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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】複合構造物のための表面材
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/28 20060101AFI20230403BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
B32B5/28
B32B15/08 105
【請求項の数】 24
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021195048
(22)【出願日】2021-12-01
(62)【分割の表示】P 2018527872の分割
【原出願日】2016-11-29
(65)【公開番号】P2022043083
(43)【公開日】2022-03-15
【審査請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】62/260,824
(32)【優先日】2015-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517318182
【氏名又は名称】サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】サン, チュンチエ ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】コーリ, ダリップ クマール
(72)【発明者】
【氏名】マラリー, ケヴィン アール.
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-526403(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0174860(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103889711(CN,A)
【文献】特表2016-508077(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0154496(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104853910(CN,A)
【文献】特開平05-261859(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0227162(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101466598(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 5/28
B32B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)非多孔質熱可塑性層、および
(ii)室温(20℃~25℃)において粘着性でない硬化性樹脂組成物で注入または被覆される織布または不織布ベール、から選択される補剛層と、
(b)1つまたは複数の熱硬化樹脂と硬化剤とを含む硬化性樹脂層と、
(c)前記補剛層と前記硬化性樹脂層との間の導電層と、
(d)前記硬化性樹脂層に積層された不織布層
とを含む、統合電気導電性表面材であって、
前記補剛層(a)および前記不織布層(d)が最も外側の層であり、前記最も外側の層の露出面が室温(20℃~25℃)において実質的に不粘着性であり、
前記補剛層が、
(i)以下の式:
[式中、
、n=1~6]によって表されるエポキシクレゾールノボラック、
(ii)以下の式:
[式中、
、n=1~3]によって表されるジシクロペンタジエン(DCPD)主鎖を有する炭化水素エポキシノボラック樹脂、又は
(iii)エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの固体反応生成物であり且つ以下の式:
[式中、n=2~7]によって表されるエポキシ付加物、及び
硬化剤
を含むガラス樹脂組成物で注入または被覆される織布または不織布ベールである、統合電気導電性表面材。
【請求項2】
前記ガラス樹脂組成物のための前記硬化剤が、アミン硬化剤、三フッ化ホウ素(BF)およびそれらの錯体、酸無水物、ならびにそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の電気導電性表面材。
【請求項3】
前記ガラス樹脂組成物のための前記硬化剤が、ジシアンジアミド(DICY)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’DDS)、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’DDS)、グアナミン、グアニジン、アミノグアニジン、ピペリジン、およびそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の電気導電性表面材。
【請求項4】
前記ガラス樹脂組成物が、ポリエーテルスルホン(PES)およびポリエーテルエーテルスルホン(PEES)、PESとPEESとのコポリマー、ポリエーテルイミド(PEI)、およびそれらの組合せから選択される熱可塑性ポリマーをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気導電性表面材。
【請求項5】
前記ガラス樹脂組成物が、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、アルミナ、ヒュームドシリカ、およびそれらの組合せから選択される流れ調整剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気導電性表面材。
【請求項6】
前記補剛層が、前記硬化性樹脂組成物で注入または被覆される不織布ベールを含み、前記不織布ベールが、不規則に配向された短繊維を含み、前記繊維が、ポリマー繊維、無機繊維、金属被覆繊維、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気導電性表面材。
【請求項7】
前記不織布ベールの繊維が、炭素繊維、金属被覆炭素繊維、金属被覆ガラス繊維、金属被覆ポリエステル繊維、金属被覆ポリアミド繊維、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項6に記載の電気導電性表面材。
【請求項8】
前記不織布ベールが10gsm~50gsmの範囲内の面積重量を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気導電性表面材。
【請求項9】
前記導電層が、銅、アルミニウム、青銅、チタン、またはそれらの合金の多孔質または非多孔質金属層である、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気導電性表面材。
【請求項10】
前記導電層が、76μm未満の厚さを有する非多孔質層である、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気導電性表面材。
【請求項11】
前記導電層が、60gsm~350gsmの範囲内の面積重量を有する多孔質層である、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気導電性表面材。
【請求項12】
前記導電層が金属スクリーンまたはエキスパンデッドメタル箔である、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気導電性表面材。
【請求項13】
前記導電層が非多孔質金属箔である、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気導電性表面材。
【請求項14】
前記不織布層(d)が、ポリマー繊維、無機繊維、金属被覆繊維、およびそれらの組合せからなる群から選択される不規則に配向された繊維を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気導電性表面材。
【請求項15】
前記不織布層(d)の前記繊維が、炭素繊維、金属被覆炭素繊維、金属被覆ガラス繊維、金属被覆ポリエステル繊維、金属被覆ポリアミド繊維、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項14に記載の電気導電性表面材。
【請求項16】
前記不織布層(d)の繊維が、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項15に記載の電気導電性表面材。
【請求項17】
