(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】層状の材料被着により3次元の成形物を製造する方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/40 20170101AFI20230403BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20230403BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230403BHJP
B29C 64/188 20170101ALI20230403BHJP
【FI】
B29C64/40
B29C64/112
B33Y10/00
B29C64/188
(21)【出願番号】P 2021507569
(86)(22)【出願日】2019-08-12
(86)【国際出願番号】 EP2019071610
(87)【国際公開番号】W WO2020035456
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】102018006397.7
(32)【優先日】2018-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517393617
【氏名又は名称】ディー・ピー ポーラー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】dp polar GmbH
【住所又は居所原語表記】Daimlerstrasse 32a, D-76344 Eggenstein-Leopoldshafen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハンス マテア
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-128884(JP,A)
【文献】特開平08-281809(JP,A)
【文献】特開2015-089943(JP,A)
【文献】特開2003-011237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状の材料被着により3次元の成形物(1)を製造する方法であって、該成形物(1)用の幾何学形状データ、前記3次元の成形物(1)を支持する基底面(3)を備えた支持体部材(2)、硬化可能な液状または流動性の第1の材料(4)、硬化可能な液状、流動性、ペースト状または粉末状の第2の材料(5)および溶剤を準備し、前記第2の材料(5)は、硬化状態では硬化した前記第1の材料(4)よりも高い強度を有しており、硬化した前記第1の材料(4)は、前記溶剤中で溶解可能であり、
a)ネガ型層(12)を形成するために、流動性の前記第1の材料(4)の部分材料を、前記幾何学形状データに基づいて、前記基底面(3)および/または該基底面(3)上に位置する前記3次元の成形物(1)の硬化した材料層に、前記ネガ型層(12)の前記基底面(3)とは反対の側の表面に、製造しようとする前記成形物(1)の材料層のネガ形状を有する少なくとも1つのキャビティ(13)が形成されるように被着させ、
b)前記ネガ型層(12)を硬化させ、
c)前記キャビティ(13)に前記第2の材料(5)を充填し、これにより前記ネガ形状をポジ形状として成形物層(16)に転移させることで該成形物層(16)を形成し、
d)前記キャビティ(13)に充填された前記第2の材料(5)を硬化させ、
e)硬化した前記ネガ型層(12)および/または硬化した前記成形物層(16)の、前記基底面(3)に対して所定の間隔をあけて配置された平面を越えて突出した領域を、切削式の材料除去により除去し、
f)ステップa)~e)を少なくとも1回繰り返し、
g)前記ネガ型層(12)を溶剤と接触させ、これにより、硬化した前記第1の材料(4)を溶剤に溶かす、
方法。
【請求項2】
前記第1の材料(4)の部分材料が
、インクジェット印刷法によりまたは電子写真により、前記基底面および/または該基底面上に位置する硬化した前記ネガ型層(12)および/または硬化した前記成形物層(16)に被着され、前記第1の材料(4)は、エネルギの作用に基づき硬化可能な材料であって、前記ネガ型層(12)を硬化させるために前記第1の材料(4)にエネルギを供給する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第2の材料(5)の粘度は、硬化されていない状態では、硬化されていない状態の前記第1の材料(4)の粘度よりも高
くかつ/または流動性の前記第1の材料および流動性、ペースト状または粉末状の前記第2の材料は、所定の固形物量を有しており、前記第2の材料(5)の固形物量は、前記第2の材料(5)が硬化されていない状態では、前記第1の材料(4)が硬化されていない状態における前記第1の材料(4)の固形物量より
多い、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記第1の材料(4)は、噴射に適した、1000mPa・s未
満の粘度を有しており、少なくとも360dp
iの解像度を有する液滴の形態で、前記基底面および/または該基底面上に位置する前記3次元の成形物(1)の硬化した材料層に被着される、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記第2の材料(5)は、選択的なコーティング法により、前記幾何学形状データに基づいて前記ネガ型層(12)に被着され、これにより、流動性、ペースト状または粉末状の前記第2の材料の少なくとも1つの部分材料が少なくとも1つのキャビティ(13)内に供給されることになり
、該キャビティの外側に位置する前記ネガ型層の少なくとも1つの箇所に、前記第2の材料(5)が接触することはない、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記第2の材料(5)は、流体と少なくとも1つの添加剤とを含む複合材料であり、前記流体は室温において少なくとも50mPa・
