(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】インジウム・リン混合物を用いてリン化インジウム結晶を製造するシステム
(51)【国際特許分類】
C30B 29/40 20060101AFI20230403BHJP
C01B 25/08 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
C30B29/40 501A
C01B25/08 A
(21)【出願番号】P 2021534307
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 CN2020114331
(87)【国際公開番号】W WO2021098347
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】201911155614.6
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512309093
【氏名又は名称】中国電子科技集団公司第十三研究所
【氏名又は名称原語表記】THE 13TH RESEARCH INSTITUTE OF CHINA ELECTRONICS TECHNOLOGY GROUP CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.113 Cooperation Road,Xinhua District Shijiazhuang,Hebei 050051 China
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】孫 聶楓
(72)【発明者】
【氏名】王 書傑
(72)【発明者】
【氏名】史 艶磊
(72)【発明者】
【氏名】邵 会民
(72)【発明者】
【氏名】付 莉傑
(72)【発明者】
【氏名】李 暁嵐
(72)【発明者】
【氏名】王 陽
(72)【発明者】
【氏名】徐 森鋒
(72)【発明者】
【氏名】劉 恵生
(72)【発明者】
【氏名】孫 同年
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】実公平06-040592(JP,Y2)
【文献】特開2009-155162(JP,A)
【文献】特開平07-157390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/40
C01B 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給排気システム及び炉体を含み、炉体には坩堝ロッド回転昇降機構及び種結晶ロッド昇降機構が設けられる、インジウム・リン混合物を用いてリン化インジウム結晶を製造するシステムであって、
前記炉体は合成成長室(1)、投入室(19)、及び仕込み室(27)に仕切られ、仕込み室(27)と投入室(19)はセパレータ(22)により仕切られ、仕込み室(27)内に反転投入機が設けられ、投入室(19)内に送りチューブ(18)が設けられ、送りチューブ(18)は、一端が反転投入機に上向きに接合され、他端が合成成長室(1)内の坩堝(10)内に下向きに延在してインジウム・リン混合粒子搬送構造となり、坩堝(10)は坩堝ロッド(16)に位置決めされ、種結晶ロッド昇降機構は合成成長室(1)のトップカバーに設けられる、ことを特徴とするインジウム・リン混合物を用いてリン化インジウム結晶を製造するシステム。
【請求項2】
前記反転投入機は、ロボットアーム(28)、キャリア(24)、及びキャリア反転駆動装置(32)を含み、ロボットアーム(28)は、上端が仕込み室(27)のトップに位置決めされ、下端が反転駆動装置(32)に接続され、反転駆動装置(32)はキャリア(24)に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載のインジウム・リン混合物を用いてリン化インジウム結晶を製造するシステム。
【請求項3】
前記キャリア反転駆動装置(32)はロボットアーム(28)の底端に位置決めされたモータ(32-3)であり、モータ(32-3)の軸はキャリア(24)に接続される、ことを特徴とする請求項2に記載のインジウム・リン混合物を用いてリン化インジウム結晶を製造するシステム。
【請求項4】