前記不織布層(d)が10gsm~50gsmの範囲内の面積重量を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気導電性表面材。
【請求項18】
前記不織布層(d)が金属被覆をさらに含み、それが硬化性樹脂層(b)と接触していない、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気導電性表面材。
【請求項19】
自動配置のために適している連続したまたは細長いテープの形態である、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気導電性表面材。
【請求項20】
前記テープが、0.125インチ~12インチ(または3.17mm~305mm)の範囲の幅およびその幅の少なくとも十(10)倍である長さを有する、請求項19に記載の電気導電性表面材。
【請求項21】
硬化性母材樹脂で含浸された強化繊維を含む複合基材と、
前記補剛層が前記複合基材と接触しているように前記複合基材の表面に積層される請求項1~3のいずれか一項に記載の電気導電性表面材とを含む、複合構造物。
【請求項22】
前記複合基材が、積み重ね配列において配列された複数のプリプレグプライを含むプリプレグレイアップであり、各々のプリプレグプライが、硬化性母材樹脂で含浸されるかまたはその中に埋め込まれる一方向強化用繊維を含む、請求項21に記載の複合構造物。
【請求項23】
硬化性母材樹脂で含浸された強化繊維を含む、複合基材を形成する工程と、
連続したまたは細長いテープの形態の複数の請求項19に記載の表面材を自動配置方法によって前記複合基材上に直接に、並列に分配して、保護表面層を前記複合基材上に形成する工程であって、自動配置する間に前記表面材中の前記補剛層が前記複合基材に面している工程と、
前記保護表面層と前記複合基材とを同時硬化する工程とを含む、複合構造物を形成するための方法。
【請求項24】
前記複合基材が、プリプレグテープを直接に成形面上に分配して圧縮する工程を包含する自動配置方法においてプリプレグテープをレイアップすることによって形成される、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年、航空機の翼および胴体などの航空宇宙用構造部品を製造するために樹脂含浸された繊維強化複合材料が使用されている。航空宇宙用構成部品の製造において使用される複合材料は、落雷、雨、雪および湿気などの一般的な環境発生によって引き起こされる損傷または危険要因から部品を保護する特定の特性を有さなければならない。このような部品が十分に導電性でなく航空機の全体にわたって接地されなければ落雷は構成部品にひどく損傷を与えおよび/または突き抜けることがあり得る。ハニカムまたはフォームコアを含有する複合サンドイッチパネルへの流体および湿気侵入は、一般的な問題である。したがって、このような構成部品が、他の特性の中でも、落雷および流体侵入によって引き起こされる損傷を防止または軽減する特性を有するように製造されるのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0002】
図1】一実施形態による統合導電性表面材の構成要素を図解的に示す。
図2】別の実施形態による統合導電性表面材の横断面を図解的に示す。
図3】別の実施形態による流体バリア表面材の構成要素を図解的に示す。
図4】別の実施形態による導電性流体バリア表面材の構成要素を図解的に示す。
図5】流体バリア表面材を有する複合ハニカムサンドイッチ構造パネルの構成要素を図解的に示す。
図6】きれいな端縁を示す、自動繊維配置(AFP)用途のためにスリットされた表面テープの写真画像である。
図7】PEKK表面が上に向いている2つのAFP表面テープの写真画像である。
【発明を実施するための形態】
【0003】
複合構造物への落雷の損傷を最小にするために、複合構造物の電気導電率を高めて航空宇宙用複合部品のために落雷保護(LSP)を提供する必要がある。しかしながら、航空機の全重量を著しく増加させる導電材料を混入することは望ましくない。
【0004】
本開示の一態様は、落雷保護を提供することができる統合電気導電性表面材に関する。この表面材は、保護材料として、複合構造物、例えば航空機の複合部品の外面上に適用され得る。
【0005】
導電性表面材は可撓性テープの形態であってもよく、それは軽量であり、自動テープ敷設(ATL)または自動繊維配置(AFP)などの自動配置方法のために構成される。その可撓性および軽量性質のために、表面テープは、従来の樹脂含浸プリプレグテープと比較してかなり速い速度で敷設され得る。表面テープは、約0.125インチ~約12インチ(または約3.17mm~約305mm)の幅を有してもよい。一実施形態において、表面テープは、約0.25インチ~約0.50インチ(または約6.35mm~約12.77mm)など、約0.125インチ~約1.5インチ(または約3.17mm~約38.1mm)の幅を有する。別の実施形態において、表面テープは、約6インチ~約12インチ(または約152mm~約305mm)の幅を有する。テープの長さは連続しており、またはその幅に対して非常に長く、例えば、その幅の100~100,000倍である。連続した形態において、表面テープは、自動化方法においてその適用前に貯蔵のためにロールに巻き上げられ得る。
【0006】
ATLおよびAFPは、コンピュータ誘導ロボット工学を使用して連続したテープを成形面(例えばマンドレル)上に敷設して複合構造物または繊維予備成形物を形成する方法である。ATL/AFP法は、1つまたは複数のテープをマンドレル表面上に並列に分配して所望の幅および長さの層を作る工程を必要とし、次に付加的な層を先行層上に積み重ねて、所望の厚さを有するレイアップを提供する。後続テープは、先行テープに対して異なった角度に配向されてもよい。ATL/AFPシステムは、テープを直接にマンドレル表面上に分配して圧縮するための手段を備えている。
【0007】
AFPによって複数の単一トウ(または非常に細いスリットテープ)(例えば、0.125インチ~1.5インチ)をマンドレル上に自動敷設して、所定の全帯域幅を構成することができる。数値的に制御された配置ヘッドを使用して材料配置を高速度で実施し、配置する間に各々のトウを分配し、クランプし、切断し、再始動させる。ATL装置によって布の樹脂含浸テープまたは連続したストリップを敷設することができ、それらは、AFPにおいて使用されるトウよりも幅が広い。典型的に、両方の方法によって、材料はロボット制御ヘッドによって適用され、それは、材料配置のために必要とされる機構を備える。AFPは従来、非常に複雑な表面上で使用される。
【0008】
図1によって図解的に示される、一実施形態によれば、導電性表面材は統合構造物であり、それは、補剛層12と硬化性樹脂層13との間に挟まれた非常に薄い導電層11と、硬化性樹脂層13と接触している不織布層14とを含む。表面材が複合基材上に適用されるとき、表面材の配置後に不織布層14が複合基材上の最も外側の層であるように補剛層12が複合基材と接触している。補剛層12および不織布層14の外面は実質的にまたは完全に不粘着性である。
【0009】
導電層は、約102μm未満、いくつかの実施形態において、約5μm~約75μm、または約3μm~約5μmの範囲の厚さを有する金属または非金属導電材料の非多孔質連続層であってもよい。あるいは、導電層は、約60gsm~約350gsm、いくつかの実施形態において、約60gsm~約195gsmの範囲内の面積重量を有する多孔質層、例えば、スクリーンであってもよい。また、多孔質導電層は、約50μm~約102μm(または2~4ミル)の範囲内の厚さを有してもよい。「gsm」はg/mを意味する。導電層が金属層であるとき、金属は、銅、アルミニウム、青銅、チタン、およびそれらの合金から選択されてもよい。いくつかの実施形態において、多孔質導電層が金属スクリーンまたはエキスパンデッドメタル箔である。他の実施形態において、導電層は、グラフェンシートおよび炭素-ナノチューブ(CNT)紙などのシート形態の炭素などの固有導電率を有する非金属材料から形成される。CNT紙の特定の例は可撓性CNTBucky紙である。
【0010】
硬化性樹脂層13は、約500gsm未満、例えば、約50gsm~約150gsmの面積重量を有してもよい。それは炭素繊維などの任意の強化繊維を含有しない。硬化性樹脂層の組成物は、以下により詳細に考察される。
【0011】
導電性表面材が連続したまたは細長いテープの形態であるとき、テープ全体は、約270gsm~約380gsmの全面積重量を有してもよい。テープの全厚さは、約76μm~約229μm(または3~9ミル)の範囲であってもよい。
【0012】
補剛層12は、自動配置する間に表面テープに強度、剛性および支持を提供し、細い幅のテープ(またはスリットトウ)の形態の表面材が自動配置によって敷設される時に「アコーディオン」効果を防ぐ。「アコーディオン」効果は、AFPまたはATL方法におけるように、自動配置する間のテープ(またはスリットトウ)のしわ寄りおよびバンチングを意味する。
