(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】口腔内崩壊錠
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20230403BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230403BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230403BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230403BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20230403BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230403BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230403BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20230403BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230403BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230403BHJP
A61J 1/03 20230101ALI20230403BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K9/20
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/04
A61K47/38
A61K47/14
A61P7/02
A61P9/00
A61P9/10
A61J1/03 370
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021167539
(22)【出願日】2021-10-12
(62)【分割の表示】P 2018555237の分割
【原出願日】2017-04-20
【審査請求日】2021-10-12
(32)【優先日】2016-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ファーハン・アブデル・カリム・モハマド・アル・フスバン
(72)【発明者】
【氏名】ラーシュ・ホーカン・クリステル・グラード
(72)【発明者】
【氏名】ヤンヌ・マーリン・クリスティーナ・ハルシュテイン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・ジェーン・モイア
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ピーター・トンプソン
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102058889(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104650091(CN,A)
【文献】特開2003-261440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 7/02
A61P 9/00
A61P 9/10
A61J 1/03
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオール;及び
少なくとも1種の崩壊性賦形剤
を含む、錠剤を少なくとも1つ含むブリスターパックであって、
錠剤が、50~150Nの硬度及び3分未満の崩壊時間を有し、
少なくとも1種の崩壊性賦形剤が、マンニトール、キシリトール、無水第二リン酸カルシウム、クロスポビドン及び微結晶性セルロースを含む、ブリスターパック。
【請求項2】
錠剤が、約60秒未満の崩壊時間を有する、請求項1に記載のブリスターパック。
【請求項3】
少なくとも1種の崩壊性賦形剤が、錠剤の50~80重量%の範囲の量で存在する崩壊性賦形剤プレミックスである、請求項1又は2に記載のブリスターパック。
【請求項4】
(1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオールが、錠剤の10~18重量%の量で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載のブリスターパック。
【請求項5】
錠剤が、約60mg又は約90mgの(1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオールを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のブリスターパック。
【請求項6】
錠剤が、約60mgの(1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオールを含む、請求項5に記載のブリスターパック。
【請求項7】
錠剤が、約90mgの(1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオールを含む、請求項5に記載のブリスターパック。
【請求項8】
錠剤が55~90Nの硬度を有する、請求項1~
7のいずれか一項に記載のブリスターパック。
【請求項9】
錠剤が少なくとも1種の固化防止剤をさらに含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載のブリスターパック。
【請求項10】
少なくとも1種の固化防止剤が錠剤の0.5~1重量%の量で存在する、請求項
9に記載のブリスターパック。
【請求項11】
錠剤が1種以上の滑沢剤を含む、請求項1~
10のいずれか一項に記載のブリスターパック。
【請求項12】
滑沢剤が錠剤の1~2重量%の量で存在する、請求項
11に記載のブリスターパック。
【請求項13】
錠剤が、
錠剤の10~18重量%の(1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオール;
錠剤の0.9~2重量%のヒドロキシプロピルセルロース;
錠剤の0.5~1重量%のコロイド状無水シリカ;
錠剤の47~67重量%のマンニトール;
錠剤の2.5~4重量%のキシリトール;
錠剤の2~3.5重量%の無水第二リン酸カルシウム;
錠剤の9~15重量%の微結晶性セルロース;
錠剤の5~9重量%のクロスポビドン;及び
錠剤の1~2重量%のフマル酸ステアリルナトリウム
を含む、請求項1~
12のいずれか一項に記載のブリスターパック。
【請求項14】
(1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオールが、5μm~50μmのD(v,0.9)粒径分布を有する、請求項1~
13のいずれか一項に記載のブリスターパック。
【請求項15】
(1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオールが、実質的に多形体IIの形態で存在する、請求項1~
14のいずれか一項に記載のブリスターパック。
【請求項16】
(1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオールが、実質的に多形体IIIの形態で存在する、請求項1~
14のいずれか一項に記載のブリスターパック。
【請求項17】
請求項1~
16のいずれか一項に記載する、錠剤を少なくとも1つ含むブリスターパックであって、該ブリスターパックが、1つ以上のくぼみを含むブリスターのあるベースシート及びベースシートに結合した蓋をするシートを含み、ブリスターパックの端部が、少なくとも1つの切れ目を、ブリスターパックがくぼみを露出するように切れ目で引き裂き可能であるように、ブリスターのあるベースシート及び蓋をするシート中に含むブリスターパック。
【請求項18】
少なくとも1つの切れ目がくぼみの1つに隣接して位置する、請求項1~
17のいずれか一項に記載のブリスターパック。
【請求項19】
切れ目が、握られ、引き離されて、ブリスターのあるベースシートと蓋をするシートを引き裂くことが可能な、ブリスターパックの端部の2つの領域を分ける、請求項1~
18のいずれか一項に記載のブリスターパック。
【請求項20】
切れ目が裂け目又は切り込みである、請求項1~
19のいずれか一項に記載のブリスターパック。
【請求項21】
切れ目の最内部が、最も近いくぼみから少なくとも3mmである、請求項1~
20のいずれか一項に記載のブリスターパック。
【請求項22】
各くぼみに隣接して位置する少なくとも1つの切れ目を含む、請求項1~
21のいずれか一項に記載のブリスターパック。
【請求項23】
ブリスターのあるベースシートがアルミニウム層又はポリマー層を含む、請求項1~
22のいずれか一項に記載のブリスターパック。
【請求項24】
ブリスターのあるベースシートが100μm~200μmの厚さを有する、請求項
23に記載のブリスターパック。
【請求項25】
蓋をするシートがアルミニウム層を含む、請求項1~
24のいずれか一項に記載のブリスターパック。
【請求項26】
蓋をするシートが15μm~60μmの厚さを有する、請求項
25に記載のブリスターパック。
【請求項27】
少なくとも2つのくぼみを含み、くぼみの2つの間を通る引き裂き経路を形成するミシン目のある領域をさらに含む、請求項1~
26のいずれか一項に記載のブリスターパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤、特に式Iの化合物:
【化1】
を含む錠剤の形態の速崩壊性の経口剤形に関する。式(I)の化合物は、(1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオールと従来命名されており、本明細書では以降チカグレロルと称される。
【背景技術】
【0002】
チカグレロルは、米国及び欧州を含む複数の管轄区域での使用に認可されたBRILINTA(登録商標)(又は欧州ではBRILIQUE)として知られる医薬品中の有効成分である。チカグレロルは、特許文献1においてADP-受容体アンタゴニストとして開示されている。チカグレロルの発見は、非特許文献1及び非特許文献2において議論されている。
【0003】
BRILINTA(登録商標)は、現在60mg及び90mg即放性錠剤の形態で販売されている。特許文献2は、経口投与用のチカグレロルを含む特定の医薬製剤を開示している。
【0004】
脳卒中を有する相当な比率の患者が、急性期に飲み込みに問題を有し(嚥下障害)、多くの患者が継続した問題を有する。これは、そのような患者がそのまま飲み込まなければならない経口製剤を投与される場合に、潜在的に患者のコンプライアンス低下をもたらし得る。他の患者も嚥下障害も患い得るが、その理由は、嚥下障害が全年齢群でよく見られ、一般集団の約35%並びに施設で生活する高齢集団の最高60%及び長期の療養施設にいる全患者の約20%に観察されるためである。
【0005】
本発明は、例えばそのような患者に投与できる代替チカグレロル剤形に関する。これらの剤形は、現在販売されている60mg又は90mg即放性剤形と実質的に同等なチカグレロルバイオアベイラビリティを生み出す剤形を含む、チカグレロルを含む速崩壊性の経口剤形である。
【0006】
本明細書における以前に発表された文書の一覧又は議論は、必ずしも、その文書が、技術水準の一部であるか又は共通一般知識であることを認めるものとしてとられるべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】PCT/SE99/02256号パンフレット(国際公開第00/34283号パンフレット)
【文献】PCT/SE2007/000736号パンフレット(国際公開第2008/024045号パンフレット)
【非特許文献】
【0008】
【文献】Humphries B.,et al.,“‘Daring to be Different’:the Discovery of Ticagrelor”,The Handbook of Medicinal Chemistry,Principles and Practice,2015,The Royal Society of Chemistry,UK
【文献】Springthorpe B.,et al.,Biorg.Med.Chem.Lett.17(2007)6013-6018
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によると、
(1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオール;及び
少なくとも1種の崩壊性賦形剤(disintegrating excipient)
を含む錠剤であって;
約50~約150Nの硬度及び約3分未満の崩壊時間を有する錠剤が提供される。そのような組成物は、本明細書で以下に「本発明の錠剤」と称される。
【0010】
本発明の錠剤は、口内で迅速に崩壊する医薬製剤である。一実施形態において、本発明の錠剤は、約2分未満、又は好ましくは約1分未満の崩壊時間を有する。特定の実施形態において、本発明の錠剤は、約60秒未満、約55秒未満、約50秒未満、約45秒未満、約40秒未満、約35秒未満、又は約30秒未満の崩壊時間を有する。口腔内の迅速な崩壊により、特に、製剤を摂取するために同時に液体を飲む必要なく患者がチカグレロルを投与されることができる。さらに、迅速な崩壊により、チカグレロルが、患者、とりわけ小児及び高齢の患者並びに飲み込みに問題を有し得る他の患者(例えば、脳卒中を患った患者)によって、より容易に体内に取り込まれることが可能になる。
【0011】
崩壊時間は、米国薬局方(USP)モノグラフ701に述べられている方法に従って測定できる。この方法は、経口崩壊のモデルとして働き、口腔中の崩壊の速度を理解する指針として使用できるインビトロ崩壊時間の決定を可能にする。
【0012】
この方法により試験して3分以内に崩壊する製剤は、欧州薬局方(第8版)に従って「口腔内分散性(orodispersible)」であるとみなすことができる。US-FDAガイドラインは、用語「口腔内崩壊錠」が、この方法により試験しておよそ30秒以下のインビトロ崩壊時間を有する口腔内で迅速に崩壊する固体経口調合物と関連すべきであると勧告している。したがって、本発明の錠剤は、口腔内分散錠、又は口腔内崩壊錠であるとみなすことができる。
【0013】
本発明の錠剤は、患者への経鼻胃送達にも好適である。経鼻胃送達では、錠剤の内容物が経鼻胃チューブにより患者に投与できるように、錠剤の構成成分が水に懸濁性又は溶解性であることが要求される。
【0014】
口腔内崩壊製剤が保存の後に許容できる崩壊速度を維持することも重要である。錠剤の崩壊時間は、気体、水分、及び光への暴露を含むいくつかの因子により悪影響を受け得る。粒子の凝集は口腔中のチカグレロルの溶出を遅くさせるので、崩壊の間にチカグレロルの粒子の凝集を増加させ得る、保存の間の製剤の変化を最低限にすることが重要である。錠剤は、その最初の調合の後患者に何か月も投与されることがあり、本発明の錠剤は、保存の後に許容できる崩壊時間を維持することがわかった。
【0015】
好ましい実施形態において、錠剤は、少なくとも1か月の保存に3分未満(好ましくは60秒未満)の崩壊時間を有する。この点で言及され得る特定の保存条件には、25℃及び相対湿度60%での保存がある。他の実施形態において、錠剤は、より長期間(例えば、3、6、又は12か月)、及び/又はより過酷な条件下(例えば、40℃及び相対湿度75%)での保存後に3分未満(好ましくは60秒未満)の崩壊時間を有する。本明細書に記載されるブリスターパックなど密封された容器中で保存される錠剤は、12か月までの保存の後に、3分未満、さらには60秒未満の崩壊時間を維持することも示されている。
【0016】
口内での崩壊速度の増加は、特定の患者への投与を容易にする。速崩壊性と考えられる錠剤の例は、米国特許第3,885,026号明細書及び米国特許出願公開第2013/280327号明細書に記載されている。
【0017】
本発明の錠剤が生理溶液(例えば唾液)へのチカグレロル(例えば、顆粒の形態)の迅速な分散を示すことが重要である。この迅速な分散は患者による薬物の飲み込みを容易にする。チカグレロルの溶出速度も許容できるパラメーター内に維持されなければならない。錠剤は、典型的には、45分後のQ=70%の要件に合致する場合、好適な溶出プロファイルを有すると考えられる。欧州薬局方に従うそのような測定のための好適な条件には、Apparatus 2、75rpm、90mL、0.2%(w/v)Tween80がある。さらなる実施形態において、本発明の錠剤の溶出プロファイルは45分後のQ=70%であるものである。
【0018】
速崩壊性の経口剤形において望ましい質の1つは、チカグレロルのバイオアベイラビリティである。薬物のバイオアベイラビリティは、未変化の形態で体循環に達する投与された投与量の量である。したがって、充分なバイオアベイラビリティは、作用部位での治療上活性のある濃度を達成するのに重要である。製剤からの薬物放出と製剤の安定性の両方が、そのバイオアベイラビリティに影響する。したがって、薬物製剤が充分な量の薬物を迅速に放出することが重要である。インビトロ薬物放出は、例えば、標準的な米国薬局方(USP)溶出装置及び標準的な「生体関連(bio-relevant)」溶出媒体、例えばFaSSIF(Galia,E.,et al.,Pharm.Res.1998,15(5),698-705)を利用して、当技術分野に公知である試験を利用して測定できる。これらの試験は、インビボでの適当な製剤性能のいくらかの理解を与えることができる。
【0019】
本発明の錠剤は、少なくとも1種の崩壊性賦形剤を含む。前記崩壊性賦形剤は単一の物質であることも、複数の物質の混合物であることもあり(本明細書で崩壊性賦形剤プレミックスと称される)、複数の物質の前記混合物が崩壊剤として機能する。一実施形態において、崩壊性賦形剤は、迅速口腔内崩壊性賦形剤(fast oral disintegrating excipient)である。迅速口腔内崩壊性賦形剤の使用は、経口剤形の崩壊の速度を増加させる。迅速口腔内崩壊性賦形剤は、医薬製剤及び/又は機能性食品製剤での使用に好適であり、3分未満の口腔内崩壊時間を有する錠剤の製造を可能にする賦形剤である。本明細書に開示される実施形態において言及される崩壊性賦形剤が崩壊性賦形剤プレミックスであることが好ましい。
【0020】
本発明の錠剤における崩壊性賦形剤として使用されるのに好適である崩壊剤には、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、及び特にクロスポビドン、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、及びこれらの混合物があるが、これらに限定されない。エフメルトタイプC、エフメルトタイプM、Ludiflash、GalenIQ、Prosolv、及びPharmaburstなどの市販の崩壊性賦形剤プレミックスも本発明の錠剤に使用できる。
