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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】蓄熱式燃焼設備
(51)【国際特許分類】
   F23C 99/00 20060101AFI20230403BHJP
   F23L 15/02 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
F23C99/00 323
F23L15/02 ZAB
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021010457
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2022114244
(43)【公開日】2022-08-05
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】河本 祐作
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-133905(JP,A)
【文献】特開2018-155412(JP,A)
【文献】特開2018-076985(JP,A)
【文献】特開2018-115789(JP,A)
【文献】米国特許第05759022(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 99/00
F23L 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱部に収容された蓄熱材に蓄熱された熱により燃焼用空気を加熱させて給排気部を通して炉内に導き、この燃焼用空気と燃料供給ノズルから供給された燃料とを混合させて炉内で燃焼させる蓄熱式燃焼装置と、燃料供給ノズルから燃料を供給するのを停止した状態で、炉内における燃焼後の燃焼排ガスを、給排気部を通して蓄熱材が収容された蓄熱部に導いて燃焼排ガスの熱を蓄熱材に蓄熱させ、この蓄熱部を通して燃焼排ガスを外部に排出させる蓄熱式燃焼装置とが対になって設けられ、この対になった蓄熱式燃焼装置において燃焼と蓄熱とを交互に切り換えて行う蓄熱式燃焼設備において、前記の燃料にアンモニアを用い、各蓄熱式燃焼装置における前記の給排気部に対してそれぞれ燃焼用空気を供給する処理用空気供給ノズルを設け、燃焼側の蓄熱式燃焼装置において前記の処理用空気供給ノズルから燃焼用空気を前記の給排気部に供給させないようにし、アンモニアと混合させる燃焼用空気の空気比μを1以下にしてアンモニアを燃焼させる一方、蓄熱側の蓄熱式燃焼装置においては、給排気部に対して前記の処理用空気供給ノズルから燃焼用空気を供給して、未燃焼のアンモニアを燃焼させることを特徴とする蓄熱式燃焼設備。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄熱式燃焼設備において、前記のアンモニアと燃焼用空気とを混合させて燃焼させるにあたり、燃焼用空気の空気比μを0.99~0.94の範囲にしたことを特徴とする蓄熱式燃焼設備。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の蓄熱式燃焼設備において、前記の処理用空気供給ノズルを前記の各蓄熱式燃焼装置の給排気部に設け、前記の処理用空気供給ノズルから蓄熱側の蓄熱式燃焼装置における給排気部内に燃焼用空気を噴出させることを特徴とする蓄熱式燃焼設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱部に収容された蓄熱材に蓄熱された熱により燃焼用空気を加熱させて給排気部を通して炉内に導き、この燃焼用空気と燃料供給ノズルから供給された燃料とを混合させて炉内で燃焼させる蓄熱式燃焼装置と、燃料供給ノズルから燃料を供給するのを停止した状態で、炉内における燃焼後の燃焼排ガスを、給排気部を通して蓄熱材が収容された蓄熱部に導いて燃焼排ガスの熱を蓄熱材に蓄熱させ、この蓄熱部を通して燃焼排ガスを外部に排出させる蓄熱式燃焼装置とが対になって設けられ、この対になった蓄熱式燃焼装置において燃焼と蓄熱とを交互に切り換えて行う蓄熱式燃焼設備において、前記の燃料にアンモニアを用いた蓄熱式燃焼設備に関するものである。