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特許7254875リチウム二次電池用正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20230403BHJP
   H01M 4/52 20100101ALI20230403BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20230403BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20230403BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230403BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/52
H01M4/485
C01G53/00 A
H01M4/505
H01M4/36 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021177692
(22)【出願日】2021-10-29
(62)【分割の表示】P 2019164118の分割
【原出願日】2019-09-10
(65)【公開番号】P2022009746
(43)【公開日】2022-01-14
【審査請求日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】10-2018-0108210
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0123130
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517113750
【氏名又は名称】エコプロ ビーエム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ECOPRO BM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【氏名又は名称】臼井 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(72)【発明者】
【氏名】チェ ムン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ヘオ キョン チェ
(72)【発明者】
【氏名】ユ ヒュン チョン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒョン ペ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン ウン ピョル
【審査官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-188443(JP,A)
【文献】特開2008-270175(JP,A)
【文献】特開2014-139926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶構造を有するリチウム系複合酸化物である1次粒子からなる複数の2次粒子を含む正極活物質であって、
結晶粒界の密度を、前記2次粒子内に存在する前記1次粒子間の粒界面の数を前記2次粒子を構成する前記1次粒子の数で割った値としたとき、
前記正極活物質が、0.5以下の粒界密度を有する2次粒子および0.5より大きい粒界密度を有する2次粒子の集合体であり、
前記リチウム系複合酸化物が、下記式1で表され、
LiNi1-(v+w+x+y)CoM1M2M3 式1
(式1中、
M1は、MnまたはAlであり、M2およびM3は、それぞれ独立して、Al、Ba、B、Ce、Cr、Mg、Mn、Mo、Na、K、P、Sr、Ti、WおよびZrから選択され、かつ互いに異なる金属であり、
0.95≦u≦1.05、0≦v≦0.20、0≦w≦0.20、0≦x≦0.05、0≦y≦0.05、1.50≦z≦2.1である。)
前記正極活物質を構成する複数の前記2次粒子のうち前記結晶粒界の密度が0.5以下である前記2次粒子の比率が30%以上であり、
前記正極活物質が、1個~2個の1次粒子からなる第1凝集体、3個~6個の1次粒子からなる第2凝集体および7個~10個の1次粒子からなる第3凝集体を含み、前記2次凝集体が、前記2次粒子の集合体のうち20%以上70%以下で存在するリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項2】
前記2次粒子を構成する前記1次粒子は、長軸方向に等方向のリチウムイオン拡散経路を有する、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記2次粒子の4.5トンプレス前/後の粒度分布のd(50)変化率は、20%以下である、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記2次粒子の2.5トンプレス前/後の粒度分布のd(50)変化率は、3%以下である、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記2次粒子の6.0トンプレス前/後の粒度分布のd(50)変化率は、30%以下である、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記1次粒子の平均粒径は、0.01μm~20μmである、請求項1~のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項7】
前記1次粒子間の界面および前記2次粒子の表面のうち少なくとも一部をカバーするコーティング層をさらに含み、
前記コーティング層は、式2で表される少なくとも一つの酸化物を含む、
Li 式2
(式2中、
Aは、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選択される少なくとも一つであり、
0≦a≦6、0≦b≦4、2≦c≦8である)
請求項1~のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項8】
前記正極活物質を含む正極を4.4V~4.6Vまで充電した後、常圧のAr雰囲気下で25℃から350℃まで10℃/minの昇温速度で熱重量分析する場合、350℃での前記正極の重量損失が25℃での前記正極の重量に対し12.3%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項9】
請求項1~のいずれかに記載の正極活物質を含むリチウム二次電池用正極。
【請求項10】
請求項に記載のリチウム二次電池用正極を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
他の再充電式電池システムと比較するとき、リチウム二次電池は、高運転電圧、軽量化、小型化、非メモリ効果、低い自己放電率、長いサイクル寿命、高エネルギー密度などのような利点があるので、モバイルフォン、ノートパソコン、タブレットパソコンおよびその他モバイル端末において広く使用される。
【0003】
また、近年、環境保護の観点から、政府および自動車メーカーの広報下に電気車が急速に開発され、リチウム二次電池は、その優れた性能のおかげで次世代電気自動車の理想的な電源として考慮されている。
【0004】
このようなリチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム系複合酸化物が使用されており、この中でも、作用電圧が高く、容量特性に優れたリチウム-コバルト複合酸化物(LiCoO)が主に使用されている。しかしながら、LiCoOは、脱リチウムによる結晶構造の不安定化によって高温安定性が劣り、また、高価であるので、電気自動車などのように大容量の電池システムを要求する分野の動力源として使用されるには限界がある。
