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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】制振装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/98 20060101AFI20230403BHJP
   E04B 9/18 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
E04B1/98 K
E04B1/98 L
E04B9/18 G
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022007848
(22)【出願日】2022-01-21
(62)【分割の表示】P 2018050293の分割
【原出願日】2018-03-17
(65)【公開番号】P2022048235
(43)【公開日】2022-03-25
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2017052152
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】596066530
【氏名又は名称】宇都宮工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】313012349
【氏名又は名称】旭ファイバーグラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149320
【弁理士】
【氏名又は名称】井川 浩文
(74)【代理人】
【識別番号】240000235
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人柴田・中川法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土井 昌司
(72)【発明者】
【氏名】津田 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】工藤 尚嗣
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-148192(JP,A)
【文献】特開2010-203145(JP,A)
【文献】特開2004-162905(JP,A)
【文献】特開2006-307527(JP,A)
【文献】特開2013-253449(JP,A)
【文献】特開2006-077517(JP,A)
【文献】米国特許第06266936(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/98
E04B 9/18
E04B 9/00
E04B 5/43
E04F 15/18
F16F 15/02-15/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物構造体に使用される天井板または壁板を支持する下地桟に装着して該天井板または壁板の振動を低減させるための制振装置であって、前記下地桟に装着可能な装着手段と、該装着手段に直接的または間接的に支持され、前記天井板または壁板に当接可能な面材当接部と、該面材当接部に直接的または間接的に連続して設けられ、振動の伝達を受けて発振する発振手段とを備え、
前記装着手段は、前記天井板または壁板から前記発振手段よりも離れた位置において適宜面積の保護部材を備え、該天井板または壁板との間で前記発振手段の振動可能領域を形成してなることを特徴とする制振装置。
【請求項2】
前記発振手段は、前記装着手段が前記下地桟に支持された状態において前記天井板または壁板から適宜間隙を保持しつつ、該下地桟の両側のうち一方または双方に突出する振動部材と、この振動部材に対して着脱可能なウエイトとを備えるものである請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
前記発振手段は、前記装着手段が前記下地桟に支持された状態において該下地桟の両側に突出する振動部材と、この振動部材に対して着脱可能なウエイトとを備え、前記振動部材は自由端部を有しており、前記ウエイトが該自由端部に設けられるものである請求項1に記載の制振装置。
【請求項4】
前記面材当接部および前記振動部材は、金属製板状部材によって一体的に構成され、該金属製板状部材を折曲または湾曲することにより前記天井板または壁板に接触する前記面材当接部と、該天井板または壁板から適宜間隔を保持する振動部材とに区分してなる請求項2または3に記載の制振装置。
【請求項5】
前記面材当接部および前記振動部材は、略U字状に折り返された形状とし、その折り返し位置を境界として基端部と自由端部とに区分されており、前記基端部によって前記面材当接部が形成され、前記自由端部によって前記振動部材が形成されるものである請求項4に記載の制振装置。
【請求項6】
前記振動部材は、さらに1以上の箇所で略U字状に折り返されている請求項5に記載の制振装置。
【請求項7】
前記装着手段は、前記金属製板状部材によって前記面材当接部および前記振動部材とともに一体的に構成され、該装着手段の一部または全部が、前記下地桟と前記天井板または壁板との間に挟持されることによって該下地桟に装着されるものである請求項4ないし6のいずれかに記載の制振装置。
【請求項8】
前記面材当接部は、前記装着手段の一部または全部によって兼用されるものであり、前記下地桟と前記天井板または壁板との間に挟持される前記装着手段の一部または全部が、前記面材当接部として機能するものである請求項7に記載の制振装置。
【請求項9】
建物構造体に使用される天井板または壁板を支持する下地桟に装着して生活騒音により発生する該天井板または壁板の振動を低減させるための制振装置であって、前記下地桟に装着可能な装着手段と、前記天井板または壁板に当接可能な面材当接部と、振動の伝達を受けて発振する発振手段とを備え、
前記装着手段は、平面状に設けられて前記天井板または壁板と下地桟との間に挟持されるものであり、
前記面材当接部は、前記装着手段に直接的または間接的に支持され、該装着手段の両側に配置されるものであり、
前記発振手段は、前記装着手段が前記下地桟に支持された状態において該下地桟の両側に突出する振動部材と、この振動部材に対して着脱可能なウエイトとを備え、前記振動部材は自由端部を有しており、前記ウエイトが該自由端部に設けられるものであり、
前記面材当接部および前記振動部材は、金属製板状部材によって一体的に構成され、該金属製板状部材を折曲または湾曲することにより前記天井板または壁板に接触する前記面材当接部と、該天井板または壁板から適宜間隔を保持する振動部材とに区分してなるものであって、先端縁が相互に対向する方向へ湾曲させ略U字状に折り返された形状とし、その折り返し位置を境界として基端部と自由端部とに区分されており、前記基端部によって前記面材当接部が形成され、前記自由端部によって前記振動部材が形成されるものであり、前記自由端部は、平面状の前記基端部との間に適宜間隔を有し、かつ該基端部に平行な状態で形成されていることを特徴とする制振装置。
【請求項10】
少なくとも前記振動部材は、バネ鋼で構成されるものである請求項2ないし9のいずれかに記載の制振装置。
【請求項11】
前記発振手段が前記下地桟の両側双方に設けられる場合において、双方の該発振手段は該下地桟を中心として対称に構成されている請求項1ないし10のいずれかに記載の制振装置。
【請求項12】
前記下地桟は、前記天井板または壁板に当接する適宜面積の当接面を有し、該当接面には緩衝部材が設けられている請求項1ないし11のいずれかに記載の制振装置。
【請求項13】
前記発振手段は、ゴム製ダンパまたはバネダンパによる弾性部材と、該弾性部材の一部に装着されたウエイトとを備えるものである請求項9に記載の制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる生活騒音等により発生する建物構造体の振動を低減させるための制振装置に関し、特に壁面や天井等の支持に使用される面材支持部に装着することにより振動を低減させるための制振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般住宅において、特に、密集して建造される住宅地または集合住宅にあっては、近隣または隣室もしくは上階で生活する人々によって発生する騒音や振動がしばしば問題となり、近隣トラブルの原因にもなっている。これらの騒音や振動は、日常生活において発生する音(いわゆる生活騒音)によるものであるが、生活習慣によっては、テレビや楽器から発生する音や会話の声、さらには上階での足音など多岐の原因によって発生するものである。これらの生活騒音は、振動により近隣または隣室もしくは下階に伝達され、これが不快音となっていた。また、ドアの開閉や上階での歩行によって発生する振動についても隣室や下階等に伝達し、これが不快振動となっていた。
