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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】多官能性ポリマー光開始剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 311/18 20060101AFI20230404BHJP
   C08F 2/46 20060101ALI20230404BHJP
   C08G 65/48 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C07D311/18 CSP
C08F2/46
C08G65/48
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020506962
(86)(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 IB2018055856
(87)【国際公開番号】W WO2019030631
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】62/542,990
(32)【優先日】2017-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511105296
【氏名又は名称】アイジーエム・グループ・ベスローテン・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】IGM Group B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】マリカ モローネ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエーレ ノルチーニ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンチェンツォ ラッツァーノ
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-531753(JP,A)
【文献】特表2005-505615(JP,A)
【文献】特開2013-209518(JP,A)
【文献】特表2015-536359(JP,A)
【文献】特開昭56-004604(JP,A)
【文献】特開平04-145102(JP,A)
【文献】特表2017-522364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 311/18
C08F 2/46
C08G 65/48
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
G-(O-R)
[ここで、
Gは、グリセロール、エトキシル化及び/又はプロポキシル化グリセロール、ジ-グリセロール、エトキシル化及び/又はプロポキシル化ジ-グリセロール、トリメチロールプロパン、エトキシル化及び/又はプロポキシル化トリメチロールプロパン、ジ-トリメチロールプロパン、エトキシル化及び/又はプロポキシル化ジ-トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エトキシル化及び/又はプロポキシル化ペンタエリスリトール、ジ-ペンタエリスリトール、エトキシル化及び/又はプロポキシル化ジ-ペンタエリスリトール、ソルビトール、エトキシル化及び/又はプロポキシル化ソルビトール、トリエタノールアミン、エトキシル化及び/又はプロポキシル化トリエタノールアミンから選ばれるモノマー、オリゴマー、及びポリマーのポリヒドロキシル化及び/又はポリアルコキシル化部分であり、
Rは、
【化1】
(ここで、
点線は、Rが酸素原子に結合される際の結合を表し;
xは0~10の整数であり(ここで、xが0であれば、Aは、直接、カルボニル基に結合する);
各Aは、互いに独立して、CHR3、O、S、NR4を表し(ここで、R4はC1-C6アルキル基である);
各R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素;置換又は未置換のアリール又はヘテロアリール;C5-C6シクロアルキル;任意に、-SH、-N(C1-C6アルキル)2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C1-C12アルキル)、又は-COOHにて置換されたC1-C12アルキルから選ばれる基を表す)であり;
mは2~8の整数である]
の化合物(ただし、式(I)の化合物は、ラジカル重合を受けることができる、少なくとも1の不飽和二重結合を有するモノマー、オリゴマー又はプレポリマー、又はその混合物ではない)。
【請求項2】
mが3~6である請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
xが0~6である請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
xが1~4である請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
AがCHである請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
Gが、エトキシル化及び/又はプロポキシル化部分を含んでなる請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
及びRが、いずれも、メチル基である請求項1~6のいずれかに記載の式(I)の化合物。
【請求項8】
が水素である請求項1~7のいずれかに記載の式(I)の化合物。
【請求項9】
請求項1に記載の式(I)の化合物の、紫外光又はブルーライト誘発光重合プロセスにおける光開始剤としての使用。
【請求項10】
インクジェット印刷インクについての光重合プロセスにおける請求項9に記載の使用。
【請求項11】
少なくとも1の共-開始剤との組み合わせである請求項9又は10に記載の使用。
【請求項12】
共-開始剤がアミンである請求項11に記載の使用。
【請求項13】
共-開始剤が、不飽和エチレン系部分を含んでなるアミンである請求項12に記載の使用。
【請求項14】
式(II)
【化2】
[ここで、
Gは、G-(OH)m+n(ここで、Gは、請求項1において定義したとおりであり;m及びnは、いずれも、整数であり、m+nは2~10である)であり;
mは2~8であり;
xは0~10の整数であり、ここで、xが0である場合、Aはカルボニル基に直接結合し;
Aは、互いに独立して、CHR3、O、S、NR4(ここで、RはC1-C6アルキル基である)を表し;
は、水素;C1-C12アルキル;置換又は未置換のフェニル、アリール又はヘテロアリール;C5-C6シクロアルキル;SH、-N(C1-C6アルキル)2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C1-C12アルキル)、-COOHにて置換されたC1-C12アルキル;又はC1-C12アルコキシであり;
