IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許7254920半導体チップを転写するための転写ツールおよび方法
<>
  • 特許-半導体チップを転写するための転写ツールおよび方法 図1
  • 特許-半導体チップを転写するための転写ツールおよび方法 図2
  • 特許-半導体チップを転写するための転写ツールおよび方法 図3
  • 特許-半導体チップを転写するための転写ツールおよび方法 図4
  • 特許-半導体チップを転写するための転写ツールおよび方法 図5
  • 特許-半導体チップを転写するための転写ツールおよび方法 図6
  • 特許-半導体チップを転写するための転写ツールおよび方法 図7
  • 特許-半導体チップを転写するための転写ツールおよび方法 図8
  • 特許-半導体チップを転写するための転写ツールおよび方法 図9
  • 特許-半導体チップを転写するための転写ツールおよび方法 図10
  • 特許-半導体チップを転写するための転写ツールおよび方法 図11
  • 特許-半導体チップを転写するための転写ツールおよび方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】半導体チップを転写するための転写ツールおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20230403BHJP
【FI】
H01L21/02 C
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021523366
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2019079071
(87)【国際公開番号】W WO2020089036
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-05-26
(31)【優先権主張番号】102018127123.9
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】エイエムエス-オスラム インターナショナル ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ams-OSRAM International GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D-93055 Regensburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス プレースル
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-180104(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0123268(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体チップ(2)を転写するための転写ツール(1)であって、該転写ツール(1)は、
前記半導体チップ(2)を受容するための複数の接着面(4)を有する粘着スタンプ(3)と、
前記接着面(4)の面積を調整するためのデバイス(15)と、を備え、
前記粘着スタンプ(3)は、変形可能に形成されており、
前記接着面(4)は、前記粘着スタンプ(3)の外面の一部によって形成されており、
前記接着面(4)の面積は、前記粘着スタンプ(3)の変形によって調整可能であり、
前記接着面(4)は、中断することなく形成されている、転写ツール(1)。
【請求項2】
前記粘着スタンプ(3)は、変形可能な複数のボリューム領域(5)を含み、前記接着面(4)は、前記ボリューム領域(5)の外面の一部によって形成されている、請求項1記載の転写ツール(1)。
【請求項3】
前記粘着スタンプ(3)は、弾性ポリマーを有するか、または弾性ポリマーから形成されている、請求項1または2記載の転写ツール(1)。
【請求項4】
前記粘着スタンプ(3)は、開口部(6)を有し、前記接着面(4)の面積を調整するための前記デバイス(15)は、前記開口部(6)のボリュームを調整するように構成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の転写ツール(1)。
【請求項5】
前記接着面(4)の面積を調整するための前記デバイス(15)は、前記開口部(6)内への充填材料(12)の量を調整するように構成されている、請求項記載の転写ツール(1)。
【請求項6】
前記粘着スタンプ(3)は、前記ボリューム領域(5)に隣接する横方向に変形領域(7)を有する、請求項2または請求項2を引用する請求項3から5までのいずれか1項記載の転写ツール(1)。
【請求項7】
前記変形領域(7)における前記粘着スタンプ(3)の厚さ(D)は、前記ボリューム領域(5)における前記粘着スタンプ(3)の厚さに比べて薄くなっている、請求項6記載の転写ツール(1)。
【請求項8】
前記変形領域(7)における前記粘着スタンプ(3)は、空洞(8)を有する、請求項6または7記載の転写ツール(1)。
【請求項9】
前記接着面(4)の面積を調整するための前記デバイス(15)は、前記変形領域(7)において、前記粘着スタンプ(3)の主延在面に対して横断方向または垂直方向に配向された応力が前記粘着スタンプ(3)に加えられるように構成されている、請求項6から8までのいずれか1項記載の転写ツール(1)。
【請求項10】
前記応力は、磁力または静電力である、請求項9記載の転写ツール(1)。
【請求項11】
前記粘着スタンプ(3)の外面は、金属層(9)を有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の転写ツール(1)。
【請求項12】
前記金属層(9)は、前記変形領域(7)に配置されている、請求項6を引用する請求項11記載の転写ツール(1)。
【請求項13】
前記接着面(4)の面積を調整するための前記デバイス(15)は、前記ボリューム領域(5)の材料の密度を変更するように構成されている、請求項2または請求項2を引用する請求項3から12までのいずれか1項記載の転写ツール(1)。
【請求項14】
