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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】排ガス加熱ユニット
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/20 20060101AFI20230403BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20230403BHJP
   F01N 3/027 20060101ALI20230403BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20230403BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
F01N3/20 K
F01N3/24 L
F01N3/027 C
H05B3/20 305
H05B3/10 A
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021199153
(22)【出願日】2021-12-08
(65)【公開番号】P2022091730
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2021-12-08
(31)【優先権主張番号】10 2020 132 800.1
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520050956
【氏名又は名称】プーレム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Purem GmbH
【住所又は居所原語表記】Homburger Strasse 95, 66539 Neunkirchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゲアト ガイザー
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-014239(JP,A)
【文献】特表2015-504780(JP,A)
【文献】特表2019-510343(JP,A)
【文献】特開平05-059939(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0300141(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00-3/38
H05B 3/00-3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排ガス装置のための排ガス加熱ユニットであって、少なくとも1つの導電性の熱導体エレメント(22)を有している排ガス加熱ユニットにおいて、
前記少なくとも1つの導電性の熱導体エレメント(22)は、湾曲された面状帯材料(48)から形成されており、
前記少なくとも1つの熱導体エレメント(22)は波状の構造を有して形成されており、
前記少なくとも1つの熱導体エレメント(22)を予め規定された位置で支持する支持体構造(54)が設けられており、
前記支持体構造(54)は、前記少なくとも1つの熱導体エレメント(22)の前記波状の構造の波頭領域(34)の間に係合する位置決め突起(74)を備えた少なくとも1つの支持体エレメント(78;80,82;84;86)を含み、または前記支持体構造(54)は、前記少なくとも1つの熱導体エレメント(22)の前記波状の構造の波頭領域(34)を受容する位置決め凹部(76)を備えた少なくとも1つの支持体エレメント(78;80,82;84;86)を含み、または前記支持体構造(54)は、前記少なくとも1つの熱導体エレメント(22)の波頭領域(34)における位置決め凹部(84,86)内に係合する少なくとも1つの支持体エレメント(80,82)を含む、ことを特徴とする、排ガス加熱ユニット。
【請求項2】
前記少なくとも1つの熱導体エレメント(22)は、排ガス主流方向(H)に対して実質的に平行に配置された幅面(42)と、前記排ガス主流方向(H)に対して実質的に垂直に配置された端面(44)とを有しており、前記熱導体エレメント(22)の前記幅面(42)の幅方向(B)における延在長さ(b)は、10mm~20mmの範囲にあり、または前記熱導体エレメント(22)の前記端面(44)の厚さ方向(D)における延在長さ(d)は、0.05mm~0.2mmの範囲にあり、または前記熱導体エレメント(22)の前記端面(44)の前記厚さ方向(D)における前記延在長さ(d)の、前記熱導体エレメント(22)の前記幅面(42)の前記幅方向(B)における前記延在長さ(b)に対する比は、0.002~0.025の範囲にあり、または前記面状帯材料(48)は、金属材料または導電性セラミック材料であって、または前記面状帯材料(48)は、排ガスによる周囲の流過のために電気絶縁性ではない表面を提供しており、または前記少なくとも1つの熱導体エレメント(22)は、長さ端部領域(24,30)で、電圧源と電気接続するように形成されている、請求項1記載の排ガス加熱ユニット。
【請求項3】
前記少なくとも1つの熱導体エレメント(22)は、互いに隣接して延在し、かつ互いに対して電気的に絶縁されて配置されている熱導体エレメント長さ領域(26,28;70)を含む、請求項1または2記載の排ガス加熱ユニット。
【請求項4】
前記少なくとも1つの熱導体エレメント(22)は螺線状の延在で配置されていて、互いに隣接して延在する前記熱導体エレメント長さ領域(26,28)は、螺旋の中心(Z)に関して互いに半径方向で隣接して延在する螺旋区分によって形成されている、請求項記載の排ガス加熱ユニット。
【請求項5】
前記少なくとも1つの熱導体エレメント(22)はメアンダ状の延在で配置されていて、互いに隣接して延在する前記熱導体エレメント長さ領域(70)は、移行領域(72)で互いに接続される、互いに隣接して延在するメアンダ区分によって形成されている、請求項記載の排ガス加熱ユニット。
【請求項6】
互いに隣接して延在する前記熱導体エレメント長さ領域(26,28;70)は、前記熱導体エレメント長さ領域の間に中間スペースを維持することにより、互いに対して電気的に絶縁されていて、または互いに隣接して延在する前記熱導体エレメント長さ領域(26,28;70)は、前記熱導体エレメント長さ領域の間に、電気絶縁性の、好適には面状帯状の材料(40)を配置することにより、互いに対して電気的に絶縁されている、請求項からまでのいずれか1項記載の排ガス加熱ユニット。
【請求項7】
湾曲された面状帯材料から成る、互いに対して電気的に絶縁されて配置された複数の熱導体エレメント(22a,22b;22a,22b,22c,22d;22a,22b,22c,22d,22e,22f)が設けられている、請求項1からまでのいずれか1項記載の排ガス加熱ユニット。