特に、前記のように燃料にアンモニアを用い、対になった蓄熱式燃焼装置において燃焼と蓄熱とを交互に切り換えるにあたり、アンモニアの燃焼時に窒素酸化物NOxが発生するのを抑制すると共に、アンモニアが十分に燃焼されるようにし、窒素酸化物NOxや未燃焼のアンモニアが外部に排出されるのを簡単に防止できるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、工業炉等においては、燃焼排ガスの熱を利用して効率のよい燃焼を行うために、炉内において燃焼された燃焼排ガスの熱を蓄熱部に収容させた蓄熱材に蓄熱させ、燃焼用空気を前記の蓄熱部における蓄熱材に蓄熱された熱により加熱させ、このように加熱された燃焼用空気を、給排気部を通して炉内に導き、この燃焼用空気と燃料供給ノズルから供給された燃料とを混合させて炉内において燃焼させる蓄熱式燃焼装置と、燃料供給ノズルから燃料を供給するのを停止した状態で、炉内における燃焼後の燃焼排ガスを、給排気部を通して蓄熱材が収容された蓄熱部に導いて燃焼排ガスの熱を蓄熱材に蓄熱させ、この蓄熱部を通して燃焼排ガスを外部に排出させる蓄熱式燃焼装置とを対にして設け、この対になった蓄熱式燃焼装置において燃焼と蓄熱とを交互に切り換えて行うようにした蓄熱式燃焼設備が用いられている。
【0003】
また、従来の蓄熱式燃焼設備においては、前記のように加熱された燃焼用空気と燃料供給ノズルから供給された燃料とを混合させて炉内において燃焼させるにあたり、その燃料としては、一般に燃焼性の高い炭化水素系燃料が使用されていた。
【0004】
しかし、前記の蓄熱式燃焼装置において、炭化水素系燃料を燃焼用空気と混合させて燃焼させた場合、二酸化炭素などの温室効果ガスが多く発生するという問題があった。
【0005】
そして、近年においては、二酸化炭素などの温室効果ガスを削減することが要望され、燃料に炭化水素系燃料以外のものを用いることが検討されている。
【0006】
ここで、炭化水素系燃料以外の燃料として、従来から低燃焼性燃料のアンモニアを用いることが検討されている。
【0007】
しかし、アンモニアは、炭化水素系燃料に比べて燃焼性が悪くて燃焼時に失火しやすく、また燃焼時に窒素酸化物NOxが発生しやすいという問題があった。また、アンモニアは有毒で僅か1ppmでも刺激臭を放つため環境にも悪影響を及ぼすという問題もあった。
【0008】
そして、従来においては、前記のようなアンモニアを燃焼させるにあたって、特許文献1に示されるように、燃料のアンモニアを噴出させるバーナーチップの下流側にディフューザーを配置し、アンモニアを自然吸引された燃焼用空気と一緒にディフューザーの周辺を迂回させて混合させ、このように混合されたアンモニアと燃焼用空気とを、渦流状態にしてディフューザーの上側に滞留させて燃焼させ、アンモニアの燃焼性を高めるようにしたものや、特許文献2に示されるように、低燃焼性燃料のアンモニアと燃焼用空気とを予混合させて均一化させた後、このように予混合させたガスを、スワラにより旋回させて強く攪拌しながら燃焼させて、アンモニアの燃焼性を高めるようにしたものが提案されている。
【0009】
しかし、前記の特許文献1、2においては、アンモニアの燃焼性を高めることは示されているが、アンモニアの燃焼時に発生する窒素酸化物NOxを抑制することはできなかった。
【0010】
また、従来においては、特許文献3~6に示されるように、前記のような蓄熱式燃焼設備において、窒素酸化物NOxが含まれる燃焼排ガスが導かれる位置にアンモニアを噴出させて、燃焼後の燃焼排ガスに含まれる窒素酸化物NOxを減少させるようにしたものが提案されている。
【0011】
