(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】情報処理装置及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/30 20120101AFI20230403BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20230403BHJP
【FI】
G06Q50/30
G05D1/02 P
(21)【出願番号】P 2022155395
(22)【出願日】2022-09-28
【審査請求日】2022-11-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】足立 崇
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/019180(WO,A1)
【文献】特開2022-054331(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0027641(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間の地図情報に基づいて生成された、前記対象空間における電波又は気象の少なくとも一方の状況を示す環境情報を取得する第1取得部と、
前記地図情報が表す前記対象空間に存在する物体の精度を示す精度情報を取得する第2取得部と、
前記精度情報に基づいて、前記環境情報を通知する態様を決定する決定部と、
前記対象空間を飛行する飛行体のユーザに対して、前記態様で前記環境情報を通知する通知部と、
を有する、情報処理装置。
【請求項2】
前記第2取得部は、前記対象空間を分割することによって得られた複数の分割空間それぞれの前記精度情報を取得し、
前記決定部は、前記複数の分割空間それぞれの前記精度情報に基づいて、当該分割空間に対応する2次元の地図上の各領域の前記態様を決定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記精度情報が所定の基準を満たす場合に前記環境情報を通知し、前記精度情報が前記基準を満たさない場合に前記環境情報を通知しないための前記態様を決定する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記精度情報が前記基準を満たす場合に前記環境情報を生成し、前記精度情報が前記基準を満たさない場合に前記環境情報を生成しない生成部をさらに有する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記精度情報が前記基準を満たすか否かにかかわらず、前記環境情報を生成する生成部をさらに有する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記決定部は、前記環境情報に加えて、前記精度情報を通知するための前記態様を決定する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記精度は、前記地図情報が示す物体と、前記対象空間に存在する物体と、を比較することによって決定される、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記決定部は、前記精度情報に基づいて、前記ユーザが利用する情報端末において、2次元の地図上の各領域に、当該領域における前記環境情報を重畳して表示するか否かを切り替えるための前記態様を決定する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記物体は地表に配置されており、前記環境情報は前記地表の上空における前記電波又は前記気象の少なくとも一方の状況を示す、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記決定部は、飛行中の前記飛行体の位置における前記精度情報に基づいて前記態様を決定し、
前記通知部は、前記決定部が飛行中の前記飛行体の位置に対して決定した前記態様で前記環境情報を前記ユーザに対して通知する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記通知部は、前記対象空間において前記飛行体が飛行を開始する前に、前記ユーザに対して、前記態様で前記環境情報を通知する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記通知部は、前記対象空間において前記飛行体が飛行している間に、前記ユーザに対して、前記態様で前記環境情報を通知する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項13】