【請求項8】
前記熱導体エレメント(22a,22b;22a,22b,22c,22d;22a,22b,22c,22d,22e,22f)の少なくとも一部は、互いに電気的に並列に接続されている、請求項記載の排ガス加熱ユニット。
【請求項9】
前記熱導体エレメント(22a,22b;22a,22b,22c,22d)は、螺旋中心(Z)を起点として、螺線状の延在を有するように互いに隣接して配置されており、これにより前記熱導体エレメント(22a,22b;22a,22b,22c,22d)は、互いに隣接する螺旋アームを形成する、請求項または記載の排ガス加熱ユニット。
【請求項10】
前記熱導体エレメント(22a,22b,22c,22d,22e,22f)は、実質的にまっすぐ縦に延在する、互いに隣接して延びる熱導体エレメント長さ領域を形成する、請求項または記載の排ガス加熱ユニット。
【請求項11】
前記熱導体エレメント(22a,22b;22a,22b,22c,22d;22a,22b,22c,22d,22e,22f)は、前記熱導体エレメントの間に中間スペースを維持することにより、互いに対して電気的に絶縁されていて、または前記熱導体エレメント(22a,22b;22a,22b,22c,22d;22a,22b,22c,22d,22e,22f)は、前記導体エレメントの間に、電気絶縁性の、好適には面状帯状の材料(40)を配置することにより、互いに対して電気的に絶縁されている、請求項から10までのいずれか1項記載の排ガス加熱ユニット。
【請求項12】
前記支持体構造(54)は、前記少なくとも1つの熱導体エレメント(22)の前記波状の構造の波頭(34)の間に延在する波面状区分(42)に保持される少なくとも1つの支持体エレメント(88,90;92,94;100,102)を含む、請求項1から11までのいずれか1項記載の排ガス加熱ユニット。
【請求項13】
前記少なくとも1つの支持体エレメント(88,90)は、前記波面状区分(42)を貫通しており、または前記少なくとも1つの支持体エレメント(92,94;100,102)は、前記少なくとも1つの熱導体エレメント(22)の端面(44)に、前記波面状区分(42)の領域で支持されている、請求項12記載の排ガス加熱ユニット。
【請求項14】
前記支持体構造(54)は、前記少なくとも1つの熱導体エレメント(22)の端面(44)に配置される少なくとも1つの支持体エレメント(62)を含み、前記支持体エレメントは、好適には星形の構造に配置される複数の支持体アーム(64)を備える、請求項から13までのいずれか1項記載の排ガス加熱ユニット。
【請求項15】
前記支持体構造(54)は電気絶縁性材料(40)を含む、請求項6または11、または請求項6または11を引用する請求項12から14までのいずれか1項記載の排ガス加熱ユニット。
【請求項16】
前記少なくとも1つの熱導体エレメント(22)は、少なくとも所定の領域で、触媒効果のある材料(104)によって被覆されている、請求項1から15までのいずれか1項記載の排ガス加熱ユニット。
【請求項17】
好適にはプラチナまたはパラジウムまたはロジウムを含む、前記触媒効果のある材料(104)は、三元触媒機能を提供し、または好適には酸化チタンまたは酸化ジルコニウムまたは酸化アルミニウムを含む、前記触媒効果のある材料(104)は、加水分解触媒機能を提供し、または好適には、プラチナまたはパラジウムまたはバリウムを含む、前記触媒効果のある材料(104)は、窒素酸化物蓄積触媒機能を提供し、または好適にはプラチナまたはパラジウムを含む、前記触媒効果のある材料(104)は、ディーゼル酸化触媒機能を提供し、または好適には鉄ゼオライトまたは銅ゼオライトまたはバナジウム酸化物を含む、前記触媒効果のある材料(104)は、SCR触媒機能を提供する、請求項16記載の排ガス加熱ユニット。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか1項記載の少なくとも1つの排ガス加熱ユニット(10)を含む、内燃機関のための排ガス装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つの排ガス加熱ユニット(10)は、少なくとも1つの排ガス処理ユニット(14)、好適には触媒ユニットまたはパティキュレートフィルタユニットの上流に配置されている、請求項18記載の排ガス装置。
【請求項20】
前記少なくとも1つの排ガス加熱ユニット(10)の少なくとも1つの熱導体エレメント(22)の、幅方向(B)で延在する幅面(42)は、排ガス主流方向(H)に対して実質的に平行に配置されていて、厚さ方向で延在する端面(44)は、前記排ガス主流方向(H)に対して実質的に垂直に配置されている、請求項18または19記載の排ガス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排ガス装置用の排ガス加熱ユニットであって、内燃機関の運転の特に始動段階で、排ガス温度が比較的低い状態で、もしくは排ガス装置内に排ガス処理のために配置されたシステム領域、例えば触媒ユニットまたはパティキュレートフィルタユニットの温度が比較的低い状態で、排ガス装置内を流れる排ガスに、ひいては、このような排ガス加熱ユニットの下流に配置されたシステム領域にも、熱を伝達することができる排ガス加熱ユニットに関する。このような形式の排ガス加熱ユニットにより、内燃機関の運転の始動段階で、排ガス処理のために、もしくは排ガス中の有害物質の割合を減じるために設けられたシステム領域の十分に高い温度に達するまでの時間を短縮することができ、したがって内燃機関の運転の始動段階における有害物質の放出を減じることができる。
【0002】
このような排ガス加熱ユニットは、独国特許出願公開第102019107384号明細書により公知である。この排ガス加熱ユニットは、実質的に円形の横断面を有するジャケット熱導体を含んでおり、このジャケット熱導体は、ジャケットに電気的に絶縁されて保持される、ワイヤ状の熱導体エレメントを備える。例えば、金属材料から形成されるジャケットには、湾曲された面状帯材料から形成される熱伝達面状エレメントが取り付けられ、この熱伝達面状エレメントは、波状の構造を有していて、波状の構造の波頭の間に位置する波面状領域で、ジャケット熱導体によって貫通されていて、熱伝達のためにそのジャケットに結合されている。波状の構造で形成された熱伝達面状エレメントであって、排ガス流内で、その端面が排ガス主流方向に対して実質的に垂直に配置されており、その幅面は、排ガス主流方向に対して実質的に平行に配置されている熱伝達面状エレメントの形成により、大きな表面積が熱伝達のために提供される。この表面積は、ジャケット熱導体のジャケットに結合され波状の構造で形成される熱伝達面状エレメントを備えたジャケット熱導体が、螺線状に巻き付けられた延在を有し、これにより、熱伝達面状エレメントの下部構造を提供する波状の構造に、螺線状の構造が重畳することにより、さらに大きくなる。
【0003】