【0021】
エフメルトタイプC、エフメルトタイプM、Ludiflash、GalenIQ、Prosolv、及びPharmaburstは迅速口腔内崩壊性賦形剤の例である。エフメルト(富士化学工業株式会社)は、エフメルトタイプC又はエフメルトタイプMとして供給され得る。エフメルトタイプCは、マンニトール(65%)、キシリトール(5%)、無水第二リン酸カルシウム(4%)、クロスポビドン(8%)、及び微結晶性セルロース(18%)からなる製剤である。エフメルトタイプCは、上記成分の同時噴霧乾燥により形成される。エフメルトタイプMは、マンニトール、キシリトール、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、クロスポビドン、及び微結晶性セルロースからなる製剤である。Ludiflash(BASF Fine Chemicals)は、マンニトール(90%)、クロスポビドン(Kollidon CL-SF)(5%)、及びポリビニルアセテート(Kollicoat SR 30D)(5%)からなる製剤である。GalenIQ(Grade 721;Beneo-Palatinit)は、3:1の比の6-O-α-D-グルコピラノシル-D-ソルビトール及び1-O-α-D-グルコピラノシル-D-マンニトール二水和物の二糖アルコールを含む製剤である。Prosolv ODT G2(JRS Pharma)は、微結晶性セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、マンニトール、フルクトース、及びクロスポビドンを含む製剤である。Pharmaburst(SPI Pharma)は、マンニトール、ソルビトール、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、及びコロイド状二酸化ケイ素を含む製剤である。
【0022】
本発明の一実施形態において、賦形剤は、エフメルトタイプC、エフメルトタイプM、Ludiflash、GalenIQ、Prosolv、及びPharmaburstからなる群から選択される。エフメルトタイプC及びエフメルトタイプMは、Prosolv及びPharmaburstを含む錠剤に比べて、許容できる崩壊時間と共に、良好に流動し錠剤パンチへのスティッキングもピッキングも全くないという製造性の点で優れていることが見いだされたので、エフメルトタイプC及びエフメルトタイプMが特に好ましい。
【0023】
市販の迅速口腔内崩壊性賦形剤の多くを含むいくつかの崩壊性賦形剤プレミックスは、少なくとも1種の炭水化物充填剤及び少なくとも1種の崩壊剤を含む。この文脈において、用語「炭水化物」は、糖(例えば、単糖類、マルトース及びデキストリンなどの二糖類及びオリゴ糖)並びにその誘導体(例えば、マンニトール、キシリトール、及びソルビトールなどの多価アルコール誘導体)を含む。この点で言及され得る特定の炭水化物充填剤には、マルトース、デキストリン、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、及びこれらの混合物がある。マンニトールが最も好ましい炭水化物充填剤であるが、他の充填剤(非炭水化物充填剤を含む)が本発明の錠剤に存在してもよい。これらの材料は、迅速な溶出を可能にすること、なめらかな舌触り、及び最終的な錠剤の優れた圧縮性を含む、本発明の錠剤における使用に特に好適となるいくつかの性質を示す。本発明の一実施形態において、少なくとも1種の崩壊性賦形剤はマンニトールを含む。典型的に崩壊性賦形剤及び本発明の錠剤に有用である崩壊剤には、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、及び特に、クロスポビドン、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、及びこれらの混合物がある。クロスポビドンはこの点で特に好ましい。そのため、さらなる実施形態において、少なくとも1種の崩壊性賦形剤はクロスポビドンを含む。
【0024】
エフメルトタイプCは、本発明の錠剤における使用に最も好ましい崩壊性賦形剤である。そのため、一実施形態において、少なくとも1種の崩壊性賦形剤は、マンニトール、キシリトール、無水第二リン酸カルシウム、クロスポビドン、及び微結晶性セルロースを含む崩壊性賦形剤プレミックスである。さらなる実施形態において、少なくとも1種の崩壊性賦形剤プレミックスはエフメルトタイプCを含む。
【0025】
本発明の錠剤は、錠剤が充分に短い時間内に崩壊するために、充分な量の少なくとも1種の崩壊性賦形剤を含まなくてはならない。しかし、少なくとも1種の崩壊性賦形剤の量は、チカグレロルの粘着性及び/又は凝集性を考慮して、錠剤の製造に問題を引き起こすほど高くてはいけない。少なくとも1種の崩壊性賦形剤が錠剤の約50重量%~約80重量%の範囲の量で存在する崩壊性賦形剤プレミックスである本発明の錠剤が、許容できる崩壊時間(例えば、3分未満)を有すると同時に錠剤の製造の間にチカグレロルの粘着性及び/又は凝集性が適切に阻止できることが、驚くべきことに見いだされた。そのため、さらなる実施形態において、少なくとも1種の崩壊性賦形剤は、錠剤の約50重量%~約80重量%の範囲の量で存在する崩壊性賦形剤プレミックスである。先に議論された通り、少なくとも1種の崩壊性賦形剤がエフメルトタイプCなどの迅速口腔内崩壊性賦形剤であることが特に好ましいが、崩壊剤の一部のみが、典型的には崩壊剤として分類される物質であってもよい。実施例7に記載の製剤の場合、錠剤中の崩壊剤(すなわちクロスポビドン及び微結晶性セルロース)の全量は、錠剤の約19重量%である。しかしながら、崩壊性賦形剤(すなわちエフメルトタイプC)はマンニトール及び他の充填剤を含む混合物であり、この崩壊性賦形剤は錠剤の約64.8重量%で存在している。そのため、誤解を避けるために記すと、上述の実施形態は、錠剤が迅速口腔内崩壊性賦形剤(例えば、エフメルトタイプC)を錠剤の約50重量%~約80重量%の範囲の量で含む例を含む。
【0026】
さらなる実施形態において、錠剤は、少なくとも1種の崩壊剤(例えば、少なくとも1種の崩壊性賦形剤の1成分として)を、錠剤の約10~約30重量%など、錠剤の少なくとも約10重量%の全量で含む。
【0027】
本発明の錠剤に存在し得る非炭水化物充填剤には、第二リン酸カルシウム脱水物(dehydrate)又は第三リン酸カルシウム、又は特に無水第二リン酸カルシウム又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、又は前記のいずれかの混合物がある。好ましい実施形態において、本発明の錠剤は無水第二リン酸カルシウムを含む。
【0028】
特定の賦形剤(excipient)が、結合剤と充填剤(filler)の両方として、又は結合剤、充填剤、及び崩壊剤として作用し得ることが認識されるだろう。典型的には、充填剤と、結合剤と、崩壊剤を合わせた量は、例えば、錠剤の50~90重量%、例えば、70~85重量%を構成する。
【0029】
本発明の錠剤は、チカグレロル、(1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオールを含む。チカグレロルは、驚くべきことに、高度の粘着性及び凝集性を示すことが見いだされた。これらの性質は、打錠の間に組成物のスティッキング及びピッキングを起こすが、それは、低い錠剤重量均一性並びに許容できない錠剤外観につながるので望ましくない。粘着性及び/又は凝集性は、製品の製造と関連する他の問題も起こす。
【0030】
本発明の一実施形態において、チカグレロルは、錠剤の約10~約18重量%の量で存在する。好ましくは、チカグレロルは、錠剤の約12~約17重量%の量で存在する。さらなる実施形態において、錠剤は約60mg又は約90mgのチカグレロルを含む。この文脈において使用される場合、用語「約」は、チカグレロルの絶対量の90%~110%の範囲の変形を包含する。すなわち、「約60mg」は、54~66mgの範囲のチカグレロルを指し、「約90mg」は、81~99mgの範囲のチカグレロルを指す。好ましい実施形態において、錠剤は57~63mg又は85~95mgのチカグレロルを含む。約90mgのチカグレロルを含む錠剤が特に好ましい。
【0031】
本発明の錠剤は、約3分未満の崩壊時間を有する。これを達成するには、打錠工程で利用される圧縮力を含む、錠剤組成物の種々の側面及びその製造方法が制御されなければならない。本発明の錠剤の打錠工程に利用される圧縮力は、典型的には、従来の経口錠剤の形成に利用されるものより低く、本発明の錠剤は、結果的に、典型的にはより低い硬度を有する。これは、また、錠剤が口の中でより迅速に崩壊することを可能にし、それによりチカグレロルの溶出を促進する。本発明の錠剤は、約50~約150Nの硬度を有する。一実施形態において、錠剤は、約50~約130Nの硬度、例えば、約50~約120N、又は好ましくは約50~約100Nの硬度を有する。より好ましい実施形態において、本発明の錠剤は、約55~約90Nの硬度を有する。これらの錠剤の比較的低い硬度のため、それらは、従来のプッシュスルーブリスターパックから取り出される時に破損しやすい。そのため、本発明の錠剤は、以下で説明される通り、本発明の第8の態様のブリスターパックでの使用に特に適している。
【0032】
本発明の錠剤は、少なくとも1種の固化防止剤を含み得る。造粒工程(例えば、本明細書に記載される湿式造粒工程)を含むプロセスにより調製される錠剤では、前記少なくとも1種の固化防止剤は、造粒工程における成分の1つとして提供され得る(すなわち、粒内固化防止剤として)。或いは又は追加的に、前記少なくとも1種の固化防止剤又は流動促進剤は、造粒工程から得られた生成物に加えられ得る(すなわち、粒外固化防止剤又は流動促進剤として)。造粒を含むプロセスにより得られる錠剤を含む本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1種の固化防止剤が、1種以上の粒内固化防止剤と1種以上の粒外固化防止剤との両方として含まれ得る。誤解を避けるために記すと、前記粒内固化防止剤と粒外固化防止剤は同じでも異なっていてもよい。さらに、固化防止剤と流動促進剤の両方の性質を有する物質、例えば、コロイド状無水シリカが選択され得る。
【0033】
固化防止剤は、典型的には、チカグレロルの粘着性及び/又は凝集性を阻止するために加えられる。本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1種の固化防止剤は、錠剤の約0.5~約1重量%の量で存在する。
【0034】
一実施形態において、本発明の錠剤は1種以上の滑沢剤を含む。別の実施形態において、本発明の錠剤は1種の滑沢剤を含む。
【0035】
使用され得る他の好適な滑沢剤及び追加の賦形剤は、Handbook of Pharmaceutical Excipients,2nd Edition,American Pharmaceutical Association;The Theory and Practice of Industrial Pharmacy,2nd Edition,Lachman,Leon,1976;Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets Volume 1,2nd Edition,Lieberman,Hebert A.,et al,1989;Modern Pharmaceutics,Banker,Gilbert and Rhodes,Christopher T,1979;及びRemington’s Pharmaceutical Sciences,15th Edition,1975に記載されている。
【0036】
好適な滑沢剤には、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸カルシウム、カルナバワックス、水素化植物油、鉱油、ポリエチレングリコール、及びフマル酸ステアリルナトリウムがある。
【0037】
一実施形態において、滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム及びフマル酸ステアリルナトリウムから選択される。別の実施形態において、滑沢剤はフマル酸ステアリルナトリウムである。
【0038】
錠剤中に使用する滑沢剤の量を増やすと、打錠の間の粉末の流動性が向上し、錠剤の崩壊時間が増加することが見いだされた。滑沢剤を含む本発明の錠剤の実施形態において、滑沢剤は、錠剤の約1~約3重量%の量で存在する。別の実施形態において、滑沢剤は、約1~約2重量%の量で存在する。この量の滑沢剤の使用が、許容できる崩壊時間を維持しながら許容できる質のレベルを有する錠剤を与えることが見いだされた。
【0039】
加えられ得る追加の従来の賦形剤には、保存剤、安定剤、及び/又は酸化防止剤がある。好ましい実施形態において、本発明の錠剤は、保存剤も、安定剤も、酸化防止剤も全く含まない。さらなる好ましい実施形態において、錠剤は、実施例7に列記された成分から基本的になる。実施例7に示された成分のいずれの比率も、本明細書の別の場所に記載される比率に沿って変更できる。
【0040】
本発明の一実施形態において、錠剤は、チカグレロル、ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状無水シリカ、マンニトール、キシリトール、無水第二リン酸カルシウム、微結晶性セルロース、クロスポビドン、及びフマル酸ステアリルナトリウムを含む。
【0041】
本発明の好ましい実施形態において、錠剤は、チカグレロル、ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状無水シリカ、マンニトール、キシリトール、無水第二リン酸カルシウム、微結晶性セルロース、クロスポビドン、及びフマル酸ステアリルナトリウムから基本的になる。
【0042】
本発明の別の実施形態において、錠剤は下記を含む:
錠剤の約10~約18重量%のチカグレロル;
錠剤の約0.9~約2重量%のヒドロキシプロピルセルロース;
錠剤の約0.5~約1重量%のコロイド状無水シリカ;
錠剤の約47~約67重量%のマンニトール;
錠剤の約2.5~約4重量%のキシリトール;
錠剤の約2~約3.5重量%の無水第二リン酸カルシウム;
錠剤の約9~約15重量%の微結晶性セルロース;
錠剤の約5~約9重量%のクロスポビドン;及び
錠剤の約1~約2重量%のフマル酸ステアリルナトリウム。
【0043】
さらなる実施形態において、チカグレロルは、錠剤の約12~約17重量%の量で存在する。さらなる実施形態において、錠剤は約60mg又は約90mgのチカグレロルを含む。さらなる実施形態において、錠剤は約60mgのチカグレロルを含む。好ましい実施形態において、錠剤は約90mgのチカグレロルを含む。さらなる実施形態において、そのような錠剤は、少なくとも1か月の保存、例えば、25℃及び相対湿度60%での保存の後に、3分未満(好ましくは60秒未満)の崩壊時間を有する。さらなる実施形態において、そのような錠剤は、より長期間(例えば、3、6、又は12か月)、及び/又はより過酷な条件下(例えば、40℃及び相対湿度75%)での保存の後に、3分未満(好ましくは60秒未満)の崩壊時間を有する。さらなる実施形態において、上記実施形態で記載された崩壊時間を有する錠剤は、許容できる硬度(例えば、約50~約150N約50~約130N、約50~約120N、約50~約100N、又は約55~約90N)も有する。
【0044】
本発明の好ましい実施形態において、錠剤は下記から基本的になる:
錠剤の約10~約18重量%のチカグレロル;
錠剤の約0.9~約2重量%のヒドロキシプロピルセルロース;
錠剤の約0.5~約1重量%のコロイド状無水シリカ;
錠剤の約47~約67重量%のマンニトール;
錠剤の約2.5~約4重量%のキシリトール;
錠剤の約2~約3.5重量%の無水第二リン酸カルシウム;
錠剤の約9~約15重量%の微結晶性セルロース;
錠剤の約5~約9重量%のクロスポビドン;及び
錠剤の約1~約2重量%のフマル酸ステアリルナトリウム。
【0045】
なおさらなる好ましい実施形態において、錠剤は、実施例7に示された比率の実施例7に列記された成分から基本的になる。誤解を避けるために記すと、実施例7に示された成分のいずれの比率も、例えば、上記及び下記の実施形態に記載の比率に沿って調整できる。
【0046】
本発明の別の実施形態において、錠剤は下記を含む:
約60mgのチカグレロル;
約259mgのエフメルトタイプC;
エフメルトタイプCのマンニトール含量に加えて約59.1mgのマンニトール;
エフメルトタイプCのクロスポビドン含量に加えて約8mgのクロスポビドン;
約6mgのフマル酸ステアリルナトリウム;
約5mgのヒドロキシプロピルセルロース;及び
約2.5mgのコロイド状無水シリカ。
【0047】
この文脈において使用される場合、錠剤に含まれる「エフメルトタイプC」の量への言及は、錠剤の調製に使用されるエフメルトタイプCの量を指すものとする。これは、その材料の一部又は全部が最終錠剤中で同一の物理的形態を保持することを意味しない。さらなる実施形態において、錠剤は、少なくとも1か月の保存、例えば、25℃及び相対湿度60%での保存の後に、3分未満(好ましくは60秒未満)の崩壊時間を有する。さらなる実施形態において、錠剤は、より長期間(例えば、3、6、又は12か月)及び/又はより過酷な条件下(例えば、40℃及び相対湿度75%)での保存の後に、3分未満(好ましくは60秒未満)の崩壊時間を有する。さらなる実施形態において、上記実施形態に記載された崩壊時間を有する錠剤は、許容できる硬度(例えば、約50~約150N約50~約130N、約50~約120N、約50~約100N、又は約55~約90N)も有する。
【0048】
本発明の別の実施形態において、錠剤は下記を含む:
約90mgのチカグレロル;
約389mgのエフメルトタイプC;
エフメルトタイプCのマンニトール含量に加えて約88.6mgのマンニトール;
エフメルトタイプCのクロスポビドン含量に加えて約12mgのクロスポビドン;
約9mgのフマル酸ステアリルナトリウム;
約7.5mgのヒドロキシプロピルセルロース;及び
約3.8mgのコロイド状無水シリカ。
【0049】
この文脈において使用される場合、錠剤に含まれる「エフメルトタイプC」の量への言及は、錠剤の調製に使用されるエフメルトタイプCの量を指すものとする。これは、その材料の一部又は全部が最終錠剤中で同一の物理的形態を保持することを意味しない。さらなる実施形態において、錠剤は、少なくとも1か月の保存、例えば、25℃及び相対湿度60%での保存の後に、3分未満(好ましくは60秒未満)の崩壊時間を有する。さらなる実施形態において、錠剤は、より長期間(例えば、3、6、又は12か月)及び/又はより過酷な条件下(例えば、40℃及び相対湿度75%)での保存の後に、3分未満(好ましくは60秒未満)の崩壊時間を有する。さらなる実施形態において、上記実施形態に記載された崩壊時間を有する錠剤は、許容できる硬度(例えば、約50~約150N約50~約130N、約50~約120N、約50~約100N、又は約55~約90N)も有する。
