(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】多段階炭酸塩鉱物化
(51)【国際特許分類】
B01D 53/62 20060101AFI20230403BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20230403BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20230403BHJP
C01F 5/24 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
B01D53/14 210
C01F5/24
(21)【出願番号】P 2021512972
(86)(22)【出願日】2019-05-08
(86)【国際出願番号】 AU2019050424
(87)【国際公開番号】W WO2019213705
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-02-17
(32)【優先日】2018-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】520434891
【氏名又は名称】ミネラル カーボネーション インターナショナル ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】230111590
【氏名又は名称】金本 恵子
(72)【発明者】
【氏名】ベネラール エマッド
(72)【発明者】
【氏名】ブレント ジオフリー フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ケネディー エリック マイルス
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー ティモシー ケニルワース
(72)【発明者】
【氏名】レイソン マーク スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】シュトッケンフーバー マイケル
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0299024(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0030523(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0202032(US,A1)
【文献】特表2019-527178(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/332114(US,A1)
【文献】米国特許第4260192(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14-53/18、53/34-53/73、
53/74-53/85、53/92、53/96
C01F 1/00-17/38
C22B 1/00-61/00
B03C 1/00-1/32
C01B 33/00-33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 水性液と活性化ケイ酸マグネシウム鉱物を含む粒子状固体とを含む水性スラリーを提供するステップ;
b) 溶解段階において、CO
2含有ガス流を、前記鉱物からマグネシウムを溶解させてマグネシウムイオン濃縮炭酸水性液とマグネシウム枯渇固体残渣とを含むスラリーを提供するために、前記水性スラリーと第1の圧力で接触させるステップ;および
c) 沈殿段階において
、各段階を先行する段階と比べて低い圧力とする複数連続的段階的減圧により
CO
2
を放出させ、pHを上昇させることにより、ステップb)で溶解したマグネシウムイオンから炭酸マグネシウムを沈殿させるステップ;
を含む、二酸化炭素の回収、隔離および利用のための統合プロセスであって、
ここで、CO
2が各連続的段階的減圧により放出され、相応して段階的に圧縮されて溶解段階にリサイクルされる、統合プロセス。
【請求項2】
前記マグネシウムイオン濃縮炭酸水性液が、大気圧を超える圧力のインプットCO
2含有ガス流が供給された1以上の反応器内で、前記活性化ケイ酸マグネシウム鉱物を溶解し、その後、2以上の沈殿段階において、溶解したCO
2を液体への圧力の低下を介して除去することにより、液体中のpHシフトを誘発し、それにより前記炭酸マグネシウムを沈殿させることにより生成される、請求項1に記載の統合プロセス。
【請求項3】
前記マグネシウムイオン濃縮炭酸水性液が
、大気圧またはそれを超える圧力のインプットCO
2含有ガス流が供給された1以上の反応器内で、前記活性化ケイ酸マグネシウム鉱物を溶解し、その後、2以上の別個の沈殿段階において、溶解したCO
