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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】冷却モジュール及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20230403BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20230403BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
F28D15/02 L
F28D15/02 101H
H01L23/46 B
H05K7/20 R
H05K7/20 B
H05K7/20 H
H05K7/20 G
H05K7/20 Q
H05K7/20 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021207889
(22)【出願日】2021-12-22
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン ハオユー
(72)【発明者】
【氏名】内野 顕範
(72)【発明者】
【氏名】吉沢 肇
(72)【発明者】
【氏名】富沢 周作
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06408934(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0100708(US,A1)
【文献】特開2021-012590(JP,A)
【文献】特開2004-015024(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0219695(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0139895(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
H01L 23/427
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却モジュールであって、
吸気口及び排気口が形成されたファン筐体を有するファンと、
凹部が設けられることで階段状の段差が形成された表面を有し、前記ファンの排気口に面して配置されたフィンと、
前記フィンの表面における前記凹部が設けられていない部分に接続されたヒートパイプと、
一縁部が前記凹部に配置されると共に、該一縁部の第1表面に前記ヒートパイプが接続され、前記一縁部の第2表面が前記凹部の底面に接続されたプレート型のベーパーチャンバと、
を備え
前記ヒートパイプが前記ベーパーチャンバの一縁部を跨いだ状態で、前記フィンの前記凹部が設けられていない部分の表面と、前記凹部に配置された前記一縁部の第1表面とに接続されることで、前記ベーパーチャンバの一縁部が前記ヒートパイプと前記フィンとの間に挟まれている
ことを特徴とする冷却モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却モジュールであって、
前記ベーパーチャンバは、
2枚の金属プレートと、
前記2枚の金属プレートの外周縁部同士を接合した接合部と、
前記2枚の金属プレート間に形成され、前記接合部で囲まれた密閉空間と、
前記密閉空間に封入された作動流体と、
を有し、
前記一縁部は、前記接合部に設けられ、
前記ベーパーチャンバは、さらに、前記一縁部の第1表面と、前記密閉空間が形成された部分の第1表面との間に段差を有し、前記段差により、前記一縁部が前記ヒートパイプの側部を回り込むようにして前記凹部に挿入され、前記ヒートパイプと前記フィンとの間に配置されている
ことを特徴とする冷却モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の冷却モジュールであって、
前記段差は、前記ヒートパイプの板厚と略同一の高低差を有する
ことを特徴とする冷却モジュール。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の冷却モジュールであって、
前記ファン筐体は、上面及び下面を形成するカバープレートを有し、
前記ベーパーチャンバは、前記上面及び下面のうちの一方を形成するカバープレートとして兼用されている
ことを特徴とする冷却モジュール。
【請求項5】
請求項4に記載の冷却モジュールであって、
前記ファンは、互いに隣接するように一対設けられ、