本発明の課題は、改善された熱伝達能力を備える排ガス加熱ユニットを提供することである。
【0004】
本発明によれば、この課題は、少なくとも1つの導電性の熱導体エレメントを含む、内燃機関の排ガス装置用の排ガス加熱ユニットにより解決される。排ガス加熱ユニットでは、少なくとも1つの導電性の、加熱作動時に電流が流れる熱導体エレメントが、湾曲された面状帯材料から形成されている。
【0005】
本発明により形成された排ガス加熱ユニットでは、電流が流れる熱導体エレメント自体が、湾曲された面状帯材料から形成されており、したがってこれにより、加熱作動時に排ガスが直接周囲を流れることができる大きな熱伝達面積が提供される。このような形式の構成では、付加的に加熱すべき構成要素、例えばジャケット、またはこのようなジャケットを熱導体エレメントに対して絶縁する材料が回避されていて、したがって、排ガスが周囲を流れ、これにより排ガスに直接接触する、電流が流れる構成要素自体が、すなわち熱導体エレメント自体が、大きな表面積を提供するジオメトリで形成されているので、極めて僅かな熱慣性を有する。
【0006】
熱伝達のために利用可能なもしくは設けられる大きな表面積を得るためには、少なくとも1つの熱導体エレメントが、排ガス主流方向に対して実質的に平行に配置された幅面と、排ガス主流方向に対して実質的に垂直に配置された端面とを有しており、熱導体エレメントの幅面の幅方向における延在長さは、10mm~20mmの範囲にあり、かつ/または熱導体エレメントの端面の厚さ方向における延在長さは、0.05mm~0.2mmの範囲にあり、かつ/または熱導体エレメントの端面の厚さ方向における延在長さの、熱導体エレメントの幅面の幅方向における延在長さに対する比は、0.002~0.025の範囲にあることが提案される。
【0007】
電圧をかけることによって、熱導体エレメントを加熱するために、面状帯材料は、金属材料または導電性セラミック材料であってよい。さらに熱伝達能力は、面状帯材料が、排ガスによる周囲の流過のために電気的に絶縁されていない表面を提供していることによりさらに改善される。少なくとも1つの熱導体エレメントは、長さ端部領域で、電圧源と電気接続するように形成されていてよい。
【0008】
大きな熱伝達面積を提供するために、さらに、少なくとも1つの熱導体エレメントは波状の構造で形成されていてよい。本発明の概念では、波状の構造は、例えば、ほぼ正弦波状の、ジグザグ状の、鋸歯状の、または同様の形成された延在によって形成されており、このような延在は、湾曲状のまたはエッジ状の波頭と、これらの波頭の間に位置する、ほぼ直線状の、例えば互いに平行に延在する、または少なくとも所定の領域で湾曲して延在する波面状領域とを備えている。波状の構造を提供するこのような形式の延在は、周期的に繰り返す波パターンを提供することができるが、少なくとも1つの熱導体エレメントの様々な領域で少なくとも変化する波長を、すなわち波頭の間で変化する間隔を有する波パターンを有していてもよい。少なくとも1つの熱導体エレメントのこのような波状の構造は、熱導体エレメントのより大きな、もしくは上位の構造、例えば後述する螺線状の構造、またはメアンダ状の構造を重畳させることができる下部構造を形成する。
【0009】
少なくとも1つの熱導体エレメントが、外部に向かって露出している導電性の表面を有しているが、それにもかかわらず、排ガスが貫流することができる横断面を極めて効率的に熱導体エレメントによってカバーすべき場合には特に、少なくとも1つの熱導体エレメントが、互いに隣接して延在し、かつ互いに対して電気的に絶縁されて配置された熱導体エレメント長さ領域を含んでいると、短絡を回避するために好適である。
【0010】
例えば、排ガスが貫流することができる利用可能な横断面の効率的な利用は、少なくとも1つの熱導体エレメントが螺線状の延在で配置されていて、互いに隣接して延在する熱導体エレメント長さ領域は、螺旋の中心に関して互いに半径方向で隣接して延在する螺旋区分によって形成されていることにより達成することができる。
【0011】
代替的な実施形態では、このために、少なくとも1つの熱導体エレメントがメアンダ状の延在で配置されていて、互いに隣接して延在する熱導体エレメント長さ領域は、移行領域で互いに接続される、互いに隣接して延在するメアンダ区分によって形成されていることが想定されてよい。
【0012】
互いに隣接して延在する熱導体エレメント長さ領域が、これらの熱導体エレメント長さ領域の間に中間スペースを維持することにより互いに対して電気的に絶縁されていて、かつ/または互いに隣接して延在する熱導体エレメント長さ領域が、これらの熱導体エレメント長さ領域の間に、電気絶縁性の、好適には面状帯状の材料を配置することにより互いに対して電気的に絶縁されていることにより、電気絶縁性は簡単に実現可能であると同時に効率的に機能するように提供され得る。
【0013】
加熱すべき排ガスへの熱の効率的な伝達は、本発明のさらなる構成によれば、湾曲された面状帯材料から成る、互いに対して電気的に絶縁されて配置された複数の熱導体エレメントが設けられていることにより達成され得る。
【0014】
この場合、熱導体エレメントの少なくとも一部は、互いに電気的に並列に接続されていてよい。
【0015】
例えば互いに電気的に並列に接続された複数の熱導体エレメントを使用する場合も、これらの熱導体エレメントは、螺旋中心を起点として、螺線状の延在を有するように互いに隣接して配置されていてよく、これにより熱導体エレメントは、互いに隣接する螺旋アームを形成することができる。
【0016】
代替的な配置では、熱導体エレメントは、実質的にまっすぐ縦に延在する、互いに隣接して延びる熱導体エレメント長さ領域を形成することができる。
【0017】
個々の熱導体エレメントの間の電気的短絡を阻止するために、熱導体エレメントが、これら熱導体エレメントの間に中間スペースを維持することにより、互いに対して電気的に絶縁されていて、かつ/または熱導体エレメントが、これら熱導体エレメントの間に、電気絶縁性の、好適には面状帯状の材料を配置することにより、互いに対して電気的に絶縁されていることが提案される。この関連では、熱導体エレメントが、電圧源への接続のために形成されているところでは勿論、熱導体エレメントが、例えば並列接続または直列接続により、互いに導電的に接続されていてよいことが指摘される。電気的なコンタクトのために設けられている領域の間に、例えば、熱導体エレメントの各長さ領域の間に位置する長さ領域では、これらの長さ領域は、接続領域の間に位置する長さ領域における短絡を阻止するために、例えば上記の措置により互いに対して電気的に絶縁されている。
【0018】
排ガス流内における規定の位置決めのために、少なくとも1つの熱導体エレメントを予め規定された位置で支持する支持体構造が設けられていてよい。
【0019】