前記モータ(32-3)の外部は、断熱層(32-2)及び保護カバー(32-1)で被覆されている、ことを特徴とする請求項3に記載のインジウム・リン混合物を用いてリン化インジウム結晶を製造するシステム。
【請求項5】
前記給排気システムは、低温不活性ガス貯蔵タンク、仕込み室(27)のトップ及び合成成長室(1)の底部にそれぞれ設けられた給気口(31)及び排気口(15)を含み、給気口(31)が送りチューブ(18)の入口よりも高く、156℃未満の不活性ガスが仕込み室(27)から投入室(19)に入り、送りチューブ(18)を介して合成成長室(1)に入り、坩堝(10)の上方に送られて、排気口(15)から排出される、ことを特徴とする請求項1に記載のインジウム・リン混合物を用いてリン化インジウム結晶を製造するシステム。
【請求項6】
前記炉体内の圧力の値が3.5-5.0Mpaであり、投入室(19)の圧力が合成成長室(1)よりも0.05-0.1MPa高い、ことを特徴とする請求項5に記載のインジウム・リン混合物を用いてリン化インジウム結晶を製造するシステム。
【請求項7】
前記合成成長室(1)の炉壁には第1の覗き窓(17)が設けられ、前記仕込み室(27)の炉壁には第2の覗き窓(30)が設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載のインジウム・リン混合物を用いてリン化インジウム結晶を製造するシステム。
【請求項8】
前記仕込み室のトップには仕込みドア(29)が設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載のインジウム・リン混合物を用いてリン化インジウム結晶を製造するシステム。
【請求項9】
前記セパレータ(22)と炉壁との間にシールリングI(22-1)が設けられ、前記送りチューブ(18)は、トップに位置する漏斗部と、投入室(19)から合成成長室(1)内に通じる垂直チューブ部又は傾斜チューブ部とを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のインジウム・リン混合物を用いてリン化インジウム結晶を製造するシステム。
【請求項10】
前記垂直チューブ部又は傾斜チューブ部の管壁内には冷却水を通し、セパレータ(22)は中間層を有し、中間層内には冷却水を通す、ことを特徴とする請求項1に記載のインジウム・リン混合物を用いてリン化インジウム結晶を製造するシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体の技術分野に関し、リン化インジウムの製造に関し、具体的には、インジウム・リン混合粒子を用いてリン化インジウムを合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リン化インジウム(InP)はIII族元素としてのインジウム(In)とV族元素としてのリン(P)とを化合したIII-V族化合物半導体材料であり、半導体材料の分野において非常に重要な戦略的意義を有し、現在、オプトエレクトロニクスデバイス及びマイクロエレクトロニクスデバイスにとって不可欠な半導体材料である。ゲルマニウム、ケイ素材料に比べて、InPは、直接遷移型バンド構造であって、高い電気-光変換効率を有し、電子の移動度が高くて、半絶縁材料にしやすく、高周波マイクロ波デバイスや回路の製造に適し、動作温度が高く、強い放射線抵抗力を持ち、太陽電池材料としての変換効率が高いなど、多数の利点を有する。そのため、InPなどの材料は固体発光、マイクロ波通信、光ファイバー通信、マイクロ波、ミリ波デバイス、耐放射線性太陽電池などのハイテク分野に広く応用されている。バンド工学理論、超薄材料プロセス・技術、及びディープサブミクロン製造技術の発展に伴い、InPもハイエンドのマイクロ波、ミリ波電子デバイス及びオプトエレクトロニクスデバイスにおける優位性を示し、ミリ波ハイエンドデバイスにとって好適な材料となっており、広く重要視されており、開発・応用の将来性が期待できる。ハイエンドInPベースマイクロエレクトロニクス、及びオプトエレクトロニクスデバイスの実現は良好な完全性、均一性、及び熱安定性を有する高品質InP単結晶の製造に依存する。高純度、異なるメルト配合比を有し、混在物のないInP多結晶材料は高品質InP単結晶の生産及びInP関連特性の研究を行う前提条件である。InP単結晶の多くの特性は出発原料である多結晶材料の特性、例えば多結晶材料の配合度、材料の純度と関連している。多結晶材料の特性は結晶成長や結晶の電気的性能、結晶の完全性、均一性などには非常に大きな影響を与える。
