(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】ファンの効率および/もしくは動作性能またはファン配置を最適化する方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20230403BHJP
F04D 29/05 20060101ALI20230403BHJP
G05B 13/02 20060101ALI20230403BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
G06F30/10
F04D29/05
G05B13/02 J
G05B23/02 G
(21)【出願番号】P 2020541994
(86)(22)【出願日】2019-02-04
(86)【国際出願番号】 DE2019200008
(87)【国際公開番号】W WO2019149325
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】102018201708.5
(32)【優先日】2018-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510334790
【氏名又は名称】ジール・アベッグ エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンガー、 ビヨルン
【審査官】真木 健彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-048768(JP,A)
【文献】特開2015-185143(JP,A)
【文献】特開2017-078943(JP,A)
【文献】特開2011-243126(JP,A)
【文献】特開2011-059740(JP,A)
【文献】特開2017-191607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/10
F04D 29/05
G05B 13/02
G05B 23/02
G06F 30/27
G06F 30/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンを有するシステムの一部もしくはシステムにおけるファンの効率および/または動作性能および/または寿命を最適化する方法であって、
部品固有または機能固有の複数の詳細数値モデルから、部品固有または機能固有の複数の挙動モデルへのモデル縮約と、該モデル縮約に伴い発生データを縮約して縮約データとするデータ縮約(データ洗練)とを、少なくとも1つのアルゴリズムに基づいて実行し、
前記複数の挙動モデルの前記縮約データを、システムシミュレーション内で結合または組み合わせることで、入力変数と出力変数とを有するシステム挙動モデルを形成し、
枠組み条件に応じて前記システムを最適に制御するために、前記ファンの前記入力変数と前記入力変数に関連する出力変数とを、前記システム挙動モデルからオプティマイザに選択肢として提供する、ファンの効率および/または動作性能および/または寿命をリアルタイムで最適化する方法。
【請求項2】
前記詳細数値モデルが、熱モデルおよび/または磁気回路モデルおよび/またはブレード位置と流れとのモデルおよび/または環境モデルおよび/またはデジタルツインモデルを含み、
前記デジタルツインモデルが、1つ以上の前記ファンのデジタルツインモデルおよび/または環境を考慮したシステム全体のデジタルツインモデルであることを特徴とする、請求項1に記載されたファンの効率および/または動作性能および/または寿命を最適化する方法。
【請求項3】
前記複数の挙動モデルの前記縮約データが、複数の表または複数のデータ行列の形態で提供されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載されたファンの効率および/または動作性能および/または寿命を最適化する方法。
【請求項4】
前記システム挙動モデルのデータ( 前記ファンの入力変数と前記入力変数に関連する出力変数と)が、表またはデータ行列の形態で提供されることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載されたファンの効率および/または動作性能および/または寿命を最適化する方法。
【請求項5】
前記オプティマイザの前記枠組み条件が、前記ファンの周囲条件であり、該周囲条件に応じて、可能な限り最良のシステム出力変数(たとえば、表の形態で提供された前記挙動モデルのデータから選択されたシステム効率)を、リアルタイムで、前記表または前記データ行列から選択し、前記選択されたシステム出力変数に関連する前記入力変数を、前記表の行から読み取り、該読み取られた前記入力変数を用いて、前記制御を実行することを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載されたファンの効率および/または動作性能および/または寿命を最適化する方法。
【請求項6】
動作点に応じて最適なシステム効率が得られるように、前記ブレード位置の角度を制御し、前記オプティマイザが、システム挙動表から前記最適なシステム効率を選択し、前記最適なシステム効率に対応する前記入力変数を、前記制御に供給することを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載されたファンの効率および/または動作性能および/または寿命を最適化する方法。
【請求項7】
前記ファンを有するシステムの一部もしくはシステムに含まれるデータセンターの温度に応じて最適なシステム効率が得られるように、流速と、該流速に応じて要求される、ファン配置内の個々の前記ファンの負荷分散(たとえば、データセンターのファンの前記負荷分散)とが、制御され、
前記オプティマイザが、前記システム挙動表から前記最適なシステム効率を選択し、前記最適なシステム効率に対応する前記入力変数を、前記制御に供給することを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載されたファンの効率および/または動作性能および/または寿命を最適化する方法。