【0003】
そこで一般的な建物構造体においては、壁面や天井を衝撃吸収構造とし、または防音材などを用いることで解消しようとしてきた。しかしながら、これらは、振動の伝達系において、振動の伝播を中断させる(振幅を小さくする)ために設けられるものであり、音や振動の共振現象による増幅効果までも低減させるには至っていない。すなわち、建物(特に面状部分)は、その構造によって振動する際に固有の周波数を有しており、騒音等によって振動する場合、その振動の周波数が建物固有の周波数に接近すると、振幅が大きくなる。そのため、十分に振動の伝播を中断させない限りにおいては、共振現象による振動の増幅が生じるため、未だ十分な生活騒音等の解消には至っていないのが現状である。
【0004】
そこで、これらの共振現象による生活騒音や振動を低減させるために、振動対象部材に対して複数の振動可能なダンパウエイト(ゴム製ダンパに錘を装着したもの、以下同じ)を装着し、伝達される振動エネルギをウエイトに吸収させることにより、生活騒音等の振幅を打ち消すことで低減させていた(特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-141600号公報
【文献】特開2006-77517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1に開示される技術は、振動対象部材(壁や天井)に振動可能なダンパウエイトを直接的に装着するものであるため、十分な制振効果を得るためには、振動対象部材ごとに複数のダンパウエイトを装着しなければならず、その数が膨大とならざるを得なかった。また、上記特許文献2に開示される技術は、天井(振動対象物)を支持する野縁に複数のダンパウエイトを装着するものであり、振動対象物に対する直接的な装着ではないものの、野縁に沿って複数のダンパウエイトを装着することによって、振動対象物の全体の振動を吸収させることが提案されていた。しかしながら、野縁にのみダンパウエイトを設ける構成では、振動の伝達源である振動対象物の振動を十分に解消させことは容易でなかった。すなわち、野縁は振動対象物を支持するものであって、建物構造体の中では比較的強固な構造であり、振動対象物から伝播される振動を十分に伝達することができず、ダンパウエイトによって解消される振動は振動対象物の振動全体の僅かなものとなっていた。
【0007】
このように多数のウエイトを装着することは、振動に抗するウエイトを多数設けることにより、制振の効果を期待するものであるが、その装着の数が多くなり、設置には非常に手間が掛かるうえ、個別のウエイトにおける振動周波数を均一化することも容易でなく、振動周波数が異なる場合には、現実に機能できるダンパウエイトが限定されることとなり、大幅な振動低減効果が期待できないなどの問題点があった。
【0008】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、容易に装着できる構造により、いわゆる生活騒音によって発生する振動を低減し得る制振装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、建物構造体に使用される面材を支持する面材支持部に装着して該面材の振動を低減させるための制振装置であって、前記面材支持部に装着可能な装着手段と、該装着手段に直接的または間接的に支持され、前記面材に当接可能な面材当接部と、該面材当接部に直接的または間接的に連続して設けられ、振動の伝達を受けて発振する発振手段とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
上記構成によれば、制振装置は全体として装着手段によって面材支持部に装着され、面材に個別に設置する必要はないが、面材当接部が面材に接触することによって、当該面材の振動を発振手段に伝達することができる。発振手段は、面材当接部から伝達される振動を受けて発振し、生活騒音等によって生じる振動を打ち消すように作動することとなる。すなわち、発振手段は、面材の振動の伝達を受けて共振(共鳴)して振動するものであり、面材の振動エネルギが発振手段に移動することにより低下し、騒音等による面材の振動を低減させるものである。
【0011】
ここで、面材とは、天井の場合は、天井板(天井材または天井仕上げ材など)であり、壁面の場合は、壁板(壁面材または壁面仕上げ材など)であって、石膏ボードなどが使用される。また、面材支持部とは、天井の場合は野縁などの下地桟であり、壁面の場合は間柱や胴縁などの下地桟であって、木製桟の場合もあれば軽量形鋼製の場合がある。このような下地桟は天井面および壁面に適宜間隔で配置されており、個々の下地桟に対して適度な数の制振装置を装着することができる。また、面材当接部が装着手段に対し、直接的に支持される状態とは、面材当接部が装着手段に接合される場合のほか、装着手段を構成する材料の一部が面材当接部として機能する場合などが考えられ、間接的に支持される状態とは、両者間に他の機能を有する部材が介在されている場合のほか、装着時において押圧すること等によって結果的に支持された状態となっている場合を含むものである。また、発振手段が直接的に面材当接部に連続している状態とは、同一材料によって構成されている場合のほか、両者がそれぞれの機能を発揮する状態で連続する場合を意味し、間接的に連続している状態とは、中間に何らかの材料が介在されている場合のほか、同一材料で構成されるものでありながら、両者の中間に他の機能を発揮するものが介在される場合を意味するものである。
【0012】
上記構成の発明においては、前記発振手段として、前記装着手段が前記面材支持部に支持された状態において前記面材から適宜間隙を保持しつつ、該面材支持部の両側のうち一方またが双方に突出する振動部材と、この振動部材に対して着脱可能なウエイトとを備える構成とすることができる。
【0013】
振動部材が面材から適宜間隔を有することにより、面材から離れて振動することができ、振動時における振動周波数はウエイトによって調整可能となる。また、ウエイトが移動する(振幅する)ことにより振動エネルギが吸収され、面材の振動が低減されることとなるのであり、そのウエイトの重量に応じて吸収される振動エネルギを調整することも可能となる。従って、単一の制振装置に使用されるウエイトの重量を大きくすることにより、少ない数の制振装置によって振動の低減効果を得ることができる。この振動部材およびウエイト(発振手段)は、面材支持部の両側に設ける場合のほか、片方にのみ突出させるように設けることができる。面材支持部の双方に発振手段を設けることにより、双方の振動部材が相互に振動を打ち消し合うような状態となる場合には、面材の振動を吸収する効果が減殺されることから、このような場合には、片方にのみ発振手段を設けるようにすればよい。
【0014】
上記構成にあっては、前記振動部材が、前記ウエイトを搭載するために、適宜面積を有する平面部を有するものであり、前記ウエイトが、前記面材支持部から振動部材が突出する方向に沿った前記平面部の中央線の両側に任意の重量バランスで設けられているものすることができる。ウエイトは、振動部材に対して着脱可能であるから、所望の重量バランスとなるように適宜設置することができる。また、同様に、前記振動部材が、前記ウエイトを搭載するために、適宜面積を有する平面部を有するものであり、前記ウエイトが、前記平面部の全面に対した偏った重量バランスで設けられているものとすることができる。
【0015】
上記における平面部の全体に対して偏った重量バランスとは、面材支持部から振動部材が突出する方向に沿った平面部に対する中央線を基準とし、その中央線の直交方向に偏った状態である場合のほか、当該中央線に平行な方向に偏った状態である場合を含むものであり、さらに平行および直交方向の双方に偏った状態を含む。すなわち、当該中央線の両側で異なる重量のウエイトを配置し、または、一塊のウエイトの重心を中央線に平行な方向もしくは直交方向に逸らせて配置する場合などがある。さらには、一塊の矩形のウエイトの長手方向を中央線に対して有角状として設置する場合があり得る。