【0013】
粘着性である硬化性樹脂層が表面材の意図された使用前に他の表面にくっつかないようにするために、不織布層14は、硬化性樹脂層13の露出面に適用される。しかし硬化性樹脂層13は、不織布層14の厚さにわたって浸透しない。不織布層14は、不規則に配向された繊維の不織布シートであり、従来の湿式法によって製造され得る。不織布層14の繊維は、ポリエステルおよびポリアミド繊維などのポリマー繊維、またはガラス繊維および炭素繊維などの無機繊維であってもよい。また、金属被覆炭素繊維、金属被覆ポリエステル繊維、金属被覆ガラス繊維、および金属被覆ポリアミド繊維などの金属被覆繊維の不織布層も考えられる。繊維上の金属被覆は、銅、ニッケル、銀、およびそれらの組合せなどの任意の金属であってもよい。不織布層14は、約10gsm~約50gsm、いくつかの実施形態において、約10gsm~約22gsmの面積重量を有してもよい。
【0014】
別の実施形態において、不織布層14は、不織布層が形成された後に一方または両方の表面上に薄い金属被覆が被覆される、非被覆繊維、例えばポリマー繊維または炭素繊維の層である。例えば、不織布層14は、硬化性層13と接触していない表面上に薄い金属被覆(例えば、銅、ニッケル、銀、またはそれらの組合せ)が堆積された炭素繊維またはポリエステル繊維の不織布シートであってもよい。金属被覆の面積重量は、金属被覆不織布層の約1gsm~約25gsm(または約10重量%~約50重量%の範囲であってもよい。
【0015】
熱可塑性層を有する実施形態
一実施形態において、補剛層は、流体バリアとして役立つこともできる連続した非多孔質熱可塑性層であり、複合構造物の損傷許容性を改良することができる。熱可塑性層は、特に、自動配置のために表面材が連続したまたは細長いテープの形態であるとき、約50μm~約153μm(または約2~約6ミル)の厚さを有してもよい。しかし、表面材の用途に応じて、より大きな厚さが可能である。この実施形態において、熱可塑性層は一切の強化繊維を含有せず、統合表面材はまた、炭素繊維などの強化繊維の一切の付加的な層を含有しない。
【0016】
熱可塑性層は、以下の構造特性によって特徴づけられる:ASTM D-882によって測定された時に約640MPa(または93ksi)~約2.1GPa(または305ksi)の引張弾性率、ASTM D-882によって測定された時に約27MPa(または4ksi)~約76MPa(または11ksi)の降伏点引張強さ、ASTM D-882によって測定された時に約41MPa(または5.9ksi)~約110MPa(または16ksi)の破断点引張強さ、およびASTM D-882によって測定された時に約4%~約10%の降伏点または破断点伸び(全ての性質が約23℃において決定される)。さらに、熱可塑性層は室温(20℃~25℃)において粘着性でなく、それは触ってみると乾燥している(すなわち、べとつかない)ことを意味する。
【0017】
一実施形態において、熱可塑性層は、10℃/分の傾斜率で示差走査熱量測定(DSC)によって測定される時に280℃超、より具体的には、280℃~360℃の融解温度(T)を有する半結晶性熱可塑性ポリマーから形成される。特定に適したクラスのポリマーはポリアリールエーテルケトン(PAEK)である。
【0018】
PAEKポリマーは、単位-Ar-O-Ar-C(=O)-を含有するポリマーであり、そこで各々のArは独立に芳香族部分である。PAEKポリマーの特定の例には、ポリ(エーテルケトン)(「PEK」)、ポリ(エーテルエーテルケトン)(「PEEK」)、ポリ(エーテルケトンケトン)(「PEKK」)、ポリ(エーテルケトンエーテルケトンケトン)(「PEKEKK」)、ポリ(エーテルエーテルケトンエーテルエーテルケトン)(「PEEKEEK」)、ポリ(エーテルジフェニルケトン)(「PEDK」)、ポリ(エーテルジフェニルエーテルケトン)(「PEDEK」)、ポリ(エーテルジフェニルエーテルケトンケトン)(「PEDEKK」)、およびポリ(エーテルケトンエーテルナフタレン)(「PEKEN」)が含まれる。商業的に入手可能なPAEKポリマーには、APC-2(登録商標)PEEK、CYPEK(登録商標)-DSMまたはDSEまたはFC、およびCYPEK(登録商標)-HTEが含まれ、それらは全て、Cytec Industries Incから商業的に入手可能である。
【0019】
他の熱可塑性ポリマーは、これらのポリマーが上に考察された引張弾性率、引張強さおよび伸びを有するならば熱可塑性層を形成するために使用されてもよい。他の適した熱可塑性ポリマーには、ポリイミド(例えばDupont製のKapton(登録商標)HN、およびVNタイプのポリイミドフィルム)、ポリエーテルイミド(例えばSABIC製のUltem(商標)1000BPEIフィルム)、ポリアミドイミド(Solvay製の例えばTorlon(登録商標)4000TF)、ポリアミド(例えばDSM製のStanyl(登録商標)高性能ポリアミド46フィルム)、ポリエステル(例えばValox製のマイラー(登録商標)ポリエチレンテレフタレートポリエステル(PET、PETP)フィルム)、ポリスルホン(例えば.CS Hyde Company製のPSUUdel(登録商標)フィルム)およびそれらの組合せなどが含まれる。
【0020】
ガラス樹脂を使用する実施形態
別の実施形態において、表面材は、図1に示される構成要素を含み、そこで補剛層12は、ガラス熱硬化樹脂を含有する硬化性組成物で被覆または注入されている織布または不織布ベールから構成される。
【0021】
ガラス熱硬化樹脂は、室温(20℃~25℃)で固体および脆性の材料を意味する。さらに、ガラス樹脂組成物で被覆された/注入された織布または不織布ベールは、室温(20℃~25℃)において粘着性が最小であるかまたは全く有さず、それは触ってみると実質的にまたは完全に乾燥している(すなわち、べとつかない)ことを意味する。
【0022】
特に適しているのは、以下の式によって表されるエポキシクレゾールノボラックである:
[式中、
n=1~6である]。
【0023】
商業的に入手可能なエポキシクレゾールノボラックの例には、Ciba Specialty Chemicals製のAraldite(登録商標)ECN1273、1280、1299、9511が含まれる。
【0024】
他の適したガラス熱硬化樹脂は、以下の式によって表されるジシクロペンタジエン(DCPD)主鎖を有する低水分炭化水素エポキシノボラック樹脂である:
[式中、
n=1~3]。
商業的に入手可能なDPCD系エポキシノボラックの例には、Huntsman製のTactix(登録商標)556、およびTactix(登録商標)756が含まれる。
【0025】
同じく適しているのは、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの固体反応生成物(または縮合物)である、固体エポキシ付加物であり、以下の式によって表される:
[式中、n=2~7]。
【0026】
これらの固体エポキシ付加物は、ASTM D-1652によって測定される時に約500~約930、例えば、500~560または860~930のエポキシド当量(g/eq)を有する場合がある。これらの材料は室温(20℃~25℃)において固体であり、60℃を超える軟化温度を有する。いくつかの実施形態において、エポキシ付加物は、ASTM D-3104によって測定される時に約65℃~約140℃、例えば、75℃~85℃または100℃~110℃の軟化温度を有する場合がある。このような固体エポキシ付加物の特定の商業的に入手可能な例は、Dow Chemical Co.製のD.E.R.(商標)661およびD.E.R.(商標)664である。
【0027】
ガラス樹脂組成物で被覆または注入され得る織布は、約10gsm~約50gsmの範囲内の面積重量を有する、ガラス繊維、特に、E-ガラス繊維などの連続した繊維から構成される軽量の織布である。E-ガラスは、1重量%未満のアルカリ酸化物を有するアルミノホウケイ酸ガラスである。ガラス繊維は別として、他の適した繊維には、炭素繊維、熱可塑性繊維、例えばポリアミド繊維およびポリエステル繊維などが含まれる。金属被覆繊維または金属繊維もまた考えられる。金属被覆繊維の例には、金属被覆炭素繊維、金属被覆ポリエステル繊維、金属被覆ガラス繊維、および金属被覆ポリアミド繊維が含まれる。繊維上の金属被覆は、銅、ニッケル、銀、銅-銀、およびそれらの組合せであってもよい。織り繊維は、約10μm~約15μm(ミクロン)の範囲内の直径を有してもよい。
【0028】