sの粘度を有しており、前記添加剤は、前記流体中に配置された固形物粒子を有している、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記第2の材料(5)は、前記第1の材料(4)よりも高い粘度および/または多い固形物量を有しており、前記第1および前記第2の材料(4,5)は両方共インクジェット印刷法により、前記基底面(3)および/または該基底面(3)上に位置する硬化した前記ネガ型層(12)および/または前記成形物層(16)に被着され、前記インクジェット印刷法では、前記第1の材料(4)は少なくとも1つの第1のノズルから吐出されかつ前記第2の材料(5)は少なくとも1つの第2のノズルから吐出され、該第2のノズルの流出開口は、前記第1のノズルの流出開口よりも大きな横断面を有しておりかつ/または高い作業圧力を加えられ
、前記第2のノズルの前記流出開口の直径は、前記第1のノズルの前記流出開口の直径よりも大きくなっている、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
前記第2の材料(5)に気体圧力を供給し、このようにして加圧された前記第2の材料(5)を、少なくとも1つの弁(30)を介して少なくとも1つのノズル(27)に案内し、該ノズルの流出開口は、前記基底面(3)に沿って前記支持体部材(2)に対して位置決めされており、前記弁(30)は、製造しようとする前記成形物(1)用に準備された前記幾何学形状データに基づいてかつ前記ノズル(27)と前記支持体部材(2)との間の相対位置に応じて制御され、これにより、前記流出開口が前記キャビティ(13)のところに位置決めされると材料流が解放され、前記流出開口が前記キャビティ(13)のところに位置決めされていないと前記材料流は遮断される、請求項2から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記ノズル(27)の前記流出開口は、前記キャビティ(13)内に延びる連続的な線に沿って、前記支持体部材(2)に対して相対的に移動させられ、液状、流動性またはペースト状の前記第2の材料(5)は、前記流出開口から前記線に沿って前記キャビティ(13)内に連続的に供給される、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
支持体シートが準備され、該支持体シート上に前記第2の材料(5)が配置されており、該第2の材料(5)は、前記第1の材料よりも高い粘度を有しておりかつ/または前記第1の材料(4)よりも多い固形物量を含んでおり、前記支持体シートは、前記第2の材料(5)を前記キャビティ(13)に充填するために、前記支持体シート上に位置する前記第2の材料(5)が前記キャビティ(13)に向かい合うように前記キャビティ(13)に位置決めされ、前記支持体シートを透過するエネルギビームが前記支持体シートに向けられ、これにより、前記支持体シートの、前記キャビティ(13)に面した側における前記第2の材料が、加熱により液化されて前記キャビティ(13)内に供給される、請求項5または6記載の方法。
【請求項11】
前記第2の材料(5)は、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、レーザ転写法、微量調量法によりかつ/またはドクタ(24)またはチャンバドクタを介して前記キャビティ(13)内に充填される、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記第2の材料(5)は、加熱により液化されてから前記キャビティ(13)内に充填され、その後冷却により硬化させられる熱可塑性樹脂である、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
硬化した最も上の前記ネガ型層(12)および/または硬化した最も上の前記成形物層(16)から、前記切削式の材料除去時に生じる切りくずが除去される、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記基底面(3)を有する前記支持体部材(2)は、材料被着
中に回転軸線(11)を中心として回転させら
れる、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層状の材料被着により3次元の成形物を製造する方法であって、成形物用の幾何学形状データ、3次元の成形物を支持する基底面を備えた支持体部材、硬化可能な液状または流動性の第1の材料、硬化可能な液状、流動性、ペースト状または粉末状の第2の材料および硬化した第1の材料を溶解可能な溶剤を準備する、方法に関する。
【0002】
実地から周知のこのような方法では、第1および第2の材料として、紫外線の作用により硬化可能な液状のポリマが使用される。従来周知の方法では、第1および第2の材料の液滴状の部分材料がインクジェットプリンタにより基底面の複数の異なる箇所に吹き付けられることにより、支持体部材の基底面にまず第1の材料層が被着される。それぞれ異なる材料から成る材料液滴が基底面に被着される箇所は、製造しようとする成形物用に準備される幾何学形状データに基づいて、第2の材料から成る材料層の領域が、製造しようとする成形物の最下層を形成するように選択される。第1の材料は、第2の材料が一切被着されず、第1の材料の別の材料層が被着されるとその上に成形物が、全ての材料層が硬化するまで支持材料により支持されるべきオーバハングを有することになる箇所で基底面に被着される、支持材料として用いられる。このようにして得られた最も下の材料層は、別のステップにおいて紫外線を照射され、これにより、第1および第2の材料に含まれるポリマを架橋により硬化させることができる。
【0003】
最も下の材料層が仕上げられた後は、成形物の全ての層が製造されかつ硬化させられるまで、最も下の材料層に複数の別の材料層が適宜に被着されかつ硬化させられる。その後、このようにして得られた層スタックは、第1の材料が溶解するまで溶剤と接触させられる。第2の材料は、溶剤中では溶解しない。
【0004】
従来周知の方法は確かに、3次元の成形物を試作品としてまたは少ない個数で比較的廉価に製造することを可能にする。UV架橋可能なポリマの使用および印刷における高解像度に基づき、良好な表面クオリティが可能になる。しかしながら高解像の3D印刷には、基底面もしくは基底面上に位置する硬化された材料層に細いノズルを通じてポリマを被着させることができるようにするために、極めて低い粘度のポリマが必要とされている。