【0016】
なお、上記のように、振動部材にウエイトが固着される構成の発明においては、前記面材当接部および前記振動部材が、金属製板状部材によって一体的に構成され、該金属製板状部材を折曲または湾曲することにより前記面材に接触する前記面材当接部と、該面材から適宜間隔を保持する振動部材とに区分するように構成することができる。この場合には、前記振動部材を、前記面材当接部との境界から斜状に折曲して構成することができるほかに、前記面材当接部および前記振動部材を、略U字状に折り返された形状とし、その折り返し位置を境界として基端部と自由端部とに区分したうえ、前記基端部によって前記面材当接部を形成し、前記自由端部によって前記振動部材を形成するように構成してもよい。さらに、前記振動部材は、さらに1以上の箇所で略U字状に折り返された構成としてもよい。
【0017】
また、上記構成の発明においては、前記装着手段が、前記金属製板状部材によって前記面材当接部とおよび前記振動部材とともに一体的に構成され、当該装着手段が、前記面材支持部と前記面材との間に挟持されることによって該面材支持部に装着されるように構成してもよい。このとき、前記装着手段は、前記面材当接部として機能させるようにしてもよい。なお、基端部とは、折り返し位置から基端側の適宜範囲を示し、自由端部とは、折り返し位置から自由端側の適宜範囲を示すものであり、局所的な端部を指すものではない。
【0018】
上記構成に発明においては、前記装着手段が、前記発振手段よりも前記面材から離れた位置において適宜面積の保護部材を備えるものとし、この保護部材が当該面材との間で前記発振手段の振動可能領域を形成するような構成とすることができる。
【0019】
上記構成の場合には、面材の裏面側において断熱材等の制振とは無関係な部材を設ける場合において、これらの部材が発振手段に接触することを回避することができる。なお、防護部材としては、面材に略平行に設けられた板状部材によって構成することができる。面材との間で適宜な間隔を有していれば、その間隔が形成される領域において発振手段が振動できる空間が確保されるからである。
【0020】
そして、上記各構成における前記振動部材または前記金属製板状部材は、バネ鋼で構成することができる。この場合には、面材との間に適宜間隔を有して構成される振動部材は、バネ鋼により振動可能な状態とすることができる。また、上記各構成における前記発振手段は、前記面材支持部を中心として対称に構成されていることが好ましい。これは、面材支持部に対する一箇所の装着により、その両側に位置する面材の振動を発振手段に伝達することができ、当該発振手段によって低減される振動は、同じ周波数の振動を対象とすることができるからである。
【0021】
上記構成においては、面材当接部を面材に向かって押圧する付勢手段を設ける構成とすることができる。この場合、付勢手段は、装着手段に支持される構成となり、装着手段の一部によって構成することができる。特に、装着手段と面材当接部とが単一材料で構成される場合は、両者の中間に弾性変形可能な領域を構成することにより押圧可能としてもよく、他方、装着手段と面材当接部とが個別に構成される場合には、装着手段から突出させる構成としてもよい。この場合、面材当接部(これと連続する振動部材を含む)は、装着手段に対し回動可能な状態で係止されることが好ましい。なお、いずれの場合においても押圧手段は、板状に構成することができ、その板状部材を面材当接部に向かって膨出させるように湾曲する構成とすることができる。
【0022】
上記構成によれば、面材当接部が面材に向かって押圧されることとなり、面材当接部が面材に対して当接すべき領域の広い範囲を確実に当接させることができ、面材が振動する際の伝達を確実に行うことができる。また、面材が繰り返し振動することによって、当該面材と面材当接部との当接状態が変化されることを防止し、面材当接部による面材の振動伝達を長期的に安定させることができる。装着手段と面材当接部とが個別に構成される場合において、面材当接部が装着手段に対して回動可能であることから、面材当接部は付勢手段による付勢力の強弱にかかわらず、回動による適正な角度となり、面材に当接することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、制振装置は面材支持部に装着できるように構成されていることから、面材の表面に装着する場合に比較して極めて容易に設置することができる。特に、振動が伝播する面材の個々に多数の制振装置を設置する必要がないことから、その手間を省くことができる。また、振動の低減には発振手段、とりわけ振動部材とウエイトによって共振(共鳴)させることによることから、振動部材の長、ウエイトの重量、またはこれらの両者を調整することにより、建物固有(面材固有)の周波数において発振させることができ、建物固有(面材固有)の周波数において増幅する騒音等の低減を可能とするものである。このときの周波数調整により、低周波における振動を可能にするため、生活騒音のうち不快騒音とされる20Hz~400Hzの低周波振動を低減させることができるものである。
【0024】
また、装着手段と面材当接部との間に付勢手段を設ける構成の発明によれば、付勢手段が面材当接部に対し面材に向かって押圧する付勢力が付与されることから、制振装置を面材支持部に装着した状態において、面材当接部を面材に密着させることができ、これによって広い範囲で面材当接部が面材に当接することから、面材の振動を効率よく伝達することができる。また、建物構造体における生活騒音は、専ら壁や天井から伝達されることとなるが、当該壁または天井を構成する面材は必ずしも平滑な平面でないことがあり、そのような平滑でない面材に対しても、面材当接部を好適に当接させることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】制振装置の装着状態を示す説明図である。
図2】制振装置に係る第1の実施形態を示す説明図である。
図3】制振装置に係る第1の実施形態の変形例を示す説明図である。
図4】制振装置に係る第1の実施形態の変形例を示す説明図である。
図5】制振装置に係る第2の実施形態を示す説明図である。
図6】制振装置に係る第3の実施形態を示す説明図である。
図7】制振装置に係る第3の実施形態の詳細を示す説明図である。
図8】制振装置に係る第3の実施形態の変形例を示す説明図である。
図9】制振装置に係る第4の実施形態を示す説明図である。
図10】制振装置に係る第4の実施形態の設置状態を示す説明図である。
図11】制振装置に係る第5の実施形態を示す説明図である。
図12】制振装置に係る第5の実施形態の設置状態を示す説明図である。
図13】制振装置に係る第6の実施形態を示す説明図である。
図14】制振装置に係る第6の実施形態の設置状態を示す説明図である。
図15】制振装置に係る第6の実施形態の変形例を示す説明図である。
図16】制振装置に係る第6の実施形態の変形例の設置状態を示す説明図である。
図17】制振装置に係る第6の実施形態における発振手段の変形例を示す説明図である。
図18】制振装置に係る他の実施形態の変形例を示す説明図である。
図19】制振装置に係る他の実施形態の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、制振装置が装着される建物の構造を示す図である。図は、制振装置1が装着される一例であって、面材2を天井材とし、面材支持部3を野縁としたものを示している。天井材に代えて壁面材とし、また、野縁に代えて壁面用下地桟とすることにより、壁面についても同様に使用できるものであるが、ここでは、代表的な例として天井構造を中心に説明することとする。なお、一般的な天井構造としては、図示のように、建物の梁等に設けられる吊りボルト4の下部に装着されるハンガ5によって野縁受け6が支持され、野縁(面材支持部3)は、この野縁受け6に対しクリップ7によって支持される構成となっている。制振装置1は、野縁等の下地桟に支持されるものであり、天井や壁面の表面には設けられず、これらの裏面側に設置されるものである。
【0027】