前記ボリューム領域(5)は、光異性化可能な材料を有するか、または光異性化可能な材料からなる、請求項2または請求項2を引用する請求項3から13までのいずれか1項記載の転写ツール(1)。
【請求項15】
前記ボリューム領域(5)は、光異性化可能材料で形成された第2の層を有し、前記第2の層の、前記接着面(4)に面する側には光異性化可能材料を含まない第1の層が被着されている、請求項14記載の転写ツール(1)。
【請求項16】
前記接着面(4)の面積を調整するための前記デバイス(15)は、電磁ビームをボリューム領域に案内するように構成されている、請求項15記載の転写ツール(1)。
【請求項17】
前記ボリューム領域(5)の変形により、前記接着面(4)の面積が調整可能である、請求項2または請求項2を引用する請求項3から16までのいずれか1項記載の転写ツール(1)。
【請求項18】
半導体チップ(2)を転写するための方法であって、
請求項2または請求項2を引用する請求項3から17までのいずれか1項記載の転写ツール(1)を提供するステップと、
複数の半導体チップ(2)を、規則的な配列でソース支持体(10)上に提供するステップと、
前記転写ツール(1)を、前記ソース支持体(10)に接近させるステップであって、前記ボリューム領域(5)の前記接着面(4)が半導体チップ(2)と接触を開始するステップと、
前記半導体チップ(2)を、ファンデルワールス力を介して前記ボリューム領域(5)の前記接着面(4)に接着するステップと、
前記転写ツール(1)を、前記ソース支持体(10)から持ち上げるステップと、
前記転写ツール(1)を、ターゲット支持体(11)に接近させるステップであって、前記転写ツール(1)上に配置された前記半導体チップ(2)が前記ターゲット支持体(11)と接触を開始するステップと、
前記半導体チップ(2)を、前記ボリューム領域(5)の前記接着面(4)の面積の低減によって剥離するステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写ツールに関し、さらに本発明は、半導体チップを転写するための方法に関する。
【0002】
本発明の解決すべき課題は、半導体チップを転写するための改良された転写ツールを提供することにある。本発明の解決すべきさらなる課題は、転写ツールを用いて、特に効率的に半導体チップを転写することができる方法を提供することにある。
【0003】
本発明によれば、半導体チップを転写するための転写ツールが提供される。この転写ツールは、ソース支持体からターゲット支持体へ少なくとも1つの半導体チップ、特に複数の半導体チップの特に選択的な転写および/または平行な転写を実施可能にすることを想定している。
【0004】
これらの半導体チップは、例えば電子的な半導体チップ、特にオプトエレクトロニクス半導体チップである。例えば発光ダイオードチップ、フォトダイオードチップ、またはレーザーダイオードチップなどのオプトエレクトロニクス半導体チップは、電磁ビームを検出もしくは生成するのに適した活性ゾーンを備えたエピタキシャル成長した半導体層積層体を有する。
【0005】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体チップを転写するための転写ツールは、粘着スタンプを含む。この転写ツールは、1つ以上の粘着スタンプを含むことができる。この粘着スタンプは、転写すべき半導体チップが転写中にピックアップされて保持される転写ツールのコンポーネントである。粘着スタンプは、半導体チップに損傷を与えることなく、半導体チップに押し付けることができるように形成されている。
【0006】
少なくとも1つの実施形態によれば、粘着スタンプは、半導体チップを受容するための接着面を有する。例えば、粘着スタンプは、横方向に離間されて互いに平行に延びるように配置されてよい複数の接着面を含む。接着面は、粘着スタンプが転写中に半導体チップと直接接触する面である。この接着面は、半導体チップに面している。
【0007】
少なくとも1つの実施形態によれば、転写ツールは、接着面の面積を調整するためのデバイスを有する。この接着面の面積を調整するためのデバイスは、例えば、ひいては接着面の面積を変更し、ひいては面積を調整するための少なくとも1つのポンプ、コンデンサ、電磁石、および/または発光ダイオードもしくはレーザーダイオードなどのビーム発光部品を有する。例えば、このデバイスを用いることにより、接着面の面積を変化させる応力を粘着スタンプに加えることができる。
【0008】
少なくとも1つの実施形態によれば、粘着スタンプは変形可能に形成されている。これは、例えば、粘着スタンプの形状が、少なくとも所々で応力の作用によって変化することを意味する。好適には、粘着スタンプは、少なくとも所々エラストマーなどの弾性材料で形成されている。特に好適には、粘着スタンプは、変形後、可及的に完全に元の形状に戻る。
【0009】
少なくとも1つの実施形態によれば、粘着スタンプの接着面は、粘着スタンプの外面の一部によって形成されている。粘着スタンプの外面は、粘着スタンプを外方に向けて画定している面である。つまり、外面は、粘着スタンプの立体を外方に向けて画定する。粘着スタンプは、半導体チップの転写の際に粘着スタンプと直接接触するように存在する少なくとも1つの外面の領域を有する。この外面の領域は、接着面を形成する。外面は、例えばエラストマーで形成されてよい。
【0010】
少なくとも1つの実施形態によれば、接着面の面積は、粘着スタンプの変形によって調整可能である。特に、変形可能な粘着スタンプによって接着面の面積を調整することができる。これは、粘着スタンプの外面の形状が、粘着スタンプの変形によって変更可能であることを意味する。この外面の形状の変更は、接着面の面積に変化を生じさせる。つまり、半導体チップの転写中に半導体チップに直接接する粘着スタンプの領域の面積は、粘着スタンプの変形によって減少もしくは増加する。
【0011】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体チップを転写するための転写ツールは、半導体チップを受容するための接着面を有する粘着スタンプと、接着面の面積を調整するためのデバイスと、を含み、ここで、粘着スタンプは、変形可能に形成されており、接着面は、粘着スタンプの外面の一部によって形成されている。接着面の面積は、粘着スタンプの変形によって調整可能である。
【0012】
