IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クナウフ ギプス カーゲーの特許一覧

<>
  • 特許-壁構造用のスタッド 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】壁構造用のスタッド
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/36 20060101AFI20230403BHJP
【FI】
E04C3/36
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020572842
(86)(22)【出願日】2018-08-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2018000382
(87)【国際公開番号】W WO2020025095
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】510094539
【氏名又は名称】クナウフ ギプス カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ヘアフアト
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン ザイデル
(72)【発明者】
【氏名】ジルヴィア ラハヴィッツ
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/072771(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0059660(KR,A)
【文献】実開昭56-129424(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0066993(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0133460(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0281821(US,A1)
【文献】国際公開第2017/101960(WO,A1)
【文献】特表2008-532775(JP,A)
【文献】国際公開第2016/034906(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/78
E04C 3/07
E04C 3/32
E04C 3/36
B21D 5/08
B21D 22/02
B21D 22/08
B21D 31/00
B21D 47/01
B21D 47/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾式構造における壁用のスタッドフレームのためのスタッドであって、ウェブ(2)と、フランジ(3)とを備え、前記スタッドの断面が、少なくともU字形を示しており、前記ウェブ(2)のセクション(5)が、前記フランジ(3)よりも大きな材料厚さを有しており、前記ウェブ(2)は一片の材料から形成されており、
前記ウェブ(2)の前記セクション(5)は、前記ウェブ(2)全体の中央に配置されており、かつ2つのエッジセクション(6)によって囲まれており、該2つのエッジセクション(6)のうち少なくとも1つは、前記セクション(5)よりも小さい材料厚さを有しており、かつ前記ウェブ(2)と前記フランジ(3)との間の移行領域にそれぞれ配置されており、
当該スタッドの全てのセクション(5,6)が1つの層から構成されていることを特徴とする、スタッド。
【請求項2】
前記スタッドの断面がC字形を示している、請求項1に記載のスタッド。
【請求項3】
前記スタッドの残りの領域(3、4、6)は、より厚い前記ウェブ(2)の前記セクション(5)とは異なって形作られていることを特徴とする、請求項1または2に記載のスタッド。
【請求項4】
前記ウェブ(2)の前記セクション(5)は、前記フランジ(3)の少なくとも2倍の材料厚さを有することを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のスタッド。
【請求項5】
前記移行領域は、弾性特性を有することを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のスタッド。
【請求項6】
前記移行領域は、材料変形を有することを特徴とする、請求項に記載のスタッド。
【請求項7】
前記移行領域は、材料の弱体化を有することを特徴とする、請求項に記載のスタッド。
【請求項8】
前記移行領域は、1つまたは複数の凹部を有することを特徴とする、請求項に記載のスタッド。
【請求項9】
前記エッジセクション(6)は、中央に配置された前記セクション(5)よりも弾性率が大きいことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のスタッド。
【請求項10】