【請求項8】
最適化された前記制御が、Cコードに変換され、それにより、リアルタイムでの制御が、標準的なマイクロプロセッサ上で実行可能であることを特徴とする、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載されたファンの効率および/または動作性能および/または寿命を最適化する方法。
【請求項9】
前記詳細数値モデルを、前記ファンのデジタルイメージ(デジタルツイン)と少なくとも1つの動作パラメータに固有のアルゴリズムとを用いる前記ファンの動作状態の判断に基づいて取得し、前記判断が、数学的な計算モデルと既知のデータとを用いて前記ファンの特性をイメージ化することにより前記ファンのデジタルイメージを作成するステップと、
既知の関係性や特性曲線などを考慮して前記動作パラメータに固有のアルゴリズムを作成するステップと、
仮想センサーを用いて前記デジタルイメージを介して前記ファンの部品の状態を計算するステップと、
前記部品の状態を、前記部品の状態から前記ファンの動作パラメータを計算する前記アルゴリズムに転送するステップと、を含む、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載されたファンの効率および/または動作性能および/または寿命を最適化する方法。
【請求項10】
前記デジタルイメージが、数学的モデルおよび/もしくは物理的モデルおよび/もしくは経験的モデルおよび/もしくは統計的モデルまたはそれらを組み合わせたモデルとして、熱計算モデルおよび/または機械計算モデルおよび/または磁気回路計算モデルに基づいており、
前記計算モデルそれぞれが、前記詳細数値モデルそれぞれによって前記挙動モデルへと変換されることを特徴とする、請求項9に記載されたファンの効率および/または動作性能および/または寿命を最適化する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンの効率および/もしくは動作性能またはファン配置を最適化する方法に関する。
究極的には、最適化するファンの全ての(例えば寿命などを含む)パラメータが含まれる。
他のファン、環境条件、および/または、ファンの周囲にいたり働いていたりする人々との相互作用についても、役割を担っている。
いわゆるマルチターゲット最適化も含んでいる。
【0002】
この点において、最適化するファンや外部装置の数が増えるほど、より効率が高められることに留意されたい。
一例として、複数のファンを配置した場合における負荷分散が挙げられる。
【0003】
本発明は、ファンの全ての動作場所を考慮して、実現可能な最高の効率と最高の動作性能を確保するという基本概念に基づいている。
相反する動作パラメータの存在のために、これを達成することは困難である。
【背景技術】
【0004】
ファンの実用上、ボールベアリングとボールベアリンググリースは、ファンの寿命にとって重要なパラメータであることが知られている。
ボールベアリングとボールベアリンググリースの寿命は、モーターの内部または表面の動作温度と、ボールベアリングに作用する機械的な力とに大きく依存する。
温度センサーも力センサーも、ベアリングのすぐ近傍に配置できないため、ベアリング温度もベアリングに作用するベアリング力も、測定することができない。
したがって、これらのパラメータは、間接的に測定するか、または、計算によって判断する必要がある。
【0005】
電気機器のベアリングの状態を判断するためのシステムおよび方法は、特許文献1から知られている。
実際のセンサーユニットが、シミュレーションユニットに送信する測定値を判断する。
ベアリング電流値またはベアリング電流に依存する値のいずれかの結果値が、シミュレーションユニットによって判断される。
この結果値は、さらなる計算のために別のユニットに送信される。
この既知のシステムや方法は、複数のセンサーが必要であるために複雑であり、充分な設置スペースを確保できないため、ファン内で使用することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許出願公開第102010002294号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、実際のファンのデジタルイメージを作成することに基づいている。
すなわち、数学的な計算モデルと既知のデータ(場合によっては、実際の測定データ)とを用いて、ファンの特性を表現する。
実際の測定データは、動作中の個々のモーターにおける実際の測定データ(場合によっては、その履歴)とすることができる。
さらに、既知の関係性や特性などを考慮して、少なくとも1つの動作パラメータに固有のアルゴリズムが作成され、以降の計算に用いられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ファンの部品の状態が、仮想センサーを用いて、デジタルイメージを介して判断または計算される。
部品の状態は、動作固有のアルゴリズムまたは動作パラメータに固有のアルゴリズムまたは製品固有のアルゴリズムに供給される。
アルゴリズムは、部品の状態からファンに固有の動作パラメータを判断または計算し、ファンの動作に関係する予測、たとえば、ファンの寿命予測を提供する。
判断される部品の状態と実際の測定データとを組み合わせて使用可能である。
【0009】
ここで、2つの異なるソフトウェア要素、すなわち、デジタルツインに関する第1のソフトウェア要素と、「知的」アルゴリズムと呼ぶ動作パラメータに固有のアルゴリズムに関する第2のソフトウェア要素とが用いられる。
【0010】
本発明のファンまたはファンシステムにおいて、デジタルツインとは、実際の個々の対象物のデジタルイメージである。
デジタルツインは、計算モデルを用いて、場合によっては、ファンの既知のデータを用いて、ファンの特性を表現している。
デジタルツインの役割は、ファンの部品の部品状態を、仮想センサーを用いて、それぞれの動作状態の関数として計算する。