少なくとも1つの実施形態によれば、接着面は、中断することなく形成されている。中断することなくとは、接着面が途切れることなく形成されていることを意味する。その場合、接着面は、特に凹部を有さない。したがって、ボリューム領域の凹部は、接着面までは延在しておらず、特に接着面を貫通することはない。特に、凹部は、粘着スタンプを完全に通って延在していない。
【0013】
少なくとも1つの実施形態によれば、粘着スタンプは、変形可能なボリューム領域を含み、接着面はボリューム領域の外面の一部によって形成されている。ボリューム領域は、好適には粘着スタンプの一部であり、例えば、粘着スタンプの本体の隆起もしくは膨らみによって形成されている。好適には、ボリューム領域は、エラストマーなどの弾性材料で形成されている。有利なことに、動作中に粘着スタンプのボリューム領域は、ひいてはソース支持体からターゲット支持体への半導体チップの転写を容易にするために、特に半導体チップの近傍に案内することができる。粘着スタンプは、例えば、横方向に離間されて配置されてよい複数のボリューム領域を含む。例えば、粘着スタンプは、好適には、800~10000のボリューム領域を有する。
【0014】
この場合、接着面は、特に、ボリューム領域の外面の一部によって形成されている。好適には、各ボリューム領域は、ボリューム領域の外面の一部によって形成されている正確に1つの接着面を含む。ボリューム領域の外面のこの領域は、転写中半導体チップに面し、ここでは「チップ受容面」と称される。ボリューム領域のチップ受容面は、ボリューム領域の動作状態に対応し、その間、例えば接着面の転写が行われる。この場合、チップ受容面は、割り当てられた半導体チップと完全に接触する。その場合、チップ受容面は、特に平坦に形成され、接着面の面積は最大になる。接着面の面積がボリューム領域の変形により低減すると同時に、接着面は、ボリューム領域のチップ受容面よりも小さくなる。ボリューム領域のチップ受容面は、その場合、所々で凸状および/または凹状に湾曲する。ここでは、凸状の領域は、凹状の領域によって相互に分離されてよい。これは、凹状の領域および凸状の領域が例えば交互に配置されてよいことを意味する。これにより、特に、チップ受容面が隆起および窪みを有し、ひいては-例えば波形板のように-凹状および凸状に湾曲することが可能である。
【0015】
平坦な状態では、チップ受容面は、例えば矩形に形成され、5μm以上200μm以下の縁部長さを有する。特に好適には、ボリューム領域のチップ受容面は、平坦な状態において少なくとも10μmの縁部長さを有する。好適には、各粘着スタンプは、複数のチップ受容面を有する。好適には、例えば、800個以上10000個以下の間の半導体チップを転写ツールごとに転写することができる。これは、転写ツールが、例えば800個以上10000個以下のチップ受容接着面を有することを意味する。
【0016】
平坦な状態の粘着スタンプのボリューム領域のチップ受容面の縁部長さは、有利なことに半導体チップの縁部長さよりも短い。これにより、動作中有利なことにボリューム領域の接着面からの半導体チップの剥離に要する応力は少なくて済む。
【0017】
少なくとも1つの実施形態によれば、粘着スタンプは、弾性ポリマーを有するか、または弾性ポリマーから形成されている。好適には、粘着スタンプは、エラストマーを有するか、またはエラストマーから形成されている。特に好適には、粘着スタンプは、シリコーンを有するか、またはシリコーンから形成されている。例えば、粘着スタンプは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を有するか、またはPDMSから形成されている。PDMSは通常、透明で化学的に不活性であり、高度な弾性を有する。特に、ボリューム領域は、言及した材料の1つを含むか、または言及した材料の1つからなり得る。
【0018】
少なくとも1つの実施形態によれば、粘着スタンプは開口部を有する。この開口部は、好適には、粘着スタンプの主延在面に対して横断方向または垂直方向に配置されている。開口部は、粘着スタンプの材料によって少なくとも部分的に取り囲まれ、ボリューム領域のチップ受容面とは反対側に開口箇所を有する。開口部は、例えば、ボリューム領域内で、チップ受容面の上方に位置する。
【0019】
少なくとも1つの実施形態によれば、接着面の面積を調整するためのデバイスは、前記開口部のボリュームを調整するように構成されている。開口部のボリュームは、例えば、外力によって調整することができる。開口部の開口箇所を通して、転写ツールのデバイス、例えばポンプなどを用いることにより、粘着スタンプ内の圧力を変更することができる。これにより、粘着スタンプが変形し、それによって、接着面の面積も調整可能になる。
【0020】
少なくとも1つの実施形態によれば、接着面の面積を調整するためのデバイスは、開口部内への充填材料の量を調整するように構成されている。この充填材料は、好適には、液体または気体である。例えば、充填材料は、油、水、または空気であってよい。好適には、このデバイス、例えば転写ツールのポンプにより、開口部内の充填材料の圧力が変更される。この圧力は、好適には、粘着スタンプに伝達され、それによって、粘着スタンプが変形する。これにより、ボリューム領域のチップ受容面の形状が変化し、このことは、接着面の変化につながる。
【0021】
動作中、例えばボリューム領域は、外圧の印加によって膨張し、ボリューム領域のチップ受容面、つまり半導体チップに面している面が変形する。ボリューム領域のチップ受容面の変形は、接着面の面積を調整する。
【0022】
転写された半導体チップの離脱のために、接着面の面積が低減される。このことは、チップ受容面の変形によって達成される。例えば、チップ受容面の形状が平坦状から凸状に湾曲して変化する。半導体チップには剛性があるため、半導体チップは、動作中にボリューム領域のチップ受容面の変形に追従することができず、剥離してしまう。
【0023】
圧力は、有利なことに可変であり、一方では、開口部内の充填材料への圧力は、増加もしくは低減させることができる。これにより、チップ受容面の凸状もしくは凹状の形状を調整することができる。両形状とも接着面の減少につながる。
【0024】