【0003】
現在、InP多結晶材料を合成するために一般的に使用されているいくつかの方法及びその問題点は次のとおりである。
(1)水平Bridgman法(HB)と水平式温度傾斜凝固法(HGF):水平Bridgman法(HB)と水平式温度傾斜凝固法(HGF)を用いてInP材料を合成する場合、プロセスから見ると、合成量が大きいほど合成時間が長く、一般的にHB/HGF技術で1.5KgのInP多結晶を合成するのに24h程度かかるため、Siの汚染も顕著になる(その由来は石英管壁である)。
【0004】
(2)リン注入法による合成技術:リン注入法合成技術は、ガス化したリン蒸気をインジウムメルトに注入し、リンガスとインジウムメルトとの接触を加速させてその接触面積を大きくし、坩堝の回転によりインジウムメルト内の対流を増加させ、溶質拡散層中の溶質の拡散を加速させ、それにより、合成過程を加速させる。この方法は、石英リン容器の内外の圧力差に依存してリン蒸気を注入するため、圧力差の制御が不適切であると、泡破裂が発生しやすく、一方、リン蒸気の一部はインジウムメルトに吸収されず、その結果、合成効果に影響を与える一方、損失したリン蒸気は炉体内に揮発し、炉体の洗浄に大きな支障をきたす。また、合成システムにおける温度場の制御に対する要求は非常に高い。
【0005】
上記の水平Bridgman法(HB)、水平式温度傾斜凝固法(HGF)、及び超高圧直接合成技術などの合成方法は、いずれも、まず合成炉内でInP合成を行い、次に、合成したInP多結晶材料を合成炉から取り出して多結晶材料に対してエッチ洗浄処理を行い、その後、高圧単結晶炉に仕込んでInP単結晶を成長させるものである。合成と結晶成長は「2段階」法で行われるので、材料が汚染される可能性が大幅に高くなり、材料の製造コストが増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、インジウム・リン混合粒子を、液体の酸化ホウ素で被覆されている坩堝内に素早く投入し、所望の合成量になると、インジウム-リンメルトを引き上げてリン化インジウム結晶を形成することができ、合成速度をより速くし、制御への要件を下げ、工業的生産に有利であるインジウム・リン混合物を用いたリン化インジウムの製造システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の技術案は以下のとおりである。真空システム、給排気システム、温度・圧力制御システム、電気制御システム、冷却循環システム、計量システム、及び炉体を含み、炉体には坩堝ロッド回転昇降機構及び種結晶ロッド昇降機構が設けられる、インジウム・リン混合物を用いてリン化インジウム結晶を製造するシステムであって、前記炉体は合成成長室、投入室及び仕込み室に仕切られ、仕込み室と投入室はセパレータにより仕切られ、仕込み室内に反転投入機が設けられ、投入室内に送りチューブが設けられ、送りチューブは、一端が反転投入機に上向きに接合され、他端が合成成長室内の坩堝内に下向きに延在してインジウム・リン混合粒子搬送構造となり、坩堝は坩堝ロッドに位置決めされ、種結晶ロッド昇降機構は合成成長室のトップカバーに設けられることをキーとする。
【0008】
このシステムにおいて、炉体が合成成長室、投入室及び仕込み室に仕切られることによって、インジウム・リン混合粒子を仕込み室の反転投入機内に仕込み、次に、投入室及び合成成長室の送りチューブを介して、インジウム・リン混合粒子を坩堝内に投入して溶融し合成することができ、また、合成後にその場で結晶を成長させることができる。投入室と仕込み室がセパレータにより仕切られ、投入する時に通じ、キャリアへ仕込む時に仕切られることが可能であり、さらには、合成成長室において合成又は結晶成長を行いながら、材料の仕込みや補充を行うことを実現することができる。
【0009】
さらに、前記反転投入機は、ロボットアーム、キャリア及びキャリア反転駆動装置を含み、ロボットアームは、上端が仕込み室のトップに位置決めされ、下端が反転駆動装置に接続され、反転駆動装置はキャリアに接続される。ロボットアームは装着、位置決めの役割を果たし、キャリアを仕込み室内に吊り上げることに用いられ、それにより、密閉して低温で投入することを容易にする。反転駆動装置は、キャリアの反転投入を駆動することに用いられる。