このような計算に基づいて判断される部品の状態が、動作パラメータに固有のアルゴリズムに送信され、このアルゴリズムは、デジタルツインの動作データから、ファンの動作パラメータや動作状態、例えば、ベアリングの寿命やベアリンググリースの寿命を判断、計算する。
その結果に基づいて、状況に適した制御調整が可能である。
動作パラメータと動作状態は、それらが計算可能な変数である限り、同等の関係である。
【0011】
デジタルツインと動作パラメータに固有のアルゴリズムとの上述した組み合わせは、ファンのモーターと関連しているマイクロプロセッサ上でデジタルツインアルゴリズムの観点で実行されてもよく、固定部品としてファンと関連していてもよい。
【0012】
デジタルツインアルゴリズムは、ファンを表現するデジタルツインと、動作パラメータに固有になるように設計されている一種の知的アルゴリズムとの組み合わせである。
【0013】
適切に設計されたファンに対して、(たとえば、ベアリングやベアリンググリースの消耗が原因の)ファン故障を回避することを目的とした、メンテナンスの予測が可能になる。
ファンの寿命を可能な限り長くできるよう、システムパラメータを状況に応じて調整可能になる。
【0014】
ファンのデジタルイメージと動作パラメータに固有のアルゴリズムとを用いてメンテナンスを予測することによって、ファンの部品の寿命を可能な限り完全に使い切り、同時にファンの故障を回避することを目標としている。
ファンの寿命は、計算された部品の状態と、そこから得られる動作パラメータとに基づいて計算される。
【0015】
デジタルツインは、物理的、数学的、統計的、経験的またはそれらを組み合わせたモデルを用いて、熱的および機械的な部品の状態を計算する。
いずれの場合においても、数学的モデルだけでなく、物理モデルと非物理モデルの両方が含まれている。
動作パラメータに固有のアルゴリズム(知的アルゴリズム)では、任意の動作パラメータを判断するために(たとえば、ファンの故障を予測するために)、デジタルツインが判断する部品の状態が必要である。
ファンの寿命は、主に、ボールベアリングとボールベアリンググリースとに依存するため、ボールベアリンググリースとボールベアリングに焦点を当てた動作パラメータの計算が、非常に重要な役割を果たす。
【0016】
ベアリンググリースの寿命は、動作温度に大きく依存することが知られている。
全使用期間にわたって動作温度が高いほど、ベアリンググリースの消費が速くなる。
したがって、ベアリンググリースの寿命を判断するには、保管温度を判断することが重要である。
【0017】
ベアリングの温度を測定するには、ベアリングのすぐ近傍に温度センサーを配置する必要がある。
ファンまたはモーターの幾何学的および機能的条件により、これは、不可能である。
したがって、本発明の方法では、ベアリング温度などの部品の状態がデジタルツインと動作パラメータに固有のアルゴリズムとを介して計算される。
【0018】
この計算は、数学的モデルに基づいており、数学的モデルは、縮約結合された熱磁気計算モデルに基づいている。
デジタルツインと動作パラメータに固有のアルゴリズムとを組み合わせることで、ファンモーターに関連する、熱源、ヒートシンクおよびシステム全体の熱状態が計算される。
したがって、ベアリンググリースの温度が、ファンやモーターの動作状態の関数としてデジタルツインの仮想センサーを介して判断され、動作状態として動作パラメータに固有のアルゴリズムに供給される。
【0019】
仮想センサーを含むデジタルツインと動作パラメータに固有のアルゴリズムとの両方が、既存のマイクロプロセッサ上で、マシンコード(Cコード)で実行されてもよい。
これは、特定の知的マシンがファンに組み込まれることを意味している。
【0020】
前述の説明では、少なくとも1つの動作パラメータに固有のアルゴリズムと、ファンのデジタルイメージ(デジタルツイン)とを用いてファンの動作状態を判断する方法について説明した。
このことは、後述する本発明の基本であり、後述する本発明は、デジタルツインアルゴリズムに基づいて、仮想センサーを用いて判断する動作状態を計算するという役割に基づいている。
ワークフローが定義され、ファンに関するデジタルツインアルゴリズムを実行する。
特に、動作状態を判断するために、実際のセンサーを用いなくてもよいことが重要である。
【0021】
本発明によれば、上述の目的は、請求項1の特徴を有する方法、すなわち、ファンの効率および/または動作性能を最適化する方法であって、部品固有または機能固有の複数の詳細数値モデルから、部品固有または機能固有の複数の挙動モデルへのモデル縮約とデータ縮約(データ洗練)とを、少なくとも1つのアルゴリズムに基づいて実行し、前記複数の挙動モデルの前記縮約データを、システムシミュレーション内で結合または組み合わせることで、入力変数と出力変数とを有するシステム挙動モデルを形成し、枠組み条件に応じて前記システムを最適に制御するために、前記ファンの前記入力変数と前記入力変数に関連する出力変数とを、前記システム挙動モデルからオプティマイザに選択肢として提供する、ファンの効率および/または動作性能および/または寿命を最適化する方法によって、達成される。
【0022】
本発明は、最初に説明したツインアルゴリズムを洗練したものである、「知的」ファンに関連するデジタルツインアルゴリズムに関する。
【0023】
さらに、デジタルツインアルゴリズムを洗練すると、ファンまたはファンシステムのシステムパラメータを、状況に適して独立に調整するものと理解され、全ての動作場所を考慮して、実現可能な最高の効率と最高の動作性能とを確保する。
【0024】
本発明によれば、最初に、例えば、熱モデル、磁気回路モデル、または、ブレード位置と流れもしくは流れ条件とに関するモデルについての詳細数値モデルが作成される。
詳細モデルは、ファン環境(たとえば、システム全体という意味でのデータセンター)に関する上述の導入での議論に対応するデジタルツインであってもよい。
詳細モデルは、ファン配置のデジタルツインにも関連可能である。