前記ベーパーチャンバは、前記一対のファンの前記一方を形成するカバープレートとして兼用されている
ことを特徴とする冷却モジュール。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の冷却モジュールであって、
前記ベーパーチャンバの前記第1表面と、前記ヒートパイプとに跨るように設けられた熱伝導シートをさらに備える
ことを特徴とする冷却モジュール。
【請求項7】
電子機器であって、
筐体と、
前記筐体内に設けられた発熱体と、
前記筐体内に設けられ、前記発熱体が発生する熱を吸熱する冷却モジュールと、
を備え、
冷却モジュールは、
吸気口及び排気口が形成されたファン筐体を有するファンと、
凹部が設けられることで階段状の段差が形成された表面を有し、前記ファンの排気口に面して配置されたフィンと、
第1端部が前記発熱体に接続され、第2端部が前記フィンの表面における前記凹部が設けられていない部分に接続されたヒートパイプと、
一縁部が前記凹部に配置されると共に、該一縁部の第1表面に前記ヒートパイプが接続され、前記一縁部の第2表面が前記凹部の底面に接続されたプレート型のベーパーチャンバと、
を有し、
前記冷却モジュールは、前記ヒートパイプが前記ベーパーチャンバの一縁部を跨いだ状態で、前記フィンの前記凹部が設けられていない部分の表面と、前記凹部に配置された前記一縁部の第1表面とに接続されることで、前記ベーパーチャンバの一縁部が前記ヒートパイプと前記フィンとの間に挟まれている
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却モジュール及び冷却モジュールを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器は、CPU等の発熱体を搭載している。このような電子機器は、筐体内に冷却モジュールを搭載し、発熱体が発生する熱を吸熱し、外部に放熱する。本出願人は、特許文献1において、CPUとフィンとの間をプレート型のベーパーチャンバで接続した構成を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6934093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベーパーチャンバは、一般的なヒートパイプに比べて部品コストが高い。上記特許文献1の構成は、大面積のベーパーチャンバを用いてCPUとフィンとを接続しているため、冷却モジュール全体のコストが高いという問題がある。他方、単にベーパーチャンバの面積を減らしてしまうと、コストは低下するが、冷却能力も低下する懸念がある。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、冷却能力を確保しつつ、コストを低減することができる冷却モジュール及び冷却モジュールを備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る冷却モジュールは、吸気口及び排気口が形成されたファン筐体を有するファンと、前記ファンの排気口に面して配置されたフィンと、前記フィンの表面に接続されたヒートパイプと、一縁部を跨いだ状態で前記ヒートパイプが第1表面に接続され、前記一縁部の第2表面が前記フィンの表面に前記ヒートパイプと並んで接続されることで、前記一縁部が前記ヒートパイプと前記フィンとの間に挟まれたプレート型のベーパーチャンバと、を備える。
【0007】
本発明の第2態様に係る電子機器は、筐体と、前記筐体内に設けられた発熱体と、前記筐体内に設けられ、前記発熱体が発生する熱を吸熱する冷却モジュールと、を備え、冷却モジュールは、吸気口及び排気口が形成されたファン筐体を有するファンと、前記ファンの排気口に面して配置されたフィンと、第1端部が前記発熱体に接続され、第2端部が前記フィンの表面に接続されたヒートパイプと、一縁部を跨いだ状態で前記ヒートパイプが第1表面に接続され、前記一縁部の第2表面が前記フィンの表面に前記ヒートパイプの第2端部と並んで接続されることで、前記一縁部が前記ヒートパイプと前記フィンとの間に挟まれたプレート型のベーパーチャンバと、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、冷却能力を確保しつつ、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
図2図2は、冷却モジュールの底面図である。
図3図3は、冷却モジュールの分解斜視図である。
図4図4は、図2中のIV-IV線に沿う模式的な斜視断面図である。