このために、例えば、支持体構造は、少なくとも1つの熱導体エレメントの波状の構造の波頭領域の間に係合する位置決め突起を備えた少なくとも1つの支持体エレメントを含んでいてよく、かつ/または支持体構造は、少なくとも1つの熱導体エレメントの波状の構造の波頭領域を受容する位置決め凹部を備えた少なくとも1つの支持体エレメントを含んでいてよく、かつ/または支持体構造は、少なくとも1つの熱導体エレメントの波頭領域における位置決め凹部内に係合する少なくとも1つの支持体エレメントを含んでいてよい。
【0020】
代替的にまたは付加的に、規定の位置決めを設定するために、もしくは維持するために、支持体構造は、少なくとも1つの熱導体エレメントの波状の構造の波頭の間に延在する波面状区分に保持される少なくとも1つの支持体エレメントを含むことが想定されてよい。
【0021】
この場合、少なくとも1つの支持体エレメントが、波面状区分を貫通することができる。代替的にまたは付加的に、少なくとも1つの支持体エレメントが、少なくとも1つの熱導体エレメントの端面に、波面状区分の領域で支持されていてよい。
【0022】
さらに、規定の位置決めを補助するために、支持体構造は、少なくとも1つの熱導体エレメントの端面に配置される少なくとも1つの支持体エレメントを含んでいてよく、この支持体エレメントは、好適には星形の構造に配置される複数の支持体アームを備える。好適には、このような形式の支持体エレメントは、少なくとも1つの熱導体エレメントの流入側および流出側の両方に配置されている。
【0023】
コンパクト、かつ構造的に簡単に実現すべき構成のために、支持体構造は、電気絶縁性の材料を含んでいてよい。
【0024】
内燃機関の有害物質の放出の低減における効率をさらに高めるために、少なくとも1つの熱導体エレメントが、少なくとも所定の領域で、触媒効果のある材料によって被覆されていることが提案される。このような触媒効果のある材料を少なくとも1つの熱導体エレメントに設けることにより、一方では、熱導体エレメントの表面が、排ガス流内で、有害物質の放出を低減するために寄与する触媒反応の実施のために付加的に利用される。他方では、電流が流れる加熱エレメントに、触媒効果のある材料が直接設けられていることにより、少なくとも1つの熱導体エレメントに設けられたこの触媒効果のある材料が、内燃機関の運転の始動段階で既に、少なくとも1つの熱導体エレメントの電気的励起のもとで加熱され、これにより、この材料により提供される触媒反応を、少なくとも1つの熱導体エレメントの励起開始後すぐに、すなわち少なくとも1つの熱導体エレメントに電圧を加えた直後に開始させることができ、排ガス流内で後続の排ガス処理ユニットが触媒反応の実施のために必要な温度にまだ達していない作動段階でも既に、排ガス加熱ユニット内では、有害物質の放出の低減のために寄与することができる。
【0025】
このために例えば、好適にはプラチナおよび/またはパラジウムおよび/またはロジウムを含む、触媒効果のある材料は、三元触媒機能を提供し、かつ/または好適には酸化チタンおよび/または酸化ジルコニウムおよび/または酸化アルミニウムを含む、触媒効果のある材料は、加水分解触媒機能を提供し、かつ/または好適には、プラチナおよび/またはパラジウムおよび/またはバリウムを含む、触媒効果のある材料は、窒素酸化物蓄積触媒機能を提供し、かつ/または好適にはプラチナおよび/またはパラジウムを含む、触媒効果のある材料は、ディーゼル酸化触媒機能を提供し、かつ/または好適には鉄ゼオライトおよび/または銅ゼオライトおよび/またはバナジウム酸化物を含む、触媒効果のある材料は、SCR触媒機能を提供することが想定されてよい。
【0026】
本発明はさらに、少なくとも1つの本発明により形成された排ガス加熱ユニットを含む、内燃機関のための排ガス装置に関する。
【0027】
排ガス加熱ユニットによって、排ガス加熱ユニットの周囲を流れる排ガスに導入される熱を効率的に利用することができるように、少なくとも1つの排ガス加熱ユニットが、少なくとも1つの排ガス処理ユニット、好適には触媒ユニットおよび/またはパティキュレートフィルタユニットの上流に配置されていることが提案される。
【0028】
本発明により形成される排ガス加熱ユニットの少なくとも1つの熱導体エレメントによって提供される比較的大きな熱伝達表面積を、できるだけ小さい流れ抵抗のもとで、熱伝達のために効率的に利用することができるように、少なくとも1つの排ガス加熱ユニットの少なくとも1つの熱導体エレメントの、幅方向で延在する幅面は、排ガス主流方向に対して実質的に平行に配置されていて、厚さ方向で延在する端面は、排ガス主流方向に対して実質的に垂直に配置されていることが提案される。
【0029】
以下に本発明を添付の図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】面状帯材料から形成される熱導体エレメントを備えた排ガス加熱ユニットを示す平面図である。
図2図1による排ガス加熱ユニットを備えた、内燃機関のための排ガス装置の一部を示す図である。
図3】支持体構造内に配置された図1による排ガス加熱ユニットを示す斜視図である。
図4】代替的に形成された排ガス加熱ユニットを示す、図1に相当する図である。
図5】代替的に形成された排ガス加熱ユニットを示す、図1に相当するさらなる図である。
図6】面状帯材料により形成された2つの熱導体エレメントを備えた、代替的に形成された排ガス加熱ユニットを示す、図1に相当するさらなる図である。
図7】面状帯材料によって形成された4つの熱導体エレメントを備えた、図6に示した実施形態の変化態様を示す図である。
図8】メアンダ状の延在で配置されている、波状の構造で形成された熱導体エレメントを備えた排ガス加熱ユニットの代替的な構成形式を示す図である。
図9】波状の構造を有した、互いに隣接して位置する、実質的にまっすぐに延在する複数の熱導体エレメントを備えた排ガス加熱ユニットを示す図である。
図10】面状帯材料からの熱導体エレメントの製造を示す図である。
図11】電気絶縁性材料によって互いに分離された2つの熱導体エレメント長さ領域を示す図である。
図12】支持体構造の一部を成す電気絶縁性材料によって互いに分離された2つの熱導体エレメント長さ領域を示す、図11に相当する図である。
図13図12の電気絶縁性材料の一部を示す斜視図である。
図14】支持体構造の一部を成す、熱導体エレメント長さ領域の間に、または熱導体エレメントの間に配置すべき電気絶縁性材料の一区分を示す斜視図である。
図15】支持体構造の一部を成す、2つの熱導体エレメント長さ領域の間に配置された電気絶縁性材料を有する2つの熱導体エレメント長さ領域を示す図である。
図16】支持体構造の一部によって形成された電気絶縁性材料の代替的な構成形式を示す図14に相当する図である。
図17図16の電気絶縁性材料の横断面図である。
図18】螺線状に延在する熱導体エレメントのための支持体構造を端面から見た図である。
図19】波状の構造を有する熱導体エレメントの一部と、波頭の領域でこの波頭と協働する支持体エレメントとを示す図である。
図20図19に示した装置の変化態様を示す側面図である。
図21図19に示した構成形式の変化態様を示す図である。