プロセッサが実行する、
対象空間の地図情報に基づいて生成された、前記対象空間における電波又は気象の少なくとも一方の状況を示す環境情報を取得するステップと、
前記地図情報が表す前記対象空間に存在する物体の精度を示す精度情報を取得するステップと、
前記精度情報に基づいて、前記環境情報を通知する態様を決定するステップと、
前記対象空間を飛行する飛行体のユーザに対して、前記態様で前記環境情報を通知するステップと、
を有する、情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体が飛行する環境に関する情報を処理するための情報処理装置及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、地図や建物の高さに基づいて基地局が発する無線通信の信号の電波強度をシミュレーションし、シミュレーションの結果に応じて基地局のアンテナを調整するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飛行体は、空間において電波を用いて無線通信をし、また空間における気象の影響を受けながら飛行する。ユーザは、シミュレーションによって特定された空間内の電波及び気象の状況を参照することで、より安全な飛行体の飛行経路を決定できる。しかしながら、電波及び気象の状況を特定するために用いられる地図情報の精度は場所ごとに異なるため、不確かな電波及び気象の状況がユーザに提供される可能性があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、飛行体が飛行する空間において不確かな電波及び気象の状況に関する情報をユーザに提供することを抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の情報処理装置は、対象空間の地図情報に基づいて生成された、前記対象空間における電波又は気象の少なくとも一方の状況を示す環境情報を取得する第1取得部と、前記地図情報が表す前記対象空間に存在する物体の精度を示す精度情報を取得する第2取得部と、前記精度情報に基づいて、前記環境情報を通知する態様を決定する決定部と、前記対象空間を飛行する飛行体のユーザに対して、前記態様で前記環境情報を通知する通知部と、を有する。
【0007】
前記第2取得部は、前記対象空間を分割することによって得られた複数の分割空間それぞれの前記精度情報を取得し、前記決定部は、前記複数の分割空間それぞれの前記精度情報に基づいて、当該分割空間に対応する2次元の地図上の各領域の前記態様を決定してもよい。
【0008】
前記決定部は、前記精度情報が所定の基準を満たす場合に前記環境情報を通知し、前記精度情報が前記基準を満たさない場合に前記環境情報を通知しないための前記態様を決定してもよい。
【0009】
前記情報処理装置は、前記精度情報が前記基準を満たす場合に前記環境情報を生成し、前記精度情報が前記基準を満たさない場合に前記環境情報を生成しない生成部をさらに有してもよい。
【0010】
前記情報処理装置は、前記精度情報が前記基準を満たすか否かにかかわらず、前記環境情報を生成する生成部をさらに有してもよい。
【0011】
前記決定部は、前記環境情報に加えて、前記精度情報を通知するための前記態様を決定してもよい。
【0012】
前記精度は、前記地図情報が示す物体と、前記対象空間に存在する物体と、を比較することによって決定されてもよい。
【0013】
前記決定部は、前記精度情報に基づいて、前記ユーザが利用する情報端末において、2次元の地図上の各領域に、当該領域における前記環境情報を重畳して表示するか否かを切り替えるための前記態様を決定してもよい。
【0014】
前記物体は地表に配置されており、前記環境情報は前記地表の上空における前記電波又は前記気象の少なくとも一方の状況を示してもよい。
【0015】
前記決定部は、飛行中の前記飛行体の位置における前記精度情報に基づいて前記態様を決定し、前記通知部は、前記決定部が飛行中の前記飛行体の位置に対して決定した前記態様で前記環境情報を前記ユーザに対して通知してもよい。
【0016】
前記通知部は、前記対象空間において前記飛行体が飛行を開始する前に、前記ユーザに対して、前記態様で前記環境情報を通知してもよい。
【0017】
前記通知部は、前記対象空間において前記飛行体が飛行している間に、前記ユーザに対して、前記態様で前記環境情報を通知してもよい。
【0018】
