得る。代替え的又は追加的には、ロックの端部は、それが取り付けられていないシェルと、そのシェルの凹部に入る以外の手段で係合するように構成され得る。例えば、可動ロックは、シェルから突出した突出部と係合するように構成され得る。一般的に、ロックと、それが取り付けられているシェル以外のシェルとの間に、様々な形態の着脱可能な連結が設けられ得る。
【0055】
ある配置構成では、可動ロック20は、シェル間の相対的な摺動を防止するために、ロックの一部が凹部内に挿入される必要なく、ロックが取り付けられているシェル以外のシェルと係合することができるように構成され得る。例えば、図7に描写された配置構成では、ロック20は、外側シェル21の縁部に回転可能に取り付けられたタブ29を含むことができる。第1の位置では、タブ29は、外側シェル21の外面に隣接して配置され得る。第2の位置では、タブ29は、内側シェル22の縁部に当接することができ、内側シェル22が外側シェル21に対して摺動することを防止する。
【0056】
図7に示されるように、このような配置構成では、回転可能に取り付けられたタブ29は、内側シェル22の凹部に挿入されることなく、内側シェル22と係合することができるが、いずれの場合も、第2の位置でタブ29を受け入れるように浅い凹部が設けられ得る。例えば、これにより、タブ29が誤って第1の位置に跳ね返される恐れを低減することができる。
【0057】
図8及び9は、可動ロック20の代替え的な配置構成を描写する。図8及び9に示された配置構成は、外側シェル21に、図6に示された配置構成のように回転可能に取り付けられるのではなく、摺動可能に取り付けられた構成要素をロック20が含むという点で、図6に示された配置構成とは異なる。
【0058】
本明細書の文脈中では、摺動可能に取り付けられた構成要素は、それが取り付けられたシェルの表面に略平行である実質的直線方向に移動することができるように配置されたものであり得る。この動きは、ヘルメットのシェルの局所曲率に対応することができるので、完全な直線、即ちまっすぐな方向ではなくてもよいことを理解されたい。図8及び9に示される配置構成では、摺動可能に取り付けられた構成要素31、35は、外側シェル21に取り付けられる。しかしながら、適切な変更により、これらの構成要素は、代替え的に内側シェル22に取り付けられ得ることを理解されたい。
【0059】
図8に描写された配置構成では、ロック20は、摺動可能に取り付けられた構成要素31に連結された突出部32を有することができ、これは、ロック20が第1の位置から第2の位置まで移動され、再び戻されるとき、突出部32が、内側シェル22内の凹部33にそれぞれ挿入され、そこから引き出されるように配置される。
【0060】
図示されるように、突出部32は、それが凹部33に少なくとも挿入されるとき、摺動可能に取り付けられた構成要素31が、第1及び第2の位置間で移動されるときに移動する方向に対して、ある角度で延在するように配置される。図6に示された上述の配置構成に対応するように、突出部32が凹部33に挿入されると、突出部32は、外側シェル21に対する内側シェル22の動きを制限するために、内側シェル22と係合する。
【0061】
図9に描写された配置構成は、図8に示された配置構成と類似した様式で作動し、摺動可能に取り付けられた構成要素35に連結された突出部36を有し、ロック20の操作時に、突出部36は、内側シェル22内の凹部37に挿入され、そこから後退させられ得る。
【0062】
図8及び9に描写された配置構成の主な機能の違いは、図8に描写された配置構成では、摺動可能に取り付けられた構成要素31を、ヘルメットの頂部からヘルメットの縁部の方向に摺動させることで、ロック20を第1の位置に移動させ、一方、図9に描写された配置構成では、摺動可能に取り付けられた構成要素35を、ヘルメットの頂部からヘルメットの縁部の方向に移動させることで、スイッチ20を第2の位置に移動させることである。
【0063】