【0005】
LiCoOを代替するための素材として、リチウム-マンガン複合酸化物(LiMnOまたはLiMnなど)、リチウム-リン酸鉄(LiFePOなど)またはリチウム-ニッケル複合酸化物(LiNiOなど)などが開発されてきた。ここで、リチウム-ニッケル複合酸化物は、約200mAh/gの高い可逆容量を有することによって、大容量の電池具現が可能であるという点から、研究および開発がより活発に行われている。
【0006】
ただし、LiNiOは、LiCoOと比較するとき、高温安定性が悪く、充電状態で外部からの圧力などにより内部短絡を生じる場合、正極活物質が自ら分解したり、電解液と正極活物質の界面および表面間の副反応により電池の破裂および発火を招く問題がある。
【0007】
これに伴い、LiNiOの優れた可逆容量は維持しながらも、低い高温安定性を改善することが可能な正極活物質の開発が要求されるのが現状である。
【0008】
一方、リチウム二次電池は、電池ケースの形状に応じて電極組み立て体が金属缶に内蔵されたカンタイプの二次電池と、電極組み立て体がアルミニウムラミネートのようなシートからなるパウチに内蔵されたパウチタイプの二次電池とに分類され得る。
【0009】
パウチタイプの二次電池は、軽くて、電解液の漏液(leakage)の可能性が少ないので、相対的に小さい体積および質量で同じ量の二次電池を具現することができるという長所がある反面、電池ケースの内部圧力が急激に増加する場合、爆発の危険性があるので、電池ケースの内部圧力の主な上昇原因であるガス発生をコントロールすることによって、安定性を確保することが重要な課題の一つである。
【0010】
例えば、二次電池に限界以上の過電流(overcharge)が流れる場合、電池の内部温度が急激に上昇するにつれて、電解液の分解反応を引き起こして、ガスを発生させることもできるが、電解液と正極活物質の界面および表面間の副反応によりガスが発生することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0048208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、LiNiOの優れた可逆容量は維持しながらも、低い高温安定性を改善することが可能なリチウム二次電池用正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池を提供することにある。
【0013】
また、本発明の目的は、電解液と正極活物質の界面および表面間の副反応が起こる可能性を減らすことによって、二次電池内ガス発生による電池スウェリング(swelling)現象を防止することが可能なリチウム二次電池用正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池を提供することにある。
【0014】
本発明の目的は、以上で言及した目的に制限されず、言及されていない本発明の他の目的および長所は、下記の説明により理解され得、本発明の実施例によりさらに明らかに理解されるだろう。また、本発明の目的および長所は、特許請求範囲に示した手段およびその組合せにより実現され得ることを容易に知ることができるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によれば、単結晶構造を有するリチウム系複合酸化物である1次粒子からなる複数の2次粒子を含む正極活物質であって、結晶粒界の密度を、前記2次粒子内に存在する前記1次粒子間の粒界面の数を前記2次粒子を構成する前記1次粒子の数で割った値としたとき、前記正極活物質を構成する複数の前記2次粒子のうち前記結晶粒界の密度が0.5以下である前記2次粒子の比率が30%以上である、リチウム二次電池用正極活物質が提供される。
【0016】
また、本発明の他の態様によれば、前記正極活物質を含むリチウム二次電池用正極が提供される。
【0017】
また、本発明のさらに他の態様によれば、前記リチウム二次電池用正極を含むリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0018】
正極活物質に含まれた2次粒子の比表面積および粒界面は、正極活物質と電解液の界面および表面間の副反応が起こる領域であって、2次粒子の比表面積および粒界面を減少させることによって、正極活物質の高温安定性を向上させると同時に、正極活物質に起因したガス発生を低減することが可能である。
【0019】
上述したように、本発明によるリチウム二次電池用正極活物質は、単結晶構造を有するリチウム系複合酸化物1次粒子からなる2次粒子を含む。すなわち、2次粒子を構成する1次粒子が単結晶で形成されるに伴い、2次粒子の比表面積および粒界面を減少させることが可能である。
【0020】
さらに、本発明によれば、正極活物質は、結晶粒界(grain boundary)の密度が異なる2次粒子を含み、かつ、正極活物質に含まれた2次粒子は、1個~10個の1次粒子が凝集して形成されることによって、数十~数百個の1次粒子が凝集して形成された2次粒子に比べて相対的に小さい比表面積を有して、電解液との副反応が起こる表面積を減らすことが可能である。また、2次粒子を形成する1次粒子の数が少ないに伴い、結晶粒界の密度が小さくなって、2次粒子の粒界面での副反応もやはり減らすことができる。
【0021】
また、本発明によれば、正極活物質に含まれた2次粒子は、1個~10個の1次粒子が凝集して形成されるに伴い、2次粒子内1次粒子は、長軸方向に等方向のリチウムイオン拡散経路を有する確率が高くなりえる。このように、2次粒子内長軸方向に等方向のリチウムイオン拡散経路の比率が高くなるに伴い、正極活物質によるリチウムイオン伝導性および電子伝導性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来の正極活物質の断面を概略的に示す図である。
図2】本発明による正極活物質に含まれ得る2次粒子の断面を概略的に示す図である。
図3】本発明による正極活物質に含まれ得る2次粒子の断面を概略的に示す図である。
図4】本発明による正極活物質に含まれ得る2次粒子の断面を概略的に示す図である。
図5】単結晶状態の正極活物質(2次粒子)のリチウムイオン拡散経路を示す図である。
図6】単結晶状態の正極活物質(2次粒子)のリチウムイオン拡散経路を示す図である。
図7】複数の1次粒子が凝集して形成された正極活物質(2次粒子)のリチウムイオン拡散経路を示す図である。
図8】複数の1次粒子が凝集して形成された正極活物質(2次粒子)のリチウムイオン拡散経路を示す図である。
図9】実施例1によって製造された正極活物質の断面SEM写真であって、正極活物質に含まれた2次粒子の結晶粒界の密度を示す図である。
図10】実施例2によって製造された正極活物質の断面SEM写真であって、正極活物質に含まれた2次粒子の結晶粒界の密度を示す図である。
図11】比較例1によって製造された正極活物質の断面SEM写真であって、正極活物質に含まれた2次粒子の結晶粒界の密度を示す図である。
図12】本発明の実施例1によって製造された正極活物質のSEM写真を示す図である。
図13】本発明の実施例5によって製造された正極活物質のSEM写真を示す図である。
図14】本発明の実施例1および5によって製造された正極活物質を構成する2次粒子に対してEP-EDX分析により測定されたCoの含有量を示したグラフを示す図である。
図15】実施例2および比較例1によって製造された正極活物質を使用した二次電池のサイクル数による寿命特性を評価した結果を示したグラフを示す図である。
図16】実施例1および比較例1によって製造された正極活物質を使用した二次電池の高温貯蔵前/後のインピーダンス測定結果に対するナイキストプロット(Nyquist plot)を示すグラフである。