本発明の第2の態様の情報処理方法は、プロセッサが実行する、対象空間の地図情報に基づいて生成された、前記対象空間における電波又は気象の少なくとも一方の状況を示す環境情報を取得するステップと、前記地図情報が表す前記対象空間に存在する物体の精度を示す精度情報を取得するステップと、前記精度情報に基づいて、前記環境情報を通知する態様を決定するステップと、前記対象空間を飛行する飛行体のユーザに対して、前記態様で前記環境情報を通知するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、飛行体が飛行する空間において不確かな電波及び気象の状況に関する情報をユーザに提供することを抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る管理システムの模式図である。
【
図2】本実施形態に係る管理システムのブロック図である。
【
図3】例示的な電波及び気象の状況を示す環境情報の模式図である。
【
図4】精度情報取得部が取得する精度情報を説明するための模式図である。
【
図5】決定部が通知態様を決定する方法を説明するための模式図である。
【
図6】電波の状況を示す環境情報の通知を受けた情報端末の模式図である。
【
図7】気象の状況を示す環境情報の通知を受けた情報端末の模式図である。
【
図8】本実施形態に係る管理サーバが実行する情報処理方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[管理システムSの概要]
図1は、本実施形態に係る管理システムSの模式図である。管理システムSは、管理サーバ1と、飛行体2と、情報端末3と、を含む。管理システムSは、その他の端末、装置等を含んでもよい。
【0022】
管理サーバ1は、飛行体2が飛行する環境に関する情報を管理するコンピュータである。飛行体2が飛行する環境は、例えば、飛行中の飛行体が通信に用いる電波の状況、又は飛行中の飛行体が影響を受ける気象(風等)の状況である。管理サーバ1は、単一のコンピュータ、又は複数のコンピュータである。また、管理サーバ1は、コンピュータ資源の集合であるクラウド上で動作する一又は複数の仮想的なサーバであってもよい。
【0023】
飛行体2は、空中を飛行するドローン等の無人飛行装置である。また、飛行体2は、航空機や飛行可能車両等の有人飛行装置であってもよい。飛行体2は、操縦者による操作に従って飛行し、又は予め設定された飛行予定経路に沿って飛行する。飛行体2は、無線通信により管理サーバ1の間で情報を送受信するための通信部を有する。飛行体2は、例えば、3G(Generation)、4G/LTE(Long Term Evolution)、5G等の通信規格に従って無線通信を行う。
【0024】
情報端末3は、ユーザが使用するコンピュータである。情報端末3は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等の情報端末である。ユーザは、例えば、飛行体2を操縦する操縦者である。また、ユーザは、飛行体2の飛行を管理する管理者(オペレータ等)であってもよい。情報端末3は、情報を表示するための液晶ディスプレイ等の表示部と、ユーザによる操作を受け付けるためのタッチパネル等の操作部と、を有する。情報端末3は、通信によって管理サーバ1との間で情報を送受信する。
【0025】
本実施形態に係る管理システムSが実行する処理の概要を以下に説明する。管理サーバ1は、飛行体2が飛行する対象空間の地図情報に基づいて生成された、当該対象空間における電波又は気象の少なくとも一方の状況を示す環境情報を取得する(
図1の(1))。
【0026】
地図情報は、例えば、対象空間の情報端末3次元の地図を示す。電波の状況を示す環境情報は、例えば、地図情報に基づいて対象空間内の各位置において推定された電波強度を示す電波マップである。気象の状況を示す環境情報は、例えば、地図情報に基づいて対象空間内の各位置において推定された風速や風向きを示す気象マップである。
【0027】
管理サーバ1は、地図情報が表す対象空間に存在する物体の精度を示す精度情報を取得する(
図1の(2))。精度は、地図情報が示す対象空間内の各位置において、地図情報が含む物体に関する情報の細かさを表し、例えば現実の対象空間内の各位置における物体との近似度を表してもよい。精度が低い地図情報は、例えば、建物の立体形状を表す。精度が高い地図情報は、例えば、建物の立体形状に加えて、建物の開口部(窓やドア等)や付属物(バルコニー等)を表す。精度が高い地図情報は、精度が低い地図情報に比べて、現実の対象空間の各物体の位置、形状、大きさをより正確に表現している。
【0028】
地図情報の精度が高いと、地図情報を用いたシミュレーション処理によって推定される電波又は気象の状況は、実際の電波又は気象の状況に近くなる。一方、地図情報の精度が低いと、地図情報を用いたシミュレーション処理によって推定される電波又は気象の状況は、実際の電波又は気象の状況から遠くなる。
【0029】
管理サーバ1は、取得した精度情報に基づいて、取得した環境情報を通知する通知態様を決定する(