図5図5は、図2中のV-V線に沿う模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子機器及び冷却モジュールについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。図1に示すように、電子機器10は、蓋体12と筐体14とをヒンジ16で相対的に回動可能に連結したクラムシェル型のノート型PCであり、いわゆるモバイルワークステーションと呼ばれるものである。本発明に係る電子機器は、ノート型PC以外、例えばデスクトップ型PC、タブレット型PC、又はゲーム機等でもよい。
【0012】
蓋体12は、薄い扁平な箱体である。蓋体12には、ディスプレイ18が搭載されている。ディスプレイ18は、例えば有機ELディスプレイや液晶ディスプレイで構成される。
【0013】
以下、筐体14及びこれに搭載された各要素について、図1に示すように蓋体12を筐体14から開いた状態でキーボード20を操作する姿勢を基準とし、手前側を前、奥側を後、幅方向を左右、高さ方向(筐体14の厚み方向)を上下、と呼んで説明する。
【0014】
筐体14は、薄い扁平な箱体である。筐体14は、上面及び四周側面を形成するカバー部材14Aと、下面を形成するカバー部材14Bとで構成されている。上側のカバー部材14Aは、下面が開口した略バスタブ形状を有する。下側のカバー部材14Bは、略平板形状を有し、カバー部材14Aの下面開口を閉じる蓋体となる。カバー部材14A,14Bは、厚み方向に重ね合わされて互いに着脱可能に連結される。筐体14の上面には、キーボード20及びタッチパッド21が設けられている。
【0015】
筐体14の内部には、本実施形態に係る冷却モジュール22が搭載されている。筐体14の内部には、さらに、CPU(Central Processing Unit)24等を実装したマザーボード、記憶装置、及びバッテリ装置等が搭載されている。冷却モジュール22は、マザーボードに実装された発熱体であるCPU等が発生する熱を吸熱及び拡散し、さらに筐体14外へと放熱する冷却装置である。
【0016】
図2は、冷却モジュール22の底面図である。図3は、冷却モジュール22の分解斜視図である。図4は、図2中のIV-IV線に沿う模式的な斜視断面図である。図5は、図2中のV-V線に沿う模式的な断面図である。
【0017】
図2及び図3に示すように、冷却モジュール22は、ファン26,27と、フィン28と、ベーパーチャンバ30と、ヒートパイプ32と、押付部品34と、熱伝導シート36と、熱伝導プレート38,39と、フレームプレート40とを備える。
【0018】
ファン26,27は、フィン28に送風するためのものである。ファン26,27は、互いに隣接して左右方向に並んでいる。ファン26,27は、左右一対ではなく、1台のみで用いられてもよい。
【0019】
一方のファン26は、ファン筐体42の内部に収容されたインペラ43をモータによって回転させる遠心ファンである(図5参照)。ファン筐体42には、インペラ43以外にも、制御基板及びモータ等が支持されている。ファン26は、ファン筐体42の下面に開口した吸気口42aから吸い込んだ筐体14内の空気を後側面の排気口42bから排出する。吸気口42aは、ファン筐体42の上面に設けられてもよいし、上下両面に設けられてもよい。
【0020】
ファン筐体42は、上面及び外周側面を形成する略バスタブ状の上カバープレート42Aと、下面を形成するフラットな下カバープレート42Bとで構成されている(図3参照)。上カバープレート42Aは、アルミニウムやステンレス等の金属プレートに折曲等を形成したものである。下カバープレート42Bは、ベーパーチャンバ30で兼用されているが、詳細は後述する。
【0021】
他方のファン27は、吸気口42aの形状等が異なる以外、基本的な構成は上記したファン26と左右対称である。よって、ファン27の各要素については、ファン26の各要素と同一の参照符号を図中に付して詳細な説明は省略する。
【0022】
フィン28は、ヒートパイプ32が輸送した熱をファン26,27からの送風を受けて放熱するものである。本実施形態のフィン28は、2つのファン26,27の左右方向の幅全長に亘って延在している。これによりフィン28は、左右のファン26,27の排気口42b,42bをまとめて覆うように、これら2つの排気口42bに面して配置されている。フィン28は、左右に並んで一対設けられてもよく、この場合は、各フィン28を各ファン26,27の排気口42bにそれぞれ対面させればよい。
【0023】