【0050】
本発明のさらなる態様によると、本発明の錠剤は、チカグレロルの造粒、例えば湿式造粒を含むプロセスにより得られる。
【0051】
造粒は、一次粒子(粉末)が粘着させられて、顆粒と呼ばれるより大きな多粒子状(multiparticulate)存在物が形成するプロセスである。造粒は、ミックス中にかなり均一な分布が達成されるように、粉末化された成分の最初の乾式混合の後に通常開始する。造粒方法は、顆粒を形成するのに液体を利用する湿式造粒法と、液体を利用しない乾式法の2種類に分類できる。
【0052】
乾式造粒法において、一次粉末粒子は圧力を受けて(又は圧縮)凝集する。2つの主なプロセスがある:大きな錠剤(スラグとしても知られる)が強力な打錠機により製造されるか、或いは粉末粒子が2つのローラーの間で圧縮されて、材料のシート又は「リボン」が製造される(ローラー圧縮として知られているプロセス)。どちらの場合でも、圧縮された材料は、好適な粉砕技法を利用して粉砕されて、顆粒状の材料が製造される。次いで、顆粒は標準的な打錠機中で圧縮されて、錠剤を製造することができる。
【0053】
湿式造粒は、造粒用流体(granulating fluid)を使用して一次粉末粒子を集合させることを含む。流体は溶媒を含むが、これは乾燥により除去可能であり非毒性である。造粒用流体は、単独で使用できるが、より典型的には結合剤(binding agent)(結合剤(binder))と共に使用して、乾燥状態での粒子の密着を確実にできる。結合剤は、結合剤溶液としても(造粒用流体の一部として)、一次粉末粒子と混合された乾燥材料としても系に加えることができる。4種の主な湿式造粒機がある:せん断造粒機(プラネタリー型ミキサーなど)、高せん断混合器造粒装置(Fielder又はDiosnaなど)、二軸スクリュー造粒機(ConsiGmaなど)、及び流動床造粒機(Aeromatic又はGlattなど)。
【0054】
チカグレロルを含む混合物の湿式造粒は、チカグレロルの密着及び/又は粘着性と関連した問題を克服し、それにより、粉末の単なる直接打錠を含む打錠プロセスに対して活性薬剤の製造性を向上させることが見いだされた。
【0055】
そのため、本発明の第2の態様によると、チカグレロル及び少なくとも1種の固化防止剤の湿式造粒を含むプロセスにより得られる錠剤が提供される。本発明のこの態様の好ましい実施形態において、錠剤は、第1の実施形態による錠剤である。すなわち、チカグレロル及び少なくとも1種の固化防止剤の湿式造粒を含むプロセスにより得られる錠剤が、約50~約150Nの硬度及び約3分未満の崩壊時間を有することが好ましい。
【0056】
一実施形態において、湿式造粒プロセスは、混合物中の乾燥成分の少なくとも約30重量%の量のチカグレロルを含む混合物の湿式造粒を含む。別の実施形態において、湿式造粒プロセスは、混合物中の乾燥成分の少なくとも約35重量%の量のチカグレロルを含む混合物の湿式造粒を含む。湿潤粒質物(granulate)中により高濃度のチカグレロルを含めると、錠剤がより高レベルの崩壊性賦形剤を含めるようになり、それにより崩壊時間が改善される。
【0057】
さらなる実施形態において、湿式造粒プロセスは、混合物中の乾燥成分の約70重量%までの量のチカグレロルを含む混合物の湿式造粒を含む。なおさらなる実施形態において、湿式造粒プロセスは、混合物中の乾燥成分の約35~約70重量%の量のチカグレロルを含む混合物の湿式造粒を含む。驚くべきことに、チカグレロルの湿式造粒が、造粒混合物中に存在するチカグレロルのレベルを低下させることにより促進されることが見いだされた。理論により拘束されることは望まないが、製造及び特に湿式造粒工程における多くの問題が、チカグレロルの粘着性及び/又は凝集性により生じると考えられている。これは、造粒混合物中のチカグレロルのレベルを低下させることにより、且つ/又は造粒混合物中に存在する固化防止剤の相対量を増加させることにより阻止できる。
【0058】
そのため、本発明のさらなる好ましい実施形態、例えば、錠剤が、混合物中の乾燥成分の約70重量%までのチカグレロルを含む混合物の湿式造粒を含む湿式造粒プロセスにより製造される実施形態において、湿式造粒プロセスに使用される混合物は、混合物中の乾燥成分の約0.1~約1重量%の範囲の量の固化防止剤を含む。
【0059】
別の実施形態において、本発明は、高せん断湿式造粒により調製された医薬組成物に関する。なおさらなる実施形態において、本発明は、二軸スクリュー湿式造粒プロセスにより調製された医薬組成物に関する。
【0060】
高せん断湿式造粒は、一次粉末(primary powders)の徹底的な乾式混合とその後の造粒用流体の添加を含むプロセスであり、顆粒の形成をもたらす。造粒用流体は、揮発性溶媒(通常は水)を含み、粒子の密着を確実にする結合剤(結合剤は、造粒される製剤のバルクに粉末として乾燥した状態で加えられることもある)も含み得る。顆粒は、それが構成される元の粉末に比べて、流動性の改善、偏析のリスク減少、均質性の増加の点で大きな利点を有する(Aulton ME,Pharmaceutics-The Science of Dosage Form Design,2nd Edition,2002,Churchill Livingstoneから得られた情報)。
【0061】
一実施形態において、本明細書に記載される湿式造粒プロセスから得られた顆粒状生成物は、約1600μm未満のD(v,0.9)値を有する顆粒を含む。好ましい実施形態において、約1200μm未満のD(v,0.9)値。別の実施形態において、本明細書に記載される湿式造粒プロセスから得られた顆粒状生成物は、約10μm未満のD(v,0.1)値を有する顆粒を含む。造粒プロセスで得られた顆粒の粒径分布は、当業者に公知である技法を利用して決定できる。この点で言及され得る特定の技法には、レーザー回折技法がある。
【0062】
一実施形態において、上述の通り、湿式造粒工程の完了後、造粒工程の生成物は、第2の量の少なくとも1種の固化防止剤(粒質物中に存在し得る固化防止剤の他に)と完了後に混合され得る。この粒外固化防止剤は、粒質物中の前記固化防止剤と同じでも、異なっていてもよい。或いは、造粒工程の生成物は、流動促進剤と混合され得る。一実施形態において、第2の量の固化防止剤又は流動促進剤(すなわち粒外固化防止剤又は流動促進剤)は、錠剤の約0.2~約0.6重量%で存在する。粒外固化防止剤又は流動促進剤の存在は、特に少なくとも錠剤の0.3重量%が存在した場合、崩壊時間に著しく影響を与えることなく打錠の間の混合物の流動性を改善することが好都合にも見いだされた。したがって、別の実施形態において、第2の量の固化防止剤又は流動促進剤(すなわち粒外固化防止剤又は流動促進剤)は、錠剤の約0.3~約0.6重量%で存在する。
【0063】
本発明の第2の態様の別の実施形態において、錠剤は、チカグレロル、固化防止剤、及び結合剤の湿式造粒を含むプロセスにより得られる。結合剤としての使用に好適であり得る物質には、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コポビドン、及びメチルセルロース、又はこれらの混合物がある。特に好ましい結合剤はヒドロキシプロピルセルロースである。
【0064】
一実施形態において、結合剤は、湿式造粒混合物中に、混合物中の乾燥成分の約2~約6重量%の範囲の量で存在する。しかし、造粒(例えば、湿式造粒)工程に使用される結合剤の量を増加させることが、本発明の錠剤の崩壊時間を短くすることが見いだされた。そのため、好ましい実施形態において、結合剤は、湿式造粒混合物中に、混合物中の乾燥成分の約3~約6重量%の範囲の量で存在する。さらなる実施形態において、結合剤は、湿式造粒混合物中に、混合物中の乾燥成分の約4~約5重量%の範囲の量で存在する。
【0065】
チカグレロルが造粒工程に供給される形態も本発明の錠剤の崩壊時間に影響する。チカグレロルは、非晶質形態及び4種の異なる実質的に結晶性の形態で存在する(国際特許出願第SE01/01239号パンフレット(国際公開第01/92262号パンフレット)参照)。第1か第2の態様のいずれかの一実施形態において、本発明は、チカグレロルが結晶性形態である、先に定義された錠剤に関する。
【0066】
一実施形態において、本発明は、チカグレロルが実質的に多形体IIの形態で存在する医薬組成物に関する。別の実施形態において、本発明は、チカグレロルが実質的に多形体IIIの形態で存在する医薬組成物に関する。この文脈での用語「実質的に存在する」の使用は、チカグレロルが、圧倒的に明示された多形体のものである形態で提供されることを意味し、例えばチカグレロルの少なくとも80重量%が明示された多形体の形態である。より好ましくは、少なくとも90重量%又は少なくとも95重量%(例えば、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、又は少なくとも99重量%)のチカグレロルが、明示された多形体(例えば、多形体IIか多形体IIIのいずれか)の形態である。
【0067】
本発明の錠剤への組み込みの前のチカグレロルの粒径も、錠剤の崩壊時間に影響し得る。ある範囲の粒径を有するチカグレロルを使用して調製された錠剤が、所望の崩壊性質を有することが見いだされた。一実施形態において、チカグレロルは、約5μm~約50μmのD(v,0.9)粒径分布を有する。さらなる実施形態において、チカグレロルは、約5μm~約40μmのD(v,0.9)粒径分布を有する。より好ましい実施形態において、チカグレロルは、約10μm~約30μmのD(v,0.9)粒径分布を有する。
【0068】
例えば、とりわけ崩壊時間、溶出速度、又は錠剤硬度の変化が製品の性能に影響を与え得るので、これらの組成物の物性が保存時に安定であることが望ましい。製品保存寿命を定めるために利用されるInternational Council for Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use(ICH)安定性試験条件下での保存時の溶出速度の低下が、チカグレロルのバイオアベイラビリティを減少させ得ることがあり得る。物性の安定性は、本明細書の別の場所に議論される通り、崩壊時間及び溶出試験のUSP方法により測定できる。
【0069】
本発明の第3の態様において、本発明の第1及び第2の態様の錠剤を調製する方法が提供される。
【0070】
前記方法は、チカグレロルと少なくとも1種の固化防止剤を、液体と共に、又は液体中で混合して、湿潤粒質物を与えることを含む。好ましい実施形態において、湿潤粒質物混合物は、高せん断ミキサーにより混合される。なおさらなる実施形態において、湿潤粒質物混合物は、二軸スクリュー造粒機を使用して処理される。別の実施形態において、湿式造粒プロセスに使用される液体は水である。
【0071】
湿潤粒質物混合物は、さらに充填剤及び結合剤を含み得る。一実施形態において、充填剤はマンニトールである。さらなる実施形態において、結合剤はヒドロキシプロピルセルロースである。
【0072】
本発明の第3の態様の一実施形態において、錠剤を製造する方法は、
混合物中の乾燥成分の約35~約70重量%のチカグレロル;及び
混合物中の乾燥成分の約0.1~約1重量%の範囲の量の固化防止剤
を含む湿式造粒混合物を提供することを含む。
【0073】
さらなる実施形態において、直前に示された比率でチカグレロル及び固化防止剤を含む他に、方法に使用される混合物は、
混合物中の乾燥成分の約25重量%~約60重量%の範囲の量の充填剤;及び/又は
混合物中の乾燥成分の約3~約6重量%の範囲の量の結合剤
をさらに含む。
【0074】
本発明の第3の態様に関連して本明細書に記載される実施形態のそれぞれにおいて、前記方法は、
(I)湿潤粒質物混合物を乾燥させる工程、
(II)1種以上の賦形剤を乾燥した粒質物に加える工程、及び次いで
(III)混合物を錠剤に成形する工程
をさらに含み得る。
【0075】
上記工程(I)の乾燥プロセスは、あらゆる従来の乾燥プロセスを含み得るが、好ましい実施形態において、それは、吸気温度(inlet air temperature)が約50℃である流動床乾燥を含む。そこから得られる粒質物生成物は、所望の粒径分布を有する粒質物を得るために、さらに粉砕され得る。これを達成するために、ミルスクリーンがさらに使用され得る。一実施形態において、乾燥された顆粒は、D(v,0.9)が約1600μm未満である粒径分布を生じるように粉砕される。粒径分布は、当業者に公知である技法、例えば本明細書に記載されるレーザー回折法を利用して決定され得る。
【0076】
湿潤粒質物中に存在し得る大きな塊を除き、それにより乾燥プロセスを促進するために、工程(I)の乾燥プロセスの前に、湿式粉砕工程があり得る。
【0077】
粒質物及び1種以上の賦形剤を含む混合物は、あらゆる従来の打錠プレスを使用して錠剤に成形され得る。一実施形態において、錠剤は、6kN~15kN(例えば、7.9kN~13.1kN)の圧縮力を利用して圧縮される。
【0078】
さらなる実施形態において、上記工程(II)で導入される1種以上の賦形剤には、上記で定義された少なくとも1種の崩壊性賦形剤、上記で定義された第2の量の固化防止剤、及び/又は上記で定義された滑沢剤がある。
【0079】
本発明の所与の態様、特徴、又はパラメーターの選択及び選択肢は、文脈が他の意味を示す場合を除き、本発明の全ての他の態様、特徴、及びパラメーターのありとあらゆる選択及び選択肢と組み合わせて開示されたとみなされるべきである。例えば、本明細書で言及された崩壊性賦形剤のいずれも、本明細書で言及された結合剤、固化防止剤、及び/又は滑沢剤のいずれとも組み合わせて使用できる。さらに、前記成分は、本発明の錠剤中に、本明細書で言及された比率のいずれでも、前記比率のどのような組み合わせでも存在し得る。
【0080】
本発明の錠剤中のチカグレロルは、P2T(P2YADP又はP2TAC)受容体アンタゴニストとして作用する。したがって、本発明の錠剤は療法に有用である。特に、本発明の錠剤は、冠状動脈疾患、脳血管疾患、又は末梢血管疾患を有する患者の動脈血栓性合併症の治療又は予防における使用に適応とされる。動脈血栓性合併症は、不安定狭心症、アテローム性動脈硬化の原発性(primary)動脈血栓性合併症であって、血栓性又は塞栓症脳卒中、一過性脳虚血発作、末梢血管疾患、血栓溶解を伴う又は伴わない心筋梗塞など、アテローム硬化性疾患における血管形成術(冠動脈形成術(PTCA)、動脈内膜切除、ステント留置、冠動脈及び他の血管のグラフト手術を含む)などの介入による動脈の合併症、偶発的又は手術による外傷後の組織救済、皮膚弁及び筋肉弁を含む再建手術など手術による又は物理的損傷の血栓性合併症、播種性血管内凝固症候群、血栓性血小板減少性紫斑病、溶血性尿毒症症候群などのびまん性血栓性/血小板消費成分を含む病態、敗血症、成人呼吸窮迫症候群、抗リン脂質症候群、ヘパリン誘発性血小板減少症及び子癇前症/子癇の血栓性合併症、又は深静脈血栓症などの静脈血栓症、静脈閉塞性疾患、血小板血症、鎌状赤血球症を含む骨髄増多症などの血液学的病態;又は心肺バイパス及び体外式膜型人工肺などの機械的に誘発されたインビボの血小板活性化の予防(微小血栓の予防)において、血液製剤、例えば血小板濃厚液の保存における使用など、機械的に誘発されたインビトロの血小板活性化、又は腎透析及びプラズマフェレーシスの場合などのシャント閉塞、血管炎、動脈炎、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、及び臓器移植拒絶など血管の損傷/炎症に続発する血栓症、片頭痛、レイノー現象などの病態、アテローム性のプラーク形成/進行など、血小板が血管壁の根源的な炎症性疾患過程の一因となり得る病態、狭窄/再狭窄、並びに血小板及び血小板由来因子が免疫学的疾患過程に関与している喘息などの他の炎症性病態を含み得る。さらなる適応症には、CNS疾患の治療並びに腫瘍の成長及び広がりの予防がある。
【0081】
本発明の第1及び第2の態様の錠剤は、心血管疾患を有する患者におけるアテローム血栓性イベントの治療又は予防に特に有用になり得る。一実施形態において、患者は、急性冠症候群に罹患しているか、且つ/又は心筋梗塞の既往歴を有する。そのため、本発明の第4の態様によると、心血管疾患を有する患者におけるアテローム血栓性イベントを治療又は予防する方法であって、本発明の第1又は第2の態様による錠剤の、そのような疾患に罹患しているか、又はそのような疾患にかかりやすい患者への投与を含む方法が提供される。
【0082】
第5の態様によると、本発明は、心血管疾患を有する患者におけるアテローム血栓性イベントの治療又は予防に使用するための、本発明の第1又は第2の態様による錠剤の形態である医薬品の製造における
(1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオール;及び
少なくとも1種の崩壊性賦形剤
を含む組成物の使用を提供する。
【0083】
この点で言及され得る特定のアテローム血栓性イベントには、心血管死、心筋梗塞、脳卒中(例えば、虚血性脳卒中)、及び末梢動脈疾患からなる群から選択されるアテローム血栓性イベントがある。本発明の錠剤は、糖尿病を有する患者におけるアテローム血栓性イベントの治療又は予防にも有用であり得る。
【0084】
チカグレロルは、急性冠症候群の治療のためにステント留置された患者におけるステント血栓症の率を低下させることも可能である。そのため、本発明の第6の態様によると、急性冠症候群の治療のためにステント留置された患者におけるステント血栓症を治療又は予防する方法であって、本発明の第1又は第2の態様による錠剤の前記患者への投与を含む方法が提供される。
【0085】
第7の態様によると、本発明は、ステント血栓症の治療又は予防に使用するための、本発明の第1又は第2の態様による錠剤の形態である医薬品の製造における
(1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオール;及び
少なくとも1種の崩壊性賦形剤
を含む組成物の使用を提供する。好ましい実施形態において、患者は、急性冠症候群の治療のためにステント留置された患者である。
【0086】
本発明の第4~第7の態様の方法及び使用は、従来の経口製剤を飲み込むのが困難な患者(例えば、嚥下障害を患っている患者)にチカグレロルの投与を可能にするのに特に有用である。そのような患者には高齢の患者がある。本発明の錠剤を受け取ることから利益を得ることができる他の患者には、以前に心筋梗塞又は脳卒中に罹患した患者がある。
【0087】
用語「治療する」、「治療すること」、又は「の治療」(及びこれらの文法的変形体)は、対象の病態の重症度を減少させ、少なくとも部分的に改善し、若しくは寛解させること、及び/又は少なくとも1つの臨床症状のいくらかの緩和、軽減、若しくは減少が達成されること、及び/又は疾患若しくは障害の進行の遅延があることを意味する。
【0088】
用語「予防する」、「予防すること」、又は「の予防」(及びこれらの文法的変形体)は、患者が病態に罹患する可能性が減少し、少なくとも部分的に減少し、若しくは避けられること、及び/又は少なくとも1つの臨床症状のいくらかの予防若しくは阻害が達成されること、及び/又は疾患若しくは障害の発症の遅延があることを意味する。