図1の(3))。通知態様は、例えば、環境情報を情報端末3に通知するか否かを切り替えること、又は情報端末3が表示する環境情報の表示態様を切り替えることである。管理サーバ1は、飛行体2のユーザが利用する情報端末3に対して、決定した通知態様で環境情報を通知する(
図1の(4))。
【0030】
管理サーバ1は、通知態様の一例として、精度が基準値以上である位置の環境情報を情報端末3に通知し、精度が基準値未満である位置の環境情報を情報端末3に通知しなくてもよい。また、管理サーバ1は、通知態様の一例として、情報端末3が表示部上に表示している環境情報において、精度が基準値以上である位置の環境情報の表示態様と、精度が基準値未満である位置の環境情報の表示態様と、を異ならせてもよい。
【0031】
このように、管理システムSは、地図情報の精度に基づいて、当該地図情報を用いて生成された環境情報のユーザに対する通知態様を切り替える。これにより、管理システムSは、飛行体2が飛行する対象空間における地図情報の精度を考慮した電波又は気象の状況に関する情報をユーザに提供し、不確かな電波又は気象の状況に関する情報をユーザに提供することを抑制できる。
【0032】
[管理システムSの構成]
図2は、本実施形態に係る管理システムSのブロック図である。
図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、
図2に示したもの以外のデータの流れがあってもよい。
図2において、各ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、
図2に示すブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてよい。
【0033】
管理サーバ1は、記憶部11と、制御部12とを有する。記憶部11は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ等を含む記憶媒体である。記憶部11は、制御部12が実行するプログラムを予め記憶している。記憶部11は、管理サーバ1の外部に設けられてもよく、その場合にネットワークを介して制御部12との間でデータの授受を行ってもよい。
【0034】
制御部12は、環境情報取得部121と、環境情報生成部122と、精度情報取得部123と、決定部124と、通知部125と、を有する。制御部12は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することにより、環境情報取得部121、環境情報生成部122、精度情報取得部123、決定部124及び通知部125として機能する。制御部12の機能の少なくとも一部は電気回路によって実行されてもよい。また、制御部12の機能の少なくとも一部は、制御部12がネットワーク経由で実行されるプログラムを実行することによって実現されてもよい。
【0035】
以下、管理システムSが実行する処理について詳細に説明する。環境情報取得部121(第1取得部)は、対象空間の地図情報に基づいて生成された、対象空間における電波又は気象の少なくとも一方の状況を示す環境情報を取得する。対象空間は、地表の上空において、ユーザが飛行体2を飛行させ得る空間又はユーザが飛行体2を飛行させている空間である。ユーザは、例えば、対象空間内に飛行体2の飛行予定経路を設定する。また、ユーザは、例えば、飛行体2を対象空間内で飛行させるように操縦する。
【0036】
地図情報は、地表に配置された物体の位置及び形状を示す情報である。地図情報は、建物、植物、地形等の位置及び形状を示す情報であり、例えば3次元の地図である。地図情報には、後述の精度情報取得部123が取得する精度情報が関連付けられている。
【0037】
環境情報は、対象空間における電波又は気象の少なくとも一方の状況を示す情報である。電波の状況は、対象空間において飛行中の飛行体2が通信に用いる電波の状況である。気象の状況は、空間において飛行中の飛行体2が影響を受ける気象の状況である。
【0038】
図3(a)は、例示的な電波の状況を示す環境情報の模式図である。電波の状況を示す環境情報は、例えば、対象空間内の各位置の電波強度を示す電波マップRである。電波マップRは、例えば、電波強度が閾値以上の領域R1と、電波強度が閾値未満の領域R2と、を示す。飛行体2は、例えば、領域R1では電波強度が強いため飛行中に安定して通信できるのに対して、領域R2では電波強度が弱いため飛行中に通信できない可能性がある。電波マップRは、後述の環境情報生成部122又は他の装置によって、地図情報に基づいて生成される。
【0039】