【0025】
例えば、凝縮器のファン配置に関する詳細モデルも生成可能である。
ファンは、オプティマイザによって個別に調整される。
オプティマイザは、システムの挙動モデルにアクセスして、可能な限り最高の効率を実現し、補完的な凝縮器への圧力または流れを均一にする。
さらなる詳細モデルを考えることも可能である。
【0026】
次のステップでは、詳細モデルの縮約が、モデル縮約の一部として行われ、すなわち、挙動モデルと呼ばれるものになる。
これにより、発生データが大幅に縮約される。
【0027】
次に、システムシミュレーションが、縮約データを有する挙動モデル同士を結合し、結合された挙動モデルを用いて挙動研究を行う。
【0028】
システム全体に対して、均一に分散された入力変数の組み合わせを用いて、システム空間内でシミュレーションを実施する。
結果は、入力変数の組み合わせとそれに関連するシステム出力変数とを有する表として出力される。
この表は、システムの挙動モデル、つまり、ファンの入力変数とそれに関連する出力変数とを反映している。
これらの変数に基づいて最適化を行うことが可能である。
【0029】
動作中、オプティマイザは、環境条件に応じて、可能な限り最良のシステム出力変数(挙動モデルの表内のシステム効率など)をリアルタイムで検索する。
可能な限り最良のシステム出力変数が見つかるとすぐに、関連する入力変数を表から読み取ることができる。
システムは、これらの入力変数を用いて、好ましくは、リアルタイムで、最良の方法で調整される。
【0030】
上記のように、オプティマイザが、システム挙動表から最適なシステム効率を選択し、必要な入力変数を、制御システムに供給することが重要である。
したがって、継続的に最適化を行うことが可能である。
【0031】
本発明は、様々なオプションがある。
この目的のために、請求項1に従属する請求項を参照し、図面を参照して、本発明の実施形態を参照されたい。
図面の実施形態に関連して、本発明の設計および洗練も説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】ベアリンググリースの寿命計算のシーケンスを示す図。
【
図3】温度曲線に対するこのような重み係数の曲線を示す図。
【
図4】本発明による方法の個々のステップを示す図。
【
図5】本発明による方法の個々のステップを示す図。
【
図8】仮想センサーを用いる縮約熱モデルのデジタルツインを示す図。
【
図9】ファンの効率および/もしくは動作性能またはファン配置を最適化する方法のシーケンスを示す図。
【
図10】ファンシステムモデルおよび冷却回路モデルへの入力変数の入力を示す図。
【
図11】挙動表への冷却システムモデル全体の転送を示す図。
【
図12】オプティマイザが最良の入力パラメータの組み合わせを判断する方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1から
図13は、本発明による方法ステップを示し、本発明の例として
図4および
図5に基づいて説明する。
【0034】
図1から
図3は、本発明を理解するために用いられ、知的ファンの基礎としてのデジタルツインおよびデジタルツインアルゴリズムに関連している。
図1は、デジタルツインと少なくとも1つの動作パラメータに固有のアルゴリズムとの組み合わせを示している。
この組み合わせを、以下では、デジタルツインアルゴリズムと呼ぶ。
これについて、ベアリンググリースやベアリングの寿命の例を用いて説明可能である。
【0035】
すでに述べたように、ベアリンググリースとベアリングの寿命は、モーターの動作温度と速度に依存する。
ベアリングのすぐ近傍に温度センサーを配置できないため、デジタルツインアルゴリズムを用いる本発明によれば、モデルを用いてベアリング温度を計算する必要がある。
デジタルツインアルゴリズムとは、デジタルツインと動作パラメータに固有のアルゴリズム(知的アルゴリズム)との組み合わせである。
【0036】
デジタルツインは、磁気計算モデルと機械計算モデルとの縮約された組み合わせに基づいている数学的モデルにすぎない。
このデジタルツインは、モーターに影響を与えるシステム全体の熱的および機械的状態を計算する。
そして、デジタルツインは、デジタルツインに関連付けられている仮想センサーを介して、モーターの動作状態に応じてベアリンググリースの温度を判断可能である。
【0037】
知的アルゴリズムでは、データをさらに処理する(たとえば、ファンの故障を予測する)ために、部品の状態が必要である。
モーターの故障は、故障特性曲線に基づいて計算可能であるか、または、少なくとも推定可能である。
デジタルツインアルゴリズムに関連する全てのソフトウェアは、モーターのマイクロプロセッサ上でマシンコード(Cコード)で実行されるため、追加の電子機器は必要ない。
【0038】
図2は、ファンモーターのベアリングの、ベアリンググリース寿命の計算シーケンスを示している。
実際のファンのデジタルイメージを作成する範囲では、詳細数値モデル、具体的には熱モデル、磁気回路モデルなどが必要である。
さらに、グリースの寿命を計算するためのアルゴリズムが作成される。
【0039】
その後、詳細モデルは、挙動モデルに縮約され、管理可能なデータ量になる。
【0040】
そして、挙動モデルと、ベアリンググリースの寿命を計算するアルゴリズムとが、システムシミュレーション内で結合される。
つまり、デジタルツインと動作パラメータに固有のアルゴリズムとが組み合わせられ、この場合は、ベアリンググリースの寿命を計算する。
Cコードが、システムシミュレーションから生成され、モーターのマイクロプロセッサ上で直接実行される。
【0041】
前述のように、計算時間を短縮するには、詳細モデルから挙動モデルへのモデル縮約が必要である。
この結果、デジタルツインアルゴリズムをモーターのマイクロプロセッサ上で実行可能になる。
熱モデルの縮約には、さまざまな方法(クリロフ部分空間法など)が使用可能である。
詳細モデルのデータが、モデルの次数を減らすことで縮約される。
【0042】
詳細磁気モデルは、アルゴリズムまたは表によって縮約可能である。