図17】実施例2および比較例2によって製造された正極活物質を使用した二次電池の高温貯蔵前/後のインピーダンス測定結果に対するナイキストプロット(Nyquist plot)を示すグラフである。
図18】実施例2および比較例1によって製造された正極活物質を使用して製造された二次電池の保管日数に応じた体積変化を示すグラフである。
図19】実施例2および比較例1によって製造された正極活物質を使用して製造された二次電池の熱重量分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明をさらに容易に理解するために、便宜上、特定の用語を本願に定義する。本願において別途定義しない限り、本発明に使用された科学用語および技術用語は、当該技術分野における通常の知識を有する者により一般的に理解される意味を有する。また、文脈上、特に指定しない限り、単数形態の用語は、それの複数形態も含むものであり、複数形態の用語は、それの単数形態も含むものと理解すべきである。
【0024】
本願において使用された用語「リチウム系複合酸化物」は、リチウムイオンを吸蔵および放出することが可能な酸化物であって、リチウムおよび金属元素を含み、特に本願において使用されるリチウム系複合酸化物は、リチウムとニッケルを含むリチウム-ニッケル系複合酸化物であり得る。
【0025】
本願において使用された用語「単結晶」は、粒子の内部に結晶粒界(grain boundary)を含まない状態の結晶を意味し、本願において使用された用語「1次粒子」は、凝集体を形成せず、単独で存在する粒子を意味する。これにより、「単結晶構造を有するリチウム系複合酸化物である1次粒子」は、リチウム系複合酸化物からなる1次粒子の内部に結晶粒界が含まれていない状態の粒子を意味する。
【0026】
本願において使用された用「2次粒子」は、上述したリチウム系複合酸化物である1次粒子が凝集した粒子を意味する。これにより、少なくとも二つの1次粒子が凝集して2次粒子を形成する場合、2次粒子内には、二つの1次粒子の界面に形成される結晶粒界または粒界面が存在することになる。
【0027】
本願において使用された用語「結晶粒界の密度」は、2次粒子内に少なくとも二つの1次粒子が存在するに伴って形成される結晶粒界または粒界面の数を意味し、2次粒子内存在する1次粒子の数が多いほど結晶粒界の密度が大きくなり、2次粒子内存在する1次粒子の数が少ないほど結晶粒界の密度が小さくなる。
【0028】
本願において結晶粒界の密度は、下記の式で計算され得る。
【0029】
結晶粒界の密度=(2次粒子内に存在する1次粒子間の粒界面の数/2次粒子を構成する1次粒子の数)
【0030】
一方、本願において2次粒子は、単一の1次粒子からなる粒子も含み、単一の1次粒子からなる2次粒子は、少なくとも二つの1次粒子を凝集させて2次粒子を形成するために熱処理などのような後処理にもかかわらず、単一粒子で存在する1次粒子を意味するものと理解すべきである。このような2次粒子の定義は、後述する正極活物質の定義によりさらに正確に説明され得る。
【0031】
本願において使用された用語「正極活物質」は、上述した2次粒子を含む広義の概念であって、単一の2次粒子それ自体が正極活物質であり得るが、本願においては、互いに同じ結晶粒界の密度を有する複数の2次粒子の集合体だけでなく、互いに異なる結晶粒界の密度を有する複数の2次粒子の集合体を正極活物質として定義する。本願においての正極活物質の定義は、下記にさらに詳細に説明される。
【0032】
以下、本発明によるリチウム二次電池用正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池についてさらに詳細に説明することとする。
【0033】
正極活物質に含まれた2次粒子の比表面積および粒界面は、正極活物質と電解液の界面および表面間の副反応が起こる領域であって、2次粒子の比表面積および粒界面を減少させることによって、正極活物質の高温安定性を向上させると同時に、正極活物質に起因したガス発生を低減することが可能である。
【0034】
本発明の一実施例によるリチウム二次電池用正極活物質は、単結晶構造を有するリチウム系複合酸化物である1次粒子からなる2次粒子を含む。この際、2次粒子を構成する1次粒子が単結晶で形成されるに伴い、2次粒子の比表面積および粒界面を減少させることが可能である。また、2次粒子を構成する1次粒子は、長軸方向に等方向のリチウムイオン拡散経路を有することによって、2次粒子内リチウムイオンを多方向に拡散させずに、一方向に集中させるに伴って、リチウムイオンの伝導性を向上させることが可能である。
【0035】
図1は、従来の正極活物質の断面を概略的に示すものであり、図2図4は、本発明の多様な実施例による正極活物質に含まれ得る2次粒子の断面を概略的に示すものである。
【0036】
図2図4に示された正極活物質に含まれた2次粒子110、120、130は、1個~10個の1次粒子111、121、131が凝集して形成されることによって、図1に示された数十~数百個の1次粒子11が凝集して形成された2次粒子10に比べて相対的に小さい比表面積を有して、電解液との副反応が起こる表面積を減らすことが可能である。また、2次粒子を形成する1次粒子の数が少ないに伴って、結晶粒界の密度が小さくなって、2次粒子の粒界面での副反応もやはり減らすことができる。
【0037】
また、本発明によれば、正極活物質に含まれた複数の2次粒子を構成する1次粒子は、長軸方向に等方向のリチウムイオン拡散経路を有する確率が高くなりえる。このように、2次粒子内長軸方向に等方向のリチウムイオン拡散経路の比率が高くなるに伴い、正極活物質によるリチウムイオン伝導性および電子伝導性を向上させることが可能である。
【0038】
図5および図6は、単結晶状態の正極活物質(2次粒子)のリチウムイオン拡散経路を示すものであり、図7および図8は、複数の1次粒子が凝集して形成された正極活物質(2次粒子)のリチウムイオン拡散経路を示すものである。
【0039】
図5および図6を参照すると、正極活物質(2次粒子)内任意の地点A~Dでのリチウムイオン拡散経路がいずれも長軸方向に等方向であることを確認することができる。すなわち、正極活物質(2次粒子)内リチウムイオンが多方向に拡散されずに、一方向に集中して拡散されることが可能なので、正極活物質(2次粒子)によるリチウムイオンの伝導性を向上させることが可能である。
【0040】
一方、図7および図8を参照すると、正極活物質(2次粒子)は、複数の1次粒子が凝集して形成され、左側の1次粒子内任意の地点1~5でのリチウムイオン拡散経路と右側の1次粒子内任意の地点1~5でのリチウムイオン拡散経路とが互いに一致しないことを確認することができる。この場合、図5および図7に示された正極活物質に比べてリチウムイオンの拡散能が劣り、正極活物質(2次粒子)によるリチウムイオンの伝導性が相対的に低いことになる。
【0041】
これにより、本発明による正極活物質に含まれた2次粒子のうち長軸方向に等方向のリチウムイオン拡散経路を有する1次粒子の比率は、30%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上であり得る。上述したように、2次粒子のうち長軸方向に等方向のリチウムイオン拡散経路を有する1次粒子の比率が増加するにつれて、正極活物質内リチウムイオンの伝導性を向上させることが可能である。
【0042】
一実施例において、本発明による正極活物質は、互いに異なる結晶粒界(grain boundary)密度を有する2次粒子の集合体であり得る。
【0043】
本願において結晶粒界の密度は、下記の式で計算され得る。
【0044】
結晶粒界の密度=(2次粒子内に存在する1次粒子間の粒界面の数/2次粒子を構成する1次粒子の数)
【0045】
互いに異なる結晶粒界の密度を有する2次粒子は、物理的および化学的特性が異なっていてもよい。結晶粒界の密度が異なることによって変わることができる物理的特性としては、例えば、2次粒子のプレス前/後の比表面積の差異があり、化学的特性としては、例えば、2次粒子の表面および/または界面と電解液の間の副反応の比率の差異がありえる。