図3(b)は、例示的な気象の状況を示す環境情報の模式図である。気象の状況を示す環境情報は、例えば、対象空間内の各位置の風速を示す気象マップWである。気象マップWは、例えば、風速が閾値以下の領域W1と、風速が閾値より大きい領域W2と、を示す。飛行体2は、例えば、領域W1では風が弱いため安定して飛行できるのに対して、領域W2では風が強いため飛行できない可能性がある。気象マップWは、後述の環境情報生成部122又は他の装置によって、地図情報に基づいて生成される。
【0040】
飛行体2が飛行中に通信を行わない場合に、環境情報取得部121は気象の状況のみを示す環境情報を取得してもよい。また、飛行体2の飛行に対する風の影響を考慮しない場合に、環境情報取得部121は電波の状況のみを示す環境情報を取得してもよい。環境情報は、ここに示した具体的な情報に限られず、対象空間における電波又は気象の状況を示すその他の情報を含んでもよい。
【0041】
環境情報取得部121は、例えば、環境情報生成部122が生成した環境情報を取得する。環境情報生成部122は、例えば、地図情報が示す3次元の地図に対して、電波の状況を推定する既知のシミュレーション処理を行うことによって、対象空間内の各位置の電波強度を示す電波マップを生成する。環境情報生成部122は、例えば、地図情報が示す3次元の地図に対して、気象の状況を推定する既知のシミュレーション処理を行うことによって、対象空間内の各位置の風速を示す気象マップを生成する。環境情報生成部122は地図情報が示す物体の位置及び形状に基づいて環境情報を生成するため、生成された環境情報は地図情報の精度に影響を受けている。
【0042】
環境情報生成部122は、予め環境情報を生成して記憶部11に記憶させてもよく、所定の条件(例えば、情報端末3において所定の操作が行われたこと)が満たされたことに応じて逐次環境情報を生成してもよい。
【0043】
環境情報生成部122は、対象空間の各位置において、精度情報が後述の通知基準を満たす場合に環境情報を生成し、精度情報が後述の通知基準を満たさない場合に環境情報を生成しなくてもよい。これにより、管理システムSは、精度情報が通知を行うための通知基準を満たす位置に絞って環境情報を生成し、環境情報を生成するための計算コストを削減できる。また、環境情報生成部122は、対象空間の各位置において、精度情報が後述の通知基準を満たすか否かに関わらず、環境情報を生成してもよい。これにより、管理システムSは、精度情報によらず、対象空間全体の環境情報を生成しておくことができる。
【0044】
また、環境情報取得部121は、管理サーバ1とは異なる外部装置が生成した環境情報を取得してもよい。この場合に、外部装置は、環境情報生成部122と同様の方法で環境情報を生成し、管理サーバ1に送信する。環境情報取得部121は、外部装置から環境情報を受信する。この場合に、管理サーバ1は、環境情報生成部122を有さなくてもよい。
【0045】
精度情報取得部123(第2取得部)は、環境情報取得部121が取得した環境情報の生成に用いられた地図情報の精度情報を取得する。精度情報は、地図情報が表す対象空間に存在する物体の精度を示す情報である。精度(粒度ともいう)は、地図情報が示す対象空間内の各位置において、地図情報が表す物体に関する情報の細かさを表す。地図情報に基づいて環境情報を生成するシミュレーション処理において、地図情報の精度が高いほど実態に近い環境情報が生成され、地図情報の精度が低いほど実態から遠い環境情報が生成される傾向がある。
【0046】
精度情報取得部123は、例えば、記憶部11に予め記憶された、環境情報取得部121が取得した環境情報の生成に用いられた地図情報に関連付けられた精度情報を取得する。また、環境情報取得部121は、管理サーバ1とは異なる外部装置から精度情報を取得してもよい。精度情報取得部123は、対象空間を分割することによって得られた複数の分割空間(市区町村等)それぞれの精度情報を取得してもよい。
【0047】
図4は、精度情報取得部123が取得する精度情報を説明するための模式図である。精度情報が示す精度が高いほど地図情報が表す物体に関する情報が細かく、精度情報が示す精度が低いほど地図情報が表す物体に関する情報が粗い。
図4の例では、精度1の地図情報は建物の立体形状を表し、精度2の地図情報は建物の立体形状に加えて屋根の形状を表し、精度3の地図情報は建物の立体形状及び屋根の形状に加えて開口部(窓やドア等)や付属物(バルコニー等)を表す。
【0048】
精度は、例えば、地図情報が含む物体に関する情報の量又は種類が多いほど高く、地図情報が含む物体に関する情報の量又は種類が少ないほど低い値である。また、精度は、例えば、地図情報を生成するために高精度の手段(対象空間における物体の分布を示す点群データ等)が用いられた場合に第1値であり、地図情報を生成するために低精度の手段(対象空間の衛星写真等)が用いられた場合に第1値よりも低い第2値であってもよい。
【0049】