【0005】
インクジェット印刷法(インクジェット法)では、ノズルは一般に25mPa・sの最高粘度を処理することができる。より高い粘度は一般に噴射不能である。このような材料から製作された物体には最小荷重を加えることができるだけに過ぎず、単に鑑賞用物体として用いられるだけに過ぎない。
【0006】
インクジェット3Dプリンタを用いて、硬化可能な液状ポリマから成る材料を層状に被着することにより、射出成形機用の射出成形型を製造することも、実地から既に周知である。射出成形型は2つの型部材を有しており、これらの型部材の間に、射出成形機で製造されるべき成形物の3次元のネガ形状を有するキャビティが形成されている。射出成形型は、3Dプリンタにおいてポリマから成る層が複数被着されることにより製造され、ポリマは、ノズルを介して液状形態で基底面もしくは基底面上に予め被着された硬化した材料層に被着される。各材料層を被着した後で、依然として液状のポリマにはその都度UV光が照射され、これによりポリマを架橋することで、関係する材料層を硬化させることができる。次いで射出成形型が完成するまで、別の材料層が適宜に被着されかつ硬化させられる。次いで射出成形型は3Dプリンタから取り出されて射出成形機に組み込まれ、これにより、射出成形型に設けられた噴射開口を介して、ポリマとは異なる高温のプラスチックをキャビティ内へ噴射することができる。キャビティがプラスチックで満たされかつプラスチックが冷却された後で射出成形型が開かれ、成形物がエジェクタによりキャビティから放出される。この方法は、3D印刷で製造された型は充填材料の高い温度に基づき極めて限定的な耐用年数しか有しておらず、おおよそ10~100の射出成形工程の後には更新されねばならない、という欠点を有している。さらに、射出成形機への射出成形型の組込みには比較的時間がかかる。このことは特に、特注品の成形物の場合に不都合である。
【0007】
構成材料として固形物を用いる別の周知の技術では、大抵熱可塑性樹脂が溶融され、ノズルを介して、または粉末の形態で、焼結法で層状に被着される。ただし、極めて良好な耐荷力は印刷時間を犠牲にする(極低速)、または低い解像度もしくは表面クオリティを免れない。
【0008】
やはり比較的高い粘度を処理することができるステレオリソグラフィ法は、軽微な利点をもたらす。この利点は、材料がノズルを介して吹き付けられなければならないのではなく、ポリマ容器内で設定に従って外部のUV光線により架橋される、という事実から生じる。これにより、さらに向上した特性を有する、いわゆる2成分UVポリマも処理され得る。これにより、成形物の改良された耐荷力も達成される。ただし:物体製作用の多量の材料、2成分混合物の制限された硬化時間、(消費されなかったポリマの再使用を不可能にする)多量の材料消費という欠点がある。これらは全て、部品製造のコストを大幅につり上げることになる。
【0009】
インクジェット法を除く全ての周知の3D技術はさらに、複数の材料には適さないという、別の重大な欠陥を有している。つまり、同時に1種類の材料だけが使用可能であるに過ぎない。これにより、工業分野における当該方法の使用は極めて限定的である。
【0010】
したがって本発明の課題は、機械的に安定しておりかつ荷重を加えることができる、高解像度を有する3次元の成形物を印刷可能な、冒頭で述べた形式の方法を提供することにある。
【0011】
この課題は、特許請求項1記載の特徴により解決される。本発明による、層状の材料被着により3次元の成形物を製造する方法では、成形物用の幾何学形状データ、3次元の成形物を支持する基底面を備えた支持体部材、硬化可能な液状または流動性の第1の材料、硬化可能な液状、流動性、ペースト状または粉末状の第2の材料および溶剤を準備し、第2の材料は、硬化状態では硬化した第1の材料よりも高い強度を有しており、硬化した第1の材料は溶剤中で溶解可能であり、
a)ネガ型層を形成するために、流動性の第1の材料の部分材料を、幾何学形状データに基づいて、基底面および/または基底面上に位置する、3次元の成形物の硬化した材料層に、ネガ型層の基底面とは反対の側の表面に、製造しようとする成形物の材料層のネガ形状を有する少なくとも1つのキャビティが形成されるように被着させ、
b)ネガ型層を硬化させ、
c)キャビティに第2の材料を充填し、これによりネガ形状をポジ形状として成形物層に転移させることで成形物層を形成し、
d)キャビティに充填された第2の材料を硬化させ、
e)硬化したネガ型層および/または硬化した成形物層の、基底面に対して所定の間隔をあけて配置された平面を越えて突出した領域を、切削式の材料除去により除去し、
f)ステップa)~e)を少なくとも1回繰り返し、
g)ネガ型層を溶剤と接触させ、これにより、硬化した第1の材料を溶剤に溶かす。
【0012】
つまり本発明では、異なる特性を有する複数の材料を異なる印刷法により処理しかつ/または異なる印刷装置を用いて基底面もしくは基底面上に位置する3次元の成形物の硬化した材料層に層状に被着する、ハイブリッド法が想定されている。このことは連続する1回の3D印刷工程において行うことができる、すなわち、当該方法は全て、1つの3D印刷ステーションにおいて実施され得る。この3D印刷ステーション以外に、別の製造工程は一切不要である。
【0013】
第1の材料は、第2の材料用の型を製造するためだけに用いられるので、極めて低粘度であるもしくは薄いか、または高流動性であってよい。第1の材料が、基底面もしくは基底面上に位置する3次元の成形物の既に硬化した材料層への被着中に有している低粘度もしくは高流動性に基づき、第1の材料の相応に少量の部分材料を複数、基底面もしくは基底面上に位置する3次元の成形物の硬化した材料層に被着させることにより、型を、デジタル式の印刷法により高解像度でかつ高い表面クオリティを備えて印刷することができる。
【0014】