フィン28は、複数の薄い金属プレート28Aを排気口の左右幅方向に等間隔に並べた構造である。各金属プレート28Aの上下端面は、上プレート28Bと下プレート28Cに接合され、これにより全ての金属プレート28Aが一体化されている。各金属プレート28Aは、上下方向に起立し、前後方向に延在している。隣接する金属プレート28A,28A間には、ファン26,27から送られた空気が通過する隙間が形成されている。フィン28を構成するプレート28A~28Cはアルミニウム又は銅等の高い熱伝導率を有する金属で形成されている。図3等では、左右に並んだ金属プレート28Aを1つのブロック状部材としてまとめて図示している。
【0024】
フィン28は、下側の表面28aに凹部28bを有する。凹部28bは、表面28aの前側の略半分の領域に形成され、ファン26,27側の側面28cに臨んでいる。これにより表面28aは、階段状の段差を有する。図3及び図4中の参照符号44は、フィン28の上下左右の各面を覆うフレームであり、ファン筐体42の上カバープレート42Aの後側面に形成されている。図5ではフレーム44の図示を省略している。フレーム44は省略されてもよい。
【0025】
ベーパーチャンバ30は、プレート型の熱輸送デバイスである。図5に示すように、ベーパーチャンバ30は、2枚の薄い金属プレート30A,30Bの間に密閉空間S1を形成し、この密閉空間S1に作動流体を封入したものである。金属プレート30A,30Bは、アルミニウム又は銅等の熱伝導率が高い金属で形成されている。密閉空間S1は、封入された作動流体が相変化を生じながら流通する流路となる。作動流体としては、例えば水、代替フロン、アセトン又はブタン等を例示できる。密閉空間S1内には、凝縮した作動流体を毛細管現象で送液するウィック30Cが配設される。ウィック30Cは、例えば金属製の細線を綿状に編んだメッシュや微細流路等の多孔質体で形成される。
【0026】
図4では、ベーパーチャンバ30の全体を1枚のプレートとして図示し、密閉空間S1を破線で囲むように例示しており、ヒートパイプ32及びその密閉空間S2も同様に図示している。
【0027】
ベーパーチャンバ30は、後縁部に沿って延在する段差30aを有する。図2及び図3に示すように、段差30aは、例えば左から右に向かって次第に後方へと傾斜しつつ、フィン28の表面28aとオーバーラップする領域では左右方向に沿って延在している。
【0028】
ベーパーチャンバ30を構成する金属プレート30A,30Bは、互いの外周縁部同士が押し潰され、溶接されて接合された耳状の接合部30bを有する。接合部30bは、2枚の金属プレート30A,30B同士を強固に固定し、密閉空間S1を囲んで封止する部分である。接合部30bには密閉空間S1は形成されていない。つまり接合部30bでは、ベーパーチャンバ30の内部での作動流体の相変化による熱輸送は発生せず、主として金属プレート30A,30Bでの熱伝導による熱輸送が生じる。
【0029】
段差30aは、ベーパーチャンバ30の外周を囲む接合部30bのうち、後縁部に沿って延在する部分を一段低くするように屈曲させた部分である。このため、ベーパーチャンバ30の下面である第1表面30cは、密閉空間S1が形成された部分と、接合部30bとで段差30aを挟んで段違いに形成されている。具体的には、接合部30bの第1表面30cは、密閉空間S1が形成された部分の第1表面30cよりも低位置にある。
【0030】
接合部30bの上面である第2表面30dは、フィン28の表面28aに接続されている。具体的には、接合部30bは、凹部28bに配置され、凹部28bの底面に対して半田付け等で接合されている。凹部28bの深さは、接合部30bの板厚と略同一である。これにより接合部30bは、凹部28bを埋め、実質的にフィン28の表面28aをフラットに形成している。
【0031】
図3に示すように、ファン筐体42は、略バスタブ状に形成された上カバープレート42Aの下面開口を塞ぐ下カバープレート42Bがベーパーチャンバ30によって兼用されている。このため、ベーパーチャンバ30は、下カバープレート42Bとして用いられる部分にファン26,27に対応する2つの吸気口42aを有する。つまり図2及び図3に示す構成例では、1枚のベーパーチャンバ30が2つのファン26,27の下カバープレート42Bを兼用しており、部品点数を削減している。ベーパーチャンバ30は左右一対設けられ、それぞれファン26,27の下カバープレート42Bとして用いてもよい。ベーパーチャンバ30は、上カバープレート42Aとして用いられてもよい。
【0032】