また、精度は、地図情報が示す物体と、対象空間に実際に存在する物体と、を比較することによって決定されてもよい。この場合に、精度情報取得部123は、例えば、対象空間における物体に分布を示す点群データ又は対象空間の衛星写真から対象空間に実際に存在する物体の形状及び位置を特定し、特定した物体の形状及び位置と地図情報が示す物体の形状及び位置との差異を算出する。そして精度情報取得部123は、算出した差異が小さいほど精度を高くし、算出した差異が大きいほど精度を低くする。
【0050】
精度情報は、建物の形状の精度に限られず、植物や地形の形状の精度を示してもよい。また、精度情報は、物体の形状に限られず、物体の位置の精度を示してもよい。精度情報は、ここに示した具体的な精度に限られず、物体に関する情報の細かさを表すその他の精度を示してもよい。
【0051】
決定部124は、精度情報取得部123が取得した精度情報に基づいて、環境情報を通知する通知態様を決定する。また、決定部124は、環境情報に加えて、情報端末3に精度情報を通知するための通知態様を決定してもよい。
【0052】
決定部124は、例えば、対象空間内の各位置に対して、精度情報が所定の基準を満たす場合に情報端末3に環境情報を通知し、精度情報が当該基準を満たさない場合に情報端末3に環境情報を通知しないための通知態様を決定する。環境情報を通知する基準は、例えば、精度情報が示す精度が基準値以上であることである。これにより、管理システムSは、対象空間内の位置ごとに、地図情報の精度に応じて環境情報を通知するか否かを切り替えることができる。
【0053】
決定部124は、電波の状況を示す環境情報を通知する場合と、気象の状況を示す環境情報を通知する場合と、で異なる基準値を用いて通知態様を決定してもよい。これにより、管理システムSは、電波の状況又は気象の状況それぞれに対して適した精度を用いて通知態様を決定することができる。
【0054】
図5は、決定部124が通知態様を決定する方法を説明するための模式図である。決定部124は、例えば、環境情報取得部121が取得した環境情報が示す各位置の電波強度の電波マップR又は気象マップWと、精度情報取得部123が取得した精度情報が示す各位置の精度の精度マップAと、を比較する。決定部124は、対象空間内の各位置に対して、精度マップAが示す精度が基準値以上(例えば、精度2以上)である場合に情報端末3に環境情報を通知し、精度マップAが示す精度が基準値未満(例えば、精度2未満)である場合に情報端末3に環境情報を通知しないための通知態様を決定する。
【0055】
決定部124は、対象空間を分割することによって得られた複数の分割空間(市区町村等)それぞれの精度情報に基づいて、当該分割空間に対応する2次元の地図上の各領域の通知態様を決定してもよい。この場合に、決定部124は、例えば、情報端末3において、2次元の地図上の各領域に、当該領域における環境情報を重畳して表示するか否かを切り替えるための通知態様を決定する。2次元の地図は、記憶部11に予め記憶され、又は管理サーバ1とは異なる外部装置から取得される。分割空間と2次元の地図の各領域とは、例えば、座標によって関連付けられている。これにより、管理システムSは、対象空間の座標ごとではなく、市区町村等の分割空間ごとに通知態様を決定するため、計算コストを低減できる。
【0056】
決定部124は、飛行体2が飛行を開始する前に、対象空間全体の各位置における精度情報に基づいて、当該位置の通知態様を決定してもよい。また、決定部124は、飛行体2が飛行している間に、飛行体2の現在位置を含む所定範囲内の各位置における精度情報に基づいて、当該位置の通知態様を決定してもよい。
【0057】
通知部125は、対象空間を飛行する飛行体2のユーザが利用する情報端末3に対して、決定部124が決定した通知態様で環境情報を通知する。通知部125は、飛行体2が飛行を開始する前に、対象空間全体の各位置に対して決定された通知態様で、当該位置の環境情報を通知してもよい。これにより、管理システムSは、ユーザが飛行体2を飛行させる前にユーザに対して環境情報を提供し、ユーザが飛行体2の飛行経路を決定しやすくすることができる。
【0058】
また、決定部124は、飛行体2が飛行している間に、飛行体2の現在位置を含む所定範囲内(例えば、飛行体2の現在位置を基準とした所定距離以内)の各位置に対して決定された通知態様で、当該位置の環境情報を通知してもよい。これにより、管理システムSは、ユーザが飛行体2を飛行させている間に、飛行体2周辺の環境情報を提供し、ユーザが電波又は気象の最新の状況に応じて飛行体2の飛行方針を動的に決定しやすくすることができる。
【0059】
図6は、電波の状況を示す環境情報の通知を受けた情報端末3の模式図である。情報端末3は、管理サーバ1から受信した電波の状況を示す環境情報を、表示部上に表示する。