2を少なくとも1つの沈殿段階における部分真空または大気圧未満の圧力の印加を介して除去することにより、溶液中のpHシフトを誘発し、それにより前記炭酸マグネシウムを沈殿させることにより生成される、請求項1または2に記載の統合プロセス。
【請求項4】
前記溶解段階は、溶解反応器内で行われ、前記溶解反応器を出るスラリーは、固体を液体か
ら分離する分離機内で分離プロセスに付され、前記スラリーが前記マグネシウムイオン濃縮炭酸水性液を含むスラリー流と前記マグネシウム枯渇固体残渣を含むスラリー流とに分離される、請求項1~3のいずれか一項に記載の統合プロセス。
【請求項5】
各溶解段階における圧力が100~20000kPaの範囲内であり、温度が20℃~185℃の範囲内である、請求項1から4のいずれか一項に記載の統合プロセス。
【請求項6】
任意の段階的減圧から放出されるCO
2を含む流れが、圧縮され、任意の先行する段階から放出されるCO
2を含む流れとブレンドされ、その後、さらに圧縮されて溶解段階にリサイクルされる、請求項1~5のいずれか一項に記載の統合プロセス。
【請求項7】
圧縮されたCO
2を含む流れが、冷却されてから、任意の先行する段階から放出されるCO
2を含む流れとブレンドされ、その後、さらに圧縮されて溶解段階にリサイクルされる、請求項6に記載の統合プロセス。
【請求項8】
前記冷却により、同伴水蒸気が凝縮される、請求項7に記載の統合プロセス。
【請求項9】
凝縮された水がプロセスにリサイクルされる、請求項8に記載の統合プロセス。
【請求項10】
前記マグネシウム枯渇固体残渣を湿式磁気分離プロセスに付して、鉄リッチ部分を抽出する、請求項4に記載の統合プロセス。
【請求項11】
前記マグネシウム枯渇固体残渣を化学処理に付して、含まれるシリカを精製する、請求項4に記載の統合プロセス。
【請求項12】
前記化学処理が酸浸出である、請求項11に記載の統合プロセス。
【請求項13】
請求項1に記載のプロセスを実行するように構成される反応器システムであって、各々が段階的減圧を提供して沈殿した炭酸マグネシウムを回収するように構成された2以上の沈殿反応器を備える、反応器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素の回収、隔離および利用(CCSU)のためのプロセスならびにこのプロセスを実践するのに好適な反応器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大気から隔絶された貯蔵部内に二酸化炭素ガスを隔離することは、大気への二酸化炭素排出を低減する地球規模の試みにおいて不可欠な要素として広く認識されている開発途上の技術である。大気中二酸化炭素濃度の急速な増加は、温室効果ガスとしてのその特性ならびに地球温暖化および気候変動の現象に対するその寄与に起因して問題となっている。二酸化炭素の回収および隔離(CCS)のためのプロトタイプの実証設備はいくつかの国に存在し、商業規模の運転も近年行われはじめた。発電用の石炭燃焼等における燃焼排ガスからの二酸化炭素の回収および濃縮のための様々な技術が存在するが、最新の設備は、適切な地下貯蔵部への加圧二酸化炭素の注入による地下隔離を利用している。これは一般に地中隔離として知られている。これは、大気から好適に隔絶された枯渇した石油もしくはガス貯蔵部またはその他の地下多孔質層(underground porous formations)において行うことができる。これらの貯蔵部または層は、陸地または海の下に位置し得る。二酸化炭素ガス用の別の可能な地下貯蔵部は、いわゆる塩水性帯水層である。深い海底への直接的な二酸化炭素貯蔵もまた調査されているが、大規模での実証はいまだ成功していない。
【0003】
二酸化炭素隔離の別の研究分野は、炭酸塩鉱物化(mineral carbonation)として知られるものであり、二酸化炭素はアルカリまたはアルカリ土類金属酸化物またはケイ酸塩鉱物と化学反応して安定な固体炭酸塩を形成する。この手法は、in-situ炭酸塩化(carbonation)に対してex-situ炭酸塩鉱物化として知られ、二酸化炭素は地下鉱物層内に堆積され、既存の地下層内の好適な鉱物とより長い時間をかけて反応する。本発明は、炭酸塩を形成するケイ酸塩鉱物の炭酸塩鉱物化による二酸化炭素隔離のex-situ手法に関連する。
【0004】
炭酸塩鉱物化は、他の二酸化炭素隔離の方法に勝る多くの潜在的利点を有する。これには、形成された炭酸塩の恒久性および安定性ならびに二酸化炭素ガスの漏出リスクの排除が含まれる。さらに、地中隔離に好適な地下サイトは、二酸化炭素排出源の近くになければならない全ての場所に存在するわけではない。また、炭酸塩鉱物化の化学反応は、炭酸塩の形成に起因する発熱性のエネルギー放出により、熱力学的に有利である。炭酸塩鉱物化に必要なケイ酸塩原鉱は豊富であり、世界中に広く分布している。これらの鉱物は、容易に採鉱することができ、既知の微粉化および他の処理技術に供することができる。それらは一般に無害であり、環境および安全性のリスクは容易に管理され得る。特に、蛇紋岩として広く知られているケイ酸マグネシウム鉱物は、既知の化石燃料埋蔵量に由来する二酸化炭素の全地球規模排出量を隔離するのに十分な量で入手可能であると推定されている。