図10は、摺動可能に取り付けられたロック20の更なる代替え的な配置構成を描写する。図示されるように、この配置構成では、ロック20は、外側シェル21の外面に取り付けられた、摺動可能に取り付けられた構成要素40を含み、これは、突出部41を含む。描写された配置構成では、摺動可能に取り付けられた構成要素40が第2の位置に移動されるとき、突出部41は、外側シェル21の開口部42を通って内側シェル22の凹部43に入る。内側シェル22の凹部43内に突出部41が存在することで、内側シェル22と外側シェル21との間の摺動運動を制限することができる。
【0064】
ロック20は、摺動可能に取り付けられた構成要素40が第2の位置に移動されるとき、突出部41が、外側シェル21の開口部42を通って、内側シェル22の凹部43に入るよう付勢されるように構成され得る。ある配置構成では、これは、摺動可能に取り付けられた構成要素40と突出部41との間に、突出部41を凹部43に付勢する弾力性部材44を設けることによってもたらされ得る。
【0065】
代替え的又は追加的には、摺動可能に取り付けられた構成要素40自体に弾力性があり得、第1の位置では、摺動可能に取り付けられた構成要素が変形され、外側シェル21の外面に対して突出部41を押圧するように配置される。突出部41が開口部42と整列すると、摺動可能に取り付けられた構成要素40は、それ自身の無変形状態に戻るように付勢され、突出部41を、開口部43を通して凹部43に押し込む。
【0066】
図10に示されるように、1つの配置構成では、内側シェル22と係合する突出部41の表面は、丸みのある縁部を有することができ、摺動可能に取り付けられた構成要素40が第1の位置に押し戻されると、即ち、外側シェルの表面に平行な実質的直線方向に開口部42の領域で摺動されると、突出部41は、内側シェル22の凹部43から外側シェル21の開口部42を通って引き出される。言い換えれば、突出部の丸みのある縁部と凹部43及び/又は開口部42の縁部との係合は、開口部42の領域で、外側シェル21の表面に対し実質的垂直な方向に突出部を押し進めることができる。これは、突出部を凹部43の中に付勢する力に打ち勝つことができる。
【0067】
ある配置構成では、可動ロック20は、内側シェル及び外側シェルのうちの一方に取り付けられた第1の部品51と、ロック20の一部を変形することによって、他方のシェルの凹部53に挿入され得る第2の部品52とを有することができる。
【0068】
図11はそのような配置構成を描写する。図11に描写された配置構成では、ロック20の第1の部品51は、内側シェル22に取り付けられる。ロック50の第2の部品52は、外側シェル21の凹部53に挿入され得る。これは、ロック20の一部、詳細には、例えば、第1の部品51と第2の部品52との間のロックの一部を変形することによって成し遂げられ得る。ロック20の第2の部品52を凹部53に挿入することによって、外側シェル21に対する内側シェル22の摺動が制限され得る。
【0069】
図11に描写された配置構成では、第1の部品51が内側シェルに取り付けられ、ロック20は、第2の部品52が外側シェル21の凹部53に挿入され得るように構成されるが、この配置構成は逆になってもよいことを理解されたい。同様に、図11は、内側シェル22が相対的に薄く、例えば、着用者の頭部にヘルメットを載せるように構成され、外側シェル21は、内側シェル22よりも厚いエネルギー吸収層であるヘルメットに適用されるロックの実例を描写するが、上述の他の配置構成のように、この可動ロックは、他のヘルメットの構成に等しく適合され得ることを理解されたい。
【0070】
ある配置構成では、ヘルメットは、上述したもののいずれかなどの複数のロック20を有することができる。ヘルメットは、1つの配置構成の複数のロック20を有することができ、又は、上述の2つ以上の配置構成に従って構築された複数のロックを有することができる。
【0071】
いくつかの配置構成では、単一のロックが、第2の位置にあるとき、外側シェルに対する内側シェルの第1の方向への動きを制限することができる。ヘルメットは、第2のロックを含むことができ、第2のロックは、それ自身の第2の位置にあるとき、外側シェルに対する内側シェルの、第1の方向とは異なる第2の方向への動きを制限する。