事前に計算された結果が、特定のグループ毎に表に定義されるため、複雑な計算を迅速な値検索に置き換えることができる。
このように縮約されたモデルを用いて、ベアリンググリースの温度とベアリングの温度とを計算可能である。
計算された値は、一方では、ベアリンググリースの寿命を計算するために、他方では、ベアリングの寿命を計算するために、動作パラメータに固有のアルゴリズム(ここでは、ベアリンググリースの寿命を計算するアルゴリズム)に使用される。
【0043】
動作温度に応じて、ベアリングまたはベアリンググリースの消費寿命を指数関数的に重み付けすることも可能である。
【0044】
図3は、温度曲線に対するこのような重み係数の曲線を示している。
ベアリンググリースの寿命の計算は、連続動作、ベアリングの種類、粘度、速度、グリース温度、および、動作時間または寿命などのパラメータに基づいている。
動作時間が4分の場合、計算例では、消費寿命が15分となる。
【0045】
デジタルツインの縮約モデルとベアリンググリースの寿命に関する動作パラメータに固有のアルゴリズムとが、システムシミュレーションに統合され、互いにリンクされる。
システムシミュレーションは、たとえば、MATLABプログラムで作成可能である。
MATLABコードジェネレータを使用すると、システムシミュレーションをCコードに変換して、モーターマイクロプロセッサ上で実行可能になる。
【0046】
図4および
図5は、本発明による方法の個々のステップを示し、
図4は、ブレード角度の設定に関連しており、
図5は、データセンターのファンの負荷分散に関連している。
詳細モデルから、縮約モデル、システムシミュレーションを経て、挙動モデルを作成または提供するまでの方法ステップは、どちらの場合も同じである。
挙動モデルを基礎として用いて、オプティマイザが、システム挙動表から最適なシステム効率を検索し、対応する入力変数をコントローラに転送する。
制御は、リアルタイムで行われる。
プロシージャとデータは、Cコードで生成されるため、標準プロセッサ上で最適化可能である。
【0047】
図4によれば、ファンブレードのブレード設定角度は、動作点に応じて最適なシステム効率が得られるように制御される。
適切なアルゴリズムに基づいて、縮約モデルが、詳細モデルから導出される。
これにより、複数の詳細モデルに基づいて、システムシミュレーション内で挙動モデルが生成されたり、挙動研究が実施されたりする。
オプティマイザが、システム挙動表から最適なシステム効率を選択し、最適化を実現可能な対応する入力変数を、制御メカニズムに転送する。
システム全体を、マイクロプロセッサ上でリアルタイムで制御する。
つまり、最適化に用いられる挙動モデルとアルゴリズムとに基づいて、制御する。
プログラミングのためのデータとアルゴリズムとが、Cコードで提供される。
【0048】
図5は、複数のファンを有するファン配置での負荷分散を示す。
データセンター内の全体的な温度に応じて最適なシステム効率が得られるように、流速と、流速に応じて個々のファンに要求される負荷分散とを制御する。
ここで、オプティマイザは、システム挙動表から最適なシステム効率を選択し、対応する入力変数を制御メカニズムに転送する。
これにより、システム全体をマイクロプロセッサ上でリアルタイムに制御することができる。
挙動モデルのデータは、ここで最適化に使用されるアルゴリズムにも送られる。
この場合、プログラムは、従来のプロセッサ上でCコードで実行される。
【0049】
上述のデータ縮約に基づくと、本発明の方法によって、標準的なマイクロプロセッサ上で動作可能なコンパクトなCコードを作成可能になる。
ある種の(ビッグデータからスマートデータへの)洗練データが、マイクロプロセッサ上で実行され、これが計算結果になる。
圧縮され、洗練されたデータのみが、さらに処理され、または、たとえば、クラウドに送信される。
これにより、クラウドへの接続のストリーミングボリュームは、大幅に減少する。
【0050】
さらに、デジタルツインと動作パラメータに固有のアルゴリズムとに基づいて判断された動作パラメータは、一方で、ファンのメンテナンスおよびメンテナンスの予測に使用可能であり、他方で、ファンの設計と動作の最適化に使用可能である。
本発明によると、デジタルツインアルゴリズムは、システムパラメータを状況に適して独立に洗練することで、全ての動作場所を考慮して、実現可能な最高の効率と最高の動作性能とを確保する。
【0051】
【0052】
デジタルイメージ、つまり、ファンのデジタルツインを使用することが重要である。
デジタルツインは、データ処理によって得られる。
具体的には、既知の入力変数またはセンサー測定値を、計算値および計算/モデルと組み合わせることで得られる。
ファンの所定の場所での部品の温度、流れ、損失などは、デジタルツインに基づいて判断される。
実際の値、たとえば、特定の部品の温度が、デジタルツインに基づいて仮想的に判断される。
つまり、ファンの特定の場所に、経済的または構造的に合理的なセンサーを用いて測定を行う選択肢が無い場合に、デジタルツインに基づいて仮想的に判断する。
【0053】
動作パラメータに固有のアルゴリズムは、さらに重要である。
デジタルツインによって提供される結果またはデータに基づいて、たとえば、ベアリングの温度、パラメータ、たとえば、ファンまたはファンベアリングの故障の確率や消費寿命が判断される。
これらのパラメータは、ファンの現在の動作パラメータとその履歴とに依存している。
つまり、ファンが動作している/動作した動作場所と環境とに依存している。
【0054】
図6および
図7は、上述の記載を考慮して、ファンのデジタルイメージを用いてファンの動作状態を判断する本発明による方法を、特定の例に基づいて示している。
【0055】
図6の左の列は、測定または計算された入力変数であり、単位は、矢印の上に記載されている。
これらの入力変数は、既存の標準センサーを介して測定されるか、または、既知の値である。
【0056】
熱源とヒートシンクとが、これらの入力変数から計算される。