半導体チップを接着面から剥離するために、ボリューム領域のチップ受容面をどの程度変形させなければならないかは、半導体チップの厚さ、粘着スタンプの接着面の材料や半導体チップ材料、半導体チップから接着面への相互作用エネルギー、ならびに粘着スタンプの接着面の面積を調整する速度に依存する。
【0025】
特に、動作中、転写ツールのデバイスにより、接着面の面積は所期のように調整することができる。半導体チップは、例えば転写の前に、例えばそれらの品質に関して、または他の予め定められた特性に関して検査される。その場合、本明細書で説明する方法を用いることにより、チップ受容面の形状を個別に調整することができる。これにより、半導体チップの選択的な転写が可能になる。つまり、特定の品質の半導体チップまたは特定の特性を備えた半導体チップを転写することが可能になる。そのため、例えば欠陥のある半導体チップを選別して、無傷の半導体チップのみを転写することができ、あるいはその逆も可能である。
【0026】
少なくとも1つの実施形態によれば、粘着スタンプは、ボリューム領域の横方向に隣接する変形領域を有する。この変形領域は、粘着スタンプの一部であり、粘着スタンプのボリューム領域と機械的に接続されている。変形領域は、例えば、隣接する2つのボリューム領域の間に位置する。変形領域は、例えば、ボリューム領域の材料とは異なるさらなる材料を有することができる。例えば、変形領域は、ボリューム領域の材料に比べてより高い弾性係数を備えた材料を有する。代替的に、ボリューム領域および変形領域は、同じ材料で形成されていることも可能である。
【0027】
少なくとも1つの実施形態によれば、変形領域における粘着スタンプの厚さは、ボリューム領域における粘着スタンプの厚さに比べて薄い。粘着スタンプの厚さは、粘着スタンプの主延在面に対して横断方向または垂直方向に決定される。変形領域の厚さは、隣接するボリューム領域の距離に依存する。例えば、変形領域の厚さは、隣接するボリューム領域相互の距離と同じような大きさである。好適には、隣接するボリューム領域相互の距離は、チップ受容面の少なくとも3倍の大きさである。異なる厚さによって生じる利点は、動作中に粘着スタンプのボリューム領域は、ひいてはソース支持体からターゲット支持体への半導体チップの転写を容易にするために、特に半導体チップの近傍に案内できることである。さらに、変形領域は、低減された厚さに基づいて、より大きな厚さの変形領域よりも少ない労力で変形可能である。
【0028】
少なくとも1つの実施形態によれば、変形領域における粘着スタンプは、空洞を有する。この空洞は、変形領域の材料によって完全に取り囲まれ、好適には、開口箇所を有していない。粘着スタンプの変形領域は、この空洞に基づき、空洞なしの変形領域に比べて、より少ない応力で変形可能である。
【0029】
少なくとも1つの実施形態によれば、接着面の面積を調整するためのデバイスは、変形領域において、粘着スタンプの主延在面に対して横断方向または垂直方向に配向された応力が粘着スタンプに加えられるように構成されている。主延在面は、接着面に対して平行であり、したがって、接着面は、粘着スタンプの変形領域に作用する応力に対して横断方向または垂直方向に延びる。
【0030】
動作中、変形領域は、転写ツールのデバイスの外力によって変形される。変形領域の変形は、横方向に隣接するボリューム領域に伝達される。それにより、ボリューム領域のチップ受容面も変形し、ひいては粘着スタンプの接着面の面積が調整される。ボリューム領域のチップ受容面の変形に要する使用すべき応力は、変形領域内では好適には特に小さくなる。例えば、変形領域においてボリューム領域のチップ受容面の変形に要する労力は、ボリューム領域を直接変形する場合の労力よりもはるかに小さくなるであろう。
【0031】
少なくとも1つの実施形態によれば、応力は磁力または静電力である。応力を加えるためのデバイスは、例えば電磁石またはコンデンサを含む。動作中に転写ツールのデバイスによって変形領域に静電力または磁力が加えられると、変形領域のこの変形が、粘着スタンプのボリューム領域に伝達され、これにより、ボリューム領域のチップ受容面が変形し、ひいては粘着スタンプの接着面の面積が低減される。
【0032】
少なくとも1つの実施形態によれば、粘着スタンプの外面は金属層を有する。この金属層は、以下の導電性材料、例えば、グラフェン、コバルト、銀、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、鋼、グラファイトなどを含むことができる。金属層のための強磁性材料として、とりわけキュリー温度が室温より低い材料、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、ガドリニウム、およびジスプロシウムが使用され得る。その他に、例えば、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、またはカドミウムなどの金属を含むフェライトベースのソフトフェライト、ならびに例えば、ニッケル、亜鉛、コバルト、マンガン亜鉛、バリウム、またはストロンチウムなどのハードフェライト、ならびにさらなる磁性材料が利用可能である。金属層は、好適には、電磁石またはコンデンサのフィールドに配置されている。金属層は、転写ツールのデバイスを用いて外部から磁力または静電力を伝達するために用いられる。
【0033】
少なくとも1つの実施形態によれば、金属層は変形領域に配置されている。この金属層は、例えば、粘着スタンプの変形領域の外面に位置している。変形領域の外面は、特に粘着スタンプの主延在面に対して平行に延びている。
【0034】
少なくとも1つの実施形態によれば、接着面の面積を調整するためのデバイスは、ボリューム領域の材料の密度を変更するように構成されている。この材料は、動作状態において半導体チップを受容している間は、接着面からの半導体チップの剥離の場合よりも低い密度を有する。より高い密度によれば、ボリューム領域が変形し、これによって、接着面の面積も変化し、接着面からの半導体チップの剥離が促進される。
【0035】
少なくとも1つの実施形態によれば、ボリューム領域は、光異性化可能な材料を有するか、または光異性化可能な材料からなる。ここでは、一方では、ボリューム領域全体とチップ受容面とが光異性化可能な材料を有することができ、他方では、ボリューム領域の一部の領域だけが光異性化可能な材料を有することができる。例えば、チップ受容面は、光異性化可能な材料で形成された、ボリューム領域の一部領域の材料とは異なる材料を有することができる。好適には、チップ受容面は、半導体チップを受容するのに良好な粘着性を有しかつチップ受容面の変形による半導体チップの剥離の際に容易な剥離が可能である材料を有する。このために適した材料は、例えば、ポリジメチルシロキサンであってよい。