図22】波状の構造で形成された熱導体エレメントを、この熱導体エレメントの波面状領域を貫通する、支持体構造の支持体エレメントと共に示す図である。
図23】波状の構造を有する熱導体エレメントと、この熱導体エレメントの端面に形成された、支持体構造の支持体エレメントを受容するための凹部とを示す図である。
図24図23に示された熱導体エレメントを、端面に形成された凹部内に係合する支持体エレメントと共に示す図である。
図25】端面の領域に設けられた、支持体エレメントのための結合突起を備えた熱導体エレメントを示す図である。
図26図25の熱導体エレメントを、その端面に配置された支持体エレメントと共に示す図である。
【0031】
図1には、全体に符号10が付与された排ガス加熱ユニットの平面図が示されており、この排ガス加熱ユニットは、図2に部分的に示された、内燃機関の排ガス装置12内に、例えば触媒ユニットとして、またはパティキュレートフィルタユニットとして形成された排ガス処理ユニット14の上流に配置されていてよい。排ガス処理ユニット14と同様に、排ガス加熱ユニット10は、排ガス装置12における、例えば管状の、またはケーシング状に形成された排ガス案内構成要素16で支持することができ、この場合、排ガス案内構成要素16において排ガス主流方向Hで、排ガス処理ユニット14へと流入すべき排ガスが、まずは、排ガス加熱ユニット10を貫流し、そこで、排ガス加熱ユニット10の加熱作動時に熱を吸収して、この熱をこの排ガスが排ガス処理ユニット14内へともたらすように支持されている。
【0032】
図2に示された実施例では、排ガス処理ユニット14はSCR触媒ユニットとして形成されていて、この排ガス処理ユニットもしくは排ガス加熱ユニット10の上流にはインジェクタ18が設けられていて、このインジェクタによって反応媒体20が、例えば尿素/水溶液が、排ガス流内に、特に排ガス加熱ユニット10にも導入される。
【0033】
内燃機関の運転中、この運転の少なくとも始動段階で、内燃機関から放出される比較的まだ低温の排ガスを、この排ガスが排ガス処理ユニット14を貫流する前に加熱するために、排ガス加熱ユニット10が作動させられる。これにより、排ガスによって熱が排ガス処理ユニット14内へともたらされるので、排ガス処理ユニットは、内燃機関の運転開始時であっても、比較的迅速に加熱され、排ガス処理ユニット内における所定の触媒反応の実施のために必要な温度に達する。図2に示された構成では、反応媒体も、排ガス加熱ユニット10の上流で、排ガス流内に、例えば、排ガス加熱ユニット10に向けて直接、導入されるので、この反応媒体20も、まだ排ガス温度が比較的低い状態で、排ガス加熱ユニット10で加熱され、したがって、著しく蒸発するので、排ガス処理ユニット14の上流で、排ガスと反応媒体20との混合が促進される。
【0034】
代替的に、インジェクタ18は、燃料、すなわち、炭化水素を、排ガス加熱ユニット10の上流で、排ガス流内に導入するように設けられていてもよい。排ガス加熱ユニット10の、加熱作動時に加熱される表面では、炭化水素が状態変化し、この際に、付加的な反応熱が放出されるので、排ガス加熱ユニット10の領域で提供される加熱出力をさらに高めることができる。燃料の、すなわち炭化水素の噴射は、勿論、SCR触媒ユニットとして形成された排ガス処理ユニット14とも組み合わされて行われてよく、これにより排ガス処理ユニットをできるだけ迅速に作動温度にもたらすこともできる。
【0035】
図1に示された排ガス加熱ユニット10は、湾曲された面状帯材料から形成される熱導体エレメント22を含む。熱導体エレメント22は、排ガスが周囲を流れることができる大きな表面積を提供するために、波状もしくはメアンダ状の構造で形成されていて、この波状の構造に重畳する螺線状の延在を有している。したがって、螺線状の延在の個々の螺旋区分によって提供される、半径方向で互いに隣接する、熱導体エレメント長さ領域26,28が生じる。螺旋中心Zの近傍に位置する長さ端部領域24、および螺線状の延在の外側の端部を成す長さ端部領域30では、排ガス流の外側に配置された電圧源と電気的に接続するための端子またはライン領域をそれぞれ備えた導電性の熱導体エレメント22が形成されている。このために、図2に示したように、排ガス加熱ユニット10のためのケーシングを同様に提供することができる、排ガス加熱ユニット10を収容する排ガス案内構成要素16には、このような電気的な接続ラインのためのフィードスルー32が設けられている。
【0036】
熱導体エレメント22の波状の構造により、熱導体エレメントは、その長さ端部領域24,30の間に、熱導体エレメント22の長さ方向で相前後して連続する、例えば湾曲領域または縁部領域によって形成され得る複数の波頭34を有している。このような形式のそれぞれ2つの波頭34の間には波面状領域38が位置していて、この波面状領域で熱導体エレメント22は、その延在においてこの領域に続く両波頭34の間で、例えばほぼまっすぐに延在することができる、または少なくとも所定の領域で湾曲されてもよい。
【0037】
電圧をかけることにより電流がそれ自体に流れる熱導体エレメント22は、金属材料、例えば、Fe/Cr/Al合金、またはアルミニウム含有量が2%を超える特殊鋼によって構成することができ、これにより高温熱導体を提供することができる。導電性セラミック材料による熱導体エレメント22の構成も可能である。
【0038】
互いに隣接して延在する熱導体エレメント長さ領域26,28を互いに電気的に絶縁状態に保持し、これにより電気接触のために設けられた長さ端部領域24,30の間の領域における短絡を阻止するために、互いに隣接す熱導体エレメント長さ領域26,28の間には、電気絶縁性材料40を配置することができる。この電気絶縁性材料も、面状帯材料から、例えば耐熱性のプラスチック材料、または電気絶縁性のセラミック材料から構成することができ、波状の構造を有する熱導体エレメント22の螺線状の延在に適合されている。
【0039】
図11に示されているように、熱導体エレメント22の熱導体エレメント長さ領域26,28は、波頭34の領域で、電気絶縁性材料40に当接しているので、互いに隣接する熱導体エレメント長さ領域26,28の相互接触は生じ得ない。
【0040】
図11により、面状帯材料から形成され、面状帯材料を曲げることにより波状の形状にされた熱導体エレメント22は、実質的に排ガス主流方向Hに相当する幅方向Bで延在する、熱導体エレメントの幅面42で、排ガス主流方向Hに対して実質的に垂直に向けられた端面44よりも著しく大きな延在長さbを有していることもわかる。例えば、熱導体エレメント22は、厚さ方向Dにおける端面44の延在長さdは、0.05mm~0.2mmの範囲で形成されていてよく、幅方向Bにおける幅面42の延在長さbは、10mm~20mmの範囲にあってよい。好適には、厚さ方向Dにおける延在長さdの、幅方向Bにおける延在長さbに対する比は、0,002~0.0025の範囲にある。互いに直接隣接する波頭の相互間隔は、例えば1~4mm範囲にあってよい。
【0041】