【0089】
本発明の方法を「必要とする対象」は、急性冠症候群を有すると知られているか、又は急性冠症候群に罹患していると疑われる対象であり得る。
【0090】
ブリスターパック
プッシュスルータイプのブリスターパック包装は当技術分野に公知であり、患者が各錠剤又はカプセルを必要とする時に取り出せるように錠剤及びカプセルを包装する簡単な方法を提供する。しかし、このタイプの包装と関連する押し出しの行為が、その中に収容されている錠剤及びカプセルに、許容できないレベルの破損をもたらし得る力を加えることが見いだされた。これは、特に、比較的低い硬度を有する錠剤、例えば、本発明の第1及び第2の態様の錠剤に当てはまる。
【0091】
発明者らは、いまや、これらの欠点のいくつかを克服する新規な形態の包装を発見した。
【0092】
そのため、本発明の第8の態様において、医薬製剤、特に錠剤及びカプセルと共に使用するのに好適であるブリスターパックが提供される。ブリスターパックは、ブリスターのあるベースシート(blistered base sheet)とそれに結合した蓋をするシート(lidding sheet)を含む。ブリスターのあるベースシートは、1つ以上のくぼみも含む。ブリスターパックが切れ目(break)で引き裂き可能でありくぼみの1つを露出するように、ブリスターのあるベースシート及び蓋をするシート中に切れ目が存在する。そのようなブリスターパックは、以下で「本発明の包装」と称される。
【0093】
本発明の梱包の実施形態は、
図1A、1B、2A、2B、3A及び3Bに示されている。本発明の包装は、患者、とりわけ高齢者又は虚弱な者により容易に開けられる保存の形態を与えるように意図されている。包装は、脆い錠剤(例えば、高い摩損度を有する錠剤)に有用であるようにも意図されている。包装は、引き裂き行為により開けることができ、それは、ブリスターパック中のくぼみの1つの内容物を露出して、それにより、くぼみ内に収容されている錠剤又はカプセルを放出するように作用する。錠剤及びカプセルは、各くぼみ内に個別に包装できる。
【0094】
本発明の包装は、蓋をするシート11が結合しているブリスターのあるベースシート10を含み、ブリスターのあるベースシートと蓋をするシートの間に1つ以上のくぼみが存在するシートを含む。ブリスターパック20は、1つ以上の切れ目22を含む外縁21を有する。これらの切れ目22は、「引き裂きノッチ(tear notches)」と称されることもあり、ブリスターのあるベースシート10と蓋をするシート11のどちらにもある切れ目である。切れ目は、ブリスターパックが引き裂き可能であるように、ブリスターパックの端に引き裂き点を与えるように機能する。切れ目で引き裂かれると、引き裂き行為は、くぼみ23の内容物を露出するためにくぼみ23の1つを開ける。典型的には、各くぼみは、単一の錠剤又はカプセル12を収容している。
【0095】
使用者は、切れ目の両側24、25に位置するブリスターパックの一部を握り、次いで、これらの部分を引き離すことにより、ブリスターパックを引き裂いて開けることができる。これらの領域を引き離す行為により、切れ目で引き裂きが生じる。したがって、一実施形態において、切れ目は、握られ引き離されて、ブリスターのあるベースシートと蓋をするシートを引き裂くことが可能である、ブリスターパックの端の2つの領域を分離する。
【0096】
一実施形態において、切れ目22(又は引き裂きノッチ)は、くぼみ23の1つに隣接して位置する。切れ目22を、くぼみ23の1つに隣接して配置することにより、その切れ目で始まった引き裂きが、くぼみの1つを横切り(intercepts with)、それによりくぼみの1つを露出する経路をたどる可能性がより高くなる。
【0097】
さらなる実施形態において、ブリスターパックは、外縁21に複数の前記切れ目22を含む。そのような場合において、2つ以上の切れ目がブリスター中の各くぼみと関連して、それにより、使用者が包装中で引き裂きを始められる複数の点を提供できる。句「と関連する」の使用は、切れ目がくぼみのすぐ近くにあるか、又は切れ目が、その切れ目で始まった引き裂きが、くぼみを横切る引き裂きの経路をたどるように配置されていることを意味する。一実施形態において、切れ目22はくぼみ23に隣接して位置する。好ましくは、ブリスターパックは、各くぼみ23と関連した1つの切れ目22を含む。そのため、さらなる実施形態において、ブリスターパックは、各くぼみ23に隣接して位置する少なくとも1つの切れ目22を含む。
【0098】
好ましい実施形態において、ブリスターパック20は、4~24個のくぼみ(例えば、6~14個のくぼみ)などの複数のくぼみを含む。特定の実施形態において、ブリスターパックは8又は10個のくぼみを含む。
【0099】
ブリスターパックが複数のくぼみを含む実施形態において、ブリスターパックは、複数の前記切れ目22を含む。好ましくは、切れ目の数はくぼみの数に等しく、ブリスターパックは、各くぼみ23と関連する(例えば、隣接して位置する)1つの切れ目22を含む。
【0100】
切れ目は、本明細書に記載される方法でブリスターパックの引き裂きを促進するのに好適なあらゆる形状、構造、又は寸法をとることができる。一実施形態において、切れ目は裂け目(cleft)31又は切り込み(incision)32である。用語「裂け目」は、材料がベース及び蓋をするシートから除かれて切れ目を形成している、ブリスターパックの外縁にある切開部(cut-in)を指す。裂け目は、切れ目の両側に位置するブリスターパックの端の領域が引き離される時、切れ目での引き裂きの開始を容易にするどのような好適な形状もとることができる。典型的には、これは、裂け目が、引き裂きが始まり得る尖頭(cusp)33(すなわち一形態の特異点)を含むことを確実にすることにより達成される。一実施形態において、裂け目31は三角形である。別の実施形態において、裂け目の端は内向きに(すなわち裂け目の方に)曲がっており、アストロイドの尖頭に類似の形状を与える。曲がった端を有する裂け目を使用することにより、使用者が握ることができるベース及び蓋をするシートの面積が増加する。
【0101】
用語「切り込み」は、ブリスターのあるベースシート20の外縁から内向きに延びる直線又は曲線の切り口を指す。裂け目が切り込み32の形態である場合、裂け目の形成時にブリスターパックはほとんど又は全く除かれず、これにより、やはり、使用者が握ることができるベース及び蓋をするシートの面積が増加する。切り込みの最内端(すなわち、ブリスターパックの外縁に位置しない切り込みの端)は尖頭である。
【0102】
切れ目は、引き裂きの前にくぼみの周囲の密封を損なうことを避けるために充分に小さくなくてはならない。典型的には、くぼみ23と最も近い切れ目22(又は、ブリスターパックの端)の間の最低距離は少なくとも3mmでなくてはならない。
【0103】
典型的には、切れ目の尖頭33(例えば、切れ目が裂け目又は切り込みである場合)は最内点であり、したがって、所与のくぼみ23に最も近い切れ目の点である。そのため、さらなる実施形態において、切れ目の最内部分33は、最も近いくぼみ23から少なくとも3mmである。
【0104】
切れ目22は、引き裂き力が加えられる時にブリスターパック中に引き裂きを始めることができるような充分なサイズでもなくてはならない。典型的には、切れ目は、外縁21から内側に少なくとも約1mm、好ましくは少なくとも約2mmの距離に延びなくてはならない。
【0105】
ブリスターのあるベースシート10及び蓋をするシート11はどちらも、充分な引き裂き力が加えられる場合に使用者により引き裂かれることが可能である材料(例えば、ラミネートの形態の複数の材料)でなくてはならない。ブリスターのあるベースシート及び蓋をするシートは、使用者による引き裂きの前に包装の完全性を損なう危険性を最低限にするのに充分に強く耐久性がなくてはならない。
【0106】
一実施形態において、ブリスターのあるベースシート10は、アルミニウム層又はポリマー層を含む。好ましくは、ブリスターのあるベースシート10はアルミニウム層を含む。ブリスターのあるベースシートがアルミニウム層を含む実施形態において、前記アルミニウム層は、約30~約60μm、好ましくは約45μmの厚さを有し得る。
【0107】
代替実施形態において、ブリスターのあるベースシート10はアルミニウム層を含まない。そのような代替実施形態において、ブリスターのあるベースシートは、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン、ポリエステル(例えば、PET)、又はポリアミドなどのポリマーで形成された少なくとも1層を含む。
【0108】
別の実施形態において、ブリスターのあるベースシート10は複数の層を含む。例えば、前記複数の層の1つは、上述のアルミニウム層であり得る。そのようなラミネートに使用できる他の材料には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン、ポリエステル(例えば、PET)、及びポリアミドなどのポリマーがある。複数の層を含むブリスターのあるベースシートに使用できる他の材料にはシール剤がある。典型的には、シール剤は最内層を形成し、したがって、くぼみの内容物と接触し得る。使用できるなおさらなる材料には、コーティング、例えば、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)がある。そのような材料は、気体及び水分に対するブリスターパックの透過性を減少させる点で利点を与え得る。これは、本発明の第1及び第2の態様による錠剤が比較的高い吸湿性を有するため、これらの錠剤にとって特に重要である。
【0109】
ブリスターのあるベースシート10が複数の層を含む実施形態において、ブリスターのあるベースシートは、約100~約200μmの厚さを有し得る。
【0110】
さらなる実施形態において、ブリスターのあるベースシート10は、アルミニウム層、PVC層、及びポリアミド層を含む(又は基本的にこれらからなる)。そのような実施形態の一例において、PVC層は最内層であり、ポリアミド層は最外層である。接着層も、そのような実施形態において、アルミニウム層と、OVC層と、ポリアミド層との間に、それらを接着するために存在し得る。1つ以上のラッカー層もブリスターのあるベースシート上に存在し得る。ラッカー層は、ブリスターのあるベースシートと蓋をするシートとの間のヒートシールの形成を助けるために使用できる。前記ブリスターのあるベースシートのさらなる例において、ブリスターのあるベースシート10は約100~約200μmの厚さを有する。
【0111】
一実施形態において、蓋をするシート11はアルミニウム層を含む。蓋をするシートがアルミニウム層を含む実施形態において、前記アルミニウム層は、約10~約30μm、好ましくは約20μmの厚さを有し得る。
【0112】
別の実施形態において、蓋をするシート11は複数の層を含む。例えば、前記複数の層の1つは上述のアルミニウム層であり得る。そのようなラミネートに使用できる他の材料には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン、ポリエステル(例えば、PET)、及びポリアミドなどのポリマーがある。この点で使用できる他の材料は紙である。最上層として紙を使用すると、ブリスターパック上でのインクによる印刷が容易になる。1つ以上のラッカー層も蓋をするシート中に存在し得る。ラッカー層は、ブリスターのあるベースシートと蓋をするシートの間のヒートシールの形成を助けるために使用できる。
【0113】
蓋をするシート11が複数の層を含む実施形態において、蓋をするシートは約15μm~約60μmの厚さを有し得る。
【0114】
さらなる実施形態において、蓋をするシート11はアルミニウム層及びラッカー層を含む(又は基本的にこれらからなる)。そのような実施形態の一例において、ラッカー層は最内層である。前記蓋をするシートのさらなる例において、蓋をするシートは、約15μm~約60μm、例えば、約15μm~約45μmの厚さを有する。蓋をするシートの最外表面に、印刷がさらに施され得る。
【0115】
ブリスターパックが複数のくぼみを含む実施形態において、包装は、これらのくぼみの1つ以上が、くぼみのいずれの密封も損なうことなく他から取り外すことができる形態で提供できる。これは、使用者がくぼみの1つ以上を残りから分離するのを容易にする、ブリスターパックのミシン目のある領域26の使用により実施できる。ミシン目のある領域26は、ミシン目のある領域の一端で始まったブリスターパックの引き裂きがミシン目に沿った引き裂きをもたらすように、前記くぼみの2つの間を通る引き裂き経路を形成しなければならない。この引き裂き経路は、くぼみの1つ以上を横切る引き裂きの形成を促進しないので、上述の切れ目のいずれかと関連したものとは異なる。
【0116】
このため、なおさらなる実施形態において、ブリスターパックは少なくとも2つのくぼみを含み、前記くぼみの2つの間を通る引き裂き経路を形成するミシン目のある領域をさらに含む。
【0117】
上述の通り、本発明のブリスターパックは、あらゆる錠剤、カプセル、又は他の好適な医薬製剤27と共に使用できる。しかし、本発明の第8の態様のブリスターパックは、本発明の第1又は第2の態様の錠剤27を保存する使用に特に適している。このため、一実施形態において、本発明のブリスターパック20は、1つ以上の錠剤又はカプセル27を収容する。さらなる実施形態において、本発明のブリスターパックは、本発明の第1又は第2の態様による1つ以上の錠剤を収容する。
【0118】
外縁に切れ目のないブリスターパックは、当業者に公知である方法により製造できる。ブリスターパックの形成に利用される主要なプロセスは、熱成形方法及び冷間成形方法である。
【0119】
熱成形されたブリスターパックは、通常PVC系の(通常)透明なポリマーの成形フィルムを有する。ブリスターくぼみは、フィルムを加熱してそれを軟化させ、次いで、典型的には圧縮空気を使用して、スチール工作機械中のくぼみにフィルムを「押し」入れることにより製造される。
【0120】
冷間成形ブリスターパックは、アルミニウムホイル成形ホイル(ベースシート)でできている。くぼみは、スチールの工具をホイル上にプレスすることにより作られる。冷間成形されたブリスターパックにくぼみを形成するために熱は全く利用されない。
【0121】
どちらのタイプのブリスターパックでも、アルミニウムの蓋をするホイルが、シーリングステーションで熱を加えることにより、成形ホイルに対してシールされる。
【0122】
ブリスターパックの製造のための好適な材料及び方法は、Pilchik R.,Pharmaceutical Blister Packaging,Part I(Rationale and Materials),Pharmaceutical Technology NOVEMBER 2000,668に開示されている。
【0123】
本発明のブリスターパックの外縁への切れ目の導入は、穴開け又は切断ツールの使用により容易に達成できる。成形フィルム/ホイル(すなわちベースシート)及び蓋をするホイルのシーリングの後、個々のブリスターパック(又はブリスターシート)は、鋭い穴開けツールで穴開けされる。プロセスのこの段階で、ブリスターパックの外縁を形づくることができ、ミシン目をくぼみの間のブリスターパックの内部領域に加えることができる。穴開けは、典型的にはブリスター機械における最後の工程として利用される標準的な技法であり、このように、ブリスターパックの外縁への1つ以上の切れ目の導入が非常に低コストで達成できる。
【0124】
賦形剤の量、時間、温度などの測定可能な値に言及される場合の本明細書での用語「約」は、特記されない限り、明示された量の20%、10%、5%、1%、0.5%、又はさらには0.1%の変動を指す。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【
図1】
図1A及び1Bは、ブリスターパックの平面図を示す。錠剤は
図1Bのブリスターパック内に示されている。
【
図2】
図2A及び2Bは、単一のブリスターの側面図を示す。錠剤は
図2Bのブリスター内に示されている。
【
図3】
図3Aは、裂け目を有するブリスターパックの一部の平面図を示す。
図3Bは、切り込みを有するブリスターパックの一部の平面図を示す。
【
図4】
図4は、チカグレロル顆粒のFBRMデータを示す。
【
図5】
図5は、エフメルト顆粒のFBRMデータを示す。
【
図6】
図6は、保存の前のチカグレロルのバッチのFBRM及び溶出データを示す。
【
図7】
図7は、40℃、75%RHでの保存後のチカグレロルのバッチのFBRM及び溶出データを示す。
【
図8】
図8は、臨床試験Aで投与されたチカグレロル口腔内分散錠及びフィルムコート錠90mgの、0.2%(w/v)ツイン80中での溶出、平均値(n=6)を示す。エラーバーは、最小値及び最大値を表す。
【
図9】
図9は、(引き裂きノッチとして)三角形の切れ目を含むように改変されたプッシュスルータイプのブリスターパックの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0126】
分析方法
以下に記載される実施例において、種々のパラメーターは、以下の分析方法に従って測定された。
【0127】
摩損度は、USPモノグラフ1216(Tablet Friability)に述べられている方法に従って測定された。
【0128】
硬度は、USPモノグラフ1217及びPhEur 2.9.8(Resistance to Crushing of Tablets)に述べられている方法に従って測定された。
【0129】
崩壊時間は、USPモノグラフ701(Disintegration)に述べられている方法に従って測定された。
【0130】
溶出時間は、USPモノグラフ711(Dissolution)に述べられている方法に従って測定された。
【0131】
供給業者から受け取ったままのチカグレロル及び打錠プロセスに使用された顆粒の粒径分布は、(「湿潤」及び「乾燥」状態で)レーザー回折法を利用して測定された。湿潤法では、薬物の粒子は好適な懸濁化流体(例えば、シクロヘキサン中0.5%v/vトリオレイン酸ソルビタン)に懸濁され、懸濁液のレーザー回折粒径分析が、Malvern Mastersizer 2000を使用して実施された。乾燥法では、粒径分布測定(典型的には、顆粒のもの)は、乾燥した材料を使用して、すなわち懸濁化流体を用いずにレーザー回折により実施した。特記されない限り、粒径測定は、技法に適切な標準的な測定条件下で実施された。
【0132】