型の、第1の材料から成る材料層の機械的な安定性および強度には、低い要求しか課せられない。それというのも、型は第2の材料を支持しているだけであり、場合により、第2の材料を被着する印刷法に際して第1の材料に加えられる力を支持する必要があるだけに過ぎないからである。第1の材料の硬化に基づき、第1の材料は、第2の材料のための賦形体として使用することができるために十分な強度を達成する。硬化状態にある第1の材料の機械的な強度が、第2の材料の硬化した層から形成される成形物の機械的な安定性に影響を及ぼすことは全くない。なぜならば、第1の硬化した材料は、全ての材料層の被着後に溶剤中に溶かされることにより、成形物から除去されるからである。硬化した第2の材料は、溶剤中で溶解不能である。
【0015】
第2の材料は、成形物用の本来の構成材料であり、第1の材料とは異なる特性、とりわけより高い粘度を有していてよい。第2の材料は、第1の材料から製造された型を型取ることにより幾何学形状を成形されるため、高い印刷解像度を得るために、第2の材料の少量の部分材料を複数、基底面もしくは基底面上に位置する3次元の成形物の硬化した材料層に被着させることは不要である。むしろ、高粘度の第2の材料を用いても作業することができる。これにより、成形物の高い機械的な安定性および強度が達成され得る。それどころか必要な場合には、第2の材料は、少なくとも2つの異なる高粘度の物質から成る混合物および/または材料強度を高めるための少なくとも1つの添加剤を含むことが可能である。第2の材料は、デジタル式の印刷法によっても基底面もしくは基底面上に位置する3次元の成形物の硬化した材料層に選択的に、つまり成形物用に準備された幾何学形状データに相応して選択される複数の異なる箇所に対する部分材料の被着により、被着させることができる。しかしまた、第2の材料を、アナログ式の印刷法により、基底面もしくは基底面上に位置する3次元の成形物の硬化した材料層に被着させることも可能である。それどころかこの場合は、第2の材料の2つ以上の成分を基底面および/または基底面上に位置する硬化した材料層に被着させ、これにより、複数の異なる成分を含む成形物を製造することが可能である。複数の材料に適したこの形式は、第2の材料用の複数の印刷モジュールを直列接続することにより達成され得る。このようにして、複数の異なる機械的かつ/または電気的な特性および/または異なる色が達成され得る。
【0016】
本発明による方法では、好適には個々の材料層の印刷後に、基底面に対して所定の間隔をあけて、好適には基底面に対して平行に配置された平面を越えて突出している、硬化したネガ型層および/または硬化した成形物層の領域が、その都度切削式の材料除去により除去されるため、成形物の個々の層は、互いに正確に平行に延在しているもしくは所定の配置形式で配置されていると共に、所定の層厚さを有している。さらに切削式の材料除去により、キャビティに第2の材料を充填する際に、第2の材料が第1の材料の硬化した最上層の表面と接触するとこの表面に生じ得る「汚れ」が除去される。つまり前記平面を越えて突出している領域の除去は、硬化した第1および第2の材料から成る混合層が常に所望の厚さを有しておりかつ第1の材料の表面から、溶剤中で溶解不能な第2の材料が除去される、ということをもたらす。このことは、成形物の極めて正確で歪みの少ない製造を可能にする。切削式の材料除去は、好適にはいわゆる厚さフライス/研磨器を用いて行われる。好適には、特許請求項1記載のステップe)は、第1の材料の各個別の材料層の被着後にその都度実施される。基底面に対して所定の間隔をあけて配置された平面を越えて突出している硬化したネガ型層および/または硬化した成形物層の領域は、好適には完全に除去される。よって突出している領域が除去されると、ネガ型の最上層も、成形物の最上層も、基底面に対して所定の間隔をあけて配置された平面にそれぞれ面一につながることになる。
【0017】
本発明による方法では、成形物層を被着する度に、硬化したネガ型層および硬化した成形物層の、基底面に対して所定の間隔をあけて好適には基底面に対して平行に配置された平面を越えて突出した領域を、切削式の材料除去により除去する。したがって、本発明に基づく方法を用いて成形物を完全に1つのプリンタで、別の工程を必要とすること無しに製造することができる。
【0018】
本発明の1つの好適な構成では、第1の材料の部分材料が、好適にはインクジェット印刷法によりまたは電子写真により、基底面および/または基底面上に位置する硬化したネガ型層および/または硬化した成形物層に被着され、この場合、第1の材料は、エネルギの作用に基づき硬化可能な材料であって、ネガ型層を硬化させるために第1の材料にエネルギを供給する。好適には第2の材料も、キャビティ内に充填されてからエネルギを供給される、エネルギの作用に基づき硬化可能な材料である。エネルギには特に放射線、好適にはUV線等の光線が含まれていてよい。
【0019】
当該方法の1つの有利な実施形態では、第2の材料の粘度は、硬化されていない状態では、硬化されていない状態の第1の材料の粘度よりも高く、場合により少なくとも10倍高く、特に少なくとも200倍高く、好適には少なくとも2000倍高くかつ/または流動性の第1の材料および流動性、ペースト状または粉末状の第2の材料は、所定の固形物量を有しており、第2の材料の固形物量は、第2の材料が硬化されていない状態では、第1の材料が硬化されていない状態における第1の材料の固形物量より多く、場合により少なくとも10倍多く、特に少なくとも200倍多く、好適には少なくとも2000倍多い。このことは、高い表面クオリティおよび表面精度と同時に優れた機械的な強度を有する成形物の製造を可能にする。さらに、固形物量(添加剤)を含む第2の材料は、固形物量を含まない対応する材料に比べて機械的かつ/または電気的な特性を大幅に向上させる、球形、または繊維に類似した形状で提供され得る。
【0020】
本発明の1つの実用的な構成では、第1の材料は、噴射に適した、1000mPa・s未満、特に100mPa・s未満、場合により30mPa・s未満、好適には10mPa・s未満の作業粘度(若しくは単に粘度)を有しており、少なくとも360dpi、特に少なくとも720dpi、好適には少なくとも1440dpiの解像度を有する液滴の形態で、基底面および/または基底面上に位置する3次元の成形物の硬化した材料層に被着される。このことは、成形物の高い表面クオリティを可能にする。第2の材料は、その流動性を変化させるため、好適には流動性を高めるもしくは粘度を低下させるために、好適には室温と比べて作業温度に加熱される。作業温度に加熱された第2の材料はその後、基底面もしくは基底面上に位置する硬化した材料層に被着される。