しかし、前記の特許文献1~6に示される何れのものにおいても、前記のように蓄熱式燃焼設備の燃料にアンモニアを用い、対になった蓄熱式燃焼装置により燃焼と蓄熱とを交互に切り換えるにあたり、蓄熱式燃焼装置によりアンモニアを燃焼させる際に窒素酸化物NOxが発生するのを抑制すると共に、確実にアンモニアが燃焼されるようにして、窒素酸化物NOxや未燃焼のアンモニアが外部に排出されるのを防止することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】実公昭50-8257号公報
【文献】特開2016-130619号公報
【文献】特開平7-293815号公報
【文献】特開平10-110941号公報
【文献】特開2000-65316号公報
【文献】特許第3045430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、蓄熱部に収容された蓄熱材に蓄熱された熱により燃焼用空気を加熱させて給排気部を通して炉内に導き、この燃焼用空気と燃料供給ノズルから供給された燃料とを混合させて炉内で燃焼させる蓄熱式燃焼装置と、燃料供給ノズルから燃料を供給するのを停止した状態で、炉内における燃焼後の燃焼排ガスを、給排気部を通して蓄熱材が収容された蓄熱部に導いて燃焼排ガスの熱を蓄熱材に蓄熱させ、この蓄熱部を通して燃焼排ガスを外部に排出させる蓄熱式燃焼装置とが対になって設けられ、この対になった蓄熱式燃焼装置において燃焼と蓄熱とを交互に切り換えて行う蓄熱式燃焼設備において、前記の燃料にアンモニアを用いた場合における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0014】
すなわち、本発明においては、前記のような蓄熱式燃焼設備において、蓄熱式燃焼装置によりアンモニアを燃焼させる際に窒素酸化物NOxが発生するのを抑制すると共に、確実にアンモニアが燃焼されるようにして、窒素酸化物NOxや未燃焼のアンモニアが外部に排出されるのを簡単に防止できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る蓄熱式燃焼設備においては、前記のような課題を解決するため、 蓄熱部に収容された蓄熱材に蓄熱された熱により燃焼用空気を加熱させて給排気部を通して炉内に導き、この燃焼用空気と燃料供給ノズルから供給された燃料とを混合させて炉内で燃焼させる蓄熱式燃焼装置と、燃料供給ノズルから燃料を供給するのを停止した状態で、炉内における燃焼後の燃焼排ガスを、給排気部を通して蓄熱材が収容された蓄熱部に導いて燃焼排ガスの熱を蓄熱材に蓄熱させ、この蓄熱部を通して燃焼排ガスを外部に排出させる蓄熱式燃焼装置とが対になって設けられ、この対になった蓄熱式燃焼装置において燃焼と蓄熱とを交互に切り換えて行う蓄熱式燃焼設備において、前記の燃料にアンモニアを用い、各蓄熱式燃焼装置における前記の給排気部に対してそれぞれ燃焼用空気を供給する処理用空気供給ノズルを設け、燃焼側の蓄熱式燃焼装置において前記の処理用空気供給ノズルから燃焼用空気を前記の給排気部に供給させないようにし、アンモニアと混合させる燃焼用空気の空気比μを1以下にしてアンモニアを燃焼させる一方、蓄熱側の蓄熱式燃焼装置においては、給排気部に対して前記の処理用空気供給ノズルから燃焼用空気を供給して、未燃焼のアンモニアを燃焼させるようにした。
【0016】
ここで、前記のように燃料にアンモニアを用い、このアンモニアと混合させる燃焼用空気の空気比μを1以下にして燃焼させると、アンモニアの燃焼時に窒素酸化物NOxが発生するのが抑制される一方、アンモニアが完全に燃焼されず、アンモニアの一部が燃焼されずに残るようになる。但し、このように燃焼されずに残ったアンモニアは、燃焼排ガスと一緒に蓄熱側の蓄熱式燃焼装置における給排気部に導かれ、前記の処理用空気供給ノズルからこの給排気部に供給された燃焼用空気によって燃焼されずに残ったアンモニアが燃焼されるようになる。ここで、アンモニアと混合させる燃焼用空気の空気比μを1以下にして燃焼させるにあたって、燃焼用空気の空気比μを0.99~0.94の範囲にすると、アンモニアの燃焼時に発生する窒素酸化物NOxの量を少なくすると共に、燃焼されずに残るアンモニアを少なくすることができ、特に、燃焼用空気の空気比μを約0.95にすると、アンモニアの燃焼時に窒素酸化物NOxが殆んど発生しなくなるため好ましい。