【0046】
例えば、図1に示された2次粒子10は、図2図4に示された2次粒子110、120、130より多い数の1次粒子11が凝集して形成されるに伴い、1次粒子11により形成された結晶粒界の密度が図2図4に示された2次粒子110、120、130に比べて高い。また、図2図4に示された2次粒子110、120、130内1次粒子111、121、131により形成された粒界面bの数は、図1に示された2次粒子10より非常に少ないことを確認することができる。一般的に、2次粒子内1次粒子により形成された粒界面の電解液との副反応が起こることができる領域であって、2次粒子の結晶粒界の密度が小さいか、粒界面の数が少ないほど電解液との副反応の可能性を低減することができる。
【0047】
具体的に、本発明による正極活物質は、正極活物質を構成する複数の2次粒子のうち結晶粒界の密度が0.5以下である2次粒子の比率が30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上であることを特徴とする。
【0048】
例えば、2次粒子が単結晶構造を有する単一の1次粒子からなる場合、結晶粒界の密度は、0(2次粒子内に存在する1次粒子間の粒界面の数=0/2次粒子を構成する1次粒子の数=1)になり、2次粒子が単結晶構造を有する二つの1次粒子からなる場合、結晶粒界の密度は、0.5となる。すなわち、2次粒子内に存在する1次粒子間の粒界面の数が小さいほど結晶粒界の密度は相対的に小さい値を示すことができる。この際、2次粒子を構成する1次粒子の数が増加する場合、2次粒子内に存在する1次粒子間の粒界面の数もやはり増加するので、結晶粒界の密度が0.5以下になるためには、2次粒子が単結晶構造を有する単一の1次粒子からなるか、または単結晶構造を有する二つの1次粒子からなるべきである。
【0049】
ここで、単結晶構造を有するリチウム系複合酸化物の1次粒子の平均粒径は、0.01μm~50μm、好ましくは0.01μm~20μmであり得る。単結晶構造を有するリチウム系複合酸化物1次粒子の平均粒径が0.01μm~20μmの範囲内に存在することによって、正極活物質を使用して製造された正極の最適密度を具現することができる。
【0050】
また、2次粒子の平均粒径は、凝集した1次粒子の数に応じて変わることができるが、0.01μm~50μmであり得る。
【0051】
より具体的に、正極活物質は、1個~2個の1次粒子からなる2次粒子(以下、便宜上、「第1凝集体」という)、3個~6個の1次粒子からなる2次粒子(以下、便宜上、「第2凝集体」という)および7個~10個の1次粒子からなる2次粒子(以下、便宜上、「第3凝集体」という)を含むことができる。
【0052】
図2に示された第1凝集体は、2次粒子110を形成する1次粒子111の数が1個または2個であって、第2凝集体および第3凝集体に比べて2次粒子を形成する1次粒子の数が少ないので、相対的に小さい比表面積を有して、電解液との副反応が起こる領域を減らすことが可能である。
【0053】
また、2次粒子110内に存在する1次粒子111が形成する粒界面bの数は、1個以下であり得る。これにより、粒界面の数が2個以上である場合に比べて、粒界面で電解液との副反応が起こる確率が少なくなり得る。
【0054】
また、2次粒子が一つの1次粒子からなる場合、2次粒子内の任意の地点でのリチウムイオン拡散経路は、いずれも同一であり、2次粒子が二つの1次粒子からなる場合であるとしても、2次粒子が三つ以上の1次粒子からなる場合と比較するとき、任意の地点でのリチウムイオン拡散経路が長軸方向に等方向になる可能性が高くなりえる。
【0055】
すなわち、2次粒子を構成する1次粒子の数が少なくなるほど2次粒子が長軸方向に等方向のリチウムイオン拡散経路を有する確率が高くなり、これにより、正極活物質によるリチウムイオン伝導性および電子伝導性を向上させることが可能である。
【0056】
このような第1凝集体は、正極活物質を構成する2次粒子の集合体のうち30%以上であることが好ましい。ここで、2次粒子の集合体のうち第1凝集体が存在する比率(%)は、集合体を構成する2次粒子の全体数のうち第1凝集体の数が占める比率(%)を意味する。
【0057】
正極活物質を構成する2次粒子の集合体のうち第1凝集体の比率が30%未満である場合、集合体のうち第1凝集体の比率が小さくなるにつれて正極活物質を構成する2次粒子の平均比表面積および結晶粒界の密度が高くなることになる。これにより、正極活物質の電解液との副反応の可能性が高くなって、正極活物質の高温安定性および貯蔵性を低下させる原因として作用することができる。
【0058】
一方、焼成温度を高める場合、正極活物質を構成する2次粒子の集合体のうち第1凝集体の比率を増加させることが可能であるが、焼成温度が過度に高い場合、かえって正極活物質の劣化可能性が高くなりえる。
【0059】
また、図3に示された第2凝集体は、2次粒子120を形成する1次粒子121の数が3個~6個であって、このような第2凝集体は、正極活物質を構成する2次粒子120の集合体のうち70%以下、好ましくは20%以上70%以下で存在することができる。
【0060】
また、図4に示された第3凝集体は、2次粒子130を形成する1次粒子131の数が7個~10個であって、このような第3凝集体は、正極活物質を構成する2次粒子130の集合体のうち10%以下で存在することが好ましい。
【0061】
この際、正極活物質は、第3凝集体(2次粒子を構成する1次粒子が7個~10個である2次粒子)より多い数の1次粒子が凝集して形成された2次粒子も含むことができる。この場合にも、2次粒子の集合体のうち第3凝集体と第3凝集体より多い数の1次粒子が凝集して形成された2次粒子の比率は、10%以下であることが好ましい。
【0062】
第1凝集体の比率が70%であり、かつ第2凝集体の比率が20%未満に減少する場合、結果的に、第3凝集体に比べて第2凝集体の比率が小さくなるので、正極活物質を構成する2次粒子の平均比表面積および結晶粒界の密度が高くなることになり、これは、正極活物質の高温安定性および貯蔵性を低下させる原因として作用することができる。
【0063】
一方、正極活物質を構成する2次粒子の集合体のうち第2凝集体の比率が30%を超過する場合、第1凝集体に比べて第2凝集体の比率が相対的に大きくなるので、同様に、正極活物質を構成する2次粒子の平均比表面積および結晶粒界の密度が高くなりえる。
【0064】
上述したように、本発明による正極活物質は、第1凝集体、第2凝集体および第3凝集体を含み、かつ第1凝集体、第2凝集体および第3凝集体の比率を調節することによって、正極活物質を構成する2次粒子のうち長軸方向に等方向のリチウムイオン拡散経路を有する1次粒子の平均比率が50%以上になるようにすることができる。
【0065】
本発明による正極活物質を形成するリチウム系複合酸化物は、下記の式1で表される。
LiNi1-(v+w+x+y)CoM1M2M3 式1
【0066】
ここで、M1は、MnまたはAlであり、M2およびM3は、それぞれ独立して、Al、Ba、B、Ce、Cr、Mg、Mn、Mo、Na、K、P、Sr、Ti、WおよびZrから選択され、かつ互いに異なる金属である。
(0.95≦u≦1.05、0≦v≦0.20、0≦w≦0.20、0≦x≦0.05、0≦y≦0.05、1.50≦z≦2.1)
【0067】
上記で説明したように、本発明による正極活物質に含まれた2次粒子の比表面積および粒界面は、正極活物質と電解液の界面および表面間の副反応が起こる領域であって、本発明によれば、正極活物質に含まれた2次粒子の比表面積および粒界面を減少させることによって、正極活物質の高温安定性を向上させると同時に、正極活物質に起因したガス発生を低減することが可能である。
【0068】