【0005】
O’Connorら、2005-Aqueous Mineral Carbonation: Mineral Availability, Pre-treatment, Reaction Parametrics and Process Studies、DOE/ARC-TR-04-002-Albany Research Center、Albany、OR、USAに記載のもの等のいわゆる一段階炭酸塩化プロセスは、一段階での活性化鉱物からのマグネシウムの溶解および炭酸マグネシウムの沈殿を含み、それにより未反応の鉱物、炭酸マグネシウムおよびシリカの混合物が生成される。この混合物は、実用的な生成物への分離が困難である。マグネシウムから炭酸マグネシウムへの変換度もまた制限されている。
【0006】
いわゆる二段階または多段階炭酸塩化プロセスは、別々のマグネシウム溶解および炭酸マグネシウム沈殿の段階を含む。マグネシウム溶解段階は、二酸化炭素(CO2)含有ガス流を使用する。Mercierら(US9440189B2)およびWernerら(Flue gas CO2 mineralization using thermally activated serpentine: from single- to double-step carbonation、Physical Chemistry Chemical Physics 16 (2014) 24978~24993ページ)を含む様々な研究者が、そのようなプロセスを記載している。
【0007】
鉱石の炭酸塩化の既存の多段階プロセスは、低い溶解性または沈殿速度ならびに高いエネルギーおよびプロセスコストのいずれかによって、工業的適用に十分に効率的とはまだいえない。
【0008】
この背景に対して、以前に記載のものよりも効率的にCO2を炭酸塩中に隔離し、シリカリッチ生成物を生成する新たな統合プロセスを提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、経済的価値のある生成物を生成しながら、二酸化炭素ガスを恒久的および安全に回収および隔離するための方法を提供することを目的とする。本発明は、特に、二酸化炭素およびケイ酸マグネシウムの供給原料から固体炭酸塩およびケイ酸塩への化学変換のための効率的で経済的に実行可能な統合プロセスに関連し、それにより、大気中に放出される二酸化炭素の量の低減が可能になると同時に、経済的な実用性および価値を有する生成物、特に炭酸マグネシウムおよびシリカが生成される。この生成物の利用により、本発明の方法は、CCSではなく二酸化炭素の回収、隔離および利用(CCSU)として分類される。
【0010】
本発明は、
a)水性液と活性化ケイ酸マグネシウム鉱物を含む粒子状固体とを含む水性スラリーを提供するステップ;
b)溶解段階において、CO2含有ガス流を、前記鉱物からマグネシウムを溶解させてマグネシウムイオン濃縮炭酸水性液(magnesium ion enriched carbonated aqueous liquid)とマグネシウム枯渇固体残渣(magnesium depleted solid residue)とを含むスラリーを提供するために、該水性スラリーと第1の圧力で接触させるステップ;および
c)沈殿段階において、ステップb)で溶解したマグネシウムイオンから炭酸マグネシウムを、各段階を先行する段階と比べて低い圧力とする複数連続的段階的減圧により、沈殿させるステップ;
を含む、二酸化炭素の回収、隔離および利用のための統合プロセスであって、
ここで、CO2が各連続的段階的減圧により放出され、相応して段階的に圧縮されて溶解段階にリサイクルされる、統合プロセスを提供する。
【0011】
本発明はまた、本発明のプロセスを実行するように構成される反応器システムを提供する。この反応器システムは、2以上の沈殿反応器を備えており、これらの沈殿反応器は、各々が段階的減圧を提供して沈殿した炭酸マグネシウムを回収できるように構成される。この反応器システムは、1以上の溶解反応器を備えてもよい。2以上の溶解反応器を使用する場合は、溶解反応器を順番に連続的に増加する圧力で作動してもよい。
【0012】
本明細書および以下の特許請求の範囲全体にわたり、文脈により異なる意味が必要とされない限り、「含む/備える(comprise)」という用語、および「含む/備える(comprises)」および「含む/備える(comprising)」等の変化形は、述べられた整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群を含むことを意味するが、任意の他の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群の除外を意味しないことが理解される。