、Rは、それぞれ独立して、C1-C12アルキル;置換又は未置換のフェニル、アリール又はヘテロアリール;C5-C6シクロアルキル;SH、-N(C1-C6アルキル)2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C1-C12アルキル)、-COOHにて置換されたC1-C12アルキル;又はC1-C12アルコキシである]
の化合物(ただし、式(II)の化合物は、ラジカル重合を受けることができる、少なくとも1の不飽和二重結合を有するモノマー、オリゴマー又はプレポリマー、又はその混合物ではない)。
【請求項15】
mは3~6であり;及び/又は
xは0~6であり;及び/又は
AはCH2であり;及び/又は
及びRは共にメチル基であり;及び/又は
は水素である
請求項14に記載の式(II)の化合物。
【請求項16】
任意に、少なくとも1の共-開始剤と組み合わせた、請求項1~8のいずれかにおいて又は請求項14~15において定義する式(I)又は(II)の少なくとも1の化合物を含んでなる光重合性組成物、光重合性インク、又は光重合性コーティング。
【請求項17】
請求項16に記載の組成物、インク、又はコーティングの製法であって、
I)a)少なくとも1のエチレン系不飽和化合物50~99.9質量%;
b)請求項1~8に記載の式(I)又は請求項14又は15に記載の式(II)の少なくとも1の化合物0.1~35質量%
を含んでなる光重合性組成物を調製すること;
II)工程I)の組成物を光源にて光重合すること
を含んでなる製法。
【請求項18】
光重合を、波長365~420 nmにおいて発光するLED光源を使用して行う請求項17に記載の製法。
【請求項19】
さらに、光重合する前に、光重合性組成物を基板に塗布する工程を含んでなる請求項17又は18に記載の製法。
【請求項20】
少なくとも1の共-開始剤も存在する請求項17~19のいずれかに記載の製法。
【請求項21】
請求項1~8、請求項14~15のいずれかに記載の化合物の、カチオン性光開始剤に対する増感剤としての使用。
【請求項22】
カチオン性光開始剤がジアリールヨードニウム化合物である請求項21記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3-ケトクマリンに基づく新規の化合物に係り、該化合物は、光開始剤及び増感剤として有用である。より詳しくは、新規の化合物は、ポリヒドロキシポリマーコアを含んでなり、該コアは3-ケトクマリン誘導体に化学的に結合する。
【背景技術】
【0002】
放射線硬化性コーティングにおいて使用される光開始剤は、高い硬化速度、特に、良好な表面硬化、少ない臭気、良好な溶解性、及び低い黄変性を有する必要がある。
【0003】
この分野において使用される光照射源の中でも、半導体光源である発光ダイオード(LED)は、従来の中圧水銀アーク硬化用ランプと比べて、低い操作温、及び極めて長い寿命の利点のため、過去数年間にわたって、重要な開発の対象になっている。LEDランプは、LEDユニットの本質的に小さいサイズ、より長い有効期間、ロバスト性、及び例えば、市販の印刷システムに容易に構築される可能性のため有利である。
【0004】
インク及びコーティングを光硬化させるためにLEDランプを使用する場合には、前記光源の波長に調整される選ばれた光開始剤系を使用することが必要である。水銀アークランプは、一般に、多色発光スペクトルを有する(200~450 nmの紫外可視スペクトルの全領域で光を放射する)が、LEDランプは、通常、365~420 nmの領域にシングル発光バンドのみを有する。
【0005】
このように、365~420 nm領域において吸収性の光開始剤は、増大された能力を有するLEDについての最近の発展を十分に利用することが求められる。さらに、LEDの適用には、通常、高濃度の光活性物質が要求されるため、光開始剤は、光重合性システムとの高い適合性を有するべきである。チオキサントン、例えば、イソプロピルチオキサントン(ITX)及びその誘導体、及びアシルホスフィンオキシドは、この分野において一般的に使用される光開始剤である。
【0006】
残念なことには、光開始剤及び増感剤の両方として一般的に使用されるチオキサントン誘導体は、露光時、黄変を生じ易く、これによって、限定された安定性を有する分解生成物を形成する。その結果、初期の黄変は、貯蔵時に、予想外にシフトする。特に、イメ―イング、例えば、インクジェット印刷では、この不安定な黄変挙動は、最終像における画調の制御を全く困難なものとする。
【0007】
他方、アシルホスフィンオキシドは、中程度の揮発性のアルデヒドタイプの分解生成物を生じ、硬化されたコーティング又は印刷物のバックグラウンドの臭気を発生する。
【0008】
ここ数年間で、放射線硬化性コーティング用の光開始剤として有用な3-ケトクマリンについての多くの研究が公開されている。
【0009】
特に、国際公開第2014/063997号には、改善された反応性及び低い黄変性を有する新たな3-ケトクマリンが記載されているが、良好な反応性を有するもの及び低い黄変性を有するものの中には、コーティング処方において、非常に乏しい溶解性も示すものもある。
【0010】
溶解性における改善は、国際公開第2014/018826号(Sun Chemical Corporation)に記載されているが、395 nmにおける反応性は課題のままである。
【0011】
さらに、放射線硬化性組成物が、食品包装、おもちゃ、又は歯科用に使用される場合には、硬化したコーティングから周囲の媒体へ拡散(移行)する光開始剤の残渣及び分解生成物の量は重大問題である。通常、低分子量化合物は、完全には、重合体ネットワークを形成できず、硬化した組成物から抽出又は拡散され易い。従って、硬化した組成物から移行又は抽出される傾向が低減された光開始剤をデザインすることが、継続して努力されている。
【0012】
これらの課題を克服する1つのアプローチは、エチレン系不飽和部分を含有する光開始剤を使用することである。例えば、国際公開第2005/014677号(Ciba)及びKR20090108154(LG Chemical Ltd.)は、(メタ)アクリル化官能基を有する3-ケトクマリンの誘導体を開示している。エチレン系不飽和基は、硬化プロセスの間に、光開始剤がポリマー構造に組み込まれることを可能にするが、形成されるラジカルの可動性及びその結果として、その活性も低減させる。
【0013】
他のアプローチは、増大された分子サイズの光開始剤を使用することであり、該光開始剤では、硬化した生成物に封鎖される確率が増大され、移行可能な及び/又は抽出可能な分解生成物のレベルの低減が生ずる。この解決策は、国際公開第2014/018826号に開示されている。
【0014】
しかし、これらの光開始剤は、反応性を失う傾向が強い。従って、所望の硬化速度を達成するためには、しばしば、かなりの量のこれら光開始剤が要求され、これにより、粘度を、放射線硬化性組成物の多数の用途、例えば、インクジェット印刷について望ましくないレベルに増大させる。さらに、10~12%の非-アクリレート官能性物質の濃度により、可塑化剤として挙動し始めるか、又は硬化されたフィルムの架橋密度が、その機械的特性が害されるポイントまで低減される。