ここでの目的のために適した不織布ベールは、不規則に配向されていてPVA(ポリビニルアルコール)などの少量のバインダーによって一緒に保持される、短繊維から構成される軽量の高多孔質不織布材料である。ベールの繊維は、不織布層14について説明されたようにポリマー繊維、無機繊維、または金属被覆繊維であってもよい。不織布層14のように、不織布ベールは従来の湿式法によって製造され得る。繊維は、約10mm~約15mmの範囲内の長さおよび10μm~15μmの範囲内の直径を有してもよい。好ましい実施形態において、不織布ベールは、約10gsm~約50gsm、いくつかの実施形態において、約10gsm~約35gsmの範囲内の面積重量を有する。
【0029】
一実施形態において、上に開示された1つまたは複数の熱硬化樹脂(エポキシクレゾールノボラック、DCPD主鎖エポキシノボラック、または固体エポキシ付加物)を硬化剤、有機溶媒、および任意選択により、流れ調整剤と混合して、約65重量%~約75重量%の固形分を含有する被覆溶液を形成する。被覆溶液は、少量の熱可塑性ポリマーをさらに含有してもよい。成分は、実質的に均質なブレンドが形成されるまで室温にて剪断ミキサー内でブレンドされてもよい。固体エポキシ付加物が使用されるとき、エポキシ付加物は、他の成分と混合する前に任意選択によりさらに細粉にミル粉砕される。次に、得られた樹脂溶液をガラス布またはベールの両面上に被覆し、その後に、乾燥させる。
【0030】
エポキシノボラックおよびエポキシ付加物のための適した硬化剤は、アミン硬化剤、例えば、ジシアンジアミド(DICY)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’DDS)、および3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’DDS)、グアナミン、グアニジン、アミノグアニジン、ピペリジン、ならびに非アミン硬化剤、例えば三フッ化ホウ素(BF)またはそれらの錯体、および酸無水物から選択されてもよい。実施形態において、硬化剤はジシアンジアミドである。被覆溶液中の樹脂対硬化剤の比は、ガラス樹脂100重量部当たり硬化剤約5重量部~約30重量部であるような比である。
【0031】
適した有機溶媒には、限定されないが、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、トルエン、PMA、クロロホルム,トルエン-MIBK、塩化エチレン、およびキシレン-MIBKが含まれる。本明細書に開示されるエポキシクレゾールノボラック、DCPD主鎖エポキシノボラック、および固体エポキシ付加物は、このような溶媒に可溶性である。
【0032】
適した流れ調整剤には、粒状形態(例えば粉末)の無機充填剤が含まれる。このような流れ調整剤をレオロジー改質成分として被覆溶液に添加して、樹脂組成物の流れを制御し、そこでの凝集を防ぐ。樹脂被覆組成物において使用されてもよい適した無機充填剤には、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、アルミナ、およびヒュームドシリカが含まれる。一実施形態において、疎水性ヒュームドシリカ粉末(例えばCabot Corporation製のCab-O-Sil(登録商標)TS-720)が流れ調整剤として使用される。流れ調整剤の量は、ガラス熱硬化樹脂の100部に基づいて約1重量部~約5重量部の範囲内であってもよい。ヒュームドシリカ粉末などの粒状形態の流れ調整剤が特に適している。
【0033】
熱可塑性ポリマーは、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)、およびPESとPEESとのコポリマーなどのポリアリールスルホン、ポリエーテルイミド(PEI)(例えばGeneral Electric製のUltem(商標))から選択されてもよい。熱可塑性ポリマーの量は、熱硬化樹脂100部当たり約1部~約20部であってもよい。
【0034】
ガラス樹脂組成物はさらに、強化剤として粉末形態のビスマレイミドまたはBMI、例えば、Huntsman製のMatrimid(登録商標)5292Aを少量(ガラス熱硬化樹脂100部当たり20部未満)含有してもよい。
【0035】
表1は、織布または不織布ベールを被覆するためのいくつかの典型的な溶媒ベースの樹脂調合物を開示する。
【0036】
【0037】
代替実施形態において、溶媒を使用せずにガラス熱硬化樹脂(エポキシクレゾールノボラック、DCPD系エポキシノボラック(epoxy novelacs)またはエポキシ付加物)を硬化剤、および任意選択により、流れ調整剤および/または熱可塑性ポリマーとブレンドして、溶融混合物を形成する。成分のブレンディングを加熱/冷却および真空能力を有するミキサー内で実施して、樹脂混合物の成分を均一にブレンドする。次に、溶融混合物を使用して固体樹脂層を形成するため、例えば、キャリア層(ガラス布またはベールキャリア)または剥離紙上へホットメルトフィルム被覆し、その後に、冷却して樹脂を固化させる。次に、固体樹脂層を織布または不織布ベールと接触させる。熱および圧力を適用して樹脂層を溶融し、布またはベールを溶融樹脂で注入する。1つの樹脂層を布/ベールの一方の面に対して押し付けてもよく、または2つの樹脂層を布/ベールの反対側の面に対して押し付けてもよい。
【0038】
ガラスベール/布および不織布層を有する実施形態
図2によって表されるさらに別の実施形態において、統合表面材は、硬化性樹脂層22に埋め込まれた多孔質導電層21と、外側の織布または不織布ベール23(以下、「繊維層」)と、外側の不織布層24とを含む表面材である。繊維層23および不織布層24の外面は、実質的にまたは完全に不粘着性である。そして硬化性樹脂22は、繊維層23も不織布層24もどちらの厚さにわたっても浸透しない。この表面材が複合基材上に置かれるとき、繊維層23は剛性を提供するために複合基材と接触しており、不織布層24は複合部品の最も外側の層になる。多孔質導電層21は、図1を参照して前述した通りである。一実施形態において、多孔質導電層は金属スクリーンである。織布または不織布ベール23は、他の実施形態について前述した通りである。不織布層24は、図1において不織布層14を参照して前述した通りである。一実施形態において、層23および24は、同一であるかまたは異なった面積重量を有する不織布ベールである。層23および24が異なった面積重量を有する不織布ベールであるとき、大きいほうの面積重量を有する不織布ベールは、複合基材と接触しており、小さいほうの面積重量を有する不織布ベールは、表面材が適用された後に最終複合部品内の最も外側の層である。この表面材は、前述した通りATLまたはAFPなどの自動配置のための細い幅のテープの形態であってもよい。
【0039】
図2の統合表面材は、最初に、硬化性樹脂層を除去可能なキャリア層、例えば、剥離紙上に形成することによって製造されてもよい。多孔質導電性シート、例えば金属スクリーンを硬化性樹脂層の露出面上に置き、次に、熱および圧力を集成層に適用して、多孔質導電性シートを樹脂層に埋め込む。その後、繊維層23および不織布層24の各々を得られた樹脂層の反対側の面上に別々に積層する。繊維層23および不織布層24を樹脂層に接着するために圧力が適用されるが、樹脂を繊維層23または不織布層24のどちらかに実質的または完全に浸透させるほど十分に高くはない。
【0040】
流体バリア
本開示の別の態様は、複合構造物内の外側の流体バリアとして機能する表面材に関する。このような流体バリアは、多孔質コアを含有する複合サンドイッチパネルのために特に有用である。複合サンドイッチパネルは典型的に、オートクレーブ処理によって接着剤でコアに同時硬化された複合表皮を有する。コア材料は、軽量ハニカム、硬質フォーム、紙または木材などの様々な形態をとってもよい。好ましくは、コアはハニカム材料であるが、これは材料の非常に低い重量のためにすぐれた構造特性を提供するからである。複合サンドイッチパネルは、高い剛性対重量および強度対重量比のために、航空宇宙用構造部材において広範囲にわたる用途がある。
【0041】
図3は、流体バリア表面材30の実施形態を示し、それは第1の硬化性樹脂層31、第2の硬化性樹脂層32、および樹脂層の間に挟まれたバリアフィルム33を備える。硬化性樹脂層とバリアフィルムとが統合構造物を形成する。第1および第2の樹脂層の各々は、1つまたは複数の熱硬化樹脂と硬化剤とを含有し、一切の強化繊維を含有しない。
【0042】
いくつかの実施形態において、第1および第2の樹脂層のうちの少なくとも1つは、TiO2粉末、ナノサイズのシリカ、ナノサイズの粘土、炭素、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)、およびそれらの組合せから選択される粒状形態の無機充填剤をさらに含む。このような無機充填剤の存在は、樹脂層の疎水性を増加させ、バリアフィルムとの相乗作用を提供し、表面材の下の複合構造物への一切の流体侵入を排除する。
【0043】