【0013】
本明細書における、任意の先行する出版物(またはそれから得られた情報)または知られている任意の事項への言及は、先行する出版物(またはそれから得られた情報)または知られている事項が、本明細書が関連する努力傾注分野における共通した一般的知識の一部を形成することの承認または容認または任意の示唆形態として解釈されず、また解釈されるべきではない。
【0014】
添付の非限定的図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1のプロセスを例示するフローシートである。
【
図2】実施例2のプロセスを例示するフローシートである。
【
図3】実施例3のプロセスを例示するフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明によれば、粒子状形態の活性化鉱物からの溶解により、マグネシウムイオンが水性液中に供される。
【0017】
本発明は、活性化ケイ酸マグネシウム鉱物(粒子状形態)を含む水性スラリーを、加圧下でCO2含有ガス流と接触させる最初の溶解段階を使用する。これは、鉱物からマグネシウムを溶解させて、マグネシウムイオン濃縮炭酸水性液およびマグネシウム枯渇固体残渣を含むスラリーを供給する。この溶解段階および場合により1以上の追加の溶解段階において溶解したマグネシウムは、炭酸マグネシウムの沈殿に使用される。
【0018】
溶解反応により、水溶液中にマグネシウムイオンと共に炭酸および重炭酸対イオンが供される。異なる溶解段階(反応器)が使用される場合、各段階(反応器)により生成されるマグネシウムイオン濃縮炭酸水性液を、沈殿の前に合わせてもよい。しかしながら、これは必須ではない。
【0019】
本発明において、炭酸塩鉱物化は、二酸化炭素が活性化ケイ酸マグネシウム鉱物の供給原料からのマグネシウムと反応して炭酸マグネシウムおよびシリカを形成するプロセス全体を指す。活性化ケイ酸マグネシウム鉱物への言及は、粉砕または加熱またはその両方により活性化されたケイ酸マグネシウム鉱物を指す。本発明においては反応は水性液中で生じるものであり、1以上の溶解段階においてケイ酸マグネシウムからマグネシウムが水性液中に浸出し、2以上の沈殿段階において少なくとも1つのそのような液体から炭酸マグネシウムが沈殿する。
【0020】
溶解段階への言及は、(マグネシウム)金属イオンが固体鉱物から水性液中に浸出するプロセス段階を指す。水性液への言及は、水が主要構成成分(50質量%超)である液体を含む。水性液は、副次構成成分(50質量%未満)として、固体等の溶解種または水混和性液を含んでもよい。海水、ブラインおよび塩水がこれに含まれる。水性液への言及はまた、水に溶解したCO2等の気体種も包含する。水性液への言及は、さらに、水に溶解した酸または酸塩を包含する。水性液は、本明細書に記載の成分の組合せを含んでもよい。
【0021】
水性液は、当然ながら、溶解していない粒子状固体も含有する。粒子状固体は、少なくとも活性化ケイ酸マグネシウム鉱物を含む。水性液中のその粒子状固体は、水性スラリーをもたらす。1以上の他の粒子状固体もまた、水性液中に存在し得る。粒子状固体は、一般に、水性液中に懸濁状態で存在する。
【0022】
マグネシウムイオン濃縮炭酸水性液への言及は、マグネシウムイオンが重炭酸および炭酸対イオンと共に溶液中に存在する液体を含む。
【0023】
溶解段階において使用されるCO2含有ガス流は、同じまたは異なるソースに由来してもよい。ガス流は、炭化水素燃焼プロセスからの排ガスを含んでもよく、または、炭化水素燃焼、酸化もしくは改質プロセスからまたは天然ガス処理から回収された比較的高純度のCO2流であってもよい。そのような流れは、2~100体積%の範囲内のCO2濃度を含み得る。回収プロセスは周知であり、アミンまたは他のCO2吸収剤もしくは吸着剤あるいは排ガスからCO2を分離するための選択膜あるいは、例えばいわゆるオキシ燃料燃焼による、燃焼前回収(pre-combustion capture)の使用を含んでもよい。溶解段階において使用されるCO2含有ガス流は、沈殿段階から放出およびリサイクルされたCO2を含んでもよい。
【0024】
沈殿段階への言及は、水性液中のマグネシウムイオンが、固体炭酸マグネシウムとして溶液から沈殿するプロセスを含み、固体炭酸マグネシウムとしてはマグネサイトの形態でもよくまたは水和形態の炭酸マグネシウム(例えば、ハイドロマグネサイト、ダイピング石(dypingite)およびネスケホン石(nesquehonite)もしくはそれらの混合物を含む)でもよい。沈殿は、複数の(すなわち、2以上の)連続的段階的減圧を経て起こる。各段階的減圧によりCO2が放出され、pHの上昇につれて炭酸マグネシウムの沈殿を引き起こす。各段階で放出されたCO2は、相応して段階的に再圧縮され、溶解段階にリサイクルされる。各段階から放出されたCO2は、その前の段階の圧力に再圧縮されてもよく、溶解段階の圧力に再圧縮されてもよい。