【0015】
上記の理由から、放射線硬化性コーティング系との相互作用が改善された新規の光開始剤についての要求がなお存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の第1の目的は、良好な溶解性、高反応性、低黄変性を有し、臭気が極めて少なく、移行又は抽出される傾向を有する分解生成物を発生しない、3-ケトクマリンに基づく新規の多官能性化合物を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、紫外線誘導カチオン性硬化における前記新規化合物の、光開始剤及び増感剤としての使用を提供することにある。
【0018】
本発明の他の目的は、それらを含んでなる組成物及びインクとともに、前記新規化合物の使用を含む光硬化法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これらの目的及び他の目的は、請求項1~8による新規化合物、請求項10~14の光開始剤として及び請求項21及び22の増感剤としてのその使用、請求項16~19の光硬化法、請求項15の組成物、インク及びコーティング、及び請求項20の物品を提供する本発明によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
その態様の1つによれば、本発明の対象は、式(I)
【化1】
[ここで、
Gは、モノマー、オリゴマー、及びポリマーのポリヒドロキシル化及び/又はポリアルコキシル化部分であり、
Rは、
【化2】
(ここで、
点線は、Rが酸素原子に結合される際の結合を表し;
mは、2~8の整数であり;
xは、0~10の整数であり(ここで、xが0であれば、Aは、直接、カルボニル基に結合する);
各Aは、互いに独立して、CHR3、O、S、NR4を表し(ここで、R4はC1-C6アルキル基である);
各R1、R2、及びR3は、それぞれ独立して、水素、置換又は未置換のアリール又はヘテロアリール;C5-C6シクロアルキル;任意に、-SH、-N(C1-C6アルキル)2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C1-C12アルキル)及び-COOHにて置換されたC1-C12アルキル、又はCH3-C12H25;アルキルアルコキシから選ばれる基を表す)である]
の化合物であり、ただし、式(I)の光開始剤は、光硬化性エチレン系不飽和基を含有していない。

【0021】
好ましくは、式(I)において、mは、3~6、さらに好ましくは、3~5である。
【0022】
好ましくは、式(I)において、nは、1~4であり、式(I)において、nは存在しない。xが0ではない場合、式(I)の化合物は、遊離のアルコール基を含有する。
【0023】
好ましくは、式(I)において、Aは、CHR3、Oであり、より好ましくは、CHR3である。
【0024】
好ましくは、式(I)において、xは、0~6であり、より好ましくは、1~4である。
【0025】
Gは、モノマー、オリゴマー、ポリマーのポリオール及びその混合物、及び/又はアルコキシル化部分及びその混合物を含んでなることができ、任意に、アミノ、エステル、又はアミド基を含んでなる。
【0026】
他の具体例によれば、本発明は、式(II)
【化3】

(ここで、
Gは、多官能性化合物(コア)G-(OH)m+nの残基であり;
m及びnは、いずれも、整数であり、m+nは、2~10であり;
mは、2~8であり;
xは、0~10の整数であり、ここで、xが0である場合、Aは、カルボニル基に直接結合し;
Aは、互いに独立して、CHR3、O、S、NR4(ここで、R4はC1-C6アルキル基である)を表し;
R3は、水素、C1-C12アルキル、置換又は未置換のフェニル、アリール、又はヘテロアリール、C5-C6,シクロアルキル、SH、-N(C1-C6アルキル)2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C1-C12アルキル)、-COOHにて置換されたC1-C12アルキル、又はC1-C12 アルコキシであり;
R1、R2は、それぞれ独立して、C1-C12アルキル、置換又は未置換のフェニル、アリール又はヘテロアリール、C5-C6シクロアルキル、SH、-N(C1-C6アルキル)2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C1-C12アルキル)、-COOHにて置換されたC1-C12アルキル;又はC1-C12アルコキシである)
の化合物に係り、ただし、式(II)の光開始剤は、光硬化性エチレン系不飽和基を含有しない。
【0027】
好ましくは、式(II)において、m+nは、2~8、より好ましくは、3~6である。
【0028】
好ましくは、式(II)において、mは3~6、より好ましくは、3~5である。
【0029】
nが0ではない場合、式(II)の化合物は遊離のアルコール基を有する。
【0030】
好ましくは、式(II)において、AはCHR3、Oであり、より好ましくは、AはCHR3である。
【0031】
好ましくは、式(II)において、xは0~6、より好ましくは、xは1~4である。この記載における式(II)では、G-(OH)m+nはポリヒドロキシ化合物であり、モノマー、オリゴマー及びポリマーのポリオール、及びその混合物から選ばれる。
【0032】
好適なモノマー及びオリゴマーのポリオールの例としては、グリセロール、ジ-グリセロール、トリ-グリセロール、トリエタノールアミン、トリメチロールプロパン、ジ-トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジ-ペンタエリスリトール、糖アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、及びキシリトール、及びその混合物が含まれる。
【0033】
ポリマーのポリオールの例としては、アルコキシル化化合物、ポリヒドロキシポリエーテル(脂肪族又は芳香族のいずれでもよい)、ポリヒドロキシポリエステル、ポリヒドロキシポリアミド、ポリヒドロキシポリイミド、ポリヒドロキシポリカーボネート;スチレン-アリルアルコールコポリマーが含まれる。
【0034】
好適な具体例によれば、(ポリ)ヒドロキシ部分Gはアルコキシル化されている。
【0035】
このようなアルコキシル化化合物の例としては、上述のモノマー及びオリゴマーポリオールが含まれ、これらは、アルコキシル化、例えば、エトキシ化及び/又はプロポキシ化及び/又はブトキシ化されている。他の好適な例は、直鎖状又は分枝状のポリアミド(アルコキシル化されている)、及びポリアルコキシル化ジアミン、例えば、エトキシ化エチレンジアミン及びエトキシ化1,3-プロピレンジアミンである。
【0036】
本発明のアルコキシル化化合物において、アルキレンオキシドに対して反応性の各基は、0~15のアルコキシユニット、好ましくは、1~6のアルコキシユニットを含有できる。
【0037】