この計算は、銅損、鉄損、電子部品での熱損失などの熱源と、モーター冷却(放熱板、気流、周囲温度)などのヒートシンクとを考慮したシミュレーションベースのモデルに基づいている。
この計算により、仮想センサーを用いる縮約熱モデル用の入力変数が生成される。
この計算は全て、熱モデルの意味でのデジタルツインに対応する。
【0057】
部品の温度は、仮想センサーを用いて、縮約熱モデルから計算される。
熱モデルは、ファンの物理特性をイメージ化し、仮想センサーに基づいて、ベアリング、巻線、磁石、および、さまざまな電子部品の温度を必要に応じて計算する。
【0058】
図6の続きとして、
図7は、縮約熱モデルから計算された出力変数が、場合によっては追加のパラメータとともに、経年影響を計算するための入力変数として使用されることを示している。
基礎となる経年モデルは、履歴データに基づいており、特性曲線として保存可能である。
したがって、経年によって制限される残存寿命が、実際のファン履歴と現在の動作状況とに基づいて、場所ごとに個別に計算または修正可能である。
【0059】
経年影響を計算するそれぞれのモデルは、寿命を日または時間で計算し、それを情報としてのみ使用可能である。
次に、関連する情報項目を用いて、さらなる予測、つまり、個々の部品またはファン全体の残存寿命を予測可能である。
この予測を、残存寿命の知的最適化に適用することができる。
速度を下げたり、複数のファンに負荷を知的に分散したりするなど、残存寿命を延ばすための手法を実施することが可能になる。
この手法は、操作変数を用いることによって実行可能である。
【0060】
図8は、仮想センサーを用いる縮約熱モデルのデジタルツインを再度示し、モーターを有するファンについて示されている。
前述のように、熱モデルは、ファンの物理特性を表現し、仮想センサーに基づいてさまざまな温度を計算する。
仮想センサーは、さまざまな目的、目標、用途に使用される。
たとえば、次のようなキーワードである。
【0061】
監視用:監視用に、仮想センサーを用いて動作パラメータを判断する。
これらは、警告メッセージ、状態LED、可読エラーコードでのコメント、クラウドまたはアプリケーションでの画像、ユーザーインターフェースでの表示などでとすることができる。
【0062】
メンテナンスの予測用:ボールベアリング、巻線、電子部品、磁石などの多数のサブシステムで構成されているファンの経年影響を判断し、残存寿命を予測する方法である。
たとえば、メンテナンス間隔の計画を立てたり、メンテナンスの前にできる限り長く使用したり(つまり、早すぎるメンテナンスをしない)、メンテナンスの予定を自動スケジューリングしたり、メンテナンスの必要性を通知したり、交換部品の自動注文をしたりする。
【0063】
最適化用:製品性能に関連する動作状態、つまり、効率、部品温度、速度、出力、体積流量、体積、振動などを判断する方法である。
【0064】
知的ファンの作成用:特定の動作状態に対応し、挙動を改善するか、または、特定の目標を達成する。
【0065】
- 最適効率を得るために、動作場所を変更/制御パラメータを変更する。
- 動作場所を変更し、可能な限り寿命を長くする。
- 故障の可能性が非常に高い場合、速度を下げる。
- 夜間に可能な限り静かに使用するために、昼夜周期で動作場所を変更する。
- 追加の装置または顧客の装置に(たとえばヒートポンプの制御や追加冷却に使用するための温度出力というような)操作変数を出力する。
- システムの重大な状態(共振、温度超過など)を意図的に回避する。
【0066】
本発明をより理解するために、一方では、方法ステップのシーケンスが、他方では、それらの内容が、重要である。
シーケンスのそれぞれのステップは、基礎となるアルゴリズムの開発ワークフローに由来していてもよい。
このシーケンスは、
図9に示され、最後のステップで、この方法を洗練可能である。
【0067】
以下、詳細モデルの作成について、基礎から説明する。
【0068】
モデルは、現実のイメージまたは近似であり、ここでは、近似の意味で定義する。
モデルは、対象イメージ内の関心のある部分に常に限定されている。
さらに、モデルは、基本的には完全なものではなく、これは、必要な入力変数をより簡単に用いるためにモデルが縮約されているためであったり、モデル作成時に個々の要素の物理的な挙動が不明であったりするためである。
後の使用と目的に応じて、異なる種類のモデリングが必要である。
たとえば、検討する領域の違い、結果に必要な精度の違い、計算の速度の違いなどである。
非常に多種のモデルがあり、技術分野では、モデルは、通常、数学的な表現(たとえば、代数方程式または不等式、常微分方程式または偏微分方程式のシステム、状態空間表現、表、グラフ)にリンクされている。
【0069】
FEシミュレーション(有限要素シミュレーション)を用いる仮想製品開発は、現在の製品開発では不可欠である。
古典的には、物理ドメイン(強度、熱回路、磁気回路など)が、非常に大きなサイズ(100ギガバイト規模)で計算集約型モデルにイメージ化され、モデル内の数百万の点(ノード)で結果が判断される。
これは、詳細モデルの変形例である。
これらの詳細モデルの作成の大まかなシーケンスは、次のように書き下ろすことができる。
【0070】
1.CADの分野などからの3D幾何形状をインポートする。
2.境界条件、つまり、固定クランプ、材料定義、接触条件(接着箇所、滑り接続、断熱)を割り当てる。
3.ネットワーキングする(ジオメトリを、互いにリンクされた数百万の小さな要素に分割する)。
4.荷重(力)、熱源/ヒートシンク、磁場を適用する。
5.個々の部品ごとに微分方程式を自動で解き、それらを合わせてモデル全体の1つの大きな結果を形成する。
6.結果を評価する。
【0071】
ファンまたはファンを有するシステム全体に関して、仮想センサーを用いる詳細モデルの作成は、以下のようになる。
【0072】
ファンやシステム全体の物理特性を表現できるようにするために、詳細モデルを作成する。
いわゆる、仮想センサーは、詳細モデル内に定義されている計算場所である。
この仮想センサーは、ファンの詳細熱モデルの巻線温度など、部品の状態を計算する。