本実施形態の制振装置1は、前記の面材支持部(野縁)3に装着されるものであり、その一例として、面材(天井材)2と面材支持部(野縁)3との間に挟持される状態を示している。この挟持の状態は、面材支持部(野縁)3に面材(天井材)2が固定されることのみによって支持させてもよいが、制振装置1と面材支持部(野縁)3とを仮止め(両面テープなどによる接着)し、その後の面材(天井材)2の固定によって最終的に挟持させてもよい。なお、一般的な建物構造に使用される面材(天井材)2は、面材支持部(野縁)3に対して、多数のビス止めによって強固に固定されるものであり、最終的な挟持状態は強固なものとなり得る。なお、当然のことながら、図における面材支持部(野縁)3は軽量形鋼製によるものを例示しているが、軽量形鋼製のほかに木質製の場合もあり得る。また、面材支持部(野縁)3に対する制振装置1の固定は、後述のように種々の形態があり、また、挟持させる場合であっても、別途ビス止め等により、または固着することにより、強固に固定してもよい。
【0028】
<第1の実施形態>
ここで、第1の実施形態に係る制振装置1の詳細について説明する。図2は本実施形態を示す図であり、図2(a)は斜視図、図2(b)は面材支持部に装着した状態の正面図である。図2(a)に示しているように、本実施形態は、一枚の薄肉の板状部材の両端から二箇所における適宜な位置11,12において、先端縁が相互に対向する方向へ湾曲させ、略U字状としたものである。前記二箇所の適宜位置(当該位置で湾曲させた部分を湾曲部と称する)11,12の中間に位置する領域が基端部10aであり、先端側が自由端部10b,10cである。基端部10aは固定的に支持されるため基部として機能し、自由端部10b,10cは、基端部10aに連続しているが特に固定されておらず自由に振動可能となっている。この自由端部10b,10cは、平面状の基端部10aとの間に適宜間隔H1を有し、かつ基端部10aに平行な状態で形成されている。平面状の基端部10aは、連続する1枚の平面を構成するが、これらのうち、中央に位置する領域13が面材支持部との挟持に供される部分であり、これが面材支持部に対する装着手段の一形態である。また、基端部10aの中央領域13の両側には、中央領域13に連続する平面領域14,15が存在し、この表面(図中下面)が面材に当接することとなり、これが面材当接部として機能するものである。このような面材当接部の形成の形態が、装着手段に直接的に支持されている状態の一形態である。なお、本実施形態の場合には、中央領域13を含む基端部10aの全体が面材に当接できる構成であり、この基端部10aは、装着手段として機能するとともに、面材当接部としても機能し得る構成となっており、両機能を兼用する場合も両者が直接的に支持された状態の一形態である。
【0029】
上記の自由端部10b,10cは、湾曲部11,12によってのみ基端部10aに連続しており、その弾性により、この湾曲部11,12を基点として、当該湾曲部11,12から先端までの範囲が振動できる状態となっている。従って、この自由端部10b,10cが振動部材として機能するのである。そして、この自由端部10b,10cの適宜箇所にウエイト8,9を固着することにより、発振手段16,17を構成しているのである。このように、湾曲部11,12が特別の機能を有するものではなく、基端部10aと自由端部10b,10cとを区分するに過ぎない状態で連続している構成によって、面材当接部に対して発振手段16,17が直接的に連続した形態となっているのである。そして、発振手段16,17を構成するウエイト8,9は、自由端部10b,10cの振動状態を左右するものであり、振動エネルギと振動周波数とを調整している。すなわち、当該ウエイト8,9の重量に応じて、自由端部10b,10cを振動させるための振動エネルギが左右し、また、自由端部10b,10cの柔軟性と相俟って振動周波数が変化する。つまり、ウエイト8,9の重量を大きくする場合には、低周波における振動となり、軽量にする場合は高周波による振動となることから、低減させるべき周波数に応じてウエイトを変化・調整することとなる。
【0030】
なお、本実施形態における板状部材は、バネ鋼で構成しており、自由端部10b,10cの振動は、バネ鋼によるバネ定数に応じた振幅を生じさせることができる。また、自由端部10b,10cの面積およびウエイト8,9の大きさ(重量)は、両側において対称な状態としており、双方の発振手段16,17による振動状態が同じ状態となるように設けられている。板状部材はバネ鋼でなくても同種の性質を有していれば他の材料で設けてもよい。例えば、柔軟な弾性力を有する樹脂製材料を使用してもよい。
【0031】
本実施形態の制振装置1を面材支持部3に支持された状態を図2(b)に示している。この図に示されるように、基端部10aの中央領域13において、面材2と面材支持部3とに挟持されることにより、面材支持部3に支持されるものである。このとき、当該挟持によって中央領域13の表面(図中下面)および平面領域14,15の表面(図中下面)は、いずれも面材2に当接している。面材2に対するこれらの当接により、面材2の振動は、これらの基端部10aに伝達され、さらに自由端部10b,10cにまで伝達されることとなる。
【0032】
この振動の伝達は、発振手段16,17において共振(共鳴)することにより発振することとなる。すなわち、発振手段16,17は、独自に駆動力を有するものではなく、引導の伝達を受けることによって、作動するものである。そして、共振(共鳴)によって発振することにより、面材2が振動するときの周波数が、前記発振手段16,17の振動周波数に接近する場合、発振手段16,17(自由端部10b,10c)が発振することとなるのである。なお、建物構造における面材2は、固有の周波数を有しており、発振手段16,17の周波数を上記の固有周波数に合わせておくことにより、面材2の振動を低減させることができるのである。なお、その低減は、専らウエイト8,9によって、面材2の振動エネルギを吸収させることによるものであり、その吸収エネルギは、ウエイト8,9の重量に比例することとなる。従って、ウエイト8,9の重量が大きい程、振動の低減効果が期待できる。ただし、自由端部10b,10cの柔軟性とウエイト8,9の重量とのバランスによって周波数を調整することから、ウエイト8,9のみを大きくすることができないことが予想される。そのため、大きい振動エネルギを吸収させる場合には、制振装置1の装着数を増加させることとなる。
【0033】
本発明の第1の実施形態は上記のとおりであることから、本実施形態の制振装置1を面材支持部3に支持(面材2とで挟持)することにより、面材2の裏面側において、面材2に当接する面材当接部14,15(または基端部10aの全域)が面材2の振動を発振手段16,17に伝達し、これを受けて発振手段16,17を振動させることができるものである。従って、面材支持部3が設置される場所において装着することができ、面材2の裏面側に複数のダンパウエイトを装着する必要がないのである。また、その構造上、ダンパウエイトよりも大型のウエイト8,9を使用することができるため、振動エネルギの吸収率が高く、騒音等の低減効果が大きいものである。
【0034】
なお、上記実施形態は、図示においてウエイト8,9を自由端部10b,10cの先端縁に沿って設けているが、これは、ウエイト8,9の重量によって振動する状態を示すためであり、その位置は任意である。特に、自由端部10b,10cにおけるウエイト8,9の固着位置に応じて、振動周波数を異ならせることができる。つまり、湾曲部11,12に近接させれば周波数が高くなり、先端縁に近接させれば周波数は低くなるのである。そのため、先端縁よりも湾曲部11,12に接近して大きめのウエイト8,9を設けることにより、同じ周波数であっても振動エネルギの吸収率を向上させることができる。
【0035】
<第1の実施形態の変形例>
ここで、第1の実施形態の変形例について説明する。変形例は、面材当接部に対する付勢手段を有する構成のものであり、図3は装着手段に直接的に支持される面材当接部に対して付勢する構成の実施形態であり、図4は装着手段と面材当接部との間に変形領域を介在させ、面材当接部が装着手段に間接的に支持される構成の実施形態である。
【0036】
図3に示す変形例は、基端部10aの中央領域(装着手段)13に対し、その両側に連続する平面領域(面材当接部)14,15との境界から、当該平面部(面材当接部)14,15を傾斜させたものであり、この傾斜の方向は、湾曲部11,12が面材2に接近する方向としたものである(図3(a)および(b)参照)。なお、基端部10aは弾性変形可能な材料(例えばバネ鋼など)で構成され、上記の傾斜の状態は強制的に弾性変形させることにより、適宜変形が可能となっているものである。