好ましい具体例では、G又はG-(OH)m+nは、モノマー及びオリゴマーのポリオールの中から選ばれる。
【0038】
他の好ましい具体例では、G又はG-(OH)m+nは、エトキシ化及び/又はプロポキシ化されたモノマー及びオリゴマーのポリオールの中から選ばれる。
【0039】
好ましくは、G又はG-(OH)m+nは、1500以下、より好ましくは、800以下、最も好ましくは、500以下の数平均分子量を有する。
【0040】
好ましくは、G又はG-(OH)m+nは、グリセロール、エトキシ化及び/又はプロポキシ化グリセロール、ジ-グリセロール、エトキシ化及び/又はプロポキシ化ジ-グリセロール、トリメチロールプロパン、エトキシ化及び/又はプロポキシ化トリメチロールプロパン、
ジ-トリメチロールプロパン、エトキシ化及び/又はプロポキシ化ジ-トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エトキシ化及び/又はプロポキシ化ペンタエリスリトール、ジ-ペンタエリスリトール、エトキシ化及び/又はプロポキシ化ジ-ペンタエリスリトール、ソルビトール、エトキシ化及び/又はプロポキシ化ソルビトール、トリエタノールアミン、エトキシ化及び/又はプロポキシ化トリエタノールアミンから選ばれる。
【0041】
上述のように、本発明の実現に好適な残基Gは、光硬化性エチレン系不飽和基を含有しない。
【0042】
好ましくは、R1、R2は、それぞれ独立して、C1-C12アルキル基、より好ましくは、C1-C4アルキル基である。
【0043】
本明細書において、用語「アルキル」又は「アルキル基」は、別に表示されないところでは、直鎖又は分枝状の飽和CH3~C12H25アルキル鎖を意味し、アルキル基における炭素原子の各個数について、全ての可能な変形を含み、例えば、炭素原子3個については、n-プロピル及びイソプロピル;炭素原子4個については、n-ブチル、イソブチル及び3級-ブチル;炭素原子5個については、n-ペンチル、1,1-ジメチル-プロピル、2,2-ジメチルプロピル、及び2-メチル-ブチル、等を含む。
【0044】
用語「シクロアルキル」又は「シクロアルキル基」は、別に表示されないところでは、炭素原子5~6個を含有する脂肪族環を意味し、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルである。
【0045】
用語「アリール」又は「アリール基」は、中でも、置換又は未置換のフェニル基、置換又は未置換のナフチル基、アントラセニル基、インデニル基、フルオレニル基を含む。
【0046】
用語「ヘテロアリール」又は「ヘテロアリール基」は、中でも、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラン、ピリジン、ピロリジン、ピペリジン、インドール、キノリン、イソキノリン、キサンテン、カルバゾール、アクリジン、インドリン、ジュロリジンを含む。
【0047】
用語「置換された」は、1以上の置換基が存在することを意味する。前記置換基としては、中でも、ハロゲン原子、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子;アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルチオ、又はアリールチオ基及び複素環基が含まれる。
【0048】
好ましくは、前記置換基は、メチル、エチル、イソプロピル、3級-ブチル、フェニル、トリフルオロメチル、シアノ、アセチル、エトキシカルボニル、カルボキシル、カルボキシレート、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、イソプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、シクロヘキシルアミノ、ジシクロヘキシルアミノ、アセチルアミノ、ピペリジノ、ピロリジル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、フェノキシ、ヒドロキシル、アセトキシ、-PO3H、メチルチオ、エチルチオ、i-プロピルチオ、n-プロピルチオ、フェニルチオ、メルカプト、アセチルチオ、チオシアノ、メチルスルフィニル、メチルスルホニル、ジメチルスルホニル、スルホネート基、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリメチルスタニル、フリル、チエニル、ピリジル、ピペリジノ、モルホリノ、及びピロリジル基から選ばれる。
【0049】
好ましい具体例によれば、R1及びR2は、同一のC1-C4アルキル、有利には、メチルである。好ましい具体例によれば、OR2は5-位にある。
【0050】
好ましい具体例によれば、Aは4-位(カルボニル基に対してパラ-位)にある。
【0051】
好ましくは、R3は水素である。
【0052】
好ましい具体例によれば、R1、R2、R3及びAは、各「m」において同一の意味を有し、すなわち、2以上の3-ケトクマリン部分は、式(I)のいずれのシングル化合物においても同一である。
【0053】
好ましい具体例によれば、
Gは、エトキシ化及び/又はプロポキシ化されたモノマー及びオリゴマーのポリオールの中から選ばれ;
R1、R2は、それぞれ独立して、C1-C12アルキル基、より好ましくは、C1-C4アルキル基、特に、メチルであり;
R3は水素であり;
OR2は5-位にあり;及び
Aは4-位にある。
【0054】
式(I)によって表される及び式(II)の化合物は、当業者に公知の一般的方法に従って調製される。例えば、式(I)の化合物は、エステル交換反応
【化4】
(III)
によって調製される。
【0055】
及び、式(II)の化合物についても同様である:
【化5】
(III) (II)
ここで、ALKはアルキル基、例えば、メチル又はエチルであり、及びGは上記のとおりである。
【0056】
式(III)の化合物は公知の方法に従って調製される。
【0057】
本発明の代表的な化合物の合成に関する詳細は、本明細書の実験の項に報告する。
【0058】
上述の式(I)及び(II)の化合物の調製法は、本発明の更なる主題である。他の合成ルートも使用される。
【0059】
式(I)及び(II)の化合物は、光開始剤として有用である。式(I)及び(II)の化合物の使用を含んでなる光硬化法とともに、光重合法における式(I)及び(II)の化合物の光開始剤として使用は、本発明の更なる態様である。
【0060】
用語「光開始剤」は、好適な波長を有する光に曝露される際、重合反応を開始できるラジカルを発生できる(単独で又は共-開始剤と組み合わせて)官能基を有する分子を意味する。前記化合物は、本発明の更なる主題を構成する。
【0061】
式(I)及び(II)の化合物は、特に、放射線源への露出によって光重合されるインク及びコーティングに適する光重合性組成物において有用である。
【0062】
その使用のため、式(I)及び(II)の化合物は、少なくとも1のエチレン系不飽和化合物及び少なくとも1の式(I)及び(II)の化合物を含んでなる光重合性組成物に含まれる。
【0063】