ヒートパイプ32は、パイプ型の熱輸送デバイスである。ヒートパイプ32は、2本以上を並列して用いてもよい。ヒートパイプ32は、金属パイプ32Aを薄く扁平に潰して断面楕円形状に形成したものであり、金属パイプ内に形成された密閉空間S2に作動流体が封入されている。金属パイプ32Aは、アルミニウム又は銅等の熱伝導率が高い金属で形成されている。密閉空間S2は、封入された作動流体が相変化を生じながら流通する流路であり、ウィック32Bが配設される。ヒートパイプ32において、作動流体の種類及びウィック32Bの構成等は、上記したベーパーチャンバ30のものと同一又は同様でよい。
【0033】
ヒートパイプ32は、CPU24とフィン28の間を接続している。ヒートパイプ32は、第1端部32aが押付部品34を介してCPU24に押し付けられ、第2端部32bの上面がフィン28の表面28aに接続されている。
【0034】
ヒートパイプ32は、第1端部32aを除く全長の大部分がベーパーチャンバ30に半田付け等で接合されている。具体的には、ヒートパイプ32は、ベーパーチャンバ30の段差30aに沿って延在するように設けられ、接合部30bの第1表面30cに半田付け等で接合されている。
【0035】
この際、ヒートパイプ32は、ベーパーチャンバ30の接合部30bの外縁部、つまりベーパーチャンバ30の後縁部を跨ぐように設けられている。従って、ヒートパイプ32の第2端部32bは、その上面の前側の領域がベーパーチャンバ30の第1表面30cに接合され、後側の領域がフィン28の表面28aに接合されている。これによりベーパーチャンバ30の接合部30bは、フィン28の表面28aにヒートパイプ32と並んで接合されると共に、ヒートパイプ32とフィン28との間に挟まれている。
【0036】
押付部品34は、ヒートパイプ32の上面をCPU24に押し付ける部品である。本実施形態の押付部品34は、ヒートパイプ32の表面に銅プレート等の受熱プレート46を積層し、受熱プレート46を介してヒートパイプ32をCPU24に押し付ける。受熱プレート46は省略されてもよい。押付部品34は、一対の板ばね34a,34bを有する。押付部品34は、板ばね34a,34bの付勢力により、ヒートパイプ32をCPU24に対して付勢する。
【0037】
熱伝導シート36は、グラファイト、銅、又はアルミニウム等の高い熱伝導率を有する材料で形成された薄いシート状部材である。本実施形態の熱伝導シート36は、グラファイトシートである。熱伝導シート36は、ベーパーチャンバ30の密閉空間S1が設けられた部分の第1表面30cと、ヒートパイプ32の表面とに跨るように設けられている(図4参照)。これにより熱伝導シート36は、ヒートパイプ32とベーパーチャンバ30との間での熱伝達を補完する。熱伝導シート36は省略されてもよい。
【0038】
熱伝導プレート38,39は、銅又はアルミニウム等の高い熱伝導率を有する金属プレートである。熱伝導プレート38は、一部に受熱プレート46が取り付けられ、ベーパーチャンバ30及び熱伝導プレート39と接続される。熱伝導プレート39は、ベーパーチャンバ30及び熱伝導プレート38と接続される。熱伝導プレート38,39は、ヒートパイプ32及びベーパーチャンバ30による吸熱及び放熱を補完する。熱伝導プレート38,39は省略されてもよい。
【0039】
フレームプレート40は、銅、アルミニウム、又はステンレス等の金属プレートである。フレームプレート40は、熱伝導プレート38、39をベーパーチャンバ30やヒートパイプ32と連結するフレームとなる。具体的には、図3中で上から下に向かって順に、フレームプレート40、熱伝導プレート38、熱伝導プレート39が積層される。フレームプレート40は省略されてもよい。図3中の参照符号41は、絶縁部材であり、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)製のシートである。図3中の参照符号48は、プレート38~40間の段差を適宜埋めるスペーサである。
【0040】
以上のように構成された冷却モジュール22は、ベーパーチャンバ30の第1表面30cの一縁部を跨ぐようにヒートパイプ32が接続され、この一縁部の第2表面30dがフィン28の表面28aに接続されている。このため、ベーパーチャンバ30は、その一縁部がヒートパイプ32と並んでフィン28に接続され、さらにヒートパイプ32とフィン28との間に挟まれている。図4図5中に1点鎖線で示す矢印Aは、空気の流れを模式的に示したものである。図5中に1点鎖線で示す矢印Hは、熱の移動模式的に示したものである。
【0041】
従って、CPU24が発生した熱Hは、受熱プレート46を介してヒートパイプ32で吸熱され、高効率に輸送されてフィン28に伝達される。この途中、ヒートパイプ32で輸送される熱Hは、ベーパーチャンバ30にも伝達されて拡散及び放熱され、同時にフィン28にも伝達される。そして、フィン28に伝達された熱Hは、ファン26,27の排気口42bから送風される空気Aにより、放熱が促進され、筐体14外へと効率よく排出される。