面状帯材料により構成されるこのような熱導体エレメント22は、例えば、図10に概略的に示した装置46によって製造することができ、この装置は、その間に面状帯材料48を受容する2つの成形ロール49,50を有している。これらの成形ロール49,50を通過する際に、面状帯材料48には変形領域52が形成され、これにより、予め規定された曲率半径に応じて、波頭34は、円弧状の湾曲領域として残る、または鋭角的に変形される場合は、エッジ領域として残る。したがって、面状帯材料48の変形により、波状の構造の特徴は、例えばジグザグ構造として、または程度の差はあるにせよ正弦波状の構造として、規定することができる。変形領域52の形成後、面状帯材料48は圧縮されて、変形領域52の間に、もしくは変形領域によって提供される波頭34の間に位置する波面状領域38は互いにほぼ平行に延在し、したがって、熱導体エレメント22の波状のメアンダ状の構造が維持される。
【0042】
このように構成された熱導体エレメント22が排ガス装置12内に組み込まれた状態では、電流を通す構成部分、すなわち熱導体エレメント22のすぐ周囲を、加熱すべき排ガス流が流れるので、排ガス流への効率的な熱伝達が保証され、この場合、面状帯材料から成る熱導体エレメント22の構成に基づき、熱導体エレメントは、排ガス流に熱を伝達するために大きな表面積を提供する。さらに、熱導体エレメント22は、その端面44が、排ガス主流方向Hに対して実質的に垂直に向けられるように、したがって幅面42は、排ガス主流方向Hに対して実質的に平行に延在するように、排ガス流内に組み込まれているので、熱導体エレメント22は、熱伝達のために使用されるその大きな表面積にもかかわらず、比較的僅かな流れ抵抗しか生じさせない。僅かな流れ抵抗のためには、電気絶縁性材料40が同様に、面状帯材料として設けられ、その端面が、排ガス主流方向に対して垂直に向けられていることも寄与している。
【0043】
電気的絶縁のための代替的な構成では、互いに隣接する熱導体エレメント長さ領域の間の電気絶縁性材料40の代わりに、排ガスによって貫流可能なギャップ状の中間室が残されていてよく、これにより流れ抵抗をさらに減じることができる。このような間隔は、例えば1~2mm範囲にあってよい。同様に、互いに隣接する波面状領域38の間隔を、1~2mmの範囲にすることができるので、各熱導体エレメント長さ領域の内側でも、電気的短絡の発生は阻止されている。
【0044】
図3には、熱導体エレメントを規定の位置に保持するもしくは支持する支持体構造54への熱導体エレメント22の組込みが示されている。支持体構造は、電気的短絡を阻止するために、電気絶縁性材料によって構成されている、または被覆されている。支持体構造54は、管状のもしくは円筒状のケーシング56を含み、このケーシングは、螺線状に巻取られた熱導体エレメント22を外側から取り囲んでいる。ケーシング56は、その内部に配置された熱導体エレメント22と共に、排ガス装置12の排ガス案内構成要素16内に組み込むことができる、または排ガス案内構成要素16自体によって形成することができる。排ガス主流方向Hで見て、熱導体エレメント22の少なくとも一方の側に、好適には両方の側に、すなわち、流入側58および流出側60に、支持体構造54は、星形のもしくは十字型の構造で形成された支持体エレメント62を有しており、この支持体エレメントは、ケーシング56の長手方向中心軸線に関して半径方向内側で互いに接続される複数の支持体アーム64を含んでいる。半径方向外側の領域では、これらのアームはケーシング56に堅固に結合されている。流入側58および流出側60に配置された支持体エレメント62の間で、熱導体エレメント22は、例えば電気絶縁性材料40によって互いに電気的に絶縁されて保持された熱導体エレメント長さ領域26,28で規定の位置に保持されている。支持体エレメント62の支持体アーム64もしくは支持体エレメント62は、その端面もしくは狭幅側が、排ガス主流方向Hに対して垂直に向けられるように配置されているので、支持体エレメントも僅かな流れ抵抗しかもたらさない。
【0045】
図4には、図1の示した構成形式の変化例が示されており、この変化例では、波の高さが、長さ端部領域30の方向に向かって減じられているので、螺線状に巻かれる形態にもたらされる、基本的には波構造を有した熱導体エレメント22は、その全体においてほぼ円形の外周面輪郭を形成し、したがって、例えば同じく円形のケーシング56内にもしくは排ガス案内構成要素16内に組み込まれた状態では、排ガスと熱導体エレメント22との間で熱相互作用が生じない流れ横断面の領域は実質的に残らない。外部に向かって、完全な電気絶縁性を達成するために、電気絶縁性材料40が、熱導体エレメント22をその長さ端部領域30で完全にカバーしていて、これにより外周面で、電気絶縁性材料40の完全に閉じたリングが形成されている。長さ端部領域24,30では、上述したように、熱導体エレメント22の電気的接触が行われ、この場合、例えば長さ端部領域24にはマイナス極が位置していてよく、長さ端部領域30にはプラス極が位置していてよい。
【0046】
図5に示された構造では、長さ端部領域24,30の間で延在する熱導体エレメント22は、基本的には螺線状に巻き付けられる延在を有しているが、螺旋中心Zを起点として、互いに逆方向に巻き付けられる2つの螺旋アーム66,68を形成している。これらの螺旋アームの間には、既に上述した電気絶縁性材料が延在している。
【0047】
今や、半径方向外側に位置する両長さ端部領域24,30では、熱導体エレメント22はこの場合も減少する波高さを有することができるので、やはりほぼ円形のまたは楕円形の横断面が得られ、このような横断面によって、熱導体エレメント22は、排ガス案内構成要素16のケーシング56の横断面ジオメトリに適合することができる。螺旋中心Zの領域には電気的な接触の必要がないので、このような接触を提供する電気的ラインを、排ガス流を通して半径方向内側に向かって螺旋中心Zへと通す必要もない。
【0048】
熱導体エレメントの上述した構成では、1つだけの熱導体エレメント22が、排ガスにより貫流可能な横断面全体をカバーしている。これにより、波状の構造によっても形成される熱導体エレメントの長さが比較的長いいことにより、熱導体エレメントの電気抵抗は比較的大きくなる。したがって、高い熱出力が必要な場合は、このような構成において、熱導体エレメント22を、例えば約0.2mmの比較的大きな延在長さdを厚さ方向Dで有するように形成することが好適である。
【0049】
熱導体エレメント22のこのような比較的大きな厚さは、それ自体回避すべき比較的大きな熱慣性にも通ずるので、図6に示した実施例では、それぞれ1つの螺旋アーム66,68を形成する2つの熱導体エレメント22a,22bを備えた構造を設けることができる。両熱導体エレメント22a,22bのそれぞれは、図5の構造と比較して、それぞれ半径方向内側に位置する長さ端部領域24a,24bと、それぞれ半径方向外側に位置する長さ端部領域30a,30bとの間に半分の長さしか有していない。したがって、半径方向内側に位置する接点と、半径方向外側に位置する接点との間で、両熱導体エレメント22a,22bのそれぞれの電気抵抗は、図5に示した構成の半分であるので、各熱導体エレメント22a,22bにおいて、熱伝導のために使用可能な表面積が同じ場合には、比較的小さい電気抵抗が達成され、したがって、大きな加熱出力も実現することができる。