用語「エチレン系不飽和化合物」は、ラジカル重合を受けることができる、少なくとも1のエチレン系不飽和二重結合を有するモノマー、オリゴマー又はプレポリマー、又はその混合物を表す。また、異なった不飽和度を有するモノマー、オリゴマー、及びプレポリマーの組み合わせも使用可能である。
【0064】
本発明の具現化に適するモノマーは、当分野で一般的に使用されるものであり、例えば、ビニルエーテル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、モノ-及びポリ-官能性アリルエーテル、例えば、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、スチレン及びα-メチルスチレン、脂肪族アルコール、グリコール、ポリヒドロキシル化合物、例えば、ペンタエリスリトール又はトリメチロールプロパンとの(メタ)アクリル酸のエステル、アクリル酸又は脂肪族酸、フマル酸及びマレイン酸誘導体とのビニルアルコールのエステルの中から選ばれる。
【0065】
本発明について好適なオリゴマー又はプレポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アクリル官能性、マレイン官能性、又はフマル官能性を有するポリエーテルが含まれる。
【0066】
光重合性インクにおいて一般的に使用されるモノマー、オリゴマー、及びプレポリマーが好ましい。これらの化合物は、当業者には公知であり、例えば、国際公開第2014/063997号に記載されている。
【0067】
本発明の光硬化性組成物は、好ましくは、少なくとも1のエチレン系不飽和化合物50~99.9質量%及び式(I)及び/又は(II)の化合物0.1~35質量%を含んでなる。
【0068】
さらに好ましくは、本発明の光硬化性組成物は、少なくとも1のエチレン系不飽和化合物70~98.9質量%及び式(I)及び/又は(II)の化合物0.1~20質量%、より好ましくは、0.2~15質量%を含んでなる。
【0069】
他に示さない限り、用語「質量%」は、値が、組成物の総質量に対する質量パーセントであることを意味する。
【0070】
上述の化合物以外に、当分野で通常使用され、当業者に知られている他の成分を、本発明の光重合性組成物に添加することができる。例えば、熱安定剤、光酸化安定剤、抗酸化剤、フィラー、分散剤、着色料及び/又は不透明化剤、及び一般的に使用される他の添加剤である。
【0071】
本発明の光重合性組成物の他の成分は、化学的に不活性な成分として存在する非-光重合性ポリマー(例えば、ニトロセルロース、ポリアクリル酸エステル、ポリオレフィン、等)である。
【0072】
本発明の光重合性組成物は、重合率を増大させる水素ドナーとして作用する分子である共-開始剤を便利に含むことができる。共-開始剤は当分野において知られており、
代表的には、アルコール、チオール、アミン、又はヘテロ原子に近接する酸素に結合する利用可能な水素を有する他の化合物である。このような共-開始剤は、一般に、0.2~15質量%、好ましくは、0.2~8質量%の量で存在する。好適な共-開始剤としては、脂肪族、脂環式、芳香族、アリール-脂肪族、複素環、オリゴマー又はポリマーアミンが含まれるが、これらに限定されない。これらは、1級、2級、又は3級アミン、例えば、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルジメチルアミン、ジ-シクロヘキシルアミン、N-フェニルグリシン、トリエチルアミン、フェニル-ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピリジン、キノリン、ジメチルアミノ安息香酸のエステル、ミヒラーケトン(4,4'-ビス-ジメチルアミノベンゾフェノン)及び対応する誘導体である。
【0073】
アミン共-開始剤としては、アミン-変性アクリレート化合物を使用でき、このようなアミン-変性アクリレートの例としては、米国特許第3,844,916号、欧州特許第280222号、米国特許第5,482,649号、米国特許第5,734,002号、又は米国特許出願公開第20130012611号に記載された、1級又は2級アミンとの反応によって変性されたアクリレートが含まれる。
【0074】
好ましい共-開始剤は、Esacure A198(ビス-N,N-[4-ジメチルアミノベンゾイル)オキシエチレン-1-イル]-メチルアミン)、Esacure EDB(エチル-4-ジメチルアミノベンゾアート)、及びPhotomer 4250(いずれもIGM Resins B.V.によって市販されている)、2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾアート、及びN-フェニルグリシンである。
【0075】
本発明の光重合性組成物は、当分野において一般的に使用される他の光開始剤を便利に含むことができる。
【0076】
本発明の光重合性組成物に含まれる他の光開始剤、共-開始剤、及び更なる成分は、例えば、上述の国際公開第2014/063997号に記載されている。
【0077】
式(I)及び式(II)の化合物の、個々で又は相互の混合で、又は他の光開始剤又は共-開始剤との混合での、光開始剤としての使用は、本発明の他の主題を表す。
【0078】
本発明の特に好ましい具体例によれば、式(I)又は式(II)の化合物は、光重合性組成物における増感性光開始剤として使用される。
【0079】
「増感剤」又は「増感作用剤」は、エネルギー移動プロセスによって、光開始剤単独では活性ではない波長において、光開始剤を活性化させる分子を意味する。
【0080】
式(I)及び式(II)の化合物の、個々で又は相互の混合で、又は他の光開始剤又は共-開始剤との混合での、光開始剤としての使用は、本発明の他の主題を表す。
【0081】
この場合、光重合性組成物は、少なくとも1の光重合性化合物70~98.9質量%、増感剤としての少なくとも1の式(I)又は(II)の化合物0.1~10質量%、及び少なくとも1の増感性光開始剤、例えば、ケトスルホン、α-アミノケトン、又はカチオン性光開始剤、例えば、スルホニウム塩、チアントレニウム塩、又はヨードニウム塩1~15質量%、及び任意に、共-開始剤0.2~8質量%を含んでなることができる。
【0082】