収束ビーム反射測定(FBRM)分析を溶出試験で実施した。FBRM技法は、プローブをプロセス流にある角度で直接挿入して、粒子が、測定が実施されるプローブウィンドウを横切って容易に流動可能であることを確実にすることを含む。レーザービームは、一組の光学部品を通ってプローブチューブから放たれ、サファイアウィンドウでタイトビームスポットに収束される。光学部品は一定の速度(典型的には2m/秒)で回転するので、粒子がウィンドウを流れすぎる時にビームスポットが迅速に粒子の端から端まで走査できる。収束されたビームが粒子系の端から端まで走査するにつれ、個々の粒子又は粒子構造はレーザー光を検出器に後方散乱させる。後方散乱光のこれらの別個のパルスは検出され、計数され、各パルスの持続時間に走査速度をかけて、各粒子の両端の距離が計算される。この距離は、粒径に関連する粒子の基本的測定値であるコード長と定義され、精密で高度に敏感なコード長分布がリアルタイムで報告でき、このように、粒径及びカウントが経時的に変化する様子が追跡される。測定において、プローブ直径はおよそ6mmであり、プローブ端部にサファイアウィンドウを有する。積分時間は5秒に設定された。装置は、「粗い」モードに設定され、焦点走査速度は2m/秒に設定された。プローブはパドルの2cm上に配置された。
【0133】
本発明は、以下の非限定的な例により説明することができる。
【0134】
これらの実施例において、エフメルトタイプM及びエフメルトタイプC(本明細書で、実施例中で「エフメルト」とも称される)は富士化学工業株式会社により供給され、LudiflashはBASFにより供給され、GalenIQ(グレード721)はBeneo-Palatinitにより供給され、マンニトールはRoquetteにより供給され、クロスポビドン(Kollidon CL-SF及びKollidon CL-F)はBASFにより供給された。フマル酸ステアリルナトリウムはJRS Pharmaにより供給され、ヒドロキシプロピルセルロースはAshlandにより供給され、コロイド状無水シリカはCabot GmbHにより供給された。
【実施例】
【0135】
実施例1-直接打錠錠剤の評価
4つの500gバッチの直接打錠(DC)錠剤を、表1に列挙した製剤組成物を使用して製造した。
【0136】
【0137】
最初の3つのバッチは、迅速口腔内崩壊性賦形剤の使用の点で異なっていた。エフメルトタイプM及びC、Ludiflash、又はGalenIQを使用した。コロイド状無水シリカを加えて、チカグレロルの粘着性及び凝集性を克服した。滑沢剤としてフマル酸ステアリルナトリウムを含めた。GalenIQを含む製剤は長い崩壊時間を有することが示されたので、GalenIQ及び7%の崩壊剤クロスポビドンを含む組成物による第4の実験を実施した。
【0138】
錠剤圧縮の間の主な観察所見は、エフメルト(バッチ1)及びLudiflash(バッチ2)を含む組成物は流動性が劣っている一方で、GalenIQ製剤(バッチ3及びバッチ4)は良好な流動性を有することであった(表2参照)。これは、硬度及び重量分析に反映されており、エフメルト及びLudiflash製剤は高い変動性(RSD値)を有する一方で、2種のGalenIQ製剤では反対のことが観察された。
【0139】
【0140】
典型的には、硬度測定値の好ましいRSD値は20%未満である。典型的には、錠剤重量測定値の好ましいRSD値は4.0%未満である。典型的には、好ましい摩損度値は1.0%未満である。典型的には、好ましい崩壊時間は30秒未満である。
【0141】
錠剤製剤のいずれも、スティッキング又はピッキング傾向の徴候を示さなかった。摩損度及び崩壊の分析は、エフメルト及びLudiflashが良好な崩壊性(約30秒の崩壊時間)、及び許容できる摩損度(1%未満)を有する錠剤を与えたことを示した。他方で、GalenIQ組成物は、許容できる崩壊時間も摩損度も有さなかった。7%の崩壊剤クロスポビドンの添加も、GalenIQ組成物の崩壊時間を大幅には短くしなかった。
【0142】
エフメルト又はLudiflashを含む錠剤では、低い流動性のために用量単位の均一性の(重要品質特性)QCAを満たさない危険性があった。他方で、GalenIQを含む錠剤では、アッセイ(高い摩損度のため)及び崩壊のCQAを満たさない危険性があった。流動性の問題を阻止するために、チカグレロル粒子を顆粒に組み込むさらなる試験を実施した(実施例2~6参照)。
【0143】
実施例2-湿式造粒錠剤の評価
この実験は、チカグレロルの湿式造粒と、それに続く錠剤圧縮の前の他の賦形剤との乾燥混合を評価するように設計した。製剤に含めたのは、好都合な崩壊性を与えることが示されたエフメルトかLudiflashのいずれかの迅速口腔内崩壊性賦形剤であった。この実施例及びその後の全実施例において、エフメルトタイプMではなくエフメルトタイプCのみを評価した。この実施例及びその後の実施例に使用した組成物中の「エフメルト」への言及は、特記されない限りエフメルトタイプCへの言及である。
【0144】
表3は、この実施例の造粒バッチの組成を列挙する。造粒液体として水を選択し、結合剤ヒドロキシプロピルセルロースを乾燥したまま加えた。チカグレロルの凝集性及び粘着性を減少させるため、コロイド状無水シリカを固化防止剤として使用した。チカグレロル顆粒の3つの100gバッチをつくった。最後の2バッチは、両方とも錠剤組成物中にLudiflash及びエフメルトを含む顆粒を評価するための二連であった。
【0145】
【0146】
チカグレロル顆粒は、1つはLudiflashを含み、他方はエフメルトを含む2つの500g錠剤バッチに含めたが、組成に関して表4を参照されたい。錠剤の崩壊時間をさらに向上させるために、5%のクロスポビドンを製剤に加えた。フマル酸ステアリルナトリウム及びコロイド状無水シリカも、それぞれ、滑沢剤及び流動促進剤として含めた。
【0147】
コロイド状無水シリカのないチカグレロルの造粒は、乏しい製造性を示した。粉末が造粒機の壁に粘着し、塊形成にさらされた(subjected)。その理由で、シリカのないチカグレロル顆粒バッチ(バッチ5)は、錠剤圧縮に関して評価しなかった。0.5%(w/w)のシリカを造粒ブレンドに加えると問題は低減し、チカグレロル顆粒の他の2つのバッチは、錠剤組成物において評価することができた。
【0148】
【0149】
表5は、Ludiflashかエフメルトのいずれかとブレンドされた2種の顆粒の錠剤圧縮の結果及び観察所見をまとめ、その結果を、チカグレロルが造粒されなかったLudiflashかエフメルトのいずれかを含む実施例1の2つのバッチの結果と比較するものである。表5のピッキング、スティッキング、及び流動性の属性は圧縮の間の目視観察所見であり、他の4つの品質属性は製造された錠剤の分析である。
【0150】
エフメルト組成物とLudiflash組成物のどちらも、チカグレロルが造粒された場合、実施例1の造粒されていない粉末ブレンドに比べて向上した流動性を示した。これは、錠剤の硬度及び重量の変動性低下に反映されており、表5中のRSD値を参照されたい。顆粒を含む2種の組成物のうち、エフメルトを含むものは、Ludiflashを含むものより良好な流動性を示したが、両組成物は、約30秒未満の崩壊及び1%未満の許容できる摩損度を有する錠剤を与えた。
【0151】
チカグレロルの顆粒を製剤中に含むことは、用量単位の均一性のCQAを満たさない危険性を減少させ、アッセイ(低い摩損度に関連)及び崩壊の所望のCQAを維持した。この知見は、チカグレロル口腔内分散錠の製造プロセスにおけるチカグレロルの造粒工程の組み込みを支持するものである。硬度のRSD値改善から明らかである通り、エフメルトはLudiflashより良好な流動性を示したので、エフメルトのみをさらに評価した。重量のRSD値も、Ludiflashを含むバッチよりもエフメルトを含むバッチで良好であったが、これも、Ludiflashの代わりにエフメルトを使用する際に観察される改善された流動性のさらなる証拠である。
【0152】
【0153】
典型的には、硬度測定値の好ましいRSD値は20%未満である。典型的には、錠剤重量測定値の好ましいRSD値は4.0%未満である。典型的には、好ましい摩損度値は1.0%未満である。典型的には、好ましい崩壊時間は30秒未満である。
【0154】
実施例3:造粒組成物の評価
この試験の目的は、造粒及び錠剤組成物を改善するだけでなく、造粒及び錠剤組成物に関する知識を築くことである。造粒プロセスを、100gから500gバッチにスケールアップした。錠剤バッチサイズは500gのままであった。
【0155】
表6は、試験に含まれる造粒バッチの組成を列挙する。顆粒は、異なる量のチカグレロルを含み、95%(バッチ8)、64%(バッチ10)、及び48%(バッチ9)を評価した。3バッチのうち最後の2つにおいて、チカグレロルの一部を充填剤マンニトールに交換したが、その場合、均質な顆粒を得るために小サイズのグレードを選択した。
【0156】
【0157】
造粒バッチをその後の錠剤圧縮において評価した。表7は、試験に含まれる錠剤バッチの組成を列挙する。錠剤圧縮実験を2つの副実験に分けた。第1は、それぞれ48%(バッチ9)又は64%(バッチ10)のチカグレロルの顆粒を含む2つの錠剤バッチ(バッチ9A及び10A)であった。95%チカグレロル顆粒のスケールアップは、造粒処理工程において低い製造性を示し、したがって、これらの顆粒を錠剤に圧縮しなかったが、詳細に関しては結論の項を参照されたい。
【0158】
第2に、48%チカグレロルを含む顆粒(バッチ9)を、錠剤製剤中の賦形剤が様々である追加の5つの錠剤バッチ(バッチ9Bから9F)に使用したので、表7を参照されたい。1バッチでは、コロイド状無水シリカを排除し(バッチ9B)、1バッチでは、フマル酸ステアリルナトリウムの量を1%(w/w)から0.5%に減らし(バッチ9C)、3バッチでは、崩壊剤の質及び量を検討した。バッチ9Dでは、崩壊剤の量を5%(w/w)から8%に増やし、バッチ9Eでは、クロスポビドンの半量をクロスカルメロースナトリウムに替え、バッチ9Fでは、クロスポビドンを、それまでの全バッチで超微細な粒径質であったが、幾分粗い質のクロスポビドンに替えた。2種のクロスポビドンの質の評価において、それらを、それぞれクロスポビドンSF(超微細)及びクロスポビドンF(微細)と称する。
【0159】
【0160】
95%チカグレロル顆粒組成物(バッチ8)の100gから500gへのスケールアップは、造粒処理工程の間の製造性に影響した。多くの材料が、容器の壁並びに撹拌翼に粘着し、撹拌翼と容器の底との間に強い摩擦が生じた。材料の掻き落としのために、プロセスを何度か停止しなければならなかった。組成物は製造スケールでは決してうまくいかないと判断し、したがって、これらの顆粒を錠剤に圧縮することは二度となかった。
【0161】
顆粒組成物中のチカグレロルの量を減らし、代わりにマンニトールを充填剤として加えることは、容器の壁及び撹拌翼への材料の粘着を減らし製造性を改善することがわかった。それでも、2、3回プロセスを停止して材料を掻き落とすことが必要であったが、組成物を処理可能であると判断した。64%(バッチ10)及び48%のチカグレロル(バッチ9)を充填剤としてのマンニトールと共に含む顆粒を評価すると、材料の粘着は、64%チカグレロルが使用される場合に、より大規模であった。48%チカグレロルを含む造粒バッチでは、ほんのいくらかの材料が容器及び撹拌翼に粘着した。
【0162】
表8は、異なる顆粒の錠剤圧縮の結果及び観察所見をまとめる。圧縮の間の目視観察所見に関して、製造性の問題を有するバッチは、滑沢剤の量が1.0%から0.5%(w/w)に減らされて中程度の流動性並びにピッキング及びスティッキングの傾向を示したバッチ9C並びに流動促進剤が製剤に全く含まれず錠剤圧縮の間に低い流動性が観察されたバッチ9Bの2つのみであった。他のバッチは全て、優れた製造性を示した。したがって、適量の滑沢剤は、スティッキング又はピッキングの傾向が全く観察されず流動性が良好であった1.0%(w/w)に相当し、シリカの量は、良好な流動性を有する粉末ブレンドを形成するために、0.2%(w/w)でなくてはならないことを結論とした。
【0163】
64%と48%(w/w)のチカグレロルの顆粒を含む錠剤を比較すると、顆粒中のチカグレロルの量が多いと、わずかに短い崩壊時間をもたらすことが明らかになり、錠剤バッチ9A及び錠剤バッチ10Aを参照されたい。顆粒中の薬物負荷がより高いと、錠剤製剤(常に一定量のチカグレロルを有するはずである)に含まれる顆粒がより少量であり、したがってより多量の迅速口腔内崩壊性賦形剤が含まれる。短い崩壊時間が製品にとって重要ではあるが、先の造粒処理工程に示された製造性の問題を鑑みて、48%チカグレロル及び充填剤としてのマンニトールを含むバッチ9を、さらなる製剤評価試験に使用すべきであると決定した。
【0164】
バッチ10A(5%クロスポビドンSF)を、バッチ9D(8%クロスポビドンSF)、バッチ9E(2.5%クロスポビドンSF及び2.5%クロスカルメロースナトリウム)、及び9F(5%クロスポビドンF)と比較すると、5%から8%への崩壊剤の増加が崩壊時間を短くさせず、それどころか、28秒から43秒へと増加したことがわかった。崩壊剤の半分をクロスカルメロースナトリウムに替えても、崩壊時間に影響しなかった(どちらのバッチも28秒)。しかし、クロスポビドンSFをクロスポビドンFに替えると、崩壊時間が28秒から22秒に短くなり、クロスポビドンFを錠剤組成物における使用に選択した。
【0165】
【0166】
典型的には、硬度測定値の好ましいRSD値は20%未満である。典型的には、錠剤重量測定値の好ましいRSD値は4.0%未満である。典型的には、好ましい摩損度値は1.0%未満である。典型的には、好ましい崩壊時間は30秒未満である。
【0167】
まとめると、チカグレロル顆粒の製造性は、チカグレロル含量を95%から48%に低下させることにより改善された。クロスポビドンを幾分粗い質に変えると、崩壊のCQAを満たすより良好な余裕を与えた。1.0%の滑沢剤含量及び0.2%の流動促進剤含量では、錠剤圧縮の間の流動性が保証され、用量単位の均一性のCQAを満たさない危険性が減少した。これらの結果に基づいて、バッチ9Fの錠剤組成物をさらなる評価に選択したので、表9を参照されたい。
【0168】
【0169】
実施例4-崩壊剤の評価
崩壊は口腔内分散錠の主要な特性の1つなので、使用すべき崩壊剤の量及び質を評価するために実施例4を設定した。
【0170】
以前の試験からのリード組成物は、本明細書でクロスポビドンF[1]と称される微細な粒径グレードの崩壊剤クロスポビドンを5%含んでいた。それを、本明細書でクロスポビドンF[2]と称される別の供給業者から得たクロスポビドンと比較した(表10)。両者はほとんど同じ粒径分布を有する。含まれる量は、0%、2%、及び5%(w/w)クロスポビドンであり、量は組成物中のエフメルトタイプCで補った。全バッチは、同じバッチのチカグレロル顆粒を含み、組成は、全て重量パーセンテージで表わして、48.4%チカグレロル、48.4%マンニトール、3.00%ヒドロキシプロピルセルロース、及び0.25%シリカであった。
【0171】
【0172】
表11は、実施例4の崩壊剤評価実験の結果をまとめる。
【0173】
【0174】
典型的には、硬度測定値の好ましいRSD値は20%未満である。典型的には、錠剤重量測定値の好ましいRSD値は4.0%未満である。典型的には、好ましい摩損度値は1.0%未満である。典型的には、好ましい崩壊時間は30秒未満である。典型的には、好ましい溶出閾値(dissolution thresholds)は、45分で少なくとも75%及び60分で少なくとも80%である。
【0175】
わかる通り、5つのバッチは全て、良好な流動性を有し、錠剤パンチへのピッキングもスティッキングも全くなく良好な製造性を示した。良好な流動性は、錠剤の硬度及び重量の変動性の低さ(RSD値)に反映されており、3つの品質属性は全て、製造スケールプロセスにおける用量単位の均一性のCQAを満たさない危険性が低いことを示す良好な指標である。崩壊は、明らかにクロスポビドンの量により影響を受けた。わかる通り、2%のクロスポビドンF[1]かクロスポビドンF[2]のいずれかが、最も短い崩壊時間を与えた。0、2、及び5%のクロスポビドンF[1]を含む錠剤の溶出を比べると、クロスポビドンの量が溶出に大きな影響を与えるようには見えないことが明らかになった。これらの知見を鑑みて、クロスポビドンF[1]を継続して製剤に含めるべきであり、クロスポビドンの好ましい量が5%より2%に近いことを決定した。
【0176】
実施例5-錠剤組成物の評価
この試験の目的は、製剤の錠剤組成を調査することであった。4+3一部実施要因実験計画を、3つの要因で行った;フマル酸ステアリルナトリウム、コロイド状無水シリカ、及びクロスポビドンの量。
【0177】
この試験における錠剤バッチの組成を、表12に列挙する。クロスポビドンを1.0と4.0%(w/w)の間で変え、フマル酸ステアリルナトリウムを1.0と3.0%(w/w)の間で変え、最後にシリカを0.2と0.6%(w/w)の間で変えた。600gの1つの造粒バッチを製造して、試験の全錠剤組成物をサポートした。顆粒の組成物は、全て重量パーセンテージで表して、48.4%チカグレロル、48.4%マンニトール、3.00%ヒドロキシプロピルセルロース、及び0.25%シリカであった。
【0178】
【0179】
試験の観察所見及び結果を表13に列挙する。流動性及びピッキング/スティッキングなど、錠剤圧縮の間の目視観察所見にも注目した。錠剤を、重量及び硬度の変動、摩損度、崩壊、及び溶出に関して分析した。結果を、個別に試験して比較し、実験計画ツールModde(登録商標)(v 9.0 Umetrics AB,Sweden)を使用して評価した。
【0180】
表13でわかる通り、7つのバッチは全て、良好な流動性を有し、錠剤パンチへのピッキングもスティッキングも全くなく、良好な製造性を示した。良好な流動性は、錠剤の硬度及び重量の変動性の低さ(RSD値)に反映される。全バッチは、摩損度の好ましい閾値を満たした。
【0181】
結果は、クロスポビドンとフマル酸ステアリルナトリウムを両方とも少なくすると崩壊時間が短くなることを示した。シリカの量は、崩壊時間に実質的に影響しなかったが、フマル酸ステアリルナトリウムとシリカは両方とも流動性を改善した。フマル酸ステアリルナトリウムとクロスポビドンの両方の量を増加させると、溶出速度がわずかに速くなったが、全てが、45分でQ=70及び60分でQ=75の好ましい溶出閾値に適合した。
【0182】
【0183】
典型的には、硬度測定値の好ましいRSD値は20%未満である。典型的には、錠剤重量測定値の好ましいRSD値は4.0%未満である。典型的には、好ましい摩損度値は1.0%未満である。典型的には、好ましい崩壊時間は30秒未満である。典型的には、好ましい溶出閾値は、45分で少なくとも75%及び60分で少なくとも80%である。
【0184】
これらの知見により、クロスポビドンの量を、5.0%から、2.0%が最短の崩壊時間を与えることが示されたので2.0%に減らし、フマル酸ステアリルナトリウムと(粒外)シリカの両方が流動性を改善したので、フマル酸ステアリルナトリウムを1.00%から1.50%に、シリカを0.20%から0.40%に、量をわずかに増加させた、さらなる実験のための錠剤組成物が導かれる。
【0185】
実施例6-造粒組成物及び乾燥方法の評価
顆粒の組成をさらに調査するために、4+3試行の一部実施要因実験計画を実施した。変動させた要因は、チカグレロル、ヒドロキシプロピルセルロース、及びコロイド状無水シリカの量であった。
【0186】
実施例2~5に詳述された試験では、顆粒をトレイ乾燥させた。流動床乾燥機が錠剤の質に何らかの影響を与えるかを知るために、顆粒を流動床乾燥機で乾燥させた二連の2つの実験を実施した。流動床乾燥機の使用は、商業規模の製造において典型的である。