【0021】
本発明の1つの改良では、第2の材料は、選択的なデジタル式のコーティング法/調量法により、幾何学形状データに基づいてネガ型層に被着され、これにより、流動性、ペースト状または粉末状の第2の材料の少なくとも1つの部分材料が少なくとも1つのキャビティ内に供給されることになり、好適には、キャビティの外側に位置するネガ型層の箇所が第2の材料と接触することは全くまたは極僅かにしかない。つまり第2の材料は、好適にはキャビティが存在する箇所にのみ供給される。第2の材料のキャビティへの充填は、弁またはそのような調節装置により開放位置および閉鎖位置に変位させることができるノズルを介して行われてよい。キャビティとノズルの供給開口との間の相対位置に応じた複数の弁の同期化は、制御装置を介して行うことができる。このことは、第2の材料がキャビティの内側にも外側にも大面積に被着されるアナログ式のコーティング法と比べると、1つの利点である。第2の材料は、キャビティ内への充填に際して第1の材料とは異なる特性を有していてよく、特に第2の材料は、第1の材料が基底面もしくは基底面上に位置する3次元の成形物の硬化した材料層に被着されるときに有している第1の材料の粘度よりも高い粘度を有していてよい。
【0022】
本発明の1つの好適な構成では、第2の材料は、流体と少なくとも1つの添加剤とを含む複合材料であり、この場合、流体は室温において少なくとも50mPa・s、好適には少なくとも1000mPa・sの粘度を有しており、添加剤は、流体中に配置された固形物粒子を有している。固形物粒子は、繊維、特に炭素繊維、ナノチューブ、ガラス球、グラフェン、スチレンブロックコポリマ、特にスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、充填材としての固形物のナノ/マイクロ粒子および/または高度に分岐したポリエステルオールおよび/またはこれらの混合物を含んでいてよい。複合材料は室温で、または室温よりも高い温度に加熱されてキャビティ内に充填されてよい。
【0023】
本発明の1つの好適な構成では、第2の材料は、第1の材料よりも高い粘度および/または多い固形物量を有しており、この場合、第1および第2の材料は両方共インクジェット印刷法により、基底面および/または基底面上に位置する硬化したネガ型層および/または成形物層に被着され、インクジェット印刷法では、第1の材料は少なくとも1つの第1のノズルから吐出されかつ第2の材料は少なくとも1つの第2のノズルから吐出され、第2のノズルの流出開口は、第1のノズルの流出開口よりも大きな横断面を有しておりかつ/または高い作業圧力を加えられ、特に第2のノズルの流出開口の直径は、第1のノズルの流出開口の直径よりも大きくなっている。インクジェット印刷法は、第2の材料が圧電アクチュエータを介してパルス状にかつ/または部分的にノズルから吐出(噴射)される印刷法を意味する。第2のノズルのより大きな横断面および/またはより高い作業圧力に基づき、高粘度の第2の材料のインクジェット印刷が可能になる。第1のノズルの流出開口の、第2のノズルの流出開口の横断面に比べてより小さな横断面および/または第2のノズルの、第1のノズルの作業圧力に比べてより高い作業圧力は、第1の材料を高解像度で基底面もしくは基底面上に位置する3次元の成形物の硬化した材料層に被着することを可能にする。
【0024】
ノズルは、第2の材料が被着されるべき表面に対して小さな間隔をあけて配置される。ノズルの下にキャビティが位置しているときに、ノズルの材料通路から第2の材料が流出させられる。第2の材料がノズルから押し出され、表面がノズルに対して相対的に移動させられると、表面に第2の材料の筋が落ちる。材料補充が停止されると、ノズルは材料供給無しで表面上を移動する。
【0025】
本発明の1つの改良では、第2の材料に気体圧力を供給し、このようにして加圧された第2の材料を、少なくとも1つの弁を介して少なくとも1つのノズルに案内し、この場合、ノズルの流出開口は、基底面に沿って支持体部材に対して位置決めされており、弁は、製造しようとする成形物用に準備された幾何学形状データに基づいてかつノズルと支持体部材との間の相対位置に応じて制御され、これにより、流出開口がキャビティのところに位置決めされると材料流が解放され、流出開口がキャビティのところに位置決めされていないと材料流は遮断される。この場合、弁は電磁式にまたは圧電素子を介して操作されてよい。
【0026】
好適には、ノズルの流出開口は、キャビティ内に延びる連続的な線に沿って、支持体部材に対して相対的に移動させられ、液状、流動性またはペースト状の第2の材料は、流出開口から前記線に沿ってキャビティ内に連続的に供給される。このことは、連続的な材料被着ひいては第2の材料をキャビティに充填する際の迅速な作業進捗を可能にする。第2の材料は、連続的な圧送工程に適した自体公知のマイクロポンプを介して、またはノズルの気体圧力を第2の材料に供給することにより、供給され得る。ノズル通路からの第2の材料の送出は、高粘度用の圧電アクチベータを介して直接に行われるか、(ノズル通路を開閉する)ノズル通路スライダ用の圧電アクチベータを介して行われる、または圧縮空気により通路内へ押し込まれる。この場合、圧縮空気は電磁弁により電磁式に活性化されてよい。
【0027】
本発明の1つの有利な実施形態では、支持体シートが準備され、支持体シート上に第2の材料が配置されており、この場合、第2の材料は、第1の材料よりも高い粘度を有しておりかつ/または第1の材料よりも多い固形物量を含んでおり、支持体シートは、第2の材料をキャビティに充填するために、支持体シート上に位置する第2の材料がキャビティに向かい合うようにキャビティに位置決めされ、この場合、支持体シートを透過するエネルギビームが支持体シートに向けられ、これにより、支持体シートの、キャビティに面した側における第2の材料が、加熱により液化されてキャビティ内に供給される。つまり第2の材料は、転写法により好適には選択的に、複数のキャビティ内に充填される。エネルギビームとして、好適にはレーザビームが使用される。しかしまた、エネルギビームは電子ビームであるということも考えられる。エネルギビームを支持体シートの複数の異なる箇所に位置決めするために、材料被着中にエネルギビームをニュートラル位置から変向させることができる。変向は、成形物用に準備された幾何学形状データに基づいてかつニュートラル位置に位置するエネルギビームと支持体部材との間の相対位置に応じて行われてよい。レーザビームの場合、変向は、変位可能な光学系、特にガルバノミラーおよび/またはポリゴンミラーを介して行われてよい。エネルギビームとして電子ビームが使用される場合、電子ビームは適宜に磁界により変向される。