【0025】
この放出されたCO2の段階的な再圧縮は、全てのCO2を再圧縮して溶解段階の圧力に戻すために必要な全体的なエネルギーを減少させる。再圧縮段階間の圧縮流の冷却は、必要とされる全体的な再圧縮エネルギーをさらに減少させ、最適な時点でプロセスにリサイクルされる同伴水又は水蒸気の回収を容易にするのであろう。各段階での沈殿は、例えば温度などの、1以上の他のプロセス条件を変更することにより促進してもよい。
【0026】
ここで、文脈から別の意味が明らかでない限り、炭酸マグネシウムへの言及は、水和形態の炭酸マグネシウム(水和形態の炭酸マグネシウムとしては、ハイドロマグネサイト、ダイピング石およびネスケホン石またはそれらの混合物が含まれる)を含む。
【0027】
本発明の方法において供給原料として使用される最初の粒子状固体は、例えばかんらん石、蛇紋岩、ダナイトまたはそれらの混合物等の、活性化ケイ酸マグネシウム鉱物を含む。固体は、質量中央直径(D50)が5~250ミクロン、好ましくは20~150ミクロンの範囲内である粒径まで粉砕してもよい。粉砕の前または後に、鉱物を溶解に向けて活性化させるために加熱してもよい。一部の供給原料は加熱を必要としない場合があり、粉砕により十分に活性化される場合があり、それにより活性化ケイ酸マグネシウム鉱物を含むものとなる。
【0028】
ケイ酸マグネシウム鉱物は、粒子状鉱物を高温(例えば570℃~700℃の範囲内)に加熱して、脱ヒドロキシル化ケイ酸マグネシウム(dehydroxylated magnesium silicate)を含む活性化粒子状固体を形成することにより活性化してもよい。活性化粒子状固体は、脱ヒドロキシル化ケイ酸マグネシウムを含み、通常200℃未満まで冷却されてから水性液(例えば水)と混合され、水性スラリーをもたらす。この実施形態において、加熱された活性化固体からの熱は、例えば別のプロセス流の加熱または発電用蒸気の生成等の、有益な用途のために回収してもよい。
【0029】
任意の溶解段階からのマグネシウム枯渇固体残渣は、鉄リッチ部分を抽出するために、湿式磁気分離プロセスに付してもよい。鉄リッチ部分を、任意の後続処理の前に、有用な生成物として抽出してもよい。
【0030】
任意の溶解段階からのマグネシウム枯渇固体残渣がプロセスから回収され得、その中のシリカは、磁気分離に供されるか否かに関わらず別の有用な生成物として回収され得る。マグネシウム枯渇固体残渣は、そこに含まれるシリカを精製するために、例えば酸による浸出等の、化学処理に付してもよい。
【0031】
本プロセスの各段階の圧力および温度または他の操作条件は、各段階における反応を最適化するために変更してもよい。絶対圧力は5kPa~20000kPaの範囲内に、温度は10℃~200℃の範囲内に維持されてもよい。好ましくは、各溶解段階における圧力は100~20000kPaの範囲内であり、温度は20℃~185℃の範囲内である。好ましくは、沈殿段階における圧力は溶解段階より低く、5~5000kPaの範囲内であり、温度は20℃~150℃の範囲内である。各沈殿段階の圧力は、それに先行する段階より低い。温度または他の操作条件も、各段階で起こる溶解または沈殿を最適化するために変更してもよい。
【0032】
一実施形態において、本発明は、マグネシウムイオン濃縮炭酸液が、大気圧を超える圧力のインプットCO2含有ガス流が供給された1以上の反応器内で、活性化ケイ酸マグネシウム鉱物を溶解し、その後、2以上の沈殿段階において、溶解したCO2を液体へ圧力の低下を介して除去することにより、液体中のpHシフトを誘発し、それにより炭酸マグネシウムを沈殿させることにより生成される、プロセスを提供する。圧力は、各段階がそれに先行する段階よりも低い絶対圧力を有するように、段階的なやり方で漸減される。各段階的減圧によりCO2が放出され、pHが上昇して炭酸マグネシウムの沈殿が引き起こされる。各段階から放出されたCO2は、相応して段階的に再圧縮され、溶解段階にリサイクルされる。各段階から放出されたCO2を、先行する段階の圧力まで再圧縮してもよく、または、溶解段階の圧力まで再圧縮してもよい。
【0033】