【0187】
試験における造粒実験の組成物を以下の表14に列記する。チカグレロルの含量を、38と58%の間で変え、ヒドロキシプロピルセルロースを2と6%の間で変え、最後に、シリカを0.25と0.75%の間で変えた。錠剤は常に90mgのチカグレロルを有さなければならないので、錠剤の組成は25.9~39.5%のチカグレロル顆粒を含んだが、以下の表15を参照されたい。顆粒の変動する量は、錠剤組成物中のエフメルトタイプCで補った。他の錠剤賦形剤に関して、錠剤バッチは全て、2.0%クロスポビドン、1.5%フマル酸ステアリルナトリウム、及び0.4%シリカを含んでいた。全てを重量パーセンテージで表す。
【0188】
【0189】
【0190】
造粒の間の加工性及び流動性並びに錠剤圧縮の間のピッキング/スティッキングなどの製造プロセスの間の観察所見に注目した。錠剤を、硬度、重量、摩損度、崩壊、及び溶出に関して分析した。結果を個別に試験して比較し、実験計画ツールModde(登録商標)(v 9.0 Umetrics AB,Sweden)を利用して評価した。表16は、実施例6の観察所見及び結果の結論をまとめるものである。
【0191】
造粒プロセスの間、顆粒に含まれるチカグレロルの量を増やすと、加工上の問題が増加する。粘着性で凝集性の小さなサイズのチカグレロル粒子は造粒機の壁に粘着する傾向があり、プロセスを停止して材料を壁から掻き落とすことがプロセスの間に数回必要であった。他方で、錠剤の分析の結果は、顆粒中のチカグレロルの量が多いほど、錠剤の崩壊時間が短いことを明らかにしたが、これは、顆粒中にチカグレロルがより多量に含まれると、錠剤製剤中に含まれる必要のある顆粒は少なくてすみ、そのため崩壊を助けるエフメルトがより多く含まれるために生じる。この知見は、95%、64%、及び48%(w/w)チカグレロルの顆粒を比較した実施例3の結果を裏付けるものである。
【0192】
崩壊時間は、より多量のヒドロキシプロピルセルロースを顆粒に加えることによっても減少した。これは、より多量のヒドロキシプロピルセルロースが顆粒をより硬くし、錠剤圧縮の間に粉砕されづらくすることにより説明され得る。顆粒が粉砕される場合には、エフメルトに結合する小さい粒子が生じて、それにより崩壊時間が増加するだろう。より多量のヒドロキシプロピルセルロースがチカグレロルの溶出速度をわずかに増加させたことも示された。
【0193】
表16でわかる通り、全バッチは、良好な流動性を有し、錠剤パンチへのピッキングもスティッキングも全くなく、良好な製造性を示した。良好な流動性は、錠剤の硬度及び重量の変動性の低さ(RSD値)に反映され、全てが製造規模プロセスでの用量単位の均一性のCQAを満たさない危険性が低いことを示す。全錠剤が摩損度の好ましい閾値を満たしたことも認められる。
【0194】
顆粒中のシリカの量は錠剤の質に影響しないようだったが、量が多いとチカグレロル粒子の粘着性及び/又は凝集性を低下させることにより造粒プロセスが促進されるので、より多量のシリカを顆粒に含めることを決定した。
【0195】
試験後に、以下の通り造粒組成物を変更した。ヒドロキシプロピルセルロースは、より多量であると崩壊時間を短くすることが示されたので、その量を3.0から4.0%に増加させた。顆粒中のシリカの量を、チカグレロル粒子の粘着性及び/又は凝集性を減少させるために0.25%から0.75%に増加させた。チカグレロルの量は、量が多いと加工性に負の影響があるようであり、量が少ないと崩壊時間に負の影響があるようなので、変更しなかった。
【0196】
【0197】
典型的には、硬度測定値の好ましいRSD値は20%未満である。典型的には、錠剤重量測定値の好ましいRSD値は4.0%未満である。典型的には、好ましい摩損度値は1.0%未満である。典型的には、好ましい崩壊時間は30秒未満である。典型的には、好ましい溶出閾値は、45分で少なくとも75%及び60分で少なくとも80%である。
【0198】
以下の表17及び18は、トレイ乾燥又は流動床乾燥させた顆粒及び顆粒を含む錠剤の分析を示す。N1及びN1b中の顆粒は38%のチカグレロルを含む一方で、N4及びN4b中の顆粒は58%のチカグレロルを含んでいた。N1及びN4はトレイ乾燥させたものであり、N1b及びN4bは流動床乾燥させたものである。表17でわかる通り、N4及びN4bはN1及びN1bより大きい粒径分布を有するが、どちらの場合でも流動床乾燥はトレイ乾燥よりも小さい粒子を生み出し、また、カー指数も流動床乾燥顆粒の両方で高い。他方で、2つの乾燥方法は錠剤の質では大きな差を生み出さず、表18を参照されたい。したがって、流動床乾燥が、錠剤の質に実質的に影響することなく、商業的製造に潜在的に好適であることを見いだした。
【0199】
【0200】
【0201】
実施例7-錠剤組成物
表19Aに示す組成物を調製し、本発明を説明することを意図する。
【0202】
【0203】
表19Bに示す組成物も調製できる。
【0204】
【0205】
実施例8-錠剤製造
実施例7による90mgのチカグレロルを含む600mg錠剤を、以下の方法に従って製造した。コロイド状無水シリカ、チカグレロル、ヒドロキシプロピルセルロース、及びマンニトールを高せん断ミキサー中で約5分間乾燥混合すると、総質量9kgの乾燥成分を与えた。次いで、造粒用液体(水、18.4%(w/w))を乾燥成分に加えることにより、湿式造粒を実施した。湿った顆粒混合物を回転撹拌翼スクリーニングミル中で粉砕し、次いで、吸気乾燥温度50℃で流動床乾燥機中で乾燥させた。その後に、回転撹拌翼スクリーニングミル中での粉砕を行った。最終的なブレンディングを拡散混合器中で実施した。次いで、チカグレロル含有顆粒、コロイド状無水シリカ、エフメルトタイプC、クロスポビドン、及びフマル酸ステアリルナトリウムを共に約20分ブレンドした。動力援用(power assisted)打錠機を使用して、最終的なブレンドを錠剤に圧縮した。
【0206】
7.9kN~13.1kNの錠剤圧縮力が、適切な硬度(およそ65N)を有する錠剤を与えるのに充分であることがわかった。これらの錠剤は、許容できる崩壊時間、溶出速度、硬度、及び摩損度値を有した。
【0207】
このプロセスを、また、約256kgの最終ブレンドのバッチサイズを使用してスケールアップした。これらの錠剤も、許容できる崩壊時間、溶出速度、硬度、及び摩損度値を有した。
【0208】
実施例9-錠剤性質に対する薬物粒径及び製造パラメーターの評価
(i)原薬粒径、(ii)造粒液体の量、及び(iii)水の添加時間の、錠剤製造に対する影響を評価した。錠剤組成は実施例7によるものであり、製造方法は、特記される場合以外実施例8に沿ったものであった。この試験で製造された錠剤は、丸形で平らで端部が面取りされており、サイズは14mmであった。試験した10バッチのうち8つはエンボス加工も施した。
【0209】
低い及び高いD(v,0.9)値を有する2つの原薬バッチを選択した。水添加時間を、2又は4つのスプレーノズルを使用することにより変えた。実験計画を表20に略述する。主要な応答は、アッセイ、含量変動の判定値(AV)、崩壊、及び溶出であった。
【0210】
【0211】
錠剤バッチ圧縮を開始する前に、全バッチを、3種又は4種の異なる圧縮力でサンプリングした。さらに、各圧縮力で崩壊を分析した。錠剤硬度を直径方向の圧縮破断荷重(diametric compression breaking force)として試験した。
【0212】
試料錠剤をUoDUのために複合試料(composite sample)から抜き取り、AV値を計算した。
【0213】
さらに、錠剤をサンプリングし、Garciaにより提案された方法(Garcia,Thomas et.al.Recommendations for the assessment of blend and content uniformity:modifications to withdrawn FDA draft stratified sampling guidance,J.Pharm.Innov.,2014,(DOI)10.1007/s12247-014-9207-0)に従って分析したので、下記を参照されたい。40か所から試料を抜き取り、20か所を分析のために選択した(n=3)。試料を10バッチのうち4つでアッセイした。
【0214】
Garciaによるブレンド均一性の合否基準を満たすには、全個別結果のRSDが3.0%以下(10か所でn=1)又は5.0%以下(10か所でn=3、理由が分析誤差でも標本誤差でもないという条件で)でなくてはならない。この基準を利用して、均質性を評価する知識を得た。
【0215】
サンプリング及び外観の分析を4~5か所で実施した。崩壊及び摩損度では、サンプリング及び分析をおよそ5か所で実施した。
【0216】
溶出の分析を、複合試料から実施した。
【0217】
最終ブレンド
最終ブレンドの全体的な目的は、要求される投与量のチカグレロルを一貫して含む錠剤に圧縮可能な均一なブレンドを製造することである。低い/高い水の量、小さい/大きい粒径原薬、及び短い/長い水の添加時間の実験を含む4つのバッチを分析した。表21に示す粉末ブレンド均一性の結果は、粉末ブレンドが最終ブレンドの後に充分に均質であることを確認するものである。
【0218】
【0219】
錠剤圧縮
この単位操作の目的は、ブレンドされた粉末を圧縮して目標CQAを一貫して提供する錠剤にすることである。錠剤性質結果には、アッセイ及びUoDU、重量、硬度、厚さ、摩損度、崩壊、及び溶出がある。
【0220】
アッセイ及び用量単位の均一性
UoDUをより完全に評価するために、Garciaにより示唆された方法に基づく評価を利用した:
・全個別アッセイ結果は、目標力価の75.0%~125.0%の範囲内でなければならない。
・アッセイされる用量単位の全数で、90%の信頼度及び95%の網羅率の合否基準を利用してASTM E2709/E2810に合格する。
【0221】
この方法により評価したバッチは全て首尾よく基準を満たしたので、表22を参照されたい。
【0222】
【0223】
アッセイ結果を表23に示す。結果は、1つ以外の全バッチが、95%~105%のアッセイ区間内であったことを示す。
【0224】
【0225】
錠剤重量
結果を以下の表24に示す。バッチは571mgから615mg内であり、597から602mgの平均値を有した。錠剤重量の変動の低さは良好な粉末流動を示し、それはその結果として正しい量のチカグレロルを最終生成物中に送達する能力に寄与する。
【0226】
【0227】
錠剤の硬度、厚さ、摩損度、及び崩壊
圧縮力に対する錠剤の硬度及び崩壊を、各バッチの圧縮プロファイルを得ることにより試験したので、表25を参照されたい。
【0228】
【0229】
65Nの硬度を得るために必要とされる圧縮力は、バッチの間で7.9kN~13.1kNであった。原薬顆粒中にD(v,0.1)として測定してより微細なサイズの材料があると、同じ錠剤硬度、ここでは65Nを達成するための圧縮力が低くなることを見いだした。
【0230】
連続的な錠剤圧縮ランの間の全バッチの錠剤崩壊時間は、30秒のCQA目標未満であった。圧縮力の崩壊依存性を上記表25に示す。およそ各バッチに使用された押付け力で、極小を伴うわずかな湾曲がある。
【0231】
連続的なバッチ製造の間、錠剤の平均硬度及び摩損度をモニターした。結果を表26に示す。
【0232】
【0233】
錠剤の摩損度は、薬局方の要件(<1.0%)と比べて低い0.1%以下であった。崩壊時間は、全バッチでCQA目標未満であった。
【0234】
結果は、バッチ間及びバッチ内でのごく小さい変動のみを示す。高さは、全般に、3.7~3.8mmであった。先に試験した錠剤に比べたこれらの錠剤でのわずかに大きな厚さは、短い造粒時間及び低い造粒液体量によるものであり、それは、密度の低い顆粒及びより小さい粒径を与える。これらの試験で使用される65Nの目標硬度を得るには、必要とされる圧縮は少なく、そのためわずかに厚い錠剤となる。
【0235】
まとめると、錠剤高さの変動の低さは、規模、プロセスパラメーター設定、及び原薬粒径の評価される変化に対する製品の頑強さの指標である。
【0236】
錠剤外観
錠剤の外観を目視で評価した。掻き落とし機構の調整に関連する縁の損傷をいくつかの場合に発見したが、調整後に損傷はなくなった。ほとんど見えないわずかに桃色の斑点が1例で見られたが、原薬の色に関連したものである可能性が高かった。全体として、バッチのいずれにも、ピッキング、スティッキング、キャッピング、又はラミネーションの観察所見が全くなかった。
【0237】
錠剤溶出
45分及び60分後に溶出したチカグレロルの量を表27にまとめる。
【0238】
【0239】
溶出したチカグレロルの量は、全バッチで目標を満たした。評価された造粒要因がわずかに溶出速度に影響したことを認めた。溶出の増加は、短い造粒時間、少ない量の造粒液体、及び小さい粒径を有する原薬に由来しているようである。
【0240】
錠剤圧縮の結論
結果は、錠剤圧縮工程が、ブレンドされた粉末を、目標重要品質特性(CQA)を与える錠剤に圧縮するのに充分であることを示す。さらに、この試験でのエンボス加工を伴うパンチツールの使用は、錠剤の質に全く影響しないようである。
【0241】
実施例10-錠剤溶出機構の評価
収束ビーム反射測定法を、それぞれ様々な粒径を有する一連のチカグレロル顆粒及びエフメルトタイプC顆粒に実施した。
【0242】
錠剤溶出機構
FBRM装置において、プローブ直径はおよそ6mmであり、サファイアウィンドウをプローブ端部に有していた。積分時間を5秒に設定した。装置を、「粗いモード」に設定し、焦点走査速度を2m/秒に設定した。プローブをパドルの2cm上に配置し、流れに向けてわずかに傾けた。プライマリデータセットは、完全な粒径分布1~1000μmを5秒の時間分解能で含む。そのデータセットから、異なるサイズフラクションを示す速度曲線(kinetic curves)を計算し、フラクション40~100μmが比較のために選択したフラクションであった。このフラクションを選択したのは、このフラクションではカウントの量が高いためであった。さらに、速度プロファイル間の変動性が、より多量のカウントを有するフラクションでは低かった。
【0243】
測定は、2mmのギャップを有する浴中に配置されたUVプローブにより実施した。溶出媒体は、0.2%ツイン80を含む900mlの水であった。パドル速度75rpm。さらに、FBRMプローブを、浴中の粒子を同時に測定するために浴に配置した。
【0244】
【0245】
図4中のFBRM結果は、溶出浴中のAPI顆粒からの異なる粒径フラクションを示す。全サイズで、カウントの量は最初に浴中で増加しており、その後に減少して60分後にわずか数パーセントになる。最初のカウント増加は、顆粒が時間零で浴に加えられ、粒子を溶出させる速度が、粒子が浴中で分布されるのにかかる時間よりゆっくりであることに依存する。カウントのピークが現れる時間は、顆粒が浴に加えられる方法及び時間に依存して恐らく異なるだろうが、そのため、それは、時間軸上のどこでピークが現れるかに関連しない。しかし、減少する傾きの速度は粒子が溶出する速度を示し、そのため、粒子の溶出は最初の30分の間に速く、その後に速度がゆっくりであることがわかる。
【0246】
図5のFBRM結果は、溶出浴中のエフメルトからの異なる粒径フラクションを示す。全サイズで、粒子の量の初期の増加が最初の数分の間に見られ、その後に数分の間小さい減少があってから、カウント数がある程度一定の値に留まる。初期のカウント増加は、顆粒が時間零で浴に加えられることに依存する。しかし、その後の粒子のほとんど一定の値は、エフメルト粒子の溶出が最初の数分の間にかなり速く起こっており、同時に粒子が浴中に分布されるので、さらなる粒子のカウント減少は観察されないことを示している。これは、大部分噴霧乾燥されたマンニトールを含み、そのため速く溶出するように設計されているエフメルトの材料と合致するようである。
【0247】
まとめると、錠剤溶出は、API顆粒の性質により支配されていることがわかる一方で、エフメルトは口腔内分散錠に典型的な迅速な崩壊を起こしている。したがって、崩壊及び溶出の間のAPI粒子の凝集を防ぐことが重要である。
【0248】
保存の影響
チカグレロルを含むモデル顆粒を、上述のFBRM方法を利用して溶出挙動を試験するために、40℃相対湿度75%(RH)で1か月保存した。新鮮な、すなわち保存されていない(「モデル」)、顆粒を比較のために調製した。結果を
図6及び7に示す。チカグレロル粒子は、3つの異なる供給業者:供給業者1(「AZ」);供給業者2(「DSM」);供給業者3(「Omnichem」)から受け取った。
【0249】
「AZ」により供給されたチカグレロルを含むモデル顆粒バッチと保存された顆粒バッチとの両方で、両者のプロファイルは、粒子の増加と、それに続くカウントの減少を示す。しかし、40℃及び75%RHで1か月保存された材料では、より緩徐な粒子溶出が観察される。さらに、保存された材料からは60分後に浴中に残された粒子が多い。類似の全体的なパターンが、他の供給業者から供給された材料に観察された。保存された材料からの緩徐な粒子溶出は、チカグレロルの放出速度と相関する。
図6と
図7に示されたデータを比較すると、チカグレロルは、保存されていない顆粒に比べて、1か月保存された顆粒からの緩徐な放出を有することが示される。
【0250】
まとめると、チカグレロルを含むモデル顆粒の保存後の挙動は、年数を経た錠剤の挙動と合致することがわかった。これから、薬物顆粒が、年数を経た錠剤において溶出の変化を起こすことが結論づけられた。
【0251】
実施例11-薬物顆粒多孔性に対する保存の影響
細孔容積及び細孔径分布を、水銀圧入式ポロシメトリ(Micromeritics AutoPore III 9410)を利用して測定した。測定は、細孔直径区間115μm≧Φ≧0.0030μm(30Å)内で実施した。水銀の表面張力及び接触角を、それぞれ485mN/m及び130°に設定する。ブランク補正を利用して、高圧でのペネトロメーター系の部品の圧縮を補正した。使用した試験材料は、チカグレロル顆粒(「3606」)、最終錠剤ブレンド(「3606 FB」);エフメルトタイプC顆粒(「エフメルト」);供給業者1から得たチカグレロル粒子(「AZ」);供給業者2から得たチカグレロル粒子(「DSM」);供給業者3から得たチカグレロル粒子(「Omnichem」)であった。
【0252】
ポロシメーターが正しい圧入を示していることを確実にするため、アルミナシリカ基準物質による試験を分析の前に実施した。顆粒の分析に使用したペネトロメーターの1つを基準試験に使用した。結果は、0.55cm3/gの累積細孔容積及び73Åの細孔直径中央値(体積による)を与えた。基準値は、それぞれ、0.56±0.02cm3/g及び75±5Åである。結果を表28に示す。
【0253】
【0254】
顆粒のHg多孔性データと実施例10のデータを合わせると、多孔性の減少及び/又は凝集の増加が年数を経た錠剤の溶出速度の低下を起こすことが示される。薬物粒径及び粒子表面の性質は、湿式造粒プロセスパラメーターと影響しあって特定の凝集サイズ分布をもたらすようであり、それが次に錠剤溶出に影響する。