特に、本発明による正極活物質は、長軸方向に等方向のリチウムイオン拡散経路を有する1個~10個の1次粒子からなる2次粒子を含み、かつ正極活物質は、互いに異なる結晶粒界の密度を有する複数の2次粒子の集合体であり得る。
【0069】
この際、2次粒子の集合体は、1個~2個の1次粒子からなる第1凝集体、3個~6個の1次粒子からなる第2凝集体および7個~10個の1次粒子からなる第3凝集体を含み、第1凝集体、第2凝集体および第3凝集体の比率は、正極活物質の平均比表面積、粒界面およびリチウムイオン拡散経路を考慮して調節されることによって、正極活物質の安定性を向上させると同時に、電気的特性を向上させることができる。
【0070】
例えば、本発明の多様な実施例による正極活物質の場合、第1凝集体、第2凝集体および第3凝集体の比率に応じて結晶粒界の密度が調和をなすことによって、格子構造が安定になり得る。特に、相対的に高い温度条件で正極活物質の格子構造が崩壊されるのを防止することによって、正極活物質の熱的安定性を向上させることができる。
【0071】
このような2次粒子の集合体で形成された正極BET比表面積は、0.1m/g~1.5m/gであり得る。
【0072】
正極活物質に含まれた2次粒子の集合体のうち第2凝集体の比率が30%を超過することによって、第1凝集体の比率が30%未満になる場合、集合体のうち第1凝集体の比率が小さくなるにつれて正極活物質に含まれた2次粒子の平均比表面積が増加し、この際、BET比表面積が1.5m/gを超過することができる。
【0073】
また、正極活物質に含まれた第3凝集体の比率が10%を超過する場合、正極活物質に含まれた2次粒子の平均比表面積が増加し、この際、BET比表面積が1.5m/gを超過することができる。
【0074】
本発明による正極活物質に含まれた2次粒子の2.5トンプレス前/後の粒度分布のd(10)変化率は、5%以下であり、4.5トンプレス前/後の粒度分布のd(10)変化率は、15%以下であり、6.0トンプレス前/後の粒度分布のd(10)変化率は、30%以下であり得る。
【0075】
また、本発明による正極活物質に含まれた2次粒子の2.5トンプレス前/後の粒度分布のd(50)変化率は、3%以下であり、4.5トンプレス前/後の粒度分布のd(50)変化率は、20%以下であり、6.0トンプレス前/後の粒度分布のd(50)変化率は、30%以下であり得る。
【0076】
また、本発明による正極活物質に含まれた2次粒子の2.5トンプレス前/後の粒度分布のd(90)変化率は、5%以下であり、4.5トンプレス前/後の粒度分布のd(90)変化率は、15%以下であり、6.0トンプレス前/後の粒度分布のd(90)変化率は、20%以下であり得る。
【0077】
正極活物質を使用したリチウム二次電池用正極の製造時に、正極活物質を含むスラリーを正極集電体上に塗布した後、乾燥および圧延(プレス)する過程を経ることになる。特に、高圧条件での圧延を通じてエネルギー密度が高い正極を製造することが可能である。この際、圧延密度が増加するにつれて粒子強度が小さい正極活物質の場合、粒子が崩壊されて所望の電気的特性を期待することができないことになる反面、粒子強度が大きい正極活物質の場合、高い圧延条件でも粒子の崩壊なしに性能を維持することができることになる。
【0078】
特に、圧延条件で粒子の崩壊が起こる場合、相対的に小さい粒度分布の範囲に含まれる2次粒子の比率が増加し、本願においては、プレス前/後の粒度分布のd(10)、d(50)およびd(90)変化率を通じて粒子の強度を示す。
【0079】
本発明による正極活物質は、4.5トンプレス時にプレス前/後の粒度分布の変化率は、13%に過ぎず、6トンプレス時にも、プレス前/後の粒度分布の変化率は、26%に過ぎない。これにより、本発明による正極活物質は、高い圧延条件でも粒子の崩壊を最小にしつつ、性能を維持することが可能である。
【0080】
追加に、本発明の多様な実施例による正極活物質は、前記1次粒子(例えば、前記1次粒子間の界面)および/または前記1次粒子が凝集して形成された2次粒子の表面のうち少なくとも一部をカバーするコーティング層を含むことができる。
【0081】
例えば、前記コーティング層は、前記1次粒子の露出した表面のうち少なくとも一部をカバーするように存在することができる。特に、前記コーティング層は、前記2次粒子の最外郭に存在する前記1次粒子の露出した表面のうち少なくとも一部をカバーするように存在することができる。
【0082】
これにより、前記コーティング層は、前記1次粒子および/または前記1次粒子が凝集して形成された前記2次粒子の表面を連続的または不連続的にコーティングする層として存在することができる。前記コーティング層が不連続的に存在する場合、アイランド(island)形態として存在することができる。
【0083】
このように存在するコーティング層は、正極活物質の物理的および電気化学的特性の向上に寄与することができる。
【0084】
また、前記コーティング層は、前記1次粒子および/または前記1次粒子が凝集して形成された前記2次粒子と境界を形成しない固溶体の形態として存在することもできる。
【0085】
前記コーティング層は、下記の式2で表される少なくとも一つの酸化物を含むことができる。すなわち、前記コーティング層は、下記の式2で表される酸化物が存在する領域として定義され得る。
Li 式2
【0086】
(ここで、
Aは、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選択される少なくとも一つであり、
0≦a≦6、0≦b≦4、2≦c≦8である)
【0087】
また、前記コーティング層は、一つの層内異種の酸化物が同時に存在したり、前記の式2で表される異種の酸化物がそれぞれ別個の層に存在する形態であり得る。
【0088】
前記の式2で表される酸化物は、前記の式1で表される1次粒子と物理的および/または化学的に結合された状態であり得る。また、前記酸化物は、前記の式1で表される1次粒子と固溶体を形成した状態で存在することもできる。
【0089】
本実施例による正極活物質は、前記1次粒子(例えば、前記1次粒子間の界面)および/または、前記1次粒子が凝集して形成された2次粒子の表面のうち少なくとも一部をカバーするコーティング層を含むことによって、構造的な安定性が高くなりえる。また、このような正極活物質をリチウム二次電池に使用する場合、正極活物質の高温貯蔵安定性および寿命特性が向上することができる。また、前記酸化物は、前記正極活物質内残留リチウムを低減させると同時に、リチウムイオンの移動経路(pathway)として作用することによって、リチウム二次電池の効率特性を向上させるのに影響を与えることができる。
【0090】
また、場合によって、前記酸化物は、前記1次粒子間の界面および前記2次粒子の表面のうち少なくとも一部だけでなく、前記2次粒子の内部に形成された内部孔隙にも存在することができる。
【0091】
前記酸化物は、リチウムとAで表される元素が複合化された酸化物であるか、またはAの酸化物であって、前記酸化物は、例えば、Li、LiZr、LiTi、LiNi、LiBa、Li、W、Zr、TiまたはBaなどであってもよいが、上述した例は、理解を助けるために便宜上記載したものに過ぎず、本願において定義された前記酸化物は、上述した例に制限されない。
【0092】
他の実施例において、前記酸化物は、リチウムとAで表される少なくとも2種の元素が複合化された酸化物であるか、またはリチウムとAで表される少なくとも2種の元素が複合化された酸化物をさらに含むことができる。リチウムとAで表される少なくとも2種の元素が複合化された酸化物は、例えば、Li(W/Ti)、Li(W/Zr)、Li(W/Ti/Zr)、Li(W/Ti/Ba)、Li(W/Ti/B)などであってもよいが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0093】