一実施形態において、本発明は、マグネシウムイオン濃縮炭酸液が、大気圧付近、大気圧またはそれを超える圧力のインプットCO2含有ガス流が供給された1以上の反応器内で、活性化ケイ酸マグネシウム鉱物を溶解し、その後、2以上の別個の沈殿段階において、溶解したCO2を少なくとも1つの沈殿段階における部分真空または大気圧未満の圧力の印加を介して除去することにより、溶液中のpHシフトを誘発し、それにより炭酸マグネシウムを沈殿させることにより生成される、プロセスを提供する。圧力は、各段階が先行する段階よりも低い絶対圧力を有するように、各段階で漸減される。各段階的減圧によりCO2が放出され、pHが上昇して炭酸マグネシウムの沈殿が引き起こされる。各段階から放出されたCO2は、相応して段階的に再圧縮され、溶解段階にリサイクルされる。各段階から放出されたCO2を、先行する段階の圧力まで再圧縮してもよく、または、溶解段階の圧力まで再圧縮してもよい。この放出されたCO2の段階的な再圧縮は、すべてのCO2を再圧縮して溶解段階の圧力に戻すために必要な全体的なエネルギーを減少させる。再圧縮段階間の圧縮流の冷却は、必要とされる全体的な再圧縮エネルギーをさらに減少させ、最適な時点でプロセスにリサイクルされる同伴水又は水蒸気の回収を容易にするであろう。
【0034】
一つのこうした実施形態において、沈殿段階から放出されたCO2は、先行する沈殿段階の圧力まで圧縮され、当該先行する沈殿段階から放出されたCO2とブレンドされてから、さらに圧縮されてリサイクルされる。一つのこうした実施形態において、さらなる圧縮に必要なエネルギーを減少させるために、冷却が各圧縮点間に提供される。各圧縮点の後に冷却によって凝縮された水は、ガス流から除去されプロセスにリサイクルされてもよい。
【0035】
本発明によって提供される利点は、下記から導き出すことができる:
-沈殿段階から実質的に純粋なCO2の流れを回収すること。このCO2を溶解段階にリサイクルできるため、排ガスインプット流と比較して、より高濃度のCO2を溶解のために提供する;
-沈殿段階での段階的減圧による、これらの流れの再圧縮における大幅なエネルギーの節約。各段階から放出されるCO2を再圧縮するために必要な全体的エネルギーは、すべてのCO2が、単一段階の減圧を伴う単一の沈殿段階で放出される場合よりも少ない。各段階から放出されたCO2は、全放出CO2の一部のみを構成し、それ自身の圧力から先行する圧縮段階の圧力までのみ圧縮されることができるのであり、放出された全てのCO2を最終的な低圧から溶解段階の圧力まで再圧縮するものではない。したがって、沈殿段階および再圧縮段階の操作圧力は、全体的な再圧縮エネルギーを最小化しながら沈殿を最適化するように選択され得る;および
-段階と段階の間の再圧縮されたCO2流の段階間冷却は、必要とされる再圧縮エネルギーのさらなる削減と、最も好ましいポイントでプロセスに戻すことができる同伴水または水蒸気の回収を提供する。これらのポイントは、プロセス内の温度およびスラリー濃度を最適化するように選択し得る。
【0036】
一実施形態において、溶解反応器を出るスラリーは、固体を液体から実質的に分離する分離機内で分離プロセスに付され、スラリーがマグネシウムイオン濃縮炭酸水性液を含む流れとマグネシウム枯渇固体残渣を含む流れとに分離される。マグネシウムイオン濃縮水性液を含む流れは沈殿反応器に供される。
【0037】
別の実施形態において、本発明は、本発明のプロセスを実行するように構成される反応器システムを提供する。反応器システムは、1以上の溶解反応器と、段階的減圧を提供し、放出されたCO2および沈殿した炭酸マグネシウムを回収するように構成された1以上の沈殿反応器とを備える。
【0038】
さらなる実施形態において、このシステムは、直列または並列構成で配置された2以上の溶解反応器および2以上の沈殿反応器を、たとえば熱伝導および液体/固体もしくは固体/気体分離プロセス等の、前処理および後処理ユニット操作と共に備えていてもよい。この場合、各脱気/沈殿反応器内で遊離した二酸化炭素は、1以上の溶解反応器にリサイクルされ、さまざまな操作圧力と任意の他のプロセス条件で、プロセス効率を高めることができる。実施形態において、濃縮CO2流を別々の反応器内で活性化鉱物供給原料と反応させて、または、1以上の溶解反応器にリサイクルして、後続の脱気/沈殿段階を介して炭酸マグネシウムを形成することができ、それにより本発明の1つの有用な生成物としての炭酸マグネシウムの形成を最大化することができる。
【0039】
本発明は、以前の炭酸塩鉱物化プロセスに勝る大きな改善を提供し得、プロセス全体を予測され得るものよりもエネルギー的および経済的に有利にし、ひいては以前のプロセスより競争力のあるものにする。したがって、本発明は、二酸化炭素から安定な炭酸マグネシウムへの変換のより有利な手段を提供し得、それにより大気中に放出される二酸化炭素量の低減を可能にする。本発明の実施形態は、ex situ炭酸塩鉱物化に従来使用されていた条件と比較して、エネルギー的に有益な(圧力および温度を含む)操作条件下で実践し得る。本発明の実施形態は、従来のプロセスにおいて別途許容されていたものより高いレベルの酸性および/または他の不純物を含有する二酸化炭素含有ガス流を使用して実践し得る。
【0040】
ここで、以下の限定されない実施例を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0041】
<実施例1>