バリアフィルムは、液体に対して不透過性であるポリマー材料から形成される。ポリマー材料の好ましい性質には、ASTM D3418に従って10℃/分の傾斜率でDSCによって測定された時に、例えば、140℃~170℃)、または150℃~162℃の範囲内の高いTgが含まれる。別の好ましい性質は、ASTM D3418に従って10℃/分の傾斜率でDSCによって測定された時に10%~40%、または20%~30%など、3%~50%の結晶度である。
【0044】
例として、バリアフィルムは、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)ポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド、ポリエステルおよびそれらの組合せから選択される熱可塑性材料から製造されてもよい。いくつかの実施形態において、バリアフィルムの組成物は、ポリ(エーテルケトン)(「PEK」)、ポリ(エーテルエーテルケトン)(「PEEK」)、ポリ(エーテルケトンケトン)(「PEKK」)、ポリ(エーテルケトンエーテルケトンケトン)(「PEKEKK」)、ポリ(エーテルエーテルケトンエーテルエーテルケトン)(「PEEKEEK」)、ポリ(エーテルジフェニルケトン)(「PEDK」)、ポリ(エーテルジフェニルエーテルケトン)(「PEDEK」)、ポリ(エーテルジフェニルエーテルケトンケトン)(「PEDEKK」)、およびポリ(エーテルケトンエーテルナフタレン)(「PEKEN」)、ならびにそれらの組合せから選択されるPAEKポリマーを含有する。
【0045】
図4は、流体バリア表面材40の別の実施形態を示し、それは、第1の硬化性樹脂層41、第2の硬化性樹脂層42、バリアフィルム43、および導電層44を備える。4層の全ての層が統合構造物を形成する。バリアフィルム43および導電層44が2つの樹脂層の間に配置される。硬化性樹脂層およびバリアフィルムは前述した通りである。導電層44は、図1を参照して上に記載された通りである。この実施形態において、表面材は、流体バリアを提供することに加えてLSPを提供することができる。
【0046】
図5は、本明細書に組み込まれる図3または図4の流体バリア表面材を有する典型的な複合サンドイッチパネルの構成要素を示す。図5に示されるように、複合サンドイッチパネルは、表面材(50)、第1のプリプレグ表皮51、第2のプリプレグ表皮52、ハニカムコア53、およびプリプレグ表皮をハニカムコアに(同時硬化または二次接着によって)接着するための接着フィルム54、55を備える。各々のプリプレグ表皮は、いくつかの硬化性プリプレグプライから構成される。
【0047】
ハニカムサンドイッチパネルを製造するための一般的な方法は、ハニカムコアにプリプレグ表皮および接着フィルムを両面上に、流体バリア表面材を表皮の1つの上に積層する工程と、全ての成分を同時硬化してそれらを互いに接着させる工程とを包含する。同じハニカムサンドイッチパネルを製造する別の方法は、パネル修復の場合などのように二次接着による。この二次接着方法において、予備硬化されたプリプレグ表皮表面を機械的研磨(例えばサンダー仕上またはグリットブラスト仕上)または除去剥離プライで処理して、接着準備表面を作る。次に、硬化プロセスにより接着フィルムによって予備硬化された表皮にハニカムコアを接着する。次に、流体バリア表面材を硬化されたハニカムサンドイッチパネルの外面に適用し、その後に、表面材を硬化して、固化された保護外層を形成する。
【0048】
ハニカムコアをプリプレグ表皮に接着するための接着剤は、1つまたは複数の熱硬化樹脂、例えば、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含有する熱硬化性組成物から形成されてもよい。例えば、Cytec Engineered Materials Inc.から商業的に入手可能なエポキシ系接着剤FM309-1およびFM300を用いてもよい。
【0049】
硬化性樹脂
本明細書中で用いられるとき用語「硬化する(cure)」および「硬化(curing)」は、高温での加熱、紫外線および放射線暴露、または化学添加剤によって引き起こされるプレポリマー物質または樹脂先駆物質の不可逆的な固化を意味する。用語「硬化性(curable)」は、固化材料に硬化され得ることを意味する。本明細書中で用いられるとき「部分的に硬化された」は、100%未満の硬化度を意味する。
【0050】
様々な実施形態において、特に図1~4を参照して説明される硬化性樹脂層の各々は、1つまたは複数の熱硬化樹脂と硬化剤とを含有する熱硬化性組成物から形成される。
【0051】
適した熱硬化樹脂の例には、限定されないが、エポキシ、フェノール樹脂、シアネートエステル、ビスマレイミド、ベンゾオキサジン(ポリベンゾオキサジンなど)、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、およびそれらの組合せが含まれる。
【0052】
いくつかの実施形態において、熱硬化性組成物は、1つまたは複数の多官能性エポキシ樹脂を含有する。多官能性エポキシ樹脂(またはポリエポキシド)は、1分子中に2つ以上のエポキシ官能基を含有する。
【0053】
適した多官能性エポキシ樹脂の例には、アルカリの存在下でエピクロロヒドリンまたはエピブロモヒドリンとポリフェノールとの反応によって調製される、ポリグリシジルエーテルなどが含まれる。適したポリフェノールは、例えば、レソルシノール、ピロカテコール、ピロカテキン、ヒドロキノン、ビスフェノールA(ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-プロパン)、ビスフェノールF(ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-イソブタン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-エタン、および1,5-ヒドロキシナフタレンである。
【0054】
同じくポリアルコールのポリグリシジルエーテルもまた含まれる。このようなポリアルコールには、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、およびトリメチロールプロパンが含まれる。
【0055】
さらに別のエポキシ樹脂には、ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル、例えば、グリシドールまたはエピクロロヒドリンと脂肪族または芳香族ポリカルボン酸、例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸または二量体脂肪酸との反応生成物が含まれる。
【0056】
他のエポキシドには、オレフィン性不飽和脂環式化合物のエポキシ化生成物に由来するまたは天然油および脂に由来するエポキシドが含まれてもよい。
【0057】
また、ビスフェノールAまたはビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの反応生成物である液体エポキシ樹脂もまた含まれる。これらのエポキシ樹脂は、室温において液体であり、一般的に、ASTM D-1652によって測定される時に約150~約480のエポキシ当量(g/eq)を有する。
【0058】
特に適しているのは、以下の化学構造:
[式中、n=0~5、およびR=HまたはCH]を有するフェノールホルムアルデヒドノボラックまたはクレゾール-ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジル誘導体であるエポキシノボラック樹脂である。R=Hであるとき、樹脂はフェノールノボラック樹脂である。R=CHであるとき、樹脂はクレゾールノボラック樹脂である。前者は、Dow Chemical Co製のDEN428、DEN431、DEN438、DEN439、およびDEN485として商業的に入手可能である。後者は、Ciba-Geigy Corp製のECN1235、ECN1273、およびECN1299として商業的に入手可能である。使用されてもよい他の適したノボラックには、Celanese Polymer Specialty Co製のSU-8が含まれる。好ましい実施形態において、エポキシノボラック樹脂は、25℃において4000~10,000mPa・sの粘度およびASTM D-1652によって測定される時に約190g/eq~約235g/eqのエポキシド当量(EEW)を有する。
【0059】
特定に適した多官能性エポキシ樹脂は、1分子中4つのエポキシ官能基と、少なくとも1つのグリシジルアミン基とを有する四官能性芳香族エポキシ樹脂である。例は、以下の一般的化学構造:
を有するメチレンジアニリンのテトラグリシジルエーテルである。構造物中のアミン基は、芳香環構造のパラ-または4,4’位置に示されるが、しかしながら、2,1’、2,3’、2,4’、3,3’、3,4’などの他の異性体が可能な代替形であることは理解されるはずである。商業的に入手可能な四官能性エポキシ樹脂の例は、Huntsman Advanced Materialsによって供給されるAraldite(登録商標)MY9663、MY9634、MY9655、MY-721、MY-720、MY-725である。