ここで、前記酸化物は、前記2次粒子の表面部から前記2次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示すことができる。これにより、前記酸化物の濃度は、前記2次粒子の最表面から前記2次粒子の中心部に向かって減少することができる。
【0094】
上述したように、前記酸化物が前記2次粒子の表面部から前記2次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示すことによって、前記正極活物質の表面に存在する残留リチウムを効果的に減少させて、未反応の残留リチウムによる副反応を未然に防止することができる。また、前記酸化物により前記正極活物質の表面の内側領域での結晶性が低くなるのを防止することができる。また、電気化学反応中に前記酸化物により正極活物質の全体的な構造が崩壊されるのを防止することができる。
【0095】
追加に、前記コーティング層は、前記の式2で表される少なくとも一つの酸化物を含む第1酸化物層と、前記の式2で表される少なくとも一つの酸化物を含み、かつ前記第1酸化物層に含まれた酸化物と異なる酸化物を含む第2酸化物層を含むことができる。
【0096】
例えば、前記第1酸化物層は、前記2次粒子の最外郭に存在する前記1次粒子の露出した表面のうち少なくとも一部をカバーするように存在することができ、前記第2酸化物層は、前記第1酸化物層によりカバーされない前記1次粒子の露出した表面および前記第1酸化物層の表面のうち少なくとも一部をカバーするように存在することができる。
【0097】
本発明の他の態様によれば、上述した正極活物質を含む正極と二次電池が提供される。
【0098】
正極は、正極集電体と、正極集電体上に位置する正極活物質層を含み、本発明の一態様による正極活物質は、正極活物質層に存在する。
【0099】
正極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく、伝導性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの等が使用され得る。また、正極集電体は、通常、3μm~500μmの厚さを有することができ、集電体の表面上に微細な凹凸を形成して、正極活物質の接着力を高めることもできる。このような正極集電体は、フィルム、シート、ホイール、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などのように多様な形態で提供され得る。
【0100】
また、正極活物質層は、上述した正極活物質と共に導電材およびバインダーを含む層であり得る。
【0101】
ここで、導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、正極活物質の化学的変化を引き起こすことなく、導電性を有するものであれば、特別な制限なしに使用可能である。導電材の非制限的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などがある。導電材は、通常、正極活物質層の総重量を基準として1重量%~30重量%で含まれ得る。
【0102】
また、バインダーは、正極活物質粒子間の付着および正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割をする物質である。バインダーの非制限的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などがある。バインダーは、通常、正極活物質層の総重量を基準として1重量%~30重量%で含まれ得る。
【0103】
本発明の一実施例による正極は、上述した正極活物質を使用することを除いて、通常のリチウム二次電池用正極の製造方法により製造され得る。例えば、正極活物質および選択的に、バインダーおよび導電材を含む正極活物質層形成用スラリーを正極集電体上に塗布した後、乾燥および圧延することによって、正極を製造することができる。他の例によれば、正極活物質層形成用スラリーを別途の支持体上にキャスティングした後、支持体から正極活物質層を剥離して得られたフィルムを正極集電体上にラミネーションして、正極を製造することができる。
【0104】
本発明のさらに他の態様によれば、上述した正極を含む電気化学素子が提供される。ここで、電気化学素子は、具体的に電池、キャパシタなどであってもよく、より具体的にはリチウム二次電池であってもよい。
【0105】
リチウム二次電池は、正極、正極と対向して位置する負極、正極と負極との間に介在されるセパレーターおよび電解質(電解液)を含む。また、リチウム二次電池は、正極、負極およびセパレーターを含む電極組み立て体を収納する電池容器(ケース)および電池容器を密封するシール部材を含むことができる。
【0106】
この際、電池容器(ケース)の形状によって、リチウム二次電池は、電極組み立て体が金属カンに内蔵されたカンタイプのリチウム二次電池と、電極組み立て体がアルミニウムラミネートのようなシートからなるパウチに内蔵されたパウチタイプのリチウム二次電池とに分類され得る。
【0107】
特に、本発明の多様な実施例による正極活物質を含む正極が使用されたパウチタイプのリチウム二次電池の場合、正極活物質と電解液の副反応が起こる可能性が少ないに伴って、貯蔵および/または作動時に安定性が向上すると同時に、ガス発生を低減させることが可能であるという利点がある。
【0108】
これにより、本発明の多様な実施例による正極活物質を含む正極が使用されたリチウム二次電池の場合、例えば、0.2Cで4.25Vまで充電した後、60℃で14日間保管する間、リチウム二次電池の体積増加量が0.3cm以下がなることによって、信頼性および安定性を確保することができる。
【実施例
【0109】
以下では、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明することとする。ただし、これらの実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇がこれらの実施例により制限されるものと解されないと言える。
【0110】
<正極活物質の製造>
[実施例1]
共沈反応により製造されたNiCo(OH)前駆体とリチウム化合物としてLiCOおよびLiOH(Li/M ratio=1.05±0.05)およびAlをLiNi0.9Co0.078Al0.022の組成になるように計量および混合した後、800±50℃で第1熱処理して、リチウム二次電池用正極活物質を製造した。前記で製造されたリチウム二次電池用正極活物質を蒸留水に投入して、温度を維持させながら水洗した。脱水工程後、150℃真空雰囲気下で乾燥した。次に、乾燥した正極活物質を700±50℃で第2熱処理した。
【0111】
[実施例2]
実施例1において第1熱処理温度が850±50℃であることを除いて、実施例1と同様の方法で正極活物質を製造した。
【0112】
[実施例3]
最終生成された正極活物質のうちBaの含有量が0.3mol%になるように、実施例1の共沈反応時にBa含有前駆体(Ba(OH))をさらに混合したことを除いて、実施例1と同様の方法で正極活物質を製造した。
【0113】
[実施例4]
最終生成された正極活物質のうちZrの含有量が0.1mol%になるように、実施例1の共沈反応時にZr含有前駆体(Zr(OH))をさらに混合したことを除いて、実施例1と同様の方法で正極活物質を製造した。
【0114】
[実施例5]
実施例1で得られた正極活物質をCo含有原料物質(Co)と共にミキサーを使用して混合した。Co含有原料物質(Co)は、正極活物質の総重量に対して3.0重量%になるように混合された。次に、同じ焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、分当たり2℃で昇温して、熱処理温度700℃で8時間維持した後、自然冷却した。
【0115】
[実施例6]