好ましい増感性光開始剤は、1-[4-[(4-ベンゾイル-フェニル)-チオ]-フェニル]-2-メチル-2-[(4-メチル-フェニル)-スルホニル]-プロパン-1-オン(Esacure 1001、IGM Resins B.V.製)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、(2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン)、ジフェニル-(4-フェニルチオ)-フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート)及びチオ-ジ-1,4-フェニレン-ビス(ジフェニルスルホニウム)ヘキサフルオロアンチモネート混合塩、ジフェニル-(4-フェニルチオ)-フェニルスルホネートヘキサフルオロホスフェート及びチオ-ジ-1,4-フェニレン-ビス(ジフェニルスルホニウム)ヘキサフルオロホスフェート混合塩、チオ-ジ-1,4-フェニレン-ビス(ジフェニルスルホニウム)ヘキサフルオロホスフェート、ジ-(4-メチルフェニル)4-(4-メチルフェニルチオ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート及びチオ-ジ-1,4-フェニレン-ビス[ジ-(4-メチルフェニル)スルホニウム]ヘキサフルオロアンチモネート混合塩、ジ-(4-メチルフェニル)4-(4-メチルフェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート及びチオ-ジ-1,4-フェニレン-ビス[ジ-(4-メチルフェニル)スルホニウム]ヘキサフルオロホスフェート混合塩、チオ-ジ-1,4-フェニレン-ビス[ジ-(4-ヒドロキシエトキシフェニル)スルホニウム]ヘキサフルオロホスフェート、チオ-ジ-1,4-フェニレン-ビス[ジ-(4-ヒドロキシエトキシフェニル)スルホニウム]ヘキサフルオロアンチモネート、10-ビフェニル-4-イル-2-イソプロピル-9-オキソ-9H-チオキサンテン-10-イウムヘキサフルオロホスフェート及びその溶液、9-(4-ヒドロキシエトキシフェニル)チアントレニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、(4-オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、{4-[2-ヒドロキシ-テトラデシル)オキシ]フェニル}-フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス-(4-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート及びその溶液、4-イソブチルフェニル-4’-メチルフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ビス-(4-ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス-(4-ドデシルフェニル)ヨードニウム テトラキス-(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリルクミルヨードニウムテトラキス-(ペンタフルオロフェニル)ボレート及び4-イソプロピルフェニル-4’-メチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートから選ばれる。
【0083】
驚くべきことには、式(I)及び(II)の化合物は、相対的に高いグラム当たりの官能性示し、及び相対的に小さいコア分子量により、物質は、光硬化性組成物において、特に、光硬化性コーティング組成物において、高溶解性が付与されることが観察された。この役割では、前記化合物は、主のカチオン性光開始剤の反応性を改善する。とりわけ、前記主のカチオン性光開始剤は、トリアリールスルホニウム塩及びジアリールヨードニウム塩である(コーティング、インク及び塗料に関するUV及びEB処方の化学及び技術、III巻、それぞれ、420及び395頁)。
【0084】
ヨードニウム塩が特に好ましい。
【0085】
式(I)及び(II)の化合物は、透明な光重合性組成物及び不透明な又は着色された組成物の両方において機能し、特に、光重合性インクの調製に有用である。本発明の光開始剤及び組成物は、特に、インクジェット印刷用の光重合性インクの調製に適する。
【0086】
この理由により、本発明の光重合性組成物は、さらに、着色料0.01~30質量%を含有できる。
【0087】
本発明の光重合性インクにおいて使用される着色料は、染料、顔料、又はその組み合わせである。有機及び/又は無機の顔料が使用される。着色料は、好ましくは、顔料又はポリマー染料、最も好ましくは、顔料である。顔料は、当業者に公知の他の一般的な顔料とともに、ブラック、ホワイト、シアン、マジェンタ、イエロー、レッド、オレンジ、バイオレット、ブルー、グリーン、ブラウン、その混合、等である。
【0088】
有機顔料の例としては、アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、及びキレートアゾ顔料;多環式顔料、例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、及びキノフタロン顔料;キレート染料、例えば、塩基性キレート染料、及び酸性キレート染料;レーキ染料、例えば、塩基性レーキ染料、及び酸性レーキ染料;及びニトロ顔料染料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、及び蛍光顔料が含まれる。
【0089】
光重合性ホワイトインクについて、ホワイト顔料は、好ましくは、インク組成物の3~30質量%、より好ましくは、5~25質量%の量で存在する。通常、他の着色料は、本発明の光重合性インク中に、0.01~10質量%の範囲、好ましくは0.1~5質量%の範囲で存在する。
【0090】
インクジェット印刷用の着色料が特に好ましい。
【0091】
主成分に加えて、光重合性インクは、他の特別な成分、例えば、共-開始剤及び他の光開始剤、例えば、先の段落に記載されたもの及び同量の、当業者に公知の分散剤、界面活性剤、及び他の添加剤も含有できる。前記成分は、例えば、国際公開第2014/063997号に記載されている。
【0092】
驚くべきことには、式(I)及び(II)の化合物は、相対的に高いグラム当たりの官能性示し、及び相対的に小さいコア分子量により、物質は、光硬化性組成物において、特に、光硬化性コーティング組成物において、高溶解性が付与されることが観察された。この役割では、前記化合物は、主のカチオン性光開始剤の反応性を改善する。とりわけ、前記主のカチオン性光開始剤は、トリアリールスルホニウム塩及びジアリールヨードニウム塩である(コーティング、インク及び塗料に関するUV及びEB処方の化学及び技術、III巻、それぞれ、420及び395頁)。
【0093】
上記の組成物及びインクは、本発明の主題でもある。
【0094】
その態様によれば、光重合性組成物及びインクを光硬化させる方法は、本発明の更なる主題であり、該方法は、
I)a)少なくとも1のエチレン系不飽和化合物50~99.9質量%、好ましくは、70~98.9質量%;
b)少なくとも1の上記式(I)の化合物0.1~35質量%、好ましくは、0.1~20質量%、さらに好ましくは、0.2~15質量%
を含んでなる光重合性組成物を調製すること;
II)工程I)の組成物を光源にて光重合すること
を含んでなる。
【0095】
式(I)及び(II)の化合物を含んでなる光硬化性組成物及びインクも、本発明の主題である。
【0096】