【0010】
さらに、構造を簡素化し及び制御を容易にするために、前記キャリア反転駆動装置は、ロボットアームの底端に位置決めされたモータを用い、モータ軸はキャリアに接続される。
【0011】
さらに、炉内環境によるモータ性能への影響を避けるために、前記モータの外部は、断熱層及び保護カバーで被覆されている。
【0012】
さらに、前記給排気システムは、低温不活性ガス貯蔵タンク、仕込み室のトップ及び合成成長室の底部にそれぞれ設けられた給気口及び排気口を含み、給気口が送りチューブの入口よりも高く、低温不活性ガスが仕込み室から投入室に入り、送りチューブを介して合成成長室に入り、坩堝の上方に送られて、排気口から排出される。このシステムでは、不活性ガスの温度をインジウムの融点より低くして、すなわち温度を156℃未満に制御する必要がある。低温不活性ガスの流動に伴って送ると、キャリアから坩堝へ投入する過程におけるインジウム・リン混合粒子を低温にし、インジウム又はリンが溶融せず、ガス化されないようにすることができ、それにより、インジウムが溶融して壁に付着することを回避し、投入中のリンの揮発を防止し、合成の配合比への影響を回避する。
【0013】
さらに、前記炉体内の圧力の値が3.5-5.0Mpaである。この圧力はリン化インジウムメルトの解離圧力よりも高いため、リン化インジウムの解離を回避することで、合成、成長の進行を確保することができる。また、投入室の圧力が合成成長室よりも0.05-0.1MPa高く、且つ低温ガスが上方から入るため、インジウム・リン混合粒子が低温ガスとともに合成成長空間の坩堝の上方に入ることを確保し、インジウム・リン混合粒子がメルトに入る前の「インジウム又はリンの溶融、ガス化」を避けることができる。
【0014】
さらに、合成と結晶の成長を観察しやすくするために、合成成長室の炉壁には第1の覗き窓が設けられる。反転投入機の仕込み、投入の状況を観察しやすくするために、前記仕込み室の炉壁には第2の覗き窓が設けられる。
【0015】
さらに、仕込みやすくするために、前記仕込み室のトップには仕込みドアが設けられる。
【0016】
さらに、仕込み室と投入室を仕切り、シールするために、前記セパレータと炉壁との間にシールリングIが設けられる。材料の受けと送りを容易にするために、前記送りチューブは、トップに位置する漏斗部と、投入室から合成成長室内に通じる垂直チューブ部又は傾斜チューブ部とを含む。
【0017】
さらに、低温環境の維持を補助するために、前記セパレータは中間層を有し、中間層内には冷却水を通す。インジウム・リン混合粒子を降温し、送りチューブの過熱による壊れを防止するために、垂直チューブ部又は傾斜チューブ部の管壁内には冷却水を通す。
【発明の効果】
【0018】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。1、このシステムを用いれば、配合したインジウム・リン混合粒子を坩堝内に直接投入して溶融し合成することができ、また、合成後にその場で結晶を成長させることができ、操作手順を簡素化させ、制御への要件を下げ、合成速度をより速くし、結晶の製造効率を向上させ、工業的生産に有利である。2、このシステムを用いてリン化インジウム結晶を製造すれば、リンの揮発量を減らし、材料の汚染を低減させ、結晶の純度を高め、材料コストを低下させることができ、配合した高品質リン化インジウム結晶の合成と成長に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1におけるインジウム・リン混合物でリン化インジウム結晶を製造するシステムの構造模式図である。
【
図2】インジウム・リン混合物をIn-Pメルトに投入した場合の反応過程の原理図である。
【
図3】実施例1における仕込み室に材料を補充する場合の構造模式図である。
【
図4】実施例2における縦型送りチューブの構造模式図である。
【
図5】実施例における反転投入機の構造模式図である。
【
図6】実施例におけるモータとキャリアとの接続構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面及び実施例を参照しながら本発明を詳しく説明する。
【0021】