【0028】
本発明の1つの改良では、第2の材料は、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、レーザ転写法、微量調量法により、ドクタまたはチャンバドクタを介してキャビティ内に充填される。つまり第2の材料は、アナログ式の印刷法によりキャビティ内に充填される。このことは、面状の印刷に基づき高速印刷を可能にする。
【0029】
本発明の1つの別の有利な実施形態では、第2の材料は、加熱により液化されてからキャビティに充填され、その後冷却により硬化させられる熱可塑性樹脂である。この場合、第2の材料を硬化させるためのUV線源は一切不要であり、第2の材料は冷却されるだけである。
【0030】
硬化した最も上のネガ型層および/または硬化した最も上の成形物層からは、切削式の材料除去時に生じる切りくずが適宜に除去される。これにより、高精度で別の材料層が被着され得る、平らで清浄な表面が得られる。
【0031】
本発明の1つの好適な実施形態では、基底面を有する支持体部材が、材料被着中および場合により材料硬化中に回転軸線を中心として回転させられ、好適には回転軸線に沿って移動させられる。これにより、重なり合って配置される複数の材料層を中断無く印刷することが可能である。このことは、迅速な材料被着を可能にする。第2の材料が転写法によりキャビティ内に充填される場合には、それぞれ対応する材料被着箇所に重ねて配置された支持体シートの複数の材料供給箇所にエネルギビームを順次位置決めすることができ、これにより、支持体シート上に位置する第2の材料をエネルギビームにより加熱して、第2の材料を、被着箇所に位置するキャビティ内に転移させることができ、この場合、エネルギビームの出力は、第2の材料供給箇所よりも回転軸線から大きく離れた第1の材料供給箇所にエネルギビームを位置決めする際に、エネルギビームが、第2の材料供給箇所にエネルギビームを位置決めするときよりも大きな出力を有するように調節される。この出力適合は、全ての材料供給箇所に同量の材料が供給される、という利点を有している。このことは主に、内径が外径よりも小さな回転プラットフォームにおいて使用する場合に必要であり、これに基づき、内側では、外側におけるよりも細いビームが必要になる。
【0032】
以下に本発明の実施例を図面に基づきより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】層状の材料被着により3次元成形物を製造する1つの好適な装置を極構成で示す図であって、装置は、それぞれ異なる液状の硬化可能な材料を提供する複数の異なる供給装置を有している。
【
図2】3次元成形物を製造する装置の側面図であって、装置は、液状の第1の材料を層状に被着するノズルと、液状の第2の材料を被着する、フレキソまたはグラビア印刷装置として形成された第2の材料被着ステーションとを備えた第1の供給装置を有している。
【
図3A】成形物を製造するそれぞれ異なる方法ステップの最中の成形物を示す横断面図である。
【
図3B】成形物を製造するそれぞれ異なる方法ステップの最中の成形物を示す横断面図である。
【
図3C】成形物を製造するそれぞれ異なる方法ステップの最中の成形物を示す横断面図である。
【
図3D】成形物を製造するそれぞれ異なる方法ステップの最中の成形物を示す横断面図である。
【
図3E】成形物を製造するそれぞれ異なる方法ステップの最中の成形物を示す横断面図である。
【
図3F】成形物を製造するそれぞれ異なる方法ステップの最中の成形物を示す横断面図である。
【
図4】材料層のフライス切削中の厚さフライスを示す側面図である。
【
図4A】材料層のフライス切削中の厚さフライスを示す側面図である。
【
図5】全ての材料層が被着された後の成形物の第1の実施例を示す横断面図である。
【
図6】第1および第2の材料から成る、成形物の硬化された材料層を示す概略図であって、層は透視的に示されている。
【
図7】第1および第2の材料の材料層から成る層スタックを示す立体図である。
【
図8】溶剤を用いて第1の材料の材料層を除去した後の成形物を示す立体図である。
【
図9】全ての材料層が被着された後の成形物の第2の実施例を示す横断面図である。
【
図10】第1の材料の材料層を除去した後の成形物の第2の実施例を示す横断面図である。
【
図11】
図2と類似の、ただしフレキソ印刷装置の代わりにロータリースクリーン印刷装置が設けられた装置を示す側面図である。
【
図12】
図2と類似の、ただしフレキソ印刷装置の代わりにチャンバドクタ式コーティング装置が設けられた装置を示す側面図である。
【
図13】円筒形のコーティングローラを示す図である。
【
図14】円錐台形のコーティングローラを示す図である。
【
図15】
図2と類似の、ただしフレキソ印刷装置の代わりにより高粘度用のインクジェット印刷装置が設けられた装置を示す側面図である。
【
図16】
図2と類似の、ただしフレキソ印刷装置の代わりにホットメルトまたは微量調量装置/コーティング装置が設けられた装置を示す側面図である。
【
図17】キャビティに第2の材料を充填する際のノズルを示す、
図16の部分拡大図である。
【
図18】第2の材料を被着するための印刷ヘッドモジュールの概略図である。
【
図19】第2の材料で満たされたキャビティを示す図である。
【
図20】円形の流出開口を有するノズルを備えた微量調量ユニットを示す図である。
【
図21】矩形の流出開口を有するノズルを備えた微量調量ユニットを示す図である。
【0034】
層状の材料被着により3次元の型および3次元の成形物1を製造する方法では、成形物1に関する幾何学形状データが、ソフトウェアを実行するコンピュータと通信する制御ユニットにより準備される。さらに、成形物1を支持するように水平面内に配置された基底面3を備えたプレート状の支持体部材2が準備される。