【0060】
別の特に適した多官能性エポキシ樹脂は、三官能性エポキシ樹脂、例えば、アミノフェノールのトリグリシジルエーテルである。商業的に入手可能な三官能性エポキシ樹脂の特定の例は、Huntsman Advanced Materialsによって供給されるAraldite(登録商標)MY0510、MY0500、MY0600、MY0610である。
【0061】
硬化性樹脂組成物は、高いTおよび高い架橋密度を生じるように調合されてもよい。いくつかの実施形態において、エポキシノボラック樹脂と非ノボラック多官能性エポキシ樹脂(特に、三官能性および/または四官能性エポキシ)との組合せが使用される。エポキシノボラック樹脂と非ノボラック多官能性エポキシ樹脂との相対量は変化させられてもよいが、エポキシノボラック樹脂の量は、非ノボラック多官能性エポキシ樹脂100部当たり約80~約100部の範囲内であることが好ましい。明記した比率においてのエポキシノボラック樹脂と多官能性エポキシ樹脂との組合せは、所望の高いTおよび硬化した時の架橋密度に寄与する。
【0062】
全ての樹脂の全量は、樹脂フィルム組成物の全重量に基づいて少なくとも15重量%を構成する。例として、樹脂の全量は、熱硬化性組成物の全重量に基づいて約30重量%~約60重量%、または約15重量%~約25重量%を占めてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態において、樹脂組成物は、特定の多官能性熱硬化樹脂、樹脂母材を強化するためのポリマー強化成分、アミン系潜硬化剤、流体バリア成分としてセラミック微小球、およびレオロジー改質成分として粒状無機充填剤の組合せを含有する。多官能性樹脂およびセラミック微小球は、全組成物の35重量%超、好ましくは45重量%超を構成する。
【0064】
ポリマー強化剤
熱硬化性組成物は、1つまたは複数のポリマー強化剤をさらに含有してもよい。ポリマー強化剤は、熱可塑性ポリマー、エラストマー、コア-シェルゴム粒子の他、エポキシ樹脂と、ビスフェノールと、弾性ポリマーとの反応生成物である予備反応付加物、およびそれらの組合せからなる群から選択されてもよい。いくつかの実施形態において、この群からの2つの異なった強化剤の組合せが使用される。強化剤の量は、合計で、組成物の全重量に基づいて約1%~約30%、いくつかの場合、約10重量%~約20重量%であってもよい。予備反応付加物に関して、適したエポキシ樹脂には、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAの水素化ジグリシジルエーテル、またはビスフェノールFの水素化ジグリシジルエーテルが含まれる。脂環式エポキシもまた適しており、それらには、1分子中に少なくとも1つの脂環式基および少なくとも2つのオキシラン環を含有する化合物が含まれる。特定の例には、脂環式アルコールのジエポキシド、以下の構造によって表される水素化ビスフェノールAが含まれる:
【0065】
このような脂環式エポキシ化合物樹脂の例は、CVC Thermoset Specialtiesから入手可能なEPALLOY(登録商標)5000(ビスフェノールAジグリシジルエーテルを水素化することによって調製された脂環式エポキシ化合物)である。予備反応付加物において使用するために適した他の脂環式エポキシドには、Momentive Specialty Chemicalsによって供給されるEPONEX脂環式エポキシ化合物樹脂、例えばEPONEX樹脂1510が含まれてもよい。
【0066】
予備反応付加物中のビスフェノールは、直鎖または脂環式エポキシ化合物のための鎖延長剤として機能する。適したビスフェノールには、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)、ビスフェノールZ、およびテトラメチルビスフェノールA(TMBP-A)が含まれる。
【0067】
予備反応付加物を形成するための適したエラストマーには、限定されないが、例えばアミン末端ブタジエンアクリロニトリル(ATBN)、カルボキシル末端ブタジエンアクリロニトリル(CTBN)、およびカルボキシル末端ブタジエン(CTB)などの液体エラストマーが含まれる。フルオロカーボンエラストマー、シリコーンエラストマー、スチレン-ブタジエンポリマーもまた可能である。実施形態において、予備反応付加物において使用されるエラストマーは、ATNB、CTBNまたはCTBである。
【0068】
一実施形態において、トリフェニルホスフィン(TPP)などの触媒の存在下で、約300°F(または148.9℃)においてエポキシ樹脂をビスフェノール鎖延長剤およびエラストマーポリマーと反応させて、エポキシ樹脂を鎖結合して高粘度のフィルム形成性高分子量エポキシ樹予備反応付加物を形成する。次に、予備反応付加物を熱硬化性組成物の残りの成分と混合する。
【0069】
適した熱可塑性強化剤には、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)などのポリアリールスルホンポリマーが含まれる。いくつかの実施形態において、強化剤はPESとPEESとのコポリマーであり、それは米国特許第7084213号明細書に記載されている。いくつかの実施形態において、強化剤は、ポリ(オキシ-1,4-フェニレンスルホニル-1,4-フェニレン)であり、それはDSCによって測定される時に約200℃のTを有する。
【0070】
強化成分は、300nm以下の粒度を有するコア-シェルゴム(CSR)粒子であってもよい。CSR粒子は、軟質コアが硬質シェルによって囲まれるコア-シェル粒子のいずれかであってもよい。好ましいCSR粒子は、ブタジエンゴムコアまたはブタジエンアクリロニトリルゴムコアとポリアクリレートシェルとを有する粒子である。しかしながら、軟質シェルによって囲まれた硬質コアを有するCSR粒子もまた、使用されてもよい。CSR粒子は、液体エポキシ樹脂中に分散された重量パーセントで25%~40%のCSR粒子として供給されてもよい。ゴムコアとポリアクリレートシェルとを有するCSR粒子は、商品名Kane Ace MXとしてKaneka Texas Corporation(Houston,Tex.)から商業的に入手可能である。コア-シェルゴム粒子は、適した液体エポキシ樹脂中の粒子の懸濁液として表面フィルム組成物に添加されるのが好ましいが、必要とされない。Kane Ace MX411は、MY721エポキシ樹脂中の25重量%のコア-シェルゴム粒子の懸濁液であり、コア-シェルゴム粒子の適した供給源である。DER331樹脂中に分散された同じコア-シェルゴム粒子25~37重量%を含有する、Kane Ace MX120、MX125、またはMX156もまた、コア-シェルゴム粒子の適した供給源である。MX257、MX215、MX217およびMX451などのコア-シェルゴム粒子の他の適した供給源もまた、使用されてもよい。コア-シェルゴム粒子の別の商用供給源は、Dow Chemical Co.製のParaloid(商標)EXL-2691(約200nmの平均粒度を有するメタクリレート-ブタジエン-スチレンCSR粒子)である。
【0071】
硬化剤
多官能性エポキシド樹脂は様々なアミン系潜硬化剤によって硬化されてもよく、それらは高温(例えば150°F(65℃)を超える温度)で活性化される。適した硬化剤の例には、ジシアンジアミド(DICY)、グアナミン、グアニジン、アミノグアニジン、およびそれらの誘導体が含まれる。イミダゾールおよびアミン錯体のクラスの化合物もまた、使用されてもよい。実施形態において、硬化剤はジシアンジアミドである。アミン系硬化剤は、樹脂フィルム組成物の全重量に基づいて約1重量%~約5重量%の範囲内の量において存在している。
【0072】
硬化促進剤をアミン系硬化剤と共に使用して、エポキシ樹脂とアミン系硬化剤との間の硬化反応を促進してもよい。適した硬化促進剤には、アルキルおよびアリール尿素(芳香族または脂環式ジメチル尿素など)、およびトルエンジアミンまたはメチレンジアニリンをベースとしたビス尿素が含まれてもよい。ビス尿素の一例は、ジシアンジアミドのための適した促進剤である、CVC Chemicals製のOmicure U-52またはCA152として商業的に入手可能な4,4’-メチレンビス(フェニルジメチル尿素)である。別の例は、CVC Chemicals製のOmicure U-24またはCA150として商業的に入手可能な2,4-トルエンビス(ジメチル尿素)である。硬化促進剤は、熱硬化性組成物の全重量に基づいて約0.5重量%~約3重量%の範囲内の量において存在していてもよい。
【0073】
セラミック微小球