【0036】
光異性化可能な材料は、ひいては材料の密度を調整するために、電磁ビームによる領域の配向が可能な材料である。光異性化可能な材料は、例えば、アゾ官能化液晶エラストマーであってよい。ここでは、例えば、アゾベンゼンまたはスチルベンのシス-トランス異性体を使用することができる。
【0037】
少なくとも1つの実施形態によれば、ボリューム領域は、光異性化可能材料で形成された第2の層を有し、ここで、この第2の層の、接着面に面する側には光異性化可能材料を含まない第1の層が被着されている。この第1の層は、好適には、弾性ポリマーを有するか、または弾性ポリマーから形成される。例えば、第1の層は、ポリジメチルシロキサンから形成され、接着面もしくはチップ受容面を含む。それに対して、第2の層は、光異性化可能な材料を有するか、または光異性化可能な材料からなる。動作中、第2の層は、変形可能であり、ここで、この変形は、第1の層に伝達され、それによって、接着面の面積が調整される。その場合、変形したチップ受容面は、複数の凹状の変形および凸状の変形を有する。例えば、チップ受容面は、波形板状またはしわ状に形成されている。
【0038】
付加的に、ボリューム領域は、第3の層およびベースを有することができる。この第3の層およびベースは、第1および/または第2の層とは異なる材料で形成されてもよい。
【0039】
少なくとも1つの実施形態によれば、接着面の面積を調整するためのデバイスは、電磁ビームをボリューム領域の光異性化可能な材料に案内するように構成されている。このデバイスは、動作中に赤外線ビームからUVビームまでのスペクトル範囲の電磁ビームを生成する少なくとも1つの発光ダイオードまたはレーザーダイオードを含むことができる。さらに、このデバイスは、電磁ビームの一部をボリューム領域に案内する光導波路を含むことができる。例えば、光導波路は、ボリューム領域の開口部を通って延在し得る。電磁ビームは、動作中、ボリューム領域の光異性化可能な材料に作用し、粘着スタンプのボリューム収縮を引き起こす。したがって、ボリューム領域の変形は、粘着スタンプの接着面の面積を変更し、それを低減させる。
【0040】
少なくとも1つの実施形態によれば、ボリューム領域の変形により、接着面の面積が調整される。ボリューム領域の変形により、ボリューム領域のチップ受容面は、ボリューム領域の凹状および/または凸状のチップ受容面が好適に形成されるように変形される。それにより、接着面の面積が調整され、有利なことに低減される。これにより、半導体チップの剥離が促進される。ボリューム領域の開口部および/または変形領域の空洞は、変形可能なボリューム領域、特にボリューム領域のチップ受容面が、凹状の変形および/または凸状の変形を有する結果をもたらす。有利なことに、半導体チップは、このようにして剪断運動なしでターゲット支持体に被着させることができ、ターゲット支持体の表面の材料をより自由に選択することができる。
【0041】
さらに、半導体チップを転写するための方法が提供される。これは、転写ツールについて開示されているすべての特徴が、半導体チップを転写するための方法についても開示されていることを意味し、その逆も可能であることを意味する。
【0042】
半導体チップを転写するための方法の少なくとも1つの実施形態によれば、転写ツールが提供される。この転写ツールは、特に、本明細書で説明する転写ツールである。
【0043】
本方法の少なくとも1つの実施形態によれば、複数の半導体チップが、特に規則的な配列でソース支持体上に提供される。このソース支持体は、例えば、成長基板上もしくは補助支持体上に半導体チップを備えたウェーハか、または既に事前分類された半導体チップを備えた人工ウェーハである。
【0044】
本方法の少なくとも1つの実施形態によれば、転写ツールは、ソース支持体に接近し、ここで、ボリューム領域の接着面は、半導体チップと接触を開始する。
【0045】
本方法の少なくとも1つの実施形態によれば、半導体チップは、ファンデルワールス力を介してボリューム領域の接着面に接着する。その場合、特に半導体チップは、専らファンデルワールス力に基づいてボリューム領域の接着面に付着する。ボリューム領域のチップ受容面は、接着されるとき好適には平坦である。なぜなら、半導体チップも平坦で剛性のある表面を有するからである。このことは、有利なことに付着の促進につながる。半導体チップは、ボリューム領域のチップ受容面と完全に面結合されている。
【0046】
特に、ボリューム領域の選択されたチップ受容面は、欠陥のある半導体チップが受容されるのを防止するために、転写ツールのデバイスによって所期のように調整することができる。ここでは、接着面の面積が、転写ツールのデバイスによって所期のように調整され、ボリューム領域の接着面の面積は低減され、ボリューム領域のチップ受容面は、凹状および/または凸状に変形する。それにより、好適には、欠陥のある選択された半導体チップの受容がもはや不可能になる。
【0047】
本方法の少なくとも1つの実施形態によれば、転写ツールを、ソース支持体から持ち上げるステップが行われる。複数の半導体チップは、粘着スタンプのボリューム領域の接着面に付着する。
【0048】
本方法の少なくとも1つの実施形態によれば、転写ツールは、ターゲット支持体に接近し、ここで、転写ツール上に配置された半導体チップは、ターゲット支持体と接触を開始する。
【0049】
本方法の少なくとも1つの実施形態によれば、半導体チップを、粘着スタンプのボリューム領域の接着面の面積の低減によって接着面から剥離するステップが行われる。転写ツールのデバイスにより、例えば、主延在面に対して垂直方向もしくは横断方向に応力が粘着スタンプの変形領域もしくはボリューム領域に加えられる。これにより、ボリューム領域のチップ受容面が凹状および/または凸状に変形し、接着面の面積は低減し、半導体チップは、ボリューム領域のチップ受容面と少なくとも部分的に接触する。したがって、剛性の半導体チップは、好適に剥離することができる。その後、半導体チップは、ターゲット支持体上に留まる。
【0050】