【0017】
また、本発明に係る蓄熱式燃焼設備において、前記のように蓄熱側の蓄熱式燃焼装置における給排気部に処理用空気供給ノズルから燃焼用空気を供給させて、燃焼されずに残ったアンモニアを燃焼させるにあたっては、蓄熱側の蓄熱式燃焼装置における給排気部において、燃焼されずに残ったアンモニアが燃焼用空気によって確実に燃焼されるようにするため、処理用空気供給ノズルから燃焼用空気を蓄熱側の蓄熱式燃焼装置における給排気部内に噴出させることが好ましい。なお、前記の処理用空気供給ノズルを蓄熱式燃焼装置の近傍に設けることも可能であるが、前記のように処理用空気供給ノズルから燃焼用空気を蓄熱側の蓄熱式燃焼装置における給排気部内に噴出させるようにすると、燃焼されずに残ったアンモニアのほぼ全量が、蓄熱側の蓄熱式燃焼装置における給排気部に供給された燃焼用空気によって確実に燃焼されるようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明における蓄熱式燃焼設備においては、前記のように対になった蓄熱式燃焼装置において燃焼と蓄熱とを交互に切り換えて行うにあたり、燃料にアンモニアを用い、各蓄熱式燃焼装置における前記の給排気部に対してそれぞれ燃焼用空気を供給する処理用空気供給ノズルを設け、燃焼側の蓄熱式燃焼装置において処理用空気供給ノズルから燃焼用空気を前記の給排気部に供給させないようにし、アンモニアと混合させる燃焼用空気の空気比μを1以下にしてアンモニアを燃焼させるようにしたため、アンモニアの燃焼時に窒素酸化物NOxが発生するのが抑制される一方、アンモニアが完全に燃焼されずに一部が残るが、燃焼されずに残った未燃焼のアンモニアが燃焼排ガスと一緒に蓄熱側の蓄熱式燃焼装置における給排気部に導かれると、この給排気部に処理用空気供給ノズルから供給された燃焼用空気によって燃焼されずに残った未燃焼のアンモニアが完全に燃焼されるようになる。
【0019】
この結果、本発明における蓄熱式燃焼設備においては、前記のようにアンモニアの燃焼時に窒素酸化物NOxが発生するのが抑制されると共に、燃焼時に燃焼されずに残ったアンモニアが完全に燃焼されるようになり、窒素酸化物NOxや未燃焼のアンモニアが外部に排出されるのを簡単に防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る蓄熱式燃焼設備における燃焼と蓄熱とを交互に切り換える対になった一方の蓄熱式燃焼装置に、蓄熱部に収容された蓄熱材に蓄熱された熱により燃焼用空気を加熱させて給排気部を通して炉内に導き、燃料供給ノズルから供給されたアンモニアとこの燃焼用空気の空気比μが1以下になるように混合させてアンモニアを炉内で燃焼させる一方、燃焼後の燃焼排ガスを他方の蓄熱式燃焼装置の蓄熱部に導く途中の給排気部に、処理用空気供給ノズルから燃焼用空気を供給して、燃焼排ガス中における未燃焼のアンモニアを燃焼させ、これらの燃焼排ガスの熱を蓄熱材に蓄熱させ、この蓄熱部を通して燃焼排ガスを外部に排出させる状態を示した概略断面説明図である。
図2】同実施形態に係る蓄熱式燃焼設備において、前記の一方の蓄熱式燃焼装置と他方の蓄熱式燃焼装置とにおける燃焼と蓄熱とを切り換え、他方の蓄熱式燃焼装置において空気比μが1以下になるようにしてアンモニアを炉内で燃焼させる一方、一方の蓄熱式燃焼装置における給排気部に、処理用空気供給ノズルから燃焼用空気を供給して燃焼排ガス中における未燃焼のアンモニアを燃焼させ、これらの燃焼排ガスの熱を蓄熱材に蓄熱させ、この蓄熱部を通して燃焼排ガスを外部に排出させる状態を示した概略断面説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る蓄熱式燃焼設備を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る蓄熱式燃焼設備は、下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0022】