【0072】
例えば、ヘルメットは、第2の位置において、着用者の頭部の前方から後方へ延在する軸の周りの、内側シェルに対する外側シェルの回転を制限する、1つ又は複数のロックと、第2の位置において、着用者の頭部の第1の側から第2の側へ延在する軸の周りの、内側シェルに対する外側シェルの回転を制限する、1つ又は複数のロックとを有することができる。
【0073】
ある配置構成では、ヘルメットは、境界面係合ロック60を備えるスイッチを含むことができる。境界面係合ロック60は、第2のモードにおいて、それが、内側シェル22の外面の一部を外側シェル21の内面の一部分にしっかりと固定するように構成され得る。内側シェル22及び外側シェル21の表面間のこの係合は、内側シェル22及び外側シェル21の表面のそれぞれの部分間の摺動を防止するように構成され得る。そしてこれは、外側シェル21に対する内側シェル22の摺動を制限することができる。
【0074】
図12は、境界面係合ロック60の配置構成を描写する。図12に描写された配置構成では、境界面係合ロック60は、内側シェル22に取り付けられた摩擦パッド61を含む。境界面係合ロック60は、第1のモードでは、摩擦パッド61が、外側シェル21の内面と接触しないか、又は、ヘルメットが設計されている衝撃が、ヘルメットにあった場合に、摩擦パッド61と外側シェル21の内面との間の摩擦力が、内側シェル22に対する外側シェル21の摺動を実質的に防止しないほどの小さい力で、外側シェル21の内面と接触するように配置される。第2のモードでは、摩擦パッド61は、摩擦パッド61と外側シェル21の内面との間に十分な摩擦力がもたらされ、内側シェル22に対する外側シェル21の摺動が、少なくともヘルメットの通常使用時に防止されるように外側シェル21の内面を押圧する。
【0075】
図12に描写された配置構成では、回転式アクチュエーター62が、摩擦パッド61の位置、及び/又は、摩擦パッド61と外側シェル21の内面との間の反力を調節するために設けられる。回転式アクチュエーター62は、スイッチが第1のモードで機能し、外側シェル21と内側シェル22との間の相対的な摺動を制限しない第1の位置と、相対的な摺動が制限される第2のモードとの間で回転され得る。
【0076】
回転式アクチュエーター62は、第1及び第2の位置間で使用者が回転式アクチュエーターを回転させることを可能にする、指穴(図12には図示せず)を含むことができる。代替え的又は追加的には、回転式アクチュエーター62は、使用者が、回転式アクチュエーター62を回すために使用することができる道具を受け入れるように構成され得る。回転式アクチュエーター61の回転運動を、摩擦パッド61を前進及び後退させる直線運動に変換するために、例えばねじ山を含む、任意の様々な構成のいずれかが使用され得る。
【0077】
図13は、図12に示される配置構成の変形形態を描写する。この配置構成では、摩擦パッド61は、押しボタン63によって駆動される。押しボタンの機構は、最初に押されたときに、摩擦パッド61を外側シェル21に向かって前進させて、境界面係合ロック60を第2のモードに設定し、内側シェル22に対する外側シェル21の摺動を制限するように構成され得る。押しボタンの機構は、2度目に押されたときに、摩擦パッド61を外側シェル21から後退させて、境界面係合ロックを第1のモードに設定するように更に構成され得る。
【0078】
上述のように、1つ又は複数の連結具が、ヘルメットの第1及び第2のシェル間に設けられ得、これは、衝撃がヘルメットにある場合に、2つのシェル間の摺動を許容するように構成される。そのような連結具は、大きな衝撃の場合には、2つのシェル間の摺動を許容するように構成され得るが、衝撃がないときには、シェル間の動きを最小化又は低減することができ、及び/又は、衝撃がないときには、2つのシェルが分離することを防止するように構成され得る。ある配置構成では、ヘルメットの外側シェルに対する内側シェルの摺動を可能にし、制限する、第1及び第2のモード間で切り替わるように構成されたスイッチは、そのような連結具を含むことができる。そのような連結具は、衝撃がないときには、内側シェル及び外側シェルが分離することを防止するように構成され得るが、ヘルメットへの衝撃がある場合には、連結具は、相対的な摺動を許容することができる。