詳細モデルは、計算時間、必要な計算能力、および、メモリ要件の観点で、複雑なシミュレーションモデルである。
このような詳細モデル、たとえば、熱モデル、磁気回路モデル、電子モデル、制御モデル、力モデル、または、振動モデルは、非線形動作状態の計算に用いられる。
ドメイン間の相互作用が、システムの物理的影響に含まれる。
そのため、個々のモデルは、システム全体で結合されていると考える。
システム全体で詳細モデルを使用した計算は、相互作用をリアルタイムで評価できないため、計算時間の観点から実用的ではない。
したがって、モデル縮約が必要である。
縮約モデルは、次のように生成可能である。
【0073】
モデル縮約は、情報を縮約するために、たとえば、メモリ要件や計算速度を考慮してモデルを最適化するために、既存のモデルを非常に大まかに表現している。
ここで、具体的な用途に応じて、次のような多くの変形例がある。
【0074】
・多項式関数などの単純な数学関数を近似し、係数のみを保存する。
・さまざまな入力変数の表を保存し、その後、これらの離散値を使用するか、または値同士の間を補間する。
・以前の値から予測する統計モデルを近似する。
・例えば、T>200℃の場合、ファンが故障しているとするようなグラフまたは論理ゲートを作成する。
【0075】
縮約モデルの生成-例a)
【0076】
縮約モデルを、熱のFEモデルから生成する。
ここでは、熱入力と熱出力とによって、モデルの全ての点の温度を表現している。
この例では、縮約モデルは、1つの熱入力、1つの熱出力、点Aで判断される1つの温度のみに単純化されており、それぞれの場合において、「高」と「低」の値のみに単純化されている。
この目的のために、パラメータ検討が行われ、それによって、このいわゆる「ルックアップテーブル」を判断する。
結果の使用方法には、いくつかの選択肢がある。
【0077】
・表を直接、個別に使用する。例:4Wの熱入力と1Wの熱出力に対して点Aの温度を予測する場合、40℃の値を直接採用する。
・表を用いて、値の間を線形補間する。例:5Wの熱入力と1Wの熱出力に対して点Aの温度を予測する場合、線形補間によって60℃の値と判断する。
・表を用いて、回帰分析によって温度予測関数を判断する。回帰先の関数の例として、多項式関数、線形関数、指数関数、統計関数、微分方程式などが挙げられる。その後、この関数を用いて温度を判断する。
【0078】
縮約モデルの生成-例b)
【0079】
縮約モデルを、熱のFEモデルから生成する。
ここでは、熱入力と熱出力とによって、モデルの全ての点の温度を表現している。
その後、数学的推定、計算、および変換(たとえば、LTIシステムまたはクリロフ部分空間法)を用いて、コンパクトな状態空間モデルを近似することができる。
このモデルは、2つの必須の微分方程式または積分方程式と、システム全体を表す4つの行列(たとえば、スカラー数値からなる200x200の行列)で構成される。
ただし、これらは、もはや、数百万のノードの温度を表すのではなく、選択されたいくつかの場所の温度のみを表している。
さらに、近似することで、状態空間モデルの大きさに応じて結果に偏差が生じる。
基本的に、モデルと行列とが大きいほど、偏差は、小さくなる。
【0080】
状態空間モデルは、Matlabなどの多くのコンピューター代数プログラムで、または、標準機能のプログラミング言語で、プロシージャ、モジュール、またはオブジェクトとして利用可能である。
このことは、行列をインポートするだけでこのようなモデルを計算可能であることを意味している。
入力変数は、たとえば、システムに入力される熱量と対流によるヒートシンクとがあり、出力変数は、たとえば、特定の部品の温度(たとえば、3つの異なる部品の温度)である。
【0081】
縮約モデルの生成-例c)
【0082】
この例では、実験結果から縮約モデルを生成する。
ここでは、例a)と同様に、測定結果から表が作成され、その後、同等の手順(離散使用、線形補間、または、数学関数による回帰)が用いられる。
【0083】
物理ドメインまたはさまざまなモデルを結合することで、さらに重要性を有してもよい。
【0084】
伝統的に、仮想的な製品開発では、複数のドメインが個別に検討される。
これは、複数のドメインを結合して検討することは、非常に計算が集約されてメモリを集約し、実用的でないためである。
モデルを縮約することで、さまざまなドメインのモデルを結合可能になる。
たとえば、高性能計算クラスタでの計算時間が数日から数週間かかる詳細磁気回路モデルを、熱モデルと結合することは有用ではないが、詳細モデルを縮約することで、必要な計算能力とメモリ要件が低減され、経済的な面でモデルの結合が可能になる。
多くの場合、実際の挙動をできるだけ正確に表現するためには、このようにする必要がある。
【0085】
物理ドメインやさまざまなモデルの結合-例
【0086】
・巻線抵抗は、銅の温度にほぼ直線的に依存する。巻線抵抗に応じて、巻線の電力損失はほぼ直線的に変化する。熱的挙動は、電力損失に応じて変化する。たとえば、巻線とベアリングの温度は強い非線形性を有し、これにより巻線の抵抗に影響を与える。モデルの結果の要件に応じて、結合が必要である。
・必要トルクとファン速度とは、系の抵抗と、たとえば搬送媒体の圧力差と温度とに大きく依存する。磁気回路の挙動、つまり巻線を流れる電流、磁場、速度などは、負荷トルクに応じて変化する。これに応じて、消費電力、損失、達成可能速度も変化する。ここでも、顧客用途の場合、用途に応じて、ファンの挙動と設置状況とを結合することが考えられる。
【0087】
技術の実施形態の詳細-例a)
【0088】
・ファンの熱FEモデルを作成する。→多項式関数に加えて1,000,000の要素を有する計算集約型でありメモリ集約型であるFEモデルを作成する。熱源およびヒートシンクは、入力電流と速度との関数として、多項式関数で表現される。
・電子部品の温度を入力電流と速度との関数として表現する統計的手法により、縮約熱モデルを作成する。→入力電流と速度との関数として、温度を表現する多項式関数、すなわち、仮想温度センサーを作成する。