この実施形態における蓄熱式燃焼設備においては、図1及び図2に示すように、対になった蓄熱式燃焼装置10a,10bを炉1内に向けて対向するように設け、この対になった蓄熱式燃焼装置10a,10bにおいて燃焼と蓄熱とを交互に切り換えて行うようにしている。
【0023】
そして、各蓄熱式燃焼装置10a,10bにおいて、それぞれ燃焼を行う場合には、それぞれ蓄熱材xが収容された蓄熱部11a,11bに燃焼用空気Airを導き、前記の蓄熱材xに蓄熱された熱により燃焼用空気Airを加熱させて、それぞれの給排気部12a,12bを通して炉1内に供給させると共に、各蓄熱式燃焼装置10a,10bにおける前記の給排気部12a,12bの近傍に設けた各燃料供給ノズル13a,13bから燃料のアンモニアNHを、前記のように供給される燃焼用空気Airの空気比μが1以下になるようにそれぞれ給排気部12a,12bの近傍に供給して、前記の燃焼用空気Airと混合させて炉1内で燃焼させるようにしている。
【0024】
一方、各蓄熱式燃焼装置10a,10bにおいて、それぞれ蓄熱を行う場合には、それぞれ燃料供給ノズル13a,13bから燃料を供給させるのを停止させた状態で、炉1内における燃焼後の燃焼排ガスを、それぞれ給排気部12a,12bを通して蓄熱材xが収容された蓄熱部11a,11bに導いて燃焼排ガスの熱を蓄熱材xに蓄熱させ、このように蓄熱材xに熱を蓄熱させた後の燃焼排ガスを外部に排出させるようにしている。
【0025】
ここで、この実施形態における蓄熱式燃焼設備においては、図1及び図2に示すように、前記のように各蓄熱式燃焼装置10a,10bにおける各蓄熱部11a,11bに燃焼用空気Airを供給するにあたり、給気装置20から各蓄熱式燃焼装置10a,10bにおける各蓄熱部11a,11bに向けて燃焼用空気Airを導く空気案内経路21の部分にそれぞれ開閉弁21a,21bを設けている。
【0026】
そして、前記の開閉弁21a,21bを制御装置(図示せず)により開閉させて、前記の給気装置20から空気案内経路21を通して各蓄熱式燃焼装置10a,10bにおける各蓄熱部11a,11bへの燃焼用空気Airの供給と停止とを切り換えるようにしている。ここで、前記の開閉弁21a,21bについては、弁を開いた状態を白抜きで示す一方、弁を閉じた状態を黒塗りで示している。
【0027】
また、この実施形態における蓄熱式燃焼設備においては、各蓄熱式燃焼装置10a,10bにおける各給排気部12a,12bにそれぞれ処理用空気供給ノズル14a,14bを設け、各処理用空気供給ノズル14a,14bに対して前記の給気装置20から燃焼用空気Airを導く処理用空気案内経路22の部分にそれぞれ開閉弁22a,22bを設けている。
【0028】
そして、前記の開閉弁22a,22bを制御装置(図示せず)により開閉させて、前記の給気装置20から処理用空気案内経路22を通して各処理用空気供給ノズル14a,14bへの処理用の燃焼用空気Airの供給と停止とを切り換えるようにしている。ここで、前記の開閉弁22a,22bについても、弁を開いた状態を白抜きで示す一方、弁を閉じた状態を黒塗りで示している。
【0029】
また、この実施形態における蓄熱式燃焼設備において、前記のように各蓄熱式燃焼装置10a,10bにおける各給排気部12a,12bの近傍に設けた各燃料供給ノズル13a,13bから燃料のアンモニアNHを炉1内に供給するにあたっては、アンモニアNHを各燃料供給ノズル13a,13bに導く燃料案内経路31の部分にそれぞれ開閉弁31a,31bを設けている。
【0030】