前記2つのエッジセクション(6)は、前記セクション(5)よりも小さい材料厚さを有していることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のスタッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式構造において製造される壁構造用のスタッドフレームのためのスタッドに関する。好ましくは、本発明は、防音性を備える壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術の金属スタッド(標準のC字形またはU字形のスタッド)において、これらのスタッドが、より高い防音性を有し、より高い静的要件をも満たす必要がある乾式壁を構築するために使用される場合、目的の対立が生じる。より高い静的要件のためには、より厚い金属板から形成されたスタッドが使用され、これは、スタッドがより硬く、より強い音響結合を示すことも意味する。したがって、静的性能が向上することにより、音響特性が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明は、通常よりも高い天井高構造のための十分な静的性能を可能にすると同時に十分な防音性を可能にする、導入部において言及したタイプのスタッドを開示するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、その材料(例えば、好ましくは冷間圧延された金属板)が部分的により厚い金属スタッドによって達成され、すなわち、セクションまたは部分が、より大きな材料厚さを有する。ウェブの領域、少なくともウェブ幅のセクションにおけるスタッド材料は、フランジの領域における材料よりも厚い。ウェブおよびフランジを含むスタッドの断面は、少なくともU字形、好ましくはC字形を示す。
【0005】
スタッドは、スタッドフレームを構築するために使用され、スタッドフレームに、好ましくは、セメント質材料、より好ましくは石こう材料に基づく、建築ボードの少なくとも1つの層が固定される。
【0006】
本発明は、特に荷重下における決定的な破壊基準が「ねじり座屈」である場合に、原則的にウェブ領域における材料厚さにわたって静的要件を満たすことが可能であることを実証する。上記の特徴を有することにより、防音性の深刻な損失を受け入れる必要はない。なぜならば、フランジの材料厚さは比較的薄いままであり、いかなる場合にもウェブの部分よりも薄いからである。フランジの材料厚さがより小さいことにより、(標準的な)スタッドの防音特性が維持される。
【0007】
良好な遮音性のためには、スタッドのそれぞれの側における建築ボード間の音響的断絶が必要である。最先端技術から、スタッドの全ての部分が多かれ少なかれ等しいまたは一定の材料厚さを有する場合、スタッドの片側だけに建築ボードを取り付けることによってこの問題を解決することが知られている。この場合、壁構造の両側に別々のスタッドが使用される。スタッドの間に空洞または中空のスペースが残っているため、壁の両側のボードは、スタッドを介してではなく、この空洞を介してのみ互いに音響的に結合される。このタイプの構造にはスペースが必要であるが、スペースは常に利用できるわけではない。したがって、両側式壁構造の場合、スタッドの両側に建築ボードを取り付けることが望ましいまたは必須であるという状況が存在する。最先端技術では、同様の寸法および音響特性を有するスタッドが見られる。ただし、これらのスタッドは、全ての静的要件または全ての空間的要件を満たしているわけではない。
【0008】
本発明によるスタッドでは、スタッドのウェブのみ、好ましくはウェブ幅の一セクションのみがより大きな材料厚さを有し、したがってより強く設計されている。これらの変更により、より高い静的要件を容易に満たすことができることが分かった。驚いたことに、スタッド全体を強化する必要がないことが分かった。
【0009】
本発明によれば、フランジは比較的薄いままであるため、このスタッドは同時に高い音響的断絶要件も満たす。
【0010】
強化ウェブは、静的機能の他に、音響上の利点も有する。なぜならば、強化ウェブは、固有振動を受けにくいからである。固有振動は、音響の問題を引き起こす可能性もある。しかし、より厚いまたはより強いウェブの場合、固有振動を、ウェブの曲げモードの固有周波数に対して好ましく離調させることができる。これは、ウェブの幅が大きい場合に特に有利である。例えば、本発明によれば、50mm、75mmおよび100mmだけでなく、例えば、150mmのウェブ幅も使用することができる。これらの寸法は国ごとに変化する可能性があるため、与えられた値は、本発明を特定の値に限定することなく、大きさの一例として理解されるべきである。フランジ領域の典型的な材料厚さは、例えば、0.45mm~約0.75mm、好ましくは約0.6mmであるが、これらの寸法自体に限定されない。厚いウェブセクションの材料厚さは、約1.5mm~約2.5mm、好ましくは約2.0mmであり得る。厚いウェブセクションは、好ましくは、スタッドの残りの部分、特にフランジの少なくとも2倍の材料厚さを有する。
【0011】
本発明の発展形態によれば、ウェブの厚いセクションは、複数の材料層から形成することができる。好ましくは、この目的のために、少なくとも1つのさらなる材料層をウェブ材料に取り付けることができる。固定は、摩擦固定および/またははめ合い法、例えば、リベット留め、溶接、接着、クリンチなどによって行うことができる。
【0012】
好ましくは、スタッドおよび補強材は、金属板から形成されている。
【0013】
別の発展形態では、スタッドの全てのセクションが1つの層から構成される、つまり、ウェブは一片の材料から形成されている。つまり、ウェブは、層の厚さが異なるにもかかわらず1つの層のみを有する。これは、より厚いセクションを、スタッドの残りの部分とは異なって、例えばより小さい圧力で圧延することによって達成することができる。これは、スタッドの残りの領域がウェブとは異なる材料厚さを有することを意味する。好ましくは、スタッドの残りの領域の断面はより薄い。このようにして、この発展形態によれば、スタッドを、比較的簡単に、費用効果が高く、正確に製造することができる。
【0014】
また、ウェブとフランジを別々に、例えば異なる材料から製造し、後でそれらを例えば溶接によって接合することも考慮される。ただし、この手順は、より複雑であり、おそらくより高価である。
【0015】