実施例1において、インジウム・リン混合物を用いてリン化インジウム結晶を製造するシステムは、真空システム、給排気システム、温度・圧力制御システム、電気制御システム、冷却循環システム、及び計量システムを含む。これらのシステム、特にその場合成法によりリン化インジウム結晶を製造する単結晶炉は、本分野においてよく使用されている基礎システムであり、これらのシステムが基礎構成であるので、ここでは詳しく説明しない。インジウム・リン混合粒子を用いてリン化インジウム結晶を製造することを実現するために、本発明では、炉体を改良する。
【0022】
図1に示すように、炉体は、合成成長室1、投入室19及び仕込み室27に仕切られ、仕込み室27と投入室19はセパレータ22により上部と下部に仕切られ、セパレータ22と炉壁との間にシールリングI22-1が設けられ、セパレータが挿入されると、仕込み室27と投入室19が仕切られ隔離、シールされる。仕込み室27内には反転投入機が設けられ、投入室19内には送りチューブ18が設けられ、送りチューブ18は、一端が反転投入機に上向きに接合され、他端が合成成長室1内に下向きに延在する。
【0023】
合成成長室1内には、下部ヒータ14、メインヒータ9、保温スリーブ8、坩堝10、及び付属の坩堝ホルダ13と坩堝ロッド16が設けられる。坩堝10は黒鉛坩堝ホルダ13に位置し、坩堝ホルダ13は坩堝ロッド16に固定して接続される。下部ヒータ14とメインヒータ9は、坩堝10と坩堝ホルダ13の外周に配置され、メインヒータ9と合成成長室1の内側壁との間に保温スリーブ8が設けられる。坩堝ロッド16の他端は合成成長室1の炉底の外に延びて、坩堝ロッド回転昇降機構に接続される。坩堝ロッド回転昇降機構は、本分野の単結晶炉及び合成炉によく使用されている基礎機構であり、坩堝の昇降・回転を駆動することで、インジウムとリンを均一に混合して、十分に反応させることに用いられ、ここでは詳しく説明しない。坩堝10の上方に種結晶ロッド2が設けられ、種結晶ロッド2には種結晶3と計量センサが固定され、種結晶ロッド2は、合成成長室1のトップカバーを通り抜けて種結晶ロッド昇降機構に接続される。種結晶ロッド昇降機構は、種結晶3の昇降を駆動することで、結晶を引き上げて成長させることができる。計量センサ及び計量システムは、結晶の成長重量を計算できる。種結晶ロッド2、計量センサ及び計量システム、種結晶ロッド昇降機構は、結晶を引き上げて成長させる単結晶炉においてよく使用されている基礎機構であり、ここでは詳しく説明しない。合成成長室1には、メルト温度測定熱電対4、圧力計I6、真空計I7がさらに設けられ、底部には排気口15が開けられ、トップには第1の覗き窓17が開けられる。投入室19の炉壁には、真空計II20、圧力計II21が取り付けられる。送りチューブ18は、トップに位置する漏斗部と、投入室19から合成成長室1内に通じる傾斜チューブ部とを含み、傾斜チューブ部は坩堝10の上方まで延びる。
【0024】
仕込み室のトップには仕込みドア29が設けられ、炉壁には給気口31が開けられるとともに、真空計III25、圧力計III26が取り付けられ、仕込みドア29には第2の覗き窓30が開けられる。仕込み室27内の反転投入機はロボットアーム28、キャリア24、及びキャリア反転駆動装置32を含み、
図5、
図6に示すように、ロボットアーム28は、上端が仕込み室27のトップに位置決めされ、下端が反転駆動装置32に接続され、反転駆動装置32はキャリア24に接続される。キャリア反転駆動装置32は、ロボットアーム28の底端に位置決めされたモータ32-3を用い、モータ32-3軸はピン32-5を介してキャリア24に接続される。モータ32-3の外部は、断熱層32-2及び保護カバー32-1で被覆され、モータ軸外はフランジ34で被覆されるとともに、シールリングII32-4が設けられる。リード33は、ロボットアーム28を通り抜けて電気制御システムに接続される。
【0025】
給排気システムは、低温不活性ガス貯蔵タンク、給気口31、及び排気口15を含む。156℃未満の不活性ガスは仕込み室27から投入室19に入り、送りチューブ18を介して合成成長室1に入って、排気口15から排出される。炉体内の圧力の値が3.5-5.0MPaである。
【0026】
実施例2において、
図4に示すように、実施例1との区別としては、この実施例において、送りチューブ18としてストレートチューブが使用され、送りチューブ18が坩堝10に通じるように、合成成長室1と投入室19はずれて積層して配置され、第1の覗き窓17は合成成長室1の側壁に位置する。