そして、前記の開閉弁31a,31bを制御装置(図示せず)により開閉させて、前記の燃料案内経路31を通して各燃料供給ノズル13a,13bに供給するアンモニアNHの供給と停止とを切り換えるようにしている。ここで、前記の開閉弁31a,31bについても、弁を開いた状態を白抜きで示す一方、弁を閉じた状態を黒塗りで示している。
【0031】
また、この実施形態における蓄熱式燃焼設備において、前記のように各蓄熱式燃焼装置10a,10bにおいて、アンモニアNHを燃焼させた後の炉1内における燃焼排ガスを、排気装置40により各蓄熱式燃焼装置10a,10bにおける各給排気部12a,12bから蓄熱材xが収容された蓄熱部11a,11bを通して吸引させて外部に排気させるにあたり、燃焼排ガスを各蓄熱式燃焼装置10a,10bの蓄熱部11a,11bを通して排気装置40に導く排気経路41の部分にそれぞれ開閉弁41a,41bを設けている。
【0032】
そして、前記の開閉弁41a,41bを制御装置(図示せず)により開閉させて、前記の排気経路41を通して燃焼排ガスを排気装置40に導く蓄熱式燃焼装置10a,10bを切り換えるようにしている。ここで、前記の開閉弁41a,41bについても、弁を開いた状態を白抜きで示す一方、弁を閉じた状態を黒塗りで示している。
【0033】
そして、この実施形態における蓄熱式燃焼設備において、一方の蓄熱式燃焼装置10aにおいてアンモニアNHを燃焼させる一方、他方の蓄熱式燃焼装置10bにおいて燃焼排ガスの熱を蓄熱させて燃焼排ガスを排気させる場合、アンモニアNHを燃焼させる一方の蓄熱式燃焼装置10aにおいては、図1に示すように、前記の空気案内経路21に設けた一方の開閉弁21aを開けて、前記の給気装置20から燃焼用空気Airを一方の蓄熱式燃焼装置10aにおける蓄熱部11aに導いて、この燃焼用空気Airを蓄熱部11aにおいて蓄熱された蓄熱材xにより加熱させ、このように加熱された燃焼用空気Airを、この蓄熱式燃焼装置10aにおける給排気部12aを通して炉1内に供給すると共に、前記の燃料案内経路31に設けた一方の開閉弁31aを開けて、アンモニアNHを前記の燃料案内経路31を通して一方の燃料供給ノズル13aに導き、この燃料供給ノズル13aからアンモニアNHを、前記の給排気部12aを通して炉1内に供給される燃焼用空気Airに向けて噴射させ、このアンモニアNHに対して前記の加熱された燃焼用空気Airの空気比μが1以下になるように混合させて燃焼させるようにする。
【0034】
このように、アンモニアNHを燃焼用空気Airの空気比μが1以下になるように混合させて燃焼させると、燃焼時における窒素酸化物NOxの発生が抑制され、特に、燃焼用空気の空気比μを0.99~0.94の範囲にすると、アンモニアNHの燃焼時に発生する窒素酸化物NOxの量を少なくできると共に、燃焼されずに残る未燃焼のアンモニアを少なくすることができ、さらに、燃焼用空気の空気比μを約0.95にすると、アンモニアの燃焼時に窒素酸化物NOxが殆んど発生しなくなる。
【0035】
一方、前記のように燃焼排ガスの熱を蓄熱させて燃焼排ガスを排気させる他方の蓄熱式燃焼装置10bにおいては、前記の排気経路41に設けた他方の開閉弁41bを開け、前記のようにアンモニアNHを燃焼用空気Airと空気比μが1以下になるようにして燃焼させた後の未燃焼のアンモニアNHを含む燃焼排ガスを、前記の排気装置40により、排気経路41から他方の蓄熱式燃焼装置10bにおける蓄熱部11bを通して給排気部12bに吸引すると共に、前記の処理用空気案内経路22に設けた他方の開閉弁22bを開けて、燃焼用空気Airを他方の処理用空気供給ノズル14bから前記の給排気部12bに供給し、前記の燃焼排ガスに含まれる未燃焼のアンモニアNHをこの燃焼用空気Airにより燃焼させ、前記の燃焼排ガスと未燃焼のアンモニアNHを燃焼させた燃焼排ガスとを一緒に、他方の蓄熱式燃焼装置10bにおける蓄熱部11bに吸引させて、これらの燃焼排ガスの熱を蓄熱材xに蓄熱させた後、この燃焼排ガスを前記の排気経路41を通して排気装置40に導き、外部に排気させるようにする。
【0036】