従って、多種の光源を使用することが可能であり、光源は、約200~約600 nmの波長で発光する。点光源及び平板状ラジエーター(ランプカーペット)は、いずれも、好適である。例としては、カーボンアーク灯、キセノンアーク灯、好適な位置で、金属ハロゲン化物にてドープされた中圧、高圧及び低圧水銀アークラジエーター(メタルハライドランプ)、マイクロ波励起金属蒸気ランプ、エキシマランプ、スーパーアクチニック蛍光管、蛍光ランプ、アルゴン白熱ランプ、フラッシュランプ、写真用フラッドランプ、発光ダイオード(LED)、電子ビーム、X線、及びレーザーがある。ランプと、露光される本発明による基板との間の距離は、使用目的及びランプの種類及び強さによって変動でき、例えば、1~150 cmである。365~420 nmの波長、好ましくは365 nm、385 nm、及び395 nmで発光するLED光源が特に好ましい。
【0097】
任意に、前記光重合性組成物は、前記光源による光重合工程を行う前に、基板に塗布される。基板の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルテレフタレート、ナイロン、紙、ボード、木材、金属及びガラス、当業者に公知の他の基板が含まれるが、これらに限定されない。塗布方法の例としては、フレキソグラフィー、グラビア、スクリーン、インクジェット、リソグラフィー、又は凹版による印刷、スプレー、エアレススプレー、ロールコート、フレキソグラフィー、グラビア、カーテン、カスケード、スロット、ブラシ、及び巻線ローラーによるコーティングが含まれるが、これらに限定されない。前記光重合性組成物を塗布する他の方法は、当業者には明らかであろう。
【0098】
前記光重合性組成物は、既にコーティングされた又はプリントされた層を含んでなる基板上に塗布される。前記光重合性組成物は、前記光源による光重合後に、印刷又はコーティングに適する1以上の組成物にて重ね刷り又は上塗りされてもよい。
【0099】
前記コーティング又は印刷法によって、前記基板に、前記光重合性組成物を塗布し、前記光源によって光重合し、得られる物品を、さらにコーティング又は印刷によって加工して、又は加工することなく得られる物品は、本発明の更なる目的である。
【0100】
好ましい具体例によれば、光重合プロセスにおいて、式(I)及び(II)の化合物は、上述の好ましく具体例におけるように定義される。
【0101】
式(I)及び(II)の化合物は、それらが、365~420 nmの間に吸収領域を示し、そのため、LEDランプによって光開始剤として使用され、黄変を引き起こさず、良好な光化学反応性及び溶解性を有し、悪臭の分解生成物を発生させず、健康及び環境にとって安全であるため、従来技術の欠点を克服することが観察された。
【0102】
さらに、発明者らは、実施例4に記載の化合物が、透明なシステム及び顔料含有システムの両方において、同じ量で、水銀ランプ及びLEDランプと一緒に使用される場合、国際公開第2014/018826号の実施例8に記載の化合物よりも優れた活性を示すとの知見を得た。
実験の項及び実施例
【実施例1】
【0103】
【化6】
窒素雰囲気下、0℃において撹拌しながら、ジクロロメタン250 ml中に、3-フェニルプロピオン酸エチル30.0 g(168.3 mモル)及び3-クロロ-3-オキソプロピオン酸メチル24.0 g(175.8 mモル)を含有する溶液に、塩化アルミニウム67.0 g(502.5 mモル)を少量ずつ添加した。室温において、4時間撹拌した後、反応系を氷水に注ぎ、得られた混合物を、30分間、撹拌下に維持した。ついで、有機相を分離し、水にて洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下での蒸留によって溶媒を除去して、黄色の油状物37.7 gを得た(収率80%)。
1H-NMR (CDCl3, δ ppm):1.22 (t, 3H), 2.65 (t, 2H), 3.05 (t, 2H), 3.75 (s, 3H), 3.98 (s, 2H), 4.10 (q, 2H), 7.30 (d, 2H), 7.85 (d, 2H)
【実施例2】
【0104】
【化7】
エタノール100 ml中に4,6-ジメトキシ-2-ヒドロキシ-ベンズアルデヒド22.3 g(122.4 mモル)を含有する溶液に、実施例1の油状物34.1 g(122.5 mモル)及びピペリジン0.86 g(10.1 mモル)を添加した。還流しながら、混合物を、2時間、撹拌し、ついで、室温に冷却した。濾過によって反応生成物を回収して、白色-黄色の固体25.0 gを得た(収率50%)。
1H-NMR (CDCl3, δ ppm):1.23 (t, 3H), 2.65 (t, 2H), 3.10 (t, 2H), 3.89 (m, 6H), 4.12 (q, 2H), 6.30 (d, 1H), 6.45 (d, 1H), 7.30 (d, 2H), 7.79 (d, 2H), 8.40 (s, 1H)
【実施例3】
【0105】
【化8】
【化9】
150℃において撹拌しながら、実施例2の固体1.00 g(2.44 mモル)及びRolfor GL/609(Lamberti SpAから購入)0.37 g(ヒドロキシル数370/g)の混合物に、酸化水酸化ブチルスズ水和物0.25 g(1.20 mモル)を、少量ずつ添加した。混合物を、150℃において、24時間撹拌し、蒸留によりエタノールを除去した。室温に冷却した後、反応混合物をジクロロメタンに溶解し、濾過した。濾液を水にて洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、真空下での蒸留により、溶媒を除去した。シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=95:5)により、粗製生成物を精製して、黄色-褐色の油状物0.79 gを得た(収率63%)。
1H-NMR (CDCl3, δ ppm):2.65 (m, 6H), 3.00 (m, 6H), 3.45-3.75 (m, 49H), 3.90 (s, 18H), 4.20 (m, 6H), 6.30 (s, 3H), 6.45 (s, 3H), 7.30 (d, 6H), 7.75 (d, 6H), 8.40 (m, 3H)
【実施例4】
【0106】
【化10】
【化11】
150℃において撹拌しながら、実施例2の固体2.00 g(4.87 mモル)及びPolyhol 3380(Perstorpから購入)0.75 g(ヒドロキシル数364/g)の混合物に、酸化水酸化ブチルスズ水和物0.51 g(2.44 mモル)を、少量ずつ添加した。混合物を、150℃において、40時間撹拌し、蒸留によりエタノールを除去した。室温に冷却した後、反応混合物をジクロロメタンに溶解し、濾過した。濾液を水にて洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、真空下での蒸留により、溶媒を除去した。シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=95:5)により、粗製生成物を精製して、黄色-褐色の油状物2.00 gを得た(収率79%)。