【0037】
上記のように、平面領域14,15を傾斜させることにより、面材2に対して強制力なく制振装置1を当接させる場合、湾曲部11,12の近傍のみが面材2に当接した状態となるが、中央領域(装着手段)13を面材支持部(野縁)3に装着(面材2と野縁3とで挟持)させることにより、当該中央領域(装着手段)13が面材2に当接し、このとき、平面領域(面材当接部)14,15は傾斜部から弾性変形して、平坦な状態(または平坦に近い状態)に変形することとなる(図3(c)参照)。このときの弾性変形により、平面領域(面材当接部)14,15は、復元方向へ付勢することとなり、当該平面領域(面材当接部)14,15が面材2に対して押圧した状態となる。これにより、平面領域(面材当接部)14,15の表面を面材2に密着させることとなり、良好な当接状態を維持させることができるのである。
【0038】
図4に示す変形例は、基端部10aの中央領域(装着手段)13と平面領域(面材当接部)14,15との間に、変形領域10d,10eを介在させたものであり、この変形領域10d,10eは、弾性変形可能な材料により、断面山形に形成したものである(図4(a)参照)。このような形態は、装着手段13と面材当接部14が、間接的に連続させる場合の一形態ということができる。なお、変形領域10d,10eを断面山形の形状としたのは、弾性変形に伴う可動域を設けるためであり、また、平面領域(面材当接部)14,15が面材2と当接する際に、変形領域10d,10eが面材2に接触させないためである。従って、この断面山形の形状は、断面弧状としたものであってもよく、蛇腹状としてもよいものである。
【0039】
このように、変形領域10d,10eを設けた構成とすることにより、予め平面領域(面材当接部)14,15は、中央領域(装着手段)13に対して、傾斜させた状態とすることができる(図4(a)参照)。そして、この傾斜の方向は、前述の図3における変形例と同様に、湾曲部11,12が面材2に接近する方向としたものであり(図4(b)参照)、中央領域(装着手段)13を強制的に面材2に当接させるように、当該領域13を面材2と面材支持部3との間に挟持させることにより、平面領域(面材当接部)14,15が付勢力を得ながら面材2に密着することとなるのである(図4(c)参照)。この付勢力(弾性変形に伴う復元力)により、平面領域(面材当接部)14,15は、好適な範囲で面材2に密着し、面材2の振動を十分に伝達し得る状態となるのである。
【0040】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図5は、本実施形態を示す図である。なお、図5(a)は斜視図であり、図5(b)面材支持部に装着した状態の正面図である。これらの図に示されているように、本実施形態の制振装置100は、面材支持部2に装着するために、断面略コ字状の装着手段113が設けられている。この支持手段113は、面材支持部2を三箇所から包囲する部分と、面材2との境界部分において係止するための係止部130a,130bを備えている。係止部130a,130bが設けられている側から、面材支持部3に装着することにより、係止部130a,130bが面材2との境界部分を係止し、全体を面材支持部3に装着できるものである。
【0041】
また、この装着手段113には、発振手段116,117に向かって突出する平面状の保護部材118,119が設けられている。この保護部材118,119は、発振手段116,117の上部との間に適宜な間隔H2を有して設けられており、発振手段116,117に固着されるウエイト108,109との間に十分な空間を保持している。ウエイト108,109との間に空間を有することにより、発振手段116,117が発振(振動部材(自由端部)110b,110cが振動)できる領域を確保しているのである。このような領域の確保は、建物構造において、天井や壁面の裏面側に設けられる断熱材等との接触を回避するために好適である。
【0042】
さらに、本実施形態では、面材当接部114,115および発振手段116,117が、装着手段113の両側にまとまって配置されている。また、これらの面材当接部114,115および発振手段116,117は、装着手段113とは個別に設けられ、面材当接部114,115の一部(基部)110aを、装着手段113の一部との間で締着または溶接するなどによって一体化したものである。なお、面材当接部114,115および発振手段116,117が分離して設けられ、装着手段113に装着されることから、面材当接部114,115は、面材支持部3が面材2を支持する位置から逸脱した領域において、面材2と接触することとなる。これにより、面材2の振動は、面材支持部3を経由せずに(面材支持部3に伝達されずに)直接的に発振手段116,117に伝達させることができる。また、前記における締着とは、ボルト・ナットで締め付ける方法があり、リベット等による鋲着でもよく、溶接は端縁を溶接するほかに、スポット溶接でもよい。このように、面材当接部114,115の一部(基部)110aが装着手段113の一部に連結される態様は、当該面材当接部114,115が装着手段113によって間接的に支持されている場合の一形態である。
【0043】
上記構成のように、装着手段113と、面材当接部114,115および発振手段116,117とを個別に形成することにより、両者を異なる材質によって作製することができる。例えば、面材当接部114,115および発振手段116,117についてのみバネ鋼によって作製し、装着手段113については他の材質を使用することができる。このような構成により、面材当接部114,115および発振手段116,117による振動の伝達作用および発振作用については、バネ鋼によって担保することができる。さらには、当該部分についての個別製造により、寸法精度を向上させることも可能となる。なお、バネ鋼に代えて、樹脂製材料で構成することもでき、この場合には、装着手段113のみを金属製材料としてもよい。
【0044】
本実施形態は、上記のような構成であるから、発振手段116,117は、第1の実施形態におけるもの16,17と同様に機能するものであることに加え、保護部材118,119を設けたことにより、発振手段116,117の可動域を確保できるものとなる。また、制振装置100を面材支持部3に装着することが容易となり、さらに、この装着手段113は、断面コ字状であるため、面材2を面材支持部3に設置した後においても装着が可能となる。従って、設置工事の後において、騒音等による振動が低減される状況を確認したうえで、制振装置100の追加設置や交換等も容易となる。
【0045】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。図6は、本実施形態を示す図である。なお、図6(a)は斜視図、図6(b)面材支持部に装着した状態の正面図であり、図6(c)は使用状態を示すものである。図6(a)および(b)に示されているように、本実施形態は、基本的には第2の実施形態と同様であるが、発振手段216,217の形態を異ならせ、面材当接部214,215が装着手段213の係止部230a,230bと一体的に設けられている点で異なるものである。
【0046】
本実施形態の制振装置200における振動部材(自由端部)210b,210cは、湾曲させておらず、面材当接部214,215から段差を有して側方へ突出させて形状としている。段差を設けることにより、振動部材(自由端部)210b,210cは、面材2に接触することなく振動できる構成となっており、その振動を受けるウエイト208,209は、当該振動部材(自由端部)210b,210cの上面に固着されるものであり、振動部材(自由端部)210b,210cの端縁よりも外方に張り出して設けることができるようにしている。さらに、ウエイト208,209は、板状によって構成することにより、複数枚を積層した状態で配置することができるものとしており、振動部材(自由端部)210b,210cの端縁からの張出状態や1枚の重量に応じて、増減させることができるものである。
【0047】
また、本実施形態の係止部230a,230bは、独自において面材支持部3を係止するものではなく、面材当接部214,215と一体となって、面材2に当接し、面材支持部3との挟持によって係止されるものとしている。従って、装着手段213を面材支持部3に係止すると同時に、面材当接部としても機能し得るものとなっている。