半導体チップを転写するための方法の少なくとも1つの実施形態によれば、最初に転写ツールが提供される。引き続き、複数の半導体チップがソース支持体上で規則的な配列で提供され、転写ツールがソース支持体に接近し、ここで、ボリューム領域の接着面が半導体チップと接触を開始する。次のステップでは、半導体チップがファンデルワールス力を介してボリューム領域の接着面に付着し、引き続き転写ツールがソース支持体から持ち上げられる。最後のステップでは、転写ツールがターゲット支持体に接近し、ここで、転写ツールに配置された半導体チップがターゲット支持体と接触を開始し、ボリューム領域の接着面の面積の低減によって半導体チップの剥離が行われる。
【0051】
本発明の転写ツールの1つの考察は、転写ツールのデバイスによって変形できる変形可能な粘着スタンプを提供することである。これにより、変形可能な粘着スタンプの接着面の面積が調整され、ひいてはボリューム領域のチップ受容面からの半導体チップの取り外しが可能になる。
【0052】
この考察は、ソース支持体から取り外す際の粘着スタンプと半導体チップとの間の適度な付着状態を得る点と、半導体チップをターゲット支持体上に置く際の粘着スタンプの接着面と半導体チップとの間の付着状態は僅かでなければならない点とにある。有利なことに、半導体チップを置く際の剪断運動が省かれ、したがって、ターゲット支持体の表面のための材料をより自由に選択することができる。
【0053】
半導体チップを転写するための本方法の特別な利点は、本方法が、選択された半導体チップの選択的な転写を可能にしたことにある。このことは、本方法を用いることにより、ソース支持体上に提供された半導体チップのすべてを転写する必要がないことを意味する。その代わりに、本方法は、ソース支持体上に配置された半導体チップの選択された一部のみを転写することを可能にする。このことは、例えば、機能し得ることがわかっている半導体チップのみを転写し、欠陥のあることがわかっている半導体チップはソース支持体上に残すことを可能にさせる。その場合同時に、半導体チップの、例えば機能可能な半導体チップとして選択された一部は、ソース支持体からターゲット支持体に転写することができる。
【0054】
好適には、本方法は、複数の半導体チップを、同時に、つまり同じ転写ステップで転写することを可能にする。それにより、本方法を用いることによって、多くの半導体チップを安価にかつ短時間でソース支持体からターゲット支持体に転写することができる。
【0055】
半導体チップを転写するための転写ツールおよび方法のさらなる好適な実施形態および発展形態は、以下で図面に関連して説明される実施例から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】異なる動作状態での本明細書に記載の転写ツールの1つの実施形態による転写ツールの概略的断面図である。
図2】異なる動作状態での本明細書に記載の転写ツールの1つの実施形態による転写ツールの概略的断面図である。
図3】異なる動作状態での本明細書に記載の転写ツールの1つの実施形態による転写ツールの概略的断面図である。
図4】異なる動作状態での本明細書に記載の転写ツールの1つの実施形態による転写ツールの概略的断面図である。
図5】異なる動作状態での本明細書に記載の転写ツールの1つの実施形態による転写ツールの概略的断面図である。
図6】異なる動作状態での本明細書に記載の転写ツールの1つの実施形態による転写ツールの概略的断面図である。
図7】異なる動作状態での本明細書に記載の転写ツールの1つの実施形態による転写ツールの概略的断面図である。
図8】異なる動作状態での本明細書に記載の転写ツールの1つの実施形態による転写ツールの概略的断面図である。
図9】本明細書に記載の方法の1つの実施例による、半導体チップを転写するための方法の様々な方法ステップの概略的断面図である。
図10】本明細書に記載の方法の1つの実施例による、半導体チップを転写するための方法の様々な方法ステップの概略的断面図である。
図11】本明細書に記載の方法の1つの実施例による、半導体チップを転写するための方法の様々な方法ステップの概略的断面図である。
図12】本明細書に記載の方法の1つの実施例による、半導体チップを転写するための方法の様々な方法ステップの概略的断面図である。
【0057】
同一の要素、同種の要素、または同一に作用する要素には、図面中同じ参照符号が付されている。これらの図面ならびに図中に示されている要素の相互間のサイズ比は、縮尺どおりと見なされるべきではない。むしろ、個々の要素、特に層厚さは、より良好な説明および/またはより良好な理解のために誇張的に大きく表示され得る。
【0058】
図1の実施例による転写ツール1は、接着面4の面積を調整するためのデバイス15と、変形可能な粘着スタンプ3とを備える。
【0059】
粘着スタンプ3は、弾性ポリマーを有するか、または弾性ポリマーから形成されている。この粘着スタンプ3は、開口部6を含むボリューム領域5を有する。開口部6は、粘着スタンプ3の主延在面に対して横断方向または垂直方向に配置されている。開口部6は、粘着スタンプ3の材料によって少なくとも部分的に取り囲まれ、ボリューム領域5のチップ受容面14とは反対側に開口箇所を有する。開口部6は、ボリューム領域5内で、チップ受容面14の上方に位置している。
【0060】
チップ受容面14は、半導体チップ2に面している。半導体チップ2は、ボリューム領域5のチップ受容面14の縁部長さよりも長い縁部長さを有する。チップ受容面14は、図1の実施例では、半導体チップ2と完全に面接触している。チップ受容面14は、図1に示される転写ツールの動作状態では平坦に形成されている。このことは、半導体チップ2の転写中のチップ受容面14の動作状態に対応する。ボリューム領域5のチップ受容面14は、この動作状態では接着面4に対応する。接着面4の面積は、この動作状態では最大となる。
【0061】
図1とは異なり、図2に示される転写ツールの動作状態では、充填材料12が、ボリューム領域5の開口部6内に位置する。この充填材料12は、例えば、油、水、または他の液体もしくは気体を含む。転写ツール1のデバイス15、例えば少なくとも1つのポンプにより、当該デバイス15を用いて充填材料12に応力が加えられる。この応力は、粘着スタンプ3に伝達され、これにより、粘着スタンプのボリューム領域5が変形する。それにより、ボリューム領域5のチップ受容面14の形状が変化し、このことは、接着面4の面積の変化につながる。接着面4の面積は、この動作状態では、ボリューム領域5の変形によって図1に示される動作状態に比べて低減する。