1H-NMR (CDCl3, δ ppm):0.80 (m, 3H), 1.45 (m, 2H), 2.65 (m, 6H), 3.00 (m, 6H), 3.35-3.70 (m, 38H), 3.90 (s, 18H), 4.20 (m, 6H), 6.30 (s, 3H), 6.45 (s, 3H), 7.30 (d, 6H), 7.75 (d, 6H), 8.40 (m, 3H)
【実施例5】
【0107】
【化12】
【化13】
150℃において撹拌しながら、実施例2の固体2.00 g(4.87 mモル)及びSorbilene RE/20(Lamberti SpAから購入)0.91 g(ヒドロキシル数300/g)の混合物に、酸化水酸化ブチルスズ水和物0.51 g(2.44 mモル)を、少量ずつ添加した。混合物を、150℃において、32時間撹拌し、蒸留によりエタノールを除去した。室温に冷却した後、反応混合物をジクロロメタンに溶解し、濾過した。濾液を水にて洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、真空下での蒸留により、溶媒を除去した。シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=95:5)により、粗製生成物を精製して、黄色-褐色の油状物0.98 gを得た(収率36%)。
1H-NMR (CDCl3, δ ppm):2.65 (m, 12H), 3.00 (m, 12H), 3.50-3.75 (m, 100H), 3.90 (m, 36H), 4.20 (m, 12H), 6.30 (m, 6H), 6.45 (m, 6H), 7.30 (m, 12H), 7.75 (m, 12H), 8.40 (m, 6H)
【実施例6】
【0108】
【化14】
【化15】
150℃において撹拌しながら、実施例2の固体2.00 g(4.87 mモル)及びPentaeritrite 5 EO(Lamberti SpAから購入)0.43 g(ヒドロキシル数642/g)の混合物に、酸化水酸化ブチルスズ水和物0.51 g(2.44 mモル)を、少量ずつ添加した。混合物を、150℃において、44時間撹拌し、蒸留によりエタノールを除去した。室温に冷却した後、反応混合物をジクロロメタンに溶解し、濾過した。濾液を水にて洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、真空下での蒸留により、溶媒を除去した。シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=95:5)により、粗製生成物を精製して、黄色-褐色の油状物1.07 gを得た(収率49%)。
1H-NMR (CDCl3, δ ppm):2.65 (m, 8H), 3.00 (m, 8H), 3.25-3.75 (m, 22H), 3.90 (m, 24H), 4.10-4.25 (m, 8H), 6.30 (m, 4H), 6.45 (m, 4H), 7.30 (m, 8H), 7.75 (m, 8H), 8.40 (m, 4H)
【実施例7】
【0109】
【化16】
【化17】
100℃において撹拌しながら、p-キシレン5ml中における実施例2の固体2.00 g(4.87 mモル)及びトリエタノールアミンエトキシレート1 EO/OH(Sigma Aldrichから購入)0.45 g(1.61 mモル)の混合物に、酸化水酸化ブチルスズ水和物1.35 g(6.47 mモル)を、少量ずつ添加した。混合物を、還流しながら、24時間撹拌し、蒸留によりエタノールを除去した。室温に冷却した後、反応混合物をジクロロメタンに溶解し、濾過した。濾液を1M炭酸水素ナトリウム水溶液、ついで、水にて洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムにて乾燥し、真空下での蒸留により、溶媒を除去した。シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=95:5)により、粗製生成物を精製して、黄色-褐色の油状物0.90 gを得た(収率40%)。
1H-NMR (CDCl3, δ ppm):2.51-3.10 (m, 18H), 3.28-3.66 (m, 11H), 3.88 (m, 18H), 4.05-4.31 (m, 6H), 6.27-6.33 (m, 3H), 6.42-6.49 (m, 3H), 7.28-7.33 (m, 6H), 7.71-7.82 (m, 6H), 8.34-8.45 (m, 3H)
【実施例8】
【0110】
比較テスト
本発明の3-ケトクマリンを、Omnipol TX(IGM Resins B.V.)(COMP-1)及び国際公開第2014/018826号の実施例9(COMP-2)及び実施例18(COMP-3)に記載のようにして調製した従来技術の3-ケトクマリンと比較した。
[実施例8.1]
反応性テスト
【0111】
[実施例8.1.1]
透明な処方
Ebecryl 605及びEbecryl 350(Allnex)の99.5:0.5質量%混合物中に、それぞれ、光開始剤及び共-開始剤(Esacure EDB(IGM Resins B.V.))を、濃度3%で溶解することによって、テスト用の光重合性組成物を調製した。
FT-IR(FT-IR 430-Jasco)のサンプル拠点に置いた光重合性組成物を、2つの異なる光源:
1)サンプルから25mmの距離及び30°の角度で配置したLED光源(400 nm)(表1);
2)サンプルから65mmの距離及び30°の角度で配置した水銀ランプ(160 W)(表2)に露出した。
光重合の間に、一定の時間間隔で、IRスペクトルを取得し、アクリル系二重結合に割り当てられた1408 cm-1及び810 cm-1におけるピークの面積の経時的減少を、IRソフトウエアを使用して測定した。
これは重合度、従って、光開始剤の効力の定量を可能にする。
400 nmにおける結果(経時の重合百分率として表示)を表1に示し、水銀ランプでの結果を表2に示す。
【表1】


【表2】

【0112】
[実施例8.1.2]
シアンインクジェットインク
インクジェット印刷用のシアンインクに、それぞれ、光開始剤及び共-開始剤(Esacure EDB)を、濃度5.0%で溶解することによって、テスト用の光重合性組成物を調製した。
FT-IR(FT-IR 430-Jasco)のサンプル拠点に置いた光重合性組成物を、2つの異なる光源:
1)サンプルから25mmの距離及び30°の角度で配置したLED光源(400 nm)(表3);
2)サンプルから65mmの距離及び30°の角度で配置した水銀ランプ(160 W)(表4)に露出した。
光重合の間に、一定の時間間隔で、IRスペクトルを取得し、アクリル系二重結合に割り当てられた1408 cm-1及び810 cm-1におけるピークの面積の経時的減少を、IRソフトウエアを使用して測定した。これは重合度、従って、光開始剤の効力の定量を可能にする。
400 nmにおける結果(経時の重合度(%)として表示)を表3に示し、水銀ランプでの結果を表4に示す。
【表3】


【表4】

【0113】
これらのテストは、式(I)及び(II)の化合物が、対照(COMP-1、COMP-2、COMP-3)よりも反応性であることを裏付けている。