図1は、本発明の実施形態を例示するプロセスフローシートを示す。簡略化のため、中間の熱交換機、ポンプ、その他のプロセスユニットは省略されている。そのような中間のユニットは、プロセスのある特定の点で必要となることが、当業者に理解される。
【0042】
図1は、単一の溶解段階および2つの沈殿段階を有するプロセスを示す。これは、活性化ケイ酸マグネシウム鉱物を生成するためにケイ酸マグネシウム鉱物供給流が加熱される活性化プロセス(1)、活性化された鉱物の水性スラリーを供給するために水が活性化ケイ酸マグネシウム鉱物と混合されるスラリー補給槽(2)、スラリーがCO
2含有ガス流(3)と加圧下で接触させられる溶解反応器(4)を示す。ここで、CO
2含有ガス流は、排ガス回収プロセスからの比較的高純度のCO
2を含み、600kPaに加圧される。溶解反応器の温度は50℃である。ここで、ケイ酸マグネシウム鉱物供給流は、37ミクロンの質量中央粒子直径を有する。溶解反応器(4)を出るスラリーは、スラリーをマグネシウムイオン濃縮炭酸水性液とマグネシウム枯渇固体残渣とに実質的に分離する分離機(5)に移される。固体残渣は第1の生成物流を形成してもよく、たとえば鉄を回収するための磁気分離や酸浸出などでさらに処理してしてもよい。
【0043】
分離機(5)からのマグネシウムイオン濃縮炭酸水性液は、第1の沈殿反応器(6)に供給され、そこで圧力が200kPaに低下されて炭酸マグネシウムの沈殿が生じる。第1の沈殿反応器の温度は70℃である。減圧により解放されたCO2は、再圧縮され(7)、溶解反応器(4)にリサイクルされる。第1沈殿反応器(6)を出たスラリーは、沈殿した炭酸マグネシウムを残りのマグネシウムイオン水溶液から実質的に分離する分離器(5A)に移される。
【0044】
分離器(5A)からの残りのマグネシウムイオン水性液体は、第2の沈殿反応器(6A)に供給され、ここでは、圧力が50kPaまでさらに減圧されて、炭酸マグネシウムのさらなる沈殿が起こる。第2の沈殿反応器の温度は85℃である。減圧により放出されたさらなるCO2ガスは、再圧縮され(7A)、第1の沈殿反応器(6)から放出されたCO2と混合された後、さらに圧縮され(7)、溶解反応器(4)にリサイクルされる。第2の沈殿反応器(6A)を出たスラリーは、沈殿した炭酸マグネシウムを残りのマグネシウムイオン水溶液から実質的に分離する分離器(5B)に移される。残りのマグネシウムイオン水溶液は、スラリー補給槽(2)にリサイクルされる。
【0045】
<実施例2>
図2は、本発明のさらなる実施形態を例示するプロセスフローシートを示す。簡略化のため、中間の熱交換機、ポンプ、その他のプロセスユニットは省略されている。そのような中間のユニットは、プロセスのある特定の点で必要となることが、当業者に理解される。
【0046】
図2は、45ミクロンの質量中央粒子直径を有する活性化ケイ酸マグネシウム鉱物を生成するために、ケイ酸マグネシウム鉱物供給流が加熱および粉砕される活性化プロセス(1)、活性化鉱物の水性スラリーを供給するために、水が活性化ケイ酸マグネシウム鉱物と混合されるスラリー補給槽(2)、スラリーが、圧縮しておいた(3)CO
2含有ガス流と接触させられる第1の溶解反応器(4)を示す。ここで、CO
2含有ガス流は、排ガスを含み、1000kPaに加圧され、80kPaのCO
2分圧を与える。溶解反応器の温度は50℃である。第1の溶解反応器(4)を出るスラリーは、マグネシウムイオン濃縮炭酸液およびマグネシウム枯渇固体残渣を含む。第2の溶解反応器(4A)において、マグネシウムが鉱物からさらに溶解される。ここで、CO
2分圧は600kPa、温度は60℃である。第2の溶解反応器を出たスラリーは、分離ユニット(5)に供給され、そこで水性液体が、シリカリッチ生成物を含む固体残渣から分離される。分離されたマグネシウムイオン濃縮炭酸水性液は、一連の沈殿反応器(6)および(6A)に供給され、ここで炭酸マグネシウムの沈殿が起こる。
【0047】
この実施例では、2つの連続的な段階的減圧により、沈殿反応器(6、6A)からCO2ガスが徐々に放出され、液体pHの段階的な増加を引き起こし、マグネシウムイオン濃縮炭酸水性液からの炭酸マグネシウムの沈殿を誘発する。放出された炭酸マグネシウムは再圧縮され(7A、7B)、600kPaの圧力で第2の溶解反応器(4A)に送り返される。第1の沈殿反応器(6)では、圧力を200kPaに減圧する。第1の沈殿反応器の温度は60℃である。第1の沈殿反応器(6)を出たスラリーは、沈殿した炭酸マグネシウムを残りのマグネシウムイオン水溶液から実質的に分離する分離器(5A)に移される。
【0048】
分離器(5A)からの残りのマグネシウムイオン水性液体は、第2の沈殿反応器(6A)に供給され、ここでは、部分真空を適用することで圧力が50kPa絶対圧までさらに低下されて、炭酸マグネシウムのさらなる沈殿が起こる。第2の沈殿反応器の温度は65℃である。減圧により解放されたCO2ガスは、再圧縮され(7B)、溶解反応器(4A)にリサイクルされる。