【0050】
このような構成をさらに発展させる構造が図7に示されており、この構造では、全部で4つの熱導体エレメント22a,22b,22c,22dが、互いを取り囲むように、もしくは互いに隣接して、かつ電気絶縁性材料40によって互いに分離されて配置されている。熱導体エレメント22a,22b,22c,22dのそれぞれは、それぞれ半径方向内側に位置する長さ端部領域24a,24b,24c,24dと、それぞれ半径方向外側に位置する長さ端部領域30a,30b,30c,30dとの間にさらに短い延在長さを有していて、したがってさらに小さい電気抵抗を有している。このような構成でも、電気的な接触は、一方では、螺旋中心Zの領域において半径方向内側に位置する長さ端部領域24a,24b,24c,24dで、他方では、半径方向外側に位置する長さ端部領域30a,30b,30c,30dで行われる。図6および図7に示されているように、複数の熱導体エレメントが設けられている場合には、特に半径方向外側での接触のために、それぞれ半径方向外側に位置する長さ端部領域30a,30b,30c,30dを、1つの接触リングに接続することができ、したがって共に1つの電圧源に接続することができる。
【0051】
例えば、図6および図7に示した互いに螺線状に巻き付く構造を備えた、別の、特に、奇数の熱導体エレメントを設けることもできることが指摘される。
【0052】
別の変化実施形態が図8に示されている。この図は、波状の構造で形成された熱導体エレメント22を示していて、この熱導体エレメントは、電気的接触のために設けられたその両長さ端部領域24,30の間に、メアンダ状の延在を有している。熱導体エレメント22は、実質的にまっすぐに延在しているが、それ自体波状の構造で形成された複数の熱導体エレメント長さ領域70を有しており、これらの領域はそれぞれ移行領域72で互いに接続されている。このような構成により、熱導体エレメント22を収容する、例えば、排ガス処理ユニット14も含む排ガス案内構成要素16によって提供されるケーシング56の流れ横断面に、特に、この流れ横断面が円形ではなく、例えば楕円形または平坦な円形の場合に、適合させることができる。このような構成でも、互いに直接隣接する熱導体エレメント長さ領域70は、電気絶縁性材料によって、または図8に示されたギャップ状の中間スペースによって、互いに分離することができる。
【0053】
このような構成でも、より大きな加熱出力を得るために、基本的により低い電気抵抗を提供するために、図9に示した構成では、ケーシング56内に複数の熱導体エレメント22a,22b,22c,22d,22e,22fを互いに隣接して配置することができる。長さ端部領域24a,24b,24c,24d,24e,24fは、互いに導電接続されていてよく、例えば、電圧源のプラス極に接続されていてよい。同様に、長さ端部領域30a,30b,30c,30d,30e,30fも互いに、かつ例えば、電圧源のマイナス極に導電接続されていてよく、これにより全部で6つの熱導体エレメント22a,22b,22c,22d,22e,22fが互いに並列に接続されていて、これらの熱導体エレメントのそれぞれは比較的小さい電気抵抗を提供する。このような構成でも、互いに直接隣接する熱導体エレメント22a,22b,22c,22d,22e,22fを、電気絶縁性材料40によって、またはギャップ状の中間スペースによって、互いに分離することができる。同様に、ケーシング56に隣接する領域では、熱導体エレメント22a,22b,22c,22d,22e,22fは、このような電気絶縁性材料によって取り囲まれていてよい。
【0054】
図12および図13には、2つの熱導体エレメント長さ領域、例えば、図1に示した熱導体エレメント22の熱導体エレメント長さ領域26,28の間に配置された電気絶縁性材料40の実施形態が示されている。上述した別の実施形態でも、2つの熱導体エレメント長さ領域の間に、または互いに隣接して配置された2つの熱導体エレメントの間に、このような電気絶縁性材料40を配置できることが指摘される。
【0055】
例えば、面状帯材料として提供されるこの電気絶縁性材料40は、互いに隣接して配置された熱導体エレメント長さ領域26,28の波頭34に対応配置された状態で、隣接する波頭34の間に係合する位置決め突起74を、もしくはこのような2つの位置決め突起74の間にそれぞれ1つの位置決め凹部76を有していることがわかる。同じ熱導体エレメント長さ領域26,28の互いに隣接するそれぞれ2つの波頭34の間に係合する位置決め突起74によって、もしくは波頭34を受容する位置決め凹部76によって、波頭の、したがって熱導体エレメント長さ領域26,28の規定の位置決めが保証され、これによりこのように構成された電気絶縁性材料40は、支持体構造54の支持体エレメント78を提供することができる。
【0056】
図13に示された実施形態では、位置決め突起74は、電気絶縁性材料40の幅方向で完全に連続的に形成されているが、図14に示された実施形態では、位置決め突起74のそれぞれは、電気絶縁性材料40の幅方向で互いに分離された2つの区分74a,74bによって形成されている。これは、特に圧力損失の低減に基づき、したがって流れ抵抗の低減のために有利である。さらにこれにより、各熱導体エレメント22の、熱伝達のために利用可能な表面積の比較的僅かな割合しか、位置決め突起74によって覆われない。
【0057】
熱導体エレメント22の規定の位置決めのために設けられ、支持体エレメント78を提供する電気絶縁性材料40のさらに代替的な構成が図15に示されている。この構成では、電気絶縁性材料40自体が波状の構造を有しており、したがって、その波頭によって各位置決め突起74が提供され、2つの波頭の間に位置する領域によって、熱導体エレメント22もしくは熱導体エレメント長さ領域26,28の波頭34を受容することができる位置決め凹部76が提供される。
【0058】
さらなる代替的な構成が、図16および図17に示されている。この場合、電気絶縁性材料40にはその両端面でフック状の位置決め突起74が形成されていて、これらの位置決め突起は、熱導体エレメントもしくはその熱導体エレメント長さ領域の端面に、波頭の領域で被さって、背後から係合し、これにより熱導体エレメントを規定の位置に保持する。
【0059】