【0079】
図14は、連結具71がスイッチ72と組み合わされた配置構成を描写する。示された配置構成では、連結具71は、細長い弾力性構成要素によって提供され、細長い弾力性構成要素は、第1の端部73でヘルメットの1つのシェルに連結され、第2の端部74でヘルメットのもう1つのシェルに連結される。2つのシェルの相対的な摺動中、弾力性構成要素がしなり、連結具71の第1の端部73と第2の端部74との間の分離間隔が変化することを許容し、そして、2つのシェルの相対的な摺動を許容する。
【0080】
図示されるように、連結具71と関連付けられたロック72が、連結具の1つの端部73で、ヘルメットのシェルのうちの1つに取り付けられるように配置され得る。ロック72は、それが取り付けられているシェルではないヘルメットシェル75と係合しない第1の位置と、ロック72が、それが取り付けられているシェルではない方のシェルと係合し、連結具71の第1の端部73と第2の端部74との間の動きを防止する、第2の位置との間で切り替えられ得るように更に構成される。従って、第2の位置では、ロック72は、ヘルメットの2つのシェルの相対的な摺動を防止する。図14に示された配置構成では、ロック72は、対向するシェル75の凹部76と係合する、回転可能に取り付けられたロック72として構成される。しかしながら、適切な変更により、上述のいずれかのロック配置構成が、連結具と組み合わされて使用され得ることを理解されたい。
【0081】
ある配置構成では、スイッチは、単に連結具71と共に設けられる、連結具と一体的にスイッチが形成されるように構成され得る。詳細には、スイッチは、第1のモードでは、妨害されずに連結具が機能し、第2のモードでは、連結具がヘルメットのシェルの相対的な摺動を許容するように機能することをスイッチが防止するように、構成され得る。
【0082】
そのような配置構成は、例えば、図15に描写されたような配置構成で提供され得、この配置構成では、連結具71は複数の細長い弾力性要素から形成され、細長い弾力性要素は、荷重下で変形し、第1のヘルメットシェル76に取り付けられた、連結具71の第1の部品77と、第2のシェル75に連結された1つ又は複数の部品78との間の動きを許容することができる。スイッチは、連結具71の第1の部品77と連結具78の第2の部品との間の空間を満たすことができる、1つ又は複数の取り外し可能なインサート79を備えることができる。
【0083】
1つ又は複数の取り外し可能なインサート79は、連結具を形成する弾力性要素よりも剛性があり得、連結具71の第1の部品77と第2の部品78との間の動きを防止する、即ち、弾力性要素が変形することを防止する。
【0084】
第1のモードでは、1つ又は複数のインサート部材79は、それらが連結具71と係合せず、従って、連結具の第1の端部77と第2の端部78との間の動きを防止しないように位置し得る。従って、ヘルメットシェル間の摺動は制限され得ない。
【0085】
第2のモードでは、1つ又は複数のインサート部材79は、第1の部品77及び第2の部品78が互いに対して動くことができないように、連結具71と係合し、ヘルメットの2つのシェル間の摺動を制限する。
【0086】
図15に描写される配置構成は、複数のインサート部材79を示しているように見えるが、これらは図の平面上で共に連結され得、使用者によって連結具に挿入され、そこから取り外され得る単一のインサート部材を提供することを理解されたい。第1のモードでは、1つ又は複数のインサート部材は、連結具の第1の部品77及び第2の部品78の相対的な動きを防止しない位置でヘルメット及び/又は連結具に保持され得ることも理解されたい。代替え的には、1つ又は複数のインサート部材79は、第1のモードでは、使用者が、1つ又は複数のインサート部材をヘルメットから完全に取り外すように構成され得る。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15