【0062】
チップ受容面14は、図2の実施例の動作状態では、半導体チップ2と不完全に面接触している。チップ受容面14は、粘着スタンプ3の変形に基づいて凸状に形成されている。これは、半導体チップ2を接着面4から剥離する間のチップ受容面14の状態に対応する。ボリューム領域5のチップ受容面14は、この動作状態では接着面4よりも大きい。
【0063】
図3の実施例による転写ツール1は、接着面4の面積を調整するためのデバイス15および変形可能な粘着スタンプ3を有する。粘着スタンプ3は、変形領域7を含む。この変形領域7は、粘着スタンプ3の一部であり、それぞれ隣接する2つのボリューム領域5の間に位置する。変形領域7は、例えば、ボリューム領域の材料とは異なるさらなる材料またはボリューム領域と同じ材料からなるさらなる材料を有することができる。粘着スタンプ3の変形領域7は、ボリューム領域5の粘着スタンプ3の厚さDに比べて薄い厚さDを有する。図3の粘着スタンプ3は、変形領域7内に空洞8を有する。この空洞8は、変形領域7の材料によって完全に取り囲まれており、開口箇所を有していない。粘着スタンプ3の外面、特に変形領域7の外面には、金属層9が配置されている。この金属層9は、転写ツール1のデバイス15を用いて外部から磁力または静電力を変形領域7に伝達するために用いられる。応力を加えるためのデバイス15は、例えば、電磁石またはコンデンサを含む。
【0064】
チップ受容面14は、半導体チップ2に面している。チップ受容面14は、図3の実施例では半導体チップ2と完全に面接触している。このチップ受容面14は、平坦に形成されている。これは、半導体チップ2の転写中のチップ受容面14の状態に対応する。ボリューム領域5のチップ受容面14は、この動作状態では接着面4に対応する。半導体チップ2は、ボリューム領域5のチップ受容面14の縁部長さよりも長い縁部長さを有する。接着面4の面積は、この動作状態では最大となる。
【0065】
図4に示す実施例は、変形領域7にデバイス15の磁力または静電力が加えられるという点で、図3の転写ツール1の動作状態とは異なる動作状態の転写ツール1を有する。応力は、粘着スタンプ3の主延在面に対して横断方向または垂直方向に配向されている。粘着スタンプ3の変形領域7へのこの応力によって、変形領域7は変形する。この変形は、ボリューム領域に伝達される。それにより、最終的に接着面4の面積が調整される。
【0066】
チップ受容面14は、図4の実施例では、半導体チップ2と不完全に面接触している。チップ受容面14は、粘着スタンプ3の変形に基づき凸状に形成されている。これは、半導体チップ2を接着面4から剥離する間のチップ受容面14の状態に対応する。ボリューム領域5のチップ受容面14は、この動作状態では接着面4よりも大きい。接着面4の面積は、この動作状態では変形領域7の変形によって低減する。
【0067】
図5の実施例による転写ツール1は、接着面4の面積を調整するためのデバイス15および変形可能な粘着スタンプ3を有する。粘着スタンプ3は、ボリューム領域5を有する。ボリューム領域5は、光異性化可能な材料を有するか、または光異性化可能な材料からなる。光異性化可能な材料は、例えば、アゾ官能化液晶エラストマーである。ここでは、例えば、アゾベンゼンとスチルベンのシス-トランス異性体を使用することができる。ボリューム領域5は、完全に光異性化可能な材料からなり得る。代替的に、ボリューム領域5の中間層のみが光異性化可能材料で形成されていることも可能である。その場合、チップ受容面14では、ボリューム領域5は、例えばポリジメチルシロキサンなどの異なる材料で形成されてもよい。
【0068】
ボリューム領域5に変形を加えるためのデバイス15は、この実施例では、動作中に赤外線ビームからUVビームまでのスペクトル範囲の電磁ビームを生成する発光ダイオードまたはレーザーダイオードを含む。さらに、このデバイスは、電磁ビームの一部をボリューム領域5に案内する光導波路16を含むことができる。例えば、光導波路は、ボリューム領域5の開口部6を通って延在し得る。
【0069】
チップ受容面14は、半導体チップ2に面している。チップ受容面14は、図5の実施例では半導体チップ2と完全に面接触している。チップ受容面14は、平坦に形成されている。これは、半導体チップ2の転写中のチップ受容面14の状態に対応する。ボリューム領域5のチップ受容面14は、この動作状態では接着面4に対応する。半導体チップ2は、ボリューム領域5のチップ受容面14の縁部長さよりも長い縁部長さを有する。接着面4の面積は、この動作状態では最大となる。
【0070】
図6に示される実施例は、電磁ビームがボリューム領域5に配向されるという点で、図5の転写ツール1の動作状態とは異なる動作状態の転写ツール1を有する。ボリューム領域5の光異性化可能材料への電磁ビームにより、ボリューム収縮が起こる。これは、光異性化可能な材料の密度が増加することを意味する。密度、ひいてはボリュームの変更により、接着面4が変形する。チップ受容面14は、複数の凹状および凸状の変形を有する。例えば、チップ受容面14は、波形板状に形成されている。
【0071】
チップ受容面14は、図6の実施例では、半導体チップ2と不完全に面接触している。これは、半導体チップ2を接着面4から剥離する間のチップ受容面14の状態に対応する。ボリューム領域5のチップ受容面14は、この動作状態では接着面4よりも大きい。接着面4の面積は、この動作状態ではボリューム領域5の変形によって低減する。
【0072】
図7の実施例による転写ツール1は、接着面4の面積を調整するためのデバイス15および変形可能な粘着スタンプ3を有する。粘着スタンプ3は、ボリューム領域5を有する。このボリューム領域5は、複数の層、第1の層17、第2の層18、第3の層19、およびベース20を有する。第1の層17は、チップ受容面14を有し、第2の層18と直接接触している。第2の層18は、第3の層19と直接接触しており、第3の層19は、ベース20に直接結合されている。第1の層17は、弾性ポリマーを有するか、または弾性ポリマーから形成されている。第2の層18は、光異性化可能な材料を有するか、または光異性化可能な材料からなる。付加的に、第3の層19およびベース20は、それぞれ第1および/または第2の層とは異なる材料で形成されてもよい。