Co含有原料物質(Co)の代わりに、W含有原料物質(WO)を使用したことを除いて、実施例5と同様の方法で正極活物質を製造した。W含有原料物質(WO)は、正極活物質の総重量に対して0.3重量%になるように混合された。
【0116】
[実施例7]
Co含有原料物質(Co)の代わりに、Ti含有原料物質(TiO)を使用したことを除いて、実施例5と同様の方法で正極活物質を製造した。Ti含有原料物質(TiO)は、正極活物質の総重量に対して0.1重量%になるように混合された。
【0117】
[実施例8]
Co含有原料物質(Co)の代わりに、Zr含有原料物質(ZrO)を使用したことを除いて、実施例5と同様の方法で正極活物質を製造した。Zr含有原料物質(ZrO)は、正極活物質の総重量に対して0.1重量%になるように混合された。
【0118】
[実施例9]
Co含有原料物質(Co)の代わりに、Al含有原料物質(Al)を使用したことを除いて、実施例5と同様の方法で正極活物質を製造した。Al含有原料物質(Al)は、正極活物質の総重量に対して0.5重量%になるように混合された。
【0119】
[比較例1]
実施例1において第1熱処理温度が700±50℃であることを除いて、実施例1と同様の方法で正極活物質を製造した。
【0120】
[比較例2]
最終生成された正極活物質のうちBaの含有量が0.3mol%になるように、比較例1の共沈反応時にBa含有前駆体(Ba(OH))をさらに混合したことを除いて、比較例1と同様の方法で正極活物質を製造した。
【0121】
[比較例3]
最終生成された正極活物質のうちZrの含有量が0.1mol%になるように、比較例1の共沈反応時にZr含有前駆体(Zr(OH))をさらに混合したことを除いて、比較例1と同様の方法で正極活物質を製造した。
【0122】
[比較例4]
比較例1で得られた正極活物質をCo含有原料物質(Co)と共にミキサーを使用して混合した。Co含有原料物質(Co)は、正極活物質の総重量に対して3.0重量%になるように混合された。次に、同じ焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、分当り2℃で昇温して熱処理温度700℃で8時間維持した後、自然冷却した。
【0123】
[比較例5]
Co含有原料物質(Co)の代わりに、W含有原料物質(WO)を使用したことを除いて、比較例4と同様の方法で正極活物質を製造した。W含有原料物質(WO)は、正極活物質の総重量に対して0.3重量%になるように混合された。
【0124】
[比較例6]
Co含有原料物質(Co)の代わりに、Ti含有原料物質(TiO)を使用したことを除いて、比較例4と同様の方法で正極活物質を製造した。Ti含有原料物質(TiO)は、正極活物質の総重量に対して0.1重量%になるように混合された。
【0125】
[比較例7]
Co含有原料物質(Co)の代わりに、Zr含有原料物質(ZrO)を使用したことを除いて、比較例4と同様の方法で正極活物質を製造した。Zr含有原料物質(ZrO)は、正極活物質の総重量に対して0.1重量%になるように混合された。
【0126】
[比較例8]
Co含有原料物質(Co)の代わりに、Al含有原料物質(Al)を使用したことを除いて、比較例4と同様の方法で正極活物質を製造した。Al含有原料物質(Al)は、正極活物質の総重量に対して0.5重量%になるように混合された。
【0127】
<正極活物質の構造>
図9および図10は、実施例1および実施例2によって製造された正極活物質を構成する2次粒子の集合体および2次粒子を構成する1次粒子を確認するための断面SEM写真であり、図11は、比較例1によって製造された正極活物質の断面SEM写真であって、正極活物質に含まれた2次粒子の結晶粒界の密度を示すものである。
【0128】
図9図11を参照すると、比較例1によって製造された正極活物質に比べて正極活物質を構成する複数の2次粒子のうち結晶粒界の密度が0.5以下である2次粒子の比率が大きいことを確認することができる。
【0129】
このように、正極活物質を構成する複数の2次粒子のうち結晶粒界の密度が0.5以下である2次粒子の比率が大きいほど電解液と2次粒子内の粒界面での副反応を低減することができ、2次粒子内長軸方向に等方向のリチウムイオン拡散経路の比率が高くなるに伴い、正極活物質によるリチウムイオン伝導性および電子伝導性が向上することができる。
【0130】
実施例および比較例によって製造された正極活物質に含まれた2次粒子の結晶粒界の密度を計算した結果は、下記の表1に示した。
【0131】
【表1】
【0132】
図12および図13は、それぞれ実施例1および実施例5によって製造された正極活物質のSEM写真である。図12および図13を比較すると、図13に示された実施例5によって製造された正極活物質の表面がCoでコーティングされたことを確認することができる。
【0133】
また、それぞれ実施例1および実施例5によって製造された正極活物質を構成する2次粒子に対してEP-EDX分析により測定されたCoの含有量を示すグラフである図14を参考にすると、実施例5によって製造された正極活物質が、実施例1に比べて2次粒子の表面部から中心部までの濃度変化が大きいことを確認することができる。これにより、実施例5によって製造された正極活物質の表面がCoでコーティングされたことを確認することができる。
【0134】
<正極活物質の強度の測定>
正極活物質を使用したリチウム二次電池用正極の製造時に正極活物質を含むスラリーを正極集電体上に塗布した後、乾燥および圧延(プレス)する過程を経ることになる。この際、高い圧力で圧延時に正極集電体上に塗布された正極活物質の粒子崩壊が引き起こされて、正極活物質の性能が低下することができる。
【0135】
本実験例では、正極活物質に含まれた複数の2次粒子の集合体の組成に応じて正極活物質の強度の変化を確認するために、それぞれ実施例2および比較例1によって製造された正極活物質を準備した後、プレス前、2.5トンプレス後、4.5トンプレス後および6トンプレス後の粒度分布のd(10)、d(50)およびd(90)変化率を測定した。
【0136】
各圧力条件によるプレス後の粒度分布のd(10)、d(50)およびd(90)変化率に対する測定結果は、下記の表2~表4に示した。
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
【0139】
【表4】
【0140】
表2~表4を参照すると、実施例2によって製造された正極活物質に含まれた2次粒子のプレス前/後の粒度分布のd(10)、d(50)およびd(90)変化率が、比較例1によって製造された正極活物質に比べて小さいことを確認することができる。
【0141】
<正極活物質の電気化学的特性の測定>
(1)リチウム二次電池の製造
本発明の実施例によって製造された正極活物質を使用してリチウム二次電池を製造する場合、従来の正極活物質と同等または類似した水準の電気化学的特性を示すことができるか否かを確認するために、本実験例では、実施例および比較例によって製造された正極活物質を使用して製造された正極が適用されたリチウム二次電池を用意した。
【0142】
製造された正極活物質と導電剤としてsuper-P、結合剤としてはポリビニリデンフルオライド(PVdF)を92:4:4の重量比で混合して、スラリーを製造した。前記スラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔に均一に塗布し、135℃で真空乾燥して、リチウム二次電池用正極を製造した。
【0143】
前記正極とリチウム箔をカウンター電極とし、多孔性ポリエチレン膜(Celgard 2300、厚さ:25μm)をセパレーターとし、エチレンカーボネートおよびエチルメチルカーボネートが3:7の体積比で混合された溶媒にLiPFが1.15Mの濃度で溶けている液体電解液を使用して、通常知られている製造工程によってコイン電池を製造した。
【0144】
(2)リチウム二次電池の電池容量および寿命特性の評価