【0049】
この実施例では、分離器(5)からシリカリッチ固体を含む生成物流が生成される。この流れを、高価値な生成物を生成するためにさらに処理してもよい。特に、これを、湿式磁気分離機内で処理して、有用な生成物となり得る鉄リッチ分画を除去してもよい。残ったシリカリッチ分画は、別の有用な生成物ともなり得、または、例えば残留金属の酸浸出により、さらに処理もしくは精製してもよい。沈殿反応器(6、6A)に続く分離器(5A、5B)から、沈殿反応器を出るスラリーを、固体リッチ流と液体リッチ流に分離することにより、さらなる生成物流が生成される。分離された固体リッチ流は、有用な生成物の1つであるネスケホン石を含む水和炭酸マグネシウムを含む。液体リッチ流は、プロセスに戻される。
【0050】
<実施例3>
図3は、本発明のさらなる実施形態を例示するプロセスフローシートを示す。簡略化のため、中間の熱交換機、ポンプ、その他のプロセスユニットは省略されている。そのような中間のユニットは、プロセスのある特定の点で必要となることが、当業者に理解される。
【0051】
図3は、45ミクロンの質量中央粒子直径を有する活性化ケイ酸マグネシウム鉱物を生成するために、ケイ酸マグネシウム鉱物供給流が加熱および粉砕される活性化プロセス(1)、活性化された鉱物の水性スラリーを供給するために、水が活性化ケイ酸マグネシウム鉱物と混合されるスラリー補給槽(2)、スラリーが、圧縮された(3)CO
2含有ガス流と接触する第1の溶解反応器(4)を示す。ここで、CO
2含有ガス流は、排ガスを含み、1000kPaに加圧され、80kPaのCO
2分圧を与える。第1の溶解反応器(4)の温度は40℃である。第1の溶解反応器(4)を出るスラリーは、マグネシウムイオン濃縮炭酸液およびマグネシウム枯渇固体残渣を含む。第2の溶解反応器(4A)内では、鉱物からマグネシウムがさらに溶解する。ここで、CO
2分圧は600kPaであり、温度は50℃である。第2の溶解反応器を出るスラリーは、分離ユニット(5)に供給され、そこでシリカリッチ生成物を含む固体残渣から水性液が分離される。分離されたマグネシウムイオン濃縮炭酸水性液は、一連の沈殿反応器(6)および(6A)に供給され、そこで炭酸マグネシウムの沈殿が生じる。
【0052】
この実施例では、連続的な段階的減圧により沈殿反応器(6、6A)から徐々にCO2ガスが放出され、液体pHの段階的な増加を引き起こし、マグネシウムイオン濃縮炭酸水性液からの炭酸マグネシウムの沈殿を誘発する。第1の沈殿反応器(6)では、圧力を200kPaに減圧する。第1の沈殿反応器の温度は60℃である。第1の沈殿反応器(6)を出たスラリーは、水性液を水和炭酸マグネシウム生成物を含む固体から実質的に分離する分離器(5A)に供給される。
【0053】
分離器(5A)からの残りのマグネシウムイオン水性液体は、第2の沈殿反応器(6A)に供給され、ここでは、部分真空を適用することにより圧力が50kPa絶対圧までさらに低下されて、炭酸マグネシウムのさらなる沈殿が起こる。第2の沈殿反応器の温度は65℃である。
【0054】
第2の沈殿反応器(6A)から解放されたCO2は、第1の沈殿反応器(6)の圧力まで再圧縮され(7B)、第1の沈殿反応器(6)から解放されたCO2とブレンドされる。ブレンドされたCO2は、第2の溶解反応器(4A)の圧力まで再圧縮され(7A)、第2の溶解反応器(4A)から解放されたCO2とブレンドされる。本実施例では、圧縮段階(7B)と(7A)との間および圧縮段階(7A)と(7)との間に冷却ユニット(8)および(8A)が設けられる。凝縮水が、これらの冷却ユニットから除去され、例えば補給槽(2)で、プロセスにリサイクルされてもよい。
【0055】
第1の沈殿反応器(6)を出たスラリーは、沈殿した炭酸マグネシウムを残りのマグネシウムイオン水溶液から実質的に分離する分離器(5A)に移される。
【0056】
この実施例では、シリカ濃縮固体を含む分離機(5)から生成物流が生成される。この流れは、高価値の生成物を生成するためにさらに処理してもよい。特に、これは、有用な生成物となり得る鉄リッチ分画を除去するために、湿式磁気分離機内で処理してもよい。残留したシリカリッチ分画は、別の有用な生成物としてもよく、または、例えば任意の残留金属の酸浸出により、さらに処理もしくは精製してもよい。沈殿反応器を出るスラリーを固体リッチ流および液体リッチ流に分離することにより、沈殿反応器(6、6A)に続く分離機(5A、5B)から、さらなる生成物流が生成される。分離された固体リッチ流は、水和炭酸マグネシウムを含み、これは別の有用な生成物を表す。液体リッチ流は、プロセスに戻される。本実施例では2つの沈殿段階を示したが、各段階がそれに先行する段階より低い圧力であるようにして、2つより多くの段階を使用することも可能である。こうした2つの段階に関しては、各段階から放出されたCO2を再圧縮して、溶解段階にリサイクルしてもよい。