【0073】
ボリューム領域5に変形を加えるためのデバイス15は、この実施例では、動作中に赤外線ビームからUVビームまでのスペクトル範囲の電磁ビームを生成する発光ダイオードまたはレーザーダイオードを含む。さらに、このデバイスは、電磁ビームの一部を光異性化可能な第2の層18に案内する光導波路16を含むことができる。例えば、光導波路は、ボリューム領域5の開口部6を通って延在し得る。
【0074】
チップ受容面14は、半導体チップ2に面している。チップ受容面14は、図7の実施例では、半導体チップ2と完全に面接触している。チップ受容面14は、平坦に形成されている。これは、半導体チップ2の転写中のチップ受容面14の状態に対応する。ボリューム領域5のチップ受容面14は、この動作状態では接着面4に対応する。半導体チップ2は、ボリューム領域5のチップ受容面14の縁部長さよりも長い縁部長さを有する。接着面4の面積は、この動作状態では最大となる。
【0075】
図8に示される実施例は、電磁ビームがボリューム領域5に配向されるという点で、図7の転写ツール1の動作状態とは異なる動作状態の転写ツール1を有する。ボリューム領域5の第2の層18の光異性化可能材料への電磁ビームにより、ボリューム収縮が起こる。これは、第2の層18の光異性化可能な材料の密度が増加することを意味する。密度、ひいてはボリュームの変更により、接着面4が変形する。チップ受容面14は、複数の凹状および凸状の領域を有する。例えば、チップ受容面14は、波形板状またはしわ状に形成されている。
【0076】
チップ受容面14は、図8の実施例では、半導体チップ2と不完全に面接触している。これは、半導体チップ2を接着面4から剥離する間のチップ受容面14の状態に対応する。ボリューム領域5のチップ受容面14は、この動作状態では接着面4よりも大きい。接着面4の面積は、この動作状態ではボリューム領域5の変形によって低減する。
【0077】
図9図10図11、および図12は、概略的断面図に基づいて、本明細書に記載の方法の1つの実施例による、半導体チップを転写するための方法の様々な方法ステップを示す。デバイス15ならびに開口部6および空洞8は、見やすさの改善のために、図9から図12には示されていない。
【0078】
図9図12の実施例による半導体チップ2を転写するための方法では、第1のステップにおいて、ボリューム領域5の接着面4が、ソース支持体10上に配置された半導体チップ2と直接接触するように、転写ツール1が半導体チップ2に接近する(図9)。これらの半導体チップ2は、規則的な配列で、例えば行方向および列方向に沿ってソース支持体10上に配置されている。転写ツール1は、粘着スタンプ3の各ボリューム領域5が、ソース支持体10の上面にそれぞれ割り当てられた半導体チップ2の上方に配置されるように、ソース支持体10の上面に接近する。チップ受容面14は、半導体チップ2と完全に面接触している。チップ受容面14は、平坦に形成されている。ボリューム領域5のチップ受容面14は、接着面4に対応する。接着面4の面積は、この動作状態では最大である。
【0079】
転写ツール1は、ソース支持体10から離れるように移動する(図10)。半導体チップ2は、ファンデルワールス力を介して、ボリューム領域5の接着面4に付着する。欠陥のある半導体チップ13がソース支持体10上に存在するならば、この半導体チップ13は、粘着スタンプ3の接着面4に所期のように付着することはできない。転写ツール1は、デバイス15を用いて、粘着スタンプ3のボリューム領域5のチップ受容面14が所期のように変形でき、かつ半導体チップ2の付着が所期のように調整できるように、調整することができる。
【0080】
次のステップでは、半導体チップ2を備えた転写ツール1がターゲット支持体11に接近する(図11)。転写ツール1に配置された半導体チップ2は、ターゲット支持体11と直接接触する。ここでは、半導体チップ2の下面が、ターゲット支持体11の上面に面している。これらの半導体チップ2は、ボリューム領域5の接着面4の面積の低減によって剥離される。ボリューム領域5の接着面4の面積は、転写ツール1のデバイス15によって低減する。チップ受容面14は凸状に形成されている。剛性のある半導体チップ2は、ボリューム領域5の凸状のチップ受容面14から剥離し、ターゲット支持体11上に留まる。
【0081】
転写ツール1は、図12のターゲット支持体11から持ち上げられる。粘着スタンプ3のボリューム領域5の接着面4に事前に取り付けられた半導体チップ2は、ターゲット支持体11の上面に残る。それにより、ソース支持体10からターゲット支持体11への半導体チップ2の転写が完了する。
【0082】
本明細書で説明する方法を用いることにより、半導体チップを所期のように選択的に転写することが特に簡単な方法で可能となる。
【0083】
図面に関連して説明した特徴および実施例は、すべての組み合わせが明示的に説明されていなくても、さらなる実施例に従って互いに組み合わせることができる。さらに、図面に関連して説明した実施例は、代替的または付加的に、一般的な部分の説明によるさらなる特徴を有することができる。
【0084】
本発明は、実施例に基づく説明によってこれらの実施例に限定されるものではない。むしろ、本発明は、あらゆる新規の特徴ならびにこれらの特徴のあらゆる組み合わせを含む。このことは、特に当該の特徴または当該の組み合わせ自体が明示的に特許請求の範囲または実施例に示されていない場合であっても、特許請求の範囲の特徴のあらゆる組み合わせを包含する。
【0085】
この特許出願は、独国特許出願公開第102018127123.9号明細書の優先権を主張しており、その開示内容は援用により本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0086】
1 転写ツール
2 半導体チップ
3 粘着スタンプ
4 接着面
5 ボリューム領域
6 開口部
7 変形領域
8 空洞
9 金属層
10 ソース支持体
11 ターゲット支持体
12 充填材料
13 欠陥のある半導体チップ
14 チップ受容面
15 デバイス
16 光導波路
17 第1の層
18 第2の層
19 第3の層
20 ベース
D 厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12