本発明のさらなる発展形態において、ウェブは、スタッドの長さに直交するスタッドの断面において見たとき、ウェブ全体の中央に位置する厚いセクションを有する。厚いセクションは、少なくとも1つの薄いエッジセクションによって囲まれている。エッジセクションの幅は0.1mm超かつ6mm未満である。遠位側において、エッジセクションはそれぞれのフランジに隣接している。この発展形態は、ウェブとそれぞれのフランジの間の移行領域が強化および硬化されていないため、ここに最大の弾性が維持され、エッジセクションには弾性特性があるという利点を有する。その結果、フランジおよびフランジに取り付けられた建築ボードは、可能な限りウェブから音響的に断絶される。ウェブを介した音の伝達、およびウェブの固有振動の刺激も最小限に抑えられる。
【0016】
この場合も、単なる例として、また、大きさに関する実施者に対する提案として、ウェブの強化または厚さ増大は、フランジへのウェブの移行部(すなわち、エッジセクション)の手前の約4mm~5mm、好ましくは、例えば4.4mmにおいて終わっている。
【0017】
本発明によるスタッドの別の発展形態は、ウェブのエッジセクションを含む、ウェブとフランジとの間の移行領域が弾性特性を有することを特徴とする。ウェブのエッジセクション、移行エッジ自体またはフランジを、より高い弾性を得るために変更することができる。この変更は、ウェブおよびフランジの材料厚さが異なることに加えて行うことができる。
【0018】
フランジ全体をより弾性にするために、実際のフランジ領域において弾性化手段を行うことも可能である。
【0019】
ウェブのエッジセクションを含む移行領域の弾性特性を高めるための典型的な可能性は、エッジセクションが材料変形を有することである。これは、例えば、スタッドまたはスタッドのセクションの全長にわたって延びるビード形成であり得る。
【0020】
ウェブのエッジセクションを含む移行領域の弾性特性を改善するための別の例示的な可能性は、エッジセクションが材料変形、特に弱体化を有することである。これは、例えばビードの領域における、材料の弱体化であることができる。
【0021】
ウェブのエッジセクションを含む移行領域の弾性特性を高める別の典型的な可能性は、エッジセクションが、ウェブ、特にウェブのエッジセクション、またはフランジのエッジセクションにおいて1つまたは複数の凹部を提供することである。特に、これらの凹部は、スタッドの縦断面にわたって延びるスロットまたは穴として形作ることができる。
【0022】
さらなる発明的特徴がまた生じ得るが、原則的に、単に一例としてみなされるべきであり、発明の主題または発明の保護範囲を限定することを意図するものではない実施形態が、図面に示される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明によるスタッドの1つの実施形態を部分的に正面から見た断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1には、様々な領域における異なる材料厚さを示すためにスタッドの断面輪郭が拡大して示されている。スタッドの切断図は、スタッドの幅にわたって一点鎖線1によって中断されて示されている。
【0025】
スタッドの断面はほぼC字形であり、ウェブ2と、ウェブに隣接する2つのフランジ3と、フランジに対してある角度で配置された端部領域4とから形成されている。
【0026】
図の右側にはスタッドの正面図の一部が示されており、図の左側においてスタッドは切断され、スタッドの前面から長手方向に離れた断面図を示している。
【0027】
ウェブ2の中央ウェブセクション5は、スタッドの他の部分よりも大きな材料厚さを有する。これは、フランジ3と端部領域4とを曲げる前にこのウェブ5をより弱くかつより厚く圧延することによって達成することができる。
【0028】
これに代えて、中央ウェブセクション5は、ウェブ2のこの領域において複数の層、好ましくは2つの層を提供することによって形成することができる。材料の追加のストリップをウェブ2に提供し、例えば接着、溶接またはリベット留めによってウェブ2に接合することができる。
【0029】
ウェブ2のエッジセクション6において、ウェブセクション5の厚さ増大は、それぞれのフランジ3への移行部またはエッジ7の近くで終わっている。結果として、それぞれのエッジセクション6は、中央ウェブセクション5よりも弾性がある。フランジ3は、より弾性であるだけでなく、ウェブ2に弾性的に接続されている。その結果、フランジは、取り付けられた建築ボードの音響振動を吸収することができ、これらの振動をウェブ2へ伝えることがない。したがって、壁の一方の側から他方の側へのウェブ2を介した音響振動の伝達が有効に妨げられるまたは少なくとも大幅に減じられる。また、遮音性に悪影響を与える固有振動によってウェブ2が妥協されるリスクもない。
【0030】
フランジ3は、材料の凹部によって、例えば材料のスロットによって、より弾性に設計することができる。
【0031】
同様に、ウェブ2のエッジセクション6もまた、より弾性に設計することができる。この弾性設計は、必ずしもウェブ2のエッジセクション6に限定されるものではなく、追加的または代替的に、移行エッジ7の近くのフランジ3のエッジセクションにおいて実現することができる。ウェブ2のエッジセクション6および/またはフランジ3のエッジセクションは、例えばウェブ2の厚さ増大が製造に関する理由でそれぞれの移行エッジ7まで延びているべきである場合、弾性に設計することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 中断を示す一点鎖線
2 ウェブ
3 フランジ
4 端部領域
5 ウェブのより厚いウェブセクション/より大きな材料厚さを有するウェブのセクション
6 ウェブのエッジセクション
7 ウェブとフランジとの間の移行エッジ
8 ビード
図1