図6の例では、情報端末3は、精度が基準値以上(ここでは精度2以上)でありかつ電波強度が閾値以上の領域と、その他の領域と、を異なる表示態様(色、模様等)で表示している。これにより、管理システムSは、精度が高い地図情報に基づいて生成された電波の状況をユーザに提供し、不確かな電波の状況をユーザに提供することを抑制することができる。
【0060】
図7は、気象の状況を示す環境情報の通知を受けた情報端末3の模式図である。情報端末3は、管理サーバ1から受信した気象の状況を示す環境情報を、表示部上に表示する。
図7の例では、情報端末3は、精度が基準値以上(ここでは精度3以上)でありかつ風速が閾値以下の領域と、精度が基準値未満でありかつ風速が閾値以下の領域と、その他の領域と、を異なる表示態様(色、模様等)で表示している。これにより、管理システムSは、精度が高い地図情報に基づいて生成された気象の状況をユーザに提供し、不確かな気象の状況をユーザに提供することを抑制することができる。
【0061】
[情報処理方法のフロー]
図8は、本実施形態に係る管理サーバ1が実行する情報処理方法のフローチャートを示す図である。環境情報取得部121は、対象空間の地図情報に基づいて生成された、対象空間における電波又は気象の少なくとも一方の状況を示す環境情報を取得する(S11)。環境情報取得部121は、例えば、環境情報生成部122が生成した環境情報を取得し、又は管理サーバ1とは異なる外部装置が生成した環境情報を取得する。
【0062】
精度情報取得部123は、環境情報取得部121が取得した環境情報の生成に用いられた地図情報の精度情報を取得する。精度情報取得部123は、例えば、記憶部11に予め記憶された精度情報を取得し、又は管理サーバ1とは異なる外部装置から精度情報を取得する(S12)。
【0063】
決定部124は、精度情報取得部123が取得した精度情報に基づいて、環境情報を通知する通知態様を決定する(S13)。決定部124は、例えば、対象空間内の各位置に対して、精度情報が所定の基準を満たす場合に情報端末3に環境情報を通知し、精度情報が当該基準を満たさない場合に情報端末3に環境情報を通知しないための通知態様を決定する。
【0064】
通知部125は、対象空間を飛行する飛行体2のユーザが利用する情報端末3に対して、決定部124が決定した通知態様で環境情報を通知する(S14)。情報端末3は、管理サーバ1から受信した電波又は気象の少なくとも一方の状況を示す環境情報を、表示部上に表示する。
【0065】
[実施形態の効果]
本実施形態に係る管理システムSは、地図情報の精度に基づいて、当該地図情報を用いて生成された環境情報の通知態様を決定し、決定した通知態様で環境情報をユーザに通知する。これにより、管理システムSは、飛行体2が飛行する対象空間における地図情報の精度を考慮した電波又は気象の状況に関する情報をユーザに提供し、不確かな電波又は気象の状況に関する情報をユーザに提供することを抑制できる。
【0066】
なお、本発明により、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献することが可能となる。
【0067】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【0068】
管理サーバ1のプロセッサは、
図8に示す情報処理方法に含まれる各ステップ(工程)を実行する。管理サーバ1のプロセッサは、例えば、
図8に示す情報処理方法を実行するためのプログラムを実行することによって、
図8に示す情報処理方法を実行する。
図8に示す情報処理方法に含まれるステップは一部省略されてもよく、ステップ間の順番が変更されてもよく、複数のステップが並行して行われてもよい。
【符号の説明】
【0069】
S 管理システム
1 管理サーバ
11 記憶部
12 制御部
121 環境情報取得部
122 環境情報生成部
123 精度情報取得部
124 決定部
125 通知部
2 飛行体
3 情報端末
【要約】
【課題】飛行体が飛行する空間において不確かな電波及び気象の状況に関する情報をユーザに提供することを抑制できるようにする。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る管理サーバ1は、対象空間の地図情報に基づいて生成された、対象空間における電波又は気象の少なくとも一方の状況を示す環境情報を取得する環境情報取得部121と、地図情報が表す対象空間に存在する物体の精度を示す精度情報を取得する精度情報取得部123と、精度情報に基づいて、環境情報を通知する態様を決定する決定部124と、対象空間を飛行する飛行体のユーザに対して、態様で環境情報を通知する通知部125と、を有する。
【選択図】
図2