セラミック微小球を熱硬化性組成物に添加して、それから形成された樹脂フィルムの表面平滑性を改良してもよい。それらは中空または固体セラミック微小球であってもよい。一実施形態において、不活性シリカ-アルミナセラミック材料から製造された中空セラミック微小球が使用される。セラミック微小球は、60,000psi超の圧砕強さ、約3.7~4.6の誘電率、1000~1100℃(または1832~2012°F)の範囲の軟化点、および0.1ミクロン~50ミクロン、または1~50ミクロンの範囲の粒径を有してもよい。セラミック微小球の高い軟化点は、それらを溶媒に対して非吸収性、難燃性、および高度に耐薬品性であるようにできる。約0.1μm~約20μm、好ましくは約1μm~約15μmの範囲の直径を有する微小球は、特に適していることがわかった。本樹脂フィルム組成物において使用するために特に適している商業的に入手可能なセラミック微小球の例は、商品名Zeeospheres(登録商標)の、例えば、G-200、G210およびW-200としてZeelan Industries,Inc.によって販売されている。これらは、厚壁を有し、無臭、および明るい灰色の中空シリカ-アルミナ球である。好ましい実施形態において、多官能性樹脂とセラミック微小球との組合せは、樹脂フィルム組成物の50重量%超、好ましくは60重量%超を構成する。特定の実施形態において、セラミック微小球の量は、樹脂フィルム組成物の全重量に基づいて少なくとも20重量%である。いくつかの実施形態において、セラミック微小球の量は、熱硬化性組成物の全重量に基づいて約20重量%~約40重量%、または約25重量%~約35重量%の範囲内であってもよい。他の実施形態において、セラミック微小球の量は、約3重量%~約15重量%、または約5重量%~約10重量%の範囲内であってもよい。
【0074】
流れ調整剤
粒状形態(例えば粉末)の無機充填剤をレオロジー改質成分として熱硬化性組成物に添加して樹脂組成物の流れを制御し、そこでの凝集を防ぐ。樹脂フィルム組成物において使用されてもよい適した無機充填剤には、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、アルミナ、およびヒュームドシリカが含まれる。一実施形態において、疎水性ヒュームドシリカ(例えばCab-O-Sil TS-720)が無機充填剤として使用される。無機充填剤の量は、熱硬化性組成物の全重量に基づいて約1重量%~約5重量%の範囲内であってもよい。
【0075】
任意選択の添加剤
熱硬化性組成物は、硬化または未硬化樹脂フィルムの機械的、電気的、光学的、および熱的性質の1つまたは複数に影響を与える1つまたは複数の任意選択の添加剤をさらに含有してもよい。このような添加剤には、限定されないが、紫外線(UV)安定剤、顔料/染料、および導電材料が含まれる。このような添加剤が使用されるとき、それらの全量は、熱硬化性組成物の全重量に基づいて約5重量%未満である。
【0076】
樹脂組成物に添加されてもよい紫外線安定剤の例には、ブチル化ビドロキシトルエン(BHT);2-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノン(例えばUV-9);2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(例えばCYASORB(登録商標)UV-1164吸光剤);3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ安息香酸;n-ヘキサデシルエステル(例えばCYASORB(登録商標)UV-2908光安定剤);ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(例えばIRGANOX 1010)が含まれる。また、Ciba Specialty Chemicals製の液体ヒンダードアミン光安定剤、例えば2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジtertフェニルフェノール(例えばTINUVIN 328)、メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート(例えばTINUVIN 292)。デカン二酸、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニルエステル(例えばTINUVIN 123)もまた、適した紫外線安定剤として使用されてもよい。さらに、ナノサイズの酸化亜鉛(n-ZnO)、例えばNanoSunGuard 3015、および酸化チタンナノ粒子(n-TiO2)もまた、紫外線安定剤として使用されてもよい。
【0077】
色を樹脂系に付加するための本技術分野に公知の顔料および/または染料を樹脂フィルム組成物に添加してもよい。顔料および/または染料の例には、限定されないが、赤色酸化鉄、グリーンクロム、カーボンブラック、および酸化チタンが含まれる。実施形態において、酸化チタン(白色)顔料が樹脂フィルム組成物に添加される。別の実施形態において、炭素黒色顔料が添加される。
【0078】
また、粒状形態、例えば粒子またはフレークの導電材料を樹脂フィルム組成物に添加して、最終樹脂フィルムに電気導電率を与えてもよい。適した導電材料の例には、フレークまたは粒子の形態の例えば銀、金、ニッケル、銅、アルミニウム、青銅、およびそれらの合金などの金属が含まれる。炭素系材料、例えばカーボンナノチューブ(単層ナノチューブまたは複数層ナノチューブ)、炭素ナノ繊維、およびグラフェンもまた、導電性添加剤として使用して電気導電率を樹脂フィルムに与えてもよい。ナノ繊維は、70~200ナノメートルの範囲の直径および約50~200ミクロンの長さを有してもよい。ナノチューブは、約10ナノメートルの外径、約10,000ナノメートルの長さ、および約1000のアスペクト比(L/D)を有してもよい。さらに、導電性添加剤にはまた、カーボンブラック粒子(例えばDeGussa製のPrintex XE2)が含まれてもよい。
【0079】
一実施形態において、硬化性樹脂層または母材を形成するための熱硬化性組成物は、組成物の全重量に基づいた重量パーセントにおいて以下の調合物を有する:20%~25%のエポキシフェノールノボラック樹脂、20%~25%の四官能性エポキシ樹脂、10%~15%の予備反応付加物、1%~3%のPES-PEESコポリマー、25%~35%のセラミック微小球、1%~5%のアミン系潜硬化剤、0.5%~3%の硬化促進剤、1%~3%の無機充填剤、および任意選択により0.1~1%の有色顔料。
【0080】
別の実施形態において、熱硬化性組成物は、組成物の全重量に基づいた重量パーセントにおいて以下の調合物を有する:5%~15%のエポキシフェノールノボラック樹脂、5%~15%の四官能性エポキシ樹脂、10%~20%の予備反応付加物、1%~3%のPES-PEESコポリマー、25%~35%のセラミック微小球、1%~5%のアミン系潜硬化剤、0.5%~3%の硬化促進剤、1%~3%の無機充填剤、および45%~70%の導電性添加剤、例えば銀フレークまたは銀-銅フレーク、または上に考察された炭素系ナノサイズの材料。
【0081】
混合、加熱、および/または冷却機構を備えた剪断ミキサーに熱硬化性組成物の成分が添加されてもよい。さらに、1つまたは複数の有機溶媒もまた、必要に応じて、混合物に添加して成分の混合を促進してもよい。このような溶媒の例には、限定されないが、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジメチルアセトアミド、およびN-メチルピロリドンが含まれてもよい。
【0082】
樹脂層の取扱を容易にするために、熱硬化性組成物を上に記載されたように除去可能なキャリア層上に適用して、樹脂層を形成する。樹脂層は、溶媒が使用されない場合はホットメルト塗布法または溶媒が使用される場合は溶液塗布法を使用して形成されてもよい。溶媒が使用される場合、樹脂層の後続の乾燥は、揮発性物質を除去するために必要である。
【0083】
用途
本明細書に開示される表面材を繊維強化ポリマー複合基材上に適用し、150°F(65℃)を超える温度、より詳しくは、200°F~365°F(または93℃~185℃)の範囲内の温度でそれと同時硬化することができる。繊維強化ポリマー複合基材は、硬化性母材樹脂で含浸または注入された強化繊維から構成される。いくつかの実施形態において、複合基材は、プリプレグプライまたはプリプレグレイアップであってもよい。プリプレグレイアップは、積み重ね順序において配列された複数のプリプレグプライから構成される。各々のプリプレグプライは、母材樹脂、例えばエポキシ樹脂で含浸/注入された布または方向性をもって整列された連続した繊維の形態の強化繊維から構成される。方向性をもって整列された繊維は、一方向または複数方向繊維であってもよい。一般的には、硬化性導電性表面材を繊維強化ポリマー複合基材上に適用して、それは未硬化または部分的に硬化した状態であり、その後に同時硬化して、最も外側の層としてそれに接着された固化表面フィルムを有する完全に硬化した複合構造物を形成してもよい。