【0048】
装着手段213が上記のような構成であるから、面材支持部3に対して装着する際には、図6(c)に示すように、装着手段213の上部を人為的に湾曲させることによることとなる。すなわち、装着手段213の上部は、図示のように2ヶ所に分かれた帯状部分によって構成されており、バネ鋼であれば、またバネ鋼でなくても柔軟性を有する材料であれば(薄肉の金属材料または樹脂材料等であっても)、十分に湾曲させることができる。そして、このように湾曲させることにより、係止部230a,230bの両先端は大きく離間し、面材支持部3を通過して面材2が設置される側へ移動させることができるのである。そして、装着位置まで移動させた後、上記の湾曲状態から元の状態に復元させることにより、係止部230a,230bとともに、装着部材213の全体によって面材支持部3を掴持させることができるのである。
【0049】
本実施形態はこのような構成であるから、第2の実施形態と同様に、制振装置200の装着が容易となる。特に、本実施形態では、係止部230a,230bが最終的には面材2と面材支持部3とで挟持される状態となるから、前記掴持した状態を仮止め状態とみなし、挟持の状態を強固な固着の状態とみなすことができる。そして、このような仮止め状態が容易に行えることにより、複数の制振装置200の設置が極めて簡便なものとなる。さらに、ウエイト208,209の増減を可能とするため、発振手段216,217における振動周波数等の調整も容易であり、建物(面材)固有の周波数が異なる現場において、その場で調整することもでき、また、後日においてウエイト208,209の数を変更することも可能となる。
【0050】
なお、本実施形態は、図7に示すように、装着手段213と、その他の部分とが個別に形成され、両者を締着または溶接等によって一体化させるものである。締着または溶接等によって接合される部分は、面材当接部214,215の一部を折り曲げて立設された立設部210aと、装着手段213の側面部211,212とが使用される。なお、締着とは、ボルト・ナットで締め付ける方法があり、リベット等による鋲着でもよく、溶接は端縁を溶接するほかに、スポット溶接でもよい。ここで、係止部230a,230bは、面材当接部214,215の一部によって構成されるものとし、部分的に突出させる構成とするものである。そして、複数の箇所(図は2ヶ所)で突出させる係止部230a,230bの間に立設部210aが構成されるのである。
【0051】
上記構成の場合には、両者を異なる材料で作製することができる。例えば、装着手段213を除く部材をバネ鋼で作製することもでき、または樹脂製材料で作製してもよく、これを金属材料で作製した装着部材213と一体的にしてもよい。または、装着手段213は装着時に湾曲させる必要があることから(図6(c)参照)、装着手段213を樹脂製材料で作製し、その他の部分をバネ鋼で作製してもよい。このように、同一材料または異種材料のいずれを選択することも可能となり、製造コストの面で適宜選択することが可能となる。なお、係止部230a,230bは装着手段213の装着時に面材支持部3に形成されることから、装着手段213の一部を構成しているが、この係止部230a,230bを除く部分が装着手段であるものと仮定すれば、面材当接部214,215は、立設部210aを介して間接的に装着手段213に支持されていることとなる。これが間接的に支持される場合の一形態である。
【0052】
<第3の実施形態の変形例>
ここで、第3の実施形態の変形例について説明する。図8は、第3の実施形態における片方の面材当接部215(係止部230bを含む)および振動部材(自由端部)210cの変形例を示すものである。図8(a)に示す変形例は、振動部材(自由端部)210cの基端縁に略U字状のリブ240,250を形成したものである。このリブ240,250は、振動部材(自由端部)210cの表面側から裏面側に絞り加工によって設けられたものである。図では凹状部分のみを示しているが、裏面側は凸状のリブが形成されている。振動部材(自由端部)210cは、発振の際に繰り返し振動するものであり、その振動は、面材当接部215との境界(基端縁)を中心に上下動する。そのため、比較的薄肉材料で形成する場合には、当該基端縁の摩耗(疲労破壊)の原因となるため、当該基端部を補強するのである。
【0053】
同様に理由により、図8(b)に示すように、振動部材(自由端部)210cの基端縁、および面材当接部215の基端縁の双方に、部分的なリブ240a,240b,250a,250bを設ける構成としている。振動部材(自由端部)210cの基端縁に設けられるリブ240a,250aは、上面から裏面側へ絞り加工されており、上面側は凹状であるが裏面側は凸状となっている。他方、面材当接部215aの基端側に設けられているリブ240b,250bは、裏面側から絞り加工がされたものであり、上面が凸状になっている。なお、これらのリブ240a~250bは、いずれも三角錐状に絞り加工されたものであり、強度保持のために、数ヶ所に設けた構成としている。
【0054】
本発明の実施形態は、上記のとおりであり、いずれの実施形態も面材に接触する領域を有し、この領域から伝達される振動を受けて発振手段が振動することにより、騒音等による振動の低減を可能にするものである。これらの実施形態は、本発明の例示であって、本発明がこれらの実施形態に限定される趣旨ではない。従って、上記実施形態の一部の構成を変更し、形状を変化させる態様とすることは可能である。
【0055】
<第4の実施形態>
そこで、変形の代表的な例として第2の実施形態の変形例である第4の実施形態について説明する。図9および図10は第1の変形例(第4の実施形態)であり、図11および図12は第2の変形例(第5の実施形態)を示す。前述のとおり、第2の実施形態では、面材当接部114,115および発振手段116,117が、装着手段113とは個別に設けられ、面材当接部114,115の一部(基部)110aを装着手段113に締着または溶接されたものであった。
【0056】
第4の実施形態(第1の変形例)は、図9に示されているように、面材当接部114,115は、装着手段113の壁面に連続して設けられており、その中間位置には変形領域110d,110eを形成したものである。この変形領域110d,110eは、第1の実施形態の変形例(図4)と同様に、断面山形に形成されたものであり、面材当接部114,115に対して付勢力(面材に対する押圧力)を付与するために設けられてものである。
【0057】
すなわち、図10(a)に示すように、変形領域110d,110eは、弾性変形可能としており、面材当接部114,115は当接仮想面Lに対して傾斜して設けられており、この変形領域110d,110eが弾性変形することにより、その復元力により面材当接部114,115に対して付勢力(押圧力)を付与することができるのである。これが付勢手段である。そして、変形領域110d,110eの弾性変形は、面材当接部114,115が当接仮想面Lの位置まで変位することを想定しており、ちょうど面材当接部114,115が当接仮想面Lに一致するまで変位するとき、装着手段113の両側に位置する二つの面材当接部114,115の表面(図中下面)が単一平面上(図中一直線上)となるように調整されている。
【0058】
上記構成により、図10(b)に示すように、装着手段113を面材支持部3に装着し、面材2を面材支持部3に設置する際、係止部130a,130bを基準に、面材2の裏面(図中上面)が、面材当接部114,115の傾斜状態を平坦な状態へ誘導し、強制的に変形領域110d,110eを変形させることとなる。そして、この変形により復元力が発生し、面材当接部114,115を面材3に向かって押圧するような付勢力を生じさせるのである。このとき、面材当接部114,115の表面(図中下面)は、当接仮想面Lに一致し、従って面材2の裏面(図中上面)に一致することとなるから、両者は良好な状態で密着し得ることとなるのである。このような付勢力を有しつつ密着することにより、面材2の装着時における僅かなズレや表面に凹凸がある場合においても広い範囲において当接が可能となり、面材2の振動を面材当接部114,115に伝達することが可能となるのである。なお、本実施形態は、第2の実施形態の変形例であるから、発振手段116,117は、面材当接部114,115から湾曲された状態の自由端部110b,110cに、ウエイト108,109を固着したものであり、また、その発振手段116,117から間隔を有して保護部材118,119が設けられたものとなっている。また、ここでは、面材支持部3として木製桟が使用された状態を示している。木製桟の場合は、軽量形鋼製の野縁等に比べて振動しない傾向にあり、面材当接部114,115からの振動伝達が重要となるため、上記構成が一層好適なものとなる。