・温度に対する電子部品の寿命についてのデータシートから、特性曲線を用意する。→仮想温度センサーから故障の確率を計算するパラメータに固有のアルゴリズムを動作させる。
・メンテナンスの予測、監視または動作場所の最適化に使用する。→知的アルゴリズム。
【0089】
技術の実施形態の詳細-例b)
【0090】
・統合電子機器または制御によって、現在のポイントとモーター速度とを検出する。これにより、電磁動作点が導出される。
・この動作点に基づいて、モーターおよび電子部品での熱損失が、ルックアップテーブルまたは多項式関数から導出される。
・熱モデルが損失値を処理し、ボールベアリングや半導体部品などの重要なシステム部品の温度を判断する。
・同時に、部品の振動が、実際のセンサーを介して記録される。局部的な振動が、挙動モデルによって仮想的にシステム全体に投影される。これにより、たとえば、振動によるベアリング荷重を推定する。
・動作パラメータに固有のアルゴリズムを用いて、判断された温度と振動値とを、部品寿命とファン寿命の評価に変換する。
・これにより、メンテナンスの予測などのさらなる手法が実行可能になる。
・同時に、損失がわかっているので、パイロット制御角の変化などの制御工学調整によって、動作場所とシステム効率を最適化できる。
【0091】
詳細モデルのモデル縮約に関する上述の説明は、ファンおよび/またはファンシステムの用途の範囲で適用され、次数の縮約は、クリロフ部分空間法を用いて実行可能である。
目標は、計算時間、必要な計算能力、およびメモリ要件を最小限に抑え、リアルタイムでの計算を可能にすることである。
仮想センサーが、同様に用いられ、出力変数を供給する。
【0092】
図9によれば、次のステップで、縮約モデルがファンシステムモデルにリンクされる。
具体的には、熱モデル、磁気回路モデル、ソフトウェアモデル、電子モデルなどの縮約モデルをリンクして、ファンシステムモデルを構成する。
ファンシステムモデルは、個々のファン、ファングループまたはファンシステムの物理特性を表現し、周囲の条件と動作状態に応じて、効率、動作性能、および個々のモデル間の相互作用を計算する。
【0093】
次のステップでは、ファンシステムモデルが設備モデルにリンクされ、システムモデル全体が生成される。
システムモデル全体は、いくつかのファンと、コンプレッサやコンデンサなどを含む設備とで構成されている。
この設備モデルは、ファンシステムモデルと同じワークフローを用いて実施可能である。
ファンシステムモデルと設備モデルとをリンクして、システムモデル全体を形成可能である。
【0094】
次のステップは、挙動研究、つまり入力パラメータの組み合わせを用いた応答変数の計算である。
【0095】
挙動研究の目的は、システムモデル全体の挙動を判断し、この知識を用いてシステムをリアルタイムで制御することである。
【0096】
システム全体の挙動にしたがって、モデル応答変数に対するモデル入力変数の効果および影響が、設計空間に転送または表示される。
【0097】
設計空間は、入力変数が取り得る範囲を示す、多次元空間である。
入力変数の数は、設計空間の次元に対応している。
10個の入力変数がある場合、10次元を意味する。
【0098】
モデルの入力変数は、定められた制限内の値を取る。
これにより、多次元空間をむらなく網羅して表現する、パラメータの組み合わせが作成される。
効率や動作性能などのモデル応答変数は、パラメータの組み合わせに基づいて計算される。
挙動研究は、入力変数の関数としての応答変数で満たされた設計空間を提供する。
この空間によって、システム全体の挙動が表現されている。
【0099】
図10は、さまざまな入力変数が、ファンシステムモデルおよび冷却回路モデルにどのように入力されるかを示し、これにより、冷却システムモデル全体が得られる。
対応する出力変数が、冷却システムモデル全体の成果物として認識される。
結果として得られた知識が、
図11に示されているように、挙動表に転送可能である。
システム全体の挙動がわかっている場合は、可能な限り最良の応答変数を取得するために、入力変数を調整可能である。
【0100】
オプティマイザが、挙動表から、応答変数とその応答変数に関連する入力変数との組み合わせを調整または選択する。
つまり、
図9に示す方法ステップに従って、オプティマイザが最良の応答変数を選択し、現在の動作状態にとって最良の入力パラメータの組み合わせを選択する。
【0101】
図12に示すように、オプティマイザは、最良の応答変数を選択し、現在の動作状態にとって可能な限り最良の入力パラメータの組み合わせを判断する。
言い換えると、オプティマイザは、周囲条件または動作状態に応じて、可能な限り最良のモデル応答を選択する。
入力変数の関連パラメータの組み合わせが設定される。
したがって、システムは、可能な限り最良の方法で制御可能である。
冷却システム全体の挙動表は、任意のプロセッサ上で実行可能であり、提供されるファンのマイクロプロセッサ上でいかなる場合でも実行可能であることが好ましい。
制御は、このようにして実行可能である。
【0102】
図13は、実施可能な洗練の例を示し、
図12に示す冷却システム全体の挙動表が、クラウド内の冷却回路のシステムシミュレーションによって拡張されている。
このシステムは、ファンのデジタルツイン、冷却回路のデジタルツイン、検証ユニット、仮想コントローラまたはオプティマイザを含んでいる。
【0103】
ファンのデジタルツインと冷却回路のデジタルツインとが、システムを物理的に表現している。
仮想コントローラは、
図12に示すように、冷却システム全体の挙動表に関する知識を有している。
さらに、仮想コントローラは、たとえば、特定の顧客用途に関して、機械学習によって学習可能である。
検証ユニットは、設定値と実際の値とを比較することでデジタルツインを改善する。
したがって、システムは、特定の顧客パターンをシミュレートし、そこから得られる結果を改善する能力を有している。
【0104】
最後に、上述の実施形態は、特許請求される教示を説明するためだけに用いられ、この実施形態に限定するものではない。