【0255】
実施例12-保存後の溶出に対する粒径の影響
4つの錠剤バッチを評価して、保存前後の錠剤溶出速度に対する粒径の影響を試験した。
【0256】
錠剤を実施例7の組成に従って製造した。APIに関連するパラメーター(D(v,0.9))及び錠剤製造(造粒用流体及び混合時間)を表29に示す。
【0257】
【0258】
1か月の保存後の溶出の減少は、典型的には約10~11%以下であったが、バッチ44では減少は約7%であった。
【0259】
実施例13-チカゲロル(Ticagelor)粒径及び表面性質の影響
この試験は、供給業者間の原材料の変動性、主に、粒径/晶癖(habit)及び表面性質などの物理的特性の錠剤の質及び崩壊時間に対する、可能性のある影響を評価するために実施した。
【0260】
試験した原薬のバッチを表30に示す。
【0261】
【0262】
TOF-SIMS表面特性化を種々の薬物バッチに実施した。TOF-SIMSスペクトルを、ポジティブ及びネガティブイオンモードで高質量分解能モードで、全粉末で得た。TOF.SIMS(ION-TOF GmbH、Germany)を実験に使用した。30keV Bi3
+イオンクラスターが一次イオンであった。エレクトロンフラッドガンを、試料表面の電荷補償に使用した。
【0263】
ミニスパチュラから1cm2アルミニウムプレート上の両面テープに粉末を落とすことにより、試料を受け取ったまま分析した。プレートを振動させて、粉末をテープ上に落ち着かせた。余分な粉末を、清浄なCO2により吹き飛ばした。これらの試料は、バッチ12801、バッチAAAU、Omnichemバッチ300000-01、及びDSMバッチLHCYAA4005であった。受け取ったまま分析する他に、DSMバッチLHCYAA4005を、液体窒素を満たした乳鉢中で手作業により凍結粉砕して、粒子の内部を露出した。生じた凍結粉砕粉末を、受け取ったままの粉末と同様に載せた。
【0264】
受け取ったままの試料の高質量分解能スペクトルを、500μm×500μmの領域から128×128画素で得た。凍結粉砕粉末の高質量分解能スペクトルを、200μm×200μmの領域から64×64画素で得た。高質量分解能モードにおける公称一次ビームサイズはおよそ5~6μmである。
【0265】
さらに、凍結粉砕の前後にDSMバッチLHCYAA4005粉末の高空間分解能画像を得た。高空間分解能画像は、受け取ったままの試料で200μm×200μm(1024×1024画素で)、凍結粉砕試料で100μm×100μm(512×512画素で)であった。このように、全画像は、高空間分解能モードの公称0.2μm一次ビーム直径に合致した。
【0266】
データ分析を、装置供給業者により与えられたソフトウェア(Surface Lab 6.3,Measurement Explorer,ION-TOF GmbH,Germany)を利用して実施した。
【0267】
粒径分布:約3mlのドライパウダーを、0.1バールで、Malvern Mastersizer 2000を利用して測定した。
【0268】
チカグレロル粉末は、例えば大きいハウスナー比(約1.8~2.0のタップ密度/かさ密度)により示される通り、低い流動性を特徴とする。3つの原薬製造業者に典型的な粒径分布(PSD)を表30に与える。
【0269】
AZ Ops供給品に検出されたより大きなD(v,0.9)サイズフラクションは、より拡大された粒子晶癖に対応し、それが、次に、最低の流動性(最高のハウスナー比)を与える。
【0270】
チカグレロル速崩壊性製剤に関して、原薬変動性が、製剤中で制御するのに重要であるようである。
【0271】
原薬PSD変動に加えて、異なるバッチのチカグレロルの表面性質も、錠剤属性、特に溶出速度に寄与し得ると考えられる。薬物の種々のバッチのTOF-SIMS分析は、AZ Ops及びOmnichem材料と比較して、DSMから得た1バッチに関してわずかに異なる表面組成を明らかにした。
【0272】
まとめると、頑強な大規模製造プロセスを得るために、薬物の物性を制御することが重要である。粒子癖の変動及び潜在的には粒子表面の性質の変動が、最終製品の性質に特に影響を与えかねないと判断した。
【0273】
実施例14-錠剤安定性の評価
実施例7の錠剤に対する保存の影響を、種々の条件下での開放保存並びに、保存アルミニウムラミネート形態ホイル及びアルミニウム蓋ホイルのついたアルミニウム/アルミニウムブリスターパック(Al/Alブリスター)中での保存後に試験した。錠剤を、上記実施例8のプロセスに沿ったプロセスを利用して製造した。
【0274】
研究用(investigational)ストレス安定性試験
過酷な開放条件下でのチカグレロル口腔内分散錠の性能を開発の間に実証した。試験は、チカグレロル口腔内分散錠を、開放された皿の中で、異なる温度及び湿度条件に暴露するものであった。開放された皿中で錠剤を保存することにより、それらを、Al/Alブリスターに包装される場合に遭遇するだろう追加の湿度ストレスにさらした。
【0275】
安定性プロトコル
保存条件及びサンプリングプロトコル
基本となる(primary)安定性バッチ及び支持的な(supportive)バッチを、ICHガイドラインQ1Aに従って保存した。各条件でのサンプリング時点の詳細を表31に表す。
【0276】
【0277】
温度を±2℃に制御し、湿度を±5%RHに制御する。研究用安定性バッチを、開放された皿中で、以下の気候、25℃/60%RH、30℃/65%RH、40℃/75%RH、及び50℃/周囲湿度で1か月まで保存した。
【0278】
光安定性
光安定性を、ICHQ1Bに従った基本となる安定性試験からの1バッチで実施した。
【0279】
安定性試験及び合格限界
チカグレロル口腔内分散錠90mgの安定性を、安定性試験の間に適切な化学的特性及び物理的特性をモニターすることにより評価した。実施された試験には、HPLCによるアッセイ、HPLCによる分解生成物、崩壊、溶出(0.2%ツイン80)、微生物限度、及び錠剤硬度があった。Al/AlブリスターのICH基本となる安定性試験において、微生物限度試験を、40℃/75%RHで6か月並びに25℃/60%RHで12、24、及び36か月時点で適用した。
【0280】
結果
アルミニウム/アルミニウム(Al/Al)ブリスターパック中の実施例7の錠剤で得られたICH基本となる安定性データ及び支持的な安定性データを表32~39に表す。
【0281】
直接光に曝露された開放された皿中で保存された実施例7の錠剤に関して得られたICH重要な光安定性データ(pivotal photo stability data)を表40に表す。
【0282】
実施例7の錠剤の安定性を、過酷な条件下、50℃/周囲湿度(amb)で3か月までAl/Alブリスター中で試験した。この試験の結果を表41~44に表す。
【0283】
実施例7の錠剤の安定性を、過酷な条件下、異なる気候での1か月までの開放保存(研究用試験)で試験した。結果は表45~48に見ることができる。4層アルミニウムバッグ(Alバッグ、バルクパック)中に保存された実施例7の錠剤の安定性を、種々の条件下で6か月まで試験した。結果を表49~54に見ることができる。
【0284】
【0285】
【0286】
【0287】
【0288】
【0289】
【0290】
【0291】
【0292】
光安定性
【0293】
【0294】
過酷安定性試験
【0295】
【0296】
【0297】
【0298】
【0299】
過酷な開放安定性試験(研究用)
【0300】
【0301】
【0302】
【0303】
【0304】
【0305】
【0306】
【0307】
【0308】
【0309】
【0310】
結果のまとめ及び議論
ICH基本となる安定性試験
Al/Alブリスター中に保存された錠剤の安定性データは、25℃/60%RHでの12か月の保存後に、記述、アッセイ、分解生成物、崩壊、又は溶出に著しい変化を全く示さない。40℃/75%RHでの加速された条件での6か月後の保存は、記述、アッセイ、分解生成物、崩壊、又は溶出に著しい変化を全く示さない。溶出は、時間と共にデータに変動を示すが、傾向は全く見られず、全結果は仕様要件を満たす。
【0311】
含水量及び微生物的品質は、25℃/60%RHでの12か月の保存後に著しい変化を全く示さない。40℃/75%RHの加速された条件での6か月後の保存は、著しい変化を全く示さない。
【0312】
錠剤硬度は、水分取込みの結果として全般的に低下し、それは錠剤を弱くする。したがって、水分取込みの阻止が錠剤安定性にとって有益である。しかし、硬度が水分取込みにより低下したとしても、錠剤の本質的な靱性は良好である。
【0313】
光安定性及び過酷な条件
光安定性条件下で開放された皿中で保存された錠剤の安定性データは、光が錠剤の安定性に対して著しい影響を全く有さないことを示している。1種の分解生成物の形成が、光に直接曝露された錠剤で非常に低レベルで見られた。Al/Alブリスターパックは光を通さないため、医薬品はAl/Alブリスターパック中で完全に保護されている。50℃/周囲の過酷な条件は、Al/Alブリスター中での3か月の保存後に、記述、アッセイ、分解生成物、崩壊、溶出、水、又は微生物的品質に著しい変化を全く示さない。
【0314】
研究用の過酷な安定性試験
研究用試験の間に生じた安定性データは、開放したままの1か月までの保存が、記述、アッセイ、分解生成物、崩壊、又は溶出に対して有害作用を有さないようであることを表す。含水量の増加が、湿度の高い条件下で保存された錠剤に観察された。この水の量の増加は、錠剤を柔らかくするので錠剤硬度に影響するようである。これは、口腔内分散錠が水を吸収して容易に崩壊するように設計されているので、口腔内分散錠の固有の性質である。
【0315】
実施例15-相対的バイオアベイラビリティ試験(試験A)
相対的バイオアベイラビリティ試験(以下で臨床試験Aと称される)は、水あり(口腔内分散後)又は水なしで投与された実施例7の口腔内分散錠を、90mgのチカグレロルを含むフィルムコート錠と比較した。臨床試験Aにおいて、口腔内分散錠を、また、水に懸濁させ経鼻胃チューブにより投与し、フィルムコート錠と比較した。
【0316】
臨床試験Aに使用した口腔内分散錠の組成は、実施例7のものと同一であり、256kgのバッチサイズで製造した。
【0317】
臨床試験Aに使用したフィルムコート錠は、販売されているチカグレロルフィルムコート錠に等しい。
【0318】
提案された放出方法(手作業のサンプリングの利用及び溶出したチカグレロルの%をUVにより測定)を利用して得られた、臨床試験Aに使用した口腔内分散錠及びフィルムコート錠の溶出プロファイルを
図8に表す。わかる通り、口腔内分散錠とフィルムコート錠の溶出プロファイルは類似であり、それはインビボで類似の曝露をもたらす。
【0319】
試験設計及び方法:
この試験は、単試験施設で実施された、健康な男性及び出産の可能性がない女性の対象における非盲検、無作為化、4期間、4治療、クロスオーバー試験であった。試験は下記から構成された:
-最長21日のスクリーニング期間;
-対象が、チカグレロルによる投薬の前夜(-1日目)の夕食前から少なくとも投薬後48時間まで留まる4治療期間;3日目の朝に開放;及び
-チカグレロルの最後の投与後5~10日内の最終来院。
【0320】
各用量投与の間に、7日間の最低休薬期間があった。対象は、チカグレロルの単回投与を、絶食条件下で4つの異なる方法で受け取った。少なくとも10時間の一晩の絶食後、各対象は、各治療の単回投与をそれぞれ4つの機会に受け取った。治療プロトコルを表55にまとめる。
【0321】
【0322】
試験対象
36名の健康な男性及び女性(出産の可能性なし)の対象が試験に登録され、30名の対象がそれを完了した。対象は全て18~55歳の健康な男性又は女性の対象であり、18.5~29.9kg/m2のボディマス指数(両端含む)を有し、体重が少なくとも50kgで100kg以下(両端含む)であった。
【0323】
治療の期間:
各対象の試験参加の期間はおよそ7~8週間であり、スクリーニング来院(-21日目~-1日目)、クリニカルユニットへの入場(各治療期間の-1日目)、4回の院内治療期間(1~3日目)と各治療期間中の治験薬(IMP)の投与の間の7日間の休薬期間、及び治療期間4の後の経過観察来院からなった。
【0324】
対象は、単回投与のIMPを、4回の院内治療期間のそれぞれの1日目に受け取った。
【0325】
治療コンプライアンス:
投薬は、PAREXEL Early Phase Clinical Unitで実施した。IMP投与後に、対象の口及び手のチェックが実施された。IMP投与の正確な日時並びに投与に伴われた水の体積を記録した。
【0326】
評価基準:
薬物動態パラメーター:
PKパラメーターを、チカグレロル(親)及びその活性代謝物AR-C124910XXに関して、血漿濃度に基づいて評価した。
【0327】
一次PKパラメーター:
Cmax 最高血漿中濃度
AUC(0-t)時間零から最後の定量可能な分析物濃度の時間までの血漿濃度-時間曲線下面積
AUC 時間零から無限までの血漿濃度-時間曲線下面積
【0328】
二次PKパラメーター:
tmax 最高濃度に至るまでの時間
t1/2λz 半対数濃度-時間曲線の終末相の傾き(λz)と関連する半減期
MRCmax 分子量の違いに関して調整された代謝物Cmaxと親Cmaxの比
MRAUC(0-t)分子量の違いに関して調整された代謝物AUC(0-t)と親AUC(0-t)の比
MRAUC 分子量の違いに関して調整された代謝物AUCと親AUCの比
【0329】
診断用のPKパラメーターを列記した。
【0330】
安全性変数:
安全性変数には、有害事象(AE)、バイタルサイン(血圧及び脈拍)、12誘導心電図(ECG)、及び臨床検査による評価(血液学、臨床化学、及び尿検査)があった。
【0331】
上記に加え、身体診察所見、妊娠検査(女性のみ)、及び併用薬の使用も報告した。ウイルス血清学、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び卵胞刺激ホルモン(FSH)(女性のみ)、凝固及び薬物乱用尿検査、アルコール及びコチニンも、適格性のために評価した。
【0332】
統計方法:
試料サイズの決定
チカグレロル及びその活性代謝物AR-C124910XXの0.80~1.25の生物学的同等性範囲並びにチカグレロル及びAR-C124910XXのCmax及びAUCの24%以下の対象内変動係数(CV)に基づき、28名の評価可能な対象が90%の検出力を達成するのに必要であった。
【0333】
最後の治療期間の終わりに少なくとも28名の評価可能対象を確保するために、36名までの対象を、4期間及び4治療の4シーケンスのウィリアムズデザイン:ADBC、BACD、CBDA、及びDCABに無作為化した。
【0334】
薬物動態的分析:
薬物動態パラメーターを、各治療に対して記述統計学を利用してまとめた。可能な場合、以下の記述統計学を表した:n、幾何平均、幾何学的CV、相加平均、算術標準偏差、中央値、最低、及び最高。tmaxに関しては、n、中央値、最低、及び最高のみを表した。
【0335】
治療A、B、及びC(被験薬)、及びD(対照薬)のバイオアベイラビリティ比較を、治療、シーケンス、期間、及びシーケンス内の対象の固定効果を含む分散分析(ANOVA)モデルに基づき、両側90%信頼区間(CI)アプローチを利用して、チカグレロルとAR-C124910XXの両方の対数変換したCmax、AUC0-t、及びAUCの比に対して評価した。
【0336】
全PKパラメーターを分析前に対数変換した。対数スケールでの推定された治療の差異及び90%CIを元に戻すように変換すると、治療の各組に関して幾何平均比を得た。
【0337】
試験的な目的には、先に略述されたANOVAを、シーケンス内の対象のランダム効果と共に繰り返した。
【0338】
安全性分析:
全AEを、医薬規制用語集(MedDRA)を使用してコード化し、各対象に関して列記した。バイタルサイン測定、血液学、臨床化学、及び凝固値の結果を、対象ごと及び時点ごとに列記した。12誘導ECG結果を各対象に関して列記し、身体診察の結果を各対象に関して器官ごとに列記した。
【0339】
薬物動態的結果:
水あり若しくは水なしの、又はNGチューブにより投与される水に懸濁された90mgチカグレロルOD錠の後、チカグレロル及び代謝物AR-C124910XXの血漿濃度-時間プロファイルは、全般的に90mgチカグレロルIR錠の後のものに類似であった。プロファイルを、投与後およそ2時間の中央値tmaxで達成されたCmaxを有する迅速なチカグレロル吸収及び投与後2~3時間の中央値tmaxを有する代謝物AR-C124910XXの迅速な形成として特徴付けた。Cmaxに達した後、血漿チカグレロル及び代謝物AR-C124910XX濃度は低下し、それぞれ、7.99~8.21時間及び9.35~9.48時間の終末相平均t1/2λzを有した。血漿代謝物AR-C124910XX Cmax及びAUCは、それぞれ、血漿チカグレロルCmax及びAUCの27.1~30.0%及び38.2~40.5%であった。
【0340】
誘導された平均PKパラメーターは、4種の治療にわたってチカグレロル及び代謝物AR-C124910XXに関して類似しており、治療の間の吸収速度(Cmax及びtmax)及び吸収の程度(AUC)が類似であることを示唆した。
【0341】
チカグレロルAUC(90.27、99.89)及び代謝物AR-C124910XX AUC(91.36、98.42)の幾何平均比の90%CIは、80~125%の許容区間(acceptance interval)内に完全に含まれていた。水ありのOD錠からのチカグレロルCmaxは、IR錠より約15%低く(90%CI:76.77、93.78)、代謝物AR-C124910XX C(82.03、98.39)の90%CIは、80~125%区間内に含まれていた。
【0342】
水なしのチカグレロルOD錠の後の、チカグレロル及びAR-C124910XX AUC(それぞれ、[89.81、100.99]及び[91.78、99.82])及びCmax(それぞれ、[88.22、105.79]及び[90.53、104.90])並びにNGチューブにより投与される水に懸濁されたチカグレロルOD錠後の、AUC(それぞれ、[90.26、98.73]及び[93.26、99.87])及びCmax(それぞれ、[85.59、99.25]及び[90.83、103.74])の幾何平均比の90%CIは、80~125%の許容区間内に完全に含まれていた。
【0343】
対象間の変動性は、低から中程度であり、チカグレロルと代謝物AR-C124910XXに両方に関して治療にわたって類似であった;チカグレロル及び代謝物AR-C124910XXのCmaxの幾何平均CV%はおよそ25~34%であり、チカグレロル及び代謝物AR-C124910XXのAUCの幾何平均CV%はおよそ19~44%であった。
【0344】
安全性結果
この試験の実施の間に、IMPの永続的な中止をもたらす死亡、重篤な有害事象、又はAEはまったくなかった。
【0345】
全部で18のAEが9名(25.0%)の対象に報告され、全て、強度が軽度であると分類された。全AEは、試験の最後までに消散した。
【0346】