図1に見られるように、基底面3は実質的に、円環ディスクの形状を有している。しかしまた、基底面3が特に穴の塞がった円盤の形状を有しているかまたは矩形に形成されていてよい、別の構成も考えられる。
【0035】
さらに当該方法では、硬化可能な液状の第1の材料4、第1の材料とは異なる、硬化可能な液状の第2の材料5および硬化した第1の材料4のための溶剤としての水が準備される。硬化可能な第2の材料5は、溶剤中で溶解不能である。第2の材料5は、第2の材料5が硬化した状態において、硬化した第1の材料4よりも高い強度を有するように選択される。よって第2の材料5は、第1の材料4の粘度よりも高い粘度を有している。この実施例では、第1の材料4は、光重合開始剤を含みかつ紫外線照射により架橋可能なポリマである。
【0036】
液状の第1の材料4は第1のリザーバ6内に配置されており、液状の第2の材料5は第2のリザーバ7内に配置されている。第1のリザーバ6は導管を介して、第1の材料4用の第1の供給装置8に接続されている。
図2に認められるように、第1のリザーバ6は実質的に閉じられた容器として形成されており、第2のリザーバ7は槽として形成されている。
【0037】
第1の供給装置8は、1列に配置され、第1の材料4の部分材料を供給するために基底面3もしくは基底面3上に位置する第1および/または第2の材料4,5の硬化した材料層に向けられた、複数のノズル(詳しくは図示せず)を備えた第1のインクジェット印刷ヘッドを有している。ノズル列は、基底面3の平面に対して平行に配置されておりかつ基底面3の周方向に対して横方向に、好適には基底面3の中心に対して実質的に半径方向に延在している。
【0038】
支持体部材2と第1の供給装置8とは、第1の位置決め装置9を介して矢印10の方向および矢印10の方向とは反対の方向において互いに相対的に回転可能でありかつ回転軸線11に対して平行に相対的に移動可能である。この場合、基底面3内に位置しかつ回転軸線11から離間した複数の点は、らせん状またはつる巻線状の軌道曲線に沿って移動する。
【0039】
第1の供給装置8および第1の位置決め装置9は、製造しようとする成形物1の幾何学形状データを格納するためのデータメモリを有する制御装置(詳細には図示せず)に接続されている。制御装置により、幾何学形状データに基づいて第1の材料4の部分材料の供給および第1の位置決め装置9を制御することができ、これにより、流動性の第1の材料4から成る複数のネガ型層12を、基底面もしくは基底面に予め被着された、第1および/または第2の材料4,5の硬化した材料層に被着することができる(
図3A)。この場合、ネガ型層12はそれぞれ、製造しようとする成形物1の材料層のネガ形状を有する、少なくとも1つのキャビティ13を有している。キャビティ13は、それぞれ関係するネガ型層12の層厚さ全体にわたり、基底面3もしくはネガ型層12の下に位置する硬化した材料層まで延在している。
【0040】
矢印10の方向に見て第1の供給装置8の後ろには、第1の硬化装置14が配置されており、第1の硬化装置14により、基底面3にまたは基底面3上に位置する硬化した材料層に被着される液状の第1の材料4を硬化させることができる。このために第1の硬化装置14は、第1のUV線源(詳細には図示せず)を有しており、第1のUV線源により紫外線を、第1の材料の硬化されるべき材料層に放射することができ、これにより第1の材料に含まれる光架橋剤が活性化され、第1の材料4に含まれるポリマが架橋されるようになっている。
【0041】
矢印10の方向に見て第1の硬化装置14の後ろには、第2の供給装置15が配置されており、第2の供給装置15により、予め硬化させられた各ネガ型層12のキャビティ13に第2の材料5を充填し、これにより、成形物層16を形成することができるようになっている(
図3B)。
図2に示す実施例では、第2の供給装置15はフレキソ印刷装置として形成されている。
【0042】
第2の供給装置15は、フレキソ印刷ローラとして形成された転移体17と、第2のリザーバ7に接触しているコーティング装置18とを有しており、コーティング装置18により、転移体17の少なくとも1つの表面領域を、第2の材料5の層19でコーティングすることができるようになっている。第2の位置決め装置により、仮想の回転軸線を中心として円錐形の転移体17を回転させることができ、これにより、転移体17の周面上に位置する第2の材料5の層19がキャビティ13の底部および内壁に接触し、その結果、流動性の第2の材料5がキャビティ内に充填され、次いで成形物層16を形成する。成形物層16は、層12のネガ形状とは逆の、製造しようとする成形物1の層のポジ形状を有している。
【0043】
その後、このようにして得られた成形物層16は、第2の硬化装置21により硬化させられる。
図1に見られるように、第2の硬化装置21は、矢印10の方向に見て第2の供給装置14の後ろに配置されている。第2の硬化装置21は第2のUV線源を有しており、第2の材料を、その内部に含まれるポリマの架橋により硬化させるために、第2のUV線源により紫外線を成形物層16に放射することができるようになっている。
【0044】
その後、別の方法ステップにおいて、硬化したネガ型層12および/または硬化した成形物層16の領域および/またはネガ型層に配置された、硬化した第2の材料5が、厚さフライス若しくは平フライス22により除去される(
図3C、
図4、
図4A)。この場合、基底面に対して予め規定された間隔をあけて基底面に対して平行に配置された平面を越えて突出した、硬化した第1および/または第2の材料4,5の部分は、切削式の材料除去により完全に除去され、次いで吸込みノズル23により吸い込まれる。必要な場合には、吸込みノズル23の後ろに表面クリーニング装置20が配置されていてもよい。
【0045】
硬化されたネガ型層12および成形物層16の表面には、相応して別のネガ型層13(
図3D)および別の成形物層16(
図3E、
図3F)が被着される。これらのステップは、製造しようとする成形物の全ての成形物層16が形成されるまで(
図5~
図8)、繰り返される。
【0046】