上述した方法で製造されたリチウム二次電池を電気化学分析装置(Toyo、Toscat-3100)を利用して25℃、電圧範囲3.0V~4.25V、0.5C~4.0Cの放電率を適用して充放電実験を実施して、初期充電容量、初期放電容量、初期可逆効率およびレート特性を測定した。
【0145】
また、上述した方法で製造されたリチウム二次電池を25℃の温度で3.0V~4.25Vの駆動電圧の範囲内で1C/1Cの条件で50回充/放電を実施した後、初期容量対比50サイクル目の放電容量の比率(サイクル容量維持率;capacity retention)を測定した。
【0146】
測定された電池容量および寿命特性の結果は、下記の表5および表6と図15に示した。
【0147】
【表5】
【0148】
【表6】
【0149】
表5および表6を参考にすると、実施例および比較例によって製造された正極活物質を使用した正極を含むリチウム二次電池の初期容量および可逆効率は、類似した水準であるが、実施例によって製造された正極活物質を使用した正極を含むリチウム二次電池の場合、比較例に比べて0.5C~4.0Cの放電率を適用した充放電実験の結果、レート特性および寿命特性が高いことを確認することができる。
【0150】
(3)リチウム二次電池の高温貯蔵によるインピーダンス変化
上述した方法で製造されたリチウム二次電池(実施例1、実施例2、比較例1、比較例2)に対してインピーダンス分析器(PARSTAT multichannel(PMC) Chassis、METEK)を使用して2-プローブ(probe)法によって高温貯蔵前/後の25℃でのインピーダンスを測定(振幅±10mV、周波数範囲0.01Hz~10kHz)した。高温貯蔵条件としては、60℃で168時間の間貯蔵条件が適用された。インピーダンス測定の結果は、図16(高温貯蔵前)および図17(高温貯蔵後)に示した。
【0151】
図16および図17に示したナイキストプロット(Nyquist plot)で電極の界面抵抗は、半円の位置および大きさにより決定され、半円の左側のx軸切片と右側のx軸切片の差は、電極での界面抵抗を示す。
【0152】
図16および図17を参照すると、実施例1および実施例2によって製造された正極活物質を使用して製造されたリチウム二次電池は、比較例1および比較例2に比べて高温貯蔵前/後にいずれも低い界面抵抗を有することを確認することができる。
【0153】
<正極活物質および二次電池の安定性の評価>
(1)リチウム二次電池の製造
本発明の実施例によって製造された正極活物質を使用してリチウム二次電池を製造する場合、従来の正極活物質と同等または類似した水準の電気化学的特性を示すことができるか否かを確認するために、本実験例では、実施例2および比較例1によって製造された正極活物質を使用して製造された正極が適用されたリチウム二次電池を用意した。
【0154】
具体的には、製造された正極活物質と導電剤としてsuper-P、結合剤としてはポリビニリデンフルオライド(PVdF)を92:4:4の重量比で混合してスラリーを製造した。前記スラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔に均一に塗布し、135℃で真空乾燥して、リチウム二次電池用正極を製造した。
【0155】
前記正極とリチウム箔をカウンター電極とし、多孔性ポリエチレン膜(Celgard 2300、厚さ:25μm)をセパレーターとし、エチレンカーボネートおよびエチルメチルカーボネートが3:7の体積比で混合された溶媒にLiPFが1.15Mの濃度で溶けている液体電解液を使用して通常知られている製造工程によってコイン電池を製造した。
【0156】
(2)リチウム二次電池のガス発生量の測定
上述した方法で製造されたリチウム二次電池を定電流0.2Cで4.25Vまで充電した後、60℃で14日間保管して、リチウム二次電池内ガス発生に起因したリチウム二次電池の体積変化を測定した。体積変化の測定結果は、図18に示した。
【0157】
図18を参照すると、実施例2によって製造された正極活物質を使用して製造されたリチウム二次電池は、比較例1に比べてガス発生量が減少したことを確認することができる。
【0158】
リチウム二次電池に限界以上の過電流(overcharge)が流れる場合、電池の内部温度が急激に上昇するにつれて電解液の分解反応を引き起こして、ガスが発生することもあるが、本実験例では、リチウム二次電池に過電流が流れる条件でないので、電解液と正極活物質の界面および表面間の副反応によりガスが発生したものと予想することができる。
【0159】
これを考慮するとき、比較例1に比べて結晶粒界の密度が小さい2次粒子の比率が相対的に多い実施例2によって製造された正極活物質は、比表面積が小さいと共に、2次粒子の界面および表面の面積が狭くなるにつれて電解液との副反応率が減少して、ガス発生量が減少したことが分かる。
【0160】
(3)熱的安定性の評価
実施例2および比較例1によって製造された正極活物質の熱的安定性を評価するために、熱重量分析装置(TA Instruments、Q20)を使用して常圧のAr雰囲気下で25℃から350℃まで10℃/minの昇温速度で重量損失を測定した。測定結果は、図19に示した。
【0161】
図19を参照すると、比較例1によって製造された正極活物質の場合、約220℃以下で重量損失が発生する反面、実施例2によって製造された正極活物質の場合、約230℃以上の温度で重量損失が発生することを確認することができる。
【0162】
これを考慮すると、比較例1に比べて実施例2によって製造された正極活物質の高温安定性が相対的にさらに高いことを確認することができる。
【0163】
また、追加に実施例2および比較例1によって製造された正極活物質をそれぞれ含む正極を4.3V、4.4Vおよび4.6Vで充電した後、常圧のAr雰囲気下で25℃から350℃まで10℃/minの昇温速度で重量損失を測定した。測定の結果は、下記の表7に示した。
【0164】
【表7】
【0165】
前記表7の結果を参照すると、実施例2および比較例1によって製造された正極活物質をそれぞれ含む正極を4.3Vおよび4.4Vで充電した後に実施した熱重量分析では、200℃までは実施例2と比較例1との間に重量損失の差が大きくないことを確認することができる。ただし、200℃を超過する温度条件で実施例2の重量損失が比較例1より小さいことを確認することができる。
【0166】
一方、実施例2および比較例1によって製造された正極活物質をそれぞれ含む正極を4.6Vで充電した後に実施した熱重量分析では、大部分の温度条件で実施例2の熱的安定性が比較例1より優れていることを確認することができる。
【0167】
このような結果は、実施例および比較例によって製造された正極活物質の格子構造の熱的安定性の差異に起因したものである。特に、相対的に高い温度条件で正極活物質の格子構造が崩壊されるにつれて正極活物質からOが放出されるが、本発明の多様な実施例による正極活物質の場合、結晶粒界の密度の調和によって格子構造の熱的安定性が向上することができる。
【0168】
以上、本発明の実施例について説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者なら特許請求範囲に記載された本発明の思想を逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除または追加などにより本発明を多様に修正および変更させることができ、これもまた本発明の権利範囲内に含まれると言える。
【符号の説明】
【0169】
10 2次粒子
11 1次粒子
110 2次粒子
111 1次粒子
120 2次粒子
121 1次粒子
130 2次粒子
131 1次粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図17
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図19