最もよく報告されたAEは、それぞれ2名(5.6%)の対象における、器官別大分類の神経系障害中のめまい及び器官別大分類の血管障害中の血栓性静脈炎であった。
【0347】
AE、臨床検査値、バイタルサイン測定値、12誘導心電図の読み取り、及び身体診察に傾向は全く観察されなかった。
【0348】
この非盲検、無作為化、4期間、4治療、クロスオーバー、単施設、単回投与試験は、健康な対象における、チカグレロルIR錠に比較したチカグレロルOD錠のバイオアベイラビリティを評価するために設計した。
【0349】
水あり若しくは水なし、又はNGチューブにより投与される水に懸濁されたチカグレロルOD錠の後の吸収の程度(AUC)は、チカグレロルIR錠後のものに等しく、チカグレロル及び代謝物AR-C124910XX AUCの幾何平均比の90%CIは、80~125%の許容区間内に完全に含まれていた。水ありのチカグレロルOD錠からのチカグレロルCmaxは、チカグレロルIR錠より約15%低く(90%CI:76.77、93.78)、代謝物AR-C124910XX Cmax並びに水なし又はNGチューブにより投与される水に懸濁されたチカグレロルOD錠からのチカグレロル及び代謝物AR-C124910XXのCmaxの90%CIは、80~125%区間内に完全に含まれていた。
(i)水と共に投与されたチカグレロル90mgOD錠からの吸収の程度は、チカグレロルIRに等しいが、そのCmaxはチカグレロル90mgIR錠より約15%低かった。
(ii)水なしで投与されたチカグレロル90mgOD錠は、チカグレロル90mgIR錠に生物学的に同等であった。
(iii)水に懸濁されNGチューブにより胃に投与されたチカグレロル90mgOD錠は、チカグレロル90mgIR錠に生物学的に同等であった。
【0350】
この結果は、チカグレロルOD錠製剤並びにチカグレロルOD錠を投与する方法が、IR錠に比べて、チカグレロル及び代謝物AR-C124910XXの薬物動態プロファイルに大きく影響はしなかったことを表した。全体として、健康な男性及び出産可能でない女性対象におけるチカグレロル錠剤の90mgの単回投与は、この試験において安全で忍容性が良好であると考えられた。
【0351】
薬物動態パラメーター及び標準的な生物学的同等性基準による比較を表56に表す。
【0352】
【0353】
実施例16-生物学的同等性の評価(試験B)
生物学的同等性試験(臨床試験B)を、日本人の対象でも実施した。試験は、単試験施設で実施された、健康な日本人の対象(男性及び女性)における非盲検、無作為化、3期間、3治療、クロスオーバー試験であった。
【0354】
試験は下記を含んでいた:
(i)最長28日のスクリーニング期間;
(ii)対象が、チカグレロルによる投薬の前夜(-1日目)夕食前から、投薬後少なくとも48時間まで留まる3治療期間;3日目の朝に開放;及び
(iii)チカグレロルの最後の投与後5~10日以内の最終来院。
【0355】
各用量投与の間には7日の最低休薬期間があった。対象は、チカグレロルの単回投与を、3種の異なる方法で、絶食条件下で受け取った。少なくとも10時間の一晩の絶食後に、各対象は、それぞれ、各治療の単回投与を3つの機会に受け取った。治療プロトコルを表57にまとめる。
【0356】
【0357】
投与経路は経口であった。患者は、被験薬か対照薬のいずれかの単回投与を受け取った。各対象は7~8週間試験に関与した。
【0358】
チカグレロルとその活性代謝物AR-C124910XXの両方の血漿濃度の測定のための血液試料を、各治療期間で収集した:0時間(投与前)並びに投与後0.5(30分)、1、2、3、4、6、8、10、12、16、24、36、及び48時間(治療期間あたり14試料)。血漿試料を、実証されたアッセイを利用して、チカグレロル及びAR-C124910XXに関して分析した。
【0359】
試験において、チカグレロル口腔内分散錠(実施例7による)を、水あり(口腔内分散後)及び水なしで投与し、チカグレロルフィルムコート錠90mgと比較した。臨床試験Aに含まれたものと同じバッチを被験薬及び対照薬に使用した。水あり又は水なしで投与されたチカグレロル口腔内分散錠は、日本人の対象においてチカグレロルフィルムコート錠と生物学的に同等であることが示された。薬物動態パラメーター及び標準的な生物学的同等性基準による比較を表58に表す。
【0360】
【0361】
比較例17-プッシュスルーブリスターパックの評価
10名の試験人(女性7名及び男性3名、年齢22~58歳)を含む試験をプッシュスルーブリスターパックにより実施した。
【0362】
各人に、それぞれ10個の錠剤を含むブリスターカードを10個与えた(全部で1人あたり100個の錠剤)。錠剤は実施例7の口腔内分散錠と同一であった。
【0363】
次いで、各人に、普段している通りに全ての錠剤を押し出すように依頼した。
【0364】
結果
破損した錠剤の数は以下の通りである:
平均:100個あたり(すなわち1人あたり)2.5個の破損した錠剤
範囲:100個あたり(すなわち1人あたり)0~7個の破損した錠剤
【0365】
実施例18-引き裂き可能なブリスターパックの評価
標準的なプッシュスルーアルミニウム/アルミニウムブリスターパックにより実施した試験は、およそ2.5%の破損した錠剤をもたらした(比較例17参照)。10名の試験人(女性4名及び男性6名、年齢25~53歳)を含むさらなる試験を、改変されたプッシュスルーブリスターパックで実施した。
【0366】
改変されたブリスターパックを
図9に示す。改変は、ブリスターのそれぞれに隣接する外縁からのブリスターパック材料の三角形部分の切除からなった。切除は、型に合わせて作った穴開け器を使用して達成した。
【0367】
この試験における対象は、プッシュスルーブリスターパックを使用した先の試験(すなわち比較例17の試験)における対象とは異なっていた。
【0368】
図形要素を含む試料を含む包装試料を調製して、錠剤の破損を評価し、患者が包装の開け方を理解するかどうかを確かめた。外形寸法172×88mm。
【0369】
各人に、それぞれ10個の錠剤を含むブリスターカードを10個与えた(全部で1人あたり100個の錠剤)。錠剤は、実施例7の口腔内分散錠と同一であった。
【0370】
試験プロトコル
図形(文及び記号)を含むラベルのあるブリスターパック(10個の錠剤)を試験人に示し、およそ以下のような言葉遣いで言う:
【0371】
「私たちは、この包装がどのように作用するかを確認するために10名の方に包装試験を行っています。このブリスターパックから全ての錠剤を取り出していただきます。ブリスターパックのどの錠剤から始めてもかまいません。錠剤を取り出し始める前に、片面に文章が載っているこのブリスターパックを見てください。それから、同じブリスターパックですが、文章のないものを手に入れてください。そのブリスターパックから、10個全ての錠剤を取り出してください。錠剤には有効成分、Brilintaが含まれています。1つのブリスターパックを空にしたら、私が全ての錠剤をプラスチック容器に入れ、別のブリスターパックを渡します。あなたは全部で100個の錠剤すなわち10個のブリスターパックを取り出すことになります。錠剤を全て取り出したら、少し質問させてもらいます」
【0372】
次いで、ラベルのある最初のブリスターパックを対象に渡す。対象がそれを読むと、それを戻してもらった。1度に1つのブリスターパックを手渡した。ラベルを読むおよその時間を記した。試験人が錠剤を取り出し始める方法を記した(例えば、引き裂き、押し出し、又は他の方法)。破損した錠剤の数を記した。
【0373】
試験人が最初のブリスターパックの全錠剤を押し出した場合、彼/彼女にラベルをもう一度読むように頼み、引き裂きを促した。次いで、試験人は、残りの9個のブリスターパックを引き裂いて開けることを期待された。
【0374】
試験後に、試験人に、スコア付けのために、下記を含むいくつかの質問をした:
・ブリスターパックから錠剤を取り出すのはどれくらい容易でしたか?
・標準的なプッシュスルーブリスターパックよりも、このパックを開けるのが容易と思いますか、難しいと思いますか?
【0375】
結果
破損した錠剤の数は下記の通りであった:
・953個の錠剤は、引き裂いて開ける方法を利用して取り出された-これらのうち、1個の錠剤が破損した。
・47個の錠剤は押し出し方法を利用して取り出された-これらのうち、7個の錠剤が破損した。
【0376】
データを表59にまとめる。
【0377】
【表60】
本発明は、以下の態様および実施態様を含む。
[1](1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオール;及び
少なくとも1種の崩壊性賦形剤を含み;
約50~約150Nの硬度及び約3分未満の崩壊時間を有する錠剤。
[2]約60秒未満の崩壊時間を有する、[1]に記載の錠剤。
[3]少なくとも1種の崩壊性賦形剤が迅速口腔内崩壊性賦形剤を含む、[1]又は[2]に記載の錠剤。
[4]少なくとも1種の崩壊性賦形剤が少なくとも1種の炭水化物充填剤及び少なくとも1種の崩壊剤を含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載の錠剤。
[5]少なくとも1種の崩壊性賦形剤がマンニトールを含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載の錠剤。
[6]少なくとも1種の崩壊性賦形剤がクロスポビドンを含む、[1]~[5]のいずれか一項に記載の錠剤。
[7]少なくとも1種の崩壊性賦形剤が、マンニトール、キシリトール、無水第二リン酸カルシウム、クロスポビドン、及び微結晶性セルロースを含む、[1]~[6]のいずれか一項に記載の錠剤。
[8]少なくとも1種の崩壊性賦形剤が、錠剤の約50%~約80重量%の範囲の量で存在する崩壊性賦形剤プレミックスである、[1]~[7]のいずれか一項に記載の錠剤。
[9](1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオールが、約10~約18重量%の量で存在する、[1]~[8]のいずれか一項に記載の錠剤。
[10]約60mg又は約90mgの(1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオールを含む、[1]~[9]のいずれか一項に記載の錠剤。
[11]約90mgの(1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオールを含む、[10]に記載の錠剤。
[12]約55~約90Nの硬度を有する、[1]~[11]のいずれか一項に記載の錠剤。
[13]少なくとも1種の固化防止剤をさらに含む、[1]~[12]のいずれか一項に記載の錠剤。
[14]少なくとも1種の固化防止剤が、錠剤の約0.5~約1重量%の量で存在する、[13]に記載の錠剤。
[15](1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオール;及び
固化防止剤
の湿式造粒を含むプロセスにより得られる、[1]~[14]のいずれか一項に記載の錠剤。
[16]湿式造粒プロセスが、(1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオールを、それを含む混合物中の乾燥成分の少なくとも約35重量%の量で含む混合物の湿式造粒を含む、[15]に記載の錠剤。
[17]湿式造粒プロセスが、(1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオールを、それを含む混合物中の乾燥成分の約70重量%までの量で含む混合物の湿式造粒を含む、[15]又は[16]に記載の錠剤。
[18]湿式造粒プロセスに使用される混合物が、固化防止剤を、混合物中の乾燥成分の約0.1~約1重量%の範囲の量で含む、[15]~[17]のいずれか一項に記載の錠剤。
[19]湿式造粒プロセスの生成物が、約1600μm未満のD(v,0.9)値を有する顆粒を含む、[15]~[18]のいずれか一項に記載の錠剤。
[20]湿式造粒工程の完了後に、生成物が第2の量の固化防止剤又は流動促進剤と混合される、[15]~[19]のいずれか一項に記載の錠剤。
[21]第2の量の固化防止剤又は流動促進剤が、錠剤の約0.2~約0.6重量%、好ましくは約0.3~約0.6重量%で存在する、[20]に記載の錠剤。
[22](1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオール;
固化防止剤;及び
結合剤
の湿式造粒を含むプロセスにより得られる、[15]~[21]のいずれか一項に記載の錠剤。
[23]結合剤が、湿式造粒混合物中に、混合物中の乾燥成分の約2~約6重量%、好ましくは約3~約6重量%の範囲の量で存在する、[22]に記載の錠剤。
[24]1種以上の滑沢剤を含む、[1]~[23]のいずれか一項に記載の錠剤。
[25]滑沢剤が約1~約2重量%の量で存在する、[24]に記載の錠剤。
[26]錠剤の約10~約18重量%の(1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオール;
錠剤の約0.9~約2重量%のヒドロキシプロピルセルロース;
錠剤の約0.5~約1重量%のコロイド状無水シリカ;
錠剤の約47~約67重量%のマンニトール;
錠剤の約2.5~約4重量%のキシリトール;
錠剤の約2~約3.5重量%の無水第二リン酸カルシウム;
錠剤の約9~約15重量%の微結晶性セルロース;
錠剤の約5~約9重量%のクロスポビドン;及び
錠剤の約1~約2重量%のフマル酸ステアリルナトリウム
を含む、[1]~[25]のいずれか一項に記載の錠剤。
[27](1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオールが、約5μm~約50μmのD(v,0.9)粒径分布を有する、[1]~[26]のいずれか一項に記載の錠剤。
[28](1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオールが、実質的に多形体IIの形態で存在する、[1]~[27]のいずれか一項に記載の錠剤。
[29](1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオールが、実質的に多形体IIIの形態で存在する、[1]~[27]のいずれか一項に記載の錠剤。
[30][1]~[29]のいずれか一項に定義の錠剤の調製方法であって、(1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオールと少なくとも1種の固化防止剤を、液体と共に又は液体中で混合して、湿潤粒質物を与える工程を含む方法。
[31]湿潤粒質物混合物が高せん断ミキサーにより混合される、[30]に記載の方法。
[32](I)湿潤粒質物混合物を乾燥させること、
(II)1種以上の賦形剤を乾燥された粒質物に加えること、及び次いで
(III)混合物を錠剤に成形すること
をさらに含む、[30]又は[31]に記載の方法。
[33]1種以上の賦形剤が、[3]~[8]のいずれか一項に定義の少なくとも1種の崩壊性賦形剤、[20]若しくは[21]に定義の第2の量の固化防止剤、及び/又は[24]若しくは[25]に定義の滑沢剤を含む、[32]に記載の方法。
[34]1つ以上のくぼみを含むブリスターのあるベースシート及びベースシートに結合した蓋をするシートを含むブリスターパックであって、ブリスターパックの端部が、少なくとも1つの切れ目を、ブリスターパックがくぼみを露出するように切れ目で引き裂き可能であるように、ブリスターのあるベースシート及び蓋をするシート中に含むブリスターパック。
[35]少なくとも1つの切れ目がくぼみの1つに隣接して位置する、[34]に記載のブリスターパック。
[36]切れ目が、握られ、引き離されて、ブリスターのあるベースシートと蓋をするシートを引き裂くことが可能な、ブリスターパックの端部の2つの領域を分ける、[34]又は[35]に記載のブリスターパック。
[37]切れ目が裂け目又は切り込みである、[34]~[36]のいずれか一項に記載のブリスターパック。
[38]切れ目の最内部が、最も近いくぼみから少なくとも3mmである、[34]~[37]のいずれか一項に記載のブリスターパック。
[39]各くぼみに隣接して位置する少なくとも1つの切れ目を含む、[34]~[38]のいずれか一項に記載のブリスターパック。
[40]ブリスターのあるベースシートがアルミニウム層又はポリマー層を含む、[34]~[39]のいずれか一項に記載のブリスターパック。
[41]ブリスターのあるベースシートが約100μm~約200μmの厚さを有する、[40]に記載のブリスターパック。
[42]蓋をするシートがアルミニウム層を含む、[34]~[41]のいずれか一項に記載のブリスターパック。
[43]蓋をするシートが約15μm~約60μmの厚さを有する、[42]に記載のブリスターパック。
[44]少なくとも2つのくぼみを含み、くぼみの2つの間を通る引き裂き経路を形成するミシン目のある領域をさらに含む、[34]~[43]のいずれか一項に記載のブリスターパック。
[45][1]~[29]のいずれか一項に定義の1つ以上の錠剤を収容する、[34]~[44]のいずれか一項に記載のブリスターパック。
[46]心血管疾患を有する患者におけるアテローム血栓性イベントを治療又は予防する方法であって、そのような疾患に罹患しているか、又はかかりやすい患者への、[1]~[29]のいずれか一項に定義の錠剤の投与を含む方法。
[47](1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオール;及び
少なくとも1種の崩壊性賦形剤
を含む組成物の、心血管疾患を有する患者におけるアテローム血栓性イベントの治療又は予防に使用するための医薬品であって、[1]~[29]のいずれか一項に定義の錠剤の形態である医薬品の製造における使用。
[48]アテローム血栓性イベントが、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、及び末梢動脈疾患からなる群から選択される、[46]に記載の方法又は[47]に記載の使用。
[49]急性冠症候群の治療のためにステント留置された患者におけるステント血栓症を治療又は予防する方法であって、[1]~[29]のいずれか一項に定義の錠剤の、患者への投与を含む方法。
[50](1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオール;及び
少なくとも1種の崩壊性賦形剤
を含む組成物の、ステント血栓症の治療又は予防に使用するための医薬品であって、[1]~[29]のいずれか一項に定義の錠剤の形態である医薬品の製造における使用。
[51]方法又は使用が錠剤の高齢の患者への投与を含む、[46]、[48]、若しくは[49]のいずれか一項に記載の方法、又は[47]、[48]、若しくは[50]のいずれか一項に記載の使用。
[52]方法又は使用が、心筋梗塞又は脳卒中に罹患した患者への錠剤の投与を含む、[46]、[48]、[49]、若しくは[51]のいずれか一項に記載の方法又は[47]、[48]、[50]、若しくは[51]のいずれか一項に記載の使用。