【0027】
このシステムを用いてリン化インジウム結晶を製造するステップは、以下のとおりである。
1)高純度インジウム粉と高純度リン粉を、3.7:1.0-1.5の質量比で均一に混合し、球状のインジウム・リン混合粒子23にプレスする。
【0028】
2)インジウム・リン混合粒子23を酸化ホウ素粉と混合して、仕込み室27内のキャリア24に入れて、塊状の酸化ホウ素を坩堝10に入れる。
【0029】
3)給気口31を介してシステム全体を10-10-5Paまで真空吸引した後、給気口31を介して156℃未満の不活性ガスを投入室19と投入室27に導入し、低温不活性ガスは送りチューブ18を介して合成成長室1に入り、インジウム・リン混合粒子23を常に低温に維持する。合成過程にわたり、給気口31と排気口15との間にガスが流動し、且つ気圧が安定し、圧力の値が3.5-5.0MPaであり、投入室19の圧力が合成成長室1の圧力よりも0.05-0.1MPa高いようにする。
【0030】
4)メインヒータ9及び下部ヒータ14によって坩堝10を加熱し、坩堝10を5-35回転/分まで回転させ、塊状の酸化ホウ素が溶融して坩堝10全体まで敷き詰められて、酸化ホウ素被覆剤11となると、酸化ホウ素被覆剤11と坩堝10との底部界面にメルト温度測定熱電対4を挿入する。
【0031】
5)ロボットアーム28によってキャリア24内のインジウム・リン混合粒子23を送りチューブ18に送り、インジウム・リン混合粒子23を坩堝10内に落下させ、第1の覗き窓17を介して送りチューブ18の開口でのインジウム・リン混合粒子23の落下の状況を観察する。
図2に示すように、一番目又は最初の連続した複数のインジウム・リン混合粒子23については、インジウム・リン混合粒子23中のインジウムは溶融し、リンは加熱されて昇華してリンガスとなり、リンガスはインジウムメルトと反応してそれに吸収され、インジウム-リンメルト12となる。それ以降のインジウム・リン混合粒子23中のインジウムは溶融してインジウム-リンメルト12と反応し、新しい成分であるインジウム-リンメルト12となり、インジウム・リン混合粒子23のリンは加熱されて昇華してリンガスとなり、リンガスはインジウム-リンメルト12と反応してそれに吸収される。インジウム-リンメルト12が坩堝の底部全体を覆うほどの量まで合成されると、種結晶3を下ろして、酸化ホウ素被覆剤11を引き上げる。
【0032】
6)第2の覗き窓30を介してキャリア24内のインジウム・リン混合粒子23の数を観察する。キャリア24内のインジウム・リン混合粒子23の投入が終了した後、
図3に示すように、セパレータ22を挿入して、投入室19と仕込み室27を分離させ、合成成長室1において引き上げによる成長を続ける。また、仕込み室27内の高圧ガスを給気口31から大気圧となるまで放出した後、仕込みドア29を開け、インジウム・リン混合粒子23をキャリア24に投入し、仕込みドア29を閉じ、給気口31から真空吸引し、156℃未満の不活性ガスを導入し、仕込み室27の圧力が合成成長室1及び投入室19の圧力と同じになると、セパレータ22を開け、ロボットアーム28によってキャリア24内のインジウム・リン混合粒子23を、送りチューブ18を介して坩堝10に送って、合成を続け、引き上げを続けて結晶5を形成する。
【符号の説明】
【0033】
1・・・合成成長室、2・・・種結晶ロッド、3・・・種結晶、4・・・メルト温度測定熱電対、5・・・結晶、6・・・圧力計I、7・・・真空計I、8・・・保温スリーブ、9・・・メインヒータ、10・・・坩堝、11・・・酸化ホウ素被覆剤、12・・・インジウム-リンメルト、13・・・坩堝ホルダ、14・・・下部ヒータ、15・・・排気口、16・・・坩堝ロッド、17・・・第1の覗き窓、18・・・送りチューブ、19・・・投入室、20・・・真空計II、21・・・圧力計II、22・・・セパレータ、22-1・・・シールリングI、23・・・インジウム・リン混合粒子、24・・・キャリア、25・・・真空計III、26・・・圧力計III、27・・・仕込み室、28・・・ロボットアーム、29・・・仕込みドア、30・・・第2の覗き窓、31・・・給気口、32・・・反転駆動装置、32-1・・・保護カバー、32-2・・・断熱層、32-3・・・モータ、32-4・・・シールリングII、32-5・・・ピン、33・・・リード、34・・・フランジ。