【0059】
<第5の実施形態>
第5の実施形態(第2の実施形態の第2の変形例)は、図11(a)および(b)に示されているように、面材当接部114,115および発振手段116,117が、装着手段113とは個別に設けられ、両者は一部で係止されるとともに、装着手段113から突出する突出部材131a,132a,131b,132bによって面材当接部114,115を押圧するように構成されたものである。装着手段113に対する面材当接部114,115の係止は、面材当接部114,115が適宜範囲で回動できる状態であれば、どのような形態でもよいが、例えば、図示のように、面材当接部114,115の一部(基部)110f,110gに貫通孔110h,110iを設け、装着手段113から突出する係止片133a(,133b)によって掛止させる形態があり得る。
【0060】
ここで、図12(a)に示すように、面材当接部114,115の基部110f,110gは、装着手段113に設けられた係止片113a,113bに回動可能に係止され、また、装着手段113から突出する突出部材131a,132a,131b,132bによって押圧されることにより、傾斜した状態となるものである。そして、この突出部材131a,132a,131b,132bは弾性変形可能な弾性部材で構成されており、面材当接部114,115が当接仮想面Lに対して傾斜した状態から当該当接仮想面Lと同じ状態まで変化する際に、突出部材131a,132a,131b,132bが弾性変形するものである。この弾性変形に伴って復元力が発生し、面材当接部114,115に対して付勢力(押圧力)を付与することができるのである。これが付勢手段である。なお、面材当接部114,115の傾斜状態の変化は、係止片113a,113bによる回動方向によって規制されるが、前記貫通孔110h,110iと係止片113a,113bとの間には十分な遊びが設けられており、回動時における回動軸が厳密なものではない。従って、回動による面材当接部114,115の回動角度は、当接する面材2の状態に応じて適宜変化し得るものである。
【0061】
従って、図12(b)に示すように、装着手段113を面材支持部3に装着し、さらに面材3を設置するとき、面材当接部114,115は、傾斜する状態から当該面材2の裏面(図中上面)に一致するように回動することとなるのである。そして、このとき突出部材131a,132a,131b,132bは弾性変形し、その復元力によって、面材当接部114,115に対して逆向きに回動させる方向へ付勢することとなる。なお、面材当接部114,115の回動は、前述のとおり係止片113a,113bを軸とするものであるが、突出部材131a,132a,131b,132bは単に面材当接部114,115を押圧するのみであるため、面材当接部114,115は、面材2の裏面(図中上面)に対し広い範囲で密着する状態で安定することとなる。このような安定的な密着状態により、面材2の裏面(図中上面)との相対的な関係により、適宜好適な状態で広い範囲において当接が可能となるのである。なお、本実施形態においても、第2の実施形態の変形例であるから、発振手段116,117の構成が、面材当接部114,115から湾曲された状態の自由端部110b,110cに、ウエイト108,109を固着したものであること、保護部材118,119が設けられたものであることは前記第1例と同様である。また、この例においても、面材支持部3として木製桟を例示しており、面材当接部114,115からの振動伝達が重要であることを示している。
【0062】
<第6の実施形態>
また、上記第5の実施形態の一部を変形することにより、第6の実施形態とすることができる。図13に第6の実施形態を示している。この図に示すように、本実施形態の制振装置100についても、基本的構成は第5の実施形態と同様である。すなわち、面材当接部114,115および発振手段116,117が、装着手段113とは個別に設けられ、面材当接部114,115は、装着手段113に間接的に支持されるものである。また、この面材当接部114,115は、装着手段113から突出する突出部材(付勢手段)131a,131bによって押圧されるように構成されている。
【0063】
本実施形態の付勢手段131a,131bは、単一の広面積による板状部材で構成されており、その結果として、付勢力が面材当接部114,115に対して一体的に作用することとなり、当該面材当接部114,115に対し均等に押圧力を作用させることができる。また、面材当接部114,115(現実には面材)に向かって膨らんだ(膨出した)状態で、緩やかに湾曲させていることから、第1に、面材当接部114,115と振動部材110b,110cとの間隙に容易に挿入でき、第2に、付勢に伴う弾性変形時においても当該挿入状態を維持し得ることとなる。
【0064】
本実施形態では、上述のように付勢手段131a,131bが広面積の板状部材で構成されていることから、その一部を切り取り、部分的に分離することにより、当該分離させた部分によって係止部133a,133bを構成することができる。そして、面材当接部114,115は、その一部(基部110f,110g)を部分的に貫通させた貫通孔110h,110iが、上記係止片133a,133bに係止されることにより、付勢手段131a,131bの付勢方向へ回動可能な状態となるものである。なお、面材当接部114,115の係止の状態は、当該面材当接部114,115が適宜範囲で回動できる状態であれば、どのような形態でもよい。図の例示では、中央の一箇所の係止部133a,133bと、これに対応する一箇所の貫通孔110h,110iとで係止させる構成を示したが、両側縁近傍の二箇所で係止させるもであってもよく、また、係止部133a,133bは、第5の実施形態のような構成のものでもよい。
【0065】
従って、図14(a)に示すように、面材当接部114,115は、付勢手段131a,131bによって押圧され、当接仮想面Lに対して傾斜した状態となるが、この付勢手段131a,131bの付勢に抗するように回動することにより、当接仮想面Lと同じ状態まで変化させることができる。従って、図12(b)に示すように、装着手段113を面材支持部3に装着し、さらに面材3を設置するとき、面材当接部114,115は、傾斜する状態から当該面材2の裏面(図中上面)に一致するように回動することとなるのである。本実施形態においても第5の実施形態と同様に、付勢手段131a,131bが弾性変形することにより、その復元力によって、面材当接部114,115を付勢するのである。なお、本実施形態においては、第2または第5の実施形態のように、保護部材を設けていないが、これらを設ける構成としてもよい。
【0066】
<第6の実施形態の変形例>
第6の実施例は、さらに変形した構成とすることができる。図15にその変形例を示す。この図に示されるように、この変形例は、装着手段113を中心に、その片方(両側のうち一方)に発振部材110bを突出させた構成である。従って、この発振部材110bに連続する片方の面材当接部114のみを付勢手段131aによって付勢する構成としている。また、この変形例の発振部材110bは、面材当接部114に対し、第1の湾曲部160aを介して設けられる中間部161と、さらにこの中間部161に対して第2の湾曲部160bを介して設けられる平面部162とを備える構成となっており、発振手段116は、この平面部162の表面にウエイト108を設置した構成となっている。これは、第1の湾曲部160aよりも先端(自由端)側を長くすることにより、周波数を低くするものであるとともに、振動による作用する応力を二箇所に分散させるものである。
【0067】
さらに、この変形例では、反対側における付勢手段を不要としていることから、当該部分を利用して保護部材118を構成するものである。なお、保護部材118は、強度を担保するため、その周縁を折り曲げるように構成している。なお、保護部材118の基端の角部には、僅かに膨出させた複数のリブ140を設け、発振手段116を保護し得るように補強したものである。
【0068】