図18には支持体構造54が示されており、この支持体構造は、一方では、例えば、図12図17に示したように形成されていてよい、したがって、互いに隣接して延在する熱導体エレメント長さ領域または熱導体エレメントの電気的絶縁のために役立つだけではなく、熱導体エレメントの波頭の規定の位置決めも規定する、熱導体エレメントの螺線状の延在のために形成されていて、支持体エレメント78を提供する電気絶縁性材料を含んでいる。さらに、支持体構造54は、好適には、流入側および流出側の両方に、支持体アーム64を備える十字型もしくは星形に形成された支持体エレメント62を含んでいる。支持体アーム64が電気絶縁性材料40に交差するもしくは交わるところで、これらを互いに結合させることができ、これにより1つ以上の熱導体エレメントを規定の位置決めで収容するケージ状の構造が規定される。例えば、このようなケージ状の構造のすべての構成部分は、電気絶縁性のセラミック材料から構成されてよく、ケージ状の構造は、少なくとも電気絶縁性材料40と、成形部品としての支持体エレメント62のうちの1つとを含むように形成され得る。
【0060】
熱導体エレメント22のための規定の位置決めもしくは電気絶縁性の設定のためのさらに代替的な構成が、図19図21に示されている。図19に示された熱導体エレメント22は、波頭34の領域で凹部84,86を有していて、これらの凹部に、各支持体エレメント80,82が係合して位置決めされている。このようにして、例えば、摩擦相互作用によっても、隣接する波頭34の規定の位置決めを互いに関して設定することができ、互いに隣接する熱導体エレメント長さ領域の波頭34を互いに分離するように保持することができる。支持体エレメント80,82は、電気的短絡を阻止するために、電気絶縁性材料、例えばセラミック材料または耐熱性プラスチック材料から構成されている。
【0061】
図20に示した変化態様では、このような形式のウェブ状にもしくはロッド状に形成された支持体エレメント85は、それぞれ熱導体エレメント22の各波頭34を受容する位置決め凹部76と、その間に位置する位置決め突起74とを備えて形成されていて、これにより互いに対する波頭34の規定の位置決めが補助される。
【0062】
図21に示された構成では、このような形式の支持体エレメント87は、互いに隣接して配置されている熱導体エレメント長さ領域26,28に対応配置された状態で、各位置決め凹部76とその間に位置する位置決め突起74とを提供する。
【0063】
図22に示された構成では、このような形式のウェブ状のもしくはロッド状の2つの支持体エレメント88,90が、熱導体エレメント22の波面状区分38を貫通して、規定の位置決めのために機能している。
【0064】
図23および図24に示された構成では、熱導体エレメント22には端面44の領域で、それぞれ1つのロッド状の支持体エレメント92,94を受容するための位置決め凹部89,91がそれぞれ形成されている。図25および図26に示された構成では、熱導体エレメント22の端面44に位置決め突起96,98が形成されていて、これらの位置決め突起は、端面44の領域に配置されるロッド状またはウェブ状の支持体エレメント100,102の各位置決め凹部に係合して位置決めされ得る。
【0065】
このような形式の2つのロッド状のもしくはウェブ状の支持体エレメントを、図19図26につき説明した実施形態において使用することは、これにより、熱導体エレメント22の回動もしくはねじれも抑制することができるので、有利である。図19図26に示したものとは異なり、熱導体エレメント22が実質的にまっすぐ延びる延在を有しておらず、湾曲した、例えば螺線状の延在を有している場合でも、熱導体エレメントの様々な領域で熱導体エレメントと協働する支持体構造の支持体エレメントを備えたこのような構造を使用することもできることは勿論である。このようなウェブ状のもしくはロッド状の支持体エレメントは、例えば、図18に示した支持体構造に組み込むことができる、もしくは支持体構造の一部を形成することができ、例えば同様に、セラミック材料から形成されていてよい。
【0066】
図19には、本発明により形成された排ガス加熱ユニット10において、1つ以上の熱導体エレメント22が、この熱導体エレメントの、熱伝達のために設けられた表面で部分的にまたは完全に、触媒効果のある材料104によって被覆されていてよいことが概略的に示されている。どのような触媒機能を提供すべきかに応じて、このために適した被覆材料を選択することができる。例えば、三元触媒機能を提供するためには、このように被覆される熱導体エレメント22をプラチナおよび/またはパラジウムおよび/またはロジウムを含む材料で被覆することができる。加水分解触媒機能を提供するためには、触媒効果のある材料は、酸化チタンおよび/または酸化ジルコニウムおよび/または酸化アルミニウムを含むことができる。このような形式の加水分解触媒機能は、排ガス加熱ユニット10の上流で、尿素/水溶液が投入される場合に特に好適である。窒素酸化物蓄積触媒機能を提供するためには、触媒効果のある材料104は、プラチナおよび/またはパラジウムおよび/またはバリウムを含むことができる。ディーゼル酸化触媒機能を提供するためには、触媒効果のある材料は、プラチナおよび/またはパラジウムを含むことができる。SCR触媒機能を提供するためには、触媒効果のある材料104は、鉄ゼオライトおよび/または銅ゼオライトおよび/またはバナジウム酸化物を含むことができる。このような触媒効果のある材料104を含む被覆の、熱導体エレメント22上における良好な付着を得るために、熱導体エレメント22の構成材料に、アルミニウムの割合が高い合金を使用し、被覆すべき面に熱処理を施すことが有利である。例えば、いわゆる、FeCr-合金、1.4767を、構成材料として使用することができる。
【0067】
触媒効果のある材料を含むこのような形式の被覆を、排ガスが周囲を流れることができる、面状帯材料により構成された熱導体エレメントの表面に設けることにより、熱導体エレメントが励起され、加熱された際に実質的にすぐに、触媒効果のある材料を含む被覆も、このような材料によりもたらされる触媒反応が行われるのに十分高い温度にもたらされる。これは、下流に続く排ガス処理ユニットがまだ十分に加熱されていない段階で既に、排ガス加熱ユニットの領域では既に、触媒反応を開始することができ、したがって、排ガス中の有害物の割合を減じることができることを意味している。
【0068】
排ガス処理ユニットの本発明による構成によって、一方では、排ガス加熱ユニットの、電気励起により加熱可能な、面状帯材料から成る少なくとも1つの熱導体エレメントが、排ガスとの熱相互作用のために極めて大きな表面積を提供し、他方では、排ガスが熱導体エレメントと直接、熱相互作用することができるので、内燃機関から放出される排ガスの効率的な加熱を達成することができる。少なくとも1つの熱導体エレメントの波状の構造と、波状の構造に重畳する、少なくとも1つの熱導体エレメントの、例えば螺線状またはメアンダ状の延在とによって、排ガス案内構成要素の、もしくは少なくとも1つの熱導体エレメントを収容するケーシングの、排ガスによって貫流される横断面の実質的に全体をカバーすることができる、もしくは熱伝達のために利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26