1つの別の方法ステップにおいて、ネガ型層12は溶剤と接触させられ、これにより、硬化した第1の材料4は溶剤中に完全に溶解する。このことは、例えば、ネガ型層12と成形物層16とから成る層スタックが、予め規定された時間にわたり溶剤に浸漬させられることにより達成され得る。その後、完成した成形物(
図8)が溶剤から取り出されて乾燥させられる。
【0047】
図9および
図10に見られるように、本発明に基づく方法により、オーバハング25および中空空間26を備えた成形物も製造され得る。
【0048】
第2の材料5は、スクリーン印刷法によってキャビティ13内に充填することもできる。
図11に見られるように、この場合、転移体18はロータリースクリーン印刷ローラとして形成されている。ロータリースクリーン印刷ローラは、穿孔されたスクリーン状の周面を有している。第2のリザーバ7は、ロータリースクリーン印刷ローラの内部空洞内に配置されている。
【0049】
周面に設けられた穿孔穴は、その寸法に関して第2の材料5の粘度に合わせられており、これにより、ロータリースクリーン印刷ローラの胴壁の内周面に直線に沿って当接しているドクタ24により穿孔穴を通して、第2の材料5を押し通すことができるようになっている。ドクタ24の作用範囲外で第2の材料5が穿孔穴を通流することはない。供給箇所の後ろに配置されたクリーニング装置が、ロータリースクリーン印刷ローラにおいて除去されなかった材料を除去し、その材料を再利用するために循環させる。その他の点では、
図11に示した装置は
図2に示した装置に対応するため、相応して
図11には、
図2の説明が当てはまる。
【0050】
第2の材料5は、チャンバドクタ法でもキャビティ13内に充填され得る。
図12に見られるように、この場合、転移体18は、外周面にチャンバドクタ32が配置されたアニロックスローラとして形成されている。アニロックスローラは、相応に彫刻されかつ材料収容用に準備された周面を有している。その他の点では、
図12に示した装置は
図2に示した装置に対応するため、相応して
図12には、
図2の説明が当てはまる。
【0051】
デカルト座標法の場合、コーティング装置のローラ18は円筒形を成している(
図13)のに対し、極座標法の場合、ローラは円錐形を成している(
図14)。
【0052】
第2の材料5は、インクジェット印刷法によってキャビティ13内に充填することもできる(
図15)。このためには第2の供給装置15が、1列に配置され、第2の材料5をそれぞれ部分的に供給するための、基底面3もしくは基底面3上に位置する第1および/または第2の材料4,5の硬化した材料層に向けられた、複数のノズルを備えた第2のインクジェット印刷ヘッドを有している。ノズル列は、基底面3の平面に対して平行に配置されておりかつ基底面3の周方向に対して横方向に、好適には基底面3の中心に対して実質的に半径方向に延在している。第2の材料5は第1の材料4よりも高い粘度を有しているため、第2のインクジェット印刷ヘッドのノズルは、第1のインクジェット印刷ヘッドのノズルよりも大きな横断面を有している。より大きなノズル横断面を用いて作業する代わりにまたはより大きなノズル横断面に追加して、第2のインクジェット印刷ヘッドのノズルにおいて、第1のノズルにおけるよりも高いノズル圧を用いて作業することもできる。インクジェット印刷ヘッドに対する支持体部材2の位置決めは、
図1に相応して位置決め装置を介して行われる。第2の材料5の吐出量は、インクジェット印刷ヘッドと支持体部材2との間の相対位置に応じて、かつ製造しようとする成形物1用に準備される幾何学形状データに基づいて制御される。
【0053】
図16に示す実施例では、第2の材料5はノズル法またはホットメルト法でキャビティ13内に充填される。ノズル法では、高粘度の第2の材料5が室温でまたは室温に比べて温められた状態で、気体圧力によりノズル流出部を介して送出される。ホットメルト法では、第2の材料5は、室温では固形であり、加熱により液化可能な熱可塑性樹脂である。印刷過程中、第2の材料は加熱されて液状になり、次いで調量ポンプ、スクリューコンベヤまたは気体圧力により、充填されるべきキャビティ13に向けられたノズル27(
図17)を通って基底面3もしくは基底面3上に位置する第1および/または第2の材料4,5の硬化した材料層に供給される。ノズル27に対する支持体部材2の位置決めは、
図1に相応して位置決め装置9を介して行われる。ノズル27からの第2の材料5の吐出量は、ノズル27と支持体部材2との間の相対位置に応じて、かつ製造しようとする成形物1用に準備される幾何学形状データに基づいて制御される。第2の材料がキャビティ13内に充填された後、第2の材料は冷却により硬化させられる。
【0054】
さらに、第2の材料を微量調量法によりキャビティ13内に充填する可能性もある。
図18に見られるように、この場合、第2の材料5を加圧するために第2のリザーバ7は、例えば空気圧源であってよい気体圧力源28に接続されている。リザーバ7は、内部にそれぞれ開放位置および閉鎖位置を調節可能な弁30が配置された複数の導管29を介して、材料供給用のノズル27に接続されている。ノズル27の流出開口は、この流出開口と基底面3との間に小さな間隔をあけて配置され、このようにして支持体部材2に対し、基底面3に沿って位置決めされる。個々の弁30はそれぞれ、製造しようとする成形物1用に準備された幾何学形状データに基づいて、かつノズル27と支持体部材2との間の相対位置に応じて制御されるようになっており、ノズル27の流出開口がキャビティ13に位置決めされると、第2の材料5の材料流が解放される。ノズル27の流出開口がキャビティ13に位置決めされていない時に、材料流は遮断される。
【0055】
図18に見られるように、複数の微量調量ユニット31が設けられていてよく、微量調量ユニット31の弁30の入口は、それぞれ導管29を介して第2のリザーバ7に接続されている。各微量調量ユニット31は、それぞれ関係する弁30の出口に接続されたノズル27を有している。ノズル27はマトリックス状に複数列にかつ/または複数段に配置されている。弁30は、キャビティ13が第2の材料5により面状に被覆される(
図19)ように制御される。ノズル27は、円形(
図20)または角形、好適には矩形(
図21)の流出開口を有していてよい。