【0042】
すなわち冷却モジュール22は、発熱体であるCPU24に接続したヒートパイプ32をフィン28だけでなく、ベーパーチャンバ30の一縁部にも接続すると共に、ベーパーチャンバ30の一縁部をフィン28に接続されている。
【0043】
このため、実施形態の冷却モジュール22は、例えばベーパーチャンバを大面積に拡大し、CPUからの熱をベーパーチャンバで直接的に吸熱してフィンに伝達する従来の構成と比べて、コストを低減しつつも冷却能力は維持できる。すなわちベーパーチャンバは、ヒートパイプに比べてコストが高い部品である。本実施形態の冷却モジュール22は、このような高コストのベーパーチャンバ30の使用面積を抑制しつつ、その抑制部分を低コストのヒートパイプ32で補完している。その結果、冷却モジュール22は、コスト低減と冷却能力の維持との両立が可能となっている。
【0044】
しかもベーパーチャンバ30は、ファン筐体42の下カバープレート42Bとして兼用されている。このため、ベーパーチャンバ30は、ファン筐体42内で旋回する空気からの冷却効果も受けることができる。
【0045】
ここで、図2に示す構成からヒートパイプ32を省略し、CPU24及びフィン28の全体をベーパーチャンバ30で覆った構成からなる比較例の冷却モジュールと、本実施形態の冷却モジュール22とを比べた実験結果を説明する。実験の結果、本実施形態の冷却モジュール22は、比較例の冷却モジュールよりも部品コストが20%程度減少し、同一冷却能力時のファン26,27のノイズが低減された。つまり本実施形態の冷却モジュール22は、比較例の冷却モジュールと比べて、同一のノイズであれば、ファン回転数を上昇させることができ、より高い冷却能力を発揮できることが分かった。
【0046】
冷却モジュール22は、例えば、発熱体の熱をベーパーチャンバを介してヒートパイプに伝達し、その後はヒートパイプのみでフィンに熱伝達を行うような従来の構成と比べても冷却性能に優位性がある。すなわち冷却モジュール22では、ヒートパイプ32がフィン28及びベーパーチャンバ30と接続され、さらにベーパーチャンバ30がフィン28にも接続されている。その結果、冷却モジュール22は、例えばヒートパイプ32からフィン28への熱伝達が律速となってCPU24を十分に冷却できない事態等を、ベーパーチャンバ30での熱拡散及びフィン28への熱伝達によって回避できるからである。
【0047】
冷却モジュール22において、ベーパーチャンバ30は、密閉空間S1が形成されていない接合部30bがヒートパイプ32及びフィン28と接続されている。この接合部30bの第1表面30cは、密閉空間S1が形成された部分の第1表面30cよりも段差30aによって低位置に配置されている。このため、冷却モジュール22は、段差30aによって形成された高さ方向の空きスペースにヒートパイプ32を配置できる。その結果、ヒートパイプ32がベーパーチャンバ30の第1表面30cから突出し、モジュール全体の厚み寸法が増大することを回避できる。従って、段差30aの高低差は、ヒートパイプ32の板厚と略同一であることが好ましい。
【0048】
しかも接合部30bは密閉空間S1が形成されていないため、ベーパーチャンバ30は、段差30aによって密閉空間S1に曲げ部が形成されることがない。その結果、ベーパーチャンバ30は、密閉空間S1の一部が閉塞し、作動流体による熱輸送効率が低下することも防止できる。
【0049】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
10 電子機器
14 筐体
22 冷却モジュール
24 CPU
26,27 ファン
28 フィン
30 ベーパーチャンバ
30a 段差
30b 接合部
32 ヒートパイプ
36 熱伝導シート
【要約】
【課題】冷却能力を確保しつつ、コストを低減することができる冷却モジュール及び冷却モジュールを備えた電子機器を提供する。
【解決手段】冷却モジュールは、吸気口及び排気口が形成されたファン筐体を有するファンと、前記ファンの排気口に面して配置されたフィンと、前記フィンの表面に接続されたヒートパイプと、一縁部を跨いだ状態で前記ヒートパイプが第1表面に接続され、前記一縁部の第2表面が前記フィンの表面に前記ヒートパイプと並んで接続されることで、前記一縁部が前記ヒートパイプと前記フィンとの間に挟まれたプレート型のベーパーチャンバと、を備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5