【0084】
連続した表面テープの形態で、表面材をATLおよびAFP法などの自動配置によって複合基材上に敷設することができる。表面テープは、連続した樹脂含浸プリプレグテープを自動敷設して複合構造物を形成するATL/AFP法に組み込まれてもよい。各々のプリプレグテープは、一方向強化材繊維、例えば炭素繊維から構成され、それらは、硬化性樹脂母材、例えばエポキシ系母材中に埋め込まれる。自動配置法において、1つまたは複数の数値的に制御された配置ヘッドを使用して単一プリプレグテープを高速度でマンドレルまたは成形面上に直接に敷設して、配置する間に各々のテープを分配し、クランプし、切断し、再始動させる。プリプレグテープを並列に分配して、所望の幅および長さの層を作り、そして次に、付加的な層を先行層上に形成して、所望の厚さを有するプリプレグレイアップを提供する。次に、表面テープをプリプレグレイアップ上に敷設して、最も外側の層を形成する。このようなATL/AFP法は慣例的に、胴体部分または航空機の翼表皮など、大きな航空宇宙複合構造物の製造のために使用される。この自動配置方法は、大きな表面フィルムを既存のプリプレグレイアップ上に手作業で適用する慣例的な方法において典型的である中間処理工程のいくつかを省く。
【0085】
流体バリア性質を有する表面材について、開示された流体バリア表面材を使用して、航空機構造物部品(例えば翼、胴体、尾部、およびエンジンナセル構造物等)を製造することができる。外側の保護層としてのこのような多機能流体バリア表面材の使用は、著しいコスト削減をもたらして流体侵入の除去、良い表面性質、およびLSPなどの多面的な利点を提供する。
【実施例
【0086】
以下の実施例は本開示による表面材の特定の実施形態を与えるのに役立つが、いかなる点からも本開示の範囲を限定することを意図しない。
【0087】
実施例1
ペレット化された形態のPEKKをシングルクルー押出機に供給し、それは、PEKKペレットが押出機バレルを通って移動する時にそれらを溶融するために必要とされる温度に加熱された。押出機を出る溶融材料はダイに入ってPEKKフィルムを形成し、それをその後冷却した。
【0088】
次に、PEKKフィルムを銅スクリーン(73gsm)およびCytec Industries Inc.製の硬化性SM905表面層(90gsm)に積層し、銅スクリーンはPEKK層と表面層との間に挟まれた。熱および圧力の適用によって12gsmの不織布ポリエステルマットを表面フィルムの露出面に積層し、統合積層体構造物をもたらした。積層は、表面層の樹脂を不織布ポリエステルマットの厚さにわたって浸透させなかった。また、得られた積層体は、不粘着性である外面を有した。次に、積層体をAFP法のために適している約6.35mm(または0.25インチ)の幅を有する細いストリップにスリットした。図6は、PEKK表面が見えるようにされた新たにスリットされたテープを示す。スリットテープの側端縁はきれいであり、スリッチングの間に銅スクリーンの変形はないことが指摘された。図7は、PEKK表面が上に向いている2つのAFPスリットテープの写真画像である。
【0089】
実施例2
被覆樹脂溶液は以下の調合に従って調製された:
固体エポキシ付加物(DER 661)、ジェットミル粉砕された:100g
MEK溶媒:50g
DICY:15g
ヒュームドシリカ(Cabosil TS 720):5g
【0090】
成分は、実質的に均質な樹脂溶液が形成されるまで高速剪断ミキサー内で室温(23℃)において混合された。この溶液の固形分はおよそ70重量%固形分であった。
【0091】
次に、樹脂溶液をBGF Industriesによって供給されたガラス布(108ガラス布)の両面上に48gsmの面積重量で被覆した。樹脂被覆ガラス布の全面積重量はおよそ100gsmであり、厚さは約102μm(または4ミル)であった。
【0092】
次に、樹脂被覆ガラス布を銅スクリーン(175gsm)、Cytec Industries Inc.製の硬化性SM905表面層(90gsm)、および10gsmの不織ガラスマットと組み合わせて、そこで銅スクリーンは樹脂被覆ガラス布と表面層との間に挟まれ、表面層は不織ガラスマットと接触している。熱および圧力を集成層に適用して統合積層体構造物を形成した。しかし、表面層の樹脂は不織布ポリエステルマットの厚さにわたって浸透しなかった。次に、積層体を6.35mm(または0.25インチ)の幅を有する細いストリップにスリットした。
【0093】
実施例3
熱および圧力を適用することによって銅スクリーン(175gsm)が硬化性SM905表面フィルム(90gsm)中に埋め込まれた。17gsmの面積重量を有する不織布ガラスベール(Technical Fibre Products製のOptiveil(登録商標))を熱および圧力の適用によってスクリーン含有樹脂層の一方の面に積層して、ガラスベールを樹脂層に接着したが、表面層の樹脂はガラスベールの厚さにわたって浸透せず、そして次に、10gsmのガラスベール(Technical Fibre Products製のOptiveil(登録商標))を樹脂層の反対側の面に同様に接着した。得られた積層体を6.35mm(または0.25インチ)の幅を有する細いストリップにスリットした。表面テープが複合基材上に適用された後に10gsmのガラスベールは最も外側の表面層であり、17gsmのガラスベールは複合基材と接触している。
【0094】
実施例4
熱および圧力を適用することによって銅スクリーン(175gsm)が硬化性SM905表面フィルム(90gsm)中に埋め込まれた。8gsmの面積重量を有する不織布ガラスベール(Technical Fibre Products製のOptiveil(登録商標))を熱および圧力の適用によってスクリーン含有樹脂層の一方の面に積層して、ベールを樹脂層に接着したが、表面層の樹脂はベールの厚さにわたって浸透せず、そして次に、別の8gsmの炭素ベール(Technical Fibre Products製のOptiveil(登録商標))を樹脂層の反対側の面に同様に接着した。得られた積層体を6.35mm(または0.25インチ)の幅を有する細いストリップにスリットした。表面テープが複合基材上に適用された後に炭素ベールの1つが最も外側の表面層であり、他方は複合基材と接触している。
【0095】
実施例5
熱および圧力を適用することによって銅スクリーン(175gsm)が硬化性SM905表面フィルム(90gsm)中に埋め込まれた。12gsmの面積重量を有する銅被覆炭素ベール(すなわち、不織布銅被覆炭素繊維)(Technical Fibre Products製のOptiveil(登録商標))を熱および圧力の適用によってスクリーン含有樹脂層の一方の面に積層して、ベールを樹脂層に接着したが、表面層の樹脂はベールの厚さにわたって浸透せず、そして次に、12gsmの面積重量を有する別の銅被覆炭素ベール(Technical Fibre Products製のOptiveil(登録商標))を樹脂層の反対側の面に同様に接着した。得られた積層体を6.35mm(または0.25インチ)の幅を有する細いストリップにスリットした。表面テープが複合基材上に適用された後に銅被覆炭素ベールの1つが最も外側の表面層であり、他方は複合基材と接触している。
【0096】
用語、定義、および略語
本開示において、量に関連して使用される修飾語「およそ」および「約」は、表記値を含めており、文脈によって要求される意味を有する(例えば、特定の量の測定に伴なう誤差の程度を含める)。例えば、「約」の後の数は、その記載数のプラスマイナス0.1%~1%の記載数を意味することができる。本明細書中で用いられるとき接尾語「(s)」は、それが修飾する語の単数形と複数形の両方を包含することを意図し、それによってその用語の1つまたは複数を包含する(例えば、金属(metal(s))は、1つまたは複数の金属を包含する)。本明細書に開示された範囲は端点およびその範囲の全ての中間値を含めており、例えば、「1%~10%」は、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%等を包含する。
【0097】
様々な実施形態が本明細書において説明されるが、その中の要素、変型または改良形態の様々な組合せが当業者によって実施されてもよく、本発明の範囲内であることは本明細書から理解されるであろう。さらに、その本質的な範囲から逸脱することなく本発明の教示に特定の状況または問題を適合させるために多くの修正が加えられてもよい。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図された最良の態様として開示された特定の実施形態に限定されず、むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内に入る実施形態をすべて包含することが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7