ここで、前記のように一方の蓄熱式燃焼装置10aにおいてアンモニアNHを燃焼させる一方、他方の蓄熱式燃焼装置10bにおいて燃焼排ガスの熱を蓄熱させて排気させるようにすると、アンモニアNHの燃焼時に窒素酸化物NOxが発生するのが抑制されると共に、前記の燃焼時に燃焼されずに残った未燃焼のアンモニアNHも前記のように蓄熱側の給排気部12aにおいて燃焼されるようになり、窒素酸化物NOxや未燃焼のアンモニアを含む燃焼排ガスが排気装置40によって外部に排出されるのを簡単に防止できるようになる。
【0037】
また、この実施形態における蓄熱式燃焼設備において、前記の図1の場合とは逆に、他方の蓄熱式燃焼装置10bにおいてアンモニアNHを燃焼させる一方、一方の蓄熱式燃焼装置10aにおいて燃焼排ガスの熱を蓄熱させて燃焼排ガスを排気させる場合には、図2に示すように、他方の蓄熱式燃焼装置10bにおいて、前記の空気案内経路21に設けた他方の開閉弁21bを開けて、給気装置20から燃焼用空気Airを他方の蓄熱式燃焼装置10aにおける蓄熱部11bに導いて、この燃焼用空気Airを蓄熱部11bにおいて蓄熱された蓄熱材xにより加熱させ、このように加熱された燃焼用空気Airを、この蓄熱式燃焼装置10bにおける給排気部12bを通して炉1内に供給すると共に、前記の燃料案内経路31に設けた他方の開閉弁31bを開けて、燃料案内経路31を通してアンモニアNHを他方の燃料供給ノズル13bに導き、この燃料供給ノズル13bからアンモニアNHを、前記の給排気部12bを通して炉1内に供給される燃焼用空気Airに向けて噴射させ、このアンモニアNHに対して前記の加熱された燃焼用空気Airの空気比μが1以下になるように混合させて燃焼させる。
【0038】
また、前記のように燃焼排ガスの熱を蓄熱させて燃焼排ガスを排気させる一方の蓄熱式燃焼装置10aにおいては、前記の排気経路41に設けた一方の開閉弁41aを開け、前記のようにアンモニアNHを燃焼用空気Airと空気比μが1以下になるようにして燃焼させた後の未燃焼のアンモニアNHを含む燃焼排ガスを、前記の排気装置40により、排気経路41から一方の蓄熱式燃焼装置10aにおける蓄熱部11aを通して給排気部12aに吸引すると共に、前記の処理用空気案内経路22に設けた一方の開閉弁22aを開けて、燃焼用空気Airを一方の処理用空気供給ノズル14aから前記の給排気部12aに供給し、前記の燃焼排ガスに含まれる未燃焼のアンモニアNHをこの燃焼用空気Airにより燃焼させ、前記の燃焼排ガスと未燃焼のアンモニアNHを燃焼させた燃焼排ガスとを一緒に、一方の蓄熱式燃焼装置10aにおける蓄熱部11aに吸引させて、これらの燃焼排ガスの熱を蓄熱材xに蓄熱させた後、この燃焼排ガスを前記の排気経路41を通して排気装置40に導き、外部に排気させるようにする。
【0039】
このように、他方の蓄熱式燃焼装置10bにおいてアンモニアNHを燃焼させる一方、一方の蓄熱式燃焼装置10aにおいて燃焼排ガスの熱を蓄熱させて燃焼排ガスを排気させるようにすると、前記の図1に示した場合と同様に、アンモニアNHの燃焼時に窒素酸化物NOxが発生するのが抑制されると共に、の燃焼時に燃焼されずに残った未燃焼のアンモニアNHも蓄熱側の給排気部12aにおいて燃焼されるようになり、窒素酸化物NOxや未燃焼のアンモニアを含む燃焼排ガスが排気装置40によって外部に排出されるのを簡単に防止できるようになる。
【符号の説明】
【0040】
1 :炉
10a :蓄熱式燃焼装置
10b :蓄熱式燃焼装置
11a :蓄熱部
11b :蓄熱部
12a :給排気部
12b :給排気部
13a :燃料供給ノズル
13b :燃料供給ノズル
14a :処理用空気供給ノズル
14b :処理用空気供給ノズル
20 :給気装置
21 :空気案内経路
21a :開閉弁
21b :開閉弁
22 :処理用空気案内経路
22a :開閉弁
22b :開閉弁
31 :燃料案内経路
31a :開閉弁
31b :開閉弁
40 :排気装置
41 :排気経路
41a :開閉弁
41b :開閉弁
Air :燃焼用空気
NH :アンモニア
x :蓄熱材
図1
図2