この変形例の場合には、図16に示すように、装着部材113の片方において、第6の実施形態と同様に、面材当接部114が付勢手段131aによって付勢されることとなり、当接仮想面Lに対して傾斜した状態(図16(a)参照)から、面材2の裏面に当接する状態(図16(b)参照)まで変化させることができる。
【0069】
この種の変形例の場合には、面材支持部3に対して、その片方において制振作用を得ることとなる。そのため、現実の設置の現場においては、面材支持部3の長手方向に所定間隔を有しつつ複数の制振装置100が設置されるが、その際、発振手段116を両側に交互に配置することで、面材支持部3の両側に位置する面材3に対する制振作用を得ることができる。なお、上記のように装着部材113の片方にのみ発振部材110bを設ける構成は、第6の実施形態を変形した場合に限られるものではない。従って、第1~第5の実施形態やその変形例においても同様に片方にのみ発振部材を設ける構成とすることができるものである。
【0070】
<発振手段の変形例>
また、発振手段116は、単一の振動部材110bにおいて異なる周波数による振動を可能とすべく、ウエイト108の設置の状態を変更することができる。図17は、前述の第6の実施形態の変形例における発振手段116について例示するものである。図17(a)に示すように、振動部材110bの平面部162には、適宜間隔および適宜長さの長孔163,164が設けられ、ウエイト108を貫通できるリベット165,166によって、この長孔163,164との間でウエイト108を固定できるように構成している。
【0071】
そこで、この長孔163,164の使用する位置を任意に選択することにより、例えば、図7(b)~(d)に示すように、平面部162の中央線(振動部材が突出する方向Xに沿った線)Mを基準に、その両側方向(Y方向)におけるウエイト108の重量バランスを変化させることができる。図7(b)の例は、突出方向(X方向)の位置を異ならせることにより、平面部162の先端(自由端の末端)からの重心を偏らせたものである。また、図7(c)の例は、中央線Mの片側にのみウエイト108を設置し、図7(d)の例は、中央線Mの両側で異なる重量のウエイト108a,108bを設置、両側の重量バランスに偏りを設けたものである。
【0072】
この種の発振手段116の構成により、単一の発振手段116でありながら、中央線Mの両側に位置する振動部材110bの振動状態が異なることとなり、従って、発振部材110bを異なる周波数で振動させることができる。すなわち、ウエイト108が大重量であるか、または自由端に近接する場合には、低い周波数で振動し、逆にウエイト108が軽量または自由端から離れている場合には、高い周波数で振動することとなる。これにより、制振すべき面材が現実に振動する際の周波数に応じて、振動部材110bが適宜振動するものとすることができる。なお、上記のような構成は、第6の実施形態の変形例における場合に限られるものではない。従って、第1~第6の実施形態やそれらの変形例においても同様に、重量バランスを変化させることができるものである。
【0073】
さらに、上記のような例とは異なり、図18および図19に示すような変形も可能である。すなわち、図18に示すように、装着手段313を面材2と面材支持部3とで挟持させる構成において、当該装着手段313を面材当接部314,315と兼用させる構成としたものである。すなわち、装着手段313が面材当接部314,315として機能するものとなっているのである。また、この場合における振動部材(自由端部)310b,310cは、U字状に湾曲させるものではなく、装着手段313から直交方向の段差を介して両側へ突出させた構成としたもの(図18(a)参照)、斜状の段差を介して両側へ突出させた構成としたもの(図18(b)参照)、または段差を介在させることなく、斜状に突出させた構成としたもの(図18(c)参照)などを例示することができる。これらは、振動部材(自由端部)310b,310cを直線的に両側へ突出させたものであるが、当該振動部材(自由端部)310b,310cは、面材2との間に適宜間隔H1を有する構成であることから、第1の実施形態と同様の機能を発揮させることができる。
【0074】
また、図19(a)に示すように、発振手段としてダンパウエイトを用いた構成としてもよい。この場合には、ダンパウエイト460,470は、面材当接部414,415の表面に設置するものである。このような構成の場合には、面材当接部414,415が面材の振動をダンパウエイト460,470に伝達できることとなり、このダンパウエイト460,470が発振手段として機能するのである。そして、各ダンパウエイト460,470は、結局のところ装着手段413によって支持される構成であるから、装着手段413を面材支持部に装着することのみによって、ダンパウエイト460,470を面材に間接的に接触させつつ配置することができるのである。なお、ダンパウエイト460,470に使用されるダンパは、ゴム製ダンパであってもバネ製ダンパであってもよい。なお、ダンパウエイト460,470は、面材当接部414,415に設けられる支柱によって支持された(間隙を形成された)状態となっており、これが面材当接部に対して発振手段が間接的に連続した形態の一態様である。
【0075】
さらに、図19(b)に示されているように、第1の実施形態における自由端部10b,10cは、複数箇所において略U字状に湾曲させる構成としてもよい。この場合には、屈曲箇所(振動の基点となる箇所)が複数になること、および自由端部10b,10cの全体が長尺となることによって、衝撃を緩衝する効果が大きくなる。その結果、発振手段16,17は、低速で振動することとなり、低周波における共振(共鳴)を生じさせやすくなる。なお、特定の条件が整えば、屈曲箇所が個別に作動し、各面が異なる位相(遅れ系の位相)によって振動する現象が生じ得る。この場合には、いずれかの屈曲において振動する部分において共振し、建物(面材)固有の周波数に接近した振動を受けて発振させることになる。また、場合によっては、発振手段の内部において共振現象が生じ、共振現象による振動の増幅により、振動エネルギの吸収率を増加させることもあり得る。なお、この場合、自由端部10b,10cの末端(最上位の平面部分)およびウエイト8,9を発振手段16,17と定義すれば、面材当接部との間に衝撃吸収領域または周波数調整領域と称すべき部分が介在していることとなり、これが面材当接部に対して発振手段が間接的に連続した形態の一態様である。
【0076】
なお、これらの変形例は、第1の実施形態を変形したもの(図18および図19(b)参照)および第3の実施形態を変形したもの(図19(a)参照)であるが、変形した各部は、これらに限定されるものではなく、他の実施形態または変形例においても使用可能である。個々の変形態様を個別に図示しないが、例えば、図18および図19(b)に示す変形例を第2および第3の実施形態に採用することができ、図19(a)に示す構成を第1の実施形態に転用することができるものである。
【符号の説明】
【0077】
1,100,200,300,400,500 制振装置
2 面材(天井材)
3 面材支持部(野縁)
4 吊りボルト
5 ハンガ
6 野縁受け
7 クリップ
8,9,108,109,208,209,308,309 ウエイト
10a 基端部
10b,10c,110b,110c,210b,210c,310b,310c 発振部材(自由端部)
11,12 湾曲部
13 面材当接部(中央領域)
14,15 面材当接部(平面領域)
16,17,116,117,216,217, 発振手段
110a,210a 基部
110d,110e 変形領域
110f,110g 面材当接部の基部
110h,110i 貫通孔
113,213,313,413 装着手段
114,115,214,215,314,315,414,415 面材当接部
118,119 保護部材
130a,130b,230a,230b 係止部
131a,131b,132a,132b 突出部材
133a,133b 係止片
140,240,240a,240b,250,250a,250b リブ
160a,160b 湾曲部
161 振動部材の中間部
162 振動部材の平面部
163,164 長孔
165,166 リベット
460,470 ダンパウエイト
H1,H2 間隔
L 当接仮想面
M 中央線
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